日銀のインフレ・ターゲットと今後の展開
Written by admin on 2012年2月29日 – 09:00
おはようございます。3月9日夕刻の東京での講演会には、多数の方の申 し込みをいただき、ありがとうございます。さっきまで、レジュメをま とめていました。多くの方が戸惑う『マネーの本質』の章です。 事業、仕事、生活もすべてに、お金が関係します。財布の1万円札(現 象)を穴が空くように眺めても、日本銀行券と印刷しているだけであり 、マネーの意味(本質)は分からない。「これは一体何か?」と思うの が当然です。 ▼現象と本質について 「現象と本質」という、ギリシア時代からの考えの対立があります。現 象はわれわれが目にし、聞き、匂いをかぎ、手に触れることができるも の。つまり五感の意識に対し「情報」になったものです。 他方、本質は、その現象の、真の姿を言うのが普通です。(注)フッサ ールの現象学では、本質はない、本質は現象の中に現れていると考えて います。現代哲学の主流の考えは、現象学の考えをもとにしています。 学生のころ、本を読んで、わけが分からず勉強したことです。 未だに、 ・プラトンの言う本質論(観念論)が正しいのか、 ・現象学であり、物を測定する科学にも通じる唯物論が正しいのか、分 かりません。 分からない理由は、われわれの「考え」がある(=存在する)からです 。考えは物ではない。形がない。コトバ、観念、想念、想像力です。愛 も感情も信念も、目に見えて触れることができる物理的なものではない のですが、内感では確かに、存在します。これ以上言えば、本一冊に長 くなるのでやめます。 古来、世界の人類が追求し、考え続けていることですが、決着はついて いません。たとえば、13億人のイスラム教徒(ムスリム)が、固く信じ る神(アッラー)の存在です。 この神には、誰も、会った人はいない。つまり現象ではない。人の観念 (考え)の中に、存在しています。(注)実在だったマホメッド(ムハ マンド:西暦570年~632年)は、神の言葉を預かった預言者です。神で はない。 以上、現象と本質です。「美」も本質に属するものでしょう。「美しい 花がある。しかし美(そのもの)というものはない。(小林秀雄)」で す。小林も、ここでは、現象学を言っています。美そのものは、考えの 中のものです。 ▼マネーの本質は、危機のときに見える 歴史を周期的に襲う「危機(クライシス)」という時期があります。確 固たるものに見えていた既存のものが、つぎのものに向かい、壊れて行 く。 金融事業も含む、260万社のうち約1/3の会社、そして政府が、現在、 これでしょう。いずれも、壊れる原因はマネーの不足、つまり損失と負 債からです。 半導体のエルピーダの倒産は、シンボリックに思えます。今後数年(2 ~5年)で、同じような会社が、多数生じるという意味です。 1/3が壊れるという理由は、260万社のうち72.8%(190万社)が税務 申告上での赤字だからです(国税庁:08年)。1年だけの赤字ではない 。長年の赤字法人が、190万社のうち100万社はあるでしょう。 100万社÷260万社=38%です。約1/3の会社が、今後つぶれるというだ ろうという意味がこれです。 赤字の会社では、仕入代金、給料、経費を支払うお金が不足しています 。不足するお金を、銀行から借りるか、資産を売るか、経営者が出さな い限り、いずれつぶれます。 金利を払う預金を使う銀行の貸付は、企業が黒字、あるいは黒字転化の 確実な見込みがないと、出すことはできません。資金が不足している赤 字企業からは、銀行は過去に貸していた融資残を、回収せねばならない 。もともとお金がないところからの回収です。 経営者が、個人資産からお金を出せない企業と、資産が多く残っている ところ以外は、3年くらい赤字が続くと、よほどのことがない限り存続 できません。以上の意味での100万社です。 【返済猶予の特例は、2013年3月が期限】 特例の、赤字企業に対する中小企業円滑化法(中味は返済猶予)では、 286万件(実に多い)に対し、金額は73兆9121億円です。 一件平均で2600万円の返済が猶予されています。その間も金利はついて います。中小企業は、社員・パート雇用の70%を占めます。 法人だけではなく、個人事業も含みますが。関東で120万件、中部で41 万件、近畿で34万件です。すごい数の会社が、返済猶予を申し込んで、 受けています(東京商工リサーチ)。2012年3月が期限だったのですが 、震災後で、とてもムリだと1年延長されたのです。 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111228-00000007-rps-bus_all あと1年で、返済ができるように利益回復があるのかと言えば、ほぼ80 %の会社と個人事業においては難しいでしょう。返済猶予分を返すには 、利益しかない。どうなるのか・・・敢えて言いますまい。 わが国のGDPが増えない期間が、数年と長いと、このように、1/3の 法人が、近々、つぶれることになってしまうのです。 http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2010/kaisha_hyohon/pdf/H21.pdf ▼中央銀行の、信用から生まれる紙幣 中央銀行は、「信用(=観念上のもので無形)という無から、マネーを 印刷」できます。法定通貨あるいは管理通貨、または紙幣ともいう。 紙そのものの価値(=印刷費)は、22円です(日銀)。