営業利益を3倍増にする部門経営の方法(1)
This is my site Written by admin on 2012年12月15日 – 12:00
今年も早くも、年の瀬です。明日は総選挙。メディアでは、自民と
公明は、ほぼ300議席付近が、予想されています。第三極が、乱立
していますから、票が分散し、自民が有利になります。

特に小選挙区では、こうなるのです。自民が多数派をとって政権を
作った後の2113年からの、経済運営、特に今まで、財政の限界から
減らしてきた公共事業はどうなるのか、これについては、別稿を準
備せねばなりません。

                        *

本稿は、会社での仕事に関連して、テーマを<営業利益を最大化す
る経営(1)>とします。

論を具体化するために、事例は、消費期限の短い商品が多いために、
もっとも在庫管理が難しい、言い換えれば発注方法が数種必要な、
食品スーパーの店舗とコンビニとします。複数回のシリーズで示し
ます。

在庫管理は、製造・卸・物流・小売・外食産業やレストラン、そし
てホテル・旅館、サービス業にも共通するものです。この際、商品
部門で在庫化管理法、言い換えれば、発注法を変えるべき食品スー
パーが、総括して示すのに適当と考えたからです。

どこでもできる「経営管理の方法」とも言えます。倒産状態だった、
日航を、稲盛会長が、2年間で再興させ、一転して、ANAよりも高い
営業利益を出すことができるようになった方法でもあります。

本稿では、方法の理解のため、小売業の具体事例で述べて行きます。

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<Vol.282: 営業利益を3倍増にする部門経営(その1)>

                 2012年12月21日号

【本稿の目次】

1.経営と仕事の成果が営業利益・・・これが前提
2.マネジャーの役割はマネジメント
3.部門経営の体制へ向かうこと
4.マネジメントの責任とは何か?
5.営業利益を上げる部門経営の実際
6.原因の推計、確定から対策へ

【後記】新著の紹介

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■1.経営と仕事の成果が営業利益・・・これが前提

小売業のみならず、あらゆる経営において、成果とすべきものは営
業利益です。

営業利益は、言うまでもなく、
・売上高から商品原価を引いた粗利益(グロス・マージン)から、
・人件費と店舗関連の経費(オペレーション・コスト)を引いたも
のです。

営業利益を経営の目的とするのは、企業にとっては「理の当然」で
すが、社員が仕事をする上では、当然のこととされていないように
感じます。

理由は、人の労働(仕事)の費用は、
・会社にとっては、生産性が低いと、営業利益を減らす費用(コス
ト)ですが、
・幹部、社員、パートにとっては、報酬という成果だからです。

ここに、背反があります。

▼考えの乖離(かいり)

経営者は、利益を目的として仕事をするのが当然だが、社員は報酬
を目的として仕事をするとホンネのところで考えているからでしょ
う。

このため会社で仕事をすることの目的が、営業利益を上げることで
あるとされていない。ここに、思いのほか大きな、考えの乖離(か
いり)があります。

例えば、本部の商品部(バイヤー)が、店舗の商品構成のプラノグ
ラム(棚割表)を作り、価格をつけて、商品の改廃をする。

店長(スト・マネジャー)が、パートと社員の仕事の管理をする。

部門の担当は補充発注をし、入荷した商品の陳列をする。
レジはPOSで顧客が買った商品をスキャンして代金を受け取る。

以上の、バイヤーと、店舗の商品作業( (1)発注→(2)入荷処
理→(3)品出し・陳列→(4)レジ処理→(5)補充発注→(6)棚
の商品変更  )が小売業の総人時(労働時間)のほぼ80%を占めて
います。店舗に50人がいれば、40名がこの(1)から(6)の「商品
作業」に従事した仕事であると言う意味です。

この中で、発注から入荷商品を品出しして棚の所定の棚番に補充陳
列する商品作業が、50%くらいを占めています。つまり小売業は、
発注・陳列業と言えるのです。この作業が、営業利益を決めます。

これらの商品作業を行う店舗要員(パートが70%から80%)の、
日々の仕事の中で、果たして「営業利益を上げる」ことが、自分の
仕事の目的とされているかどうかと言えば、筆者が言う「意識の乖
離」が了解できるでしょう。

なぜ、こうなるのか? 繰り返せば、営業利益を上げるのは経営者
の役割からくる責任であって、 社員とパートは、与えられた役割
の、実行責任を負う範囲の仕事をすると考えられているからです。

