2011年に浮上した世界の国債リスクはどう向かうのか
This is my site Written by admin on 2011年8月17日 – 09:00
おはようございます。お盆の休暇も、瞬く間に終わりました。大震
災で6月から特例の無料を続ける東北以外では、休日割引1000円だ
った高速道の料金が戻り、渋滞もさほどなかったようです。

7月の関西では、「経済は大丈夫か」と不安になるくらい、週末の
車の量が少なかった。見た感覚では60%でした。わずかな変化で、
大きな影響です。

国家財政の経理係を預かる財務省は、増税一本槍です。このため、
増税論の野田財務大臣が、次期首相に浮上しています。しかし増税
は無理です。エコポイントやアナログ放送終了で家電が売れ、終わ
れば急激な売上低下。高速道の割引で車は増え、終わればスカスカ
になる。

これらの現象は、今、家計はごくわずかな価格変更でも、敏感に反
応していることを示すものです。食品スーパーでは今価格の数円の
差異でも、出掛ける店と売れる商品が代わります。世帯所得が減っ
ているからです。

一方で霞ヶ関に籠もり、世間の風にあたらないかのように財務省は
、増税一本槍です。このため、増税を掲げる野田財務大臣が、おそ
らく9月からの次期総理に浮上しました。

財務省が、40兆円の国債に加えて、急遽必要になった、復興費(2
年で20兆円)の財源手当に躍起になっているのは理解できます。こ
れとは別に、福島原発の放射性物質の拡散と、人、コメ、肉の、内
部被曝の被害の広範囲さ、及び長期化のため、未だに目処がつかな
い賠償費(推計10兆円+α)がかかる。9つの電力会社が束になっ
ても払えません。

福島第一原発自体の事故収束も不明で、一基5000億円(6基3兆円)
とも言われる対策費用も、準備せねばならない。東電の純資産(約
2兆円)を換金しても、まるで追いつかない。このため、最終的に
政府負担になる。政府負担とは国民負担(=納税者負担)です。

財務省が、債券市場の引き受け難からの国債金利の上昇を何より恐
怖しているのは理解できます。

仮に金利が2%上がれば、既発の国債(地方債を含み950兆円:平均
満期6年)は、幾度も出した債券価格と期待金利の関係から、約15
%(142兆円)も下がります。これが金融機関の、平均満期6年間の
含み損になる。バブル崩壊後の金融機関が抱えた不良債権の100兆
円の1.4倍です。

長期債・短期債の平均期間6年後の満期になれば、額面は返って来
ると言っても、金融機関は政府が振り込んだ現金で、また次の国債
(借り換え債)を買わねば、入札割れが起って、上がった金利は一
層高騰し、国債保有者である金融機関の損は、膨らみ続けるのです
。

これが10年債で1.0%、期間1年未満の短期債で0.16%という、こ
れ以下はない低い金利の国債が、売れてきたことの終着点です。95
0兆円も積み上がり、これからも1年40~50兆円のペースで増える低
金利の国債は、わずか2%の期待金利の上昇で、ほぼ全部の金融機
関の破産と同時に、国家財政の破産を生みます。

にもかかわらず、2012年の増税は、今の世帯所得、企業所得が増え
ないどころか減る経済の中では、無謀な策になる。無謀は、狙いと
別の結果が生じることです。経済そのものが収縮し、増税効果が消
えるのです。(注)仮に増税を行うなら、1年1%ずつの消費税上げ
です。増える事務経費が難ですが・・・

前稿では、米国と欧州に残る、デリバティブの中の巨額損($14兆
:1120兆円)について、その根拠とともに示しました。この3年で
、米欧で合わせて$5兆(400兆円)の公的資金が投入されています
が、債券の時価評価で720兆円の損は、未だ清算されず飛ばされて
います。

本論に入ります。テーマは、<2011年に浮上した世界の国債リスク
はどう向かうのか>です。前号の、角度を変えた続編にも当たりま
す。

前FRB議長のグリーンスパンは、08年9月の米国発の金融危機を、10
0年に一度と言いました。確かに、米国で、同時・多発で、住宅価
格が大きく下がったのは、1929年に始まった世界大恐慌以来でした
。この時期は、ちょうど、それまでの基軸通貨英ポンドが、米ドル
に交替するときでもあったのです。

2011年に始まった、おそらくは「欧州→米国→日本→中国」の順序
をとるであろう世界の、同時国債危機は、歴史上初めての巨大なも
のになる可能性が高い。まだ分からない。しかし、当方の唯一の手
段、数値を読み、論理的に考えてゆけば、予感できるのです。

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<551号:2011年に浮上した世界の国債リスクはどう向かうのか>
             2011年8月17日号

【目次】
1.世界中の国家が、国民の貯蓄を食う最大の借り手になった
2.頻発する危機
3.11年8月危機
4.バブル価格に上がるから、バブルは崩壊する
5.増えたポートフォリオ投資の結果が、金融商品の値動き
6.政治信用の、大きな低下
7.個人金融資産が、ローン負債とともに増えるのが40歳代
8.2000年代は国家の負債が増えるようになった
9.国家は国民や企業ではないが
10.インフレとは・・・
11.重要:中央銀行が国債を買うという最後の手段があるが
12.金と原油に対するドルの、長期的な価値
13.日本だけがデフレ
    ・・・原因は、所得減と、マネー・ストックの増加のなさ
14.世界はインフレ
15.経常収支の黒字が、中国のように、国内のマネー・ストックの
増加になると、インフレ
【後記】

