ビジネス知識源:後編:グローバル・デマンド・ビジビリティが日本産業再興のキーポイント(2)
This is my site Written by yoshida on 2011年2月8日 – 15:28

さっき送った前編に続き、後編をお届けします。前編の商品構成要
因を40%とすると、価格要因が店舗の部門売上の25%程度を決める
でしょう。

【再掲:確認】
サプライチェーンの先頭にある店舗の、部門売上を決めるのは、
1.品揃えの豊かさという要因(40%)、
2.売価要因(25%)、
3.プロモーション要因(15%)、
4.サービス要因(10%)、
5.その他の要因(10%)と想定されます。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
<252号:グローバル・デマンド・ビジビリティ(GDV)が、
        日本産業の再興のキーポイント(2)>
         2011年2月08日

【目次】
<前編>
1.店舗で商品が売れる要因への経験的な仮説

<本稿:後編>
2.売価要因(25%)
3.世帯所得が、売れる価格帯を決める
4.米国には、現在の日本と似た10年があった
5.1980年代のドル高と、オイルショック
6.日本の店頭価格も約半分に下がった
7.結論:これからの価格政策
8.売価要因25%
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■2.売価要因(25%)

店舗の商品計画において売価構成(プライシング)を決めるには、
世帯所得の変化という要素が欠かせません。わが国2000年代は、世
帯所得の減少という新現象から、売価構成の重要性が増しています。

重要なことなので、記述が若干長くなりますが、この世帯所得の推
移から、現在と今後の、最適価格(最も売れる価格)を求めます。

▼最適売価を決めるのは、商圏の世帯所得

売上を決める要素で「品揃えの豊かさ要素」を40%とすると、品目
の売価要素が25%くらいでしょうか。(経験的な仮説)

「品揃えの豊かさ要素」の上に、売価の低さという要素がないと、
営業利益が高く、十分に売れる部門にはならない。

百貨店は「品揃えの豊かさ」では、十分な品揃えであることが多い。
総菜のデパ地下がいい例です。問題は、価格という要素です。これ
が1990年代の以降の20年の世帯所得に比べて、高くなっています。

デパートの売上が増えていたのは、1980年代までの、世帯所得が増
えていた時期です。その後20年、百貨店の総売上は、9兆円から6兆
円に減少し、コンビニの総売上(7兆円レベル)より低くなりまし
た。この原因を、価格の面から見ます。

円で見た世帯所得は、わが国では、1994年(14年前)の664万円を
頂点に、2010年は当方の推計で530万円へと、134万円(20%)も減
っています。1月当たりで11万円もの減少です。(厚労省:国民生
活基礎調査:2009年)

以下のデータは、マスコミでも取り上げられることが、少ない。世
帯の所得の実相です。

【(1)世帯所得の推移(表1)】
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1990年     596万円
1992年     648万円
1994年     664万円(世帯所得の頂点)
1996年     661万円
1998年     655万円
2000年     617万円
2002年     589万円
2004年     580万円
2006年     566万円
2008年     548万円
2010年(推計) 530万円(世帯数4800万:世帯人数2.6人)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次に、世帯の所得階層を見ます。

【(2)世帯所得の構成比:2009年:同調査(表2)】
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
200万円未満    19%( 910万世帯)
200~ 400万円   27%(1300万世帯)
400~ 600万円   19%( 910万世帯)
600~ 800万円   13%( 620万世帯)
800~1100万円   12%( 580万世帯)
1100万円以上    10%( 480万世帯)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

年収400万未満の世帯が46%に増えています。他方で、800万円以上
の世帯は、 22%に減っています。今後、400万円未満の低所得世帯
は、50%以上に 増えます。

800万円以上の世帯は、今後、20%以下に向かって減ることが確実
です。 2012年から、団塊の世代(5年の幅で1000万人:500万世
帯)が、65歳を 超え始め、90%の人は完全退職し、年金生活に入
るからです。

店舗での買い物は、世帯の所得が増える時は増加し、減るときは減
少します。前掲の表1を見て下さい。

わが国4800万世帯(家族2.6人:人口1.26億人)の平均所得は16年
前の1994年には664万円でした。以来16年、今は530万円で、134万
円(20%)も減っています。1ヶ月の所得で11万円も少ない。これ
は先進国(日米欧10億人)でひとり日本のみです。