この紙を、なぜ 、日銀券と印刷して、10000という数字を記すだけで1万円の購買力をも つと人々が考えるのか? 人々の観念上の(無形の)、信用があるからです。この信用は、他の人 が信用するから、自分も信用するという「信用の無限連鎖」しかない。 日本(共同体)を離れてアラブの村に持ってゆけば、円は信用されませ ん。 日銀の白川総裁がついに言った「インフレ・ターゲット1%(目標)」 は、2つの意味をもちます(12年2月)。 (1)現在0%(前年同月比:11年12月:総務省家計調査)である消費者 物価の上昇が、1%になるまで、日銀が、政府から直接または債券市場 から国債を買い続け、紙幣を増加印刷して、政府と銀行に貸す。 http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001085751 (2)消費者物価が1%に達する気配が見えたら、今度は、買った国債を 債券市場で売って、銀行から日銀がマネーを吸収し、金融を引き締める 。インフレ・ターゲットは、物価が目標に達する気配になると、引き締 めをするということの宣言です。 現在、消費者物価の上昇は0%ですが、卸売り価格を示す企業間物価は 、すでに、1.7%の上昇です(2011年11月)。中長期で言えば、08年+ 3.1%(原因は資源価格高騰)、09年-5.2%(原因はリーマンショッ ク後の不況)、10年+0.7%であり、2011年は1.6~2.6%の上昇です 。(日経新聞、月曜の経済統計) 原油、LNG(火力発電に使う天然ガス)、金属、穀物を含む資源価格の 高騰があると、企業間物価はすぐ上がります。 企業間物価が1.7%上がっているのに、店舗の消費者物価が0%という ことの意味は、小売業が、平均で1.7%昨年より高く仕入れたものを、 昨年と同じ売価で安く売っているバーゲンを示します。これは、長続き はしません。 (注)今のところは、日銀の白川総裁は、米国FRB(バーナンキ議長) のように、「インフレ・ターゲット2%とあからさまな嘘」を言い、同 時に「バランスシートの、時価の偽装」はしないと思えます。FRBの公 表バランスシートには、かねてより疑念があります。秘密裏にドルを刷 っているように思えるのです。 http://www.federalreserve.gov/releases/h41/current/ 米国の消費者物価は2011年で+3.1%の上昇、2012年1月は+2.7%( 前年比)です。消費者物価が直近で2.7%上がっているのに、インフレ ・ターゲットを2%とすれば、FRBは金融引き締めを行わねばならない。 ところが、米国債と住宅証券(MBS)を、直接に、あるいは金融機関か ら買い受けて、マネー印刷と金融を緩め続ける。これが、誰でも分かる 、あからさまな嘘です。 この嘘を言う理由は、米国の金融機関に、再び、08年9月のリーマンシ ョック時期に似た、重大な資金不足が生じていることです。こうした事 情は、言うまでもなく、欧州も同じです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <580号:日銀のインフレ・ターゲットと今後の展開> 2012年2月29日号 【目次】 1.米欧では、PIIGS債より、 住宅ローン債権の下落がはるかに大きな問題 2.銀行・金融機関・ファンドが抱える不良債権の基本性格 3.PIIGS債に対するCDSが、 (事実上)無効化された(2011年12月) 4.日経平均の上昇は? 5.日銀のインフレ・ターゲット1%の本当の意味と、展開予想 6.展開の結論 7.政府は、ほぼ50%の国民からは、信用を失っている 【後記】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.米欧では、PIIGS債より、 住宅ローン債権の下落がはるかに大きな問題 ▼米欧の、住宅ローン債権の大きさは、想像を超える 米欧の住宅ローン証券は、米国で1000兆円、欧州でも1000兆円と国債並 に巨大です。約200兆円のローンのわが国と、根本的に違います。米欧 の平均住宅価格は、2007年のピークの約50%に下がっていて、まだ底打 ちせず、下落しています。 推計で、米国で約500兆円、欧州でも500兆円分の住宅ローン債権が、住 宅価格が上昇に転じないと不良化に向かうという事情があります。これ が、米欧の金融機関の、合計で1000兆円の「見込み含み損」です。 住宅証券の、売買市場の消滅がこれを示します。市場が消えているので 、時価も分からない。MBS(不動産ローン担保証券)の売買価格は、額 面の43%です(昨年のFT紙)。 これに対する、FRB、ECB、及び政府発表はない。従って、マスコミ報道 もない。日本のバブル崩壊期(1991年~1997年)に、不動産の値下がり による金融機関の損失集計が、5年は遅れたことと同じです。そして、1 997年からの金融危機でした。 ▼まだ、金融危機の第一幕に過ぎない 現在の米欧は、金融危機の第一幕(日本に対比すれば1995年頃の時期) に相当します。回復には、今後5年間はかかるということの根拠がこれ です。 端的に言えば、米欧は住宅価格が、上昇に転じる時期(ほぼ数年後、5 年か?)にならないと、金融機関の巨大損があるため、金融・経済の回 復はないのです。 ▼危機の本命は、住宅ローン証券 住宅ローン債権の不良化に比べると、PIIGS債(約200兆円)の不良債券 の問題は、小さい。ここを見ておいてください。予想は住宅価格ですか ら容易です。