特別号二弾:ギリシアとスペインの債務問題は、ユーロ崩壊への道程(2)
This is my site Written by admin on 2012年6月26日 – 08:00
おはようございます。昨朝に続き、<ギリシアとスペインの債務問
題はユーロ崩壊への道程(2)>をお届けします。本シリーズは、
3回で、それぞれA4 10ページくらいを送ります。最初、時局への論
説です。

■時局への論説:消費税の増税

日本では、今日(12年6月26日)、2014年に8%、2015年に10%への
消費税増税法案が、野党である自民・公明の賛成を得ていますから、
民主党内の造反があっても、衆院で可決されます。(まだ結果は見
ていませんが、そうなるでしょう)

自民・公明は消費税増税を10%に上げることを選挙の公約にしてい
ました。国民にとって意味がないあれやこれやの政局的な思惑(行
政権力への関与の争い)があっても、増税を公約していなかった民
主党が逆提案したとき、自民・公明は、反対はできなかったのです。

次の焦点は、民主の執行部への造反議員が、54名付近の離党や党内
野党になり、今通常国会内に(12年8月まで)、内閣不信任案が通
るかどうかです。野党勢力が多数になり、不信任案が通れば、野田
内閣は総辞職か、衆院の解散を行わねばならない。

●しかし、現在の議員(衆院485名)にとって、政党にかかわらず、
任期まで議員であり続けることが、政策をはるかに超えた最大の関
心時です。民主党は、3年前のブームで当選した100名くらい、自民
も50名くらいの議員は、選挙区での支援のメドがなく失職におのの
いているでしょう。情けないことです。(注)議員の報酬は、秘書
等の関連費や交通費の恩典を含むと1人が1億円です。

失職への恐怖の力学が、管内閣と野田内閣の政治を動かしているも
のです。前首相や現職の野田首相ですら、次回選挙では、当選がお
ぼつかない。政策の争いは、名目上の付け足りです。このため、任
期途中での解散は、何をどう誤魔化して、避けたいというものです。

民主党は、40兆円付近とされている特別会計の埋蔵金(=剰余金)
の一般会計への利用と、特別会計と一般会計の予算のムダを削減す
る「国民の生活第一」というビジョンを掲げ、消費税の増税は避け
ること、あるいは、先延ばしができるとしていました。

【一般会計の赤字】
2012年度の一般会計の支出は、90兆3339億円です。収入は所得税
13.5兆円、法人税8.8兆円、消費税10.4兆円の税金であり、総計
で42.3兆円(支出の47%)です。

足りない分が長短の国債44.2兆円の発行です。
おな東日本大震災と原発問題の復興で必要なものは、一般会計に加
わる補正予算です。
http://www.nta.go.jp/nagoya/shiraberu/gakushu/kyozai02/pdf/05.pdf

【2012年度の国債発行予定】
2012年度(13年3月まで)の国債発行予定は、新規に44.2兆円(前
年も44.2兆円で同額)です。加えて、復興費が2.6兆円、特別会
計の財投債が15兆円、合計で61.8兆円です。これに、満期が来た
分の借り換え債(=返済の引き延ばし)が112兆円が必要です。総
計で、174.2兆円です。

財務省の引き受け予定見込みでは、金融機関による市中消化が154.
5兆円、個人向けが2.5兆円、そして、市場が引き受けきれないため
の日銀買い受けが16.7兆円もあります。
http://www.mof.go.jp/public_relations/finance/201202f.pdf

【日銀引き受けが16.7兆円】
問題は、民間が引き受けきれず、日銀引き受けになる16.7兆円です。

日銀引き受けを減らすため、(闇雲に)消費税の5%増税(増加税
収10~12兆円)が企図されたと見ていいでしょう。闇雲とは、「先
の経済は知らない。当面を凌(しの)ぐのが先決。」ということで
す。

08年9月のリーマン・ショックの、2倍の金額の、金融機関の不良債
権になることが想定できるユーロ危機から、世界不況が想定できる
2013年、2014年に向かい、経済(購買と投資)を縮小させる効果を
もつ増税を決定するのは、当方、「いかにもまずい」と見ています。

現在と、数年間の経済を見れば、橋本内閣が、3%の消費税を上げ
た後(3%→5%:1997年~)より、ひどくなります。

【今後20年、1年に3兆円は増え続ける高齢化予算】
一般会計と特別会計の二重計算を引いた純計での、高齢化予算(医
療費33.6兆円、介護費・福祉20.5兆円、年金53.6兆円)の合計は
107.8兆円です(2011年度)。

