1億人に超人気の、chatGPTを試してみた(2)
This is my site Written by admin on 2023年3月12日 – 17:00
■1.chatGPTを試してわかった、その構造

chatGPTを使うと、問いへの、現在の多数派の見解がどんなものか分
かります。構造原理的には、「有限と仮定した要素の振る舞いの、線
形論理で作っています」。線形とは方程式のことです。

分かり易く言えば、18世紀の医師、唯物論のラ・メトリ風な「人間機
械論」が前提にあります。

<37歳のとき著した『人間機械論』は、霊魂の存在を否定し、デカル
トの動物機械説を人間にも適用し、機械論的な生命観を提唱した。
ラ・メトリはその著作で、足は歩く筋肉であり、脳髄は考える筋肉で
あるとした。100年近く前にデカルトが唱えていた人間を精神と肉体
とでできた機械(デカルト的二元論)と見る発想よりも「機械論」に
徹していた> Wiki-Pedia

人間機械論は、「ロボットが進歩すれば人間を代用できる」とするも
のです。なお当方は人間機械論を否定します。人間には概念や観念が
あるからです。

人間機械論に対抗するものとして、複雑系の論があります。

経済、気象、社会、個人の考え、金融は、複雑系だとするものです。
これは科学的方法での、検証の否定ではない。

◎要素が多すぎ、数式(線形論理)にはできないとするものです。そ
の複雑系を、数式で表すものが確率です。

振ったサイコロの一見では単純に見える動きにも、力学的な運動の要
素が多すぎて、数式にはできない。これが、複雑系です。

サイコロを振ったときの未来は6分の1に収束していく確率でしか捉え
ることができない。次にどの目が出るか、スーパーコンピュータでも、
線形の予想ができない。ラスベガスが成り立つ理由がこれです。

複雑系のものによって展開される未来は、有限知しかもたない人間に
とっては確率です。(注)神の視点では、未来も確定しているかもし
れない。

株価も、確率的な標準偏差の幅(VI:ボラティリティ・インデック
ス)をもってランダム・ウオークをする、複雑系のものです。科学的
に複雑系であるのが株価です。だから、株と債券には売買市場があり
ます。

【砂漠の事例】
砂漠は、有限ではあっても無数の砂粒です。1個の砂粒の、風での動
きは複雑系です。どこへ動いていくか、運動の方程式では、予想がで
きない。ところが全体を見ると、不思議な現象があります。

大局を眺めると、誰が設計したものでもないアート(=人工)に見え
る「風紋」ができています。ドバイで見た砂漠にも、見渡すかぎり、
風と砂が作った、風紋がありました。

この風紋は、「ランダム・ウオークする複雑系の秩序」でしょう。
しかし、複雑系のものは、予想ができない動きをします。どこにどん
な形の風紋ができるのか、事前には予想ができない。株価も、いつど
れくらい上がるのか下がるのか、おおざっぱな確率でしか言えない。

【気候変動の問題】
二酸化炭素の増加が原因とされ気候変動問題になっている気象も、複
雑系です。(注)当方は、主流派が言う二酸化炭素原因説には疑問を
もっています。

【新型コロナ・ウイルス】
新型コロナ・ウイルスの変異とその動きも、科学的ではあっても。数
式の線形論理を超える、複雑系です。

すでに収束したのか、2023年の6月ころからワクチンに耐性をもつ変
異からパンデミック(感染の蔓延)になるか誰も予想できない。ワク
チンの副反応も、わかっていない。超過死亡数も、わからない。

複雑系のコロナパンミックの予想と、その波及の、経済的に影響が予
想できないと、複雑系であるGDPの、2024年、2025年の予想もできな
い。これが、現在の世界の状況です。

コロナは終わったということが、現在の経済予想の、コアにあるもの
です。本当に終焉したのかどうか、わかってはいない。ワクチンに対
耐性のある予想のできない変異すら、ウィルスは行うからです。

▼chatGPTの回答

chatGPTに「複雑系」を訊ねてみます。どんな回答をするか。そのま
ま転載します。なお、同じ問いでも、chatGPTは答えを変えるので、
気に入った内容が出るまで類似の問いをすればいい。

