こんにちは、吉田繁治です。テロと、テロ組織壊滅の<新しい戦争
>のみでなく、経済の基底で「前提としてきたこと」の変化が起こ
りつつあるのを感じます。
SCM経営をめぐる考察の3回目です。
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<SCMシリーズ:SCM経営をめぐる考察(3)>
【目次】
1.今週の時事状況の考察
2.約10年前、思い出すこと
3.サプライチェーン
4.消費の変化がわかりにくいということの利益機会
5.先進諸国の現代商品の基本性格
6.在庫管理の原理から
7.定期発注法から見えるもの
8.米とおにぎり
9.在庫を持つことのリスクの意味
10.3項の連絡事項
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■1.今週の時事状況の考察
▼日本の貿易黒字の急減
日本経済、世界経済の前提の変化の中で、重みを持つものは、日本
の貿易黒字の急減の傾向です。
(1)日本の輸出は97年くらいからは、半期で約24~26兆円
レベル、輸入が同じく半期で17兆円から22兆円くらいでした。
(2)ところが、2001年の上半期(4-9)はでは、貿易黒字
が、前年同期に比べて43%の減少、つまり約半分になったのです
。
これは、国際通貨の波乱要因になります。
▼原因
原因は、
(1)米国のIT需要を中心とする需要の落ち込みで、輸出が減っ
た
(循環的要因)
(2)日本の製造業の、中国を中心とするアジアへの工場移管
(構造要因)
(3)中国の生産力の増加による、日本への輸出の急増
(構造要因)
(4)日本の企業の活動が、国家の枠を超えてきた
(構造要因)
循環要因は、1年以内の短期の変化です。構造要因は、少なくとも
5年は続く変化です。
【現地生産】
代表的な基幹産業である自動車の海外(現地)生産比率では、
(1)ホンダ 97年の45%から、00年は51%へ
(2)日産 98年の39%から、00年は50%へ
(3)トヨタ 97年の29%から、00年は34%へ
こうした企業は、雇用の面でも、社員の半分以上は、現地人ですね
。
国家は日本人、企業は多国籍人、これが今普通になっているのです
。
国内GDPは増えないが、国境の枠を超える企業は伸びる。
【他の注目企業】
注目企業では、
(1)ソニーは、97年の輸出比率68%が、00年は65%へ
(2)ユニクロの輸入は、01年8月期で2000億円。
(3)日立は、中国の現地生産を$5.2億から、05年には8倍
($45億)にする計画で、中国へ今後5年で総額1000億円を
投資。
(数字のみは日経新聞 01.10.23から)
【5年のスパンでの長期変化】
グローバル経済で発現した日本の貿易黒字の減少傾向は、短期的・
一時的なものではない。
2004年には、日本の貿易収支の均衡、または赤字すら予想され
るものと見ておかなければならない。これに、米国の消費減退が絡
みます。
そうなると、国家の通貨枠がある国際金融の前提が以下のように変
わる。
(1)日本の貿易黒字は減少し、資本輸出国としての地位が下がる
。(2)米国の貿易赤字は、国内消費の減退と武器輸出の増加で、
減少に向かう。
(3)中国が、いよいよ生産大国になる。
この3項が21世紀初頭の、国際貿易、およびそれに付随する国際
金融の基本トレンドになるでしょう。
日本に関する認識の変更です。企業は、国家の貿易の枠を離れ、世
界企業になる。ただし通貨には国家の枠がある。企業の実体経済と
、国家という共同体の枠の相克です。
第二次世界大戦後の、基軸通貨体制の変更になりますね。
【30億人の参入の現実化】
まさに2001年、21世紀は旧共産圏の30億人(中国は13億
人)が、先進消費国(OECD10億人の経済)の商品供給基地及
び工場になる動きが「奔流」のような流れになったと言えます。こ
れがグローバル経済の意味です。
【成功モデル】
一方で、SCMの日本の先進企業である花王は、2001年9月期
の半期決算の売上4,225億円(+2.4%)、営業利益は57
3億円と、12期連続での最高益です。花王のSCM及びVMI(
Vendor Managed Inventory)への取り組みは、他のどこよりも早か
ったのです。
花王やソニーは、日本には珍しい<プロアクティブ>な会社です。
▼プロアクティブということ
日本語で言えば、
(1)変化が現実化する前に、つまり事態が起こってしまう前に、
(2)変化を予測し、長期戦略で対応しておくことを言います。
【変化のリード】
変化を引きこす、変化をリードすると言ってもいいでしょう。
従来の日本型経営の、戦略面での業界横並びでは得られないもので
す。
変化が起こっていないときに、言い換えればその変化が数年経てば
<奔流>になることを誰も想定していないときに、変化を予想し、
戦略を立て実行することです。
【2項】
経営計画で基本的に大切なことは、以下の2項です。
(1)短期での、起こった事態への対応策と、
(2)長期での、これから起こる変化をリードする戦略を、明確に
分離することです。
<この両者にバランスをとった計画>が必要です。
現在への対応は<凌(しの)ぎ>に過ぎない。凌ぎの連続では、将
来がない。現在へ対応しても、3ヵ月後には別の事態への対応を迫
られる。
▼深く認識すべここと
1980年代までは、多くの企業の本源的な資本は土地であり、本
源的な利益は土地の含み利益の増加でした。
【凌ぎの経営】
したがって、経営を資金繰り的に維持し、数年経って景気循環が戻
れば、その間に<他律的に>増加した含み資本によって、次の投資
なり対策が打てた。80年代までは、短期の変化を見て凌いでいれ
