金融危機の中核にあるデリバティブの意味(中編)
This is my site Written by admin on 2023年4月23日 – 11:00
先週号で求めたご意見、ありがとうございます。100%が肯定的なも
のでした。1通だけ内容が難しい、具体と図解が欲しいというものが
ありました。メールマガジン内では図は描けないのでWEBサイトの参
照にしています。著者にとって、役に立っていることは喜びです。野
菜を作る農家が、美味しく食べる客を見て、やりがいを感じるように。

【個人の意見】
米国の大学では1時間くらい学説を教え「この人の見解は**を根拠
に、この結論を導いている。君たちは、問題をどう考えるか?」と質
問して、約30分の議論が始まる。授業は、発表の時間です。長女もお
よそ毎日、日本では楽だった、こっちは大変だよと発表用のリポート
を書いていました。

どこの国かの大学の「講義中は沈黙」とは違う。教科書が示す答えを
出すことが、偏差値(中点を50とした標準偏差)で優秀とされる。考
えるより漢文の素読の遺伝子にあるような、記憶のテストです。共同
体の記憶を、個人が再記憶する。

自然科学以外の領域では、教科書そのものが、国のイデオロギーです。
イデオロギーの典型である歴史の教科書は、国ごとに異なります。書
かれた歴史は、多様な過去からある要素を取り出して強調し、価値観
のある言葉で論理化したものです。歴史の教科書は、現代の価値観を
示します。

国家は、自己の正当化のため「歴史」、現代までつながる物語を作り
ます。明治時代によく読まれた頼山陽の「日本外史(武家の盛衰
記)」は江戸幕府の歴史観です。観は見方です。司馬遼太郎の歴史小
説は自分のビジョンを投影したものです。「坂本龍馬」でも龍馬の歴
史的な歩みをたどって、龍馬に託したビジョンを書いています。

日韓中は、第二次世界大戦では敵味方に分かれても物理的には、同じ
経験をしたはずです。3国の歴史の評価は180度違います。天安門事件
(1989年)も中国の現代史ではなかったことになっています。ウクラ
イナ軍とロシア軍の発表が180度違うことと同じです。

日本の講座経済学は「翻訳の学問」です。このため「クルーグマンと
バーナンキがこういっていた。ハーバードの大学院で**に就いて勉
強した」と発言すると日本では優位になる。

森嶋通夫や宇沢弘文の説はノーベル賞級です。しかしなぜか引用しな
い。オーストラリア学派と金本位制も説くスティグリッツにもほとん
ど触れない。ケンブリッジで森嶋通夫に就いて学んだ人の経済学はク
ルーグマンとすいぶん違います。

日本の講座経済学は、通貨論では信用通貨制の優位を説く米国の新ケ
インズ主義に支配されています。何を仮説的な前提に置くかで異なっ
ている経済学の学派のうち、新ケインズ主義を選んでいるのが日本で
す。選択の根拠はいわない。国際標準とだけ言う。この国では、「国
際的」といえば、国内的より高い位置にある。

国「際」とは際、つまり境界の接触部分。日付変更線上あたりの飛行
機の上か。あるいは、米国に向かう船上か、米国に上陸すればそこは
もう国際ではない。米国です。それくらい曖昧な概念が国際です。

医学にも学派はあります。根本では診療の実証に基づくので、違いは
少ない。なお軍医だった森鴎外は、軍隊の給食から多かった脚気を誤
診し、多くの死者を生みました。当時のドイツ医学では誤診とはされ
なかった。現代からみれば誤診です。経済学にも、こうしたことが頻
繁に起こっています。

官僚、御用学派、政治家では「国際標準」が決まり言葉です。
この「国際」とはどこの誰のことか、何の根拠で標準にしたのか問う
と、この「標準」の基盤が崩れます。

政治家がいう国際社会は、アメリカとG7です。このため、日米安全保
障条約がなくなったあとのことは、想定にない。これが国民の文化、
資産、命を守る政府の義務である国防のテイタラクです。

武力を独占する国家は、国民に対して国防の義務を負います。
そのために、国民は保険料のような税を払う。天才的な秀吉の検地・
刀狩り以来(1582年~)、政府は国防の義務を負います。企業、教団、
ムラが自衛力を持つことは、近代法が禁じているからです。

