中央銀行への信認とは通貨への信認である
This is my site Written by admin on 2023年3月31日 – 12:00
今回の増刊号のテーマは、財務省・日銀が国会で答えることのできな
かった、「中央銀行への信認とは何か?」を、事例の分析から探求す
るものです。

日銀が国債を買って円を増発することを(MMT:現代貨幣論の仮説)を、
景気浮揚策として要求した自民党の西田昌司議員(参議院)に対し、
財務省は「(限度を超えると)財務省・日銀への市場の信認が失われ
る可能性がある」と答えています。

ところが、この「信認」が何であるかについての追加質問には、財務
省・日銀は答えることができなかった。

情けないことですが、これが財務省と日銀(企画課長)の、金融知識
の水準です。企画課長は、日銀の金融政策を起案する中枢にいる官僚
です。
(財政金融委員会:22年3月15日)
https://www.youtube.com/watch?v=4d722ze-j2w

米欧で2023年3月10日から始まった銀行の危機に対して、米国財務
省・FRBと、ドイツのシュルツ首相は、いずれも「銀行預金は、全額
を保障する。銀行信用は盤石である」と答えています。

銀行危機の波及(システミックなリスク)を止めるのに、緊急秘密会
議を開いて対策に必死です。世界的な金融危機になった2008年のリー
マン危機を繰り返さないためです。ドイツ銀行が、今、危機の渦中に
あります。

米銀の5位の大手、チャールズ・シュバウも、危機になっています。
2023年は好調だった株価が、1日で80ドルから62ドルへ急落しました。
原因は、金利が上がって保有国債と債券の20%下落があり、預金取り
付けが起こっているからです。

【ドル危機の兆候】
世界の各地で、一回の預金引き出しの制限が始まっています。原因は、
世界の銀行の、ドルの流動性(ドルの預金量)が減っていることです。
ドルを補充しなければならない。これは「ドル買い/自国通貨売り」
になるので、銀行の自国通貨の流動性(現金)も減っているのです。

米欧のドル、ユーロ、英国ポンド、スイスフラン、円の金融は、基軸
通貨ドルを通貨交換の媒介通貨としてつながっています。

米国FRBとユーロのECBそして日銀は、目には見えない通貨交換の太い
パイプ(送金回線のSWIFT手順)で連結しています。米欧日の中央銀
行は、マネーを融通し合う組織です。われわれの通貨交換と国際決済
は、中央銀行間の、差額の送金になっているのです。西側世界の銀行
は,1つのチェーンストアです。

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<Vol.1325号 緊急増刊:
       中央銀行への信認とは通貨への信認である>
     2023年3月31日:有料版・無料版共通

【緊急増刊 目次】

■1.52年で賞味期限が切れたドル基軸体制
■2.ドル・ユーロ危機の、序幕が開いた
■3.テーマは、中央銀行と通貨への信認
■4.トルコの事例研究:通貨が16分の1に下落した
■5今回は、中央銀行のマネー増発の限界が近い
■6.後記:バブル崩壊後の長期成長

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■1.52年で賞味期限が切れたドル基軸体制

「媒介通貨」は、外貨交換のとき、仲介として使われる通貨です。た
とえば、円で人民元を買うときは、「円→ドル→人民元」というよう
に、基軸通貨のドルが中核になります。「円→人民元」の直接交換は、
ゼロではありませんが、少ない。ドルが、世界の通貨の翻訳機械にな
っているとイメージしてもいい。

イメージは、インターネット(TCP/IPの通信手順)での、世界の情報の
連結です。ドルの銀行危機は、ドルと通貨交換しドルをもつユーロの
危機になり、ドルの対外債権をもつ円の危機になります。

インターネットのノード(結節点:いわば関節の分岐的)にある中継
コンピュータの信号の波がダウンしたことと同じです。電子の波が弱
まると、十分な通信ができません。ドルの銀行危機は、一定の時間を
おいて(リーマン危機のときは1年3か月でした)、全米と、日本を含
む世界に、波及します。超大国の貿易が、世界の商品価格に影響を与
えることと同じです。