この合計は、1年に3兆円(消費税では1.5%に該当)増えます。
消費税を5%上げても、3年分の増加を賄えるだけのものです。

65歳以下の労働人口の減少と、65歳以上の完全退職者の増加で、
GDPが減る傾向がはっきりする3年後、5年後のことは、「誰も考え
ていません」。その意味で、政府の政策は、闇雲です。3年はすぐ
来ます。もう21世紀になって12年も経ちました。

【財務省の危機意識はどこにあるか?】
財務省の危機意識は、日本国債の購入において、ユーロ危機の
2011年から急増した、海外ヘッジファンド(特に英国経由)です。

●国を超えた国際マネー・フロー(通貨と債券の売買によるお金の
流れ)を見ると、2012年の第一4半期(1~3月)では、英国の金融
機関とヘッジファンドから、$8365億(67兆円)もの、日本への資
金流入があります。主なものは、満期3ヶ月内の、円短期国債の買
いです。これが円高の原因です。

PIIGSの債務危機が大きくなった2011年から顕著になった海外から
の日本国債買い(=ユーロから日本へのマネー避難)が、日本の国
債の金利(10年物の長期債で0.8%水準)の急低下、つまり、円国
債高騰と、円高の主因になっています。

短期債は、3か月以内で満期償還があります。3か月で67兆円の買い
を[海外ファンドの持ち分の純増]と見ることはできません。純増
分では、3カ月で10~15兆円規模でしょう。

●1年に174.2兆円の円国債の引き受けに問題が起こるのは、2011年
から通貨ユーロと、PIIGS債を売って、円国債を買い越してきた英
国の金融機関とヘッジファンドが、日本国債の売りに転じたときで
す。

(注)ヘッジファンドの手法は、少額の資金で30倍以上のレバレッ
ジがかかる空売り、先物、オプション、及びCDSの売買です。

▼買われてバブル価格化した日本国債の、下落リスク

実際にこれが起こると、現在0.8%付近の円の長期金利は1%は上昇
し、10年もの国債は8.5%も価格が下がります。1兆円の長期債の市
場価格が9150億円に下がって、1兆円の長期債をもつ金融機関には
850億円の含み損失が生じることです。

いったん、超がつくくらい低い国債の金利が上昇を示すと、国債保
有者の金融機関には、含み損が増えるという不安から、先に売って
逃げようとする動きが出ます(必ずこれが起こります)。

こうなると、ほぼ3か月内で、金利は2%、3%と上がり、金利の上
昇は、国債価格の下落であるため、手持ちの国債売りに拍車がかか
ります。過去の経験的な事例では、下落不安からの国債金利の高騰
は、ほぼ6ヶ月内に起こっています。

こうした金利の上昇と価格下落が、「国債リスク」です。10年債で
も0.8%付近という超低金利のため、「あとは、金利が上がるしか
ない」とみなされつつあると思えます。実際に、自分が長期国債を
1億円持っていれば、この心理が了解できるはずです。

日本国債の価格は、2010年までは買わなかった海外から買われ、バ
ブル化しています。2011年、12年の50兆円規模の新規債の大量発行
にもかかわらず、国債金利が1.3%付近から低下している主因は、
このヘッジファンドからの買い増しです。

(注)国内での、新規債の引き受けの限界は、現在、1年30兆円水
準でしょう。ただし、経常収支の黒字の減少のため、この引き受け
限界は減る傾向です。

▼金融機関の想定損

長短を合わせると、政府部門の債務は、1050兆円を超えています。

海外ヘッジファンの買い越した円国債が売り超に転じ、市場の長期
金利が1%(ポイント)上がると、約8%の長期債の市場価格の下落
になり、50~80兆円の含み損が金融機関に生じます。

そうなると、海外と日本の債券市場で売られる国債を、一手に日銀
のみが買い支えるという、追い込まれた「マネタイゼーション」、
つまり、円通貨の増発に向かいます。

(注)2011年~12年のユーロのようになります。PIIGS債の問題は、
PIIGS5カ国が、国債の追加発行ができないため(2012年は4月から
市場の買い手が消えています)、ECB(欧州中央銀行)がPIIGS債を
買い、金融機関にマネーを注入するしか方法がなくなっています。