他方では、400万円未満の世帯が46%(2200万世帯)に増えました。
衣食住の必需商品を買う「下限所得」でしょう。日本の実態です。

世帯所得の減少と400万円未満の低所得世帯の増加が、購買商品の
低価格化が進む原因です。所得が減る中で、去年より高い商品を買
うことができるはずもない。(注)所得で上位20%の世帯(約
1000万世帯)では、増える所得の人も多い。

価格帯の5区分で言えば、ロワー・ポピュラー帯の買い物をしてい
る人が50%(6000万人)です。(注)価格帯5区分:ベスト:ベ
ター:アッパーポピュラー:ポピュラー:ロワー・ポピュラー

こうした本当のデータは、断片的にしか取り上げられないため、知
らない人が多い。

■3.世帯所得が、売れる価格帯を決める

価格政策を決めるとき、世帯所得の傾向は必須です。高齢化(65歳
以上)が先に進んだ地方都市では、400万円未満の世帯が60%くら
いを占める多数派です。2010年代は3大都市圏(東京・名古屋・関
西圏)の高齢化です。

増える65歳以上の世帯の、厚生年金の平均支給は、1年に200万円、
自営業の国民年金は60万円です。年金支給は、2010年の政府予算で
53兆2000億円に増えています。

全世帯所得(254兆円:4800万世帯)のうち53.2兆円(構成比21
%)を年金が占めます。凄い増え方です。

これに加え団塊の世代(1947年~51年生まれ)の約1000万人が65歳
を超え、年金生活に入るのが、2012年からです。世帯主が65歳以上
は1560万世帯(世帯構成比31%:2010年)です。今10軒のうち3軒
は、65歳以上の世帯と見ていい。近々10軒に4軒になります。

この所得傾向を、マーケティング風に言えばどうなるか。マーケテ
ィングは、顧客の需要(ニーズ)がどこにあるか、どう変化するか
の探索です。

団塊(1000万人:500万世帯)の世代に属する年収600万円以上の世
帯が、65歳を超え、退職のため減ります。2012年を以下のように記
憶しておいてください。

(1)20%が800万円以上の高所得:10軒のうち2軒に減る。
(2)30%が400~800万円未満の中所得
:10軒のうち3軒のまま。
(3)50%が400万円未満の低所得:10軒のうち5軒に増える。
       
賃金は、一時的に企業の利益が増え、名目GDP(現在482兆円)が増
えて景気が回復しても、数年続く見込みないと上昇しません。下落
するときも上昇するときも、企業利益に2~3年は遅れます。

このため、価格を決めるマーケティングでは、少なくとも今後3年
(2013年まで)は、世帯所得の減少が続くと見ておかねばならない。

■4.米国には、現在の日本と似た10年があった

空想や推測ではなく、実証的に言います。米国の1980年代は、世帯
(1.3億世帯)の80%の実質所得が減った時期でした。

(注)マネジャー階級が20%、ワーカーが80%です。マネジャーの
所得はITや金融業で増えましたが、製造業の空洞化(海外化)で
ワーカーの実質所得が減りました。米国では、マネジャーとワー
カーは、年齢では区分できません。付記すれば、米国ではワーカー
の平均勤務期間は3年と短い。一生で11回くらい会社を変わります。
日本は11年と長い。日本は一生で3回変わるのが、平均です。

原因は、
(1)1980年の第二次オイルショックによる物価の高騰と、
(2)製造業の空洞化、つまり製造業雇用の急減です。

米国では、例えばGM(世界最大の自動車会社)のワーカーの賃金は、
当時の金融業の現場ワーカーより高かったのです。
      
実質所得は、物価の上昇率(当時は1年に+3~10%)を引いた所得
です。当時は第二次オイルショック(1980年)で、商品物価が上が
った10年でした。

名目賃金は1年に3%くらい増えていた。しかし商品が3~10%上が
っていたため、80%のワーカーの購買力は減っていたのです。
(注)20%のマネジャークラス以上の実質賃金は増えていました。

▼ディスカウント・ストアとSPAのビッグ・バンの1980年代
        
この時期、新興勢力として店舗数を増やしたのはKマート、次にウ
ォルマート、都市部ではターゲットでした。3社を、3大ディスカ
ウント・ストアと言います。1980年代は新興でしたが、今は小売り
の主流です。

(注)もともと安い商品を仕入れて安い価格で売るのはディスカウ
ントではなく安売り店です。ディスカウント・ストアは、合理的に
商品原価や物流費を下げ、同時に店舗のコストも下げることによっ
て、同等の商品を25~40%は低い売価で売ることができる店舗を言
います。

