SCMシリーズ:SCM経営をめぐる考察(3)
This is my site Written by admin on 2001年10月23日 – 08:00

こんにちは、吉田繁治です。テロと、テロ組織壊滅の<新しい戦争
>のみでなく、経済の基底で「前提としてきたこと」の変化が起こ
りつつあるのを感じます。

SCM経営をめぐる考察の3回目です。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   <SCMシリーズ:SCM経営をめぐる考察(3)>

【目次】
 1.今週の時事状況の考察
 2.約10年前、思い出すこと
 3.サプライチェーン
 4.消費の変化がわかりにくいということの利益機会
 5.先進諸国の現代商品の基本性格
 6.在庫管理の原理から
 7.定期発注法から見えるもの
 8.米とおにぎり
 9.在庫を持つことのリスクの意味
 10.3項の連絡事項

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■1.今週の時事状況の考察

▼日本の貿易黒字の急減

日本経済、世界経済の前提の変化の中で、重みを持つものは、日本
の貿易黒字の急減の傾向です。

(1)日本の輸出は97年くらいからは、半期で約24~26兆円
レベル、輸入が同じく半期で17兆円から22兆円くらいでした。

(2)ところが、2001年の上半期(4-9)はでは、貿易黒字
が、前年同期に比べて43%の減少、つまり約半分になったのです

これは、国際通貨の波乱要因になります。

▼原因

原因は、
(1)米国のIT需要を中心とする需要の落ち込みで、輸出が減っ
た    
  (循環的要因)
(2)日本の製造業の、中国を中心とするアジアへの工場移管
  (構造要因)
(3)中国の生産力の増加による、日本への輸出の急増
  (構造要因)
(4)日本の企業の活動が、国家の枠を超えてきた
  (構造要因)

循環要因は、1年以内の短期の変化です。構造要因は、少なくとも
5年は続く変化です。

【現地生産】

代表的な基幹産業である自動車の海外(現地)生産比率では、
(1)ホンダ 97年の45%から、00年は51%へ
(2)日産  98年の39%から、00年は50%へ
(3)トヨタ 97年の29%から、00年は34%へ

こうした企業は、雇用の面でも、社員の半分以上は、現地人ですね

国家は日本人、企業は多国籍人、これが今普通になっているのです

国内GDPは増えないが、国境の枠を超える企業は伸びる。

【他の注目企業】

注目企業では、
(1)ソニーは、97年の輸出比率68%が、00年は65%へ
(2)ユニクロの輸入は、01年8月期で2000億円。
(3)日立は、中国の現地生産を$5.2億から、05年には8倍
($45億)にする計画で、中国へ今後5年で総額1000億円を
投資。
            (数字のみは日経新聞 01.10.23から)

【5年のスパンでの長期変化】

グローバル経済で発現した日本の貿易黒字の減少傾向は、短期的・
一時的なものではない。

2004年には、日本の貿易収支の均衡、または赤字すら予想され
るものと見ておかなければならない。これに、米国の消費減退が絡
みます。

そうなると、国家の通貨枠がある国際金融の前提が以下のように変
わる。

(1)日本の貿易黒字は減少し、資本輸出国としての地位が下がる
。(2)米国の貿易赤字は、国内消費の減退と武器輸出の増加で、
減少に向かう。
(3)中国が、いよいよ生産大国になる。

この3項が21世紀初頭の、国際貿易、およびそれに付随する国際
金融の基本トレンドになるでしょう。

日本に関する認識の変更です。企業は、国家の貿易の枠を離れ、世
界企業になる。ただし通貨には国家の枠がある。企業の実体経済と
、国家という共同体の枠の相克です。

第二次世界大戦後の、基軸通貨体制の変更になりますね。

【30億人の参入の現実化】

まさに2001年、21世紀は旧共産圏の30億人(中国は13億
人)が、先進消費国(OECD10億人の経済)の商品供給基地及
び工場になる動きが「奔流」のような流れになったと言えます。こ
れがグローバル経済の意味です。

【成功モデル】

一方で、SCMの日本の先進企業である花王は、2001年9月期
の半期決算の売上4,225億円(+2.4%)、営業利益は57
3億円と、12期連続での最高益です。花王のSCM及びVMI(
Vendor Managed Inventory)への取り組みは、他のどこよりも早か
ったのです。

花王やソニーは、日本には珍しい<プロアクティブ>な会社です。

▼プロアクティブということ

日本語で言えば、
(1)変化が現実化する前に、つまり事態が起こってしまう前に、

(2)変化を予測し、長期戦略で対応しておくことを言います。

【変化のリード】
変化を引きこす、変化をリードすると言ってもいいでしょう。
従来の日本型経営の、戦略面での業界横並びでは得られないもので
す。

変化が起こっていないときに、言い換えればその変化が数年経てば
<奔流>になることを誰も想定していないときに、変化を予想し、
戦略を立て実行することです。

【2項】
経営計画で基本的に大切なことは、以下の2項です。
(1)短期での、起こった事態への対応策と、
(2)長期での、これから起こる変化をリードする戦略を、明確に
分離することです。

<この両者にバランスをとった計画>が必要です。
現在への対応は<凌(しの)ぎ>に過ぎない。凌ぎの連続では、将
来がない。現在へ対応しても、3ヵ月後には別の事態への対応を迫
られる。