「その答えは間違っている」と指摘すると、すぐに謝ってきて、回答
を微妙に変えます。該博な知識の百科事典的な人間と話しているよう
な錯覚に陥ります。百科事典は、その時代に認められた定説を集めた
ものです。真理とは言えない。仮説である定説です。

このchatGPTとの対話は、自分の考えを深めるのに有効です。
無料の大学教授との、セミナーでの対話のような感じ。

大学の教授は、多くの場合、学界の主流の考えに染まっているからで
す。「日銀の量的緩和の効果」について質問すると、以下の、答えを
しました。

<chatGPTの回答:
日本銀行(日銀)が2013年から実施している量的緩和政策は、日本経
済に大きな影響を与えました。この政策は、長期金利を抑え、株式市
場を支援し、インフレ率を上昇させることを目的としています。

結果的に、量的緩和政策は、景気回復や物価上昇の加速に貢献しまし
た。例えば、GDPは緩和前の2012年に比べて、緩和の2021年には約20
%も増加しています。物価水準も緩和前の2012年に比べて上昇し、消
費者物価指数は2013年以降、年率で約1%の上昇を続けています。

ただし、量的緩和政策は、長期的な副作用も懸念されており、その効
果が限界に達したり、逆に経済に悪影響を与える可能性もあります。
したがって日銀は、政策の適切なバランスを保ちながら、経済の安定
的な成長を目指す必要があります。>

「長期的な副作用」に触れています。これが、米国メディアの考えで
しょう。総合誌『文藝春秋』のレべルと、ほぼ同じです。普通のイン
ターネット記事や論は、chatGPTの登場で、意味を失っていくでしょ
う。chatGPTで「定説を教え、テストするだけの学校」は、要らなく
っていくと考えています。本当は、学校は、ソクラテスの対話のよう
に、「定説の答えではなく、質問を教えなければならない」。しかし
それは、普通の教師には余ることでしょう。

インターネットの百科事典、wiki-Pediaの答えを、要領よく要約した
ものと考えれば、当たっていますね。

<chatGPTの回答:
複雑系(ふくざつけい、英: complex systems)とは、多数の相互作
用する要素が存在し、その相互作用が局所的なルールに従って行われ
ることで、大域的な現象や特性が生じるシステムのことを指します。

複雑系は、自然界や社会システム、経済システムなど、様々な分野で
見られます。複雑系の特徴としては、以下のようなものがあります。

・多数の相互作用する要素が、存在すること
・相互作用が、局所的なルールに従って行われること
・大域的な現象や特性が生じること
・系統的な予測が、困難であること
・急激な変化や、相互作用のフィードバックが生じること

複雑系は、従来の単純なシステムとは異なり、非線形な相互作用や不
確実性、ランダム性が含まれることが多く、解析が難しいことがあり
ます。(吉田(注))この非線形が確率です。

しかし近年では、計算機の性能や数学的手法の発展により、複雑系の
解析やシミュレーションが可能になってきています。>

(吉田(注))気候変動の二酸化炭素犯人説は、単純な気候モデルを
コンピュータ上に作ってシミュレーションし、推論されたものです。

現実の複雑系の気象と多地点の温度が、計測されたものではない。パ
ラメータの設定によって生じる「誤差」があります。二酸化炭素の発
生と、時々刻々と変動しているはずの地球の自然(海、雲、雨、植
物)での吸収量は、計測されていないからです。

■2.米銀の破産が始まった

「複雑系の、急激な変化や相互作用のフィードバック」が生じたこと
によって、カリフォルニアで起こった局所的な破産について、書きま
す(23年3月3日)。

【根本的なこと】
◎ここで書く理由は、インフレを抑制することが目的であるFRBの利
上げ(短期政策金利4.75%:現在)を起点にする「世界的な金融危機
の始まり」になるかもしれないからです。