ば、<何とかなった>のです。
これは80年代までで、終わっている。
【次元が違う原理の侵入】
90年代以降は、年代的には80年代と連続していますが、資本は
土地含みとは別の次元の、非連続な<キャッシュフロー原理(≒営
業利益原理)>になったのです。
水中で泳いでいればよかった時代(80年代まで)から、トビウオ
のように空中を飛ばなければならない時代(90年代以降)に変わ
った。土地含み経営が、キャッシュフロー経営に変わったというこ
とにはそれくらいの<次元>の違いがある。
【長期戦略】
現在の長期戦略とすべきことは、小売業では
(1)自店の、標準店化をどう確立するのか、
(2)店舗ドミナント(商勢圏)を、どの地域にどう作るか、
(3)商勢圏で店舗数が不足するときは、他店との商品仕入れ面で
のグループ化をどう図るか、または、単独で行うのか。
この3項が根幹でしょう。今日の売上と利益を確保することとは違
う次元です。
卸(及びメーカー販社)では、
(1)VMI(Vendor Managed Inventory)を、どの店舗とどう取
り組むのか、
(2)他より有利な、物流の密度の高いドミナント(商勢圏)をど
う確保するか、
(3)ブランドをどう確立するか、でしょう。
メーカー、卸も、
(1)店舗での最終小売にどう接近するか(より顧客に近づく)
(2)また商品のコスト最適地へ遡る(より上流へ)という、2つ
の基本戦略が必要になる。
戦略の優先順位ということについて、以下のことを示します。
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■2.約10年前、思い出すこと
10年前、政府の中小企業対策予算を使った研究会で、「輸入の戦
略」がテーマになっていました。当時は、日本の輸出力は強すぎた
。内需を拡大し、輸入を増やさなければならない。日米構造協議(
1990年)で、米国が日本の内需拡大と、過剰貯蓄の修正を求め
ていた時期でした。
会議の話題は、どう輸入するかに集中していたのです。研究報告を
求められた私は、「検討されている筋と方向は、どうも違いますね
」と申し上げたのです。
▼1990年の、輸入戦略の提案の骨子
【店舗ドミナントの形成】
(1)輸入とは、輸入の方法や、コンテナを含む輸入物流である前
に、
(2)国内での、ドミナント物流網の構築、
言い換えれば、店舗ドミナントの形成である。
【結果】
現在のように、日本全体に、物流面で各店舗が孤立しているような
状態では、一時的に原価の安い商品が入っても、他店との対抗の一
時凌ぎになるに過ぎない。むしろ、海外工場からの余分な買い取り
調達で、売れ残りとマークダウンが生じ、収益圧迫要因になるであ
ろう。
したがって、試行的(東南アジア事情を直接に知る)という意味で
の
輸入は意味があるが、試行にとどめておいたほうが結果はいい。
7年後の1997年ころになると、輸入が本格化することは決まっ
ている。
【本質対策】
その時期になって、いまのような全国分散的店舗網では、困るはず
である。今から6年かけて、1地域ずつ、商勢圏を作れるように、
出店する体制を構築することが、本質的な輸入対策である。輸入の
物流の合理化とは東シナ海のことを言うのではなく、国内のことを
言う。
日本は、シンガポールからの神戸への輸入物流のコストより、神戸
から東京までの国内輸送コストのほうがぐんと高い。
【輸入商品の物流方法】
したがって、
(1)シンガポール・台湾・香港・釜山から、神戸に揚げ、その後
、国内輸送するのではなく(大部分の方法)
(2)アジアのコンテナ出荷港から、北海道、東北、関東、中部、
中国、四国、九州、北陸のコンテナ港へ直接運送することが、輸入
で勝利する方法である。
(3)そのためには、各地域で60%以上の品揃えを共通化する標
準店のチェーン化による商勢圏作りが必要になる。
思い出しつつ申しあげれば、以上のような内容でした。
▼その後
会議には、小売の経営トップが、10名くらい参加していました。
その中のひとりの経営者は、あの会議では「目からうろこ」でした
と言った。私は、ああそうでしたかと答えたのです。彼が、どんな
決心をしたのか、知らなかった。
【プロアクティブな戦略】
その経営者はのちに、
(1)輸入品の常備在庫を保管するDC(Distribution Center)
へ、約20億円の投資をし、
(2)そのDCが物流でカバーする地域内に、約3年の期間で7店
舗くらいの1500坪の店舗を作った。
数年がかりで、アジアの港から直接、近隣のコンテナ港まで届く、
物流のインフラストラクチャー(基盤の仕組み)を作ったことにな
る。最初に20億円の投資で物流センター(それも自動化倉庫のD
C)を作らなければならなかった。
DCがカバーするドミナント店舗の総売上が、小売売価で約60億
円以上になるまでは、利益の圧迫要因、つまり、物流センターが1
00%稼動でないためのコストアップがある。その間を、まさに経
営的、資金的に<凌がなければならない>
しかも、DC投資を決定した瞬間から、店舗を少なくとも6店舗、
できれば8店舗は作る必要がある。こうした決定が、<戦略的決定
>です。結果は、うまく行った。
プロアクティブな戦略の実行には、決断が必要です。直感ですが、
こうした決定は、100人の経営者のうち、数人しかできない。
【多くが見えていないときのプロアクティブな戦略】
経営の本当の勝負の多くは、<形が見えていないとき>に決まる。
小売業の経営トップを見ていて思うのは、<概念>の段階で、その
意味を察知でき、決断し、投資や戦略的な行動に移れる人は少ない
。具体的なものができたとき、評価する人は多いのですが。