→S&P Case Shiller Home Indicesと入れて、googleで検 索してください。 サイト名を載せれば、以下のようにとても長い。インターネットエクス プローラでは、アーカイブの階層が深いためか表示ができず、アップル のサファリなら見えます。 S&P Case Shiller Home Indices 【ケース・シラーの住宅価格指数】 2010年の半ばは、FRBのマネー供給で若干回復したものの、2012年にな って、平均住宅価格で、-4%の前年比に落ちています(全米20都市)。 英国を含む全欧の統計はありませんが、平均価格の動きは、米国とほぼ 同じと見ていい。 08年9月からの、米欧の金融危機では、以上の住宅価格が本命であるこ とを認識しておけば、長期判断(向こう3年)で誤ることはありません 。 このため、2012年になってからの米欧の株価の上昇(約10%)は、ECB が50兆円、FRBが(覆面介入で不明額)マネーを供給した過剰流動性に よる一時的なもので終わります。 ●1000兆円の住宅ローン債権の不良化という、埋めきれない落とし穴が ある「藁(わら)の上」での、株価上昇です。この藁が、中央銀行のマ ネー供給です。 2011年の夏には、「藁の上の回復だった」と言われたのですが、再び、 同じです。 ケース・シラーが示す住宅価格が、2年間に渡って回復(合計で15~20 %上昇)する時期が、本格的な回復です。向こう5年間はこれがないで しょう。 2010年央のように、数ヶ月は上がっても、2012年のように下がれば、元 の木阿弥(もくあみ)です。 ■2.銀行・金融機関・ファンドが抱える不良債権の基本性格 不良債権は、(日本の、バブル崩壊の時期のように)、いつも、現在進 行形です。このため、「現在の認識」は、最短でも1年後です。 ▼飛ばせば・・・ 加えて、金融機関は全部が、時価の損を隠すので(あるいは子会社に飛 ばすため)、数年間は分からない。 オリンパスのように10年、20年後に、隠しきれなくなって、露見します 。これが、不良債権の基本性格です。 対象資産が6京円と、世界の実物金融資産(1京5000兆円)の4倍に膨ら んでいるデリバティブの損も、相手と談合し、決済期間を伸ばせば、隠 れたままにできます。事実、現在、この飛ばしが行われています。 各社から預かった2000億円の企業年金を、タックス・ヘイブン(租税回 避地)のケイマン島を本拠に運用し、ついに1800億円の隠しきれない損 が露見した日本のAIJ(投資顧問業)と似ています。 こうした損は、ひとりAIJのみではない。世界に8000本はあるファンド の、ほぼ50%(4000本)に同じでしょう。AIJのような90%もの損とは 言いませんが、AIJだけが大損をするというようなことは、金融市場で は起こりません。 毎日の市場でプレーヤーの50%が損をし、50%が儲けるのが、金融市場 です。世界のヘッジファンド(元本$2兆:180兆円)は、合計で、2010 年に対し2011年は6.3%の損をしています(英エコノミスト誌 巻末統 計)。 ヘッジ・ファンドの運用総額は、先物やオプションを混ぜて、10倍と低 く見たレバレッジ倍率としても、1800兆円でしょう。30倍や、国債の先 物では、最大で100倍のレバレッジを掛けるファンドも多くあります。 ▼CDS(保証保険)の事例 デフォルト時だけではなく、債券相場の下落のときの、保証にも使える CDS(債券の額面の回収を保証する保険:デリバティブの一種)は、金 融機関2社の、「相対(あいたい)」での取引です。株のように毎日価 格つく公開市場は、ありません。 (注)MBS(不動産ローン担保証券)、RMBS(住宅ローン担保証券)、A BS(資産担保証券)、CDO(Collateralized Debt Obligation:債務担保証 券)も、保証し合う相対取引の性格は、CDSと同じです。 CDSの引受けでは、巨大損失を抱えた金融機関Aが、B行に対し、「決済 日の3ヶ月または6ヶ月延長(=飛ばし)」を申し入れ、B行が承諾する ことが、日常茶飯事に行われています。 B行も、A行に対し、別のCDSで同じような損を決済せねばならないこと が多いからです。 ●中味の公開がない相対取引の、CDSがかかった債券は、世界で$46兆 (3680兆円)です。保険料の価値は、$1.3兆(104兆円)です。2011 年6月、国際決済銀行BISの集計です。 価値の$1.3兆は、債券額面に対し、[$1.3兆÷$46兆=2.8%]の 平均保険料がかかっていることを示します。 具体的に言えば、1兆円の額面の債券を保証してもらうのに、280億円/ 1年を、保証を引きうける銀行・保険会社・ファンド(カウンター・パ ーティーという)に払っているということです。 このCDSの全体をわかりやすく言えば、 ・金融機関の間で払われた、期間1年の保険料が104兆円であり、 ・3680兆円の債券の保証を引き受けている金融機関の保険料収入が104 兆円ということです。 この3680兆円(額面)には、世界の国債、社債、株、住宅証券などあら ゆる、回収権をもつ有価証券が含まれています。一番大きなものは、国 債と住宅ローン証券に関連したものです。 ●世界の金融機関で、保証保険のCDSだけも、104兆円もが受け渡しされ ています。 このため米欧の金融機関の利益は、どんなに利益が上がったと言っても 「まるで信用ができない」。その裏には、3680兆円もの、バランスシー トに表示されていない保証債務があるからです。 