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■1.世界中の国家が、国民の貯蓄を食う最大の借り手になった

世界中の国家が、貯蓄を食う最大の借り手になった。中央銀行も国
債を買っています。20年後の歴史家は、これを何と呼ぶでしょうか
。21世紀の11年は、バブルとバブル崩壊の時代から国債危機とでも
言うのか。

▼表面は矛盾している

日米ユーロの国債は、08年の金融危機以降大量発行されても、債券
市場で買われ、金利は1~2%台と史上最低に低い。金利の低さは、
国家財政への信用と国債の買い人気を示すものです。なぜ、国債危
機か。

 [国債金利≒名目GDPの期待成長率+国債の信用リスク率]と見る
ことができます。金利の理論的な近似値(均衡金利)です。

対外債務の多さと財政赤字の危機が露呈したPIIGSを除き、日米ユ
ーロの国債金利は、上がるどころか、下がっています。市場が決め
る先進国国債の信用リスク率は、低くなっています。じゃなぜ、ソ
ブリン・リスクと言うのか?と思われるでしょう。

参考:
国債の金利について実証的に研究したと言えるジョン・B・テイラ
ーは、政府の金利政策について、以下の政策ルール(テイラー・ル
ール:1993年)を提唱しています。

短期国債の誘導目標金利=均衡名目金利+0.5×(期待インフレ率
-政府が目標とするインフレ率)+0.5×GDPの潜在成長率。

簡単に言えば、金利は、期待インフレ率とGDPの期待成長率に収束
すべきということです。

あなたが100万円をAさんに貸すとき、1年後の物価の期待上昇が3%
、Aさんが返せない可能性(信用リスクという)が3%あれば、6%
の金利以下で貸すことはない。銀行預金しておいたほうが得だから
です。歴史を調べてこの原理を数値化したのがテイラー・ルールと
言っていい。

政府・中央銀行の金利政策は「低すぎるか高すぎる」ことが多い。

市場も国債金利について間違えることが多い。

 65年間、国際基軸通貨と認められてきた国の通貨である米国債が
、歴史上初めてAAAから、一段階格下げされました(2011年7月)。


ところが市場の債務回収保険であるCDSは、米国債10年物に対し1年
でまだ0.5%と低い。市場の認識は遅れているように思えるのです
。

あるいは日米欧の国債を同時に買い上げ、価格のピーク(低金利の
頂点)で先物を売って、巨大利益を得る、隠れた戦略か。

▼変な格付ですが・・・

フランス・ドイツ・英国債が最高のランクのAAAです。金利が上が
り対外債務危機と財政危機が高まっているスペイン債はその下のAA
で、日本や中国より1段階上です。

失業率21%のスペインより低い日本国債の格付は、AAマイナスで、
中国と同じです。3大格付機関(英フィッチ;米ムーディーズ;米S
&P)は、何を根拠に格付しているのか、明らかにはしません。

にもかかわらず、米国債の格下げは、戦後のマネーの歴史では、最
大級のショックです。今後、米国債の格付が、AAAに戻る可能性は
ゼロと判断します。これは、近々、基軸通貨をすべりおちることを
意味します。

この意味は、世界にばらまかれた米国証券(ワールドダラーで$6
兆:480兆円)を、ある人は急速に売り、全体は徐々に売ることで
す。

(注)ワールド・ダラーは各国政府の外貨準備や銀行で売買される
ドルとドル債を集計したものです。

$1=60円台も想定できます(11年8月は$1=77円付近です)。事
実、外債を大量にもつ日本の金融機関は、4半期に3~10兆円も買い
越してきた米欧の国債を、11年4~6月には、ドル安・円高のリスク
を感じ、ほぼ初めて売り越しに転じています。

このドル売りは、海外からの円債買いと同じで、ドルとユーロに対
する円高要因です。

 次の格下げは、PIIGS債の保有で、総額が未だ不明な損を抱えるフ
ランス債でしょう。

フランスとともに英国とスペイン債も、格下げがあることは、必然
です。

3大格付機関の格付には「政治的」な動機が混じっていますが、世
界の主要国債が、市場の実勢では格下げの方向にあることを、認め
ねばなりません。

この10年、あの9.11を最初にして、世界中で異常なことが連続し
て起こり、皆、多少の事件には驚かない感じを受けます。しかし異
常なことは、やはり異常です。

(注)今、世界では外為売買が1日推計500兆円(そのうち円・ドル
の交換は50兆円/日)と多いので、国債の信用リスクは、金利の上
昇より早く、通貨の下落として現れます。PIIGS諸国の財政危機が
終わらないのは、ドイツがいるため、ユーロがPIIGSにとっては高
すぎるからです。

■2.頻発する危機

 ▼人が抱く感覚的な予感

2000年代の11年、世界の大地震、異常気象の自然災害を調べると、
90年代までの2倍の頻度でした(国連の災害疫学研究センター:CRE
D)。

国連が集計した2010年の自然災害による死亡は29万7000人です。数
十年来で最近11年が最悪という。

統計は過去ですが、00年代は90年代までは起こらなかったことが、
金融・経済のあらゆる領域で続けて発生しています。金融・経済と
書くのは、金融が先に動くからです。

 人々が抱く、災害と金融・経済危機が増えるかも知れないとい予
感は間違いではない。原因と時期は分からない。人類の20世紀が煮
詰まって、未だわからない21世紀なるものに向かっているのかも知
れません。