▼深く認識すべここと

1980年代までは、多くの企業の本源的な資本は土地であり、本
源的な利益は土地の含み利益の増加でした。

【凌ぎの経営】

したがって、経営を資金繰り的に維持し、数年経って景気循環が戻
れば、その間に<他律的に>増加した含み資本によって、次の投資
なり対策が打てた。80年代までは、短期の変化を見て凌いでいれ
ば、<何とかなった>のです。

これは80年代までで、終わっている。

【次元が違う原理の侵入】

90年代以降は、年代的には80年代と連続していますが、資本は
土地含みとは別の次元の、非連続な<キャッシュフロー原理(≒営
業利益原理)>になったのです。

水中で泳いでいればよかった時代(80年代まで)から、トビウオ
のように空中を飛ばなければならない時代(90年代以降)に変わ
った。土地含み経営が、キャッシュフロー経営に変わったというこ
とにはそれくらいの<次元>の違いがある。

【長期戦略】

現在の長期戦略とすべきことは、小売業では
(1)自店の、標準店化をどう確立するのか、
(2)店舗ドミナント(商勢圏)を、どの地域にどう作るか、
(3)商勢圏で店舗数が不足するときは、他店との商品仕入れ面で
のグループ化をどう図るか、または、単独で行うのか。

この3項が根幹でしょう。今日の売上と利益を確保することとは違
う次元です。

卸(及びメーカー販社)では、
(1)VMI(Vendor Managed Inventory)を、どの店舗とどう取
り組むのか、
(2)他より有利な、物流の密度の高いドミナント(商勢圏)をど
う確保するか、
(3)ブランドをどう確立するか、でしょう。

メーカー、卸も、
(1)店舗での最終小売にどう接近するか(より顧客に近づく)
(2)また商品のコスト最適地へ遡る(より上流へ)という、2つ
の基本戦略が必要になる。

戦略の優先順位ということについて、以下のことを示します。

————————————————————
——————————–
■2.約10年前、思い出すこと

10年前、政府の中小企業対策予算を使った研究会で、「輸入の戦
略」がテーマになっていました。当時は、日本の輸出力は強すぎた
。内需を拡大し、輸入を増やさなければならない。日米構造協議(
1990年)で、米国が日本の内需拡大と、過剰貯蓄の修正を求め
ていた時期でした。

会議の話題は、どう輸入するかに集中していたのです。研究報告を
求められた私は、「検討されている筋と方向は、どうも違いますね
」と申し上げたのです。

▼1990年の、輸入戦略の提案の骨子

【店舗ドミナントの形成】

(1)輸入とは、輸入の方法や、コンテナを含む輸入物流である前
に、
(2)国内での、ドミナント物流網の構築、
   言い換えれば、店舗ドミナントの形成である。

【結果】
現在のように、日本全体に、物流面で各店舗が孤立しているような
状態では、一時的に原価の安い商品が入っても、他店との対抗の一
時凌ぎになるに過ぎない。むしろ、海外工場からの余分な買い取り
調達で、売れ残りとマークダウンが生じ、収益圧迫要因になるであ
ろう。

したがって、試行的(東南アジア事情を直接に知る)という意味で

輸入は意味があるが、試行にとどめておいたほうが結果はいい。

7年後の1997年ころになると、輸入が本格化することは決まっ
ている。

【本質対策】

その時期になって、いまのような全国分散的店舗網では、困るはず
である。今から6年かけて、1地域ずつ、商勢圏を作れるように、
出店する体制を構築することが、本質的な輸入対策である。輸入の
物流の合理化とは東シナ海のことを言うのではなく、国内のことを
言う。

日本は、シンガポールからの神戸への輸入物流のコストより、神戸
から東京までの国内輸送コストのほうがぐんと高い。

【輸入商品の物流方法】

したがって、
(1)シンガポール・台湾・香港・釜山から、神戸に揚げ、その後
、国内輸送するのではなく(大部分の方法)
(2)アジアのコンテナ出荷港から、北海道、東北、関東、中部、
中国、四国、九州、北陸のコンテナ港へ直接運送することが、輸入
で勝利する方法である。
(3)そのためには、各地域で60%以上の品揃えを共通化する標
準店のチェーン化による商勢圏作りが必要になる。

思い出しつつ申しあげれば、以上のような内容でした。

▼その後

会議には、小売の経営トップが、10名くらい参加していました。

その中のひとりの経営者は、あの会議では「目からうろこ」でした
と言った。私は、ああそうでしたかと答えたのです。彼が、どんな
決心をしたのか、知らなかった。

【プロアクティブな戦略】
その経営者はのちに、
(1)輸入品の常備在庫を保管するDC(Distribution Center)
へ、約20億円の投資をし、
(2)そのDCが物流でカバーする地域内に、約3年の期間で7店
舗くらいの1500坪の店舗を作った。

数年がかりで、アジアの港から直接、近隣のコンテナ港まで届く、
物流のインフラストラクチャー(基盤の仕組み)を作ったことにな
る。最初に20億円の投資で物流センター(それも自動化倉庫のD
C)を作らなければならなかった。

DCがカバーするドミナント店舗の総売上が、小売売価で約60億
円以上になるまでは、利益の圧迫要因、つまり、物流センターが1
00%稼動でないためのコストアップがある。その間を、まさに経
営的、資金的に<凌がなければならない>