104兆円の保険料(保証期間1年)の支払いや受け取りに対し、主要銀行 の5000億円の利益などは、はるかに小さい。 CDSがかかった3680兆円のうち0.03%に過ぎないのが1兆円です。 この1兆円の保証債券が、デフォルトするだけで、突然、額面の50%つ まり、5000億円くらいの支払義務が生じるからです。(受け取って利益 計上していた保険料平均は280億円です) 米欧の金融機関は、バランスシートには公開されない膨大な保証債務( 合計で3680兆円:世界のGDP 5000兆円の64%に相当)を負っています。 日本の金融機関も含まれますが、その額は、米欧に比べれば少ないでし ょう。 http://www.bis.org/statistics/otcder/dt1920a.pdf ■3.PIIGS債に対するCDSが、 (事実上)無効化された(2011年12月) 事実を言えば、PIIGS債(事実上はデフォルトのギリシア債)に対するC DSの決済は、EU政府の特別の要請で、発動されていません。 これは、CDSの決済日を、(いつまでかは不明ですが、目処がつくまで は)延長したということです。事実上、永久無効化の宣言です。 このため、PIIGS債を数兆円もっていても、CDSを掛けているから安心と していた金融機関とファンドは、パニックに陥りました。 これがユーロ債の投げ売りになって、2011年12月、1月のユーロ安(1ユ ーロ95円:12年2月29日は108円付近)でした。 12年2月にユーロが上がったのは、EU当局が、欧州の銀行救済はどこま でも行うと言ったことへの、市場の期待からです。 (注)本来、ECB(欧州中央銀行)がユーロを刷って貸すということは ユーロの通貨価値を下げることです。ユーロ安の要因ですが、市場には 、それを考える余裕はないと思えます。 【相場の、約10%の上昇の原因】 ヘッジ・ファンドも、2011年に蒙っていた債券投資の含み損を埋めるた め、 (1)株式先物での株の買い、 (2)通貨のオプション買い、 (3)資源先物買いを、発動しています。 このため、2月は日米欧の株価が上がり、再び資源価格が上がっていま す。 WTI(ニューヨーク市場で売買されるテキサス産の、硫黄が少ない高品質 原油)は、12年2月1日は、$96付近でした(159リットル=1バーレル) 。2月28日は、$107付近です。1ヶ月で11%の高騰です。 これも、ヘッジ・ファンドの先物買いです。ほぼ3ヶ月の後の限月(げ んげつ)までには、買い越しの反対の売りがあります。相場が3ヶ月サ イクルで動くことが多いのはこのためです。 金も、1グラムで4889円(5%の消費税込み)へと、年初(1月19日:439 9円)に比べ、11%上がっています。これも、ヘッジ・ファンドの先物 買いと、中国政府(人民銀行)による買いのためです。 【救われた米銀】 米国の銀行は、PIIGS債のデフォルトがあると、決済すべき100兆円を抱 えています(事実)。100兆円は、米国の主要銀行の自己資本を、全部 、吹き飛ばす規模です。 額面100兆円のPIIGS債が、最終的に50%の清算価値に落ち着いても、50 兆円を米国の銀行が払わねばならない。 このため、EUと米国は、協調してCDSを飛ばしたのです。損をしたのは 、保険料を払いCDSを掛けていた欧州の金融機関です。 (注)PIIGS5ヵ国の国債残は、356兆円です。そのうち100兆円に対して は、米銀(どこかは公開がないため不明)が、100兆円のCDSで保証を引 きうけています。残りの256兆円に、どれくらいCDSがかかって、どこが 引き受けているかは、欧州当局も、不明としています。 AIJも、PIIGS債の保証引き受けで保険料を受けとり、混じっているかも 知れません。CDSは、独立した金融商品として、PIIGS債の保有に無関係 な、日本の金融機関・ファンドも作成して売ることができます。 債券額面の5%の保険料(仮に10億円)で、100%の額面が保証されれば 20倍(200億円)になりますから、魅力と感じるところも多いのです。 これがCDSです。 ▼保険料を払ってかけていたCDSが無効になって、 PIIGS債のリスクにまともに晒された欧州の銀行 まさかのときのため掛けていたCDSが無効になれば、保険料を払ってい た欧州の金融機関にとって、「たまらない事態」です。 世帯で言えば、突然に政府が、30年も保険料を払ってかけてきた生命保 険を、保険会社の救済のために無効とするという命令を発動したことに 等しい(事例)。 この政府命令で、欧州の金融機関は、急に、PIIGS債の下落損(約50% )を、まともに損失計上せねばならなくなったのです。 米国の金融機関は、PIIGS債の保証をする必要がなくなって助かります 。しかし、他方では欧州の金融機関が、米銀の代わりに信用危機に陥り ます。 米銀は、保険料(100兆円の保証債券に対し推計5兆円)の「まる得」で す。この保険料5兆円が、米国の銀行の、2011年の利益として計上され ています。5兆円は、銀行利益として計上されることが多い5000億円の1 0倍です。 米欧の銀行の損益計算書と、貸借対照表は、その内容が公開されない保 証保険のCDSと、他の、損失飛ばしもできるデリバティブ(MSB+RMSB+ ABS+CDO)によって、わけのわからないものになっています。日本の金 融機関は、米欧ほどではない。推計では米欧の銀行の1/3くらいでしょ うか。 端的に言えば、利益も損も、「大きな嘘」です。 嘘も、皆が同時につけば、嘘でなくなると見なされます。 無謀なことを言っているように感じられる向きもあると思います。 