世界的な金融危機は終わったのか?
Written by admin on 2023年4月30日 – 17:00
【知識と判断】 ビジネス知識源では、知識を体系化し、原則にすることを目的にして います。情報は、「事実→データと情報→理論→体系化」のプロセス を経てあなたの「知識資産」になっていきます。 知識資産は個人的なものです。近年、日本の産業の「生産性上昇→賃 金上昇」に必要な「人的資本」と言われるもの内容は、ビジネスの知 識資産です。 知識は「言葉と数字のテキスト(本、論文、小冊子、あるいは口 頭)」で、コミュニケーションされます。 知識資産は、事実(経済的事象)の変化にあたっては、将来予想を確 実にするものです。 〔原理〕あらゆる経済取引(=交換)は、近い将来の期待価値(=財 の効用)の、個人での判断によって発生します。 〔事例〕金を買う行動は、「金の将来価値を高く見て、通貨の将来価 値を金より低く見るという判断」から生じます。 この判断は、 ・金価格の、変動の原因についての知識と、 ・通貨の変動の原因についての知識の関連付けから来るものです。 投資は、職業以外で所得を得る方法です。ある経営者の言葉を思い出 します。「経営での利益を、25年貯めても小さかった。現在の私の資 産は投資で得たものです。」 【増刊号のテーマ】 1)2023年3月の銀行危機以来1.5か月。 現在、世界の株式市場に楽観ムードが広がっています。 ↓ 2)新総裁の植田日銀は、金融緩和の継続を表明し、世界の通貨に対 する円は、下落しました(1ドル136円:ユーロ151円:スイスフラン 152円) ↓ 3)金融危機については、国債に次ぐ米銀の資産になっているMBS(不 動産ローン担保証券:12兆ドル:1560兆円)の先行きの予想が欠かせ ない。 ところが、世界の金融市場では、米欧のMBSの長期予想がされてませ ん。本稿では、MBSの価格分析と2024年までの長期予想を示します。 株価の短期予想は、価格波動があり、当てにくい。一方、住宅価格の 長期予想は、ローン金利に左右されるので、予想しやすいのです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <Vol.1334号:増刊:世界的な金融危機は終わったのか?> 2023年4月20日:有料版・無料版共通 【増刊の目次】 ■1.金融市場には楽観ムード ■2投資家が織り込んでいない、約1年後のMBS(住宅ローン担保証 券)の下落 ■3.商業用不動産は、住宅より約2年早く低下した ■4.時流には、2面がある:肯定的な側面を見よう ■5.米国のMBS(不動産ローン担保証券)は12兆ドル(1560兆円)と 巨大 ■6.C-MBSとR-MBSの下落は確定した ■7.後記:関連記述 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.金融市場には楽観ムード 年初来の株価は以下です。株価投資は,投資家の金額が大きいので、 金融・経済の体温に当たるものです。 株価は、一般に、3か月から6か月先の投資家の予想(集合知)を織り 込みます。 1月5日 3月22日 4月25日 (年初来) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 日経平均 2万5820円 2万6850円 2万8860円 (112%) 米S&P500 3,850 3,980 4,170 (108%) 英FTSE100 7,555 7,400 7,870 (104%) 独DAX 14,070 14,950 15,922 (113%) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ いずれの国でも、23年3月の銀行危機はなかったかのように、株価指 数は年初来4%から13%上がっています。これは株式投資家の、金融 危機の進行に対する「楽観」を示すものです。 一方で、ドルの危機を示す金価格(1オンス:ドル)は、以下の動き です。23年1月5日 1900ドル→4月27日 2150ドル(113%) https://gold.mmc.co.jp/market/gold-price/#gold_1year 金価格はドルの実効レート(世界の通貨に対するドルレート)と逆に 動く性質をもっています。 ・ドルの実効レートが上がる時期は、金の売り(=ドル買い)が増え て金価格は下がり、 ・ドル実効レートが下がる時期は金の買い(=ドル売り)が増えて、 金価格は下がる傾向です。 