小さな店舗であるコンビニエンスストアを考えれば、これが分かり
ます。コンビニのオーナーは、店舗の営業利益を目的に仕事をして
いるだろう。

しかし、パートが時間給1000円くらいをもらう根拠になるレジ作業
をするとき、店舗の利益が自分の仕事の目的であるという考えは薄
いでしょう。自分は、オーナーに雇われているという考えだからで
す。

■2.マネジャーの役割はマネジメント

大型の店舗では、社員とパートがたくさんいるため、以上のことが、
あいまいになります。「長」という役職者(本来はマネジャー)が
混じるからです。マネジャーは、「マネジメント」が仕事のはずで
す。

マネジメント(=経営)とは、「担当する部門の営業利益を上げる
ことを成果目標として管理作業」を行うことです。管理作業とは何
か? マネジメントのことです。じゃ、マネジメントとは何か?  
ドラッカーが、終生、追求したことです。

理由は、分かりにくいことだったからでしょう。当方、ドラッカー
を読んで、マネジメントが分かったという人に、会ったことがない
のです。本稿では、端的に言います。

▼管理が、マネジメントである

業績(成果)の4つ(売上、粗利益、営業利益、生産性)を数値目
標にして、実績との差異を計量し、その差異の原因を確定して、対
策案を考え、対策を実行することです。

これが経営です。マネジメントです。

ほぼ1980年代からわが国に紹介された部門別管理という、小売業の
マネジメントの方法があります。製造業で言えば、京セラの、稲盛
会長が行った「アメーバー経営」として有名です。

個人またはチーム単位で、日々の損益計算書を作って自己管理する。

倒産状態だった日本航空の再建で、アメーバー経営の方法が導入さ
れ、2年間の短期で、営業利益を出せるようになったので、一躍、
注目されました。この、アメーバー経営の中身は、「部門別管理」
です。新聞でも、言っていました。

▼ところが・・・部門別の数表は、観察されているだけという実態

【部門別管理表】
店舗を、商品部門(30~60坪単位:年商で1~2億円)に分けて、
(1)売上、(2)粗利益、(3)部門の直接費、間接費、(4)営業
利益、(5)スペースの生産性(単位面積当たり粗利益)、(6)人
の生産性(人時当たり粗利益)を、「管理」するものです。

管理に「」をつけたのは、この管理は、何をどうすべきか、明らか
ではない会社が多いからです。

(注)管理とは、本稿で後述するマネジメント(=経営)であるべ
きものです。結果の数表の「観察」だけではないのです。部長(経
営管理者です)が数表をみて、部下に「**が足りない。もっと頑
張れと、やる気出せ。」いうことでは、まるでマネジメントにはな
らない。

どう頑張るか、やる気をもって、どうやるべきか、その方法を示さ
ねばならないからです。方法が肝心です。

大手企業では、この数表は、毎月または4週単位で、作られている
かもしれません。

【観察だけではダメ】
しかし、その数値は、部長等のマネジャーによって、営業利益が上
がった、上がらなかったと観察はされてはいますが、これを元にし
た「管理=マネジメント」は実行されていないと、筆者の経験上、
ほぼ、断言できるのです。

この理由は、部門別の業績管理表が、
・仕事の結果観察のためのものであって、
・根本のところで、部門の営業利益を上げることが、言い換えれば、
成果目標を達成することが、部門のマネジャー(部門主任)の、仕
事の責任とされてはいないからです。

営業利益は、経営者の責任によるものであり、部門マネジャーの仕
事の責任とは言えないとされてきたからです。コンビニのオーナー
と、パートの関係です。仮に発注を担当していても、パートは、営
業利益の上昇のためと仕事をしているとは見えません。営業利益は
オーナーの役割で、自分は、時間給で雇われているだけと考えてい
るからです。

つまり、本部によって作られた商品部門別の数表(これが仕事の成
果情報)が、「情報」になっていない。情報は、結果の数値の観察
だけではなく、明日の利益改善に向かう管理の行動、つまりマネジ
メントを促すものです。

以上が、売上で言えば数兆円から数億円の、わが国小売業の経営
の、まぎれもない実態です。よくこれでやってきたと言えます。 

小売業の、企業単位の税務申告利益の実態では、ほぼ75%の企業が、
毎年、赤字を続けています(国税庁の統計)。

赤字企業が多いため、部門別の管理が、部門別の経営とはされなか
ったとも言えるでしょう。

人は、成果が上がらなかったことを指摘されるのを忌避(きひ)する
からです。
仕事は行った、しかし成果(営業利益)は上がらなかったという
ことを見るのは、つらいからでもあります。