しかし、以上に対し、「論理的に反論ができる金融機関」はないはずで す。ただし、自行は該当しないと言えるところは、少数は、あるでしょ う。 【現象】 このCDSの無効化のため、欧州ECB(中央銀行)は、 (1)欧州の金融機関に対し、2011年12月に、主にPIIGS債の下落損のた め不足していた5000億ユーロ(50兆円)の緊急貸付をし、 (2)2012年に、PIIGS債と住宅証券で、追加の資金不足が生じれば、期 間3年間で、「いくらでも資金を出す」と、公言しています(2012年2月 ) 【本質】 5000億ユーロは、欧州の銀行(91行)に2011年12月時点で必要だった金 額に見合うものです。つまり、決済を迫られていたということです。 2012年は、「無制限救済(=マネーをどこまで刷ること)」の宣言です 。かつて言っていた「2%のインフレ・ターゲット」はきれいに消えま した。ユーロは、すでに、15ヵ国平均で2.7%のインフレだからです( 2012年1月)。 2%のインフレ・ターゲットなら、ECBは、インフレが2.7%なので、本 当は金融を絞らねばならない。(注)インフレ・ターゲットは、元来は 、高いインフレ率を抑えるための、金融引き締めでした。 ユーロ15ヵ国は失業が10.4%(11年12月)です。ギリシアは20.9%の 失業(日本の4.6%の5倍)で、スペインは22.9%です。イタリアは8 .9%です。失業が多く、世帯の賃金が下がるのに、店頭の物価は上が るという最悪の経済になっています。 買っていた住宅と給料がたとえば10%下がるのに、店頭物価が平均で2 .7%上がる経済を想像してください。生活苦になります。このため、 幕末の一揆に似た暴動が起こっています。(注)日本の数年後でしょう か・・・・ こうした中で、ユーロ当局は、金融危機を避けるためマネーを刷ってイ ンフレ昂進策です。マネーを刷ってから、消費者物価までがインフレに なるのは、普通、ほぼ2年後ですが(経済の歴史的な事実)、資源価格 の高騰が加わると、過去のオイルショック(1973年と1980年)のように 、数ヶ月と早くなります。 (注)わが国の1456兆円のマネー・ストック(2011年12月)は、現物金 融資産(金融機関と中央政府を除いて、民間がもつ現金+預金+投資信 託+国債+外債)を示します。広義の流動性とも言い、買い物や投資に すぐ使うことができるマネーです。 これらのマネーが、名目GDP(467兆円:2011年12月:内閣府)に対 して3年分です。つまり、年間1/3回転(マネーの流通速度)です。こ のため、中央銀行のマネー印刷が、民間のマネー・ストックを増やし、 それが実際に使われるには、1年はかかります。このため、資源の高騰 がないとして、ほぼ2年後からインフレになります。 【今後】 欧州のEU(経済連合27ヵ国)の金融政策では、各国の国会の承認が必要 になります。このため、「EU当局が、行うと言ったことも、実行ができ ない恐れ」があります。(注)ユーロは、EU27ヵ国のうち17ヵ国です。 PIIGS国債への対策をシンボルにしたEUの金融対策が、この2年、矛盾し たことを言いながら迷走しているのは、これが理由です。 「統一政府が計画は作ったが、主要国の国会承認が得られず実行ができ ない」ということになることが多いからです。27ヵ国の経済連合である 欧州政府は、ねじれ国会を抱える連立政権のように、運営がやっかいで す。 お金を出すことができる唯一の国であるドイツの国会は、PIIGSに資金 を貸しても、返ってはこないと反対しています。このため、最後の手段 、ユーロ中央銀行(ECB)のユーロ印刷になったのです。2011年の秋ま で、ECBは、ユーロの価値を下げることになるPIIGS支援には、消極的で した。 ねじれ国会と、民主党内の離反のため、言っても実行ができない日本政 府の、 ・消費税の増税計画、 ・及び社会福祉一体改革と同じだと言えば、わかりやすいでしょうか。 日本も、結局、日銀の「買い受け基金(65兆円枠)」による、株買い、 社債買い、そして国債買い(2012年の予定額40兆円)になっています( 2月14日) 消費税の増税(といっても、10%なら11兆円しか増えない)までつなぎ でしょうか。 他方、政府の一般会計だけの赤字でも、1年に40~50兆円はあります。 消費税換算で言えば40兆円で33%です。増税恐慌になって、とてもムリ です。 ■4.日経平均の上昇は? 日経平均が、年初来ほぼ10%上昇した理由は、2つです。 (1)日銀の、「買い受け基金(現在は65兆円の枠)」による、覆面で の株式市場への介入、つまり、価格維持作戦(PKO)、 (2)損失回復を目指す、海外ヘッジ・ファンドの、株価先物買い。 2012年1月、2月の主体別の株の売買を見ると、買い越しているのは、相 変わらず、ガイジン・ファンドだけです。 国内の投資家は、変わらず売り越しです。ガイジンの売買額が60~70% を占めていて、日本の株価は、ヘッジ・ファンドが動かしています。 http://www.tse.or.jp/market/data/sector/b7gje6000000jkrj-att/J_stk2_120203.pdf 先物の買い越しは、限月(3ヶ月から1年内)までには、買いと同額の売 りになることに注意が必要です。 「押し目買いだ」と推奨する記事をインターネットで見かけます。押し 目買いとは、上昇傾向にある株(または他の相場)に、下がった時点で 、買いを入れることです。相場が少し上がると、いつもこうした書きこ みが増えます。 