特別号:結局、憑かれた資産バブルか(3)
Written by admin on 2013年5月17日 – 09:00
こんにちは、吉田繁治です。2013年4月下旬の有料版の2週分を、4 回に分けて、お送りしています。先週の金曜日と日曜日に送ってい ますから、今回は、3回目の分です。 (データ等、若干、変化したものは、書き換えています。) ▼上がり続ける株価は25%部分がバブル:今日の書き加え分 今日も、株価(日経225種の単純平均)は1万5085円と高い(5月17 日)。 1万5000円の大台を超えたのは、$1=100円を割った円安(現在102 円付近)のすぐ後、5月15日でした。 6ヶ月の株価上昇は、実体経済の面では、「円安→輸出企業の次期 予想純益増→PERは18倍でもOK→日本株買い」が背景です。 【海外からの買い超:8兆円】 「安倍ノミクス相場」の特徴は、海外(オフショア)からのガイジ ンによる、6ヶ月で8兆円の買い超(買い超=売り<買い)による株 価上昇であるということです。6ヶ月間、8兆円というのは、「珍し い」 【国内投資家の売り超:8兆円】 国内の個人、金融機関、投資信託、機関投資家、事業法人は、この 6ヶ月、一貫して、ガイジンが買い超の分(8兆円)も売り超です。 上がってきたので売って、過去の1万円~1万3000円で買った過去の 損を取り戻しているのが、国内の個人、金融機関、投資信託、機関 投資家、事業法人です。まとめて、国内投資家ということにします。 【長期の傾向】 日経平均で1万5000円という株価は、世界金融危機だったリーマ ン・ショック前(08年8月以前)のものです。 小泉内閣時代の2006年に1万5000円を超えて、1万6000円~1万7000 円付近で波動し、リーマンッショク後には、節目の1万5000円を大 きく割り、7500円にまで下がったのです(09年)。 2010年、11年、12年は、ほぼ8000円から1万円の間でした。これが、 2012年11月の8500円から、6ヶ月もほぼ一本調子で上昇し、1万5000 円(+76%)を超えたのです。 あらゆる相場と同じように、株も、買いの勢いが強ければ上がりま す。翌週も上がった後の株価に対し、買いの勢いが強ければ上がる、 翌月も、買いが多ければ、高騰した価格が一層上がる。こういうふ うにして、1ヶ月ほぼ10%(6ヶ月で77%)上がってきたのが日本株 でした。 【25%がバブルであることの証明】 この勢いは、バブル以外のものではないと見ます。 その根拠を言います。 円安を読み込んだ予想PERが、13年5月17日(今日)は、16.88倍で す。 日本で、証券会社が独特に使っている予想PERは、1株あたりに割っ た、次期予想純益(3ヶ月~1年後)に対する株価の倍率です。 (注)米欧で使われるP/Eレシオ(=PER)では、企業純益は実績 です。世界的には3ヶ月決算が普通であるため、P/Eレシオは、 「過去9ヶ月の純利益実績+現3ヶ月のほぼ確定した純益」で計算さ れます。P/Eレシオは、ほぼ実績PERと言っていいものです。日本 では、3ヶ月決算は、歴史が浅いためまだメドであり、実際は半期 決算、1年決算です。このため、実績PERは古くなるので、独特の予 想PERを使っています。 予想PERが16.88倍(225種の株価は1万5100円くらい)ということ は、東証1部の株価の総時価合計(438兆円:1720社分)に対し、こ の1720社合計の次期予想純益(税後利益)が、[438兆円÷予想PER 16.88倍=26兆円]とされていることを示します。 13年3月期の実績PERでは、現在株価は25.43倍です。つまり、東証 一部企業の、前年度純益は、[438兆円÷実績PER25.43倍=17兆 円]です。 http://www.nikkei.com/markets/kabu/japanidx.aspx この意味は、5月17日時点では、株式市場は、東証一部企業の合計 純益(税引後)を前年度17兆円から、円安で、26兆円へと53%増加 することを含んでいると解釈できます。問題は、53%の増益がある かどうかです。 一般に、半年から1年先の予想純益は、リスク率(15~20%等)で 割り引かねばならない。つまり26兆円の予想純益は、[26×(1- リスク率15%~20%)=21~22兆円]と評価せねばならない。 (注)企業側が、東証に「経営計画」の予想損益として出している 予想利益は、ほぼいつも、実績より希望的に大きいという傾向もあ ります。 