 自然災害や疫病は、過去、時代、政治・経済のエスタブリッシュ
メントも転換させたものでした。2008年9月の世界金融危機に続き
、11年8月の第2週に、欧州と米国発の、世界株価の暴落が、不意に
襲いました。第2週の2日で、世界の株価総時価が640兆円も失われ
ています。

(注)本当は突然ではない。結果を見れば、ある日不意に起こった
ように見えます。株に限らず、市場価格があるものは、折々の材料
(例えば中央銀行の金融政策)の解釈の共通方向によって、上昇と
下落を繰り返します。見るべきは3ヶ月~6ヶ月以上の中長期です。
ほぼ3ヶ月が先物やオプション(これらはデリバテイブ)で売買す
るヘッジ・ファンドの、平均的な運用期間です。そのため、短期の
動きでは方向が見えず、攪乱されます。

■3.11年8月危機

世界の株価総時価は、$56兆5900億(4530兆円:11年6月末)です
。たった2日で、大震災が起こったかのように、14%(640兆円)の
金融資産が消えました。個人投資家とヘッジ・ファンドによる、売
りが売りを呼ぶパニック的な下落です。

(注)株価とは比較できませんが、東日本大震災の、生命を含まな
い物的な損害は、約20兆円とされます。まだ不明の原発の損害と被
害賠償は別です。福島第一だけの推計で10兆円をはるかに超えます
。他の、全国53基の原発の運転停止、そして、運転をできないと想
定される廃炉費用は、膨大です。

▼金融資産としての株価:株ではなく株価が金融資産

 株価は、世界の金融資産(推計1京2000兆円)の30%を占める最大
のものです。

1500兆円付近とされる日本人の世帯の金融資産では、預金の構成比
が56%(742兆円:08年)を占め、生命保険(28%)が多く、株の
保有は6%(80兆円付近を日々変動)と少ない。世界の世帯の金融
資産は株価の騰落で大きく変わります。

 米国では世帯の金融資産のうち株価が31%、カナダ28%、フラン
ス29%、ドイツ13%、英国13%、イタリア22%と多い。(各データ
は金融広報中央委員会) 

 11年8月第2週の14%の下落は、穏やかな10倍くらいのレバレッジ
をかけた信用売買をしている人や金融機関及びヘッジ・ファンドに
とっても、元金の14%の損でしょう。差し入れていた証拠金を40%
上回り、追加の追い証が必要です。

 先物売買の限月(決済の期限日)までに差し入れられないと、証
券会社によって強制的に、下がった株や証券が成り行き価格で売却
されます。

今回のような株価の暴落は、ほぼ3ヶ月後が中心の、巨大売りを準
備します。

株式市場も、決済日が後の先物売買が、当日が決済の現物証券の売
買より圧倒的に多い。世界の金融市場で、売買額の50%以上に増え
たロボット・トレーディングも現物ではなく、先物の回転売買です
。

当日のCNNやBBCのキャスターは、「Don’t Panic!」と呼びかけ
ていましたが、ロボットに呼びかけても意味はない・・・

 いつわれわれを襲うか不明な、大地震や自然災害と違い、債券・
国債の急落には、債券市場が引き受けきれなくなる臨界点に達した
という共通の原因があります。

海外ばらまかれた米ドルとドル債も同じです。2000年代に貿易黒字
が大きくなった中国が、外貨準備で世界最高($3.2兆:256兆円
)になっていますが、中国は、粛々と米ドル債を買ってきた日本(
政府+銀行+保険会社)とは違います。

 国債は、今、安全資産として投機筋(新聞で言う投機筋はヘッジ
・ファンド)の買いで上がっています。これが売られて下がる時は
、1週から長くとも数週で暴落し、同時にごく短い日数で市場の金
利も暴騰します。10年5月と、11年6月のPIIGS国債が、この例でし
た。

■4.バブル価格に上がるから、バブルは崩壊する

 資産や債券価格(国債や株)が、バブル価格的に上がるから、そ
の後の暴落があります。

今回の基底の原因は、欧州と米国発の、世界金融危機(08年9月~
)の後の政府財政における対策費としての赤字増加を、債券市場が
危惧したことから来る国債の危機(ソブリン・リスクとも言う)で
しょう。バブル価格は、その後は価格が維持できなくて、崩壊する
水準を言います。

 下落に先鞭をつけたのは、ドイツとフランスの銀行株でした。理
由は、両国の大手銀行がPIIGS国債を多く持っているからです。

▼PIIGSの財政危機は、フランスとドイツの銀行の危機

 PIIGSの国債危機は、欧州の銀行危機です。債務を抱えるところの
危機はもちろんですが、それは債権(つまり金融資産)をもつ銀行
の危機になります。誰かの借金が、別の人の金融資産であり、両者
は等しい。このためPIIGS債の危機は、フランス・ドイツの危機に
なる。債権=債務の関係は、金融・経済の問題を考えるとき重要で
す。

マスコミはPIIGSに紛れ、まだ取り上げませんが、西欧と米国の銀
行にとってPIIGSと並ぶ大きな不良債権問題は、東欧への、投資的
な貸し付け($2兆:180兆円)です。これが100兆円規模の、不良
債権になっているでしょう。原因は、08年9月以降、対米・対欧輸
出が、急減したからです。

(注)PIIGS債は、ドイツ・フランスの銀行だけではなく、英国と
米国の銀行も、年金基金や個人が預ける預金(金融資産)であるMM
F(投資信託型の預金:変動金利)で買っています。

