BRICS通貨とCBDCはどんな通貨か(2):中編
Written by admin on 2023年11月3日 – 12:00
2023年に公表された、貿易の分野での「BRICSデジタル通貨」について、 まともな論を、ほとんど見かけません。その原因は、多岐に渡ってい ます。 (1)「貿易分野の共通通貨」という概念への、知識がない。 貿易で、もっとも多く使われるドル、2番目のユーロは、米国とユー ロ(19カ国)の国内通貨でもあるので、国内通貨と貿易通貨の混同が、 まずあります。 「BRICSデジタル通貨」は貿易通貨です。「BRICS 5カ国+産油国+グ ローバルサウス諸国」の、国内通貨ではない。 国内通貨もそれぞれデジタル化に向かっていますが、統一せず、現 在の通貨を流通させます。 (2)貿易通貨と、国内の各国通貨の区分をしていないから、「BRICS デジタル通貨」は、もともと無理な通貨であるという結論に達する。 各国の銀行制度、経済事情、賃金水準、所得にかかる税制が、大き く異なっていて、ユーロのような共通通貨は作れないとされます。 (3)1999年に成立したユーロを、マネー理論から研究し、提案した のはマンデルです。「最適通貨圏」が必要としました。 最適通貨圏とは、労働移動の自由がある国のことです。 賃金の高い国に労働が移動できる手段があれば、参加国の賃金が平 準化に向かい、通貨は安定する。 ユーロ(EU内の19カ国)では、移民と労働の移動を自由化しました。 しかし労働の作業は同じでも、文化(行動様式)と価値観(需要なも の)の違いから、各国に人種間の衝突と摩擦を生んでいます。 BRICSデジタル通貨でも、ユーロのような統一通貨を想定している ため、経済の水準、文化、価値観が違う国での通貨の統一はとても無 理だとされています。中国とイランでは別の文化です。 (4)以上の錯誤した論には、感情的な見方という裏があります。 中国やロシアは嫌いである。ドルは基軸通貨として強い。だから BRICS通貨はうまくいかないで欲しいという好悪の感情からの論が背 後にあるのです。感情からの経済論、通貨論は誤りを生みます。 戦争で、自分が属する側を正義、敵国を悪の国とすることと同じです。 敵国は、逆に見ているのです。 この論の根にある問題は、貿易通貨と国内通貨に区分していないとい う間違いです。 【論文の事例】 敢えて名前は出しませんが、月刊の総合雑誌(23年11月号)に、大手 銀行の、主任クラスのエコノミスト&通貨トレーダーが、(1)から (4)が混じって、典型的に間違った論を、展開していました。名の ある、当方も聞いたことのある通貨トレーダーですが、事実と論理が 複雑骨折していて感情が交じった論理でした。 通貨理論は、難しい。 外為トレーダーや、エコノミストが間違えるのも無理はない。 日本人では、カーネギーメロン大学の苫米地英人(認知科学、計算言 語学、人工知能、サイバー防衛と幅広い)が、ペッグ通貨、ブロック チェーン、そしてデジタル通貨を正当に見ています。 日本には金融、通貨、デジタルシステム全般を、通貨発行の仕組みと 理論的な基礎から論じることのできる人は、皆無に近い。別のある金 融投資家も、貿易通貨のデジタル化において、間違った認識の論でし た。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <Vol.1379号:土曜増刊: BRICS通貨とCBDCはどんな通貨か(2):中編> 2023年11月4日:有料版・無料版共通 【目次】 ■1.IMFのSDRとの比較 ■2.BRICSデジタル通貨の、基本的な仕組みとその利点 ■3.金・コモディティペッグ通貨の内容 ■4.各国の通貨レートとの関係 ■5.財務省と、日銀の植田総裁への提案 ■6. 1000兆円の、外債の貯金箱は、ブタ積み以下だった ■7:通貨レートの原理: 金利が高い通貨は、金融の原理では、裸の実力が低い通貨 ■8.金ETFの証券と金コモディティペッグ通貨は同じ ■9.BRICS通貨加盟国と発足 ■10.貿易通貨の決まり方 ■11.ドルでのマネー運用で、日本はトータルでは損をしてきた ■12.後記・・・ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.IMFのSDRとの比較 論者には、中央銀行だけが国際的に使っているSDR(特別引き出し権) への知識と理解も、求めるべくもない。 