また、同時に、GAPなどのSPA型専門店のディスカウント・チェーン
が、全業種に勃興しました。SPAは、生産費が低いアジアや中南米
で商品開発し、コンテナで輸入して販売する専門店チェーンを言い
ます。

80%の世帯の実質所得の減少によって、1980年代には、ディスカウ
ント・ストアと、SPAのビッグ・バンが起こったのです。

1990年代にアパレルの価格を1/2から1/3にしたユニクロや、家具価
格を1/2から1/3に下げたニトリのような「開発マーチャンダイジン
グ」を行う各業種の専門店です。これらの商品開発型の専門店チ
ェーンをSPAと総称します。

総合品種のディスカウント・ストアと、専門店SPAの主力価格は、
それまではなかったロワー・ポピュラー帯でした。ポピュラー・プ
ライスのほぼ半分の価格が、プライス・ポイントでした。

(注)プライス・ポイント:
価格を横軸にとり、その価格の品目数を縦軸にとった商品構成グラ
フの中で、もっとも陳列品目数が多い価格。

現在は、1990年代後期と2000年代の米国の、世帯所得増加のため、
若干高い価格帯の商品がSPAに増えていますが、80年代のGAP等は、
それぞれの業種で、もっとも低い価格帯(ロワー・ポピュラー・プ
ライス帯)の店舗でした。80年代当時、米国の店舗見学をされた方
は、ご記憶でしょう。

▼百貨店とGMSの凋落  
        
ロワー・ポピュラー帯の商品を作ったディスカウントの新勢力の勃
興に比例して凋落したのは、ショッピングセンターの核店舗だった
百貨店とGMS(代表がシアーズ)です。

(注)この点で、米国の1980年代は、日本の円高(1985年)の後の、
小売り状況にそっくりです。日本でGMSに相当するのは、ダイ
エー・IY堂・ジャスコ(イオン)・ニチイ(マイカル)・西友です
が。この5大GMSのうち3つが90年代と00年代に経営破たんしていま
す。

顧客である世帯の実質所得が減っているのに、
(1)百貨店はポピュラー・プライス帯の約2倍は高いベタープライ
ス帯を主力にし続け、
(2)GMSは古いポピュラー・プライス帯で、新興のディスカウン
ト・ストアと、SPAの価格から見れば、2倍も高いと見えたからです。

重要なことを言えば、1980年代の米国の百貨店やGMSも、商品構成
における価格帯を上げたわけではない。

しかしディスカウント・ストアとSPAの専門店チェーンが、ポピュ
ラー・プライスの約半分の価格を主力商品にしたため、顧客の目に
は、「高い店舗」に見えてしまいました。(注)主力商品は、その
カテゴリー内の商品販売数で、60%以上の数量が売れるもの。

■5.1980年代のドル高と、オイルショック

1980年代前半期の米ドルは、今とは異なりFRBの米ドル高金利政策
のため、$1=200円以上でした。今の2倍以上の、ドル高でした。
通貨が高いと、海外の物価と賃金は安く見えます。

このため海外からの商品輸入が急増した。米国製造業の空洞化(生
産の海外移転)も招きました。国内物価は、1980年の第二次石油危
機で高騰していました。

2000年代後期の資源・穀物・エネルギー価格高騰に類似します。

80年代のドル高と国産物価(名目価格)のインフレを利用し、それ
を機会として、低い価格の輸入によって価格を当時のNB価格の半分
に下げたのが、輸入商品を50%、60%、70%、80%と増やしたディ
スカウント・ストアとSPAでした。

今の日本に類似するのが、ドル高・オイルショックの、米国の
1980年代です。日本の現在は、円高と輸入資源高でしょう。

        *

加えて1994年には、それまで1元=30円と高かった中国の人民元が、
一挙に、1元=15円水準へと切り下げられます。この時期から、中
国が5つの経済特区の工場で、輸出商品の生産大国に向かいました。
中国の安価な商品は、ディスカウントストアと専門店チェーンの
SPAによって、まず、欧米の店頭にあふれたのです。

80年代から中国輸入が主だったユニクロとニトリ等が売価を下げて
も大きな利益が出るようになったのは、人民元の切り下げの1994年
以降です。中国からの輸入価格(FOB: 商品原価)が半分になった
ためです。

わが国のユニクロとニトリも、実は、米国の、1980年代のディスカ
ウントストアと専門店チェーンのSPAの、アジアと中国からの商品
調達法を真似たのです。ウォルマートとGAPの方法がモデルでした。

