こんにちは、吉田繁治です。耐震偽装では生活の安全が、そしてラ いずれも、経済取引でもっとも重要な基盤である「信用」を裏切る ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <Vol.226 時事問題に絡んで:ライブドアのビジネスモデル> 本稿の目的は、ライブドア事件を素材に、およそ80年代の米国発 【目次】 1.耐震偽装が明らかにしたこと ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.耐震偽装が明らかにしたこと ▼1050万軒 国土交通省の推計では、現在の基準に照らすと、耐震性に不備があ 住宅以外の学校・店舗・商業ビル・オフィスビル等の特定建物でも、 日本の住まいの4軒に1軒、住宅以外の建物も4棟に1棟が、耐震 11月に発覚して以降、新築と中古マンションや住宅では、契約の 新築住宅の着工は、年間で18兆円(130万戸:05年)です。 05年12月のマンションの契約率(業者発表の政府集計)では、 大手ディベロッパーに、同様の偽装販売が波及すれば、事態は一挙 ▼確認検査機関 耐震偽装では「公と民の確認検査機関」が機能を果たしていなかっ 確認検査は、妙な言葉です。事実上の「建築許可」であるにもかか ▼結論 行政の不作為の罪を含んだ、法と制度の不備です。住宅、国防、食 ■2.偽計取引と粉飾会計 ライブドアの偽計取引と粉飾会計では、監査役と、監査法人(公認 ▼金融庁、東証、証券取引監視委員会 金融庁、東証、証券取引監視委員会(1992年に発足した日本版 (証券取引監視委員会:SESC) 会計のフェアネス(公正)は、資本主義の根幹です。 今後、こうした、監視すべき機関の「空洞化」の問題が浮上します。 ▼付帯して、内部告発 耐震問題とライブドア問題の不正の発覚は「内部告発」からです。 耐震偽装では、官僚内部の反小泉、反民営化勢力でした。 スキャンダルの露呈は、組織内部の抗争からです。 ▼原理的なこと 官僚組織も、会社を含む組織も、長期雇用を保証する「生活共同体」 こうなると、ムラの暗黙のルールや価値観が、外部規範(法、制度、 ■3.本シリーズを書く目的 本稿の目的は、ライブドア事件を素材に、およそ80年代の米国発 なぜ、ライブドアが市場の熱の頂点では、1兆円の時価総額にもな ▼時価総額の思想 今は、会社価値=株主価値=株の時価総額とされています。 これは一種の「思想」です。 思想とは「社会や人間に関する、全体的な思考の体系」です。 醒めれば、なぜあんなばかばかしい認識にとらわれていたのかと思 多く人が共通にもつ、時代の認識の枠組みと言ってもいい。認識の 70年代ころまでは、株価の時価総額が、会社の価値として、もっ 売上高の大きさ、生産する商品の価値、社員の質、そして利益を総 米国であっても「一流企業」は時価総額が高いという意味ではなか 株式市場はうさんくさいものであって、特定の投機家が売買に参加 その投機マーケットがつけた株価が、会社価値であるとは思えなか ▼3要素 これが変わり始めたのは、およそ80年代の米国からです。 (1)金融と資本の自由化、 (注)この件は、次号で書きます。 ▼時価総額 株価の時価総額が高ければ、時価総額の小さな会社を併合し、買収 米ビジネスウィークやフォーブスは、会社のランキングとして、世 理由は何であれ、時価総額を上げたCEOが、もっとも高い評価を ▼CEO CEOや執行役員という肩書きも、株価主義とともに誕生します。 ・株主から預かった資本を運用し、 【タレント化】 ▼ホリエモン 「ホリエモン」はそうした文化と価値観の中で生まれた、一人の 創業7年で、ピークでは1兆円(1株1000円×10億株)の会 利益だけで、1兆円は生めません。 (1)時価総額が劣る企業は、価値が低い。 市場が評価するようにうまくM&A(買収・併合)をすれば、会社 そのために法と制度の不備を探して突き、制度が慌てて整備される ■4.株券はマネー ▼製品創造の、位相を変える 根底は以下です。 <わが社が成長してゆくためには、製品のラインアップ(製品種類) 鍵はこの乗数です。1年の税引き後純益は、例えば1億円であれば、 【PERという乗数】 PERの計算式は、以下のように変形できます。 両辺に、発行する株式数を掛ければ、以下になります。 株価時価総額=PER倍率(乗数)×会社の純利益 会社の純利益が1億円/年なら、これを50年続けて、資本に属す ところが・・・株式市場は、インターネット関連の成長企業には将 株価時価総額=50倍×1億円=50億円 50年も継続し、苦労して毎年1億円の純利益を上げる必要はない。 ルールが変わったのです。 ここで、苦労した製品創造や、製品を買う顧客の獲得とは違う位相 純益は、当面、わずかでもいい。株式市場に成長期待を与えること 最初は、80年代のシリコンバレーでした。20年後の今は、中国 <新製品を開発したり、新しいノーハウを蓄積するのに、わざわざ、 株価を上げ、50社余の(トップ企業ではないジャンク会社の)ベ ゴールドラットは、全体最適、スループット会計、そして制約理論 2001年6月に、「鋭利なメスをもつ精神分析医:カルロス・ゴ http://www.cool-knowledge.com/0613nissan-Ghosn(1).html ■5.マネーの創造 以下は、堀江貴文氏の内観を想定して書きます。