しかも、DC投資を決定した瞬間から、店舗を少なくとも6店舗、
できれば8店舗は作る必要がある。こうした決定が、<戦略的決定
>です。結果は、うまく行った。

プロアクティブな戦略の実行には、決断が必要です。直感ですが、
こうした決定は、100人の経営者のうち、数人しかできない。

【多くが見えていないときのプロアクティブな戦略】
経営の本当の勝負の多くは、<形が見えていないとき>に決まる。

小売業の経営トップを見ていて思うのは、<概念>の段階で、その
意味を察知でき、決断し、投資や戦略的な行動に移れる人は少ない
。具体的なものができたとき、評価する人は多いのですが。

一方製造業には、<概念>を理解する人が多いように感じます。
ただし製造業は、概念は理解できても、店舗の現実、消費者の現実
を知らないことが多い。こうしたところを見ても、小売と製造は、
両方が情報的に補うべきです。

————————————————————
——————————–
■3.サプライチェーン

▼サプライチェーンとサプライチェーン経営

【サプライチェーン】

サプライチェーンといったときは、〔資材・部品メーカー〕~〔資
材部品卸〕~〔メーカー〕~〔卸(メーカー販社)〕~〔店舗〕~
〔顧客〕の、全体の流通の連鎖(チェーン)構造を言います。

【SCM経営】

サプライチェーン経営(SCM経営とします)といったときは、
(1)トータル流通の鎖のなかの、1企業の視点ではなく、
(2)上記の全体流通の連鎖を、最終顧客に向かって、全体最適を
図り、
(4)最終顧客にとって無駄な部分、無駄な作業をカットする経営
です。

(注)以上のことを、第2部では、家具業界の実際の数字を使って
、示しています。

【SCM経営の焦点】

ここで改善の焦点になるのは、
(1)流通全体での、各社が持つ〔総在庫〕
(2)流通全体での、各社が持つ〔販売と在庫の情報〕です。

【端的な定義】

この、各社が持つ〔総在庫〕と、各社が持つ〔販売と在庫の情報〕
、組織の壁を取り払い、組織の壁で発生する商取引を無くし、〔共
有化〕を目指す経営というのが、端的な内容の定義になる。

SCMの情報システムは、そのためのツールです。

(1)流通の各段階で分散的に持たれる在庫の共有化を図ること、

(2)及び情報の共有化ということは、過去の商取引の常識を打破
することです。これを行うグループを〔戦略同盟の関係〕と言いま
す。

▼業務面での企業合併

企業体は独立(自律)していますが、戦略同盟の現場業務では、情
報を共有化する企業合併に等しい。

例えば、1990年代初頭に戦略同盟を形成した、米国の花王に相
当するプロクター&ギャンブル(P&G)社と、ディスカウントス
トアの小売チェーンのウォルマートでは、ウォルマートの本社商品
部にP&Gの商品担当の社員が常駐し、一緒に仕事(Co-Working)
をしたのです。

【目的】

目的は以下です。
(1)最終顧客に、売り場での商品欠品がなく、しかも売り場での
過剰在庫がない状態を作るため、(在庫の最適化⇒生産・在庫計画

(2)店舗の販売促進や、マークダウンと、品目の売れ数にはどん
な関係があるかを知るため、(売上予測⇒生産・在庫計画)
(3)店舗の棚、または平台でどんな商品構成をしたら効果的であ
るかを知るため(売上の増加)
(4)店舗の作業は、どんなものがいいかを知るため。(店舗作業

【中身】
中身では、
(1)メーカーと小売双方で、〔売り場研究〕を行い、その結果双
方が〔知識〕を習得し、
(2)顧客にとって、買いやすい売り場を維持するための、技術研
究であるとまとめることができます。

なぜこんなことが必要になってきたのか。理由は、消費の変化が、
わかりにくくなってきたからです。

なぜ、消費変化がわかりにくくなったのか、ここを考察する必要が
ありますね。以下でそれを行いましょう。

【重要】
その前に、わかりにくい消費の変化が、わかる(予測できる)とい
うことは利益だということを、理論的に説明します。

消費の変化がわかりにくいから、そこに利益のチャンスがあると言
えば、逆説的ですが、事実はそうなのです。以降の4.で示します

————————————————————
——————————–
■4.消費の変化がわかりにくいということの利益機会

消費の変化がわかりにくいということの裏の意味は、その変化の原
理がわかれば、利益になるという意味でもあります。これだけの表
現では、まだわかりにくいでしょうか。大切な部分です。

▼わかりにくいこと(予測ができないこと)のコストと利益

【価格原理】

消費の変化がわかりにくい時は、その予測不能の分を、あらかじめ
のリスク部分として、コストに含む必要がある。

つまり、〔工場の裸の製造原価〕に対して、何倍ものリスク部分
を 最終価格に含ませる必要があるのです。これが〔価格原理〕

【ケース・スタディ】

最終価格=製造原価+全流通段階の実際のコスト+純利益分

例えば、製造原価が1000円、全流通の実際のコストが2000
円のときは、3000円で売れば、利益はゼロで企業は成立しない

ここで、全部売れたこと想定した「見込み(未実現)」の純利益と
して、1000円があるとします。

このとき価格(設定小売売価)は4000円です。4000円で(
予測通り)全部売れれば、1個につき1000円の利益が出ます。
万々歳です。

ところが現実はこうはいかない。在庫100個のうち50個は売れ
たが、50個は売れ残ったとします。

50個は売れ、50個が売れ残った時点での利益はどうなるか。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
売上=4000円×(売れた)50個     =20万円
コスト=(1000円+2000円)×100個=30万円
利益                   =-10万円
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