売り場の部門担当も、指摘されれば、「営業利益が仕事の成果」と
答えるかも知れません。しかし、部門別管理表の数値から、営業利
益を上げるための改善行動、つまりマネジメントは実行されていま
せん。

【仕事の責任】
●仕事の責任とは、改善行動をとることです。

結果数値の観察から、原因を確定して、対策行動が取られなければ
ならない。観察だけではなく、「業績の改善にむかう行動」がマネ
ジメントです。業績とは、「売上、粗利益、生産性、営業利益」の
4項です。

マネジメントとは、端的に言えば、「結果の数表→分析→原因の確
定→対策行動の実行」です。ドラッカーは、古典的な名著『マネジ
メント』で100万語を費やして、要は、このことを、いろんな事例
で繰り返し述べています。ドラッカーの言葉では、営業利益は成果
(パフォーマンス)です。

成果とは、それを上げることを目的に、仕事とすること、つまり仕
事の目的です。

■3.部門経営の体制へ向かうこと

▼組織体制と、各々の役割の責任

論を具体化するため、店舗を商品部門で分けた、スコアカード(成
績表)の実際の事例をあげます。10年くらい前に作ったものです。

(注)若干繁雑になりますが、スコアカードの項目は、(1)部門
の営業利益の欄では、部門の売り場面積、売上高、粗利益高、部門
の直接費、うち直接人件費、直接作業人時数、部門の間接費、部門
の営業利益です。

(2)部門の商品生産性の欄では、部門の売価在庫、品目数、陳列
の平均単価、売上上位80%の品目数、値入率、値下げ率、廃棄ロス
率、粗利益率、在庫日数、年間交差比率(粗利益率×在庫回転率・
年間換算)です。

(3)部門1坪(3.3平米)当たりの欄では、売上高、売価在庫高、
品目数、粗利益高、1坪当たり総経費、です。

(3)部門の1人時当たりの人的な生産性の欄では、1人時あたり売
上高、同商品処理数、同粗利益、同営業利益です。

(4)顧客当たりの商品指標の欄では、顧客数、顧客単価、商品の
平均売単価、商品の売上数量、1品当たり営業費、1品当たり営業利
益です。

POSと在庫管理システムがあれば、以上の「部門管理表(スコア
カード)」を、エクセルを使って、毎週、すぐに、作ることができ
るはずです。

・会社の全店舗を並べたスコアカード
・ある店舗の全部門を並べたスコアカード
・同じ部門を、異なる店舗で横比較したスコアカード、以上3表を、
同じ項目と、同じ様式で作ります。

実はこの3表で、店舗と部門のマネジメント(経営管理)が実行で
きます。

部門への、間接費の経費配賦の正確度は、100%である必要はない。
これは、事実上無理です。±15%内の正確度で十分です。本部費、
バイヤー費用、物流費、事務を含む間接費は、複数店舗、複数部門
に渡る仕事と経費が多いからです。

▼成果責任の分担

(1)バイヤーは、スコアカードに示す担当商品の、売上、粗利益
額、商品生産性に責任を持ちます。会社はこれらの責任を持つとい
うことによって、バイヤーであるという仕事の与え方をすべきです。

(2)店長は、担当店舗の、売上と営業利益、商品の生産性、設備
生産性、人時生産性に責任を負います。

(3)各部門のマネジャー(1店舗で10から30名)は、部門の売上
と営業利益、商品の生産性、設備生産性、人時生産性に責任を負い
ます。

▼店舗の部門マネジャーは発注担当

部門マネジャーは、コンビニのオーナーのような部門(30~60坪:
年商1~2億円)の経営者と位置づけるべきものです。

部門マネジャーとは、役職はなくても、発注を担当している人です。
発注が在庫管理であり、営業利益を決めるものだからです。

正社員、パートという身分は関係がない。パートであっても、商品
発注を行う役割を与えられた人なら、部門マネジャーです。自分以
外に、部下はいないかも知れない。しかし、商品発注とは部門の在
庫管理であり、商品のマネジメントだからです。

正社員との違いは、労働時間の短さだけです。

(注)日本では、同じ仕事をしても、正社員とパートの雇用の身分
差による時間給の違いがあります。これは、本来は違法です。同じ
仕事の責任なら、同じ時間給であるべきものです。米国のチェーン
では、店舗の全員が、時間給です。

部門経営に当たっては、まず、以上のような、組織の中での役割と
責任体制作りが必要です。全業態のすべての店舗が、この部門経営
の体制に移行すべきです。これも断言します。

■4.マネジメントの責任とは何か?