米国のMMFは、米国よりは金利が高かった欧州で運用されています
。かつてのユーロ高も、ドル売り・ユーロ買いを促していたのです
。

世界の通貨・預金・株式・債券市場は、コンピューター回線の中の
、瞬時のマネー流入や流出でつながっているため、上げ下げが同時
化します。とりわけ2000年代は、投資銀行とヘッジ・ファンドによ
って、世界の通貨と各種の金融商品に分散するポートフォリオ投資
が行われているからです。

■5.増えたポートフォリオ投資の結果が、金融商品の値動き

 値動きが異なるポートフォリオの金融商品のうち、3ヶ月の決算サ
イクルで、共通に、①利益を確定させると考えたものを売り、②損
を抱えたものは多くを先送りします。

 その都度、利益確定で売られる金融商品と、損失確定の先送りで
保有が続く金融商品は、各ファンドに、若干の時間遅れはあっても
、ほぼ同じです。これが金融商品別に、バブル、またはミニバブル
と、大小の価格崩壊が繰り返される原因です。

 あるとき原油や資源が上がり、頂点で下落し、株も下がる。別の
とき、株が上がり、資源は下がる。そしてまた3ヶ月後は、株価が
下がり、国債価格が上がる(11年8月現在)。こうした価格騰落は
、「その金融商品を、近い将来、値上がりするとして買う人が増え
たか、逆に下がると見て売る人が増えたか」にかかっています。

 21世紀の金融市場はヘビー級のボクサー(レバレッジかけた数兆
円の巨額資金を、金融商品に投じる投資銀行、ヘッジ・ファンド)
と、フライ級(個人投資家)が集まり、同じリングで予想を戦わせ
ているイメージです。

相場では、方向が交錯する様々な、多くが後付けの理由があります
。理由はないと言えば語弊がありますが、上がる金融商品と下がる
ものの、ヘビー級による選択はおよそランダムです。

(注)わが国では、1990年からの資産バブル崩壊以後、個人投資家
はほぼ700万人付近と少なくなって、2005年ころからのFX(外為先
物)で200万人増えたくらいです。資産格差がわが国よりはるかに
大きな米・欧・中国では、個人投資家は多い。

このため今回のように、世界の株からの避難で、世界でもっとも金
利が低い円債(長期債で1.0%台)が買われ、円は大丈夫とする説
も現れます。

あと解説は、いつも混乱します。年初の経済、株価、通貨予想で、
年度に一貫した見通しを示す人はごく稀です。多くがその都度の「
後付け」の解釈を言い、その理由づけは、数ヶ月前の発言は矛盾し
ています。

ちなみに2011年の正月の、エコノミストの株価と円の予想を、古い
雑誌や新聞で探してください。ほぼ95%の人は、予想を大きくはず
し、稀に異端と思える人が、近い予想をしているがあることに気が
付きます。他の人と違った予想をするには、その人自身が根拠をも
っているはずだからです。

半年後の新聞はないのですが、6ヶ月前の新聞はだれでも読むこと
ができます。そこから、未来予想について、何を重んじすぎ、何を
軽視して間違えることが多いのか、多くの教訓が得られるでしょう
。

■6.政治信用の、大きな低下

今、民主党の日本のみならず、中国を含む、世界の政府が信用され
なくなっています。かろうじて、金融・経済界に信用を保っている
のは中央銀行でしょうか。いずれこの信用も、金融機関の不良債権
を引き受けているため、なくなる感じです。

 国のマネーと国債の信用は、国家の信用以外ではない。通貨の信
用には、政府の財政運用の信用、言い換えれば政治的な信用が含ま
れます。財政赤字を減らすことが、政府信用です。

小泉首相以降、1年あるいはそれに満たず名を挙げるのが煩わしい
くらい、国民からの支持を失って、首相が替わります。政局を動か
すのは世論です。

今後も、同じでしょう。財源がなく予算が実行できないことが、根
底の理由です。米欧の世界に共通します。共感を呼ぶ経済像、福祉
像、国家像(ビジョン)が描けないためです。出馬を表明している
野田財務大臣の増税と財政再建だけではまるでダメです。

■7.個人金融資産が、ローン負債とともに増えるのが40歳代
 
わが国では1990年代に、米国では1995年頃から2000年のIT株バブル
で、欧州では1990年代からなだらかに、中国は2000年代に、世帯の
金融資産が増えています。

 いずれも、戦後ベビー・ブーマーの中心世代が40代で、預金と金
融資産が増える時期に相当します。40代がもっとも賃金が増え、ロ
ーンで、二軒目への住宅への買い換えを行って、ローン負債、預金
、年金基金(政府への預け)が同時に増える時です。

米国では退職後のため2軒、3軒と住宅を買う人も年収$10万以上の
人に多かったのです。頭金ゼロで買えました。

(注)50代になると、年々、期間30年の住宅ローンを組むのが難し
くなります。60代を超えると、過去に貯めた、預金や金融資産(年
金基金)を取り崩す時期です。

■8.2000年代は国家の負債が増えるようになった

 誰かの金融資産は、別の人の金融負債。個人金融資産が増えれば
、借金をする人(企業、国、個人)の借金も増えます。大きな、対
外経常収支の黒字を続ける日本や中国のように、国境を超え、米国
や欧州を借り手に対外資産を増やすところもある(対外金融資産の
増加)。 

