旅の随想: デスティネーションは何か?
This is my site Written by admin on 2004年7月5日 – 08:00

こんにちは、吉田繁治です。ロスアンジェルスに来ています。とは言
っても、日本に帰るのは明日です。3日間という、つかの間の旅行で
す。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  <Vol.192:旅の随想: デスティネーションは何か?>

【目次】

 1.見ること
 2.デスティネーション(目的来店性または目的購買性)
 3.「個客」との直接のつながりから
 4.結びつきの指標:Key Perfomance indicator
 5.総合化からマイクロ・セグメントへ向かった変化の潮流
 6.アルバートソンズも実験
 7.セイボン(Sav-On)の品揃え作業での実験
 8.ビバリーヒルズ・ホテルのアンバランス

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■1.見ること

▼体験から表現まで

一般には「取材ツアー」と言う。要は、観察。今回は、関係先からの、
好意で出された車に乗りフリーウェイを走った。

目にとまったところで止め、店、レストランそして街と人々を見る。
デジタルカメラで写真を撮りメモをする。見たものによって喚起され
た、他の映像と言葉を使って考える。

「見ること」で処理しきれないくらいのビット数(=大量)の情報を
受け取る。知識とは、自分にとって既知のものと未知のものを関係づ
け、整理する力でしょう。

【体験→(知識:関係づけ)→経験→表現(言葉)→共有】
既知のものと未知のものに、関係の筋が見えたとき、、バラバラだっ
た情報が、新たな知識としてオーガナイズ(有機化)される。

知識によって、体験が他の人にも伝えることのできる開放的な経験と
言葉になる。そして表現ができる。表現は他の人と共有できる言葉に
よって行う。

知識=自分にとって既知のものと未知のものを、言葉で関係づける
   脳力

【経済と商品】
経済は、生産され販売された商品の金額での統計です。
経済の数字は、その内容を、商品から見なければならない。

作られた商品は誰かに買われ、使われることを目的にする。
企業活動は、販売とその後の使用を目的にする。

たくさんのお客を集める店舗やレストランの変遷が、ロスアンジェル
スでは、とりわけ早い。半年も経てば、様変わりする。

経済の中身の変化が早い。年2回の定点観察地として、ロスを選ぶ理
由がこれです。商品とサービスの内容変化を、定期に見て歩く。

(注)米国の商品販売額(小売総額は約350兆円:日本の140兆
円の2.5倍)は、平均で年7%くらいの増加です。10年で2倍に
なる速度。他方、わが国は小売総額では10年も横ばいです。

▼変化の速度

なぜ変化が早いか?日本の大都市、あるいはマンハッタンなどの旧い
街と違い、郊外に安く広い土地がいくらでもある。新規参入の必要投
資額と、垣根が低い。

【モデル化という方法】
新しいフォーマット(経営方法と店舗業態)の実験店を、各社は、競
争が激しいこの地に出す。成功するフォーマットを固める。標準化を
図って、他の地域に横展開する。

モデル化手法です。モデル化は、設計図作りです。西欧的な頭脳は、
新しいもののモデル化に優れる。他方、日本的な頭脳は、モデルの改
善に卓越したものをもつ。これが日本人の競争力でしょう。

【自動車社会】
しかし、ロスアンジェルスに典型的に見える自動車社会の意味は、狭
い国土に肩を寄せ合って生きているわれわれには「感覚的に理解しが
たいところ」があります。

巨大ショッピングセンターの店舗間を歩けば、相当に遠い。なぜこん
なに大きな、人を疲れさせるものを作るのかと言いたくなる。

理由は、私が歩くからです。広大な駐車場を歩けば、遠い。どこへ行
っても、新宿副都心の高層ビルの間を歩く感じ。5分と見積もれば1
5分。距離感が、私の目と合わない。(笑)

1店舗を10分くらい見て、全部の店舗から店舗へ歩いているのは、
ふと気がつけば見たものからモデル化を図ろうとする職業意識に駆ら
れた私だけでした。

顧客として来た人々は、直接に、あらかじめ決めた目的の店舗の駐車
場に車をつける。目的は1店舗です。歩く距離は、相当に短い。

ロスに住んでいる人に聞けば「そう言われれば、は歩くことは少ない
ですね」と答える。フィットネスセンターやジョギングが流行る理由
です。

広大な都市ロスアンジェルスを、人々は歩かない。アクセルとブレー
キを踏む。石油が高くなることは、財布を直撃します。

米国では60%の大衆の賃金は、第一次オイルショックの70年代以
降30年も、(物価上昇率を引いた)実質額で増えてはいない。(賃
金格差の時代に向かう今後の日本を象徴します。)

