経済・金融の焦点はインフレ率の動向
This is my site Written by admin on 2022年5月23日 – 12:00
2022年、23年の経済と金融の焦点は、インフレの動向です。
株価を下げている金利もインフレ率を後追いするからです。

今回のインフレは、
(1)コロナショックによる部品と商品生産の、サプライチェーンへ
障害から始まりました。時期は、2021年4月からです。
(2)22年2月からは、ウクライナ戦争の勃発による、ロシアからの禁
輸措置が加わっています。ロシアはエネルギー・穀物・資源の輸出国
だからです。

結果は、西側世界にとっては、1979年から80年の「第二次石油危機」
相当の物価の上昇です(米国8.3%:欧州7%台:日本2.5%)。

世界の株価も、金利の上昇とスタグフレーション不況の予想から、大
恐慌以来90年ぶりに8週連続で下落して暴落の寸前に至っています
(暴落≒マイナス30%でしょう)。

1929年の、大恐慌のときの株価(マイナス70%)ほどではなくても、
IT株バブルの崩壊(2000年)とリーマン危機(2008年)のマイナス
50%には行く可能性があります。

株価のファンダメンタルズは「物価→期待金利と期待純益」です。1
年先の株価の予想には、短期のテクニカルではない、中長期のファン
ダメンタルズである物価と金利の予想が欠かせない。

「インフレはない」といわれてきた40年の状況が、サプライサイドの
2つの障害から一変しました。内容は、デマンド・プルではなく、2回
の石油危機以来の、コストプッシュ型のインフレです。
2022年は、特別な年になるでしょう。

コストプッシュ型の資源インフレは、金利の上昇や、マネー量の収縮
(QT)では止まらない。資源の供給障害を取り除くしか方法はない。
金利は、市場の期待インフレ率を追って、上がっていきます。

米国と日本のインフレの様態と内容は違います。米国では、賃金の5
%上昇があるなかで、消費者物価は8.3%上昇しています。消費財の
購買力を示す実質賃金はマイナス3.3%です(22年4月)。

(1)物価が7%から8%台上がるなかで、米国の消費が好調に見える
のは、低金利のなかで、まず、世帯負債の増加があるからです(増加
額3130億ドル:40兆円:世帯債務残高15兆ドル:1950兆円)。

(2)2番目に、コロナ危機のあと、年率20%の住宅価格の上昇があっ
たからです(22年10月:2年で40%)。

ただし、金利が3%と低い住宅ローンが価格を上げてきた住宅価格は、
金利が5%に上がり、価格をピークアウトさせました。米国のGDPを支
えてきた旺盛な住宅需要は、リーマン危機に似た、下落の初期にある
と判断できます。(米国住宅価格:全米20都市のケースシラー指数)
https://frontier-eyes.online/realestate_usa/

リーマン危機も、金利の上昇が起点になり、不良債権の増加が住宅
ローン証券下落(-40%)の引き金を引いたのです。

今回は、コロナ危機後の2年のマネー増発で、住宅価格は40%も上が
っていますから、金利の上昇とマネー量の減少から、住宅ローン証券
の価格は40%下落の可能性は高い。住宅ローン証券の下落は、リーマ
ン危機と同じタイプの、米国金融危機の始まりになります。

本稿は、有料版・無料版に共通の増刊号です。有料版の正刊は、水曜
日に定期送信しています。

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<Vol.1237:日曜増刊:経済・金融の焦点はインフレの動向>
    2022年5月22日:有料版・無料版共通

【目次】

■1.物価をとりまく所得、不動産、金融資産
■2.穀物価格の上昇とその要因の分析
■3.2022年秋からの物価予想

【後記】

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■1.物価をとりまく所得、不動産、金融資産

米国と違って、日本世帯の所得上昇は、0%付近のままです。もっと
も上がっている東京都区部のマンション価格の上昇は、前年比2.1%
と、米国、欧州に比べれば穏やかなものです。

日本の住宅価格は、すでに中国・韓国の都市部住宅より低くなってい
ます。ひとり米国が異常です。親族が約1年前、マイアミに住宅を買
ったようです。今はまだ上がっています。2023年はどうか? 残念で
すが、下がる可能性が高い。冬にも泳げるくらい暖かいマイアミは、
100年前から、全米1の不動産価格の高騰と下落を繰り返してきたとこ
ろです。

日本の2022年4月の、直近の、消費者物価上昇は、総合で2.5%でし
た。1月の0.5%からは、2ポイント上げています。

一方で、インフレ率を引いた世帯の実質所得は、マイナス2.5%です。
米国の実質賃金のマイナス3.3%とあまり変わらない。
実質賃金は、面白い動きをします。新興国を除く世界がほぼ一緒です。