売れ残った50個が、10万円÷50個=2000円(原価割れが
1000円:売価半額)で売れれば、純利益ゼロにまで回復する。
いわゆるマークダウンですね。
(注)以上は、中国から輸入のアパレル(衣料)の、およその原価
構成です。

【時間価値商品】

しかし売れ残ったものが、ゼロ円でも売れないとするとどうか?

極端に例えれば、〔コンビニのお弁当〕です。これは時間価値の商
品。店頭に出して、残れば数時間で廃棄します。
経済のサービス化、言い換えれば最終商品の加工度の上昇によって
、他にもこうした〔時間価値商品〕が増えたのが、現代です。

仕入れた100個、または作った100個が、想定した期間内・時
間内に、きちんと売れれば、1000円×100個=10万円の純
利益になる。

つまり、「消費変化のわかりくにくいことが、他店、他のメーカー
よりもわかることが利益」になるのです。

まさに、現代商品では、(メーカーは)生産計画での、(店舗は)
発注での予測の精度が利益ということですね。

【典型】

コンビニ弁当は、現代商品の典型です。時間価値商品、及びファシ
ョン商品は、賞味期間があって、こうした性格を持つのです。

現代消費では、(1)時間価値商品、(2)ファッション価値商品
、(2)及び3ヶ月も経つと店頭価値が半分や時にはゼロになる商
品が多い。

これを「サービス化経済」と言います。

製造原価はどんどん下がる。しかし、流通の必要マージンは、売れ
残りリスクの拡大で上がる。価格に占める付加価値の大部分が、流
通マージンとリスクのコストになる経済です。先進国で共通です。

商品の価値が、本質的に個別化(多様化とも言います)し、時間化
しているのです。

家電商品やファッション商品も他の消費財も、限りなく、鮮魚販売
の魚屋さんのビジネスに似てきています。その意味で、流通業は魚
屋さんの仕入れ、販売方法を見習うべきですね。

現代商品の典型、パーソナルコンピュータなど、3ヶ月も経てば、
価格は30%は下がる。30%下がれば、赤字です。コンピュータ
の品質や機能は、つまり物理面での特性は、まったく劣化していな
い。しかし、店頭での製品間競争と需要数によって決まる「商品価
値」は、3ヶ月で激しく劣化しているのです。

だから、3ヶ月以内に生産商品・在庫商品を売り切らなければなら
ない。と言うより、3ヶ月以内にきっちり売り尽くす量を、予測し
て作り在庫しなければならない。ここが、勝負です。

【高度な商品の製造の容易さ】
パーソナルコンピュータは、部品が標準化されましたから、製造の
難しさはない。素人でも、プラモデルを組み立てるように作ること
ができる低技術商品です。難しい点は、需要予測です。

需要予測の精度を上げるには、多くの店舗からのリアルタイム情報
しかない。(受注後組み立てのネットワークメーカーDELLが、
全世界のPC販売の25%になった(01年夏)ことは象徴的です

【鮮度の価値】
現代商品では<鮮度>が価値の大部分、時には100%を占めるの
です。

今週の、今日の、または午前中の実際の販売(情報)を見ないと、
怖くて仕入れられないし、製造も、在庫もできない。
サプライチェーンで、店頭情報をリアルタイムで入れないと、工場
も生産ができない。

時間価値商品、ファッション商品では、予測の精度が、利益そのも
のです。沢山売れればいいということでもない、少量でも予測通り
売れれば、利益になる。沢山売れても残るものが多ければ損失が生
じる。
商品価値が劣化しているからです。

PCも、過去のコンピュータではなく、ファッション商品風。

【本質】
店舗の利益が出ないこと、メーカーが赤字になることの本質は、実
は価格低下ではなく、
(1)店舗では〔発注の精度〕、
(2)卸では〔中間在庫の精度〕、
(3)メーカーでは〔生産計画の精度〕です。

製造ロットは小さくし、製造コストは上げても、生産数の需要との
誤差を縮小することが利益になる。

先進国産業は、過去の量産時代とは根底が変質した。

量産の分野は中国の製造コストでないとやっていけない。
製造の時間賃金が$3なら、先進国内での流通のリスク、販売のリ
スク分をたっぷり取れるからです。
ただし、これも今の時点ではという限定条件付です。

なぜこうなったのかを以下で、原理的に示します。

————————————————————
——————————–
■5.先進諸国の現代商品の基本性格

▼テープレコーダー

【1.最初は録音の機能が商品価値】
最初は、オープンリールだけでした。
次に、設置型カセットテープレコーダーができた。
ここまでは、一家に1台の、ファミリー需要です。

ファミリー需要の時は、長期での需要予測ができた。1年先の普及
率や、販売数量を予測して、大きくは狂わなかったのです。安定し
た計画生産ができた。売れ残りも、15%も値引けば売れた。品目
数も少なかった。