高速の移動手段を与える自動車社会がもたらすものは何か? 
競争要素としての、デスティネーション(目的来店)性です。
今は、もっと高速な、世界の店舗や商品を同時、同列に、一瞬で比較
できるインターネットも加わった。

▼商品情報の非対称性の解消

インターネットで商品や店舗を検索し、価格を確かめて買い物に出か
けるのは 普通の行動です。わが国もあと1年でそうなる。来年は世
界のブロードバンド元年。わが国では、携帯電話をきっかけに、主婦
と高齢者のインターネット利用が増えている。

世界のインターネットユーザーは8億人(2004年) わが国は,
複合機能をもつi-Mode等の利用が6937万人になった。i-Modeから、
コンピュータのインターネットに進む人が増えています。

企業側が多くの商品情報を持ち、顧客の商品情報は少ないという「商
品と価格情報の非対称性」が解消しつつあります。逆に、自社商品し
か知らない企業側が、商品情報で劣位に置かれる。

これが、今後の商売を根底から覆すことになる新しい要素です。

米国で「他店の価格より、高かったら、その差額を返金します」とい
う店舗が増えた理由でもある。価格に不安があれば、気に入ったのが
見つかっても顧客は買わないで済ます。

(注)国内航空券の予約は、わが国でも40%がインターネットから
です。旅行代理店は、これによって激変した。

■2.デスティネーション(目的来店性または目的購買性)

▼目的購買

改めて気がついたことがあります。<目的購買>ということです。

とりわけワンフロアの巨大店(各店が3000〜6000平米以上)
が多いロスアンジェルス地域では、顧客に対し、店舗に来る前に、は
っきりした「目的」を与えなければならない。

重要な点は、「店舗に来る前に」ということです。ホテルに行く前に、
商品を買う前にと言い換えてもいい。

レストランやサービス業も同様です。レストランやネールサロンにも、
歩いて行く人はほとんどいない。ファスト・フードやファミリーレ
スラン以外では、夕食は、予約をして出かける。顧客の行動範囲は広
い。時速100キロくらいで、風を切って飛ばす。

自動車社会の極点、ロスアンジェルスでは「目的来店性」が際立って
いないと、どんなにいい店舗集合のところにあっても、車は通り過ぎ、
存在そのものが消える。

逆に、際立った特徴があれば、小さな店舗でも商圏は、時には世界に
向かって広くなる。インターネットと物流のロジスティクスが結びつ
くからです。

▼鍵になること

顧客の「記憶」の中で、店舗、料理、サービスの特徴、つまり他店と
の「差異」を、どう印象づけことができるか? そのためにどんな方
法をもつか? ここが分かれ目です。

差異を鮮明にしないと、顧客に記憶されない。車を走らせて行くよう
な、目的の場にならない。徒歩で散策しふと立ち寄ってみようと思う
人は、車を持たないホームレスや旅行者以外はここではほぼゼロでし
ょう。

徒歩を前提にしていた狭い国土の西欧や、日本の都市と異なる点です。
小さな店舗が集まる繁華街は、徒歩での、ふらりとした来店が期待
できます。

日本の百貨店、古い量販店、商店街、温泉旅館の多くが凋落した原因
のうち根本的なものは、自動車社会で必要な、価値の差異化のデステ
ィネーションを作り得ていないからです。(今からでも遅くない)

わが国でも、だれもが自動車社会と言う。しかし、そこからの意味を
考え、設計図を描き実行してはいない。手法が変わらねばならないの
です。

もちろんロスにも、観光客を相手にし徒歩を前提にするところも少数
(国際ブランド店が集まったロデオドライブ等)はあります。

しかし多くは、単独での立地と言っていい。個々の店舗に、車を止め
させる差異性の価値がなければならない。デスティネーション(目的
地から転じて、目的購買性)と言います。