負債の主たる借り手は、90年代までは、企業や個人の住宅ローンで
した。今は、世界共通に、国家が、金融資産の主たる借り手になっ
ています。

(注)米国で2000年代に大きく住宅ローンを増やしたのが3000万人
(1000万世帯)の、住宅を持っていなかった移民です。2001年から
の2008年までの8年間で1000万戸の住宅購入圧力になって、住宅価
格を地方で2倍(3000万円付近)に、都市部・郊外で2.5~3倍(50
00万円)に上げて、07年に価格崩壊しています。これが、08年9月
からの金融危機になっています。このローン危機は今も続いている
のです。

■9.国家は国民や企業ではないが

 ▼国家というもの

 国家は、国民や企業ではない。行政機構です。従って財政の破産
は、行政機構の財政の破産に過ぎません。

 しかし国家の負債である国債の売れ行きが金利を決め、国家の機
関である中央銀行がマネーを発行するため、現代では国家財政の破
産があると、
(1)国民の、金融資産の実質価値の、大きな下落(通貨膨張によ
るインフレ)と、
(2)年金不払い・繰り延べ、医療費の削減や繰り延べ、福祉のカ
ット、公務員給料カット、
(3)そして、企業の資本コストである金利の高騰が起こります。

政府部門が国民所得に占める重み(国民負担率)は日本40%、フラ
ンス61%、ドイツ51%、英国47%、米国32%です。

なお日本は、政府の一般会計と特別会計の財政赤字(≒国債発行額
)を含むと、49.8%(2011年:財務省)であり、社会福祉がはる
かに厚いドイツ並みです。

国民負担は、世帯と企業の所得の中に占める、[税金の負担+年金
の掛け金や医療保険]という社会保障費の負担です。

国民所得のうちほぼ半分もが、今は、政府を通じる予算です。平均
年齢が若かった1975年の国民負担は、財政赤字を含んでも33%でし
た。今、49.8%です。ますます上がる勢いです。

▼国家の負債が増える原因は構造的だから、今後も増える

 国家の負債が増え、これからも増える原因は4つです。
(1)先進国の同時高齢化による、年金、医療費、福祉費の静かで
すが継続的で、今  のままなら、ほぼ2030年頃までは終わることの
ない増加、

(2)経済を浮揚させるための、赤字国債を使う政府対策の増加と
税収の不足、

(3)金融負債の増加で増える金融機関の不良債権を埋めるための
、公的資金の投入、

(4)政府機関である中央銀行による、マネー発行の増加、です。

 いずれも「構造的」なものです。つまり一時的ではない。そのた
め国家の負債は、これからも増え続けます。

1980年代までのように実質GDPの成長が5%もあれば、税収が増える
ので問題にならない。2%レベルの長期傾向になると、国家財政の
膨張に税収が追いつかず(財政赤字が増え)、時折の金融危機で税
収が激減するため、国家債務の問題は大きくなります。

増税は、その国の経済が成長するときしか、できない。不況期で所
得が増えていないときは、負担が増える国民の合意がとれず、逆に
、減税をしながら、政府支出を増やさねばならないのです。

世界の政府が、何かの指標を強調して、ことある毎に景気回復に向
かっていると言うのは、財政支出の増加を迫られないようにする目
的です。

歴史上、国家が債務を減らしたのは、ごく稀です。2000年代はスウ
ェーデン(1990年に国家の債務危機)しかない。

年金を減らし、高齢者福祉を減らして、医療費も減らした。世界は
、195ヵ国です。1/195の確率・・・後は、全部、インフレと、通
貨価値の下落(自国通貨安)で、実質債務を減らしただけです。

■10.インフレとは・・・
 
通貨の膨張(正確に言えば、その国のマネー・ストックの増加、つ
まり負債の増加)と、インフレ、及び金利の上昇は、同じ意味です
。期待インフレ率が高まることは、マネーの実質価値の下落です。


国家や企業または個人の負債の、上がる予想の物価に比べた、実質
価値の下落でもある。金融資産の価値の低下とともに、負債の価値
も下がります。金融資産=負債です。

▼本質は、国家の債務危機の時代
              ・・・表面だけを見れば、認識が混乱する

◎意外に多い世界の、大きな債務危機

 30年~60年サイクルで繰り返してきた大きな「債務危機(別名が
信用恐慌)」は、数年から10年以上、長引く性格を持っています。
30%や50%に下落した不動産と株価が底を売って、再び、上昇する
必要があるからです。

バブル崩壊後(1990~)の日本経済が、20年余も低迷しているのは
、人口の年齢構成要因から、不動産と株価に底打ちと回復が見られ
ないためです。08年以降の、米欧の金融危機も同じです。不動産・
住宅が底打ちし、株価も長期で上昇トレンドに乗らないと回復しま
せん。

株式市場をもつ近代社会では、ある日、債務危機は、不意に見える
株価の暴落が最初です。世界金融危機以降3年経った今、日米欧で
同時化した国債危機は、どう展開し、国の財政が破産すればどうな
るのか。

▼借換債の発行が困難になることが、国債のデフォルト

国家財政の破産は、今は1~2%台と低い借換債の金利が、今の先進
国では、5~6%以上に上がることからです。数%の金利上昇が、財
政危機や破産に至る理由は、国債の残高が大きくなっているからで
す。

市場の金利が上がって、高い金利の借換国債が発行できず、満期が
、巨大に、毎月来る過去の国債の決済を迫られると、国家(行政機
構)で、国の予算(年金、医療費、公務員給料、公共事業)に遅配
が起こります。