株式投資と他の相場では、「誰が買って上げているか?」を常に見てお くことが必要です。(注)国債相場も同じです。 買いの主が、海外ヘッジ・ファンドの株価先物買いなら、ほぼ3ヶ月後 (限月の平均)には、買いと同額の売りになることを注意せねばならな い。 こうした、主体別の売買動向を無視し、価格変動の罫線だけを見た連れ 買いは、危険です。(注)買うなら、ヘッジ・ファンドと同時期でなけ ればならない。先駆けねばならないのです。 株価を含む相場商品は、買いが増えれば上がる、売りが増えれば下がり ます。価格の理由は、たったこれだけの単純なものです。従って、買い の資金源と主体は何か、これを見ておかねばならない。 損をし続けていても、その後に儲かった。儲かった後が危険なのが、相 場商品の売買です。利益が出ると、普通の人間の共通心理(行動経済学 )は、また買いたくなるからです。 ●相場の投機は、「捨ててもいいお金があるとき」、心に余裕をもって 、行うことが鉄則です。余裕がないと慌てて売買し、損をすることが多 いからです。 信用買いや余裕がないお金で損をすると、切迫した心境になって、リス クを狙い、更に多くの損をすることが多い。相場は、自分の心理との戦 いです。 ▼相場の真実 相場の真実を言います。 大きな金融会社で、普通の人より先に、多くの情報を得ることもできる プロのファンド・マネジャーまたはトレーダーでも、 短期売買で1000回の売りと買いをし、 ・550回勝って、 ・450回の負けなら、大成功です。 逆に450回勝っても、550回負ければ、大きな損になり、時には解雇され ます。50:50のギリギリのところで、運を天に任せると言える勝負を行 っているのが、プロフェッショナルのトレーダーです。これが真実です 。 2011年の、8000本のヘッジ・ファンドの合計損6.3%がこれを示す事実 です。(注)先物やオプションを使えば、全体相場が下がる時でも、利 益は得られます。全体の相場が下がったから、自分のファンドも損をし たと言うのは、言い訳に過ぎません。 2011年だけではない。有史以来、常に、いつも(敢えてしつこく言いま す)、プロが運用するというヘッジ・ファンドや投資信託の合計利益と 損は、相場の平均指数(日経平均やS&P500またはFTSE300)程度でしか ない。 相場の平均より、年間を通じて20ポイントくらい高い利益を上げるファ ンドも10本に1本くらいはありますが、その裏では、20%、30%損をす るファンドが存在します。 こうした事実の中で、100回の売買で60回勝ち、40回しか負けないとい うことが1年だけではなく、その後も続く本当のことなら、利益が喉か ら手が出るくらい欲しいヘッジ・ファンドが、年収1億円、あるいは10 億円でスカウトに来るでしょう。 理由は、「60回勝ち、40回しか負けないこと」を何年も続けるのは、あ り得ないことだからです。ごく稀に、単に幸運で、そうなる人は出ます 。 (注)勝ち負けは、相場の平均利益率(指数)に対してのものです。全 体相場が20%上がって、自分も20%の利益を出すのは、普通のことであ り、勝ちではない。 売買の回数を増やすと、平均相場に対し、利益50%:損失50%に限りな く接近します。 自分は特別の情報をもつという人もいます。その情報の出元を、調べる と、どこかのファンドが「高く売り逃げる目的」で、情報源を隠して流 したものであることが多い。デマ情報も多いのです。 ■5.日銀のインフレ・ターゲット1%の本当の意味と、展開予想 日銀が、2012年2月に過去の姿勢を転じたインフレ・ターゲット1%では 、「資産買い受け基金(65兆円枠)」での、40兆円の国債の買い(2012 年中という)が、もっとも注目すべきことです。 ▼本当のことを言えば・・・ 40兆円という金額を示したのは、国債で、40兆円の売り超を想定してい るからでしょう。日銀がこれを買い受けしないと、国債価格が暴落し、 金利が高騰するからです。 【ガイジンによる国債買いという、異常な動きが続いている】 この決定の背景は、前号でも述べたように、2011年の特に後半に、ドル 債とユーロ債を売って、代わりに日本国債を大きく買い越したガイジン ・ヘッジファンドの、「異常な動き」があったからでしょう。 2010年まで、ヘッジ・ファンドが長期債でも利回り1%を下回り、短期 債(3ヶ月債)ではわずか0.11%しかない日本国債を買いこ越すことは なかったのです。 買い超しの額は、債券では満期になった短期債の償還が混じるので、年 間売買額から推計するしか方法はありません。当方の試算では、30兆円 と見ています。(注)小さな記事の新聞報道では20兆円くらい。 【従来の常識は、すでに2年は古い】 従来の、日本国債の保有では、国内投資家(郵貯、簡保、銀行、保険会 社)が94%であり、ガイジンは6%に過ぎない。このため、ガイジンが 売り崩すことはできないとされていました。 この常識は、2010年までものです。2011年は、主体別に見た国債市場の 売買状況が、大きく変わっています。 ▼最新のデータで見れば 手許に、直近の2012年1月の、「国債投資家別売買」があります。集計 したのは、日本証券業協会です。 http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/toushika/tkbk/index.html 簡略化して示します。(2012年1月:「国債投資家別売買」:2月20日発 表)。大きく示すため、敢えて1000億円単位で四捨五入しています。