商品と自店が、他と違うどんな目的を与えることができるか。ここで
は、そのための差異を作らなければ、存在が消えます。

ロスアンジェルスでは、わが国では見えにくい、そうした差異化の経
済価値を、ありありと見せてくれます。

■3.「個客」との直接のつながりから

自店を支持してくれる「ファン客」を作ると言ってもいい。店舗集合
での、寄り合い立地ではなく、単独の店舗(またはレストラン)と顧
客の結びつきです。

方法は、とても小数のファン客作りの設計図作りからです。「個客」
は、顧客ではない。顧客集合で考えれば方法を誤る。個人名で考えな
ければならない。発想の始点はそこです。

「有力客の1名である斉藤さんから、今よりもっと強い支持を受ける
には、何を付け加えるべきか?」 ここから、21世紀のマーケティ
ングの方法が始まる。マスはいない。

あらゆる発想の元になっているマス・マーケティングから、激しく離
脱することです。しかし相当に、これは難しい。難しいから意味があ
る。ほぼすべての良質なビジネスシ書は、つきつめれば、それだけを
述べています。繰り返し述べられる理由は、まだ実行がともなってい
ないからです。

20世紀=〔マス・マーケティング〕→〔個人〕
21世紀=〔個人〕→〔マス・マーケティング〕

個人からの方法は、より身近です。中世の職人的な方法と言ってもい
い。個別対応を、情報システムで方法化し、コストダウンする。

競争店や競争商品がでれば、すぐにスイッチするような多くの顧客と
の浅い関係は、ファン客とは言えない。

あなたの会社の、または店舗の、あるいは商品とサービスの他と違う
特徴は何ですか?車を20分も走らせて、行くことで得られる、他と
違う価値は何ですか?

強烈なマーケットセグメント(他との違い)を作るべきことを、この
地の競争は教えてくれます。日本も、次第にそうしたマーケットに転
じています。

▼希望の設計図

ある会社で、今、「顧客が、あなたの店舗に来てくれている理由は何
か? 一層多くの顧客を惹きつけるには、何を、今よりもっと鮮明に
強化しなければならないか? 他と、クリスピー(鮮烈に)差異化す
るべきことはなにか?」を問いかけ、作っている最中です。

約半年、ここを観察した。他にない強みは、「売上げ対比での、コス
トの低さ」になり得ると判断した。

あと半年で、この会社も様変わりすることが確信できる。役員の言動
と表情が、目立って変わってきた。従来の価値観に誤りがあったので
はない。一生懸命ではあっても、方法に固定化があった。

過去の誤りを、素直に認めることができるようになってきた。誤りを
、「心理的な歪みを包み込んで素直に認めること」が、実は、もっと
も難しい。乗り越える強さが必要です。

心理的な強さは、あたらしい方法で実行したことの「小さな成功」か
ら得られます。30%も顧客数が増えた。

こうしたきっかけを、アイス・ブレークとも言う。氷の壁に小さな穴
をあければ、一旦空いた穴は大きくなる。変革はそこから始まる。

ビジョンが言葉だけでなくなって、切実な希求になるのは、素直さが
与える強さからです。アイス・ブレークが、事実を認める素直さを与
える。

希望が方法となって、具体的な形をもったとき人と組織は強くなる。
どんなビッグビジネスも、過去に実現したものに意味があるのではな
い。

過去は、希望をもたらさない。希望は、方法と未来を言葉化すること、
つまりはモデル化、つまりは希望の設計図から来ます。

過去と未来をつなぐ機能がリーダシップです。

■4.結びつきの指標:Key Perfomance indicator

日本でも、商圏人口の多さを基盤に、物事を考えればいい時代は終わ
った。商品や店舗(または企業)と、個々の顧客との結びつきの一層
の強さを作らねばならない。

マーケットシェアより、もっと重視すべき指標(KPI:Key Perfomance
indicator)は、取り扱っている品種での「個客内シェア」です。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
・マーケットシェア=自店客÷商圏人口
・「個客」内シェア
  =ある品種の商品の、自店での購入額÷その品種の平均需要額

・売上=商圏の総需要額
         ×〔マーケットシェア〕×〔「個客」内シア〕
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

・A社=20億円=1000億円×10%×20%
マーケットシェアは10%、しかし「個客」内のシェアは20%。「
個客」は残り80%の商品を他社から買う。この80%を、ロストセ
ールス(lost sales:失われた売上げ)とも言う。

・B社=20億円=1000億円× 5%×40%
マーケットシェアは5%、しかし「個客」内シェアは20%。
「個客」は残り60%の商品を他社から買う。ロストセールスは60
%であり、A店の80%より低い。