【2.需要の個人化の時期】
1970年代末には、カセットテープのウォークマンができた。
ここで、需要は個人化した。ウォークマンを家族で共用はしない。

世帯需要1台が、個人需要になれば、1世帯3台になる。

需要の増加とともに、競争で製品種類(アイテム数)が増えた。選
択肢が広がったから、メーカーブランドが重要になり、微差しかな
い新商品の登場でも、他の商品の売れ行きが、ころころ変わるよう
になってきた。

【3.個人化すると商品価値はファッション化、ブランド化する】

身につけ、手に持って歩くものですから、商品はファッション化、
ブランド化した。ソニーのウォークマンと、日立のものでは、機能
や価格は同じでもブランド価値が違う。

テープレコーダーの時代より、ぐんと予測が難しくなったのです。

沢山作れば、売れ残る、作らなければ、売り場で欠品する。
そうなると、製造原価に対するリスクの必要マージンが増加します

ウォークマンの、月間販売総量は、およそ予測できる。総量の予測
で30%も狂うことはない。しかし生産や在庫、発注は品目です。
品目単位では、予測が難しくなってきた。品目のレベルでは、予測
が2倍、3倍も狂うことがザラです。

【4.更に、MD、デジタルテープ、CDR、DVD、PCのディ
スク】

次は、カセットに加えてMDが、デジタルテープが、CDRが、そ
して20001年はDVD、PCディスクが加わった。

音を録音する商品の種類は、百花繚乱。聞くだけのウォークマンな
ら1980円の使い捨てに近いものすら多種ある。

どうやって、品目別に予測するか、困難を極めます。
一体どうしたらいいか、以降で、更に考察を深めます。

▼コンビニおにぎり

コンビニエンスストアの最近の商品開発でのヒット商品は、おにぎ
りです。これも、お弁当と同じく、時間商品で、付加価値は高い。

しかし、狭い棚に10種から20種は並ぶ品目別の売上予測は、不
可能に近い。次々に商品は変るから、3ヵ月後の製造予測などでき
るわけがない。新品種が、毎日のように出て、予測の基礎条件が変
わるからです。

例えば、米の原材料そのものなら、日本全体での需要予測はできる
。米の販売総量が1年で30%も変ることはない。しかし、こうし
た原材料に近い商品は、売っても付加価値は少ないのです。

【リスクの少ない商品はマージンも低い】
理由は、
(1)誰でも、売れる量が、ある精度の幅で予測できる。
(2)売れ残っても、古米にならないかぎり数ヶ月は、値崩れなく
売ることができる。

つまり、在庫のリスクが少ないから、利益も少ないのです。魚沼産
コシヒカリでも1Kg400円~500円位でとても安い。江戸時
代はともかく、米を原材料として売って儲ける人は、現代はいない

【おにぎりは?】
完成品のコンビニおにぎりは、1個が100円くらいもする。高い

価格に含む流通でのリスク部分が、たっぷりです。

1ヶ月1万円の食事代で生活する中国人留学生は、コンビニおにぎ
りやコンビに弁当は買わないそうですね。米が安く買えるのに、そ
れで作ったおにぎりが100円という、日本の消費者は評価する時
間価値が、理解ができないようです。

1ヶ月、平均では$1で生活するアフガンの人も、日本人の消費が
信じられないでしょう。コンビニおにぎり1個で、1ヶ月の生活費
が消えます。

しかし、日本人は、おにぎりを買う。米の総体の消費量が増えるわ
けではない。ただし、最終消費額で計算したGDP計算は米のまま
売るよりも上がる。開発したメーカーとコンビニ本部は利益を出す
。GDPは成長する。

最近のGDPの成長の中身は、このコンビニおにぎり的なものでし
ょう。

人が採るカロリー総量や食料は増えない。しかし、口にいれる前の
価格は、合計計算では上げている。

母が、おにぎりを作る時代は、米や海苔の、原価分の計算のみでし
た。母がパートに出て、子供がコンビニ弁当を食べると、GDP計
算は上がる。それで、実体が豊かになったわけではない。これがサ
ービス化経済の一面です。

さて、ここから、在庫原理の説明に入ります。
時間価値化、ファッション化した消費、つまりサービス化経済での
、在庫管理の原理はなにか。

SCM経営を理解するための、コアになるのが、在庫管理の原理の
理解です。

第2部のVMIは、企業間の協働を示し、以降で解説する在庫管理
の原理は、商品面での、VMI(Vendor Managed Inventory)の中
身を示すものです。

————————————————————
——————————–
■6.在庫管理の原理から

在庫管理という言葉は多用されます。
ここでは、定義をしながら解説します。

サプライチェーンの根幹になるのは、流通で言えば最終段階、つま
り店舗(最終販売機能)の在庫です。

そうした意味で、店舗在庫を取りあげます。卸の在庫、メーカー販
社在庫、及び品目別生産計画の立て方まで、全部同じ原理です。

▼店舗在庫の映像化

【店舗在庫】
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
A部門(Aの売り場、Aの棚と言っても同じ)
 a品目×在庫数   
 b品目×在庫数
c品目×在庫数
 d品目×在庫数
 ・・・・・・・・
B部門
 d品目×在庫数
 e品目×在庫数
f品目×在庫数
 g品目×在庫数
  ・・・・・・・
C部門
 ・・・・・・・
D部門
 ・・・・・・・
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(計)総品目数   ×平均在庫数=総在庫数量
   総品目平均単価×平均在庫数=総在庫金額