SDRはIMF(国際通貨基金)が発行し、政府または中央銀行だけが使っ ている国際通貨です。日銀も98.7億SDR(1兆4629億円相当:2021年8月 時点)をもっていて、世界の中欧銀行間で使っています。基軸通貨 (=国際通貨)の一種です。 22年8月からの実績では、ドル58.25%、ユーロ35.67%、円、11.9%、 人民元10.17%、英ポンド8.6%の、加重平均のバスケット価格で、 SDRの交換レートを決めています。 (IMFのSDRへの説明) https://www.imf.org/ja/About/Factsheets/Sheets/2023/special-drawing-rights-sdr SDRの借り入れ金利も、通貨構成比の割合の、金利の加重平均です。 現在ドル円が151円と円安なので、1SDRは196円と高い。金利は、構成 比が大きな米ドルの長期金利とほぼ同じで約4.5%。レートと金利は、 変動します。 100億SDRをIMFから借りると(長期借り入れ金利は約5%)、1兆9600億 円分の外貨(ドル、ユーロ、円、人民元、英ポンド)と交換して、引 き出しができるということです。 BRICS通貨は、加盟国の通貨の加重平均ではなく、金・コモディティ ペッグで通貨のレートを決めて、変動する金・コモディティ価格のバ スケットに合わせるものです。 (注)バスケットは、籠に入れた金・コモディの、加重平均の価格指数 です。代表的な金・原油の価格が上がると、BRICS通貨の、参加各国 の通貨との交換レートも上がります。バスケット通貨は、各国の経済 と通貨信用に依存しない通貨です。 ■2.BRICSデジタル通貨の、基本的な仕組みとその利点 SDRと同じマネー機能をもつのが、BRICSデジタル通貨の、国際通貨で あり、貿易通貨です。SDRのように各国の国内では使わず、対外的な 支払いや借り入れに使う通貨です。(注)各国内で、BRICS通貨を使う と決めてもいいのですが、普通はそれをしません。 BRICS通貨を受けとった輸出企業は、国内の銀行でBRICSデジタル通貨 を、自国のデジタル通貨や紙幣に交換して、預金するか、使うかしま す。 銀行は取り扱うので、BRICS通貨のままで預金ができます。国内の支 払いに必要な分だけを、そのときの交換レートで自国通貨に変えれば いい。円が公定通貨である日本の銀行にも、ドルやユーロの預金がで きることと同じです。銀行・証券は、国際化しています。 通貨の価値の根拠として、金・コモディティペッグを表明している 「BRICSデジタル通貨」は、IMFのSDRのような国際通貨です。 BRICS通貨への加盟諸国間の、貿易と国際金融取引に使う。 【SDRの事例】 各国の国内で使いたいなら、日本では、1SDRを196円としてSDRで円を 買う必要があります。米国で使うなら、ドルとの交換です。国際的な 金融取引は、SDRのまま行えます。 ただし、SDRは、そのままでは、貿易の決済通貨としては使わないこ とが国際的な習慣です。SDRを貿易決済に使うときは、そのときの レートで、相手が求めるドル、ユーロ、円、人民元、英ポンドに交換 して使います。 (注)輸出国(B国)が承諾するなら、SDRも貿易決済にも使えます。B 国の企業がSDRを受けとったあと、自国通貨に変換すればいいだけの ことです。 【BRICS通貨】 一方、BRICSデジタル通貨は、貿易決済用の通貨です。加盟国間の貿 易に使います。ここが、貿易では使わない慣習のSDRと違います。 BRICSデジタル通貨は、参加国の通貨と交換ができます。ドル買い/ ドル売りと、同じ方法です。BRICSデジタル通貨の取扱銀行で交換す る。ブロックチェーンのデジタルは、インターネット通信で口座のあ る銀行に送金します。ビットコインやイーサリアムと、円の関係と同 じです。 以上が、BRICS通貨の基本的な仕組みと、国際的なマネーの機能です。 BRICS通貨使用国に加盟すれば、加盟国間の貿易に使うことができま す。 BRICS通貨の本部銀行(仮称:上海機構)は、IMFのように、融資機能 をもつ必要があるでしょう。(注)ビットコインも融資機能があり、先 物もあります。 融資の方法は、IMFと同じです。国に対して貸し付ける。BRICSデジタ ル通貨は、各国の外貨準備になります。