ただし2.5%の物価上昇でも、所得が増えない日本では、米国より不
況感は深い。賃金が上がらないことが、心理的には重いからです。
https://frontier-eyes.online/realestate_usa/

今回の物価上昇は、国際コモディティのコストプッシュ型です。
エネルギー、穀物、油脂で価格上昇が大きい。贅沢品の選好財ではな
く「生活の基礎資材」です。

◎長期金利0.25%を上限とする金融緩和(指し値オペ)を続ける日
銀は、賃金が上限で1%しか上がらず、デフレ体質が続く日本の物価
上昇は、2023年には、1%に収まるという楽観的な見通しを示してい
ます(日銀の見通し)。

別の面からいえば、日本経済には、需要の面で物価が上がる条件が少
ない。日銀予想(2023年の物価上昇は1%)の裏にあることがこれで
す。

果たしてそうか?を検討します。経済統計と経済予想の根幹は、物価
です。40年のディスインフレで、これが忘れられていました。

需要を決める賃金の上昇は、日本では2023年も0%付近のままで変わ
らないでしょう。

供給側での、
・品目別の物価上昇と資源輸入の関係、
・日米の金利差から来る円レートを予想しなければならない。

[米国住宅ローンという他の要素]
米国では、住宅価格の推移の、物価への影響が、日本よりはるかに高
い。
住宅ローンが1500兆円と大きく世帯のクレジットの負債が大きいから
です。

住宅ローンを含む世帯の債務は15兆ドルと大きい(1950兆円:1世帯
平均2000万円) 他方、日本の世帯の負債は385兆円(世帯平均700万
円)であり、世帯の負債総額は米国の約1/5でしかない。

一方で、日本の世帯の金融資産は、2003兆円です(1世帯平均3800万
円)。
・内訳は、現預金(1092兆円:55%)、株式・投資信託(332兆円:
17%)、保険・年金基金(540兆円:26%)、その他(60兆円)です。

1億の米国世帯の金融資産104兆ドル(1京3000兆円:日本世帯の6.5
倍)に比べ、株が少なく預金が多い(注)GDPでは米国が日本の4.2
倍です(2020年)。

日本人は、住宅ローン、車ローン以外の消費では借入をしません。米
国では一般の買い物での、クレジットカードの使用率が高い。スー
パーでの消費財の購入すら、クレジットカード・ローンも多い。

個人消費は、米国ではGDPの70%、日本では55%付近と少ない。
米国では、金利が上がると消費も減ります。
日本では、金利の上昇は住宅のローン需要は減らしますが、消費財に
は無関係です。ただし株価やビットコインの下落は、高級品の需要を
減らします。

一方で、金価格の上昇があっても、消費需要は増えません。金保有は、
株価下落と円安で減る金融資産の防衛だからです。ポートフォリオで
は金はヘッジが多い。

ただし、日本人の金の買い越しは、世界1少ない。円と銀行への信用
度が高いからでしょう。金買いは、本質的面では、自国通貨への不信
から来ます。表面ではあれこれいっても、日本人は政府、日銀、銀行
を信用する点で世界1だからでしょう。

約20年のデフレは、円の価値の上昇(または維持)でした。
しかし、円安+インフレになると、ここがどう変わるか?
日本、スイス、ドイツ以外では、インフレは経済の常態でした。

封建王朝の興亡が歴史である中国人は、ときの政府・人民元を信用し
ていないように見えます。海外に出る華僑が多い。沿岸部の3000万の
世帯には複数の住宅、外貨、ビットコイン、金の保有者が多い。現代
中国も、共産党独裁の王朝制でしょう。

全国土の土地は政府の所有です。税収の代わりになっているのが、
99年や70年などの期限付きの、土地使用権の売却代金(払い下げ)で
す。

日本では相続税が高い。評価価格(路線価)の30%くらいは「政府の
もの」でしょう。相続資産が1億円以上の税率は40%~50%、6億円以
上の部分は55%と高く、納税は現金なので、6億円以上ではほぼ資産
の没収になります。このため、不動産と金融資産は二代とは続かない。
日本の財務省は「大きな相続資産は国のもの」という意識でしょう。

ラスベガスがあるネバダ州にはカジノの収入があるため、相続税と在
庫税がゼロです。他の州でも、相続税は1140万ドル(14億円)以上の
資産にしかかからない。

米国では、普通の人にとっては、相続税はゼロという感覚です。日本
は、普通の人にもかかります。国家の、個人資産への見方に日米では
違いがあります。

■2.日本の物価上昇の分析

総務省統計局はもっとも大切な仕事として、毎月、物価指数を集計し
ています。22年4月分が最新のものです。この集計に沿って物価上昇
の内容を分析し、エネルギー・穀物の、新しい動きを加味して、予想
します。