現在の円安はどうなるか。これも、1年間の先まで言えば不確定で、 ±15%くらいのブレはあります。(注)ドル・円の、貿易の実需で 計算した[$1=85円]が均衡レートとされています。 東証一部企業の、次期予想純益を、市場が現在見ている26兆円では なく、リスク確率を見て22兆円とすればどうなるか。現在の時価総 額(東証一部)438兆円÷次期予想純益22兆円=予想PER 19.9倍に なります。 この予想PERの19.9倍は、ヘッジ・ファンドによる国際的な株式投 資の、現在のメドP/Eレシオ15倍より、4.9倍(25%)高い。 結論を言えば、現在の株価の水準1万5100円(日経225種)は25%、 3770円(約4000円)くらいは高く買われすぎです。妥当な価格は1 万1000~2000円くらいでしょう。 ただし、安倍政権(財務省)は、13年7月の参院選前の、株価の下 落はどうしても避けたい。従って、13年5月20日以降、6月に下がる 気配、具体的には、今まで8兆円を買い越してきたヘッジ・ファン ドが、利益確定のための売りに出ることが分かると、「日銀+年金 基金」を使った株の買いに出る予定です。 5月20日は、世界の、8000本(元本資金200兆円)の、オフショアか ら投資するヘッジ・ファンドの半期決算が多く集中します。このた め利益確定の売りの増加が予想されます。 日本株の売買の60%くらいを占めて、6ヶ月間8兆円も買い越してき たヘッジ・ファンドが、売り超に転じたとき、6ヶ月間8兆円も売り 越してきた国内投資家が、それを買い支えることは考えられません (個人的に買う人は別です。ここで言うのは国内投資家合計のこと です)。従って、買って価格を支えるのは、政府しかない。 政府が、14年4月から消費税を8%に上げることの実施をするには、 13年4-6期のGDPが名目でほぼ3%(年換算)、実質で2%は増えて いなければならないのです。4-6期のGDPデータが出るのは、8月で す。 つまり選挙までは、安倍政権は、絶対に、株価を下落させてはなら ない。こうした背景が、これからの株価にあります。 以上、今日(5月17日)に書き加えた、株価問題のプロローグです。 * 現在、わが国は、株高からの期待景気と、相変わらず低下している 賃金から、実体経済は不況という矛盾した状況があります。 250~270兆円台だった時価総額(東証一部:1720社)が、411兆円 (13年4月30日)へと60%も上がって、株主資産は、150兆円くらい 増えています。 1倍という、会社の解散価値を割る異常さが、常態化していた純資 産倍率(PBR:純資産額÷時価総額)は、1.46倍に上がりました。 (注)株価が、純資産に対するPBRで、1倍以下という事態は普通は あり得ない異常です。ところが、08年9月の後は、これが普通だっ たのです。 株価の上昇は、不動産の価格上昇と同じで、「資産効果」をもちま す。資産効果は、所得ではなく、所有する資産の価格上昇が、気分 を高めて財布の紐を緩(ゆる)めて、消費を増加させるものです。 全国百貨店(244店)の、美術・宝飾・貴金属の売上が、この数年 では珍しく、昨年比で15%くらい増加していることが、典型的な資 産効果です。日常消費財ではない、贅沢品です。 株高を典型的に示す、百貨店の紳士服の売上も、前年比+8%です。 百貨店の紳士服の売上が増えるときは、株が上がっているときです。 13年3月の、百貨店の全体売上では、5447億円、前年比+3.9%で す。株価上昇の資産効果で、特に大都市部の百貨店が売上増です。 3%は下がっていた百貨店の売上の、増加です。 http://www.depart.or.jp/common_department_store_sale/list わが国で、大なり小なり株をもっているのは、都市部の住まいが多 い700万人(700万世帯:総世帯の12%)です。 【わが国の純金融資産での階層(07年)】 下記の純金融資産は、金融資産から住宅ローン負債などの、世帯の 借金を引いたものです。以下の富裕者には、個人事業主を多く含み ます。金融資産は、現金、預金、生命保険、投資信託、株式、社債 等の債券です。預金の割合が、ほぼ50%を占めています。株は7% と少ない。(注)米国では世帯の金融資産のうち、ほぼ50%が株で す。 