米国では、原理的に州が国家なので州兵がいます。
国民には政府からの自衛のため銃での武装権もあります。州法もあり
ます。売上税や所得税、相続税も州で、異なります。二重の政府が、
EU(26カ国)のような連邦と州です。

東大からエール大学に行った計量経済学の浜田宏一(異次元緩和と財
政拡張を推進:安倍内閣の内閣府官房参与)の教え子の1人が、日銀
の新総裁に任命された植田和男です。元財務省の野口悠紀雄とは反対
の説を述べます。当方とも、逆です。

統計学的な実証が求められる医学は、根本がこれほど離れてはいない。
しかし経済学では、政府政策の実行結果が実証されない。

つまり、共通の根拠がない。日銀は、10年推進して戦争並みの550兆
円の日銀信用を使った異次元緩和の、効果検証をしない。
肝心な日銀信用そのものも、明らかにされていない。
政治家の権力の根拠は当選ですが日銀にはそれもない。
便宜上の資本(12兆円)があるだけです(現在は債務超過です)。

医学の領域では、厚労省では新型コロナCovid19に対するファイザー、
モデルナのワクチンの効果は示しても、遺伝子組み換えと同じ人工の
スパイク蛋白が作る後遺症の研究は、何かの目的で封印されています。
ワクチン担当相だった河野太郎は、米国民主党、民主党時代のファウ
チとWHOの曲に合わせ、踊っているだけです。

ところが直近のニューズウィーク(NYタイムズ、ワシントン・ポスト
紙と同じ米国民主党の過激派)が、「Covid19」は人工のウイルスで
あった可能性が高いという説を紹介するように変節しました。

原因は、2022年の中間選挙で、下院で共和党が多数派になり、調査委
員会では陰謀的だった「Covid19の起源」の追求がされているからで
す。狡猾なメフィストフェレス風のファウチが関与した人工説が有力
になっています。

それとともに、厚労省が依拠しているWHO(世界保健機構)も、風邪
の症状にとどまる若年者には、ワクチンの接種を推奨しないと言い始
めました。

米国民主党の時代は2023年に終わりました。バイデンはレームダック
です。米国メディアの報道も、政治の空気をみて、徐々に転換してい
ます。2024年には、すっかり変わるのか。

CNNの有線視聴者数は、ピーク(米大統領選挙の2020年)の5%しかな
い。有料の有線放送ですから、視聴数だけなら潰れています。当方も、
2020年までCNNの視聴者でした。多くがねつ造や世論誘導の、ヒドい
内容に、イヤ気はさしていましたが、登場人物を選ぶショー的にはお
もしろかった。

米国では、放送や新聞が支持党派を名乗ることが許されています。立
場の論では、同じ事件、経済、外交、戦争が逆にみえます。特定の立
場からの「歴史」になるからです。法的正義の分断があります。

日本厚労省が、新型コロナの政策を変えるのは、いつになるでしょう。
いつものように、米国から2年は遅れるでしょう。今、300人の医系技
官は、議論の最中でしょうか。いや議論せず・・・おなじみの責任逃
れの沈黙か。

日本では、日銀の政策も同じですが、「行政責任は、追及しない」。
第二次世界大戦でも、それでした。大蔵省以下の行政は、8月15日か
ら一斉に文書を焼却して、証拠を消したのです。このため経済学も政
治学も、育たない。

一般向けの発言が多い元財務官僚も,米国の一派に権威を借りる典型
です。借りものの権威付けが、この国で通用していることを、情けな
く思います。

医学のような実証のある経済学は行動経済学です。他は思想です。合
理的に判断し、行動する人間という前提です。

行動経済学は、人の経済的な判断と選択には合理的ではない面がある
ことを実証しました。ドストエフスキーも、デーモニッシュな人間を
描きました。不利なこと、損なことを選ぶ。

行動経済学のエッセンスを示す、ダニエル・カーネマン、『ファスト
な感覚的判断、スローな合理的判断(ファスト&スロー)』はおもし
ろい。人間の選択の合理性という前提を崩せば、経済学の基礎が壊れ
ます。