仕事の責任は、成果が良ければ利益を受け、成果が悪いと不利益を
うけることだと考えられていることが多い。歩合給や成果給なら、
この通りです。

例えば、金融業に限らず、外資系企業のマネジャーは、ほとんどが
成果給です。営業(販売)なら、個人の売上に対する歩合給です。
金融業では、利益に対する歩合給です。百貨店の販売員は、売上に
対し5%くらいの報酬です。

このため、毎日、会社に出掛けて仕事はしても、自分の成績が悪い
ときは報酬がゼロになることがあります。

経営者を含む幹部層は、ほぼ全員が、年間報酬を、毎年、会社と契
約しています。

▼固定給の体制での、マネジメント

わが国の企業のほとんどは、役員・社員・パートのほぼ全員、固
定給の組織体制です。

オーナー型の社長のみが、会社の利益で、事実上の年度報酬が変わ
る歩合給と言えるでしょう。例えばコンビニのオーナーです。

固定給の組織では、店舗、会社の営業利益に関係なく、一定額の報
酬が支払われます。こうした固定給の体制における仕事の責任は、
どうあるべきか?
端的に言えば、「マネジャーによるマネジメントの実行」です。

店舗の売り場の30坪から60坪、食品スーパー等では15坪(500品
目)くらいの部門の、商品発注を担当しているのがパートなら、部
門の営業利益に責任をもつマネジャーと位置づけるべきです。

固定給の体制でのマネジメントは、「(1)成果目標と実績の差異
分析→(2)目標との差異の原因の推計と決定→(3)対策案の立案
→(4)対策案の実行」です。

この4つを、4週単位で行い続けるのが、マネジメントであり、マネ
ジャーの仕事の責任です。

会社は、この責任の実行によって、固定報酬を払っていると考えね
ばならない。この4つを行わねば、働いてはいても、仕事(成果を
上げるためのマネジメント)をしたことにはならないのです。

店長の責任は、部門マネジャーの、部門マネジメントのサポートで
す。
つまり、「(1)各部門の成果目標と実績の差異分析→(2)目標
との差異の、原因の推計と決定→(3)対策案の立案(4)対策案の
実行」について部門マネジャーに対して助言、指導(実行方法の教
育)、実行の進捗管理をすることです。

本部バイヤーの責任は、部門に対する、商品構成と価格の提案、実
行、具体的には担当する商品の売上、粗利益、営業利益の改善です。

■5.営業利益を上げる部門経営の実際

以上の部門マネジメントの実行方法を、食品スーパーの具体例で言
います。

事例とした店舗の部門別のスコアードを観察すると、大部門で言え
ば、全店の生鮮部門と日配部門の営業利益がはかばかしくない。赤
字の部門もあります。このため、部門合計の営業利益で赤字の店舗
も多い。
昨年も、その前も、ほぼ同じ状態です。問題にすべきは、この営
業赤字の原因は何かです。

▼部門の売上の規模

売上の規模は、商品構成(品目のプラノグラム)と、価格で決まり
ます。
商品構成が地域の需要に適合していて良くても、価格で競争負けが
あると、売上結果は良くない。

部門の売上は、仮にその部門が300品目(10坪)であるとすれば、
売れ数上位20%(60品目:A級)で売上のほぼ80%です。売れ数で
下位のB、C級(80%:240品目)が、部門の売上の20%です。この2
0:80の原則は、全部門にほぼ共通します。

営業利益があがっていない部門の上位20%(A級の売れ数:60品
目)に、競合店と比べた価格負けがあるかと、部門担当とバイヤー
にヒアリングしてみると、これが原因ではない。

全部とは言わずとも、およそ(60品目×80%=54品目)は、価格で
は同等か、むしろ安いからです。つまり、部門の売上の少なさが主
原因の、赤字ないし部門の営業利益の低さではない。