金融や通貨の送金と取引は100%がデジタル化され、通信回線とコン
ピュータのなかをデジタルの電子信号として光速で移動し、目には見
えない。

紙幣の時代(1960年代まで)は、お札が見えました。1万円は1g、1億
円が10Kg(スーツケース大)、1兆円は1万倍の100,0000Kgであり、4ト
ントラック25台分です。仮に日銀が、10兆円を印刷し、現金が枯渇し
決済と預金の払い戻しが不能になった破産間際の銀行に運ぶと、4ト
ントラックで250台分です。本店の近くにいれば、誰でも、銀行の危
機が見えます。

ところが、FRBが通信回線で10兆円分のドル(トラック250台分の100
ドル札)をシリコンバレー銀行に送っても、誰の目にも見えない。

1980年からの銀行危機では、預金の取り付けがあっても見えない。銀
行会計の債務と、資産である債券と現金残高を示すバランスシートの
データによるしかない。銀行危機を逃れる、大口預金の引き出しと、
安全とされている大手銀行への送金も、オンラインであり他人には分
からないのです。

政府・中央銀行は、政府財政の危機や銀行の破産危機のときは、
・政府が、すぐ売れる国債を、緊急に銀行に貸すか(国債担保のリ
バースレポでの、現金供給になる)、
・中央銀行が、増刷したマネーをいくらでも送金して貸すので、銀行
預金は安全だと言います。

(注)紙だった国債、債券、株券も1990年代に電子化されています。
100%が電子証券です。CBDC(中央銀行が発行する通貨価値と連動す
るデジタル・キャッシュ)へは、至近です。黒田総裁は2026年からと
述べています。

参議院の西田氏が主張するように、中央銀行が国債を買って通貨を増
発するMMTを行うかぎり、「政府の財政危機、銀行の危機はない。起
こっても収めることができる。預金は100%安全」としているのです。

通貨や証券は目に見えない。「中央銀行への信認とは、その通貨価値
への信用である」ことを具体例で示さねばならない。

【通貨の価値と、物価の原理】
通貨価値とは、その人に効用をもたらす商品や資産の購買力のことで
す。物価が10%上がると通貨価値は10%下がります。

外貨との通貨レートは、それぞれの国での購買力のことです。「原理
的には」、物価が10%上がる国の通貨(ユーロ)は、物価が4%しか
上がらない国の通貨(円)に対して、同じインフレの過去から、6%
下がった点が、均衡点になります。均衡点は、通貨レートの変動幅
(ボラテリティ)の中心点です。

・・・「原理的には」とは、自国通貨に心の思い入れのないロボット
が通貨を売買したときです。自国通貨に愛着を持つ人が多く、失望の
心をもっている人は少ない。

短期的には、原理からずれた自国通貨の価値を高く見て売買をするが、
長期的には、購買力の通貨価値の原理に収束していきます。

【日替わりの緊急情報】
たった今シリコンバレー銀行、クレディスイスに続いて、3月30日現
在、全米5位の銀行、チャールズ・シュワブ・グループが危険になっ
てきました。

◎今回は、大手銀行への危機の波及が早い。預金者の心理において、
シリコンバレー銀行とクレディスイス破産で。不安が増しているので
しょう。。

23年3月は、週末の金曜日ごとに、金融の大ニュースが出ました。4月
は、一体、どうなっていくか・・・濃霧の夜を氷山に向かって進むタ
イタニック号のように、視界不良です。

船上では、富裕者たちが正装で華やかな会食、ダンス、室内楽の演奏。
ダンス・ダンス・ダンス(村上春樹)。これから6か月は続くか? 
6か月、金融危機とインフレは終わったという楽観が続くでしょう。
人は、近い将来は楽観的に見て、悲観は遠ざけます。船長(中央銀行
の議長、総裁)も、濃霧のなか氷山に気がついていなかった。

日本の経営者アンケートでは、景気が回復したという。米国では、住
宅価格は、20%から低下してもまだ約5%/年上がっています。2023年
は、株価も大きくは下がっていない。電子の金融は、見えない。平穏
です。ただし株価が下がったメガITと金融の雇用カットは、激しい。

新聞・TVは、楽観情報を選んで流します。一般的なメデイアの、ミッ
ションでしょう。難しい用語の金融専門的なリポートは紹介されない。
事実データによる予想は、実は難しい。データと情報の重みの計量が
必要だからです。

【総資産・総負債920兆円のチャールず・シュワブの危機が発現】
シュワブ・グループの総資産・負債は7兆ドル(920兆円)。クレディ
スイス(総資産・負債5314億フラン:7.4兆円)の124倍と巨大です。