一方製造業には、<概念>を理解する人が多いように感じます。
ただし製造業は、概念は理解できても、店舗の現実、消費者の現実
を知らないことが多い。こうしたところを見ても、小売と製造は、
両方が情報的に補うべきです。
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■3.サプライチェーン
▼サプライチェーンとサプライチェーン経営
【サプライチェーン】
サプライチェーンといったときは、〔資材・部品メーカー〕~〔資
材部品卸〕~〔メーカー〕~〔卸(メーカー販社)〕~〔店舗〕~
〔顧客〕の、全体の流通の連鎖(チェーン)構造を言います。
【SCM経営】
サプライチェーン経営(SCM経営とします)といったときは、
(1)トータル流通の鎖のなかの、1企業の視点ではなく、
(2)上記の全体流通の連鎖を、最終顧客に向かって、全体最適を
図り、
(4)最終顧客にとって無駄な部分、無駄な作業をカットする経営
です。
(注)以上のことを、第2部では、家具業界の実際の数字を使って
、示しています。
【SCM経営の焦点】
ここで改善の焦点になるのは、
(1)流通全体での、各社が持つ〔総在庫〕
(2)流通全体での、各社が持つ〔販売と在庫の情報〕です。
【端的な定義】
この、各社が持つ〔総在庫〕と、各社が持つ〔販売と在庫の情報〕
、組織の壁を取り払い、組織の壁で発生する商取引を無くし、〔共
有化〕を目指す経営というのが、端的な内容の定義になる。
SCMの情報システムは、そのためのツールです。
(1)流通の各段階で分散的に持たれる在庫の共有化を図ること、
(2)及び情報の共有化ということは、過去の商取引の常識を打破
することです。これを行うグループを〔戦略同盟の関係〕と言いま
す。
▼業務面での企業合併
企業体は独立(自律)していますが、戦略同盟の現場業務では、情
報を共有化する企業合併に等しい。
例えば、1990年代初頭に戦略同盟を形成した、米国の花王に相
当するプロクター&ギャンブル(P&G)社と、ディスカウントス
トアの小売チェーンのウォルマートでは、ウォルマートの本社商品
部にP&Gの商品担当の社員が常駐し、一緒に仕事(Co-Working)
をしたのです。
【目的】
目的は以下です。
(1)最終顧客に、売り場での商品欠品がなく、しかも売り場での
過剰在庫がない状態を作るため、(在庫の最適化⇒生産・在庫計画
)
(2)店舗の販売促進や、マークダウンと、品目の売れ数にはどん
な関係があるかを知るため、(売上予測⇒生産・在庫計画)
(3)店舗の棚、または平台でどんな商品構成をしたら効果的であ
るかを知るため(売上の増加)
(4)店舗の作業は、どんなものがいいかを知るため。(店舗作業
)
【中身】
中身では、
(1)メーカーと小売双方で、〔売り場研究〕を行い、その結果双
方が〔知識〕を習得し、
(2)顧客にとって、買いやすい売り場を維持するための、技術研
究であるとまとめることができます。
なぜこんなことが必要になってきたのか。理由は、消費の変化が、
わかりにくくなってきたからです。
なぜ、消費変化がわかりにくくなったのか、ここを考察する必要が
ありますね。以下でそれを行いましょう。
【重要】
その前に、わかりにくい消費の変化が、わかる(予測できる)とい
うことは利益だということを、理論的に説明します。
消費の変化がわかりにくいから、そこに利益のチャンスがあると言
えば、逆説的ですが、事実はそうなのです。以降の4.で示します
。
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■4.消費の変化がわかりにくいということの利益機会
消費の変化がわかりにくいということの裏の意味は、その変化の原
理がわかれば、利益になるという意味でもあります。これだけの表
現では、まだわかりにくいでしょうか。大切な部分です。
▼わかりにくいこと(予測ができないこと)のコストと利益
【価格原理】
消費の変化がわかりにくい時は、その予測不能の分を、あらかじめ
のリスク部分として、コストに含む必要がある。
つまり、〔工場の裸の製造原価〕に対して、何倍ものリスク部分
を 最終価格に含ませる必要があるのです。これが〔価格原理〕
【ケース・スタディ】
最終価格=製造原価+全流通段階の実際のコスト+純利益分
例えば、製造原価が1000円、全流通の実際のコストが2000
円のときは、3000円で売れば、利益はゼロで企業は成立しない
。
ここで、全部売れたこと想定した「見込み(未実現)」の純利益と
して、1000円があるとします。
このとき価格(設定小売売価)は4000円です。4000円で(
予測通り)全部売れれば、1個につき1000円の利益が出ます。
万々歳です。
ところが現実はこうはいかない。在庫100個のうち50個は売れ
たが、50個は売れ残ったとします。
50個は売れ、50個が売れ残った時点での利益はどうなるか。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
売上=4000円×(売れた)50個 =20万円
コスト=(1000円+2000円)×100個=30万円
利益 =-10万円
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
売れ残った50個が、10万円÷50個=2000円(原価割れが
1000円:売価半額)で売れれば、純利益ゼロにまで回復する。
いわゆるマークダウンですね。
(注)以上は、中国から輸入のアパレル(衣料)の、およその原価
構成です。
【時間価値商品】
しかし売れ残ったものが、ゼロ円でも売れないとするとどうか?