(注1)在庫管理の最小単位を、品目と言います。アイテムは品目
の英語です。米国小売業では、一般にSKU(Stock Keeping Unit
:在庫管理の最小単位)と言います。IY堂用語のタンピンは品目
を表しています。絶対単品といったときは、製造のシリアルナンバ
ー(小売では発注ナンバー)に当たるものです。宝石や、家具、フ
ァッション、耐久財の高額品ではシリアルナンバー管理を行います

(注2)A部門、B部門は、小売用語ではカテゴリーと言います。
金額管理(内容は売上、粗利益、配布人件費、配布経費、営業利益
、在庫回転率等の計数)、つまり部門別管理の単位になるものです

各部門を、週単位で管理することを<52週ウイークリーマネジメ
ント>と言います。

店舗管理の基本が、52週ウイークリーマネジメントです。
現場管理の方法として、いつか取り上げる必要がありますね。

▼在庫管理の、階層の区分

【1.在庫金額管理の階層】
在庫金額管理は、品目の数量ではなく、
(1)部門別・品種別等で区分した在庫金額(売価、または原価)
の集計、
(2)及び計数化(在庫金額、在庫回転率、粗利益率、交叉比率等
)で管理します。

【2.商品構成管理の階層】
商品構成管理は、
(1)店舗の全部門の構成
(2)各部門(カテゴリー)に展示する品種の構成(部門別品種構
成)
(3)品種の中の価格帯の構成
(4)品種の中の商品クラスの構成
(5)品種のなかの品目の構成、という5つの管理レベルがありま
す。

※ここでは詳しくは述べません。〔売り場のカテゴリー管理〕の領
域になります。

【2.品目別在庫数量管理】
在庫管理の基盤になるのが、〔品目別在庫数量管理〕です。
今回は、これを検討します。

▼定期発注法

【定期発注法】
定期発注法は、
(1)定期的(月、週、日、または時間)に、
(2)発注時点から、発注商品の入荷時点までの期間(リードタイ
ム)の売上予測を行って(または、直近の売上実績を用いて)
(3)現在の在庫を考慮し、
(4)統計的に、品目別の最適発注数を決める方式です。

【2つの代表的方法】
統計的な発注法には、大別して、
(1)発注サイクルを一定化して、その都度の発注数を、手持在庫
と売上予測で変化させる〔定期発注法〕と、
(2)1回の発注数量を一定(経済発注ロット:EOQ)にして、
在庫が欠品しないように、一定在庫を割った時点で、不定期に発注
する〔定量発注法〕があります。

ここでは、単純にするため、定期発注法を取り上げます。
(定量発注法も、原理部分は、定量発注法とまったく同じです)

第2部での考察を更に深めます。
————————————————————
——————————–
■7.定期発注法から見えるもの

▼(再掲載)定期発注法の公式

発注サイクルを1週間としたとき、以下のようになります。
これを週間で繰り返すのが、店舗の、品目別在庫数量管理になる。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

店舗の週必要発注数=
 =(入荷までのリードタイム日数+発注サイクル日数)×(1日
平均)売上予測数-発注時点の有効在庫数+安全在庫数
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

〔誤りの訂正〕SCMの第2部の公式では、発注サイクル日数が抜
けていました。お詫びし訂正します。公式を、こちらのほうに置き
替えてください。

【注】
(1)「入荷までのリードタイム」は、発注をした日から、入荷す
るまでの日数、発注サイクルはこのケースでは週間ですから7日で
す。

(2)「有効在庫数」は、現有在庫数のうち、顧客引き当て(予約
等)がなされていなくて、販売が可能なもの。

(3)「安全在庫数」は、売上の変動をカバーし、欠品を避けるた
めに余分に持つ在庫。

安全在庫数=売り上げ数の統計的な変動幅(標準偏差値)×2.3
(安全係数)=99%の在庫安全率(=1%の欠品率)

▼公式の各要素の検討

【1】発注から入荷まで日数(リードタイム、または納期)の狂い

リードタイムが、短期で、一定であり、狂いがなければ問題はない
。しかし現実には、3日と想定しているものが4日、または2日に
なることがある。これで1日分の狂いが生じます。

(注)納期の1日の狂いは、{(入荷までのリードタイム(日数)
+発注サイクル(7日))×(1日)売上予測数}の精度を狂わせ
る要素になる。

【2】売上予測数は、(30店舗の標準品揃えの店舗の合計での)
最高の精度で、変動を受けにくい基礎売上部分の経験値では、±2
0%です。〔変動を受けにくい品目を探す〕ことが必要です。

この予測に、店舗の販売促進(マークダウンを含む)、催事、季節
変動要因での変動が加わります。これは、業種、商品の品種、アイ
テムで変わります。

本格的な予測では以下のような、3要素分けの方法をとります。

〔売上予測数=基礎売上±催事要因増減±季節変動要因増減〕

基礎売上部分は、品目別の売上数(週間等)を、折れ線グラフ化す
ると、見えます。いずれも、1店舗では変動が大きくなりますから
、品揃えを標準化し、販売促進を共通化している複数店舗の集計で
行うことが要所です。