まず、22年4月の消費者物価は、前年同月比で2.5%上がっています
(総合)。2020年の、携帯電話の約50%の値下げ効果(物価では1.
5%)が切れてきたからです。急に2.5%上がったのではなく、21年
9月からプラス圏にあったのです。

生鮮とエネルギーを入れないコアコア物価では0.8%の上昇でした。
近年では、初めてのプラス圏に上がっています。
https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html

食品では、生鮮野菜+12.2%、生鮮魚介+12.1%、生鮮果物+1.
2.2%と二桁台に高い。揚げ物に使う油脂では+6.1%です。スー
パーでは、唐揚げが上がっています。生鮮3品の二桁上昇は、家計に
とっては痛いでしょう。

光熱費では電気代が+21.4%、ガス代が17.5%上がっています。
2021年から原油・LNGが上がったからです。

家具・家事用品は+5.0%、冷蔵庫は+16.0%です。日本の家電の
生産工場が多い中国・東南アジアでの、コロナによる工場停止とコン
テナ物流費の上昇からです。

ガソリン代は+15.7%です。政府の石油会社への補助金(物価抑
制)からであり、本体では25%は上がっています。

【政府の原油価格・物価高騰等総合緊急対策は、物価を下げる要素】
岸田内閣の、物価高対策の総事業規模は政府6兆円、関連支出を含む
と13.2兆円という大きなものです。事業者にマネーを渡して出荷価
格を押さえる目的の、政府支出です。

これが、物価上昇を抑えれば、5300万世帯の1世帯あたりでは、1か月
2万1000円になります。1か月平均での家計消費は28万円くらいですか
ら、13.2兆円は、消費者物価を7.5%も下げる補助金に相当します。

なぜこうした「巨額な補助金」が多様な形をとった事業者補助として、
実行されるのか。目的は輸入物価が30%上がっても、消費者物価への
転嫁は抑えるためです。

この手段が執(と)られる理由は、消費者物価が8.5%上がっている
中で、長期金利が3%台(22年5月)のに乗った米国と同じにしないた
めです。

22年末の米国長期金利は、5%台でしょう(短期金利は3.5%か)。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/genyukakaku_bukkakoutou/pdf/honbun.pdf

驚くことは、日本の消費者物価も、仮に13.2兆円の物価抑止補助金
がなければ、7%台に上がっていたことです。長期金利も、米国並み
に3%台だったでしょう。このナマの物価上昇が、生鮮3品(野菜、鮮
魚、果物)の物価上昇の12%台に現れているものです。

2013年度にも、13.2兆円の物価抑制補助金を出さないと、日本の物
価は6%台、7%台に上っていくでしょう。

わが国の物価予想では、物価の統計には出ない、特殊な補助金13.2
兆円が欠かせません。(注)政策名称はコロナ下の「原油価格・物価
高騰等総合緊急対策」です。

はっきりいうと、13.2兆円は政府支出にとっては、国債の金利の1%
上昇を、金融統計上は帳消にして、財政支出の増加に転嫁する目的も
のです。
この事業者補助金をなくして、消費者物価が7%上がり国債の金利が
1%上がると、政府の利払いは12兆円増えるからです。
「1200兆円の国債残×1%の金利上昇=利払いが12兆円増加」です。

交通・通信費では、-10.9%です。22年4月も、2020年の、携帯電話
への、菅首相の声かけによる値下げが、効いています(「世界に比べ
2倍は高い;スマホ型携帯は1人8000円から1万円→現在4000円」)。

22年5月、6月は、前年比のときの携帯電話効果が切れて、これが0%
から3%の上昇になっていくでしょう。全体の物価では0.3ポイント
くらい上げる要素になります。

■2.穀物価格の上昇とその要因の分析

穀物(小麦・コーン)は全部の、食品の基礎になるものです。

パン、袋もの菓子、お菓子、味噌、納豆、醤油、食肉・・・およそ全
部の食品の価格を決めものが、原材料の穀物です。国際貿易財であり
コモディティ価格の基礎は、穀物です。米を含む穀物は、コロナの
2020年の秋から上がりはじめました。

    2020年8月 22年4月 上昇倍率 平均年率
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
米      150   350   2.3倍  59%(貿易財の部分)
小麦     200   500   2.5倍  66%
トウモロコシ 450   430   0.96倍 -3%
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
https://ecodb.net/commodity/group_grain.html

上がっていないのはトウモロコシですが、貿易財の米は2.3倍に、小
麦は2.5倍に上がっています。実は2007年から、後発国の経済成長に
より(肉の消費の増加)、穀物価格は上昇傾向でした。コロナで、こ
の価格上昇が加速したのです。

鶏肉1kgの生産には約4kgの穀物飼料が必要です。豚肉1kgには8kgの穀
物が要ります。このため豚肉は鶏肉の約2倍の価格です(1kgあたり)。
生育が遅い牛肉1kgには12kgの穀物が必要ですから、鶏肉の3倍の価格
になります。肉も、穀物の価格が決めているのです。