極端に例えれば、〔コンビニのお弁当〕です。これは時間価値の商
品。店頭に出して、残れば数時間で廃棄します。
経済のサービス化、言い換えれば最終商品の加工度の上昇によって
、他にもこうした〔時間価値商品〕が増えたのが、現代です。
仕入れた100個、または作った100個が、想定した期間内・時
間内に、きちんと売れれば、1000円×100個=10万円の純
利益になる。
つまり、「消費変化のわかりくにくいことが、他店、他のメーカー
よりもわかることが利益」になるのです。
まさに、現代商品では、(メーカーは)生産計画での、(店舗は)
発注での予測の精度が利益ということですね。
【典型】
コンビニ弁当は、現代商品の典型です。時間価値商品、及びファシ
ョン商品は、賞味期間があって、こうした性格を持つのです。
現代消費では、(1)時間価値商品、(2)ファッション価値商品
、(2)及び3ヶ月も経つと店頭価値が半分や時にはゼロになる商
品が多い。
これを「サービス化経済」と言います。
製造原価はどんどん下がる。しかし、流通の必要マージンは、売れ
残りリスクの拡大で上がる。価格に占める付加価値の大部分が、流
通マージンとリスクのコストになる経済です。先進国で共通です。
商品の価値が、本質的に個別化(多様化とも言います)し、時間化
しているのです。
家電商品やファッション商品も他の消費財も、限りなく、鮮魚販売
の魚屋さんのビジネスに似てきています。その意味で、流通業は魚
屋さんの仕入れ、販売方法を見習うべきですね。
現代商品の典型、パーソナルコンピュータなど、3ヶ月も経てば、
価格は30%は下がる。30%下がれば、赤字です。コンピュータ
の品質や機能は、つまり物理面での特性は、まったく劣化していな
い。しかし、店頭での製品間競争と需要数によって決まる「商品価
値」は、3ヶ月で激しく劣化しているのです。
だから、3ヶ月以内に生産商品・在庫商品を売り切らなければなら
ない。と言うより、3ヶ月以内にきっちり売り尽くす量を、予測し
て作り在庫しなければならない。ここが、勝負です。
【高度な商品の製造の容易さ】
パーソナルコンピュータは、部品が標準化されましたから、製造の
難しさはない。素人でも、プラモデルを組み立てるように作ること
ができる低技術商品です。難しい点は、需要予測です。
需要予測の精度を上げるには、多くの店舗からのリアルタイム情報
しかない。(受注後組み立てのネットワークメーカーDELLが、
全世界のPC販売の25%になった(01年夏)ことは象徴的です
)
【鮮度の価値】
現代商品では<鮮度>が価値の大部分、時には100%を占めるの
です。
今週の、今日の、または午前中の実際の販売(情報)を見ないと、
怖くて仕入れられないし、製造も、在庫もできない。
サプライチェーンで、店頭情報をリアルタイムで入れないと、工場
も生産ができない。
時間価値商品、ファッション商品では、予測の精度が、利益そのも
のです。沢山売れればいいということでもない、少量でも予測通り
売れれば、利益になる。沢山売れても残るものが多ければ損失が生
じる。
商品価値が劣化しているからです。
PCも、過去のコンピュータではなく、ファッション商品風。
【本質】
店舗の利益が出ないこと、メーカーが赤字になることの本質は、実
は価格低下ではなく、
(1)店舗では〔発注の精度〕、
(2)卸では〔中間在庫の精度〕、
(3)メーカーでは〔生産計画の精度〕です。
製造ロットは小さくし、製造コストは上げても、生産数の需要との
誤差を縮小することが利益になる。
先進国産業は、過去の量産時代とは根底が変質した。
量産の分野は中国の製造コストでないとやっていけない。
製造の時間賃金が$3なら、先進国内での流通のリスク、販売のリ
スク分をたっぷり取れるからです。
ただし、これも今の時点ではという限定条件付です。
なぜこうなったのかを以下で、原理的に示します。
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■5.先進諸国の現代商品の基本性格
▼テープレコーダー
【1.最初は録音の機能が商品価値】
最初は、オープンリールだけでした。
次に、設置型カセットテープレコーダーができた。
ここまでは、一家に1台の、ファミリー需要です。
ファミリー需要の時は、長期での需要予測ができた。1年先の普及
率や、販売数量を予測して、大きくは狂わなかったのです。安定し
た計画生産ができた。売れ残りも、15%も値引けば売れた。品目
数も少なかった。
【2.需要の個人化の時期】
1970年代末には、カセットテープのウォークマンができた。
ここで、需要は個人化した。ウォークマンを家族で共用はしない。
世帯需要1台が、個人需要になれば、1世帯3台になる。
需要の増加とともに、競争で製品種類(アイテム数)が増えた。選
択肢が広がったから、メーカーブランドが重要になり、微差しかな
い新商品の登場でも、他の商品の売れ行きが、ころころ変わるよう
になってきた。
【3.個人化すると商品価値はファッション化、ブランド化する】
身につけ、手に持って歩くものですから、商品はファッション化、