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 商品開発には、長い期間とコストがかかり消耗と徒労だ。 しかし・・・ 自分で苦労し、新しい商品の開発や顧客の獲得をする必要はない。 マーケットが株価を評価するという条件を、経営計画で作れば、株 上場すれば、日銀だけがもつ紙幣印刷機が、会社にあることと事実 会社にとって利益蓄積の意味が、変わった。 株式市場は、将来の利益見込みを、DCF(Discount Cash Flow) ベンチャーに市場は期待し、高いPER(利益の乗数)を与える。 根底の理由は、小金をもち一攫千金の幸運を狙う個人投資家が、株 ■5.制度改革 銀行の、企業育成のための融資機能が働かなくなった90年代に、 ▼マザーズ、ヘラクレス、株式交換、株式分割 政府は以下の3つを法制化した。 ・株式上場の超がつく規制緩和(マザーズ、ヘラクレスの創設)を 多くの人は上場(株式公開)を過去の基準で見ている。 マザーズやヘラクレスが、どんなに上場基準を下げたか多くの人は、 マザーズであっても「上場企業=信用のある企業」と見ている。 【700兆円の預金】 小泉首相の積年の念願である郵政の民営化もそのためのひとつであ 【401K】 401Kで、それまで株に縁がなかった50%の世帯(5000万 50兆円の資金流入があれば、株価指数は数倍に上がるだろう。 事実、この401Kで株は隅々にまで大衆化し、マーケットへの資 米国株の上昇につられ、貿易黒字の国と、利益に抜け目のない西欧 貿易赤字がどんなに大きくなっても、世界は、米国の債券と株を買 米国は「90年代の金融革命」で再生した。産業が再生したのでは 米国人の3000兆円余の、世帯の金融資産では、今、50%の1 一方、日本では、1400兆円の個人金融資産のうち50%(70 今後、この預金が、株式市場に流れることを、利用する。 ▼上場基準の低さ マザーズの上場基準は、信じられないくらい低い。 1年前に新設したばかりの会社も上場ができる。 将来利益の裏付が薄い株にも、 ・成長見込みの作文と、 つまり経営企画書がマネーになる。 唯一の条件は、上場日の時価総額(株価×発行株数)が10億円以 <マザーズは、高い成長可能性を有していると認められる企業を上 必要な書類を作ればいい。たった1期の、売上があればいい。今は マザーズやヘラクレスの株を買うのは、主に個人投資家だ。会社の パソコンの画面で、激しく変わる今日の値動きしか見ていない。貸 会社経営では、毎月の資金繰りに苦労した。銀行は、どんなに可能 真面目に商品開発し苦労して販売しても、1000万円の融資を丁 創業した自分がもつ1000株(額面5万円)の株に、8倍の40 それを少しずつ売って会社に貸せば、資金繰りはできる。突然に個 しかも、株式市場からもらったお金は返済の必要がない。そして、 自分も、5年、いや3年あれば勝者になることができる。 それが、チェックと監理がゆるゆるの、マザーズだ。 ■5.ビジネスモデル <消費税のように、個人から広く浅く、日本中、そして世界のマネ 1株500円なら100株を買っても5万円にすぎない。 5万円が2万円になっても、株は自分の失敗である。小泉内閣が言 売る商品は分割した株券である。公式には言えないが、ライブドア そして株券を印刷し、次々に会社を買う。同世代は皆会社に勤め、 マザーズが何をもたらすか、知っている人は少数だろう。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ライブドアの株式発行数は、1万倍への分割によって、当初の10 例えば時価総額9兆円のNTTドコモは、4870万株とライブド 会計ブレーンを宮内氏とし、堀江貴文氏が作ったのは「株券の印刷 5分割くらいはあってもまさか1株を1万株にも分割する考えをも 80年代までは、法を超えた「行政指導」にあれほど熱心だった官 ライブドアほどではなくても、新興市場には、堀江氏と同じような、 もちろん公式には言いません。行動で見るしかない。 次稿では、なぜこのようなことが可能になったのか、そして、会社 NYでアメリカ人のシステム・エンジニアと話していたとき、商品価 彼は、商品バリュー=価格と理解していました。 バリューは価格だったのです。 会社の価値=時価総額と同じ構造です。 see you next week! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 読者の方からの意見や感想を、書く内容に反映させることを目的と 1.テーマと内容は興味がもてますか? コピーしてメールにはりつけ、記入の上、気軽に送信してください。 ↓著者へのメールのあて先 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ (↓)お手間をかけますが、会員登録方法の説明です。 ▼ 有料版の最近号の、テーマと目次です。 <252号:緊急時事問題:ライブドアの特捜> 【目次】 1.事実から:主体別にみた株式売買 【最初の1ヶ月目は無料試読の特典があります】 新規の申し込み月の1ヶ月分は、無料で試読ができます。 【申し込み方法】 ↓会員登録の方法の説明 |
時事問題:ライブドアのビジネスモデル(1)
Written by admin on 2006年1月26日 – 08:00
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