以上が、1年に174.2兆円の国債を発行できなければ、政府の支払い
に遅滞が起こる財務省の危機意識です。

【財務省による、野田教育】
野田首相は、財務省の勝次官から、以上を縷々(るる)聞かされ、
「ユーロ化を防ぐには、何が何でも、消費税の増税」となったはず
です。

国債の売り手(財務省)は、2011年からの安定した持ち手ではない
海外ヘッジファンドからの買い増しに、不安を感じています。

【円安も、日本国債のリスクになった】
現在のところ、円短期債を買った海外ヘッジファンドは、金利では
なく「円高」で利益を得ています。

しかし、もし$=85円の円安に向かうと、80円平均の円高の時期
(2011~2012年)に買った円国債には、ドルベースでは1年0.8%の
受け取り金利をはるかに超える、6%の為替差損が出ます。

【円安という逃げ道が消えた日本経済の懸念】
海外が国債を買い越しているという事情のため、2012年からは「円
安」で輸出振興という選択肢はなくなっているのです。

財務省がドル債を買い、円安に向かうと見られれば、ヘッジファン
ドが買い越してきた円国債を、損を恐れ、売りに出すからです。

以上で、わが国の時局評論を終わります。次は、ギリシアとスペイ
ンの債務問題はユーロ崩壊への道程(2)>です、数年後の日本に
対比できるでしょう。

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    <Vol. 276:ギリシアとスペインの債務問題は、
                                    ユーロ崩壊への道程>
                   2012年6月26日

【今回の目次】・・・本稿は3まで

1.回復が不可能なスペイン債務問題
2.ギリシアに続く、スペインの銀行預金の取り付け
3.スペインの債務は、ユーロにとって大きすぎる

【次回の目次】
4.外為売買が自由な時代の、通貨の増発の結果
5.スペインの債務問題の結論
6.ユーロ共同債の発行という方法はない
7.じゃ、どうなるか

【後記:ユーロ崩壊と中国と日本の輸出】

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■1.回復が不可能なスペインの債務問題

▼スペインの債務

スペインは、GDP(110兆円:08年)の3.6倍の、官民の債務をかか
えている借金大国です。政府の債務が80兆円、金融機関の債務が
85兆円、民間企業の債務150兆円、世帯の債務82兆円で、合計397兆
円(約400兆円)の債務残があります。

2008年頃までのスペインは、債務が積み上がりながら、バブル景気
でした。投機的に買われた住宅と株の値上がりが大きく、家計も企
業も、バブリーな資産リッチになっていたのです。

1990年までの日本に似ていました。違う点は、日本は国内のマネー
でバブルが起こり、スペインは海外(独仏英米)からの借金と投資
からだったことです。

年収300万円(3万ユーロ)の世帯に、全平均で3.6倍の1080万円の
借金があると例えれば「利払いも返済も無理」ということは了解で
きるでしょう。スペインの金利は、最も低い国債でも約7%に上が
っています。政府より信用度が低い世帯や企業が借りれば、10%を
超えるでしょう。

上がった利払いだけでも、いずれ、[1080万円の借入金×10%=
108万円]になり、世帯の平均収入300万円(3万ユーロ)の30%に
もなります。企業も同じです。借りた借金の利払いと返済は、売上
が3倍にならないと不可能でしょう。

(注)実際は、借金のある世帯は、全世帯の50%程度です。そのた
め住宅ローン借金の平均額は上記の2倍の2160万円です。金利が10
%なら、300万円の年収で、216万円の利払いです。まるで不可能で
す。世帯が利払いができないローンは、銀行の不良債権になります。

企業も同じです。売上収入が、今の3倍にならないと利払いができ
ない。企業の売上が3倍になるということは、スペインの名目GDPが
3倍になるということです。

ところが2012年、13年のスペインのGDPは、当然に、数%のマイナ
ス予想です。世帯も企業も所得が減るため、借金の利払いができな
い。つまり、スペインの債務は、ほぼ全部がデフォルトします。

ユーロに属したため、生産性を超えて賃金が上がりすぎたことが主
因の失業率は24%と高く、ギリシアの22%を超えて世界で最高です。

4人に1名が失業し、25歳以下では、要求賃金を1/2くらいに下げな
いと半分の人が働く場所がない。これでGDP(≒世帯所得+企業所
得)が伸びるわけもない。逆に縮小です。