原油・資源・穀物を輸入する 企業は、銀行で自国通貨をBRICS通貨に交換して、輸出国の企業に送 金する。 ブロックチェーンですから、インターネットの回線を使って、国際送 金のコルレス銀行とSWIFT回線を介さず、メールのように、認証され る30秒で、Pier to Pierで送金・受金ができます。 (注)ブロックチェーンは素因数分解の暗号を解いて、ホンモノの通貨 と認証する仕組みです。 融資と預金の金利は、加盟国金利の加重平均で決めればいい。 ■3.金・コモディティペッグ通貨の内容 BRICS通貨の、交換レートは、金・コモディティのバスケット価格に、 ペッグさせます。単純にするため、金で言います。 金1グラムを1 BRICS通貨とした場合は、1 BRICS通貨は、約9000円に なるでしょう(税抜きの金価格)。 900円は、金0.1グラム=0.1BRICS通貨、90円は、金0.01グラム=0. 01 BRICS通貨です。 ドルでは、金1グラムが64ドル=1BRICS通貨です。 BRICS通貨の交換レートは、金価格が上がると上がり、下がると下が ります。金コモディティペッグ通貨のメリットは、BRICS通貨で貿易 すれば、輸入インフレが緩和されることです。 金・コモディティのバスケット価格にエネルギー・資源・穀物・食肉 の、国際価格は、ほぼ比例するからです。 BRICS通貨の信用(=価値)は、中国、ロシア、産油国の経済信用に 基づくものではない。加盟国の掲載、通貨発行、金融は無関係です。 「金・コモディティのバスケット価格」で、レートを決めるからです。 「金・コモディティのバスケット価格」は、中国、ロシア、産油国の経 済信用とは無関係です。 繰り返し言いますが、BRICS通貨は、ユーロのような最適通貨圏が必 要な統一通貨ではない。IMFのSDRと同じ、国際通貨です。 国際交易に使います。 加盟各国の通貨は現状のままです(ただし2026年ころからは全部がデ ジタル化されます)。 ■4.各国の通貨レートとの関係 BRICS通貨と、加盟各国の通貨レートは、以下のようなるでしょう。 1 BRICS 通貨のレート=金1グラムの、各国通貨での価格 仮に日本が参加すれば、金1グラム≒9000円 米国が参加すれば、 金1グラム≒64ドル 人民元では、 金1グラム≒438元 ロシアのルーブルでは、金1グラム≒620ルーブル・・・ 以上のように、各国の交換レートが決まります。 金ペッグではない円で、金1グラム=9000円で、BRICS通貨を買えば、 金ETFを買ったことと、同じになります。円にとっては、金価格の上 昇はある。 【金ペッグの意味】 しかし金ペッグのBRICS通貨にとっては、金価格は、一定の固定レー トになります。 ◎円とBRICS通貨のどちらをもったらいいでしょうか? 加盟国の銀行(中国、ロシア、ブラジル、サウジ、イラン・・・)で、 円やドルを出して(インターネット送金して)、金と同じ価格で BRICS通貨を買えばいい。金ETFの買いと、同じです。 日本の国内銀行も、金の信用が確かな外貨として、BRICS通貨を取り 扱うことになるでしょう。現在も、人民元を少量ですが、取り扱って います。中国にも、海外支店があるからです。 国内の銀行でドルを買うように、BRICS通貨を買えるようになります。 銀行は、交換手数料の利益があることは実行するので、これは確実で しょう。 ◎金コモディティペッグのBRICS通貨は、金価格の裏付けをつけたビ ットコインです。 金兌換通貨だった、1971年までのドルと同じ構造の通貨です。通貨信 用は参加国の経済状況には、依存しません。 ■5.財務省と、日銀の植田総裁への提案 多くの為替トレーダーは、なぜ、BRICS通貨は不可能な通貨という烙 印を押すのでしょうか。真意がわからない。想像できますか? 根っこにあるのは、単に、私は感情的に嫌いだという論でしょう。ロ シアのプロコフィエフ、ラフマニノフ、チャイコフスフキーの曲は嫌 いだという感情と同じです。プロコフィエフやラフマニノフの交響曲 は、当方の好みです。チャイコフスキーは情緒過剰。 あるいは、ブロックチェーンの通貨や電子マネーはイヤだという感情 か。反省を希望します。 【ドル依存が、日本の害になる】 ドル依存のままでは、日本経済の成長の機会を、逃すからです。 日本政府が、BRICS通貨への参加を決めれば、原油高騰・資源価格高 騰の害から、離脱ができます。