日本で最大の、三菱UFJ(総資産・負債373兆円)の、約2.5倍です。
日本の約3倍の米銀システムにとっても、核兵器の規模です。 シュ
ワブの株価は、3月8日の76ドルから55ドルに暴落しています(-28
%)。なお、米国の銀行株全体は、3月8日から現在まで、3週で25%
下がっています(暴落のレベル)

原因は、米国の金利が4.75%に上がったことによる、保有国債の満期
前の時価下落、約20%でした(-1000億ドル:13兆円が表面化)。危
機を直感した預金者からのオンライン引き出しによって、現金が不足
し、満期前の国債とMBS債券を売る必要が出て、含み損が実損になっ
たことです。

FRBは、この巨大銀行を、ドルの増刷で救済できるでしょうか。
(注)日本と米国でも、この報道がありません。

マンハッタン島の街路を歩くと、ドイツ語に見えるシュワブ(Schwab)
銀行がたくさん目につきます。イエレン財務長官とFRBのパウエル議
長はともに「米銀の信用は盤石」と言い続けています。

すでに、いくらかは不明ですが、預金引き出しに不足する数兆円規模
のドルを、FRBが注入しています。シュワブ・グループの資産規模は、
920兆円であり、FRBの規模(8.3兆ドル:1080兆円)に匹敵するくらい
巨大です。(FRBの資産・負債の規模)
https://fred.stlouisfed.org/series/WALCL

大口預金者の不安から、預金流出が続き、国債・債券の売却損(簿価
の約20%)が拡大していくと、FRBも助けきれない恐れがあります。

シュワブが破産すると、日本と欧州の銀行を巻き込んで、世界に銀行
危機が広がります。FRBは,何が何でもシュワブを破産させてはなら
ない。チャールズ・シュワブは「Too Big to Fail」です。

シュワブの事例は、金利上昇による国債・債券の含み損(約20%)が
現実化したケースです。

【米国の国債+債券+MBS=51.4兆ドルが、20%下落】
米国と海外の銀行がもつ発行金利0.25%から1.25%のドル国債は
・総計で31.4兆ドル(4080兆円)、
・AAA格の不動産ローンのMBS債券は10兆ドル(1300兆円)
・社債等の証券は10兆ドル(1300兆円)、
合計では、51.4兆ドル(6680兆円)もあります。

ドルの金利は、4.5%に上がっているので、20%の含み損(帳簿価格-
売却時価)があるとすると、総額は6680×20%=1336兆円です。FRB
では救いきれません。

(注)国債と債券の。金利変化との関係での価格の公式は、以下です。
(長短の債券の残存期間=日米とも平均デュレーションは8年付近)

国債・債券の総額×{(1+発行時金利)の8乗÷(1+上昇した金
利)の8乗}・・・1ポイントの金利上昇につき、発行額面から約20%、
債券市場での転売価格(時価)が下がります。

売る前は含み損です。国債・債券は発行残高が51.4兆ドルと大きいの
で、20%は10.28兆ドル1336兆円の、銀行資産の空洞になります。

加えて、まだ5%上がっている住宅価格に約1年先駆けて、リモート
ワークが35%に増えた商業用不動産(全米)は、25%下がっています。

CMBS(商業用不動産ローン担保証券)も、25%から40%は下がってい
るでしょう。銀行がもつ、金利が国債より高かったCMBSの価格が、回
復する見込みはない。

米銀の、「システミックな全体危機」が明確になってきました。
米ドルの信用恐慌(=ドルの価値低下)の序幕があいたと言っていい
でしょう。。

破綻銀行(シリコンバレー銀行、クレディスイス)では、ついに預金
の引き出し制限が始まりました。多額の預金流出が止まらないからで
す。

◎全米で186の技銀行が破産と予想されるという論文が発表されてい
ます。(政府系シンクタンク:フーバー研究所)
日本メディアは報じません。原文は、英語です。
https://www.gsb.stanford.edu/faculty-research/working-papers/monetary-tightening-us-bank-fragility-2023-mark-market-losses

日本の国会では、世界には通じない、のんびりした議論が交わされて
います。議員の意識が、ガラスの金魚鉢に閉じ込められています。新
聞も、あさっての世界、昔から同じです。

極東の島国はいつも平和か、とも思えます。NYやロンドンでは、ウ
ォール街とシティのパブから世界が見えます。東京では見えない。大
阪では更に見えない。金融情報ではシンガポールが上でしょう。