今はまだ、局地的なハリケーンです。
広域の台風になっていくかもしれないと感じています。

【金利の上昇による国債の時価の下落】
金利の上昇による米国債価格の下落(発行額面31.4兆ドル→約23.9%
下落=7.5兆ドル:975兆円)が、
1)米国債をもつ金融機関全体の、含み損になっていて、
2)売られたものは、その含み損が会計上の損失になっていることで
す。

【31.4兆ドルの、ドル国債の含み損の計算】
国債31.4兆ドル×(1.0125の8乗)÷(1.0475の8乗)= 31.4×(1.
104÷1.449)= 31.4×0.76=23.9・・・31.4-23.9=7.5兆ドル
(23.9%=975兆円)の含み損。

下がったのは、米国債だけではない。
全部の、固定利回りの債券です。

国債以外で大きなものは、
1)不動産ローン担保証券(主なものはMBS:10兆ドル:1300兆円)、
2)社債(推計12兆ドル:1560兆円)、
3)複合組成証券(合計額は不明)、があります。

(米国の社債市場:ゆうちょ財団:2019年時点)
https://www.yu-cho-f.jp/wp-content/uploads/shasai_honbun2_3.pdf

大枠では米国債31.4兆ドル、国債以外の債券30ドル、合計が60兆ドル
規模(国債の2倍)と見ていい。

◎コロナ対策の金融緩和によって、米国GDPの2.4倍に膨らんだ、60兆
ドルのドル債券が、23.9%下がると「60×23.9%=14.3兆ドル
(1860兆円)」の含み損になります。

含み損は、金融機関が所有する債券を売る前の、簿外の損です。
売ったとき、実損になります。

1860兆円の含み損は、
・2023年3月の米国の銀行資産に60%、
・世界の銀行資産のなかに、40%が隠れています。

◎金融機関のB/S(貸借対照表)には、1860兆円の大穴があいていま
す。金融機関は、現在、開示されていない中身に空洞がある「張り子
の虎」です。
(注)ドル債券は、米国内が60%、海外が40%をもっています。

◎米国の金利が下がらないと、「ドル債券の、売る前の含み損+売っ
てB/Sに現れた実損=1860兆円」の金額は減りません。
↓
この含み損は、毎月の売買で、時間の経過に正比例して、増えていく
実損になっていきます。

60兆ドルの国債と債券の時価が、約24%下落していても、津波が来る
前の「凪(な)いだ海」のように、世界の金融市場は静かです。

◎債券下落の津波は、実損の臨界点になると、静かな海に突然現れ、
金融市場を覆い尽くします。そして金融市場の海から、預金をもつ陸
の企業、債券投資家、世帯に及んでいくのです。銀行の損は、結局、
預金者の損になるのです。

■3.シリコンバレー銀行の破産(2023年3月10日)

今週、ドル債券の下落という津波が、全米で16位のSVB(シリコンバ
レー銀行)の総資産2090億ドル(27兆円)に及んだだけです。

【今後】
1年前の2022年3月からの、急激な金利の上昇(約4ポイント)による
ドル債券下落の津波は、
1)米国の全部の銀行・保険会社・年金基金・ファンドと、
2)米国債とドル債券をもつ、世界の銀行と中央銀行にも襲うでしょ
う。
(米国の政策金利:2018-2023年2月:現在は4.75%)
https://www.gaitame.com/markets/seisakukinri/newyork.html

【2023年中は、FRBは、利下げを行わない見込みになった】
2023年の秋以降の、米国の金利が下がる可能性(国債価格が上がる可
能性)は低下しました。2023年3月のFRBパウエルの、議会での公聴会
で、物価上昇は執拗であり利上げが必要としたからです。
↓
国債と債券の1860兆円の含み損は減らず、毎週、毎月、金融機関の相
互で保有国債と債券を売ったときの実損が増えています。

【債券の売買市場は、巨大】
国債と債券の売買は、銀行やファンドの間で行われてます。日本の公
社債市場では、1日に、約100兆円(年間2500兆円:国債は2回転)の
国債が売買されています。東証の株式市場(2.5兆円/日)の売買の、
40倍と巨大です。