正統派とされる経済学では、1)複雑系と、2)行動経済学を認めない。
このため経済分析や物価論、通貨論は、観念を描く小説家に似ている
ものになります。

つまり、「相手を説得する論争の一派」になっているのです。ソクラ
テスが、真実から乖離した「ソフィスト(修辞学派)」として嫌った
ものです。古代から現代まで、都市環境と物質文明は変わっても人の
思考方法は同じです。

MMT(現代貨幣論)は、実証のない制度的会計学(信用通貨のB/S論の
主張)です。なぜ、こうなったのか、といつも思います。

MMTの立論の根拠は、信用通貨を法が通貨と決めるから、通貨である
というものです。法は倫理を元にしています。法は、本来は、民間の
通貨を決めることはできない。その証拠に法に規定のない仮想通貨が
通貨になったでしょう? 

2025年、2026年からまだ、現在の通貨との関係がどういったものにな
るのか不明な仮想通貨(デジタル通貨)が発行される計画です(日銀
の黒田元総裁の言葉)。

2025年の大阪万博では、来場者の予定2800万人が公式の通貨として使
います。(注)2026年からという、日本のデジタル通貨(CBDC)につ
いては、別の論考が必要です。

【変節したクルーグマン(民主党派)】
1990年代の後期、ゼロ金利の銀行預金が滞留して動かない「流動性の
罠」に陥っていた日本に、法律貨幣の信用通貨(フィアットマネー)
の異次元緩和とインフレ目標を薦めたのが、クルーグマンでした。
(ノーベル経済学賞:2008年)。これも、本メールマガジンで紹介し、
コメントしました。
(『復活だぁっ』山形浩生訳2001年:初出は1998年)
https://cruel.org/krugman/krugback.pdf

15年後、アベノミクスの理論的なバックがこれでした。内閣府官房参
与の浜田宏一が、安倍元首相首相に紹介し、安倍元首相は、主政策と
して実行したのです。旗振い役が、元総務大臣の竹中平蔵でした。.

最近の日本雑誌『Voice』では、本家のクルーグマンは「異次元緩
和」は日本に効かなかったと白旗を上げています。社会で、価値と使
い方を決める通貨論の根本に誤りがあったからです。

ドルと円は、信用通貨としては同じですが、借り入れ(米国では多
い)、デリバティブの証券化金融(米国では多く日本では少ない)、
預金(米国では少ない)、使い方(米国ではクレジットカーでも借り
入れが多い)、国際性(ドルは海外でもそのまま使える)は異なりま
す。

FRBがドルを増発したときと日銀の異次元緩和では、通貨の、借り入
れ、預金、使われかたが違ってきます。日本では預金に滞留するもの
が多い。米国では流通が早い。

「日米では血液(マネー)の性格が違うのに、大量の血圧増加剤を日
銀が入れたのです」

「同じマネーでも円とドルの性格の違い」があるので、クルーグマン
の計算とは違った結果が生じます。政府・日銀・浜田宏一も、これを
無視していました。つまり、誤診です。しかし今も、日銀は間違って
いたとは、認めない。

【通貨増加が経済成長をもたらさなかった】
信用通貨では、政府が総価値(=増刷金額×流通速度)を決めると考
えていたのです。このため、信用通貨を増発すると価値が下がるので
はなく、ケインズが淵源の貨幣数量説から経済を成長させるとしまし
た。

ところが550兆円(GDPの100%)を増発しても、目標の2%インフレに
はならず、GDPも成長させなかった。銀行の当座預金が5倍に増えるだ
けで、増えるはずの銀行の貸付金(信用創造)の増加は、2~3%でし
た。増加率は、異次元緩和前と変わらなかった。
(マネーストック(M2)の増加は、2021年のコロナのとき特例で6.4
%、2022年3.3%に低下、23年3月2.6%:M2は企業と世帯の
流動性預金です)
https://www.boj.or.jp/statistics/money/ms/ms2303.pdf

異次元緩和は、所得が1/2になり、商品の購入が減っていく高齢化人
口が30%に増えた日本では、ゼロ金利でも借り入れ増加による需要と
投資の増加にならなかった(実証結果)。