原油・資源をBRICS通貨で買えば、価 格が上がることはないからです。 1000兆円のドル債を売ればかつてなかったような、枠組みの大きな経 済成長、世帯の実質所得増加の戦略になります。日本の貿易は、貯蓄 の増加がなくなったので、貿易は均衡します。赤字も黒字もないとい うことです。 もう、輸出増加のための円安は要らない。かつての輸出企業は、海外 に、200兆円分の工場を作って、海外向けに売っています。 日本にとっては、2011年以降は、海外物価が下がる円高がいいのです。 1990年には、米国と欧州の物価は、日本の1/2でした。現在は2倍でし ょう。購買力平価では、円がドルに対して、1/4に下がったのです。 この長期円安は、1990年からの、日本からの、ドル買い/円売りの、 418兆円の超過(対外純資産418兆円:2022年残高)で起こったもので す。(対外資産、負債) https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/iip/data/2022_g.htm 政府・日銀は、一体、何を考えているのか。考えていないのか。 「米ドルと米国の奴隷か」とも思うのです。 【ドルへの奴隷根性】 ドルへの奴隷は、政治家と官僚の「自虐の奴隷根性(心理的マゾヒズム への偏向)」から来ます。無条件降伏のあと、78年もマゾヒズムにか かっていて、その自覚がない。 80年前は、真逆に「鬼畜米英=悪の米英」と言っていたでしょう? そ の悪に、なぜ、今は奴隷のように従属するのか。財務省と岸田首相、 いかがですか。 親米とは従属ではない。お互いの国の、政策の違いを認め合うことで す。性格の違いをお互いが認め合うことから、親友になっていきます。 (注)同じ敗戦国のドイツ・イタリアは、米国に従属していません。 【方法はある】 ◎ドル基軸通貨の体制に50%は参加しながら、サウジや中国のように、 BRICS通貨にも50%の参加はできます。こうした立場をとり続けるて きたのは、スイスです。 (注)ユダヤ人の金融資本が多いので、イスラエルはドル派の中核国で すが、いま、ムスリムの一体化の動きも見えてきたので、イスラエル は国家存亡の危機でしょう。対アラブ強硬派のネタニアフへの支持は 29%に落ちました。 シオニスト(極右:ネタニアフ)とユダヤ教(穏健派)のイスラエル は、アラブの分割を狙っていました。 ムスリム=イスラム教徒の、スンニ派(サウジ、イラク)とシーア派 (イラン)には、1500年の宗派の対立があった。中東戦争の従属原因 になったものです。それが対イスラエルで一体化すれば、イスラエル の国家が危うくなるのです。 ■6.1000兆円の、外債の貯金箱は、ブタ積み以下だった 日本にとっては、海外工場投資を抜いても1000兆円はある、ドルと証 券(持ち手は、政府、銀行、企業)を、ドルが150円ともっとも高い 現在、売って、利益確定することが成長戦略になります。1000兆円の ドル資産と証券の必要が、どこにあるのか? ドル買いは、円が下がることです。金利のあるドルレートが上がると、 一見では、利益があったように見えます。 ↓ しかし、一方では円預金(1735兆円:世帯1117兆円、企業344兆円、金 融機関間274兆円:2023年)の実質価値が、1995年以降、60%の円安 で下がったので、1735兆円×60%=1041兆円の、実質価値を失ってい ます。海外旅行や滞在が多い世界市民の立場では・・・当方は、いつ も、自分を仮想的に世界市民の立場に置いて考えています。 つまり日本は、2023年まで、1000兆円のドル買いがもたらしたドル高 /円安で、大きな、実質損をしてきたのです。マイナスですからブタ 済み以下です。 (世界の通貨に対する円の実効レート:1995年が150であり円の価値 のピーク:2023年は60dで60%安です) https://honkawa2.sakura.ne.jp/5072.html ■7:通貨レートの原理: 金利が高い通貨は、金融の原理では、裸の実力が低い通貨 ドル国債の金利が5%と高いから、米国株がAIで上がるから、ドル証 券を買うという理由を挙げる人が多いでしょう。 ◎金融理論では、金利の高い通貨は、金利が低い通貨より弱い通貨で す。 ドルは、5%の金利でないと、世界からの買い手が減ります(売りが増 える)。仮に、日本円と同じ1%に下がったら、ドルはいくらに下が るでしょう。