ブランド化した。ソニーのウォークマンと、日立のものでは、機能
や価格は同じでもブランド価値が違う。
テープレコーダーの時代より、ぐんと予測が難しくなったのです。
沢山作れば、売れ残る、作らなければ、売り場で欠品する。
そうなると、製造原価に対するリスクの必要マージンが増加します
。
ウォークマンの、月間販売総量は、およそ予測できる。総量の予測
で30%も狂うことはない。しかし生産や在庫、発注は品目です。
品目単位では、予測が難しくなってきた。品目のレベルでは、予測
が2倍、3倍も狂うことがザラです。
【4.更に、MD、デジタルテープ、CDR、DVD、PCのディ
スク】
次は、カセットに加えてMDが、デジタルテープが、CDRが、そ
して20001年はDVD、PCディスクが加わった。
音を録音する商品の種類は、百花繚乱。聞くだけのウォークマンな
ら1980円の使い捨てに近いものすら多種ある。
どうやって、品目別に予測するか、困難を極めます。
一体どうしたらいいか、以降で、更に考察を深めます。
▼コンビニおにぎり
コンビニエンスストアの最近の商品開発でのヒット商品は、おにぎ
りです。これも、お弁当と同じく、時間商品で、付加価値は高い。
しかし、狭い棚に10種から20種は並ぶ品目別の売上予測は、不
可能に近い。次々に商品は変るから、3ヵ月後の製造予測などでき
るわけがない。新品種が、毎日のように出て、予測の基礎条件が変
わるからです。
例えば、米の原材料そのものなら、日本全体での需要予測はできる
。米の販売総量が1年で30%も変ることはない。しかし、こうし
た原材料に近い商品は、売っても付加価値は少ないのです。
【リスクの少ない商品はマージンも低い】
理由は、
(1)誰でも、売れる量が、ある精度の幅で予測できる。
(2)売れ残っても、古米にならないかぎり数ヶ月は、値崩れなく
売ることができる。
つまり、在庫のリスクが少ないから、利益も少ないのです。魚沼産
コシヒカリでも1Kg400円~500円位でとても安い。江戸時
代はともかく、米を原材料として売って儲ける人は、現代はいない
。
【おにぎりは?】
完成品のコンビニおにぎりは、1個が100円くらいもする。高い
。
価格に含む流通でのリスク部分が、たっぷりです。
1ヶ月1万円の食事代で生活する中国人留学生は、コンビニおにぎ
りやコンビに弁当は買わないそうですね。米が安く買えるのに、そ
れで作ったおにぎりが100円という、日本の消費者は評価する時
間価値が、理解ができないようです。
1ヶ月、平均では$1で生活するアフガンの人も、日本人の消費が
信じられないでしょう。コンビニおにぎり1個で、1ヶ月の生活費
が消えます。
しかし、日本人は、おにぎりを買う。米の総体の消費量が増えるわ
けではない。ただし、最終消費額で計算したGDP計算は米のまま
売るよりも上がる。開発したメーカーとコンビニ本部は利益を出す
。GDPは成長する。
最近のGDPの成長の中身は、このコンビニおにぎり的なものでし
ょう。
人が採るカロリー総量や食料は増えない。しかし、口にいれる前の
価格は、合計計算では上げている。
母が、おにぎりを作る時代は、米や海苔の、原価分の計算のみでし
た。母がパートに出て、子供がコンビニ弁当を食べると、GDP計
算は上がる。それで、実体が豊かになったわけではない。これがサ
ービス化経済の一面です。
さて、ここから、在庫原理の説明に入ります。
時間価値化、ファッション化した消費、つまりサービス化経済での
、在庫管理の原理はなにか。
SCM経営を理解するための、コアになるのが、在庫管理の原理の
理解です。
第2部のVMIは、企業間の協働を示し、以降で解説する在庫管理
の原理は、商品面での、VMI(Vendor Managed Inventory)の中
身を示すものです。
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■6.在庫管理の原理から
在庫管理という言葉は多用されます。
ここでは、定義をしながら解説します。
サプライチェーンの根幹になるのは、流通で言えば最終段階、つま
り店舗(最終販売機能)の在庫です。
そうした意味で、店舗在庫を取りあげます。卸の在庫、メーカー販
社在庫、及び品目別生産計画の立て方まで、全部同じ原理です。
▼店舗在庫の映像化
【店舗在庫】
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
A部門(Aの売り場、Aの棚と言っても同じ)
a品目×在庫数
b品目×在庫数
c品目×在庫数
d品目×在庫数
・・・・・・・・
B部門
d品目×在庫数
e品目×在庫数
f品目×在庫数
g品目×在庫数
・・・・・・・
C部門
・・・・・・・
D部門
・・・・・・・
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(計)総品目数 ×平均在庫数=総在庫数量
総品目平均単価×平均在庫数=総在庫金額
(注1)在庫管理の最小単位を、品目と言います。アイテムは品目
の英語です。米国小売業では、一般にSKU(Stock Keeping Unit