5年前の2018年に、主唱者だったクルーグマンは、白旗を揚げてこれ
を認めました。政府・日銀は未だに誤診を認めず、植田日銀も金融緩
和を続けるとしています。

【GDPは整備投資の増加で,実質的に成長する】
GDPは、預金(国民の消費の節約=エコノミーの原義)が、銀行の仲
介で、借入金での設備投資になって成長します。それ以外での生産力
の成長はない。

生産の設備投資(理系)を増やさず、需要(文系)を増やすだけでは、
あとにインフレになります。これが、現在の世界的なインフレです。

(注)奇妙な形容で、単語につけた理系は数理的、文系は感覚的+観
念的を示します。
・音楽は、物理的には空気の振動です。われわれの耳と脳の感覚では
音の色、メロディー、思想と情景を表現します。最近オーディオのこ
とを書いていません。手入れすることが無限で、毎週1段階は(自分
の独善では)進歩させています。

1980年の第2次石油危機以来、40年ぶりの世界インフレの前のコロナ
対策で、日米欧の中銀は、2年間で、10兆ドル(1300兆円)の、
(FRBは5兆ドルの国債・MBSを買って)、異次元緩和を実行したから
です。これが、今回のインフレの主因です。

まずコロナでの、サプライチェーン・ショックが起こったといわれた。
実質GDPの生産は増えなかった。米欧では、賃金が5%/年で上がり、
財政支出と相まって需要が増えました。

ウクライナ戦争で価格が上がっても、需要は減らない原油・天然ガス
のエルギーと食糧(穀物)、化学肥料の供給が減りました。

(理系である)設備投資がなく、逆に、コロナで減産されて生産が増
えず、潤沢なマネーで、必需品の需要が増えれば、(理系である)経
済成長のない、(文系の)インフレになるに決まっています。それが、
2023年現在です。

日本では、国民が認めている日銀の、信用創造力を使って550兆円増
刷しても、(理系である)経済を成長させる設備投資は増えず、生産
性も上がらず、GDPの1人当たり生産性の函数である世帯の所得は、増
えなかった(10年間の量的緩和)。世帯の所得が増えないと消費は増
えない。

記憶では2018年だったか、日本が、異次緩和を開始して5年後のIMFの
会議で、「日本は高齢化が世界1の人口構造から、量的緩和(マネー
の増発)をしても、物価を上げるくらいの需要は増えなかった」とク
ルーグマンは、今回のVOICEのインタビューとおなじことを述べてい
ました。

youtubeにIMF会議があったので、主なところを翻訳し、メールマガジ
ンでコメントしました。メディアの報道は皆無でした。

NYタイムズのコラムニストのクルーグマンは風見鶏です。
過去の言動を覆す。最初は2001年に日本に薦めた異次元緩和(550兆
円の国債の日銀による買い→550兆円の増発→40%の円安」もそれで
した。

要は「日本の経済体質と構造を見ない、間違った治療だった」と述べ
たのです。無責任な話です。

政策を実行しない学者は、説を変えればいい。しかし説にのってやっ
てしまった日銀は、買った国債の売りと550兆円の滞留マネーの回収
ができない。株価だけは、3倍の水準に上げています(日経平均2万
8500円:23、04.21)。それ以外では、1)約40%の円安と、2)円安
による輸入物価上昇(40%台↑)、3)物価に対する実質賃金の下落
にみえる、3大副作用が大きかった。

【袋小路の日銀】
「間違っていた」と言って、引き締め(国債の売り)を日銀がやれば、
金利が3%、4%、5%と高騰して、政府財政は破産します(長期金利
で1.5%から危なくなります)。これがゼロ金利と550兆円の日銀の国
債買いで残った結果です。後戻りができず、引き締めへの出口もない。

1945年3月に沖縄が制圧されたあと、本土決戦しかないところに追い
詰められ、ヒロシマ・ナガサキの原爆を落とされて無条件降伏した陸
軍の再末期に似ています。軍は「日本が優勢」という大本営発表を、
降伏前日まで続けていたのです。