代わりにインターネット情報があります。判断し、区分して見極めれ
ば、長期投資のチャンスも見えます。インターネットは世紀を変える
発明です。

太陽光に代わる、水素エネルギーの有力部品メーカー、ゴールド、
800万円台から230万円に下がり現在は370万円台のビットコイン。い
ずれも賭けですが、ゴールドは、リスクの大きな賭けではない。

「長期投資では、悲観論が多く価格が低いとき、これはというものを
見つけて、買わねばならない」。(注)短期の回転売買の投資は、数
週間の短期予想トレンド(罫線のグラフ)に従った売買です。

人口増加地帯以外の不動産は、向こう5年は、リスクが高い。
金利変動にもかかわらず、米ドルとユーロの危機が迫っている感じで
す。

■2.ドル・ユーロ危機の、序幕が開いた

まだ、舞台の一段低い地下から聞こえる、ハ短調の前奏曲と指揮者し
か見えない。イエレン財務長官+FRB議長パウエル氏+ECBのラガルド
総裁の頭と指揮棒・・・悲劇は、始まっていない。

米国FRBは、国債を売って5000億ドル(6.5兆円)は絞ってきたドルの
増刷の、大規模な再開を迫られています。

4月には10兆円、20兆円、30兆円・・・週を追って、拡大していくで
しょう。FRBが、緊急にドルを供給しないとシュワブのような大手ま
で潰れていき、選択肢はない。

2023年秋からの、米銀全体のシステミックな危機が確定した感じがし
ます。その間金利は下がらず(=国債と債券の価格は上がらず)、銀
行の国債と債券の売却損が、日々、大きくなっていくからです。

【銀行危機と政府の財政危機は連結している】
国債は銀行と機関投資家が買います。銀行が危機になると買えなくな
って、国債が満足に売れなくなった政府の財政も破産に向かいます。

米国では、満期が来た借換債を含むと、1年に5兆ドル(650兆円:円
国債の3倍)の新規国債を発行して、市場で売らないと政府財政が破
産します。毎月54兆円のドル国債の新規発行です。これを、信用が低
下した銀行が買わないと、国債価格が暴落し、金利が高騰するのです。

バイデン政府(財務省)は、なりふりは構わず、日銀にも米国債を買
うことを、要請するはずです。当時の教育大(筑波大学)の駒場高校
然とした植田和男氏が、新総裁になる日銀は、買うのか? 駒場には
植田氏のタイプの人が、多かった。米国債を大量に買えるのか? 日
銀が買うと、「円売り/ドル買い」いになるのである程度は、米銀の
危機+米国の財政危機からのドル暴落を防止できるからです。あくま
で「ある程度」ですが・・・

【世界はドル国債売り】
中国の人民銀行は、合計で3兆ドルあった「ドル国債+ドル債券」を
売って、ドルの米銀預金も引き出し、金(ゴールド)の現物と、現物
がないときは金ETFを買い増しています。準備通貨のドルの価値がこ
れから3年は下がると想定しているからです。人民銀行は、米子留学、
銀行・ファンド勤務者の牙城です。

科挙の伝統がある中国は、学歴を日本よりはるかに重んじる社会です。
通貨と世界金融では、宋鴻兵の、中国でベストセラーになった名著、
『ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ』、『通貨戦争』
があります。国際金融リテラシーの基本書でしょう。

ドルから離れている中国・インド・新興国(グローバル・サウスの諸
国)の買いのため、2022年から23年の金価格は上がっています。現在
1グラムが9200円台です(円では歴史的最高値)。23年間、ほぼ上げ
基調を続けていて、円価格は9倍です(年平均+10%)。

本源的な通貨である金に対して、いくらでも増刷ができる信用通貨の
円の価値は毎年10%下がってきたと見ていい。13年で550兆円も増刷
した信用通貨の、金に対する本質的な価値は下がるしかない。
今後2年、下落する信用通貨ドルに対する大きな上昇が始まるでしょ
う。ビットコインの回復が先鞭をつけるかも知れません。

【金価格の上昇】
米ドル下落危機のときは、基軸通貨のドルの国際的なアービトラージ
(代替資産)の金価格が上がります。それが世界の中央銀行の、ドル
を売ったときの、金の買い増しです。
・ドルを売って金を買う中国人民銀行+インド+中東諸国が、買いの
先頭です(2022年:1200トン:鉱山生産3000トンの40%)。
https://gold.tanaka.co.jp/commodity/souba/d-gold.php