両方とも、結果は20億円の売上げです。今後より強いのはB社です
。B社とA社が同じ商圏で競争すれば、最終的には以下になる。

B社=1000億円×マーケットシェア10%×「個客」シェア40
%=40億円

▼要点

(1)多くの顧客に浅い結びつきの関係をつくる<マス・マーケテ
   ィング>ではなく、
(2)<個々の「個客」と深く長期的に継続できる関係>を作るこ
   とです。

「個客」の1名を失うことはその裏で見えない100人を失うことで
あり、1名を獲得することは100名を獲得することです。

これは、心がけの精神訓話ではなく、実際のことです。

■ 5.総合化からマイクロ・セグメントへ向かった変化の潮流

最近の、新しい現象として注目している店舗のひとつに、<In-n-Out
(イン・アンド・アウト)>というハンバーガーショップがあります
。(以前も、ちょっぴり取り上げました)

商品はチーズバーガー、ハンバーガー、フレンチフライだけです。単
品メニューのマイクロ・セグメント店。(一方、大手のマクドナルド
やバーガーキングは、商品が「総合化」しています)

ダブルバーガー $2.65:チーズバーガー $1.75:ハンバ
ーガー $1.50:フレンチフライ $1.05のみのメニューで
す。

遠隔地の工場で作って、現場では温めるだけの「セントラルキッチン
方式」でなく、注文を受けたあとその場で作る。<make after order
> 、多少の時間を要します。作るところが見える。

フレンチフライも、一個ずつ、じゃがいもの皮をむきカットして、そ
の場で揚げる。油と温度に工夫があり、クリスピーな感触があって油
っぽさがない。

ハンバーガーの味は、マクドナルドとは違っていて、まるで別物です。
脂分と調味料は少なく、これがハンバーガー本来の味かと思えるよ
うな「原点の味」です。飽きがこないおいしさを、感じさせます。こ
の味には、相当な研究が背景にあるはずです。

厨房の中の、多すぎるのではないかと思える社員は、純白のシャツに
真紅の前掛をし、白いコック帽を被っている。店舗も白を基調色に、
赤をあしらっただけで、殺風景に見えるローコストな設備。

一度行って、気になっていました。普段ハンバーガーを食べることは
稀ですが、ここだけは、また来ようと思っていた。

信号で車がとまったとき、看板を見かけ立ち寄った。数年前、最初に
来たときの「ここには何かがある。これは伸びる。」という直感は、
間違っていなかった。今、店舗数を急速に増やしています。

店舗のイメージ、商品、歴史そして哲学は以下のページを見ればわか
ります。

http://www.in-n-out.com/

The Snyder’s business philosophy was simple: “Give customers
the freshest, highest quality foods you can buy and provide them
with friendly service in a sparkling clean environment.”

シンダー(創業者)の事業哲学は単純だった。最高にフレッシュで良
質のものを、フレンドリーな態度で、はじけるように清潔な環境のな
かで提供すること。

創業は1948年、相当に古い。なぜ最近になってブレークしたか、
です。まず価格が安い。味がいい。フレッシュでローカロリーの印象
がある。社員の勤務年数が長い。社員はアルバイトとの印象がない。
理念がしっかりしたファミリー的な雇用です。

ファスト・フードにつきものだった量産工業の食品、マニュアルワー
クの素人アルバイトというイメージを消している。メニューは極限に
まで限定(マイクロ・セグメント)され、厨房の動作は単純です。

単純作業では熟練の完全作業が行える。一個一個注文を受けたあと、
手作りをする。待つ理由が分かる。

そして、何よりも大切な「これは本物のハンバーガー」という印象。
マヨネーズで甘ったるいマックが嫌いな人も、ホンモノは食べること
ができます。

以上にあげた各要素で、全米に広げようとすれば広げられるような2
1世紀のビッグビジネスの予感を感じさせます。

ハンバーガーという一番ありきたりの商品に、味を含め価値の差異化
の方法、ブランド化の方法がいっぱいある。最大手が、今は相当に苦
戦している業界だからこそです。(注)ブランド化は、顧客の期待を
満たした続けることです。

<In-n-Out>の方法に未来を感じます。「小さなところでの完全さ」
の追求が、21世紀のビッグビジネスになる。

顧客は、マクドナルドを典型とする過去のビッグビジネスに、不満を
感じているのではないか? 