金価格を左右するドルの実質実効レート(インフレ率を引いた実効 レート)は、以下のように下がっています。 22年10月 121 → 23年3月23日 115(95%) https://www.ceicdata.com/ja/indicator/united-states/real-effective-exchange-rate ドルの実質実効レートは、「ドル/円」だけではなく世界の通貨に対 するレートを示します。(注)ドルの価値(100ドルの購買力)は実 質実効レートで計るべきものです。 2023年はドルの実質実効レートが5%下がり、金は4か月で13%上がっ ています。 「ドル5%マイナス→金13%上昇」になるのは、金融投資家の「心理 的な増幅効果」からでしょう。下がるという心理(感情)は数値的な ものではない。 投資家が、感情で判断しています。このため2022年10月までは年率 10%で上がっていたドルの実質実効レートが、5%下がると、15%下 がったような感覚になる。 これが、2023年の金価格が13%上がった主因でしょう。投資家集合は 株価、通貨、金の価格変動を「過去と比較の感情」で判断しています。 ◎AIには感情はなく、上昇や下降を数値だけで見ます。しかし、人間 は、コミットした金融商品の利益や損に対して感情を込めて価格を見 ています。(行動経済学での検証あり)。 ◎「客観的な数値傾向(理性)+自分のポジションの損得の主観的な 感情=投資家の判断」です。 5%の損と5%利益の利益は、数値ではプラス・マイナス幅で同じです。 しかし保有ポジションの5%の損は、5%の利益よりはるかに大きく感 じるのが、人の感情です。 行動は分析的な理性より感情(=感覚)によって、起こります。ス ポーツでのとっさの行動が分析的でなく瞬時の反応であることからも 分かるでしょう。 頭で考えて、高速の打球を打つことはできない。感覚と行動は瞬間的 で、反応的です。動物の動作と同じです。いったん起こった感覚には、 持続の時間と、他人への伝播があります。 このためあらゆるスポーツのゲームには感情の伝播である「流れ」が ある。株価にも、これが通じます。判断は、感覚(=感情)です。 「5%の損=感情的には10%の利益」と等価でしょうか。 ドルの、実質実効レートの5%下落が、ドルの反通貨である金価格の、 13%上昇に反映していているように見えるのです(仮説)。 【新たな銀行破産】 今日、危機が言われていた「ファースト・リパブリック・バンク(総 資産約30兆円:中堅銀行)」は、株価が1/50に下がり、売買が停止さ れて政府預金保険機構(FDIC)の管理下に入りました。 預金にリスクを感じた預金者が、13兆円(銀行資産33%)を引き出し た結果の、資金ショートによる倒産です(スマホでのデジタル取り付 け:23年4月28日)。 ファースト・リパブリック・バンクには、IT富裕者の預金が多い。保 証上限の25万ドル以上の預金がどうなるか不明です。たぶん、政府が 保証するでしょう。保証しないと、預金パニックになるからです。 ・13兆円のBank Run(取りつけ)といっても、現代では銀行には並ば ない。スマホで預金を移動します。 ・損失の噂がSNSで広がると、突然資金ショートになります。 SNSは、銀行破産の形態を変えました。今回も、そして今後も。 https://finance.yahoo.co.jp/quote/FRC ■2投資家が織り込んでいない、約1年後のMBS(住宅ローン担保証 券)の下落 住宅価格は、景気から約1年は、遅れる遅行指標です。 景気の、3か月から6か月の先行指標は、株価です。 1年くらい遅れるのが住宅価格でしょう。 理由は、既存の住宅戸数に対し販売数が多い米国でも1年に、8% (12軒に1軒)しか売買がないからです。 既存住宅1億2000万戸のうち、1000万戸が年間販売です。販売は平均 12.5年サイクルです。日本では中古の流通が少なく、住宅の全体では 30年サイクルの販売です 住宅価格は、上がるときも、株価に、1年は遅れます。 ローン金利が上がり住宅価格が下がるときも1.5年は遅れます。 (注)日本の、1990年の株価バブルの崩壊のときは、不動産価格の下 落は、1992年からでした。1990年の年初からの、株価の崩壊(-50 %)から、約2年遅れでした。 〔当方の経験〕1990年の年初から株価が大きく下がっていたとき、ま だ不動産価格が上がっているなかで、不動産の価格も下がると当方が いうと、「そんなことは絶対にない。日本の不動産は下がらない」と いう周囲の反応でした。当方の親戚も、遅れた不動産投資で破産した のです。 