欧州では1位の、預金が多いドイツ銀行(資産・負債:1.7兆ドル:
220兆円)が危機を言われます。
・デリバティブの契約元本が6000兆円。金利スワップが80%(4800兆
円)ですが固定金利を売り、変動金利と交換していれば、金利が0%
から3.5%に上がったユーロでは、大きな損が出ています。ユーロの
中央銀行のECBが、すでにマネーを入れているでしょう。

■3.テーマは、中央銀行と通貨への信認

シュワブの緊急ニュースから、テーマに戻します。

銀行危機のときも、通貨を増発して注入する中央銀行への信認が失わ
れなければ、FRBが3兆ドル(390兆円)を増刷して銀行を救ったリー
マン危機として終わる。

増刷する通貨への信認が失われれば、銀行危機が信用恐慌(全米の1
万1000の銀行が閉店)になり、実体経済の恐慌になっていく(1929-
33年の大恐慌と同じ)。

【日本の対外資産】
日本経済の強みだったドル建ての対外資産1249兆円(不動産23兆円、
証券とドル預金1226兆円)も、ドル金利の上昇とドル安が重なって円
に対して30%以上は下がり、米国債を買っている国内銀行と、不動産
ローン証券のMBSを買っている機関投資家の危機になって行きます
(損失が358兆円:全銀行が債務超過、ファンドは下落)。

これが日銀の円の増刷の必要になっていきます。日本の対外純資産
(411兆円)が、ドル火災が、SWIFTの通信回線で瞬間移動し、消失し
ます。
https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/iip/data/2021_g.htm

ドル建て債券については5%と高いヘッジコストを払ってドル安をヘ
ッジしたものが50%です。50%は、ナマのママです。

米国金利の上昇による、ドル国債と債券の下落分(現在は約20%)の
CDSのような保障のヘッジは、かけていない。もろに金利の上昇によ
る価格下落の損(20%)が発生します。

「変動金利を売って、固定金利を買う金利スワップ(将来の金利リス
クの等価交換)」は、ある程度はかっているでしょう。しかし、それ
よりはるかに大きな国債と債券の元本の下落へのヘッジはない。

■4.トルコの事例研究:通貨が16分の1に下落した

政府・中央銀行への信認が失われた典型的な事例はトルコのリラです。

2021年12月のインフレ率が36%、22年12月64%、23年は40%の物価上
昇です。インフレ率40%は、通貨リラの40%下落です。

通貨下落を補うために40%に向かう金利でなければならない。経済理
論では、インフレのときは、中央銀行は金利を上げ、通貨量は減らさ
ねばならない(これが金融引き締め)。ところが、トルコ中銀の金融
政策は逆です。金利は8.5%に下げ、リラを増発しています。40%の
インフレのなかの、真逆の金融緩和。

政府は、最低賃金を54%上げ、物価上昇を補うヘリコプターマネー政
策をとっています。トルコ中銀は、赤字国債を買って40%の期待イン
フレのなかで通貨を増発しています。国債のGDP比は50%くらいです
が、対外債務がGDPの50%と大きい。国家財政は破産していますが、
正常に続いているように見えるのです。

【リラの暴落:16分の1】
トルコ中央銀行と通貨への信認を示すのは、リラのレートです。
リーマン危機の2008には、1リラが85セント(0.85ドル)でしたが、
現在は5.2セント(0.052ドル:6.8円)。

リラは、世界の通貨基準(基軸通貨)のドルに対して16分の1に下落
しています。インフレのなかでリラの金利を、逆に下げて通貨を増刷
してきたトルコ中銀とリラへの信認は、地に落ちたのです。

国民が銀行に預金をしていると、リラの価値は、8.7%の金利があっ
ても、年率で17%下がっています。預金が1000万円なら170万円/年の
損です。普通の考えの人なら、自分の預金をユーロ、ドル、スイスフ
ラン、ビットコインに換えるでしょう。

自国の通貨を大量に売って、外貨を買うことを、マネー・エクソダス
とも言います。日銀と円預金を信認している日本人が、600兆円の量
的緩和による円安の2013年から2023年まで決して行わなかったことで
す。