例えば日本の、950兆円の短期・長期の国債の平均満期は6年です。
米国の国債は4年です。

 950÷6年=158兆円です。日本政府は、1年に158兆円の国債を、現
金で消化せねばならない。毎月の借換債の発行が、思うように行か
ないと国家は国債の償還ができず、数ヶ月でデフォルト(債務不履
行)に陥ります。この時間は短い。ギリシア債がこれです。2桁へ
の金利の上昇はごく短期です。ギリシアの二年債の金利は40%にも
高騰しています。ECBの支援でなんとか息をしています。

■11.重要:中央銀行が国債を買うという最後の手段があるが

こうなると、中央銀行(日銀、FRB、ECB)が、債券市場では金利が
高くしか売れない国債を直接に買い、マネーを無理やり印刷し、金
利を下げることを迫られるようになります。

それを行うと、今度は物価や資産価格(今回はゴールド)が上がっ
てインフレに転じます。インフレは通貨価値の下落です。

 ただし、資本(マネー)が大きく国境を越えて移動する開放経済
では、
・中央銀行が市場で売れない国債を増加買いすると、
・通貨価値の下落を恐れ、その国の通貨が売られ下落します。

通貨が売られることは、キャピタル・フライト(マネーの流出:例
えば円売り・ドル買い)であるため、国内発のインフレは起こりに
くく、通貨の下落だけになる可能性が高い。

通貨が下がると輸入物価が上がって、その国の物価が上がる。いず
れにせよ、中央銀行が国債を購入することを余儀なくされると、そ
の国の通貨が下落します。

■12.金と原油に対するドルの、長期的な価値

金と原油はシンボリックな財です。金の1トロイオンス(31.1グラ
ム)は今$1800(円では1グラムで4500円付近)です。1999年は$3
10くらいでした。約5倍です。12年で5倍の意味は、この間、米ドル
の価値が金に対しては、1/5に低下したということです。

米国という国家の信用低下と見ることができます。産油国は、赤字
国の通貨の価値下落に合わせ、原油が上がるのは当然としています
。国家の信用は通貨の価値です。為替の日々の変動をいうのではな
い。それは今日の売買で決まります。見るべきは5年、10年スパン
での各国通貨です。

 1バーレルで$15から今$70~$100付近に上がっている原油との
関係も、金と同じです。こうしたドルの実質価値の減価は、まだ他
の物価や資産価格に対しては見えません。しかし今後、長くとも2
~3年の間に、誰の目にも、基軸通貨であるドルの価値下落が見え
るようになると感じています。

補注:FRBのバーナンキ議長は、前記のように米ドルの金利を2013
年まで下げたままにすると発言しました(11年8月)。これから2年
です。この間に、米ドルは基軸通貨をすべりおちるでしょう。ドル
債が低金利なら、ドル安の進行を恐れて、世界から買われないから
です。

▼自分の金融資産は、誰か他人の金融負債で、両者は等しい

われわれがもつ金融資産(日本では5000万世帯の、個人事業・農家
を含む合計で1500兆円)は、実は、それを預金や証券、基金として
預かって運用する銀行や金融機関を通じ、別の主体(国家、企業、
ローンを借りた個人)の負債です。

繰り返せば、金融資産は、別の人の負債です。従って、債務危機は
、そのまま金融資産の価値下落でもあります。例えば負債でもっと
も大きな国債が暴落すると、政府のデフォルト(債務不履行)から
、通貨が増発されることから起こる大きな通貨安と、輸入物価イン
フレで金融資産の実質価値(商品購買力)は下がります。

▼通貨の価値の一側面

なぜ通貨の価値が下がる側面が、普通は見えにくいかといえば、10
年後に一括返済をする10年満期の債券(国債)を売る政府が、10年
後の通貨価値の下落を、知られたくないからでしょう。

1000万円額面の10年債を持っていて、10年後に1000万円の償還があ
っても、1年平均7%の物価の上昇で物価が2倍になるとすれば、100
0万円だった購買力(通貨の価値)は500万円に下がったことと同じ
です。

 こういった認識が広がると(期待インフレ率の高まり)、国債の
金利は、通貨価値の下落を補うため、7%以上の利回りでないと誰
も買いません。

7%の複利で10年なら、1000万円が2000万円になります。他方で7%
という高金利の国債しか発行できないと、利払いが嵩んで、政府財
政は破産します。

 国債を発行し続けている政府にとっては困った事態になる。この
ため、「インフレは、政府が、中央銀行に国債を買ってもらい通貨
を過剰発行したことによる通貨価値の下落」という本当のことは、
知られたくないという担当官僚の心理が働きます。

これが、通貨価値の下落の側面が、一般に知られていない理由です
。
中央銀行が発行するドルや円は、価値があるとするのが学校教育で
した。
ケインズは、インフレは、見えない増税と言っています。

▼2011年になって、いずれ財政破産と、誰でも言うようになったが
、その中味は?