純金融資産額 世帯数(構成比) 純金融資産 世帯平均 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 純資産5億円以上 6.1万世帯 65兆円 10.6億円 1億~5億円未満 84.2万世帯 189兆円 2.2億円 0.5億~1億円未満 271.1万世帯 195兆円 7200万円 0.3億~0.5億未満 659.8万世帯 254兆円 3800万円 3000万円未満 3940万世帯 470兆円 1200万円 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 4961万世帯 1173兆円 2364万円 http://www.nri.co.jp/news/2008/081001_3.html わが国で、純金融資産が5億円以上の世帯は、6.1万軒で、全世帯 (5200万)のうち、0.11%です。850軒の世帯がある町で、1軒分 に相当する人が、5億円以上の純金融資産の階層です。 1億円~5億円が、62軒に1軒です。5000万円から1億円が、19軒に1 軒の金融資産額で、ここまでが、富裕層と言えるでしょうか。5000 万円以上の、純金融資産の世帯は、ほぼ350万世帯、15軒に1軒の割 合です。 長期で株をもっているのは、こうした世帯が多い。700万人は、こ の350万世帯にほぼ符合します。株主資産の150兆円の増加が集中す る階層が、ここです。このため、眠っていたデパートの高額品の購 買が、突如増えたのです。 普通の世帯の、日常的な購買を示す、大手チェーンストアの売上額 は、13年1月10.8兆円(店舗調整後 前年比95%)、2月9.1兆円 (前年比94%)、3月10.1兆円(前年比102%)でした。 (企業数57社:7947店:総売場面積25百万平米:売場面積では日本 の全小売業の25%) 年初から3ヶ月の合計売上は、前年比97.5%です。3月になって、 若干の売上増が認められますが、趨勢を変えるものとはまだ言えま せん。日常的な消費は、低迷したままです。価格を上げると、すぐ、 落ち込む消費です。世帯の所得の増加が、ないからです。 http://www.jcsa.gr.jp/figures/data/H25_nenpyo.pdf http://www.jcsa.gr.jp/figures/data/201303.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <無料版287号 : 結局、最後の、憑(つ)かれたバブルか(3)> 2013年5月18日 【本号:目次】 1.2012年以降、世界の実体経済は悪化している 2.輸出主導型成長の、中国経済の減速 3.2013年の世界経済は、減速する 4.日本の現在の株価は、何を根拠にしたものか 【次号:目次】 5.日本の株価は、ヘッジ・ファンドの、国際分散投資が決めてい る 6.円安と日本の株価の関係 7.金価格の動きと展開 8.米ドルは本当に、価値を回復する方向に向かうのか? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.2012年以降、世界の実体経済は悪化している 日本では、昨年11月来、株価が60%上がり(日経平均:1万3800円 :5月1日)、米国でも、ダウが$1万4500~1万5000の最高値をつけ たことから、世界経済は好調であろうというイメージが、あるよう です。 経済マスコミは、そう言いつつ、株価を煽っているところがありま す。普段は経済記事が乏しい週刊誌まで、株価高騰を言う。 【マネー増発による株価】 米国の株価(ダウの最高価格)は、昨年9月来の、FRBの量的緩和 (QE3:米国債と住宅証券の買い)によるマネー印刷によるもので す。それ以外の理由はない。欧州も、ECBによる南欧債の買いと、 マネー供給によるものです。 いずれも、証券・債券の下落が原因だった、金融危機から来る信用 恐慌を、 ・米国は08年9月以降のFRBのマネー増発($3兆:約300兆円)によ って避け、 ・ユーロは2010年以来の南欧債の危機を、ECBによるマネー増発(3 兆ユーロ:360兆円)によって、回避しています。 このため、恐慌は避けられた。しかし、実体経済は、減速したまま です。一方、増発されたマネーによって、株価は上がり、債券の金 利は低下し、国債を含む債券価格も上昇しています。 