▼南欧の不動産バブルの、同時崩壊

スペインでは、ユーロ加盟のあと、2.5倍に上がっていた不動産バ
ブルの崩壊が生じています。ユーロ加盟前の2000年の住宅価格を
100とすると、2008年には、全国平均でも250(2.5倍)に上がって
いたのです。完全な不動産バブルで、このために、世帯と企業の借
金が増え続けました。

【住宅価格】
2000万円の普通の住宅が、平均でも5000万円に上がり、元々の資金
は海外から銀行に来たローンで、世帯が買ったということです。

250という価格は、全平均です。都市部やリゾートの、人気のある
地域では300~400に上がった住宅も多かった。

(注)PIIGSで資産バブルがもっとも激しかったアイルランドの住
宅価格は、1995年の6倍にも上がり、2008年から暴落しました。

2012年現在で、スペインの住宅価格は(スペイン政府の公的な統計
で)180付近に、28%下げています。住宅価格は、近々、100に戻り
ます。もっと下げて1995年の価格(70以下)に下がる可能性が高い。

ギリシア、イタリア、ポルトガル、スペインという南欧全域の住宅
価格の下落は現在進行形です。新しく住宅を買える人は、スペイン
には極小です。このため、下げは大きくなります。

不動産価格の下落によって、企業と世帯の債務(合計で232兆円)
のうち、最小でも50%(116兆円)は、回収が不可能な不良債権に
なります。

スペインは、住宅と土地価格の下落という要因だけからでも、GDP
(110兆円)に匹敵する不良債権が生じます。これも、確実なこと
です。

政府統計の不良債権は、まだ貸付額の9%に過ぎませんが、これも
明らかな擬装です。(↓以下の36ページ)
http://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh12-01/pdf/s1-12-2-1-1.pdf

日本に例えて言えば、名目GDP(469兆円)の金額に匹敵する住宅
ローンや企業ローンでの不良債権が生じることに等しい。上がって
いた不動産が下がるとローンを抱える企業と世帯は、破産します。
この寸前にあるのが、スペインです。

銀行はローンの返済と利払いを猶予していますから、企業と世帯に
破産が生じていないだけのことです。このため、銀行が資金不足で
破産します。

スペイン債は、下落の予想が多いため、市場で売れません。
政府も国債を発行して、銀行に資金を入れる手段がない。

日本の債務問題は、GDPの2.2倍(1050兆円)の、政府部門の債務
です。世帯や企業の債務は、少ない。

スペインでは政府より、世帯と企業の債務が多い。このため、ECB
がスペイン国債を買う程度では、スペインは救われないのです。

▼対外債務はGDPの171%(188兆円)

政府の国債より民間企業の債務(150兆円)、世帯の住宅ローン債
務(82兆円)が多い。それに、統一通貨ユーロへの加盟以降に
(2000年から)、ドイツ、フランス、英国から借りた対外負債が多
い。

●スペインはGDPの171%(188兆円)がドイツ、フランス、英国、
オランダなどから借りた対外債務です(世銀統計)。GDPの1.7倍
の対外債務は、日本に例えて言えば、469兆円(GDP)×1.7倍=
800兆円の対外債務を抱えていることに等しい。

「利払いと絵返済は、とても無理だ」と誰にも分かる額です。

対外資産(582兆円)から対外債務(329兆円)を引いた対外純資産
が253兆円の日本とは、異なります(11年12月末)。こうした対外
純資産の構造をもつのは、日本、ドイツ、スイス、中国です。
http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/iip/2011.htm

■2.ギリシアに続く、スペインの銀行預金の取り付け

スペインの民間銀行の預金は、1兆6250億ユーロ(162兆円:12年4
月:ECB統計)です。この預金は、2011年央から、毎月ほぼ1%の
ペースで減少し、今までに約10%(1600億ユーロ:16兆円)減って
います。

ECBの統計では、2012年4月だけで、総預金の1.9%が流出したとし
ています(ロイター)。銀行預金の取り付けで、ギリシアを追って
いるのがスペインです。この預金減は、ECBの公的統計です。

財務大臣は、「スペインに預金とりつけは起こっていない」と否定
しています。預金が大きく減ったデータは出せません。逆に増えて
いるデータを出す。その中に、ECBからの借入増が含まれても、で
す。