米国の政府負債は、2000年に$3.4兆だった。今では$14.3兆と4
.2倍に増えています。住宅ローン証券$11兆も、政府が保証せね
ばならない。政府の実質負債は24.3兆とGDPの2倍近くになる。人
々は、日本の国債がGDP対比2倍で最高と言う。

米国もあと2年で、変わらなくなる。財政の赤字で1年に$1.6兆増
えるからです。

18世紀末の、マリー・アントワネットの時代の、ルイ王朝と変わら
ない。フランは暴落した。その後はフランス革命だった。なぜ今、
人々は静かなのか。

国家財政の破産は、今は1~2%台と低い借換債の金利が、今の先進
国では5~6%以上に上がることからです。

借換債が発行できず償還の満期が毎月来る、過去の国債の決済を迫
られると、国の予算(年金、医療費、公務員給料、公共事業のいず
れか)に遅配が起こります。

(注)米国の州政府では、警官や公務員給料の遅配は、意外に頻繁
にあります。NY州で遅配が起こったのは1980年代でした。日本では
遅配ではありませんが、夕張市の財政破産は09年でした。国家の破
産もこれと同じです。

このため、中央銀行(日銀、FRB、ECB)が、市場では金利が高くし
か売れない国債を、直接に買い、金利を下げることを迫られるよう
になります。これが、通貨価値の下落です。
 
 ■13.日本だけがデフレ
    ・・・原因は、所得減と、マネー・ストックの増加のなさ
 
ところが今、日本だけは、今もまだ物価が下がるデフレです。

これは、
(1)高齢化で世界最速で、
(2)年収200万円以下の非正規雇用が37%に増え、
(3)5000万世帯の年間平均所得は約100万円も減って、
(4)約800兆円の預金はまだ崩さず、
(5)店舗での買い物の金額(数量ではない)を減らしているため
です。

所得が増えないため、2009年の日本の貯蓄率は、ついに、マイナス
に落ちています。

 加えて、国家単位では、わが国の経常収支の黒字が、米国に向か
うキャピタルルフライト(米国債の購入)になって、国内のマネー
・ストックが増えないためでもあります。

国内のマネー・ストックが増えないと、日銀がいくらマネーを刷っ
ても、インフレにはならない。銀行が日銀当座預金を増やし、外債
と国債を買うだけで、世帯と企業には回っていません。これを示す
のが、わが国マネー・ストックの増加のなさです。

■14.世界はインフレ

 2007年から11年6月までの4年で、資源価格高騰と通貨の変動のた
め、英国では14%、ロシア49%、インド45%、中国15%、米国8%
、ブラジル24%の消費者物価インフレです。他方で、米ドルに対し
、相対的に通貨が上がった国の物価は、さほど上がっていません。
円高の日本では、日銀が銀行に貸し付けても、民間合計(世帯・企
業)マネー・ストックは増えていないため、この4年で消費者物価
はマイナス0.3%です。

 
▼基軸通貨ドルの、継続的な価値下落

 株価、米ドル、円とは逆に、金は高騰し、1トロイオンス(31.1
グラム)が$1800(円では1グラムで4500円付近)です。12年前の1
999年は$300くらいでしたから、5倍に上がっています。この5倍の
意味は、米ドルの価値が、金に対して1/5に減価したということで
す。

円は、1グラム1000円が4500円に高騰し、金に対して1/4.5に低下
しています。1990年代末は1バーレルが$15だった原油に対しても
ほぼ同じ率での、通貨の価値下落があります。

ただし、こうしたドルの実質価値の減価は、まだ、他の物価や資産
価格に対しては、見えません。しかし今後、長くとも2~3年の間に
、誰の目にも、今はまだ国際基軸通貨であるドルの価値下落が見え
るようになると、感じています。

【重要】
FRBのバーナンキ議長は、米ドルの金利を2013年まで下げたままに
すると発言しました(11年8月)。これから2年です。この間に米ド
ルは基軸通貨をすべりおちるでしょう。ドル国債が他国より低金利
なら、世界から買われないからです。例えば、日本からドル債を買
うには、ドル債の金利が、[その時の日本の金利+3%]でなけれ
ばならない。赤字国の通貨は、下落予想率を高い金利でカバーしな
ければならないからです。

◎経常赤字の米国の国債は、経常収支の黒字国(中国、日本、スイ
ス、新興国)より、3%の金利の高さがないと、市場が今想定して
いるドルの実効レートの下落のリスクをカバーできないため、買わ
れないのです。

FRBが、金利を今のままの水準(2%台)に保ったまま、ドルの印刷
を2013年まで続けると、海外がもつドル債(約500兆円が、ワール
ド・ダラーとして、短期で売買され流動している)は、リスクのカ
バーができないために、売られます。

これによって米ドルの、世界の通貨に対する実効レートは減価を続
け、ついには、世界の貿易の60%で使われている基軸通貨から、陥
落するでしょう。早ければ、2012年です。

米国では、住宅証券を含むと1000兆円規模の含み損失が、FRBや政
府が埋めきれないくらい大きいからです。

インフレ、言い換えれば通貨価値の下落は、国家や企業の、借金の
実質価値を減らし、清算します。

歴史を見れば、インフレが起こると、
・最短でも数年は続き、
・世帯の金融資産の価値(購買力)は下がり、
・金融資産と同額の国家、企業の債務(名目金額)が減ります。

価値ある資産、あるいは金融資産と思えたものの転換が起こるので
す。そして大きなインフレの後は、通貨の価値が縮小することが原
因の、緊縮経済に向かいます。戦争後のように、商品生産力の破壊
(工場と流通の破壊)で需要に大きく不足することがなければ、安
易に言われるハイパー・インフレにはなりません。