1ドル80円から130円に下がっても(-38%)、1300兆円の預金を外貨
に換えなかったのです。日本人は,政府・日銀・円を信用しています。
円の信用というより、日本人は、円安の円預金であっても、外貨に換
える習慣がない。つまり、金融リテラシーの素地がない。

トルコ、中国、米国、インドを含むアジア、南米、中東、欧州を含む
海外では考えられない。預金の外貨への交換は、外貨規制をしている
中国以外は、無制限に実行できます。

◎中東の大国トルコ(人口8478万人:GDP 106兆円:参照ロシアの
GDPが230兆円)で起こったことが、中央銀行と通貨への,大きな信認
の低下です。これが、2008年から2023年までの15年間、リラが16分の
1に下がった原因です。

◎インフレ(通貨価値:商品購買力低下)の中で、中央銀行が金利を
上げず、絞るべき通貨量を増刷すれば、無茶な金融政策をとる中央銀
行と通貨への信認は、失われます。

【リラの、外貨への逃避】
一国金融の時代は外貨に換える方法はなかった。しかし1995年の金融
ビッグバンの後のマネーは外貨規制はない。自分の資産を守るため無
制限に外貨買いができます。

◎財務省・日銀が、国会で答えることができなかった中央銀行=発行
通貨への信認の低下は、「マネー・エクソダスからの通貨レートの暴
落」として現れます。

米国、欧州、日本は、現在、インフレです。中央銀行が金利を上げず
(逆に下げて)、銀行危機のためとして通貨を増発すれば、現在のト
ルコと同じことが起こります。

◎6%インフレのドルと、10%付近のユーロにとっては、銀行危機へ
の対策マネーをFRBとECBが増発して貸与したとき、トルコのリラに似
たことが、経済の原理から起こるでしょう。

◎今回はリーマン危機のときと違い、中央銀行の通貨増刷に限界があ
るのです。資産額が上位の大手銀行が危機になったとき、十分な量の
マネーの増刷できないということです。
(米国の4大銀行は、JPモルガン・チェース、バンクオブアメリカ、
シティバンク、ウェルズ・ファーゴです。日本の大手は、三菱UFJ、
三井住友、みずほです。)

■5今回は、中央銀行のマネー増発の限界が近い

◎今回の銀行危機に対しては、FRBとECBは、危機を収める十分な量の
マネーを供給できない。通貨信用が続く、一定量を超えて増発すれば、
ドルとユーロの暴落の恐れがあるからです。

◎限界は、米ドルで3兆ドル(390兆円)、南欧が弱いユーロでは2兆
ユーロ(280兆円)、国債残が1200兆円の日本では100兆円か。

損をするドル預金、ユーロ預金が引き出され、価値を保つ円、スイス
フラン、人民元、中東マネー、インドルピー、そして何よりも金の安
全資産か、ビットコインのリスクマネーに変わると、FRBとECBがマ
ネーを増発しても、自国通貨の預金が減る銀行の危機は、深化してい
くのです。

今回、ドルの増発の限界は、5兆ドル(650兆円)、ECBは4兆ユーロ
(570兆円)と見ています。インフレ率は、米欧より低くても、日銀
の資産=通貨増発量が、737兆円に膨らみ(23年3月)、100%を超え
た円では、100兆円の増刷が限度でしょう。

今回は、銀行危機が連鎖するシステミックになると、経済原理的に、
中央銀行が預金を守るのに十分なマネーを供給ができない。

通貨への信認の限度を超えて、通貨の増発を行えば、トルコのリラを
追うでしょう。リラは年率で17%下落を、15年も続けました。

【信用の臨界点に接近した】
◎中央銀行は、コロナ後のゼロ金利(2020-21年)、1年後からインフ
レを引き起こした通貨増発12兆ドル(1560兆円)により、銀行危機救
済の役割を、終えたのでしょう。

世界的な金融危機の勃発は,当初予想の2024年3月ではなく2023年秋
に近接したかも知れない。2008年の金融危機のとき、3月に全米5位の
銀行だったベアスターンズ破産したあと、6か月後が米銀全体に広が
ったシステミックな危機でした。「リーマン危機」と言われますが、
破産したリーマンの名前でシンボリック命名であり、本当は、「米銀
全体の信用収縮が連鎖した危機」でした。

◎〔リードタイムの短縮〕
6か月は、銀行の信用危機が多の銀行に波及するリードタイムだった。
今回は、2024年3月ころと予想していたが、大手のシュワブ銀行の危
機によって、6か月に短縮された感じがしています。