【投資・投機マネーの増加】 2012年に、世界のヘッジ・ファンドの元本は$2兆に増え、株の買 収ファンドの資金量は$3.5兆に増えて、両方で$5.5兆(550兆 円)にもなっています。レバレッジをかけた投資では、平均4倍で も2000兆円を超えます。(注)このマネーが、日本株の買いの主役 です。 株価だけで言えば、世界の株価指数(MSCI)は、年初来、 7%上が っています。 (注)各国の通貨ベースで見た、年初来の株式指数は、以下の上昇 です。米国 +13%、中国-2%、日本+28%、英国+9%、ユーロ1 7ヵ国+2.2%、スイス14%、インド-5%、サウジアラビア+6% です。新興国が、輸出減のため株価が下がっているのに対し、先進 国では株価は上がっています。 ところが実際は、世界の実体経済は2012年、2013年と低下に向かっ ています。それを典型的に示すのが、(先進国に向けた)新興国の 輸出です。 【新興国の、輸出の低下】 ブラジル、ロシア、中国、韓国の輸出は、08年9月のリーマン・シ ョックの後、09年に、前年比で30%低下しました。その後、2010年 は+30~+40%でした。金融危機による先進国の消費減を1年で回 復しました。 しかし2011年からは、南欧の財政危機から、+10%~+20%と回復 が減速し、2012年はユーロ圏17ヵ国の合計GDPがマイナスに転落し たことを受け、輸出増加額は、ほぼゼロ%に低下したのです。原因 は、先進国の消費不況です。 http://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sa12-02/s2_12_1_1.html ■2.輸出主導型成長の、中国経済の減速 2013年3月は、中国までもが、貿易収支で、わずかとは言え$8億84 00万の赤字に転落しています。 予想では、$154億の黒字だったので、予想と実績には$160億(1. 6兆円)もの、大きな狂いが生じています。 この、従来予想との狂いを年間に延長すれば、〔1.6兆円×12ヶ月 ≒19兆円〕のマイナスの振幅です。原因は、輸出の減少と輸入の増 加です。 (注)年間ベースの実績では、中国の貿易黒字は、GDP比で3%(15 兆円)に減っています。3年前はGDP比6%の黒字でした。 もともと中国の貿易黒字は、米国の対中輸出入の金額と照らすと、 25%くらいは過大な計上だと言われていました。 現在、中国のGDP増加は実質で7.9%(12年第4四半期)とされてい ます。しかし物価の上昇率を2.1%と実際より低くしているとも言 われます。 米国の物価上昇が2.0%です。中国の物価上昇が、米国と同じ程度 とは、とうてい思えません。英国の物価上昇は2.8%です。ユーロ が1.7%の物価上昇です。 仮に、中国の消費者物価の上昇が4%なら、実質経済成長率は、7. 9%ではなく、5%台の増加に減ります。 極端に見る人は、貿易黒字減少から見て、中国は、すでにゼロ成長 に落ち込んでいるのではないかとも言う。このあたりは不明ですが、 中国のGDP増加が7.9%(実質)より相当低いのは、事実に思えま す。 GDPで日本並みに向かって来て、2011年に日本をGDPで超えた中国は、 高い成長率(9~10%以上)であり、2000年代の世界経済の牽引車 でした。新興国も、その経済シェアが、世界経済に対して中国のよ うに大きく($5兆)になると、成長率は低下せざるを得ません。 売る相手国(欧・米・日)の経済成長(実質GDPの増加)が、1~3 %内と低いからです。 資源や金属の高騰、穀物の高騰の、実需による原因も、中国の経済 成長でした。 関連して言えば、インドも2012年度(12年4月から13年3月)は、貿 易赤字が$1909億(19兆円)へと、前年比で4.1%増えています。 理由は、世界への輸出の減少と資源輸入の増加です。 中国は、今のところ13年3月だけの貿易赤字です。日本は、2012年 は、6兆9300億円の貿易赤字でした。 インド、中国、日本が貿易赤字です。 これは、いずれも、世界経済の需要の減少を示すものです。 ▼資源・エネルギーの価格 中国の、資源の超多消費型成長の一端を示すのが、建設や機械への 投資に多くを使う鉄鋼の生産です。2012年での、世界の粗鋼生産は 15億トンでした。そのうち中国が7億トンと、約半分を占めます。 かつては世界最大の鉄鋼大国だった日本は1億トン、米国8800万ト ン、ドイツ4200万トン、ロシア7000トン、インド7600万トン、韓国 6900万トンです。