自然、新鮮、清潔、完全、人間、友好、こうしたものの価値でしょう。
ファスト・フードやレストランだけではない。他の商品でも共通です。
完全、本物、コストダウン、これらが差異になる。

■ 6.アルバートソンズも実験

アルバートソンズと言えば、年商約4兆円、全米31州に、2,287店を
展開する食品スーパーでは世界ナンバーワンの優秀企業です。

http://www.albertsons.com/abs_aboutalbertsons/

アルバートソンズが実験店(Santa Fe Springs地区)を作っています。
行って驚いた。

直線的に整理された近代工場のような従来の店舗から、ナチュラル、
オーガニック(有機栽培)、世界のグルメ、木質の壁面と棚、いたる
ところにディズニーランドを模したコックの人形、手作り、古風さ、
そして市場を演出する店舗です。

まるでアルバートソンズではない。近代に対し、西欧の古い食品スー
パーのような味わいの「ポストモダニズム」

どこかで見た店舗に似ていると思えば、オリジナルはコネチカット州
にある究極の繁盛店、スチュー・レオナルズでした。

http://www.stewleonards.com/

有機栽培の食品を売り市場のような感触をもつ、人気店ホールズ・フ
ードにも似ています。両店は業績を伸ばしています。Wild Oats(
食品スーパー:Long Beach)も同様です。
http://www.wholefoods.com/
http://www.wildoats.com/app/cda/oat_cda.html?pt=Home

90年代の中期以降、米国食品スーパーの潮流が変わった。食品スー
パーは、どの国でももっとも早くしかも大規模に、消費傾向の変化を
見せてくれます。私がいつも食品スーパーを先行現象として注目して
いる理由です。

大きな傾向をみれば、従来の近代工業風のアメリカの価値観が、ポス
トモダニズムへシフトしているのではないかと思えます。前述したイ
ン・アンド・アウトにも共通します。

モダニズムとマス・マーケティングのアメリカも、今、変わりつつあ
る予感がします。

店舗整理を図って再建中の4兆円ビジネス、Kマートにも行った。こ
の店舗が持っていた、量産のモダニズムと価格・品質での価値観は、
すでに過去のものです。

この価値観(=企業文化)を変更するには、5年を要するかもしれま
せん。今のままでは、その前に、消えてしまうでしょう。

再建であっても暫定的な商売は、決してやってはいけない。その間に
失望した顧客は戻って来ない。今、Kマートは、過去の顧客を日々失
っています。再建の方法を、根本で間違えている。

http://www.kmart.com/home/index.jsp

価格の安さ以上に、全商品の品質の悪さが目立つ。通路が無意味に広
く、なぜこんなに広いかと一瞬考えた・・・あぁ、ベンダーからの商
品集荷が困難になっている。二流商品しかはいらない。倉庫のように、
不揃いに商品が並んでいる。商品の豊富さのかけらは、見事に消え
ていました。

売り場はROSSのようなオフ・プライス・ストアの殺風景な風情。
(注)ROSSはネームブランドの、B級品の半額または70%以上のディスカ
ウントに特化した価値があって、人気店ですが。
http://www.rossstores.com/

■ 7.セイボン(Sav-On)の品揃え作業での実験

セイボンは、アルバートソン系の大手ドラッグストアです。ここでは、
商品本部と店舗をつなぐ商品構成(棚割り:商品の陳列方法)で、
世界初の実験を行っています。

http://www.savon.com/

▼棚リボンの実験

商品の陳列棚の棚札(価格、商品名、商品コード、商品規格等を印刷
したもの)が、今までのように一枚一枚独立したものではなく、18
0センチメートルの細長いリボン状にしています。技術を見て解析す
るセンスをもつ関係先の人から、聞いて訪問しました。

一枚のリボンに、その棚に並べるべき、5から12の商品の棚札が、
つながってプリントされています。棚に目を凝らして見ると分かる。

リボンを、指定された棚の前部ケースに入れれば、
(1)陳列すべき品目(SKU、あるいはアイテム)と
(2)陳列面の指定数(フェース数)と場所までが、
(3)誰もがわかるようにビジュアル(視覚的)に示される。

品目単位で行っていた売り場での商品陳列を、180センチメートル
の棚単位にまとめたものです。カテゴリ品揃えでの、セット化の方法
と言ってもいい。約60%の棚で使っていた。