植田新総裁は、「短期マイナス金利と金融緩和を続ける」という選択
肢しかもたない。

岸田首相は、官僚が重んじる順列から次期総裁の番だった雨宮氏に、
目星をつけていました。雨宮氏は固辞したという。「火の粉はかぶり
たくない。最後は石をもって追われるから」ということでしょう。敗
戦後の首相と同じです。

財務省も、有力な候補を出さず逃げました。日銀総裁のポジションの
権威と人気は、経済成長(=実質所得の増加)という目的を果たせず
失敗した異次元緩和のため、地に堕ちています。

1945年の、敗戦のときの首相と同じです(名前すら忘れられた鈴木貫
太郎:1945-46の短期首相)。東条の跡を継ぐ鈴木は、雨宮のように、
「とんでもないと固辞した」と記録されています。

日銀は、0.5ポイントの利上げすらできない。すでに国債の下落で自
己資本を失い債務超過になっているので、2年後には、たぶん国が資
本を出す国有化しかない。

肝心なことほど、日銀内の議論は公開されない。広報役の総裁の、文
章(セリフ)を読む記者会見の言葉の、裏を読んで推測するしかない。

経済学は、中国共産党のマルクス主義と同じように、資本主義の党派
的なイデオロギーですから、「表現されたことより、表現されなかっ
たこと、肯定したことより、否定したこと」に重要な問題が隠れてい
ます。

下世話な比喩ですが、植田新総裁の、記者会見での表情は、妻から浮
気の結果を追求され言い逃れようともがく夫にみえるのです。結果の
修をする途(みち)がない。

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<Vol.1331号:正刊:金融危機の中核にある
               デリバティブの意味(前編)>
       2023年4月19日:有料版のみ

【正刊の目次:前編】
■1.デリバティブの本質を示す代表選手はオプション取引
■2.未来リスクと等価のオプション料
■3.CLO、CDSはどんな証券か
■4.権利の行使
■5.含み損、含み益=簿外資産、簿外負債
■6.金利スワップ(契約総額6.5京円)の意味
■7.権利の行使
■8.設定価格で売る権利の、プット・オプション
■9.金融商品のリスクの意味(=デリバティブの意味)
■10.ボリンジャーバンド、証券アナリスト、ヘッジファド・マネジ
ャーの方法
■11.商品発注の、安全在庫との共通性
■12.VIX(ボラティリティ・インデックス)の性質
■13.未来は確率でしか表せない:だからデリバティブが生まれた
■14.複雑系の未来は確率でしか表せない:だからデリバティブが生
まれた

<Vol.1332号:日曜増刊:
   金融危機の中核にあるデリバティブの意味(中編)>
     2023年4月23日:有料版・無料版共通

【増刊:中編の目次】
■15.デリバティブ下落は、満期日までは簿外の損
■16.簿外の損は、時間経過とともに露呈する
〔増刊の中編は、ここまで〕

<Vol.1333号:正刊:
   金融危機の中核にあるデリバティブの意味(後編)>
     2023年4月26日:有料版のみ

【正刊:後編の目次予定】
■17.米欧の不動産証券の下落
■18.カウンターパーティリスクの構造
■19.民間銀行の信用恐慌と、政府の中央銀行
■20.信用恐慌は、10年サイクルだった
■21.資本主義の信用恐慌の代わりに、
       政府通貨のソ連ではハイパー・インフレ
■22.1945年~49年の日本
■23.価値がなくなる信用通貨:価値を維持する金
■24.2023年末からの問題の、焦点

【後記】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■15.デリバティブ下落は、満期日までは簿外の損

金利上昇によって、世界のGDPの6倍、8.2京円の契約の、全部のデリ
バティブに現れる損は、満期日までは損益が確定しないので、簿外の
損です。すべての金融資産に、銀行は二重にデリバティブをかけてい
るといっていい。デリバティブは、マネーそのものではなく「マネー
の予想変動リスクの、等価交換の契約」ですから、目にみえない。

米欧が中心ですが、
・世界の総契約額、632兆ドル(8京2000兆円)、
・時価価値(=損益)、16.5兆ドル(2145兆円)です。
(表の一番上の行の、OTC契約額:22年6月時点)
https://stats.bis.org/statx/srs/table/d5.1?f=pdf