思考実験すればいい。1ドル70円から80円。 これが、経常収支が赤字の通貨の、金利が同じときの、「通貨の裸の 実力」です。 ドルは、経常収支の構造的な赤字が1兆ドルから2兆ドルもあり、主要 通貨では、もっとも高い金利プレミアムがつけて買われている弱い通 貨です(1980年から43年間、ドル金利は実質ゼロが長かった円金利よ り高い)。 2012年の1ドル80円から円安が続き、2022年の10月から、150円超えに なったのは、米国の2022年3月からの、インフレ対応の利上げ(5ポイ ント)で、日米の金利差が、4%に拡大したからです。 インフレ(=通貨の実質価値の下落)を引き起こす通貨は、過剰発行 があって、弱い通貨です。現在の、もっとも大きな事例は、トルコリ ラです。インフレが50%以上、政策金利が25%。 1ドル80円台のころ(2012年)は、日米金利差は1.0%から1.5%で、ド ル・円のレートが、均衡していました。 1ドル80円に戻れば、1バーレル85ドル(1万2750円)の原油と輸入の 資源・食糧も、価格は85ドルのままであっても、円では6800円に下が ります。日本経済は、円高が進んだ1980年代までの高い成長率に戻り ます。 コロナのあと、2020年代のドル高(105円→150円:+43%)は、円売 り/ドル買いの増加が支えてきたものです。 ドル国債のもっとも大きな買い手だった中国は、2021年から、ドル国 債を売っていまます。 買いが増えた通貨は上がり買いが減った通貨は下がります。いろんな 理由付けのある売買が、今日の通貨レートを決めています。売買額が 同じなら通貨レートは動かない。株価と同じです。 なお、金利は、国債の売買で決まります。2022年からのドル国債のよ うに売りが多くなると、金利は上がる(ドル金利5.25%~5.50%)。 国債の買いが多いと、金利は下がる。2022年までの円とスイスフラン は、ゼロからマイナス金利でした。 過去の円のように、ディスインフレで内外から、国債の買いが増える 通貨は、通貨が上がる強い通貨です。米国と欧州のように、インフレ で内外から、国債の売りが増える通貨は、通貨が下がる弱い通貨です。 国債価格は、国の株価に相当します。 これが当たり前の通貨、国債、金利の理論です。 ■8.金ETFの証券と金コモディティペッグ通貨は同じ BRICS通貨を発行する本部銀行は、金ETF(金価格と同じ金証券)をも っとも多く発行しているスパイダーゴールド社(SPDR社)と同じ信用 の機関になります。 (注)日銀も、政府がやろうと思うなら金・コモディティペッグの新円 を発行できます(仮称:BOJマネー)。三菱UFJも可能です(仮称:Mマ ネー)。 金ペッグ通貨は、金の保有には、無関係です。金地金とは交換しない からです。金価格と同じことを、発行元が保証する通貨です。 これが、金ETFを発行しているスパイダーゴールド社の方法です。 金の現物が欲しいなら、金ETFを売って、入手した現金(円やドル)で、 直後に買えばいいだけの、手間です。 市場の金価格は同じなので、手許の金ペッグ通貨に相当する金が買え ます。しかし、金ペッグ通貨のレートとその変動は、現物の金価格と 同じですから、「金の現物が好きだ」ということ以外の違いはない。 「趣味」の問題です。なお金の地金には、売買のとき価格の10%の消費 税がかかりますが、金ETFにはかかりません。国税庁では、金ETFは証 券、金は消費財とされているからです。 課税には根拠はない(当方の、税法の師の言葉です)。 「吉田さん、税金には理由はないんですよ」。あの声が浮かびます。残 念ですが、20年前だったか突然亡くなられました。100万都市の大手 書店で、書籍の年間購入額1位を続けた方でした。新しい経済書の話 が、面白かった。当方も負けずに買いました。週に3日くらい、28歳 から38歳までの10年間。読書会でした。 【通貨発行元の信用】 スパイダーゴールド社の破産を心配する人は、金ETFを買わないでし ょう。三菱UFJの破産を案じる人も、三菱UFJに預金しない。三菱UFJ では、送金しない(送金も一時的な預金です)。 同じような意味で、金コモディペッグのBRICS通貨を信用しない国や、 ロシア・中国が嫌いな国は、BRICS通貨に加盟しない。それだけのこ とです。 基軸通貨国の米国であっても信用するなと強制することはできない。 