:在庫管理の最小単位)と言います。IY堂用語のタンピンは品目
を表しています。絶対単品といったときは、製造のシリアルナンバ
ー(小売では発注ナンバー)に当たるものです。宝石や、家具、フ
ァッション、耐久財の高額品ではシリアルナンバー管理を行います
。
(注2)A部門、B部門は、小売用語ではカテゴリーと言います。
金額管理(内容は売上、粗利益、配布人件費、配布経費、営業利益
、在庫回転率等の計数)、つまり部門別管理の単位になるものです
。
各部門を、週単位で管理することを<52週ウイークリーマネジメ
ント>と言います。
店舗管理の基本が、52週ウイークリーマネジメントです。
現場管理の方法として、いつか取り上げる必要がありますね。
▼在庫管理の、階層の区分
【1.在庫金額管理の階層】
在庫金額管理は、品目の数量ではなく、
(1)部門別・品種別等で区分した在庫金額(売価、または原価)
の集計、
(2)及び計数化(在庫金額、在庫回転率、粗利益率、交叉比率等
)で管理します。
【2.商品構成管理の階層】
商品構成管理は、
(1)店舗の全部門の構成
(2)各部門(カテゴリー)に展示する品種の構成(部門別品種構
成)
(3)品種の中の価格帯の構成
(4)品種の中の商品クラスの構成
(5)品種のなかの品目の構成、という5つの管理レベルがありま
す。
※ここでは詳しくは述べません。〔売り場のカテゴリー管理〕の領
域になります。
【2.品目別在庫数量管理】
在庫管理の基盤になるのが、〔品目別在庫数量管理〕です。
今回は、これを検討します。
▼定期発注法
【定期発注法】
定期発注法は、
(1)定期的(月、週、日、または時間)に、
(2)発注時点から、発注商品の入荷時点までの期間(リードタイ
ム)の売上予測を行って(または、直近の売上実績を用いて)
(3)現在の在庫を考慮し、
(4)統計的に、品目別の最適発注数を決める方式です。
【2つの代表的方法】
統計的な発注法には、大別して、
(1)発注サイクルを一定化して、その都度の発注数を、手持在庫
と売上予測で変化させる〔定期発注法〕と、
(2)1回の発注数量を一定(経済発注ロット:EOQ)にして、
在庫が欠品しないように、一定在庫を割った時点で、不定期に発注
する〔定量発注法〕があります。
ここでは、単純にするため、定期発注法を取り上げます。
(定量発注法も、原理部分は、定量発注法とまったく同じです)
第2部での考察を更に深めます。
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■7.定期発注法から見えるもの
▼(再掲載)定期発注法の公式
発注サイクルを1週間としたとき、以下のようになります。
これを週間で繰り返すのが、店舗の、品目別在庫数量管理になる。
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店舗の週必要発注数=
=(入荷までのリードタイム日数+発注サイクル日数)×(1日
平均)売上予測数-発注時点の有効在庫数+安全在庫数
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〔誤りの訂正〕SCMの第2部の公式では、発注サイクル日数が抜
けていました。お詫びし訂正します。公式を、こちらのほうに置き
替えてください。
【注】
(1)「入荷までのリードタイム」は、発注をした日から、入荷す
るまでの日数、発注サイクルはこのケースでは週間ですから7日で
す。
(2)「有効在庫数」は、現有在庫数のうち、顧客引き当て(予約
等)がなされていなくて、販売が可能なもの。
(3)「安全在庫数」は、売上の変動をカバーし、欠品を避けるた
めに余分に持つ在庫。
安全在庫数=売り上げ数の統計的な変動幅(標準偏差値)×2.3
(安全係数)=99%の在庫安全率(=1%の欠品率)
▼公式の各要素の検討
【1】発注から入荷まで日数(リードタイム、または納期)の狂い
リードタイムが、短期で、一定であり、狂いがなければ問題はない
。しかし現実には、3日と想定しているものが4日、または2日に
なることがある。これで1日分の狂いが生じます。
(注)納期の1日の狂いは、{(入荷までのリードタイム(日数)
+発注サイクル(7日))×(1日)売上予測数}の精度を狂わせ
る要素になる。
【2】売上予測数は、(30店舗の標準品揃えの店舗の合計での)
最高の精度で、変動を受けにくい基礎売上部分の経験値では、±2
0%です。〔変動を受けにくい品目を探す〕ことが必要です。
この予測に、店舗の販売促進(マークダウンを含む)、催事、季節
変動要因での変動が加わります。これは、業種、商品の品種、アイ
テムで変わります。
本格的な予測では以下のような、3要素分けの方法をとります。
〔売上予測数=基礎売上±催事要因増減±季節変動要因増減〕
基礎売上部分は、品目別の売上数(週間等)を、折れ線グラフ化す
ると、見えます。いずれも、1店舗では変動が大きくなりますから
、品揃えを標準化し、販売促進を共通化している複数店舗の集計で
行うことが要所です。
(補足説明)
売り上げ予測を行わず、
(1)直近の週の売上数実績、