上流の物流センターと店舗現場に、一括作業を行わせることによって、
店舗の品揃えの管理化を図り、最適に維持する仕組みです。この方
法は、今後、世界に普及するでしょう。普及させる活動をします。

(注)管理化は、全店共通の品揃えということではありません。店
舗の規模と、店舗特性の分類から数種のパターンを作ります。

この「棚リボン法(仮称)」は、商品の種類が数万もあり数千店もあ
るために複雑になって難しかった、売り場の商品構成と品揃えの管理
を、完全作業にするためのものです。

こうした業務アイデアは、売り場でもっと大きな問題を抱える作業に
ついての、作業分析から発案される。これが技術革新です。

わが国の小売業では、売り場作業の完全化を図ることによって生産性
を高めるような研究と実験が、相当に遅れています。いつもこれを感
じる。しかし、技術モデルを見つけたときの学習力はある。

販売促進と、発生した結果である死に筋カットや欠品退治をおこなう
ことだけが、店舗作業ではない。

原因にさかのぼって、品揃え作業の完全化(=商品の計画化)を図る
ことを行わなければならない。作業の完全化のために、研究費とコス
トをかけることです。作業の完全化が、結果として運営コストを下げ
るからです。

作業原理:コストをかけた作業の完全化が真のコストダウンである。
不完全な作業こそが、コストアップの真の原因である。

一見ではコストが高いように見える完全作業は、物事を一回の処理で
終わらせます。他方、コストが低く見える不完全作業は、あとで余計
な修正と追加作業を必要とし、逆にコストを上げます。

(注)三菱自動車の痛切な事例は、一見ではコストが低く思える不完
全な対策作業を、各所で重ねた結果です。表面の糊塗こそは、不完全
作業の最たるものです。モラルを問う以前に、売上げ結果だけで塗り
固める企業体質があった。

■ 8.ビバリーヒルズ・ホテルのアンバランス

滞在3日間のホテルは、イーグルスが「ホテル・カリフォルニア」の
ジャケットに使ったビバリーヒルズ・ホテル(The Beverly Hills Ho
tel)でした。
http://www.thebeverlyhillshotel.com/

▼蘇鉄と椰子

ビバリーヒルズの小高い丘に、蘇鉄(そてつ)と椰子(やし)の林に
囲まれ、ピンクの外壁で立つスペイン風の建物。碧(みどり)の芝生
には、赤い草花が、鮮やかに溢れる。ホテル内は、静寂です。

http://www.hotelcal.com/

On a dark desert highway
Cool wind in my hair
Warm smell of colitas
Rising up through the air
Up ahead in the distance
I saw a shimmering light
My head grew heavy, and my sight grew dim
I had to stop for the night
There she stood in the doorway
I heard the mission bell
And I was thinking to myself
This could be Heaven or this could be Hell
Then she lit up a candle
And she showed me the way
There were voices down the corridor
I thought I heard them say・・・・

部屋にはいれば、南洋風な天蓋(てんがい)がついた高いベッド面の
シーツが、木綿が繊細な絹のような柔らかい感触を与える。この緻密
な感触は、香港のペニンシュラのシーツと共通します。

ガラスのテーブルにはバスケットに果物が盛られ、バスルームは8畳
くらいと広く、外の棕櫚が見える浴槽は深く、バブルジェルがふんだ
んに使える。陶器の浴槽を指でなでれば、キュッと音がする。

クロゼットを含め設備と備品、古風な家具、南国のカラーコーディネ
ートも完全で申し分がない。フロントやドアマン、そして室内係のサ
ービスも、チップを自然に与えたくなるように高質でハイタッチです。
何ら、言うべきことがない。

無料の高速インターネット接続もあっていいホテルを選んだと満足し
ました。

▼朝食が・・・

アメリカン・ブレックファストのルームサービスを頼みました。
朝食の豊かさは1日の活動のエネルギーの元です。

期待して口にすれば、絞りたてであるはずのオレンジ・ジュースは、
砂糖を入れたように甘く飲めない。ベーコンは、ひからびているだけ
でまるで滋味がない。目玉焼きの卵も不味い。そしてパンも不味い。
コーヒーは苦いだけで、香りと芳醇さが蒸発しています。