わが国で、コンテナで低価格雑貨を輸入する100円ショップ(ダイ
ソウ:国内2540店)が、米国の$1ショップの真似から勃興したの
も、この時期からです。

米国は、1980年代に成功を収めるマーチャンダイジング(開発・調
達)の方法が変わったのです。(注)日本では1990年代後期から
00年代です。

■6.日本の店頭価格も約半分に下がった

日本の店頭商品の価格は1990年に比べると、全業種で54%に下がっ
ています。20年で半分の価格になった。

主因は、1990年前後に比べ、人民元を含む世界の通貨に対し、円が
実効レートで2倍に切り上がったためです。ドル高だった米国の
1980年代にそっくりのことが起こったのです。(注)貿易加重で計
った通貨のレートを、実効レートと言います。

円が2倍に切り上がっても、言い換えれば、海外から見た日本の物
価と賃金が2倍に上がっても、コストダウンして貿易黒字を続けて
いるのですから、日本は凄い国です。

しかしコストダウンの中に、パート化による賃金の切り下げとリス
トラが入っていたため、世帯所得が、1996年から持続的に下がった
のです。パートが増えたのも、わが国では新しく、1990年代からで
す。

なお、米国と欧州のワーカー階級は、多くがわが国のパートのよう
な時間給で、倉庫のピッカーや物流のドラバーのような少数が能率
給です。販売員は、ほぼ歩合給です。レストランのウェイター・ウ
ェイトレスはチップが収入を補います。ワーカー階級ではわが国の
ような正社員・パートのような雇用の身分の区分はありません。同
一作業は同一賃金になっています。ただし雇用は不安定です。

(注)短期の臨時雇用はあります。また、不況期に首を切るレイオ
フは、実に頻繁です。米欧の経営では、多くが、ワーカー階級の人
件費は、変動費と考えています。わが国では固定費でしょう。米欧
の会社で、業務のシステム化が、わが国より進んでいる理由は、現
場ワーカーが頻繁に変わるためでもあります。人が変わっても、業
務が維持されるようマニュアル化とシステム化が、長期雇用のわが
国よりはるかに発達したと言えます。他方わが国では、人に依存す
うところの多いシステムです。

雇用形態の変化とリストラを主因に、世帯の平均所得が減り始めた
1994年を起点に、日本の店頭物価は、その後20年の長期で下がる傾
向を示します。

典型例を言えば、コンビニの弁当も、1990年には600円くらいがプ
ライス・ポイントでそれでも安かった。今のプライス・ポイントは
298円で、半分です。

ファミレスのメニューのプライス・ポイントも1200円くらいでした。
今は600円付近でしょう。

以上のような、50%に向かう価格下落が、全品種で起こった。
1年に3%下がると、20年で、0.97の20乗=0.54になります。   
        
 
他方海外は2%くらいの、持続的なインフレでした。米国の店頭物
価は、1.02の20乗=1.5倍に上がった。90年代~2000年代と20年も
円高基調だったので、円で見れば米国の物価が上がったようには見
えませんが、ドルで見れば持続的に上がっています。

▼米国小売業における価格シフト

米国の1980年代から1990年代の20年の価格シフトをイメージ化すれ
ば、ロワー・ポピュラー帯の商品を主力とするチェーンストア群が、
全米の小売額の60%以上を占めるようなったことです。巨大なビッ
グバンが起こったのです。

1980年代から90年代の20年間で、米国の小売業には、革命的な変化
が起こっています。

ウォルマート1社の売上が$4050億(33兆円:イオンの4.5兆円の7.
3倍:2010年)と、20年で約10倍に増えた事実を見ても、この価格
革命が肯けます。

サプライ・チェーンで小売業の筆頭とされるウォルマートの全米シ
ェアは、今、売上金額で10%、価格帯が低いので商品数量では全米
の全商品の20%という巨大さです。米国の、全商品分野の小売・流
通では、ウォルマートが中心になっています。価格も、ウォルマー
トと比べて、どうかとなっています。

日本のシェアで言えば、金額では10兆円の売上で、商品数量では国
内の全商品20%に相当します。

■7.結論:これからの価格政策

米国の1980年代のような価格シフトが、日本では2000年代にゆっく
り起こっています。現在も進行中です。

ドルに対し人民元が大きく(20%以上)切り上がらないと、わが国
の「競争的な価格切り下げ」が続きます。

日本のメーカーの電子製品が2000年代はどこで作られているかを見
てください。シャープの液晶ディスプレーが、ブランド価値として
亀山産をうたうくらい国産は少なくなっています。圧倒的に、中国
製品が増えた。