(2)4週の移動平均の売上数実績
(3)13週移動平均の売上数実績から、1日平均を出して、予測
数とする方法があります。
【3】安全在庫
安全在庫は、それ以下の在庫数になると、売り場で品切れ(欠品)
が起こりやすくなり、売上の機会損失になるため、予測と実績の狂
い(偏差)をカバーするために下駄を履かせる余分な在庫です。
〔最低在庫数〕ということもあります。
▼定期発注法が適用できる品目の発見
大切なことは、すべての品目には、定期発注法公式を適用できない
ということです。逆に、発注法公式が適用できる品目を、探すこと
、これが必要になる。
(1)店舗で長期の〔定番(ステープル)〕にする品目
(2)売上の変化が安定していて予測できる品目
【重要:標準店の意味】
こうした、共通的な安定品目を、店舗品揃えの30%、40%、そ
して60%に持って行くことを、〔標準店作り〕と言います。
標準店は、単に品揃えの品目を、共通化することではない。
共通品目のなかから、売上が安定していて予測できる品目を探す活
動が、〔標準店〕作りです。ここが、チェーンストアで重大に誤解
されている点の一つですね。
▼要素の検討から見えること
(1)代表的な発注法である定期発注法の各要素、
(2)変化のサイクルが極めて速くなった現代商品の基本性格、以
上2つの要因を考慮したとき、以下の根本策が見えます。
発注サイクルを、
(1)週間から、週2回、毎日、または時間と短サイクル化するこ
とによって、
(2)1回の必要発注数の量を減らし、
(3)売れ残りのリスクと、欠品を減少させる。
発注サイクルを短期にすることは、予測の狂いを、次の発注で短期
に修正することができるという、重要な意味を持つのです。
例えば、月間発注では、次の月まで修正ができない。
毎日発注なら、翌日の発注で修正できる。
発注サイクルの短期化を実現するには、発注から入荷までのリード
タイムを短縮化する必要がある。
極端な例を言えば、1個売れた瞬間に1個発注し、即時に1個入荷
すれば、発注法も何も要らない。単に、POSの売上実績データと
在庫データを、リアルタイムで出荷元に送信すればいいのです。
ここが、店舗在庫管理の到達点であり、競争のキーポイントになる
ところです。
(1)入荷までのリードタイムを、短縮すること
(2)出荷元での在庫の欠品を、減らすこと、これが先進諸国の現
代消費に適合する、店舗在庫管理方法になる。
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■8.米とおにぎり
▼米の性格の2分化
【食の原材料性格の米】
食の原材料としての米は、流通では、低付加価値商品です。
しかし、長期の安定した売上が望め、在庫管理の必要作業も少ない
。
【しかし、米でも銘柄米は?】
この米も高付加価値の〔銘柄米〕になると、魚沼産コシヒカリは、
秋田小町では、「需要代替が利かない」から「個客」需要にあわせ
た在庫管理が必要になる。アイテムが「個客」に向かって分化し、
品目が増えると、こうなる。(品目の分化、多様化と言います)
ところが、個店単位で必要な銘柄の、全品目の安全在庫を見込んだ
十分な在庫をもてば、膨大な量になる。売れ残りとその逆の欠品が
激しくなる。
したがって、店舗の展示品目数、種類が増えれば増えるほど、標準
品揃えの複数店舗への物流をカバーする上流のDC(常備在庫を持
つ物流センター)で、VMI的に在庫を管理することが、合理的に
なる。
DCでの、受注から店舗納品までの納期が翌日なら、店舗は在庫を
2日分にまで極小化できる。
DCでは、物流カバー店舗の、多くの種類の銘柄米の在庫を持てる
。
ここがキーですね。
これを、SCM経営ではCRP(Continuous Replenishment Progr
am:継続補充プログラム)と呼んでいます。
▼更に、〔おにぎり〕では
製造と流通の高付加価値商品である〔おにぎりや弁当〕ではもっと
極端です。
4時間サイクルくらいでの、店舗納品、つまり短いリードタイムが
必要になる。時間価値商品だからです。時価価値商品にすることを
、付加価値を高めると言います。
1週間に2日の発注と納品サイクルでは、おにぎりの取り扱いはで
きない。商品の最終加工度を高め、それによって高付加価値を図れ
ば、商品価値は、時間化する原理がある。
(米国ではHMS:Home Meal Solution)
こうして、食に限らず現代商品の多くの高付加価値商品では、
(1)最終需要へ距離を接近させると同時に、
(2)納品のリードタイムの短縮化を図る、流通のシステム産業と
しての競争になっているのです。
▼Kマートとウォルマート
米国ディスカウントストアのKマートと、ウォルマートは、店舗も
商品も価格も類似しています。違うのは、納品までのリードタイム
です。
Kマートの多くが、週間発注サイクルで、週間納品だった。
(現在は、若干改善されています)
ウォルマートは、当初から、クロスドックセンター(店舗別仕分け
、通過型の物流センター)を設置し、毎日発注で毎日納品の体制だ
った。
店舗の発注作業は、どちらが難しいか。
どちらが日々の需要への変化対応ができるか。