中国の圧倒的な、資源多消費がわかるでしょう。 http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5500.html 原油の消費でも、中国は5億トンでした(2011年:輸入が3億トン)。 米国が8億トン、日本が2億トンです。先進国は、2000年代はいずれ も、原油消費は減少傾向でした。増えたのは、中国が最大です。次 がインドでした。 経済の近代化のための、資源・エネルギー多消費型である中国とイ ンドの経済成長(GDPの増加)の減速は、資源・エネルギーの、世 界の消費の増加を、大きく減らします。 この意味は、資源・エネルギーは下がって、上がる理由は中東での 戦争以外にはない、ということです。 (注)金価格にも、インド(世界の金の、宝飾用の最大消費国)と、 中国の、貿易黒字での購入の減速が響いています。 ■3.2013年の世界経済は、減速する IMFが予想する世界の経済は、実質で、3.3%増で、13年1月の予想 の+3.5%から0.2%低下しました。(注)IMFの予想も、いつも、 若干は高い傾向があります。 08年以前の、世界経済は、実質で年率5%の増加でしたから、成長 率は、ほぼ2ポイント(%)低下しています。 これも当然のことです。日本が、それまでより2~3ポイント(%) は低い、GDPの低成長に入ったのは、1990年からのバブル崩壊以後 でした。 それが1997年からは大手金融機関が倒産し、他も自己資本を失う金 融危機になって、不良債券を埋めるため日銀がマネーを100兆円刷 ったものの、1998年から経済(GDP)は、マイナス成長に向かいま した。 物価の下落と、賃金の減少も続いたことは、よくご存知でしょう。 【米国】 日本の後を追い、米国は2007年から住宅価格の下落から、1000兆円 の残高の、住宅証券の下落(実質-40%)を招き、08年9月からは 金融危機になった。 しかし、世界恐慌の危機は、FRBのドル印刷に よって、避けることができたのです。 FRBは、日本が、1990年からの株価・地価の下落で、大不況に陥っ たことを学習していました。このため、最初の1ヶ月で$1兆という 果敢で急激な、ドル印刷を行っています。 その後も、ドルの増発を続け、$3兆(300兆円)が増加供給されて、 現在にいたっています。 しかし、日本が、バブル崩壊以降の不良債権(実質200兆円)のた め、20年にわたって経済が浮揚しなかったように、米国も日本ほど の長期ではなくても(高齢化の程度が日本に比べて低いため)、10 年の停滞に向かう感じがします。08年9月以降、現在は、4.5年目で す。 米国も、後で述べる欧州も、不良債権と下落した債券によって、日 本の金融機関と同じように、自己資本(300兆円)を失い、実質で は債務超過になったからです。 【欧州】 欧州では、南欧債(政府債)の下落と、不動産価格の下落の両方が 重なっています。 ECBは3兆ユーロ(340兆円)に、不良化した南欧債を買って、資産 を拡大し、マネーを供給しました。欧州は、日本と似た高齢化です。 もともと、欧州の経済成長は低かった。 2000年のユーロ結成以降は、ユーロが通貨信用を集めたことにより、 世界からは、ユーロ買いが起こって、これがユーロのマネー量を増 やして、南欧も含み、負債での成長をしていました。 南欧の都市部近郊やリゾートの不動産は、信じられないくらい高か った(100平米で1億円など)。このバブルも、完全に崩壊しました。 ユーロは、これから10年以上、日本が経験した低成長、あるいはマ イナス成長を続けます。 ●2012年の後半から、米国と欧州が日本の後を追うことが明白にな ってきたように感じています。 日本だけが、由(ゆえ)なく、90年代、00年代のGDPの低成長やマ イナスを続けたわけではない。米国、欧州も、債券と資産バブルの 崩壊の後は、同じです。 【IMF予想】 2012年の、世界の経済成長(実質GDP)のIMF予想は、以下です。よ く見ると、低い成長です。米欧の先進国のGDP成長が全部、2000年 代の日本のようになっています。 (注)日経新聞は、米国経済の好調を言い、株価の高さを言います が、以下のようにGDPの成長予想は1.9%に過ぎません。これは、 過去の米国から見れば、ほぼ1~2ポイント低い。実質成長では3% レベルが米国でした。 GDPの1.9%成長は、ダウが最高価格になるものではない。