米国では、推計ですが、日本の4倍の400兆円/日でしょう。

◎ドル債券の含み損の総金額は、1860兆円と巨大です。
これは、米国の全部の銀行が、不良債券の核兵器が落ちたかのように
壊滅するスケールの不良債権です。

ゼロ金利~低金利のとき発行された国債(米国では31.4兆ドル
(4080兆円):日本では1200兆円)は、金利が上がると価格(価値)
が下がる不良債権になるのです。

ところが・・・世界の全部の銀行とFRBとECB、そして日銀は特には、
当行のB/Sは平穏だ・・・・大丈夫だと、含み損の数字の根拠を示さ
ずに、言っています。これが、銀行の本性です。

【銀行の社会的な本質】
銀行は、どんなときも「当行の資産は安全」という義務がある機関で
す。安全ではないとCEOが漏らせば、メディアに載った瞬間から預金
のとりつけ(多額の預金引き出し)が起こって、潤沢な流動性があっ
てもつぶれるからです。

シリコンバレーバンク(SVB)では、CEOは「当行は増資するから大丈
夫」と言っていまいした。しかし増資ができない(=増資株の買い手
がいない)ため、預金取り付けが起こったのです。

普通の時期は、銀行は鋼鉄のセフティ・ボックスであり、ゴミ箱では
ないと、預金した人々は信じています。その鋼鉄が、錆びてボロボロ
になっていたのです。

銀行ににはデジタルの数字を記録した、コンピュータしかない。金利
がつく金融資産である国債、株、債券、預金、暗号通貨は、デジタル
化されています。顧客にとっては、自分の預金とつながったクレジッ
トカードや小切手が現金です。

支店には、今日のドル札の現金は、わずかな金額しかない。30万ドル
くらいか?・・・鉄道の時代のクラシックな銀行強盗をしても金庫は
カラです。現代の銀行強盗は、北朝鮮が数十億ドル/年はいっている
とされる、ハッキングです(政府の約3000人のハッカー集団)。

■4.シリコンバレー銀行の破産の内容(SVB:総資産2090億ドル:27
兆円)

シリコンバレー銀行(SVB)は、主に、ITベンチャー企業が預金して
借りている大手銀行です。

1)2021年の、FRBの利上げの前には、債券の含み利益が1000億ドル
(13兆円)ありました。

2)2022年の3月から、FRBが急激な利上げ(合計4ポイント)をしたと
き、売却前の債券の含み損は、7000億ドル(91兆円)へと、現在の総
資産2090億ドルの、3.3倍に膨らんだのです。

まさに風船または「張り子の虎」です。外形と建物は2021年と同じ姿
で存在する。資産の中身には、外形の3.3倍の、不良債券の空洞があ
る。

これを垣間見た、あるいは聞いた預金者は、どうするか。

シリコンバレーのベンチャー企業にとっては仕入れ代金、給料、経費
支払い用の預金が危険なので、引き出しに殺到するでしょう。SVBで
は、瞬間に、現金が枯渇します。
↓
SVBは、FRBの利上げにより大きな含み損を抱えた資産、つまり、ドル
国債と債券を、時価で売って現金にするしか方法はない。

事実、SVBは、損を出して売りました。資本である株価も1日で60%下
がったのです。現在は、売ろうとしても買い手はない株価は、ゼロド
ルでしょう。金融機関は、他の業種と違って「突然死」するのです。

結果は、資産の含み損が資金繰り上の損になって、1週間で破産し、
FDIC(米国預金保険会社)の管理下に、はいったのです。FDICが、預
金者に支払うという形態です。

以上が、報道されているSVBの、破産です。
ここで、読者は容易に気がつくでしょう。

◎「SVBだけではない。国債と債券の、時価の下落での含み損(1860
兆円)の60%を抱える米銀、40%抱える外銀に及ぶだだろう」
(注)メディアは、ここを言いません。

SVBは、民間金融の、終わりの始まりの序曲になるでしょう。
歌劇でも、最終的な破局は、平和に始まる序曲では見えない。
推理小説でも同じであり、巧妙に隠した伏線しかない。