米国の軍事・政治・経済・通貨での、世界への覇権の衰退は、BRICS 通貨の誕生させたことにも現れています。 根底的なことを言えば、米国のGDPの実質成長率より、BRICSと参加国 (産油国)、及び新興のグローバルサウスの成長力が数ポイントは高 いからです。3%の違いでも30年で2.4倍になります。 戦前の英国覇権の時代が終わったあと、戦後の米国の時代も、80年目 に終わりかけているのです。経済の比重は、米国が率いるG7から、 BRICS+産油国に移ってきたからです。BRICS通貨の誕生は、通貨のデ ジタル化をともなって「79年ぶりの新ブレトンウッズ」になるでしょう。 米国の国内では、白人の構成比は減り(現在57.8%)、心の根っこは BRICS側である有色人種の人口が、増えています。 民主党の地盤の西部・東部では有色系が多い。共和党の地盤は中部・ 南部です。民主党と共和党の対立の激化には、祖先と親の人種から来 る、共有文化と価値観の違いが、政党の支持に影響を及ぼしています。 移民と有色系には民主党支持が多く、白人には共和党支持が多いのは、 否定できない。2020年の大統領選以来、起こっている理不尽な政治的 な事象は、移民と多民族の国家である米国の、人種分断から来ていま す。米国が、多民族だった旧ソ連のように分裂するかもしれないと思 わせるほど、妥協ができない。 金コモディペッグのBRICS通貨を信用する国は、BRICS通貨を自国通貨 で買って使います。 ■9.BRICS通貨加盟国と発足 BRICS通貨を信用する主要な国は、 1)BRICS5カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)、 2)BRICSへの参加を表明している産油国(サウジ、イラン、アラブ首 長国連邦(UAE))やアルゼンチン、エチオピア、エジプトです。 2024年1月から、BRICSに加わります。 3)他に、世界の40カ国が、BRICS加盟に関心を示し、22カ国が正式に 参加を表明しました。 成長率が高い東南アジアは、総じて中国経済圏なので、中国について いくかもしれません。宝石のような国シンガポールは、華僑経済の国 です。 合計では、23年10月現在、33カ国、世界のGDPの50%を占めるでしょ う(貿易は世界平均でGDPの30%)。経済成長率の高い新興国は、貿 易比重が高いので貿易では60%になるかも知れません。 BRICS通貨の発行と使用は、2024年中と見ています。 ■10.貿易通貨の決まり方 貿易通貨は、輸出をする国の企業と、輸入する国の企業の合意のみで 決まります。(注)国の方針とは、実は、関わりがないのです。 日本からの輸出のときは、以下です。(2022年:財務省)。意外に多 く(35.4%)円で、海外から輸入決済がされています。 米ドル 49.6%、円35.7%、ユーロ7.0%、人民元2.3% 日本化からの輸入のときは以下です。エネルギー・資源がドル決済な ので、ドルで支払うシェアが高い。 米ドル 69.4%、円23.7%、ユーロ3.2%、元1.7% https://www.customs.go.jp/toukei/shinbun/tuuka/tuukar05fh.pdf ■11.ドルでのマネー運用で、日本はトータルでは損をしてきた 日本は生産、物流、生活の必需である、エネルギー・資源・食糧の輸 入のため、ドルがたぶん80%の外貨準備を1.25兆ドル(187兆円)も っています。外貨準備は、財務省が所有者ですが、米銀へのドル預金、 ドル国債、ドル債券になっています。 所有者は財務省ですが、この外貨準備は、日本の銀行にはなく、主に 米銀に、外貨預金として預けられています。米国債は、米国FRBに預 託されています(保護預か勘定:カストデイという)。 このドルは、もともとは米国の経常収支の赤字よって、経常収支の黒 字国の日本、中国、EU。アジアなどの海外に出たものですが、そのド ルは、米銀にUターンして、還流しています。 【変動相場の原理が、働かない】 経常収支が赤字でもドルが下がらない。逆に黒字国の日本の円が、 1995年以来、実効レートで150(1995年)から60(2023年)に下がった のは、海外に出たドルが、米銀にUターンしてるからです。 日本からの米国債の買いは、まずドルを買って、その後にドル建ての 米国債を買うことです。