多くのホテルの朝食の中で、最悪の部類でした。ショッピングセンタ
ーの、フード・コートにあるファスト・フードの味です。

豪奢な白いテーブルクロスと、言葉遣いが上品な、礼装をした年配ウ
ェイターとともに、この朝食が現れたのですから、驚いた。

一体どうしたことか? 設備と人的なサービスの申し分のなさと鮮烈
に対照される低品質です。サンフランシスコのスタンフォード・ホテ
ルとは言わないまでも、もうすこしなんとかならないものか・・・ス
タンフォードホテルは、クロワッサンが極上です。

これほどのアンバランスに遭遇するのは、稀です。先月泊まったNY
のルネサンスホテルの朝食は、素晴らしかった・・・

デスクに、ホテルの品質評価を問うアンケート用紙があった。「朝食
は、期待を激しく下回る内容だった。残念! あとはすべてGood。
早急な改善を希望する。」と、署名を入れて書いておきました。

店舗見学をお世話いただいた関係先の方と、このホテルでディナーを
とろうかと思っていたのですが朝食に恐れをなしやめた。このホテル
は、食事なしで泊まれば5スターのレベルです。(笑)

恐らくレストラン部門のマネジャーに問題がある。周囲の誰も意見が
言えないオーナーの親族がマネジャーなのかもしれません。他山の石
として、銘記すべきことです。支配人からの返事が、来るでしょうか?
 ビバリーヒルズ・ホテルの今後が、占えるでしょう。

要求水準を高くした評価ではないのです。

<in-n-out>が提供する「実質の価値」を学ぶべきでしょうね。

ホテルからビバリーヒルズを上に歩けば、次第に森になる。住宅の門
は、森に隠れる。木々は巨大です。森の中に、柔らかい芝生の空間が
あって、十分すぎるくらいの広さの邸宅がある。金融関係のユダヤ人
が多く住むと言う。

不動産屋に聞けば、ビバリーヒルズに住む人の、住民回転率は意外に
速いと言う。買った途端の会社破産も多い。破産しても、会社の売却
で個人資産は守る。個人の連帯保証は、発達していない。

マーケットマネーを、個人保証が要らない株式や社債で調達する。こ
こは、アメリカだった。

【書籍】
先日、講演に行った北海道の上場企業で、『利益経営の技術と精神』
を読み、会長・社長が衝撃を受け、幹部社員約300名に読むことを
義務づけたと聞きました。著者冥利(みょうり)に尽きます。

熱烈な支持と中身が難しいという評価に二分されているようです。情
報システムをどう使ったかで、分かれます。次第に、いろんな企業に
浸透しているようです。20世紀型の統制型組織の限界を示し、21
世紀の、現場が自律的に動く組織をデッサンするものです。

http://www.amazon.co.jp

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     【ビジネス知識源 読者アンケート 】

読者の方からの意見や感想を、書く内容に反映させることを目的とす
るアンケートです。いただく感想は、とても参考になります。

1.テーマと内容は興味がもてますか?
2.理解は進みましたか?
3.疑問点は?
4.その他、感想、希望テーマ等、ご自由に
5.差し支えない範囲で読者の横顔情報があると助かります。

コピーしてメールにはりつけ、記入の上、気軽に送信してください。

↓著者へのメールのあて先
yoshida@cool-knowledge.com

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

▼本無料版と姉妹編である有料版の、最近のものの目次です。
 
<161号:あなたの会社がなくなって困る顧客は何人?(4)>
  
 1.講演後の刹那(せつな)
 2.関係価値
 3.関係価値を高める、基本の方法
 4.Recency/Frequency/Moneyの重みづけと利用法

 <162号:あなたの会社がなくなって困る顧客は何人?(5)>

 1.「個客」別の利益
 2.大衆から
 3.(久々の蛇足ですが・・・)弁証法的な発想:発想をふくら
ませます
 4.共通コモディティが50%に減少
 5.カスタマー・エクイティと売上げ
 6.RFMはいずれも上位20%から

▼申込み月の既発行分は、その月の全部を読むことができます。

※申込み月の1ヶ月分は発行分を無料で試読ができます。
 無料期間の1ヶ月の後の解除も、拘束はなく自由です。
 ↓
http://premium.mag2.com/

(1)初めての会員登録で、支払方法とパスワードを決めたあと、
(2)受付メールが送ってきて、
(3)購読誌の登録です。
(4)バックナンバーの購読も月単位でできます。

【↓会員登録の方法の説明】
http://premium.mag2.com/begin.html

【↓購読誌の登録】
http://premium.mag2.com/mmf/P0/00/00/P0000018.html

Comments are closed.