その意 味で、明らかな、マネー増発相場です。時価総額で世界ナンバーワ ンのアップルの株価崩落が、その象徴になるでしょう。 アップルの時価総額は$3800億(38兆円)です。昨年の12年9月の ピークでは$6500億(65兆円)だったのです。42%下がっています。 【2013年のGDP成長率予測:IMF】 米国 +1.9%、 日本 +1.6%、 ユーロ圏 -0.3%、 ドイツ +0.6%、 フランス -0.1%、 イタリア -1.5%、 英国 +0.7%、 新興国 +5.3%、 中国 +8.0%、 インド +6.7%、 ASEAN(アジア)5.9%、 世界全体+3.3%です。 中国の経済成長は、輸出主導型です。 ユーロがマイナス成長になり、米国のGDP成長が+1.9%と低いの に、中国のGDP成長が8%台は、矛盾であり疑問です。 中国は、世界貿易でドイツを抜き、ナンバーワンになっています。 貿易量でナンバーワンということは、米国の輸入、ユーロの輸入の 増加大きな増加がないと、中国はGDPの成長がないということだか らです。 IMFは、日本のGDPの実質成長(物価上昇をマイナス後)を、年初は +0.4%としか見ていませんでした。2013年4月16日に出した、世 界経済の予測では、日本のみをGDPで+1.6%に上げています。 果たして、この通りのGDP増加になることができるかどうか? 0.6%分くらい、余計なような感じがします。 ■4.日本の現在の株価は、何を根拠にしたものか ▼株価を計る水準 日経225種のPER(株価収益率=株価の時価総額÷税後純益)も、 ・前期実績(12年3月期)に対しては、約26.46倍、 ・次期予想利益(13年3月期が多い)に対し、18.84倍水準と、高 い。 (注)日経新聞の、予想PERは昨日の21倍から、18.84倍に今日(5 月1日)に修正されています。今月から、2013年3月期決算の予想純 益の、増加修正が相次いでいるためです。 http://www.nikkei.com/markets/kabu/japanidx.aspx この、日経平均の予想PERの18.84倍という水準はどう判断すべき か? (注)個別の銘柄ではなく、日経225種平均です。個別銘柄では、 その企業の、近い将来の、利益成長の期待値の高さ、あるいは低さ から、そのPERが高くなったり、低くなったりします。 ▼株価水準の根拠は、国際分散投資 当方、現在の金利では、日経平均等の平均指標での株価水準は、PE R15倍がメドと見ています。PER 15倍を妥当とする根拠は、先進国 の、株価水準です。 国際分散投資が行われているので、それぞれの国の経済事情(GDP の成長)や金利を反映しつつも、企業の株価のPERでは15倍くらい が平均になる傾向があります。 以下、Financial Times紙の、13年4月30日の、世界の株価の、実績 P/Eレシオ(日本流に負えばPER)からです。 【世界のPER】 米国S&P500 PER 16.5倍、ドイツ11.7倍(DAX30種は13.2倍)、英 国14.0倍、フランス16.1倍、イタリア16.9倍、カナダ15.8倍、 オーストラリア16.1倍、ベルギー17.8倍、デンマーク16.9倍、ノル ウェー10.7倍、シンガポール13.7倍、スウェーデン13.9倍、スイス 19.4倍です。 新興国では、アルゼンチン15.1倍、ブラジル15.6倍、中国8.0倍、 香港11.9倍、インド17.3倍、ロシア5.6倍です。 経済危機の南欧では、キプロスのPERが31.8倍、ギリシア15.1倍、 イタリア16.9倍、スペイン16.2倍、ポルトガル17.0倍です。 15ページになりましたので、以下は、次号にします。 【後記】 2013年の実体経済が低下に向かう中、世界的な株高です。この根底 の理由は、米国FRBが200兆円、欧州ECBが300兆円、合計で500兆円 のマネーを、金融危機対策のために増発し、今度は、日本が1年に7 0兆円、2年で140兆円の円を増刷することです。 中央銀行が、マネーを増発するのは、金融危機のための対策です。 これをやめれば(出口政策)、再び、証券危機、債券危機、国債危 機に戻るため、やめることができず、マネーの蛇口を全開にしたま ま来ています。ここに、日銀が加わったのです。 世界の株価は、歴史上はじめての、中央銀行バブルです。