これも「円売り/ドル買い」になって、円を下 げているのです。 【ドル高と超円安】 エネルギー・資源・食糧の輸入で使われる基軸通貨であるドルは、海 外からの、ドル買いの超過のため、特にアベノミクスの2012年以降、 実効レートが100から130へと30%も上げています。実効レートとは世 界の通貨の、加重平均指数に対する通貨レートのことです。 一方で、2012年の円は100から60にまで40%も下がっています。1995 年の円レートの頂点(150)のときからは、破産国家であるかのよう に、60%も円安になったのです。(注)通貨が60%も下がるのは、普通 は、財政の破産国家です。 (実効レート:1970-2023) https://honkawa2.sakura.ne.jp/5072.html 【ドルは強いという幻想】 28年間も、ドルの価値は円より高くなると考え、「円売り/ドル買い」 を大きくしてきたことを示すものです。 日本の金融機関、政府、国民が、ともに、円よりドルの価値が高いと 予想してきたことが理由です。 円とドルの金利差という解答がありますが、それだけではない。 例えば金利25%のトルコリラを買う人はいません。25%の金利につい ても、多くの人は、25%以上リラのレートが下がる(価値が下がる) と予想しているからです。 ドル・円の金利差1.5%から2%で、ドルを買って円を売ってきたのは (2021年まで)、ドルが年間で1.5%以上は下がらない、逆に、円に 対しては上がる(円は下がる)と予想してきたからでしょう。 ドルの通貨レートに関する「日本人の集合知」の誤りですが、ドルは、 1)世界が輸入ために買う基軸通貨であって、 2)経済を成長させる、ITアプリの先進国(日本はITアプリでは後進 国)という認識が基礎にあって、ドル買いの誤りが、生まれていたの です。 「米国が代表ですが、経常収支の赤字国の通貨は下がる」という変動相 場の原理が、黒字国の日本と中国の「自国通貨売り/ドル買い」の超過 によって、働かなかった。 経常収支が黒字の中国と日本のドル買いのため、赤字のドルは、ます ます、赤字を膨らませながら、ドルレートは上がりました。以下のグ ラフの1990年以降を見てください。 (米国の経常収支の構造的な赤字:1980-2023) https://ecodb.net/exec/trans_country.php?type=WEO&d=BCA&c1=US&c2=JP 【金融機関の外為トレーダー】 多くの外為トレーダーは、以上の理由から、「米国が赤字でもドルは 上がる」という幻想を抱いています。 銀行や証券の顧客の預金でも、ドル買い・ドル債券買い・ドル国債買 いを行って、顧客にも、ドル買いを薦めてきました。 企業に増えた円預金の運用を考えている読者の方からも、メールをも らいました。 金融と証券の関係者が奨めたのは、「ドル株買いまたはドルMMF」の一 辺倒という。当方は、円預金1/3、スイスフラン1/3、金1/3のポー トフォリオに向かう、定額預金を奨めました。 【ドル買いの損】 銀行や証券がドル買いを奨めるのは、円買い/ドル売りで、リスクの ない、為替交換手数料がはいるからでもあります(1ドルにつき1円; 0.7%)。1日で0.7%ですから、年間金利換算では0.7%×365日= 255%です。1億円なら0.7%でも70万円ですから大きい。円に戻すと きも1%かかりますから合計で2%。半年で戻せばドル金利4%が消え ます。(注)楽天証券では1ドルにつき0.25円。0.08%です。 しかも、ドルが下がるリスクがあって、ドルMMF預金が得だとは決し て言えない。ドルのリスクであるドル安をヘッジすれば、いまは、5 %と高いヘッジ料いかります。 ヘッジ料は、ドル安の1年の確率計算から来ています。火災保険の保 険料率が、火災が増えると上がることと同じです。大きなドル高のと きは、ヘッジ料も上がります。 保険をかけてヘッジされた運用益は、為替交換手数料、1回が1%の分、 赤字になります。これは通貨変動のリスクにおいて、原理的なことで す。 余剰預金でのドル預金や証券投資は、ヘッジをかけた長期ではマイナ スです。外債投資はヘッジをせず、長期で外貨交換しないことでしか 利益はない。(注)なおその利益には、常に、ドル安のリスクがありま す。 