(補足説明)
売り上げ予測を行わず、
(1)直近の週の売上数実績、
(2)4週の移動平均の売上数実績
(3)13週移動平均の売上数実績から、1日平均を出して、予測
数とする方法があります。

【3】安全在庫

安全在庫は、それ以下の在庫数になると、売り場で品切れ(欠品)
が起こりやすくなり、売上の機会損失になるため、予測と実績の狂
い(偏差)をカバーするために下駄を履かせる余分な在庫です。
〔最低在庫数〕ということもあります。

▼定期発注法が適用できる品目の発見

大切なことは、すべての品目には、定期発注法公式を適用できない
ということです。逆に、発注法公式が適用できる品目を、探すこと
、これが必要になる。

(1)店舗で長期の〔定番(ステープル)〕にする品目
(2)売上の変化が安定していて予測できる品目

【重要:標準店の意味】
こうした、共通的な安定品目を、店舗品揃えの30%、40%、そ
して60%に持って行くことを、〔標準店作り〕と言います。

標準店は、単に品揃えの品目を、共通化することではない。

共通品目のなかから、売上が安定していて予測できる品目を探す活
動が、〔標準店〕作りです。ここが、チェーンストアで重大に誤解
されている点の一つですね。

▼要素の検討から見えること

(1)代表的な発注法である定期発注法の各要素、
(2)変化のサイクルが極めて速くなった現代商品の基本性格、以
上2つの要因を考慮したとき、以下の根本策が見えます。

発注サイクルを、
(1)週間から、週2回、毎日、または時間と短サイクル化するこ
とによって、
(2)1回の必要発注数の量を減らし、
(3)売れ残りのリスクと、欠品を減少させる。

発注サイクルを短期にすることは、予測の狂いを、次の発注で短期
に修正することができるという、重要な意味を持つのです。

例えば、月間発注では、次の月まで修正ができない。
毎日発注なら、翌日の発注で修正できる。

発注サイクルの短期化を実現するには、発注から入荷までのリード
タイムを短縮化する必要がある。

極端な例を言えば、1個売れた瞬間に1個発注し、即時に1個入荷
すれば、発注法も何も要らない。単に、POSの売上実績データと
在庫データを、リアルタイムで出荷元に送信すればいいのです。

ここが、店舗在庫管理の到達点であり、競争のキーポイントになる
ところです。

(1)入荷までのリードタイムを、短縮すること
(2)出荷元での在庫の欠品を、減らすこと、これが先進諸国の現
代消費に適合する、店舗在庫管理方法になる。

————————————————————
——————————–

■8.米とおにぎり

▼米の性格の2分化

【食の原材料性格の米】
食の原材料としての米は、流通では、低付加価値商品です。
しかし、長期の安定した売上が望め、在庫管理の必要作業も少ない

【しかし、米でも銘柄米は?】
この米も高付加価値の〔銘柄米〕になると、魚沼産コシヒカリは、
秋田小町では、「需要代替が利かない」から「個客」需要にあわせ
た在庫管理が必要になる。アイテムが「個客」に向かって分化し、
品目が増えると、こうなる。(品目の分化、多様化と言います)

ところが、個店単位で必要な銘柄の、全品目の安全在庫を見込んだ
十分な在庫をもてば、膨大な量になる。売れ残りとその逆の欠品が
激しくなる。

したがって、店舗の展示品目数、種類が増えれば増えるほど、標準
品揃えの複数店舗への物流をカバーする上流のDC(常備在庫を持
つ物流センター)で、VMI的に在庫を管理することが、合理的に
なる。

DCでの、受注から店舗納品までの納期が翌日なら、店舗は在庫を
2日分にまで極小化できる。
DCでは、物流カバー店舗の、多くの種類の銘柄米の在庫を持てる

ここがキーですね。

これを、SCM経営ではCRP(Continuous Replenishment Progr
am:継続補充プログラム)と呼んでいます。

▼更に、〔おにぎり〕では

製造と流通の高付加価値商品である〔おにぎりや弁当〕ではもっと
極端です。

4時間サイクルくらいでの、店舗納品、つまり短いリードタイムが
必要になる。時間価値商品だからです。時価価値商品にすることを
、付加価値を高めると言います。

1週間に2日の発注と納品サイクルでは、おにぎりの取り扱いはで
きない。商品の最終加工度を高め、それによって高付加価値を図れ
ば、商品価値は、時間化する原理がある。
(米国ではHMS:Home  Meal Solution)

こうして、食に限らず現代商品の多くの高付加価値商品では、

(1)最終需要へ距離を接近させると同時に、
(2)納品のリードタイムの短縮化を図る、流通のシステム産業と
しての競争になっているのです。

▼Kマートとウォルマート

米国ディスカウントストアのKマートと、ウォルマートは、店舗も
商品も価格も類似しています。違うのは、納品までのリードタイム
です。

Kマートの多くが、週間発注サイクルで、週間納品だった。
(現在は、若干改善されています)