●実態では、上記の公的統計をはるかに上回る預金取り付けが起こ
っていると見ます。推計で公的統計の3倍(30%:48兆円)の預金
の減少でしょう。 

ギリシアが政府債務を擬装していたように、南欧政府にとっては、
こうした擬装は稀(まれ)ではない。

財政再建の政府計画も、信用に値しません。
数ヶ月後には、変更することを続けています。

■3.スペインの債務は、ユーロにとって大きすぎる

スペインの債務の規模は、ギリシアの5倍(約400兆円)です。

預金者は、ギリシアについで、スペインも、ユーロ離脱を迫られる
恐れを感じています。ペソに戻れば、ギリシアのドラクマと同じく、
預金者が大損をするからです。スペインでもギリシアのように、預
金取り付け(Bank Run)が進むことを防ぐ手だてはない。

政府による預金封鎖やペソ回帰の噂が立てば、預金者の取り付けは、
一層勢いを増します。自分が、スペインの銀行にユーロで預金して
いると想定すれば、簡単にわかるでしょう。

預金取り付けが進めば、スペインの債務(400兆円)のほとんどが、
不良化します。銀行の金庫は、ほぼ5%の預金減で枯渇します。

銀行が、預金者からの引き出しに応じるには、ECBがユーロを貸し
付けるしか方法はない。それがないと、銀行窓口の閉鎖です。

EU(欧州経済連合)では、スペインの銀行に対する数兆円の資本提
供が検討されていますが、足りるはずもない。

ユーロに属するままでも、ユーロから離脱しても、EU(欧州経済連
合)にとっての結果は、同じです。ECBがスペインの銀行に不足す
る資金を印刷し、貸し付けねばならない。

(注)ギリシアとスペインの富裕者の預金は、ドイツとスイスフラ
ンに逃げています。日本からも、もし買うならスイスフランがいい
でしょう。

▼貸しつけた、欧州の銀行の損失

スペインをデフォルトをさせ、スペインの対外債務188兆円を切り
捨てれば、債権をもつドイツ、フランス、英国の銀行、及び、CDS
での保証債務を抱える米銀には、ECBが資金供給をせねばならない。

両方とも、結果は同じであり、要は、ECB(欧州中央銀行)のユー
ロ印刷です。

ギリシアやスペインのユーロからの離脱で、事が解決するわけでは
ない。

ECBは、スペインの銀行に、これから不足する資金(推計200兆円)
を増加印刷し、貸し付けができるのか? 

【LTRO枠は1兆ユーロ】
昨年12月と今年1月のLTRO(国債購入と3年物長期資金の供給オペ)
の金額枠は1兆ユーロ(100兆円)でした。ECBは、無条件で、即時
に資金が不足する銀行に貸し付けをすると表明したのです。

LTROとして100兆円というECBの発表によって、一時的には(12年2
月~3月)、ユーロはPIIGSの債務危機を脱出したと見られたのです。
このため、世界の株価も上がりました(12年2月~3月)。

しかしPIIGS債の下落対策に、1兆ユーロでは足りなかった。足りな
い資金しか準備しなかったのは、EUが、PIIGSの不良債権を、見積
もることができなかったからです。

加えて、その後の原因は、2つです。

(1)外為売買で、ユーロの銀行から、ドルと円に向かってユーロ
資金が脱出したこと。ユーロ売りによるユーロ安、円買いによる円
高です。
(2)ギリシアとスペインで預金取り付けが起こり、銀行の資金が
減ったこと。

つまり、ユーロの銀行に貸したECBのマネーは、ユーロ売りと預金
取り付けによって、抜けてしまったのです(12年4月~)。

以上で、第二部を終わります。次稿は、また、すぐに配信します。


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【有料版の最近号の目次】

<598号:中央銀行によるマネー増刷の意味>
  2012年6月6日号:紙幣の本質

【目次】

1.米国から:一流の気(き)が消えている『プラザ・ホテル』
2.国の株価とも言える「通貨」:外為市場はどこにある?
3.どの国の銀行で、外為取引が行われているか?
4.真の世界銀行と言えるBIS(国際決済銀行)
5.中央銀行が独占的にもつ通貨発行権が意味するもの
6.500兆円のマネー増発にかかわらず、インフレは起こっていな
いが・・・

【後記】

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