詐欺ではありませんが、金融機関の営業が、 ・円に戻す円転までのトータルの損益予想を示さず、 ・ドルの金利が高いことだけを示せば、 ・事情を知らない素人相手や、高齢者を相手とする運用では、詐欺に 近い。(注)営業の本人も、詐欺に近い行為とは知らないのかも知れま せん。 2000万円から3000万円の円預金は、65歳以上の高齢者に多いので、高 齢者が顧客でしょう。 18ページになったので、中編の増刊(有料版、無料版共通)は、ここ で送ります。<金コモディティペッグ通貨のレートが、金とコモディ ティのバスケット価格と一致する仕組み>から、後編の水曜正刊とし ます。 ■12.後記・・・ 新著、『金利と通貨の大転換(352ページ:税込み2420円』で論理的に 詳述しました。 アマゾンでは、11月1日から発売です。大手書店では、11月2日からと いう。現在、財政学とマクロ経済では、ベストセラーの3位になって います。昨日まで1位でした。この順位はあまり誇れませんね。 速攻ならアマゾンのKINDLEのアプリ(無料)で読める電子本も出され ています。3日前、ダウンロードして、確認しました。 当方は、アマゾンプライムの会員なので無料でした。会員でないとき は、紙の本と同じ2420円がかかります。今回の電子版は、紙と同じ縦 書きでよくできています。写真と図式の配置は適当です。 比較すれば、電子版が、なぜか、速読できます。スマホ、i-PADでも OK。温泉宿で読むのも風情でしょう。温泉の中では禁止か? わから ない。 自薦ですが、2024年以降を生きるための購読をお薦めします。たぶん、 「目からうろこ」です。メディア、エコノミスト、学者が、通貨の秘密 を知らないからです。 インターネットのブロックチェーンの、デジタル認証の仕組みと意味 を解説できる人もマレでしょう。 2000年ころに作った、当方の、社員が2人の超零細企業(確か資本金は 600万円だったか)はシステムズリサーチです。 システムの研究機関の意味ですが、主任研究員は1人です。 方法はデータの数理分析と論理。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【プレミアム読者アンケート&感想の、項目のメド】 1.内容は、興味がもてますか? 2.理解は、進みましたか? 3.疑問な点は、ありますか? 4.その他、感想、希望テーマ等 5.差し支えない範囲で、横顔情報があると、テーマ設定と記述の際的 確に書くための、参考になります。 気軽に送信してください。感想は、励みと参考になり、うれしく読ん でいます。質問やご要望には、可能なかぎり回答をするか、あとの記 事・論考に反映させるよう努めます。 返事や回答ができないときも全部を読み頭に入れたあとと。読者の感 想・意見・疑問・質問は、考えを広げるのに役立ちます。 著者のメールアドレス:yoshida@cool-knowledge.com 購読方法と届かないことに関する問い合わせは、ここにメール(↓)。 配送の管理は、著者ではなく配信サイトの「まぐまぐ」が行っていま す。著者は、どこに配信されたか、わからない仕組みです。R行 ader_yuryo@mag2.com ■1. 新規登録は、最初、無料お試しです(1か月分)。その後の解除 は自由です。2か月目から、消費税込みで660円が課金されます。 (1)『会員登録』で支払い方法とパスワードを決めたあと、 (2)登録方法を案内する『受付メール』が送ってきて、 (3)その後、『購読マガジンの登録』という、安全のための2段階の 手順です。 【↓まぐまぐへの会員登録と解除の、方法の説明】 http://www.mag2.com/howtouse.html#RSegist 登録または解除は、ご自分でお願いします。 著者は、登録、解除を行うことができません。 (有料版↓) http://www.mag2.com/m/P0000018.html (無料版↓) http://www.mag2.com/m/0000048497.html 購読方法と、届かないことに関する問い合わせは、ここにメール (↓)。配送の管理は著者ではなく、配信サイトの「まぐまぐ」が行 っています。著者は、どこに配信されたかわからない仕組みです。 reader_yuryo@mag2.com 登録または解除は、ご自分でお願いします。 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