週間発注ならKマートでは、来週の展示、催事を考え、安全在庫を
考慮して、発注する必要がある。
ウォルマートは、今日のPOSデータ、在庫データを、クロスドッ
クセンターに送れば、クロスドックセンターから翌日補充がある。
予測は必要ない。しかも、店舗はEDLP(Everyday Low Price)
で、原則的に催事はしない。売り場での大量展示によるプロモーシ
ョンのみです。
クロスドックセンターの運営・配送は、上流のメーカーと協働(co
-working)的に行う戦略同盟の体制、サプライチェーンを作った。
ウォルマートでは、ある地域に出店するとき1店舗目から、クロス
ドックセンターとしての物流センターを設置するのが、基本の流通
戦略と決めていた。両者の企業力には、今は埋められない戦略差が
ついた。
SCM経営は、SCMのソフトウエアの導入ではない。最終需要の
変化への対応を即時化、早期化する、発注と流通の仕組み作りです
。
次は、在庫の価値と利益の問題です。
ここにも、伝統的な考えの誤りがある。
伝統的な思考方法は、<商品は長期にわたって安定し価値を持つ>
と前提しているのです。商品の時間価値化を、想定していない。
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■9.在庫を持つことのリスクの意味
▼粗利益率の誤り
商品利益率(=粗利益率)という概念があります。誰でも知ってい
る。
粗利益率={(売価-仕入原価)÷売価}×100%です。
(注)Gross Marginですから、〔荒〕でなく、〔粗〕を使います。
損益計算の売上総利益と言っても同じです。
5万円の売価で、粗利益率が30%なら、1個売れれば15000
円の粗利益率。この計算が在庫をもつときは間違える元になる。多
くの小売バイヤー、商品部が犯している誤りです。時にはこれで倒
産する。
この商品を、60個仕入れて、在庫しているとします。
10個売れた。したがって15000円×10=15万円の利益が
出たと思う。(事実、税務署はこの計算で課税する)
▼(重要)経営観点は、キャッシュフローで
〔経営の観点〕では、上の計算は、間違いです。
以下に示す方法が正しい。
(1)5万円×原価率70%×60個の在庫
=-210万円のキャッシュフロー(210万円の減少)
(2)10個売れた時点
5万円×10個=50万円(収入)
+50万円-210万円=-160万円のキャッシュフロー
(3)42個売れた時点
+210-210万円=0円のキャッシュフロー
(4)60個全部が、初期の売価で売れたとき
+300-210万円=+90万円のキャッシュフロー
60万円÷300万円=30%の粗利益率
60個仕入れたのものが、全部、〔初期売価〕で売れたとき初めて
、当初の見込み粗利益率30%が実現する。
42個未満の売れ数の時は、キャッシュフローはマイナスです。マ
ークダウンがあれば、全部売れても、利益はマークダウン分がなく
なる。
一個売れて利益が出たと計算するのは、税務会計です。税務会計は
、残っている在庫は、永久に価値を持つという19世紀的な価値観
です。
未だに、19世紀の価値観で、商品部が評価、運用されてはいない
か・・・・他にも経営ではこうした、認識の錯誤が多いのです。
パーソナルコンピュータが、3ヶ月で30%も値下がりする時代に
、伝統的な利益計算の会計は遅れていて、役に立たない。キャッシ
ュフローの計算で見て、現場評価するべきでしょう。
SCM経営では、リアルタイムの情報共有化を図り、メーカー在庫
、中間在庫、店舗在庫を、最小化、最適化することによって、この
キャッシュフローを増やし、win-winの共生を目指します。
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■10.3項の連絡事項(先週と同じ内容です)
(1)11月7日から11月10日の、米国先端流業視察ツアーは
、予定通り実行します。こうした時期にもかかわらず28名から2
5名の参加予定があります。45名が定員のバスですから、ゆっく
り座れます。飛行機は別便ですがロスでお会いするのが楽しみです
。
(2)10月25日は、IBMの次世代進化フォーラムでの、公開
講演会です。場所は仙台国際ホテル、私の講演時間は午前10時~
11時30分です。空席があるかどうか不明ですが、以下で受付し
ています。当日、会場にお見えになってもOKかもしれません。
↓
(3)お問い合わせをいただいている、有料版のバックナンバー購
読は、現在、まぐまぐプレミアムで提供システムを開発中との連絡
を受けています。しばらく、お待ち下さい。
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著者: 吉田繁治 systems research ltd.
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<SCMシリーズ:SCM経営をめぐる考察(第3部)>
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