財務省が日本の不動産価格の下落を公式に認めたのは、更に2年後の 2024年でした。地価の統計(公示地価)も発表されるのは1年後です。 不動産統計は、1年以上もゆっくりしています。世界的に、不動産価 格への認識には、相当なタイムラグがあります。 FRBはどう見ているでしょうか。たぶん、不動産価格は、考慮の外で す。パウエル議長の発言にはインフレ対策という言葉はたくさん出て きても、住宅ローン金利が2倍に上がったという発言は皆無です。 【原則】 ・株価と金利の、長期的な動きに対しては、1年~1.5年、 ・景気(GDP)に対しては、約1年遅れるのが、住宅価格です。 米国で、住宅ローンの金利が上がり始めたのは、FRBの利上げ開始の 2022年3月からです。 ・7か月後の22年10月には住宅ローン金利は、7%台に上がりました。 2021年までは3%台と低かったので、2倍超への上昇です。 1)ローン金利3%のときのローン額、毎月の支払い、支払総額の計算 をします。30年固定金利のローンとします。5000万円を借りるとしま す。 ・毎月の返済 27万7200円 ・30年の支払総額 27万7200円×360か月=9979万円。 2)ローン金利6%のときの支配総額 ・毎月の返済 35万8200円 ・30年の支払総額 35万8200円×360か月=1億2895万円 (計算サイト) https://keisan.casio.jp/exec/system/1256183644 9979万円÷1億2895万円=77% 【原理】 住宅価格が23%下がれば、3%ローンと6%ローンの支払総額は等価に なる。 ↓ このため、住宅ローン金利が3%から6%に上がると、住宅価格は23% 下がる傾向を示す(理論値)。 米国の住宅価格は、2%のインフレ込みの名目GDPに比例し、約3%/年 上がって行くことがノーマルでした。 事実、2020年までの価格上昇は、3%台/年だったのです。 ところが、コロナ対策として、米政府が財政支出を急拡大し、FRBは 4兆ドルのドルを増発したことから、2020年からは前年比5%→10%→ 20%と上昇したのです。 価格上昇率がピークだった2022年6月の、全米20都市の住宅価格指数 は21.2%でした。日本で、1年に20%も住宅価格が上がれば、パニッ ク買いになるでしょう。 世界的に、「コロナバブル」というべき、不動産価格の急騰(3年で 1.05×1.2×1.2≒1.51・・・51%上昇)が起こったのです。 (ケース・シラー住宅価格指数) https://jp.investing.com/economic-calendar/s-p-cs-hpi-composite-20-n.s.a.-329 原因は、「急激なマネー増による金融バブルの株価と不動産への波 及」以外ではない。 コロナの2020年からの3年間、経済成長という住宅需要増加の背景は なかった。ロックダウンとレイオフでリモートワークで、経済活動は、 低下していました。(注)米国のGDP成長は1%台と低い。 その後、FRBの利上げにともなって、ローン金利が2倍の6%台、7%台 に向かって上昇したことから、価格の上昇率は「20%→15%→10%→ 5%→0%(23年4月)」と下がっています。 23年5月からはマイナスになって行くでしょう。 (注)日本の不動産価格はまだ上がっています。これも、2年の遅行 指標でしょう。 https://sumai-step.com/column/article/2046/ 住宅価格の下落幅の理論値(23%)を示すのが、上記の3%と6%の金 利での、ローン支払額のシミュレーションです。 【米国の住宅市場の特徴】 しかし、米国では、ローン金利が上がると既存住宅の乗り換えの売り が増えて住宅価格は、理論値の-23%ではなく30%、40%と下がる可 能性もあります。 その理由を示します。 1)米国の住宅ローンは、ノンリコース型(非遡及型)であり、住宅 に貸し付けられる。担保を差し出せば、個人保証は残らない。 2)ローンで買った住宅価格が大きく下がったとき、その世帯では価 格が高い時期のローンを支払うのは損になる。前の住宅ローンの支払 いを停止し、住宅を手放す(ローン会社の担保:フォアクロージ ャー)。 3)世帯は、価格が大きく下がった大型物件の中古住宅を買って、新 しいローンを組む行動をする。一般に、面積が広い高級物件ほど価格 の下落率は高くなります。 2年前に買った、40%から50%は高かった価格のローンを支払うより ローン金利は上がっても、その後のローンの支払総額が減るときは、 価格が下がった新しい住宅に乗り換える。