昨年書い た『マネーの正体』(ビジネス社:400ページ;2000円)に、中央 銀行は、資産バブルとインフレを起こす元凶だったことも、論証し ています。(お陰様で、発刊以来、高い評価です) http://www.amazon.co.jp/%E3%83%9E%E3%83%8D%E3%83%BC%E3%81%AE%E6%AD%A3%E4%BD%93-%E5%90%89%E7%94%B0%E7%B9%81%E6%B2%BB/dp/482841682X/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1368773872&sr=8-1&keywords=%E3%83%9E%E3%83%8D%E3%83%BC%E3%81%AE%E6%AD%A3%E4%BD%93 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【ビジネス知識源アンケート:感想は自由な内容で。 以下は、項目の目処です】 1.内容は、興味がもてますか? 2.理解は進みましたか? 3.疑問点、ご意見はありますか? 4.その他、感想、希望テーマ等 5.差し支えない範囲であなたの横顔情報があると、今後のテーマ と記述の際、より的確に書くための参考になります。 気軽に送信してください。感想やご意見は、励みと参考にもなり、 うれしく読んでいます。時間の関係で、質問への返事や回答ができ ないときも全部を読み、共通のものは、記事に反映させるよう努め ています。 【著者へのひとことメール、および読者アンケートの送信先】 yoshida@cool-knowledge.com ◎購読方法と届かないことに関する問い合わせは、ここにメール → reader_yuryo@mag2.com ■1.有料版は、新規に登録すると、『無料で読めるお試しセッ ト』が1ヶ月分送信されます。以下は、最近のものの、テーマと目 次の項目です。興味のある方は、登録し、購読してください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <652号 :ダブルテーマ 1.世界の株価上昇と日本の株価 2.マネジメントにおける標準と目標 (1)> 2013年5月8日 1.世界の株価上昇と日本の株価 【目次】 1.株価の上昇は、いつまで続くのか? 2.予想は何を予想するのか? 3.世界の株価と日本 4.日銀の、異常な額の国債購入が、2013年4月から始まった 5.政府の、インフレ政策 2.マネジメントにおける標準と目標(1) 【目次】 1.テイラーイズム 2.テイラーの方法の、否定の動きがあった 3.実際は、テイラーを復権させねばならない 4.テイラーの前は、アメとムチによる管理だった 有料版では、新規に月中のいつ申し込んでも、その月の既発行分は、 全部を読むことができます。最初の1ヶ月間分は、無料お試しセッ トです。その後の解除は自由です。継続した場合に、2ヶ月目の分 から、課金されます。 (1)『会員登録』で支払い方法とパスワードをきめた後、 (2)登録方法を案内する『受付メール』が送ってきて、 (3)その後、『購読マガジンの登録』という3段階の手順です。 【↓会員登録と解除の方法】 http://www.mag2.com/howtouse.html#regist ◎登録または解除は、ご自分でお願いします。 (有料版↓) http://www.mag2.com/m/P0000018.html (無料版↓) http://www.mag2.com/m/0000048497.html (以上) ■「有料版を解約していないのに月初から届かなくなった。」との 問い合わせが、当方にも多いのですが、ほとんどの原因は、クレジ ットカードの「有効期限切れ」です。 以下のページを開き、新しい期限を登録すると、その月の届かなか った分を含んで、再送されます。 https://mypage.mag2.com/mypage/creditcard/CreditCardMenu.do なお、有料版と無料版メルマガの、購読方法の電話での問い合わせ は、以下です。075-253-1244 (平日午前10時~午後5時まで) ◎ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則 のバックナンバー・配信停止はこちら ⇒ http://archive.mag2.com/0000048497/index.html |