元 資料は、上記でダウンロード(ファイルはエクセル)してください。元 の表は、分かりにくいものです。 【2012年1月:長短国債の、投資家別売買】 売り 買い 結果 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 国内金融機関合計 24兆円 36兆円 買い超は12兆円 ガイジン 8兆円 20兆円 買い超が12兆円 政府部門 35兆円 10兆円 普通は売り超になる。 仲介債券ディーラー 64兆円 63兆円 売買額は均衡する その他 4兆円 0兆円 4兆円の売り超 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 合計 131兆円 129兆円 (注)売りと買いの合計は、先月末日からの繰り越しと、次月への繰り 越しがあるため、上記のように1ヶ月で切ったときは一致しないことも ある。 政府部門は、毎月、新規国債と借り換え債を売って資金調達しています から、売り超になるのが普通です。ここが買い超になったときは、日銀 の、数十超円規模の買いです。 買い超は、国内金融機関が12兆円です。注目すべきは、3大メガバンク (三菱、みずほ、三井住友)は、売りが15兆円、買いが14兆円です。も っとも資金量が多い三大メガバンクは、昨年からすでに、 ・保有国債を買い増ししない、 ・むしろ売る側に回っています。 これは、今後も変わらないと見ます。 【国内金融の買い超は・・・】 大きな買い超で目立つのは、信託銀行(買い11兆円:売り4兆円:買い 超が7兆円)のみになってしまったのです。信託銀行は、金融機関、フ ァンド、個人のお金を預かって、投資運用する機関です。 【ガイジン・ヘッジファンドの買い超が続く】 国内の買い手の穴を埋めるように増えたのが、ガイジン・ヘッジファン ドの買い超です。2011年に続いて、2012年1月だけも12兆円を買い越し ています。まだ、売りは8兆円と少ない。 ガイジン・ファンドの買いは、短期債(3ヶ月満期)がほとんどです。 長期債は買わない。国内の金融機関機関のような長期保有をする気はな いからです。 ■6.展開の結論 3ヶ月の短期債は、市場で売らなくても、買って3ヶ月後に満期が来たと き、政府は現金で振り込まねばならない。ガイジンが新たに買い越しを しないと、売ったことと同じになります。 もしこのガイジンが売り越しに転じたときは、大変です。 国内の金融機関の買いが、間に合わなくなるからです。 このため、日銀は、2012年に40兆円の国債を買うと宣言したのでしょう 。 以上の売買の実態は、言うことができないので、マスコミ向けの名目と して「インフレ・ターゲット」を言ったとしか思えません。 米国ブルムバーグは、日本国債の売買状況を、毎月報じていますが、日 本の新聞は、報じません。日本の金融にとって、最大級の変化なのに、 です。記者が、知らないのでしょうか? 資金不足から、1年に40~50兆円の国債を増加発行せねばならない財務 省は、ガイジンによる短期債の買いの動向に、もっとも懸念を抱いてい るはずです。 ●日本国債の買い超では、国内50%、海外50%になってしまったからで す。2011年から、日本も、海外に50%の新規債を売らねばならない米国 と同じになってしまっています。 国会では、2012年度の政府予算案で与野党の合意がとれず、財務省は、 12年3月を過ぎると、後で承認をとる「暫定予算」で行くことに決めて います。 本来は、11年の12月に、翌年度予算は決まっていなければならない。公 務員の給料、医療費、年金が払えなくなるからです。異常なことが、政 府予算にも起こり続けています。 ●ガイジンが買い越した国債を、日銀のみが買い受けるという事態にな るのはいつか? すごいことに、なってきました・・・・国内金融機関 の買いは、すでに、国債の売買額の50%に過ぎないからです。 1%の消費者物価のインフレになる前に、国債の金利が上がる感じがし ています。2011年のユーロの次は、円になるでしょうか。 円の後が、ドルでしょう。 日銀が、売られる国債を買っても、市場が決める国債金利が下がらない となると・・・・。想定される事態を書くのに、躊躇(ちゅうちょ)し ます。 ■7.政府は、ほぼ50%の国民からは、信用を失っている 消費税増税法案が、国会で通らない見込みがはっきりしたとき、ヘッジ ・ファンドは、PIIGS債で行ったように、日本国債の売り(現物売り、 空売り、先物売り、売りオプション)を仕掛けると想定できます。これ は、金融の常識です。 日本にも、PIIGSと同じように、政府の政治的なリーダシップに無力が あります。政治的なリーダシップは、政治家の資質ではなく、国民の支 持が与えるものです。 原発事故への政府対応で、コトバを失うようなひどい事態が、次々に、 明らかになっています。それとともに、内閣の支持率が下がっています 。 ただしこれは、すでに4月に、海外メディアは報じていたことです。当 方、3.11直後、いろいろ調べて8通くらいの緊急号を書きましたが、内 容を大きく修正すべき点は、見あたりません。細かい数値の間違いはあ ります。 国内の主要マスコミは、政府・東電が言うことを、書くだけでした。こ うして、国内の主要メディアも、国民からの信用を失ったのです。 他の人のように、御用マスコミとまでは言いませんが、3月からほぼ8月 頃まで、第二次世界大戦のときのように「大本営発表」を載せるだけに 近かった。部隊の壊滅が退進や転進であり、戦果は常に誇大でした。コ トバを言い換える・・・。 