ヤドカリの移転のような感 じです(移動型文化の米国では8年サイクルで転居します;定住型の 日本では、平均30年サイクルです)。 担保を差し出しても、個人保証分が残る日本には、これは少ない。 以上から、米国では住宅価格が、一定率以上下がると、既存住宅にも 売りが増え、ローン金利比較での-23%の理論値より不動産市場の価 格が下がる傾向が出るのです。 ケース・シラー(全米20都市)の価格指数の動きを見ると、2022年度 には20%上がった住宅が、2023年5月から、下落期にはいることが確 定したと言っていい。 住宅価格の底は、10か月後の2024年初頭になると見ています。 底値は-30%か? 米国の不動産価格の指数は、 ・2000年を100とすれば、 ・2008年のリーマン危機の前が226(8年で126%上昇:2.26倍)、 ・リーマン危機で180まで20%下がり、 ・2011年の180から2022年は400まで、11年で122%も上がっていまし た(2.2倍) https://jp.investing.com/economic-calendar/monthly-home-price-index-1287 22年間で、4倍です(年率平均6.5%上昇)。2000年代の米国では、平 均2%の金利で預金するよりはるかに大きな資産を、不動産と株価 (2000年の5倍)への投資によって、作ることができました。低金利 とドル増刷による資産価格の高騰が23年間も続き、株価は5倍に、不 動産は4倍に高騰したとみていいのです。 ◎2023年の夏以降2024年末まで、これが大きく下がります。 たぶん、不動産+株で、30%の下落です。 米国の2023年の夏以降、1990年から1997年の日本の株価と不動産バブ ルの崩壊に似ているでしょう。時間的には7年ではなく3年に短縮され るでしょう。 ■3.商業用不動産は、住宅より約2年早く低下した 住宅価格より約2年先駆け、商業用不動産のREITは、2022年4月の 3200をピークにして、1年後の23年4月は、2450へと24%下がっていま す。ここで下げ止まりではない。もっと下げるでしょう。 REITは、投資家(銀行やファンド)から集めた資金で不動産への投資 を行い、収益(賃貸料収入や売却益)を投資家に分配する上場証券で す。 対象の不動産はオフィスビル、商店やションピングセンター、ホテル、 サービス業の建物などです。空きスペースが増え、賃料が下がり、ビ ルの転売価格も下がると、不動産の株であるREITが下がります。 REITの変動は、商業用不動産の賃料と同時です。 住宅価格には1.5年先行します。 REITの24%の下落は、商業用不動産の賃料と価格が、リアルタイムで、 24%下がったことを示します。REITと商業用の不動産価格は、住宅価 格に約2年は先行する指標と見ていいでししょう。 ◎コロナ後に、大都市ではリモートワークが社員の40%に増えていま す。自宅勤務が激増したのです。大都市のオフィスには、面積の20% の空きができ、賃料も20%下がりました。 REIT価格の下落は、需要が減ったオフィス・スペースを示しています。 米国の、商業用不動産の開発とREITの発行会社には倒産が出始めてい ます。 リモートワークへの変化は、構造的です。2023年、2024年、2025年に、 出勤が復活することはない。マネジャーは会社に行っても個人のコン パートメントでPC画面に向かって仕事をします。高速インターネット でサーバーにつなぐと、自宅で勤務することと同じです。 上司や同僚との会議や打ち合わせは、ZOOMやTEAM、ネットワーク上の 仮想オフィスで、十分になった。全米平均で20%は下がっているオオ フォス用ビルの価格が。復活することはない。 コロナが不可逆的に作った「新しい現実」のひとつです。 10年先をいえばメタバースとマルチワークへの変化は必然です。 ■4.時流には、2面がある:肯定的な側面を見よう 不動産の価格では否定的な物事の変化にも、表と裏の2面があります。 近代化(モダニズム)で密集を促してきた都市化は、居住の分散(ポ ストモダン)への時代を迎えています。これは世紀的な変化です。学 校の教室や、留学も、バーチャル化していくでしょう。youtubeでの 有名教授の講義が、その先駆けです。 リモートワークでは、自宅で、国際的な仕事ができます。今日はアメ リカ、明日はドイツ、来週は中国。店舗がアマゾンの仮想店になった のと同じ変化です。 アマゾンへの変化は1995年から2010年まで15年でした。chatGPTのよ うな対話側AIも加担して、オフィスは仮想化して行くでしょう。 (注)現在のchatGPTには、根拠がないことを答える欠陥があること が、当方の質問でわかりました。知っていることを訊ねると、「間違 った答え」を返してきて平気です。「それ、違いますよ」というと、 簡単に謝ってきて、「別の根拠のない答え」を返してきます。「自分 が知らないこと」をchatGPTに聞くことは危険です。しかし、長文を 入れて「要約してください」と要求すると、見事な概要を作って返し てくれます。 言語の壁は、リアルタイムの音声自動翻訳(AIはこれが最も得意)に なっていきます。しばらくすれば(3年か?)、外国語への心配は要 らないでしょう。ロシア語、アラビア語、モンゴル語でもいい。 言語の壁がなくなると、一流の仕事は、狭い会社や、日本も飛び出し 世界で評価されます。タレントがメディアで世界化してきたことと同 じです。AIの、職業を瞬間マッチングするアプリも登場しています。 【仮想オフィスが会社】 ◎「リモートワークによる仮想オフィスがこれからの会社」になって いくでしょう。変化は10年か。業務をユニット化(単位化、部品化) してトップの専門家にアウトソースするコア会社です。 細分化されてきたソフト開発は、すでにアウトソース化されています。 財務コンサル、商品開発コンサル、デザイン、医薬品製造、設 計・・・あらゆる領域(ドメイン)に拡大するでしょう。ハイパーな 総合大学のイメージです。その分野の一流の教授はアウトソース。 ◎基本の姿勢は、「変化には必ずある、肯定的な側面も見ること」で す。日本人の血である「無情論」(典型が鴨長明や吉田兼好)は、時 代変化を否定的に見て、山に隠居していました。これとは、逆です。 「時流の変化に乗ること」です。 【事業発想の原点になること】 講演の打ち上げが、確か東北だったか、その地方の老舗の寿司屋であ ったときのことです(1990年だったか)。会食のとき、この寿司は確 かに美味しい、一流の味です。 ・しかし、事業(ビジネス)への発想では、1店だけしか作れない老 舗寿司屋を目指すのではなく、その寿司作りの技術を標準化し、回転 寿司の高品質化を構想すれば、10年で世界的な大チェーンを作ること もできる。 事業は、顧客数の多さから考えるものです。最初は電子おもちゃだっ たパソコンのメインフレームへの勝利(20年)が、顧客数の多さの事 例です。 30年前の回転寿司は、価格は安く、内装は安っぽく、味は不味かった。 聴衆には、経営者の二世が多かった。何人が、これを理解したか。 ■5.米国のMBS(不動産ローン担保証券)は12兆ドル(1560兆円)と 巨大 全米の商業銀行の総資産は、約20兆ドル(2600兆円)です。日本の約 2倍です。それに、規制外のシャドーバンクが20兆ドル(2600兆円) あります。年金基金やインデックスファンドです。合計で40兆ドル (5200兆円)。これらの証券+銀行が、貸し付けをし、債券(国債、 MBS、社債、株式)でマネーを運用しています。 債券の種類別に全体を見ると、以下です(2022年) https://www.sifma.org/resources/research/fixed-income-chart/ 【米国の負債債券の総額】 ・社債 10.2兆ドル (1330兆円: 事業会社が発行) ・MBS 12.2兆ドル (1590兆円: 不動産ローン担保証券) ・ABS 0.15兆ドル( 20兆円 :資産担保証券) ・国債 23.3兆ドル (3030兆円: 連邦政府の負債) ・州債 4.0兆ドル ( 520兆円: 州政府の負債) ・政府証券 0.19兆ドル( 25兆円: 連邦政府の負債) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 合計 55.1兆ドル(7160兆円:証券化された負債;GDPの2.5倍) 23年前の2000年には、合計が16兆ドル(2080兆円)でした。 日本の、現在の金融機関の規模と等しかった。日本は、同時のGDPで 2倍の米国に匹敵する、金融大国でした。2022年には、米国の証券化 された負債(=証券の合計)は、55.1兆ドル(7160兆円)へと3.4倍 に膨らんでいます。 【増加率は、GDP成長率の2倍だった】 債券の総体の、年率の増加は、5.7%です。22年間の、GDPの年間増加 の約2倍です。 ・GDPの増加率に比例する債券の増加が、正常です。 ・年率で22年間、2倍の負債債券の増加は異常です。 金融バブルを発生させ、その後、バブル崩壊を生みます。 ・売上が3%しか伸びていない会社(22年で1.9倍)が、年間6%の負 債の増加を22年続けたと考えてください(22年で3.6倍)。