▼本当は、マネーの価値の下落である

 インフレは、本当は通貨量の膨張(信用の膨張)による、貨幣価
値の下落です。一見、物価が上がること、そして選別的に住宅や株
(資産価値)が上がることに思えますが、本当は、国家及び中央銀
行によって過剰発行されたマネーの価値(商品や資産の購買力)の
下落です。

【補注】
インフレでは、一般に、消費者物価とともに、資産(住宅、株)の
名目価値が上がります。しかし先進国の2010年~2020年は、等しく
高齢化を迎えます。年金受給者と医療費は増えますが、平均世帯所
得が増えない。このため住宅や株価の上昇は選別的になります。人
が集まって人口密度が増える地域の住宅は下がり、同じ都市でも人
口が減る地域はインフレでも下がるでしょう。

世帯所得が一律に増えている90年代から今の中国のような時代でな
いと、資産も商品も全部が上がるということにならない。日本では
、これが1980年代まででした。その後の90~00年代は、所得が上が
る人20%、下がった人80%です。
 
株価も、消費者物価のインフレで売上が増える、食品や他の基礎生
活商品の会社のものしか上がりません。今後、国家財政が破産する
と必ず起こるインフレは、1980年代までの世界の平均年齢が若かっ
たときのインフレ(住宅価格高騰、株価高騰、賃金上昇、物価上昇
)とは、明らかにその中味が異なります。

■15.経常収支の黒字が、中国のように、国内のマネー・ストック
の増加になると、インフレ

 中国や、資産バブル崩壊前の1980年代までの日本のように、経常
収支(主は貿易収支)の大きな黒字から、政府が外貨(過剰発行さ
れたドルやユーロ債)を買い、元や円を増発することからも、イン
フレは起こります。

これも自国通貨の増発になるからです。経常収支で、恒常的な赤字
国の通貨であるドルの増発(形は、世界で流通するドル建て債券、
つまりワールド・ダラーの増加)が、貿易黒字国でも、自国通貨の
増発になるのです

 経常収支で、恒常的な赤字国の通貨であるドルの増発(形は、世
界で流通するドル建て債券、つまりワールド・ダラーの増加)が、
貿易黒字国でも自国通貨の増発になるのです。

 米国を離れ、世界をぐるぐる回っているワールド・ダラーは、今
、$6兆(480兆円相当)と巨額です。

国際分散投資のマネーになっているワールド・ダラーの一部が、円
買いをすれば円が上がり、新興国の株買いになるとその通貨と株価
がバブル的に上がります。

資源買いなら、資源が上がる。国内の株に回帰すれば、株価が上が
る。国債が買われれば、国債が上がる。ゴールドも同じです。そし
て売られる金融商品が下がる。市場が底値と認識するまで下がると
、また買われて上がる。これを1990年代よりはるかに大きな価格変
動(ボラティリティ)で、繰り返しています。

▼ポートフォリオ投資と、売りと買いの交錯
 
この動きは、利益をもとめた、ランダムなものです。相場をもつ金
融商品の価格がランダム・ウォークをするのは、買いと売りの対象
が、短期で動くランダムなものだからです。

 ヘビー級の投資銀行やヘッジ・ファンドの投資は、ポートフォリ
オ(国を超える分散投資)であると同時に、
・金融商品Aを売るときは、
・別の金融商品Bを売りと同じ金額買うという「売りと買いの交錯
」だからです。

2011年の8月第二週に、売られた株価が暴落したのに、買われた日
米欧の国債価格が上がるという矛盾した動きは、「売りと買いの交
錯」のためです。(注)ほぼ3ヶ月単位での売買になるデリバティ
ブの章で詳しく述べます。

 3年前の金融危機(リーマン・ショック)以降、政府と中央銀行が
、
・債券(株式、社債、住宅証券)の下落で生じた金融機関の不良債
権を買い、
・不況対策に財政の拡張を採り続けています。

このため2011年現在、金融機関を救った国家財政と中央銀行の信用
が危機になっています。典型がPIIGS(ポルトガル、イタリア、ア
イルランド、ギリシア、スペインの頭文字)の財政危機と、フラン
ス・ドイツの銀行危機です。

そして西欧の銀行に近々、東欧の不良債権が加わってきます。

11年7月の、ユーロ圏90銀行のストレス・テストの結果は、「90行
合計で、今後2年間に、$5.4兆(430兆円)の、決済資金が必要」
というものでした。パニックを恐れたのか、新聞は、目立たない小
さい記事で報じました。

この$5.4兆は、誰が出すのか? ユーロのECB(中央銀行)しかな
いでしょう。$5.4兆の国債を買い、ユーロを印刷して、90行に与
えます。ユーロ国債の危機が、最初と申しあげるのはこのためです
。

【後記】
アンプを換えたのを機会に、スピーカーを手作りしました。長い時
間をかけ、技術情報を集めた上で、いろんな工夫をし、今までで、
自称、最高の音です。探せば、インターネットには、凄い情報があ
ります。

ピュア・オーディオとして、マニアに評価の高いFOSTEXのメーカー
品と切り替え、テストしても、はるかに上です。技術的なことを書
けば、ごく一部(1%?)の人しかお読みならないでしょうから、
やめます。かけた費用は、2万円くらいです。箱は、前のものをサ
ンダーで磨き、オイル・フィニッシュ。仕上げに蜜蝋ワックスです
。

とても古いグレン・グールドのバッハ(平均率クラビア曲集)のCD
が、今日レコーディングしたかのように、みずみずしく蘇りました
。こんなにいい音がはいっていたのかという、自己満足ですが・・
・

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



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