改めて思います。3月初春の、偏西風に助けられた。そして事故は、奇 跡的に、本当にギリギリのところで、蒙古襲来のときの神風が吹いたか のように、3000万人が避難すべき最悪(政府の言)が避けられています 。 誰でも知っていることですが、首相が昨年末に言った、「冷温停止で事 故収束」はまるで嘘です。 【2年以内の、4号機の危険】 格納容器の外にある、使用済の核燃料(1331本:原発一基の2.5倍)の プールに、亀裂があるとされる4号機には、度重なる福島中通りの余震 (震度3や4)からの、危険が残っています。 もっともひどく建屋が飛んで、骨組みになった4号基の水素爆発以後、 実際に、どの程度補強され、どれくらいの地震なら倒壊せずにプールを 保ち、大丈夫か、明らかにされていません。福島に大きな余震がないこ とを祈るだけしかできない。 ある人からは、4号機のプールは、下部の柱の支えも弱くなっていて、 ほぼ宙ぶらりんと言える状態と聞いています。東電がはっきり言わない ので、事実は分からない。記者の質問もない。東電は、補強が完了と答 えるだけです。福島の4基全部について、現在の耐震の数値がないので す。 万一、爆発後1年での、どこかのコンクリートの劣化から、弱い余震の 重なりであっても倒壊すれば、重金属の鉛のような重さの核燃料が地面 に散らばり、冷やせない。 こうなると、誰も近寄ることができない高い放射線になって、作業員も 逃げるしかない。一刻も早く、クレーンを作り、1331本の燃料を取り出 し、鋼鉄の容器(キャスク)に収めねばならない。今後の2年間、大き な余震がいつくるか、まるで予測不能だからです。 東電が12月21日に公開した中長期ロードマップ(収束計画)では、4号 基の使用済み核燃料を取り出すのは2年以内というあいまいな表現です 。まだ、時期はあいまいにしか言えないことを示しています。2ページ 目の右に示された図面にプールの下部がない。肝心なところが不明です 。 http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/111221c.pdf この国は、危機では神風が吹くのか・・・国債の危機での神風はあるの か。あるとすれば何か? 【後記:案内】 2月28日現在、東京講演の申し込みは、約180名と聞いていますので、ご 報告します。会場の席は、広くとるつもりです。明日、東京出張なので 、会場で、運行次第の打ち合わせをして来ます。 当方にも来た、申し込みメールのコピーを見ると、この有料版の読者の 方々が、最も多い感じです。多くの質問はほぼ共通です。今作っている レジュメ(現在約30ページ)に盛り込みます。50ページを超える感じな ので、資料編も作ります。 タイトルは『2010年代の、金融と経済そして個人の生き方』にしました 。 日頃はメールだけですが、お会いできるのを、楽しみにしています 。 それと、会場での講演の録音・録画は、個人使用の目的ならOKです。 ●期日と時間:2012年3月9日 午後6時30分開演~9時終了予定 会場:サンケイプラザ3階会議室:東京都千代田区大手町1-7-2 (地下鉄 大手町駅 徒歩1分:東京駅からは徒歩5分) 会費:1万円 (上記会場の受付で 申し受けます:領収証発行) ●申し込み方法:メール 宛先: nakajima@keymannet.co.jp アマゾンでは、三刷りが、昨日は欠品直前でほぼ10冊でした。 2月24日にあがった4刷りで、やっと間に合いました。 アマゾン(紙) : http://www.amazon.co.jp/ 紀伊国屋Web(紙+電子) : http://bookweb.kinokuniya.co.jp/ 楽天書店(紙) :http://books.rakuten.co.jp/ 廣済堂bookgate(紙+PDF版): http://www.bookgate.info/ セブンアイネット(紙) :http://www.7netshopping.jp/books/ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【ビジネス知識源プレミアム・アンケート:感想は自由な内容で。 以下は、項目の目処です】 1.内容は、興味がもてますか? 2.理解は進みましたか? 3.疑問点、ご意見はありますか? 4.その他、感想、希望テーマ等 5.差し支えない範囲であなたの横顔情報があると、今後のテーマ と記述の際、より的確に書くための参考になります。 気軽に送信してください。感想やご意見は、励みと参考になり、うれし く読んでいます。時間の関係で、返事や回答ができないときも全部を読 みます。共通のものは、後の記事に反映させるよう努めています。 【著者へのひとことメール、および読者アンケートの送信先】 yoshida@cool-knowledge.com ◎購読方法と届かないことに関する問い合わせは、ここにメール → reader_yuryo@mag2.com ■(1)新規登録は、無料お試しセットです(最初1ヵ月分): 有料版では、新規に月中のいつ申し込んでも、その月の既発行分は、全 部を読むことができます。最初の1ヶ月間分は、無料お試しセットです 。その後の解除は自由です。継続した場合に、2ヶ月目の分から、課金 されます。 (1)『会員登録』で支払い方法とパスワードをきめた後、 (2)登録方法を案内する『受付メール』が送ってきて、 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