会社は、 確実に倒産するでしょう。 ↓ 2000年代の米国経済では、「過度の金融化=負債の証券化」が進んで います。金利の上昇の時期に、サイクル的に「資産のバブルとバブル 崩壊を繰り返す」ことが、負債証券の多さ(55.1兆ドル)から分かる のです。 ↓ これが ・2008年のリーマン危機であり、 ・2023年3月10日からの、銀行危機です。 いずれも負債債券の増加が、資産(株、不動産、債券)の価格を押し 上げて、不動産と株価の資産バブルを作ったあとです(資産バババル 2000年~2006年→崩壊2008年9月:2020年~2022年→崩壊2024年の春 から夏) FRBの利上げとともに、 1)負債債権(国債、MBS、社債)の時価価値が下落し、 2)銀行とシャドーバンクの損失と危機になって、 3)結局は資産バブルの崩壊(=マネー量の縮小)に向かうことを示 しています。 ◎2008年のリーマン危機、 ・そして今回の、コロナ下のゼロ金利で、負債が増えたあとFRBが1年 で4.75ポイントの利上げをしたあと、2023年から24年の金融危機がこ れです。 ・資産価格(不動産、株、債券)のコロナバブル(現在)のあとの、 2023年からの金融危機(=信用収縮)の必然性が、55.1兆ドルという 金融負債の過大からも分かります。 米国は、2000年代の23年間で、ファイナンスが過剰になっています。 債券は、マネーの調達のために発行する証券です。 金融資産=金融負債です。金融資産の価値は、その裏付けである金融 負債の正常な利払いができ、負債が返済されるという「借り手信用に 依存」しています。 社債の価値が、発行会社の事業の利益信用に依存することと同じです。 全米の、55.1兆ドル(7160兆円)の負債債券の中に、 ・金利が上がって、利払いと返済ができなくなった「不良な債券」が 増えると、 ・銀行預金や証券である金融資産の価値は減ります(これが信用収縮 =マネー量の減少です)。 不良債券が増えるのが「金融機関(銀行とシャドーバンク)の危機」 です。 ◎金融機関の危機は、上記の55.1兆円の債券が、金利の上昇によって 下落することから起こります。 ■6.C-MBSとR-MBSの下落は確定した 今回は、金利の上昇による、 ・ゼロ金利のとき発行された、国債と社債の時価の下落ではなく、 ・不動産ローン証券、MBS(12.2兆ドル:1590兆円)の2023年から24 年の下落を述べます。これが確実になったからです。 12.2兆ドルの残高のMBSには大別して、 ・C-MBS(商業用不動産ローン担保証券:約2.2兆ドル)と、 ・R-MBS(住宅ローン担保証券:約10兆ドル)があります。 米国の不動産ローンでは、貸付金の利払いと返済金は多数が合成され、 証券化されて販売されています。 銀行(資産20兆ドル)とシャドーバンク(資産20兆ドル)にとっては、 MBSは、 ・国債(金融機関の保有残高23.3兆ドル)につぐ、 ・大きな債券が、MBSです(保有残高12.2兆ドル)。 不動産REIT(上場投信)の、24%下落の項で示したように、 ・商業不動産は、すでに価格が約20%低下していて、 ・C-MBSも、20%以上、時価(転売価格)が低下しているでしょう。 商業用不動産価格は、FRBの利上げと同時に、下がっています。 ローン金利が3%台から6%台と2倍になった住宅用不動産は、1年から 1年半遅れて、下がります。 3%と6%の30年固定金利のローンの、支払いシミュレーションで計算 したように、ローン金利が6%上がると、住宅価格は23%下がります (理論値)。 全米の住宅価格は、2023年5月から、前年の価格からの下落が始まり、 2023年夏、秋、冬・・・とマイナス20%に向かって下がって行くでし ょう。2024年春には、マイナス25%に近づくと推計しています。 23年5月から、住宅価格の下落が始まると、10兆ドルのR-MSBの価格は、 住宅価格下落幅より大きく下がります。 仮にマイナス30%とします。 残高12.2兆ドルのMBSの価格が30%下がると、銀行とシャドーバンク の合計損失が12.2×30%=3.66兆ドル(475兆円)になります。 ↓ 大手までの金融危機を惹起するのに十分な損失です。 銀行とシャドーバンクの合計自己資本は、リスク資産を含む総資産 (40兆ドル)の約5%の2兆ドル(260兆円)しかないからです。 金利上昇よる国債価格の下落(23.3兆ドル×20%≒4.66兆ドル(605 兆円)の時価の低下(含み損)がB/Sの底にあるので、MBSの下落が加 わると、全米の銀行と、シャドーバンク(総資産40兆ドル)は、保有 資産への信用を失って壊滅するでしょう。 (2024年の春から夏) 【対策】 リーマン危機の約4倍の金融危機に対しては、1つの方策しかない。 ↓ FRBが、緊急に10兆ドル(1300兆円)を増発して、自己資本が消えた 金融機関に、貸し付けること(劣後債)、あるいは出資です。 (注)全部の銀行が、資本の面では、かつての「ゆうちょ(総資金量 が250兆円)」のように国有化されることになります。 FRBが、10兆ドル(1300兆円)のドルを増発すればどうなるか。 激しいドル安でしょう。1ドル80円以下の70円かも知れない。 国民の預金(20兆ドル:2600兆円)を、名目金額で100%保護するに は、FRBが、10兆ドル(1300兆円)のドルを増発するしか方策はない。 10兆ドルは、リーマン危機のときの4倍です。 ■7.後記:関連記述 第1次世界大戦のあと、1929年-33年の「大恐慌」のときは1万の銀行 が閉鎖され、紙幣での預金引き出しは制限されました。 しかしマネーのデジタル化が進んだ現在では、銀行の窓口を閉じる効 果はない。PCやスマホで預金の移動ができるからです。デジタル送金 の停止をすれば銀行が決済機能を果たさなくなって、経済取引は停止 します。給料も払われず、買い物もできない。預金の凍結はできない のです。 この点からも、FRBが10兆ドル(1300兆円)のドルを増発するしか方 策はない。そうでなければ、20兆ドル(2600兆円)の銀行預金の50% を無効にするしかない。これは、政治的にムリです。 今回は書きませんでしたが、欧州も米国の金融状況と類似しています。 ただし、EU(26カ国)の金融バブルは米国よりは多少穏やかです。 日本には、まだ利上げがないので(0.25%→0.5%のみ)、ゼロ金利 の金融バブルの崩壊は起こっていません。 日本の金融危機は、保有するドル債券(総額1000兆円:米国債、外貨 準備、ドル株、ドル債券)の20%下落から起こります。20%の円高 (ドル安)でも同じ損害が生じます。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【プレミアム読者アンケート&感想の、項目のメド】 1.内容は、興味がもてますか? 2.理解は、進みましたか? 3.疑問な点は、ありますか? 4.その他、感想、希望テーマ等 5.差し支えない範囲で、横顔情報があると、テーマ設定と記述の際的 確に書くための、参考になります。 気軽に送信してください。感想は、励みと参考になり、うれしく読ん でいます。質問やご要望には、可能なかぎり回答をするか、あとの記 事・論考に反映させるよう努めます。返事や回答ができないときも全 部を読み頭にいれたあとと。読者の感想・意見・疑問・質問は、考え を広げるのに役立ちます。 著者のメールアドレス:yoshida@cool-knowledge.com 購読方法と届かないことに関する問い合わせは、ここにメール(↓)。 配送の管理は、著者ではなく配信サイトの「まぐまぐ」が行っていま す。著者は、どこに配信されたか、わからない仕組みです。R行 ader_yuryo@mag2.com ■1. 新規登録は、最初、無料お試しです(1か月分)。その後の解除 は自由です。2か月目から、消費税込みで660円が課金されます。 (1)『会員登録』で支払い方法とパスワードを決めたあと、 (2)登録方法を案内する『受付メール』が送ってきて、 (3)その後、『購読マガジンの登録』という、安全のための2段階の 手順です。 【↓まぐまぐへの会員登録と解除の、方法の説明】 http://www.mag2.com/howtouse.html#RSegist 登録または解除は、ご自分でお願いします。 著者は、登録、解除を行うことができません。 (有料版↓) http://www.mag2.com/m/P0000018.html (無料版↓) http://www.mag2.com/m/0000048497.html ■2.購読についての問題の、問い合わせ窓口 (まぐまぐの事務局がメールで対応します)。 http://help.mag2.com/contact.html ・・・以上 ~~~ ◎このメルマガに返信すると発行者さんにメッセージを届けられます ※発行者さんに届く内容は、メッセージ、メールアドレスです ◎ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則 の配信停止はこちら ⇒ https://www.mag2.com/m/0000048497.html?l=hpt0a0092e |