■5.リーマン危機のときの、銀行のシステミックな危機への、FRBの
対応(複雑系へのFRBの対応)

こうしたことが起こると、中央銀行は、普通、「山一證券特融」のよ
うな、無担保の緊急融資をします。

◎金融機関は相互に債権・債務を持ち合っているので、1つの銀行の
破産が、銀行システムのシステミックな危機に、発展していくからで
す。

2008年のリーマン危機は、サブプライム・ローンとCDS(債権の回収
保険の高騰)による、システミックな危機の初回でした。

CDSは、保有する国債を含む債券の、回収を保証する金融保険です。
債券の価格が下がると、CDSは高騰します。

【銀行は、複雑系の銀行システムである】
金融機関のイメージは、
・Aのタコツボ(銀行)の横腹に穴を開け、
・相互信用のパイプ(マネーの輸送路)で、B、C、D、E・・・に無限
につながったタコツボの複雑系のシステムです。

◎現代の銀行の実体は、複雑系の銀行システムです。
・ネットワークでつながった個々の銀行には、実体はない。
・インターネットのノード(結節点)のようなものです。
・全部のノードつながったシステム(回線の系)が、インターネット
の実体です。

この意味は、
・資産規模が大きな1つの大手銀行(ノードのコンピュータ)が支払
い不能になって破産すると(通信の停止のように)、
・15年ぶりのリーマン危機になるということです。

今回、銀行とファンドの総負債のスケールが、リーマン危機のときの
2.5倍にはなっているので不良債券も2.5倍でしょう。

2008年9月からのリーマン危機では、中央銀行のFRBが、
・時価が下がった国債とMBS(不動産ローン担保証券)を、
・簿価の額面で買い上げて、
・金融機関に損がないようにして、
・ドルを増刷したのです。総金額は3兆ドル(390兆円)でした。

◎FRB金融の複雑系を単純化すれば、金融機関の損をFRBに移転させた
ことと同じです。

当時の総資産(=ドル発行高)が1兆ドル(130兆円)だったFRBには、
15年前は3兆ドルの信用創造(ドルの増刷)をする余力がありました。

■6.リーマン危機のときの、米国への、海外政府の協力

リーマン危機のとき、日本・中国・欧州も利下げをし、金融を緩和し
て、米ドルの実効レートが下落するなかで、損をすることが決まって
いる米国債と債券を買って、米国政府とFRBを助けたのです

これが、ドル基軸を支える複雑系の国際協力です。

1)米ドルの実効レート(世界の通貨に対するドルレート)は、2008
年9月110→2012年1月95へと14%下げています。
(ドル、ユーロ、円、人民元の実効レート:1970-2023.年1月)
http://honkawa2.sakura.ne.jp/5072.html

2)ドルとは逆に円の実効レートは80→105へと、31%も上がったので
す。

日本円では、このドル国債買いで、45%の損です。
2008年の日本にも、ドル国債で損をする余力があったのです。

3)国債や債券の5%以内の金利より、いつも、為替差損(または為替
差益)がはるかに大きい。この意味で、海外債券は、株と同じリスク
資産ですが、会計上は、安全資産とされています。

◎金融機関の制度会計は、本質的なところで、国民に信用を売る金融
機関にとって都合のいい「まやかしだらけ」です。

【金融業の本質】
低い短期金利を付けて信用(クレジット)を売ること(=預金=短期
マネー集め)が、金融機関の商売だからです。

◎金利の低い短期マネーを、比較金利の高い長期マネー(国債、債券、
貸付金)として運用することが、金融業の本質です。

■7.FRBは、2023年内に、利下げとドル増刷ができるのか?

米国と世界の金融機関とファンドに生じている、ドル国債と債券の含
み損1860兆円は、FRBが利下げをして、ドルを増刷しないと減りませ
ん。

◎2023年中に、FRBが4.75%から2ポイント(%)の利下げをし、売っ
ているドル国債を買い戻し、金融機関に数百兆円のドルを貸し付ける
ことができるかどうか?