▼値入率・値下と廃棄率・粗利益率

着目すべき点は、スコアカードにおける生鮮・日配部門の、「値下
げ率と廃棄率(ロス率)」の高さでした。

仮に、値入率〔値入額/(仕入原価+値入額)〕を売価に対して23
%とします。値下げ率と廃棄率の合計が、5%から部門によっては1
1%もありました。その結果、部門の粗利益率は、売上比で18%~1
2%とぐんと低くなります。

部門の、直接費と間接費を足した営業費は、売上対比で17%と高い
とは言えません。

結果として、〔商品の値入率23%-(値下げ・廃棄率5~11%)-
(部門の営業費平均17%)=部門の営業利益+2%~マイナス5%〕
です。

つまり、社員の仕事の成果(営業利益)は、はかばかしくない。

他の部門の、営業利益の黒字によって、店舗の営業利益が確保され
た状態です。会社の営業利益が上がらねば、給与を上げることはで
きません。

▼最大の小売業は、食を扱う食品スーパーとコンビニ

以上を例とするのは、食品スーパーは、1万8000店(18兆円:1店平
均10億円)とわが国小売業の中でもっとも売上が大きいからです。

店舗の売上の中で、生鮮・日配部門は、60%から70%(10.8兆円
~12.6兆円)を占める主部門です。

参考のために言えば、総菜・調理食品を主部門(売上の60%)とし
て販売するコンニエンスストアは、全国で5万店(総年商9兆円)と
大きくなっています。

ローカル・スーパー(3店から10店)では、2008年9月の世界金融危
機以降の4年、赤字店舗が増え、閉店とM&Aの資本買収、及び倒産
が増えています。2013年も増えるでしょう。政務申告で赤字の店舗
が、実に70%だからです。これが何年も続いているからです。

生鮮・日配部門が、主部門でありながら、この主部門に、営業利益
の低さと赤字が多いのは、わが国の店舗でもっとも売上が大きな食
品スーパーとコンビニに、ほぼ共通の現象です。

付記すれば、コンビニの個店の営業利益は、オーナーと家族の労働
時間分を、サラリーマンの賃金(平均で600万円/年)に換算して
引いたもので計算せねばなりません。これを計算に入れた営業利益
では、食品スーパーのように、赤字のコンビニが急増するでしょう。
コンビニの本部は、小売業ではなく、リテイルサポート型の卸売業
です。個店が小売業です。

■6.原因の推計、確定から対策へ

売り場担当が毎日発注し、毎朝の開店時に入荷する部門とします。
最も良く売れる主部門である生鮮・日配部門の、営業利益の赤字が、
食品スーパーに共通して多い原因は何か? 

消費期限(または賞味時間)切れの商品の、ほぼ30%の売価割引と、
閉店時の残品の廃棄(商品ロス)が大きいからです。

更に、この残品の割引と、廃棄ロスが多い原因は何か? (注)売
り場担当が毎日発注し、毎朝の開店時に入荷する部門とします。

正価で売れる需要より、多くの商品が発注されているからです。そ
の店舗で顧客が買う数量より多くの生鮮・日配商品が、店舗から発
注されれば、値下げと廃棄が増えるのは当然の理です。つまり発注
量が正価での売れ数に比例してない。

▼更に、根底の原因をさかのぼると・・・

更に、この原因をさかのぼります。原因は、生鮮・日配の売れ数の
集計のとき、POSの売れ数データを、そのまま使っていることです。
この方法では、以下のことが起こります。

昨日は、A品目の売れ数が30個だった。週間売れ数の移動平均でみ
れば32個が日量販売の平均である。そのため、翌日分として32個を
発注した。売れ数に比例した発注である。しかし・・・

POS売れ数の中に商品の20%(約9個)の30%割引が含まれていた
とすればどうなるでしょう。〔20%(9個)×30%(値引き率)=6
%〕の商品の値入率(仮に23%)は、粗利益率では、割引商品(9
個)の粗利益の減少、6%を引いて17%としてしか実現しません。

更に、廃棄が商品の10%(3個)あったと仮定すれば、それは、〔
原価率77%×廃棄商品10%=7.7%〕の粗利益のロスになります。

以上の結果として、実現する正味粗利益率は、値入率23%-(値引
きロス6%+廃棄ロス7.7)=9.3%にしかならない。

これでは、部門の営業費が仮に、売上比で13%と低くても、4%近
い営業赤字になります。

正価での売上数に、値下げ販売したものを加えた合計売れ数をもと
に発注していれば、永久に、同じ値下げ率と廃棄率が続き、結果と
して営業赤字が続きます。

消費期限が短い生鮮・日配では正価での販売数のみを売れ数として
集計し、そのデータを元に発注すべきです。これを行えば、夕刻に
欠品が多発するのではないかと懸念されるでしょう。その通りです。