【今回の世界的な金融危機のあとは、CBDC】
混乱の2、3年あとは、各国で実験が行われているEBDC(中央銀行発行
のデジタル通貨)でしょう。

紙幣は残りますが、大部分はEBDCになります。スマート銀行に預金し
PC、携帯,電子式のクレジットカード(スマートカード)で引き出し
て使う。PAYPAYのようなものです。紙幣の取り扱いが少なくなって銀
行は統合され、街の支店の多くが消えます。コンピュータとAIがあれ
ば、銀行Mの機能を果たせるからです。紙幣の時代の銀行は、絶滅危
惧種になりました。ゼロ金利の国債の運用が多い地銀で進んでいる統
合・合併は、その先駆けです。

紙幣の銀行は、ATMも要らず、機能が無効になっていくでしょう。工
場のAI化、無人化と同じ進化です。進化は、自然淘汰の進歩ではない。
あらたな、展開です。

■6.後記:バブル崩壊後の長期成長

AIの時代が、1億人が登録したchatGPTとともに始まりました。高校の
教科書の知識のレベルなら十分な回答をします。大学や大学院の専門
レベルはムリです。Wiki-Pediaの全情報を格納しているという。

医学も含む学問は絶対的な真理ではない。「前提→論理→確率的な仮
説的結論」の構造をもつ仮説です。仮説とは、検証前のものです。確
立されたガンの診療法も、治療の失敗がすくなかった事例からの仮説
です。

常に、前提が問題です。経済学では、数学的に合理的な売買行動をす
る人間が前提です。金融投資にも有効な行動経済学は、経済学の前提
に、疑問を出しています。

合理的な人間が前提の経済学では、
・将来期待の心理的な集合知から来る信用恐慌と、
・期待値の集合知で動く株価の変動の原因は解けない。
 予想もできない。

鍵は、行動経済学の、人間がもつプロスペクト(期待)の理論にあり
ます。(ダニエル・カーネマン:『ファスト&スロー』) 

「ビジネス知識源」ですから、原理への知識まで言うのが義務です。

経済学的期待は、個人が無意識のうちにできあがる集合知になると、
1)正帰還(電気回路ではポジティブ・フィードックの発振)で、自
己実現もしますが(=経済学的なバブル価格:金融兼和の2022年ま
で)、
2)今回の、金利の上昇から生じた金融危機のように、負帰還(ネガ
ティブ・フィードバック)で、金融商品と不動産のバブル価格の全体
を崩壊させ、底値にまでもって行きます。
・銀行危機、通貨危機、株価と債券価格の暴落がこれです。

底値で、世界が終わるのではない。経済には、底値の焼け跡に春の芽
吹きのように、新世代が登場します。

3)見方が一定しない混乱の2年くらいで、底値に行ったあとは、長期
に反発し、再び、上がり、別の展開が始まります。

たとえば日本の敗戦後の焼け跡のあと(国債と預金が無効になり金融
も崩壊)、1960年代は、奇跡的と言われた高度成長の10年でした
(GDP3倍、世帯所得3倍、株価18倍)。

・太宰治的に、戦前の貴族の斜陽の側に身を置くか、
・戦後のソニー(井深氏、盛田氏)の側を見るかです。
たぶん3年のうちに、新しい時代が来るでしょう。

◎これからの3年は、それくらい大きな歴史的転換期でしょう。

日経平均は、1950年は100円、1960年は1800円でした(18倍:年率32
%↑)。今日は、2万7782円(63年で1800円の15倍:年率4.4%↑と低
い)。恐慌と金融崩壊後の株価上昇が、いかに激しいか分かります。

時々刻々と、金融の情勢(=マネーの動き)が変化しています。
こうした危機の時期、人の心理は、経済指標より大きくブレ、変化し
ています。危機が終わったあとは、成長が来る。これが経済の長期サ
イクルです。暗いトンネルには、先があるのです。

米国では、6%のインフレと、わずか0.25%、ユーロでは0.5%の、微
妙な金利の変化で、預金への不安心理が揺れているのです。インフレ
が9~10%、金利が3.5%の欧州は米国より深刻です。しかし、伝わっ
てくるヨーロ危機の情報は少ない。そのコアは、資産・負債で欧州1
のドイツ銀行です。

有料版は、水曜日(4月5日)に送ります。

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