ソニーブランドも中国産がほとんどです。今1元は12.7円付近です。
元相場が上がるか下がるかによって、日本の物価水準が左右されま
す。

しかし、こうした為替の変動要素があるにせよ、世帯所得の減少か
ら低価格帯が各社の販売量での主力になることは、否めません。

短期の結論を言えば2011年、2012年は、今の商品構成の下限価格を
20%から25%下げたところが、もっとも売れるプライス・ポイント
でしょう。

実効レートでは、円が世界の通貨に対して、20%切り上がっている
ためです。2013年以降は、まだ、明瞭には見えません。

(1)日本政府の財政破産から円安になることと、
(2)資源・エネルギー・穀物の高騰から、
わが国の基礎生活物資の物価が急上昇する可能性が相当に高いから
です。(注)今のままなら、政府財政の破産は確実です。

ただしこれで日本経済(世帯と企業)が潰れるわけではない。政府
部門(公務員400万人:国+地方)の財源が不足し、44兆円の新発
国債に依存する今の予算(一般会計で92兆円)が組めなくなります。

ひどい例ですが、2007年に630億円の負債で破産した夕張市の予算
のように向かう可能性が、相当な確率であります。5%の消費税を
10%に上げることができても、政府税収の増加は10兆円に過ぎませ
ん。

こうした財政破産が認識されると、新規発行(40兆円水準)と借り
換え債(150兆円)の国債の金利(現在は10年債で1.2%付近)が、
3%や5%に向かい高騰します。

金利が3%に上がれば1年に190兆円×1.8%=3.4兆円の政府の利払
いが増え、5%に上がると7.2兆円の利払いが増えるからです。

3%や5%で落ち着いても政府の利払いが毎年、同じ額で増えて行く。
1年に150兆円の満期(返済期限)が来る国債の残高が、900兆円も
あるからです。

政府財政が破産に向かうと認識された途端、円債がヘッジファンド
から空売りされ、$1=150円にも向かう円安になります。輸入物価
が今の1.8倍に高騰します。

円安と資源高になると、基礎商品(特に1年に30兆円売れている食
品)がインフレになる。わが国は、総カロリーの60%を輸入してい
るからです。輸入飼料も上がり、食肉も上がる。食肉は、1Kgの肉
を畜産するには6~10KGの輸入穀物が必要だからです。

2010年には、輸入している資源・エネルギー・穀物(国際コモディ
ティ)は円高の中でも、2009年に比べ、54%も上がっているのです
(日経商品指数)。

物価インフレは、普通の時期なら、小売業には追い風です。しかし
円安からの物価高騰では、世帯所得が増えません。このため80%の
世帯は、基礎商品の買い物数を減らす行動になります。

20%の実質的な失業者を含むと、平均所得が250万円と低い20歳代
の人(1408万人)に、いくらの価格なら買うか聞いてください。
50代の人(1618万人)の、ほぼ半分の価格です。

(注)フリーターや雇用調整金をもらうのも、実質失業です。これ
らを入れれば20代の失業は20%(280万人)です。

【確認】
第二次石油危機の後、1980年代インフレの時期に、百貨店やGMSの
価格が相対的に上がる中で、価格を下げた米国のディスカウント・
ストアやSPA専門店チェーンと同じ価格帯を主力とする店舗が、わ
が国の2010年代にはウォルマートのように業績を急拡大させます。

ウォルマートの1970年代のビジョンは、$2万(164万円)の世帯に、
$4万(328万円)の所得の生活を提供することでした。2010年の代
成長を目指す小売業が、この実例に漏れることはないと断言できる
のです。

方法は、1980年代のウォルマートやSPAのサプライ・チェーンにあ
ります。

■8.売価要因25%

店舗の売上を決める要素のうち、品揃えの豊富さの上で、売価要因
は25%を決めると書きました。

この売価要因は、
(1)お買い得商品の品目数の多さ(20%以上)
(2)もっとも売れ数が多いプライス・ポイントの品目の、品揃え
の多さ
(3)商品価値の高い商品の多さです。

品揃えの豊かさと売価に続く、3番目の要因が、
・プロモーション要素(15%)
・サービス要素(10%)
・その他の要素(10%)でしょう。

いずれも、サプライ・チェーンの商品計画(商品構成計画)作りに
関係します。

【後記】
欧州のPIIGSの財政危機からの金利高騰が、ポルトガル、スペイン
ベルギーと波及して、深刻化しています。ユーロは今108円付近で
すが、2年前とは円に対し30%も下げています。

パリの物価が、円でどう見えるか。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
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