事態は逆です。2023年3月のFRBの利上げは、当初の観測の0.25%から
0.50%に上がり、今より引き締める予定に変わっています(FRBパウ
エル議長の発言の含み)。

原因は「米国のインフレを約5%分は生んでいる失業率の低さ」が解
消していないからです。

3年間のコロナで復職率が減り、リモート・ワークが全業種に激増し、
賃金は5%から6%上がっているからです。失業率は3.4%という低さ
であり、完全雇用です。

失業率が5%くらいに増えて、賃金の上昇が止まらないと、インフレ
は収まらない。米国の失業率は、政府のコロナ支出5兆ドル(650兆
円)で、極限に低くなっています。労働市場が「求職者数>求人数」
にならないと、賃金は下がりません。

◎米国の賃金上昇率はコロナ前2%だったのです。「2%台の賃金上昇
→2%台の物価上昇」でした。日本は、「0%台の賃金上昇→0%台の
物価上昇」でした。

「ドル信用」という問題もあります。

1)FRBが、インフレのなかで利下げをして、
2)金融機関救済のために、金融機関がもつ国債と債券を発行額面で
買って、米ドルを仮に5兆ドル(650兆円)増刷すればどうなるか。

ドルが暴落し(たぶん1ドル=100円以下)、
・米国の輸入物価は高騰し、
・商品輸入に頼っている米国の店頭物価は、
再び8%、9%、10%と上昇していくでしょう。

米国に長年住んでいる人の感覚では、衣料、耐久財、食品スーパーの
価格は、コロナ前の約2倍に上がっているという。長女からのライン
です。卵もパックで7ドル、10個で1000円です。目玉焼きが200
円・・・

つまり、
・インフレ(本質はドル価値の下落)のなかでの、
・FRBの利下げとドル増刷は、一層、ドルの価値を下げて、
・インフレを増幅するのです。

以上から2023年には、FRBは、利下げと大きなドル増刷は実行できな
い。

その結果は、どうなるか?
第二のリーマン危機でしょう。

【94年前の、大恐慌に類似している】
今回は、FRBの介入という、15年前は有効だった救済策のない危機で
す。多くの金融機関がつぶれ、窓口が閉鎖された1929-33年の「大恐
慌」のようになっていく可能性があります。

◎こうなると下がるドルに対して、金価格、円、スイスフランは上が
っていくでしょう(2023年の8月くらいからと予想)。

米国の金融危機が、日本より1年早く来た感じがしています。これが、
コロナ危機とウクライナ戦争の、金融的な帰結でしょう。

以上が、本稿での「複雑系の銀行システム」の予想です。

■8.結論:銀行の国有化

世界の金融機関は、2024年から、どうなっていくか。
当方は、中国のような、大手銀行の国有化を提唱します。
(注)民間大手銀行がFRB、ECB、日銀と一体化するということです。
事例は、中国の大手銀行です。

通貨信用(実効レート)が上がるか、下がるかは、わからない。
しかし、国有化しか他に方策がない。

1997年からの日本の金融危機に対して、政府がとった政策は、21行の
都銀を3行に統合し、政府の資本をいれることでした。

預金のゼロ金利(銀行の短期マネーのコストはゼロ%)をしいても銀
行資本の回復には、2010年まで13年を要したのです。

現在、3大メガバンクの資本は、日米ともに、A+格の国債と債券を含
む総資産の5%です。18の都銀が、事実上、つぶれたといっていい。

今回は、「この方法+政府資本での国有化」までいかないと、リーマ
ン危機の、2.5倍の金融の津波は収まらない。

◎中央銀行が、コロナ危機への対策(財政の拡張+通貨の増発)でそ
の信用を使い尽くしているので、政府信用をいれるしか方法がない。

ドルと世界金融において、戦後77年の賞味期限が切れた体制が「転
覆」する時代が、2023年の夏から2024年、2025年でしょう。
最終的な決着には、2年半はかかるでしょうか。1929年の株価暴落か
ら始まった大恐慌のときは、1929年から33年までの4年かかっていま
す。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
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