しかし、営業利益を第1の成果目標とする場合、毎日発注の消費期
限3日以内の生鮮・総菜・デリカ部門では、
・ほぼ30%の品目が夕方5時には欠品し、
・70%の品目は在庫が残る状態を作らねばならない。

根本対策は、食品では、消費期限が長いグロサリー・飲料と、消費
期限が1週間、3日以内、製造後20時間以内の商品部門で、発注法を
変えることです。

消費期限3日以内の商品では、翌日持ち越しになる安全在庫を多く
加味した発注を行ってはならない。部門売上の規模は商品構成で決
まりますが、部門の営業利益は、店舗部門の発注つまり、在庫管理
よって決まります。 

次稿では、営業利益を最大化する、部門別の発注法の体系を示し
ます。これよって、店舗の営業利益が向上します。図に書いたそれ
ぞれの発注の方法(つまり在庫管理の方法)は、本稿では示す紙幅
がありません。次ぎの機会にします。

2013年は、全部の小売業にとって、売上と価格面で厳しい年です。
世帯の商品購入は、世帯所得と99%の相関があるからです。2013年
の平均世帯所得も、減ることが確定しています。

しかし利益を向上させる方法は、「部門経営」を導入した日航に倣
って、以上のように部門経営の体制をとった部門マネジメント(=
部門経営)で生じてきます。 以下、次稿に続けます。 See you So
on !!

■後記

お陰様で、当方の新著『マネーの正体』(11月刊:ビジネス社)が、
増刷になりました。評価もいいようです。当方も著者として以下の
ような、紹介文を、アマゾンに掲載しています。

自民党の安倍総裁が、「日銀に国債を買わせて、マネーを刷って、
2%のインフレにする」と公約している折、マネー増発の意味と、
展開を解いた本書は、ジャストタイミングかも知れません。

http://www.amazon.co.jp/%E3%83%9E%E3%83%8D%E3%83%BC%E3%81%AE%E6%AD%A3%E4%BD%93%E5%90%89%E7%94%B0%E7%B9%81%E6%B2%BB/dp/482841682X
●紹介文

<著者の吉田繁治です。出たばかりでカスタマー・レビューがない
ので、書いた動機について書きます。本書は、なぜか、謎めかされ
ている「信用貨幣」の構造、展開、行く末を書いたものです。信用
貨幣は、過去は封建政府が、近代から現代では、中央銀行が発行し
たものです。1万円札、ドル、ユーロ、人民元は、すべて信用貨幣
です。

受け取る人が、価値(商品と交換できること)を信用しているとい
う理由で、商品や資産の購買(財の受け渡し)に使うことができる
という構造をもっています。信用貨幣(負債性のマネー)の意味は、
本書で詳しく示しています。『マネーの正体』という書名をつけた
のは、経済学が、触れることが少ないからです。金額の名目価値と、
商品を買うときの実質価値の区分は、信用貨幣にとって肝心です。

資本主義と一対になって増えてきたのが信用貨幣です。書こうと思
った動機は、2007年からの金融危機、2009年のリーマン・ショック
のあと、米国FRB、欧州ECB、人民銀行、日銀が、政府の負債証券で
ある国債、会社の負債証券である社債、会社の劣後債に属する株な
どの証券を、合計で550兆円くらい金融機関から買い、金融機関に
対して信用貨幣を供給し続けているからです。

これと、世界同時に、毎年の預金の増加額を超えてしまった国債増
発の問題(年間1000兆円)があります。不良債権にフタをすること
と、国債の金利高騰を抑えることが、同時に行われています。これ
は、今後の経済にとってどんな意味をもつのか?