ウォルマートは、当初から、クロスドックセンター(店舗別仕分け
、通過型の物流センター)を設置し、毎日発注で毎日納品の体制だ
った。

店舗の発注作業は、どちらが難しいか。
どちらが日々の需要への変化対応ができるか。

週間発注ならKマートでは、来週の展示、催事を考え、安全在庫を
考慮して、発注する必要がある。

ウォルマートは、今日のPOSデータ、在庫データを、クロスドッ
クセンターに送れば、クロスドックセンターから翌日補充がある。

予測は必要ない。しかも、店舗はEDLP(Everyday Low Price)
で、原則的に催事はしない。売り場での大量展示によるプロモーシ
ョンのみです。

クロスドックセンターの運営・配送は、上流のメーカーと協働(co
-working)的に行う戦略同盟の体制、サプライチェーンを作った。

ウォルマートでは、ある地域に出店するとき1店舗目から、クロス
ドックセンターとしての物流センターを設置するのが、基本の流通
戦略と決めていた。両者の企業力には、今は埋められない戦略差が
ついた。

SCM経営は、SCMのソフトウエアの導入ではない。最終需要の
変化への対応を即時化、早期化する、発注と流通の仕組み作りです

次は、在庫の価値と利益の問題です。
ここにも、伝統的な考えの誤りがある。

伝統的な思考方法は、<商品は長期にわたって安定し価値を持つ>
と前提しているのです。商品の時間価値化を、想定していない。

————————————————————
——————————–

■9.在庫を持つことのリスクの意味

▼粗利益率の誤り

商品利益率(=粗利益率)という概念があります。誰でも知ってい
る。
粗利益率={(売価-仕入原価)÷売価}×100%です。

(注)Gross Marginですから、〔荒〕でなく、〔粗〕を使います。

損益計算の売上総利益と言っても同じです。

5万円の売価で、粗利益率が30%なら、1個売れれば15000
円の粗利益率。この計算が在庫をもつときは間違える元になる。多
くの小売バイヤー、商品部が犯している誤りです。時にはこれで倒
産する。

この商品を、60個仕入れて、在庫しているとします。
10個売れた。したがって15000円×10=15万円の利益が
出たと思う。(事実、税務署はこの計算で課税する)

▼(重要)経営観点は、キャッシュフローで

〔経営の観点〕では、上の計算は、間違いです。
以下に示す方法が正しい。

(1)5万円×原価率70%×60個の在庫
   =-210万円のキャッシュフロー(210万円の減少)
(2)10個売れた時点
   5万円×10個=50万円(収入)
   +50万円-210万円=-160万円のキャッシュフロー

(3)42個売れた時点
   +210-210万円=0円のキャッシュフロー
(4)60個全部が、初期の売価で売れたとき
   +300-210万円=+90万円のキャッシュフロー
   60万円÷300万円=30%の粗利益率

60個仕入れたのものが、全部、〔初期売価〕で売れたとき初めて
、当初の見込み粗利益率30%が実現する。

42個未満の売れ数の時は、キャッシュフローはマイナスです。マ
ークダウンがあれば、全部売れても、利益はマークダウン分がなく
なる。

一個売れて利益が出たと計算するのは、税務会計です。税務会計は
、残っている在庫は、永久に価値を持つという19世紀的な価値観
です。

未だに、19世紀の価値観で、商品部が評価、運用されてはいない
か・・・・他にも経営ではこうした、認識の錯誤が多いのです。

パーソナルコンピュータが、3ヶ月で30%も値下がりする時代に
、伝統的な利益計算の会計は遅れていて、役に立たない。キャッシ
ュフローの計算で見て、現場評価するべきでしょう。

SCM経営では、リアルタイムの情報共有化を図り、メーカー在庫
、中間在庫、店舗在庫を、最小化、最適化することによって、この
キャッシュフローを増やし、win-winの共生を目指します。

————————————————————
——————————–
■10.3項の連絡事項(先週と同じ内容です)

(1)11月7日から11月10日の、米国先端流業視察ツアーは
、予定通り実行します。こうした時期にもかかわらず28名から2
5名の参加予定があります。45名が定員のバスですから、ゆっく
り座れます。飛行機は別便ですがロスでお会いするのが楽しみです

(2)10月25日は、IBMの次世代進化フォーラムでの、公開
講演会です。場所は仙台国際ホテル、私の講演時間は午前10時~

11時30分です。空席があるかどうか不明ですが、以下で受付し
ています。当日、会場にお見えになってもOKかもしれません。

(3)お問い合わせをいただいている、有料版のバックナンバー購
読は、現在、まぐまぐプレミアムで提供システムを開発中との連絡
を受けています。しばらく、お待ち下さい。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【ビジネス知識源プレミアム読者アンケート】

1.テーマと内容は興味が持てるか?
2.理解は進んだか?
3.疑問点や質問点は?
4.その他、感想等
5.差し支えない範囲で読者の横顔情報があると助かります。

コピーし、メールに貼りつけ、記入の上送信してください。

※ 本マガジンの、「購読サンプル」としての、友人・知人・同僚
・部下・上司・取引先への転送は、自由におこなってください。

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 送付先:   yoshida@cool-knowledge.com
 Home Page: http://www.cool-knowledge.com 
 著者: 吉田繁治  systems research ltd.
 購読または解除:
http://premium.mag2.com/reader/servlet/Search?keyword=P0000018

<SCMシリーズ:SCM経営をめぐる考察(第3部)>

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

Comments are closed.