末尾のカラムの時価価値(2145兆円)は、世界のOTC(銀行の店頭)
のデリバティブでの、かけた側と引き受けた側の損益の合計を示しま
す。

1)総契約額は632兆ドル。
2)22年6月時点の時価価値16.5兆ドルは、銀行間で、満期日に受け渡
す義務がある金額です。

受けとる権利をもつ側と、支払う義務を負う側の、
・総契約が632兆ドル(8京2000兆円)であり、
・その契約の損益の合計が16.5兆ドル(2145兆円)の時価価値です。
金利が上がる途中の2022年6月のものです。

【金利上昇で増える、デリバティブの価値(=損益になります)】
金利は22年3月から上がり、世界の金利を誘導するドルの米国では、
23年4月で、2021年の3倍の5.0%になっています。
↓
◎デリバティブの損益は、金利の上昇に正比例して増えます。
金利と、ボラティリティを上げて、オプション料を計算すれば、これ
がわかります。オプション料(=デリバティブ契約のリスク価値)は、
金利とボラティリティに正比例して増えます。

【デリバティブでの損失の推計】
米欧の銀行間で16.5兆ドル(2145兆円)だったデリバティブの損益
(22年6月)は、その後の3ポイントの金利の上昇(2.5倍)により、
約2.5倍の「41.2兆ドル(5300兆円)」に膨らんでいるでしょう(23
年4月時点推計)。

銀行とファンドの満期前のデリバティブ契約に、5300兆円の損または
利益(簿外の損益)が含まれているということです。

生命保険会社に例えれば、2023年から、5300兆円の保険金の支払い義
務が発生するということです。

■16.簿外の損は、時間経過とともに露呈する

この5300兆円の損益は、いまはまだ、大部分(90%か?)が、銀行と
シャドーバンク(ファンド)の、B/Sの裏の、表には現れない簿外の
資産、または負債です。(注)金利が下がらないと、この損益は減り
ません、

時間が経過すると、満期の到来が増えます(減ることはない)。
↓
簿外の損益5300兆円から、米欧を中心に、大手銀行とファンド(シャ
ドーバンク)の3か月の決算に確定した損益として、表面化するもの
が増えていきます。2023年、2024年と続きます。

【毎月、440兆円の損失が露呈】
1年で、既存デリバティブ契約の損益が表面化するとすれば、「5300
兆円÷12か月=440兆円」が、毎月の確定額です。

1か月分でも、大手銀行の危機を生むのに十分な金額です。
2023年から24年初頭まで、米国と欧州の金利が、大きく下がらないと、
損益の露呈は、確実になります。

【中編の結論】
以上が意味するのは、銀行危機は確実に訪れることです。

23年3月の、5つの中小銀行の、危機のあと、「金融危機は終わった」
として株価上がり、楽観的な気分が広がっています。

2008年のリーマン危機のときも、株価下落の長期傾向なかで、短期の、
4回の戻り高値のダマシがありました。これと同じにみえます。たぶ
ん2023年末か2024年春が底値(-40%)、その間、3回から4回のダマ
シの株価上昇があるのでしょう。
            
            *

有料版・無料版に共通の中編はここまでとします。後編の正刊は、4
月26日に有料版として送ります。

【正刊:本編の後編の目次予定は以下です】
■17.米欧の不動産証券の下落
■18.カウンターパーティリスクの構造
■19.民間銀行の信用恐慌と、政府の中央銀行
■20.信用恐慌は、10年サイクルだった
■21.資本主義の信用恐慌の代わりに、
       政府通貨のソ連ではハイパー・インフレ
■22.1945年~49年の日本
■23.価値がなくなる信用通貨:価値を維持する金
■24.2023年末からの問題の、焦点
【後記】

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【プレミアム読者アンケート&感想の、項目のメド】

1.内容は、興味がもてますか?
2.理解は、進みましたか?
3.疑問な点は、ありますか?
4.その他、感想、希望テーマ等
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確に書くための、参考になります。

気軽に送信してください。感想は、励みと参考になり、うれしく読ん
でいます。質問やご要望には、可能なかぎり回答をするか、あとの記
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