直接の目的は、金融機関が抱えている顕在的な不良債権、まだ計上
されていない潜在的な不良債権(当方の推計では2000兆円:12年10
月時点)にフタをするためです。銀行の巨大損失をそのままにして
おくと、1929年のような信用恐慌(経済の中のマネー量が急減する
こと)から、世界の実体経済(生産、需要、所得)で恐慌が起こっ
たからです。恐慌とは、失業が25%を超え、実質所得が30~40%く
らい減ることです。

また世界の金融原資産(1京5000兆円:世界のGDPの3年分)に対し
ては、3.3倍の5京円のデリバティブがかかっていて(BISの統計)、
このデリバティブの内容、金額、時価価値を見ないと、本当の銀行
資産と不良債権額は分からなくなっています。

デリバティブは、リスク率を計算して、証券化した信用貨幣です。
これについても、その価値の構造、現在、将来を予測しています。
21世紀に増えた新しいマネーと見るべきものです。2008年から4年、
本来は行うべきデリバティブの時価評価は、評価が困難として、事
実上、停止されています。このため、銀行の潜在損は闇の中です。

中央銀行による、国債と他の有価証券の買い切りという方法での信
用貨幣の増刷は、「マネタイゼーション(ベース・マネーを増やす
こと)」です。

2012年9月から、(1)欧州ECBが南欧債の無制限買い取りを、(2)
米国FRBは、住宅ローンの元本償還と金利受け取りの権利を証券に
したMBS(不動産ローン担保証券)の、無期限・無制限買い取りを
表明し、(3)日銀は、資産買い取り基金の枠を91兆円に増やして
います。2013年も、これが続きます。

いずれも、中央銀行にとっては無コストで行える信用貨幣の増刷、
つまりマネタイゼーションです。世界が同時に、マネタイゼーショ
ンを行うのは、「歴史で初めて」です。過去の事例はない。今後、
少なくとも5年にわたって、マネー増発を正常化すること、つまり
金融を引き締めるという手段は、失われています。行き着くところ
まで行くということです。

こうしたことが、今後、通貨・金融・経済をどう変えるか、つまり、
日本の、5000万世帯の1513兆円の金融資産(世界では1京5000兆
円)の価値と、経済(GDP)がどう向かい、その中で、個人の所得
はどう向かうかについて、5年間くらいのスパンで、根拠をもった
予測をしたものです。予測がないと、企業の投資決定、資産の運用、
資産の買いや売り、資金の運用ができないからです。

マネーの運用については、会社を含み、多くの方が関心をもたれて
いると思います。損をしないために、必要な知識があるはずです。
この知識を示す目的を含んで、物語風に書いたものが、本書です。

心がけたのは、(1)数値の根拠をもって述べ、推論すること、
(2)特有な金融や経済用語への予備知識なくても、十分に分かり
やすく意味が取れることです。例えばデリバティブ、先物、オプシ
ョン、CDS、CDOと言っても、それが何を意味するのか、どんな価値
の構造をもつ証券か、普通は、分かりにくいはずです。本書の章立
ては、以下です。

はじめに
第一章 「お金」とは何か
第二章 マネーの発行は、なぜ「秘密」と思われてきたのか
第三章 中央銀行のマネー発行と、銀行システムによる信用乗数の
効果がもたらすもの
第四章 信用乗数と経済成長、人々の所得が増えるのはなぜか(減
るのはなぜか)
第五章 ゴールドと、FRBの40年戦争と最終勝者
第六章 21世紀の新しいマネー、巨大デリバティブはどこへ向かう
のか
第七章 われわれのお金は、どこへどう流れているのか
終章 金融資産の防衛

417ページは、一般的な本の2冊の量です。必要な基礎知識は短く解
説しながら、論理的であることを意識して書いています。金融・経
済に不案内な人も、十分に読み通せるはずです。著者ですから、申
し訳なく・・・五つ星をつけます。 >

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    <619号:「大恐慌」は、どのように起こったのか?>
               2012年10月24日号

【目次】

1.米国の資産価格の、バブル的な高騰の時期:1920年代
2.銀行の倒産と閉鎖:1930年代初期
3.大恐慌の原因は、マネー・サプライの30%減少
4.銀行の破産がどう波及するかへの、イマジネーションの欠如
5.米国の金融危機以降の、各国のマネー・サプライ
6.欧州の銀行が迫られている資産圧縮は、350兆円
【後記】

<621号:転換点に来た、資源多消費の中国経済の行く末>
                  2012年11月7日号

【目次】

1.中国の工業の世界シェアは、圧倒的になっている
2.世界の数十%から50%に増えた工業生産の世界シェア
3.1年に1000万人の人口流入と、所得格差の拡大
4.「群生体事件」は18~20万件
5.尖閣列島問題の真相
6.中国の財政問題と高齢化:2010年代に深刻化する
7.オバマ大統領の再選


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