穀物の大産地はロシアとウクライナです。西側への輸出は、ほぼ全面
的に止まっています。この禁輸措置が、国際的な穀物価格の上昇に反
映するのは、備蓄在庫が切れる6月くらいからでしょう。その後、穀
物価格は相当に上がるということです。

世界の小麦輸出の内訳は、以下です()内は世界シェア。
・ロシア   3726万トン(19%)
・米国    2613万トン(13%)
・カナダ   2611万トン(13%)
・フランス  1979万トン(10%)
・ウクライナ 1805万トン(9%)
・インド   1000万トン(5%)
2020年:FAOSTA

もう一点、重要な点があります。小麦生産では世界2位であり、1000
万トン輸出もしていたインドが、熱波の影響で不作になり国内価格が
上がっているため、2022年の輸出契約を停止することです。

この影響も価格上昇として、7月、8月から世界市場に出てくるでしょ
う。(注)ウクライナの2022年の穀物生産は、戦争による作付面積の
減少から40%は減るとされています。

更に言うと、肥料の大産地のロシア・ウクライナからの輸出は停止し
ています。世界では、仮に肥料を施さなくなると、穀物、野菜、果物
の生産量が50%に減るとされます。日本では、種や肥料は、ほぼ100
%を海外から輸入しています。

肥料価格は、ロシアのウクライナ侵攻からは2000年の100かから2022
年は350へと、3.5倍に上げています。肥料を節約すれば、収穫量が
落ちる。原価が上がって、出荷価格を上げざるを得ない。

穀物は、原油やLNG、電力と同じように、高くなっても一定量が必要
です。食品の基礎部分の値上がりは、農作物と畜産の、世界的なイン
フレの要素になっていきます。

世界的な生産不足の受け皿として期待される北米や南米でも、ロシア
などからの肥料の調達難と価格高騰による減産の懸念が出ているので
す。

各国の備蓄在庫が切れる2022年の夏からは、世界中が「穀物不足」に
なっていき、価格は高騰するでしょう。

すでに約2年で2.5倍に上がった小麦価格(2022年4月:年率66%)が、
2022年に下がる要素を見つけることができない。

何%上がるか、全く不明ですが、世界的な穀物不足が価格に現れるこ
ろ(22年9月、10月)には、3倍への高騰があってもおかしくない。穀
物生産は、「作付け~育成~収穫」まで、約6ヶ月はかかるからです。

日本では、22年秋からの食品全部の店頭価格を、10%から15%は上げ
る要素になっていくでしょう(円安分を加えれば、15%から20%
か?)。

現在の食品価格には、2020年、21年のコロナの影響しか入っていず、
世界の穀倉地帯の、2022年2月からのロシア・ウクライナで戦争の価
格への影響は、これから出てきます。

■2022年末から2023年の、消費者物価上昇の予想

◎日銀は、日本の物価上昇は、2022年は2%台に上がったあと、2023
年には再び1%台に下がると予想しています。銀行や投資家の予想も
日銀に準じているでしょう。

日銀の物価見通しが低いのは、長期金利0.25%を上限にした金融緩
和の正当化のためでしょう。2022年を3.5%以上と予想すれば、長期
金利0.25%の維持は、不当な政策になるからです。こうした、政策
のバイアス(偏り)があるでしょう。

日本の金融機関は、政府に従順です。最後には、政府・日銀が救済す
るというラストリゾート論があるからでしょう。資産の粉飾は、銀行
の習性です。不良債権の自己認定で預金者に不安を与えると、預金取
り付けが起こり、それだけで資産が優良な銀行も潰れるからです。
このため、金融庁の言いなりでもあります。

リーマン危機のあとは、西欧と米国の銀行破産ではベイル・アウト
(公的資金による救済)ではなく、公式には、ベイル・イン(株主負
担)という原則になっています。

「ベイル・イン(bail-in)」は、銀行が経営に行き詰ったとき(資
産信用の喪失)、預金保護の救済にかかる費用を、株主などに負担さ
せることです。この意味で、米欧の大手銀行は、物価、景気、不良債
権についても、独立的な見通しを出しやすい。

■3.2022年秋からの物価予想

本稿で書いた、これからの穀物価格などの要素を加味して、2022年
秋・冬の消費者物価(CPI)を予想します。

様々な政策名目の、物価抑制の補助金(年13.2兆円)の執行は、あ
るものとします。これがなければ、CPIベースで4~5ポイント(%)
は価格が上がるからです。8%上がっている「米国並みの狂乱物価→
財政破産」になっていきます(ユーロと英国のCPIも+7%台です)。

【品目別の加重値による、22年物価(CPI)予測】

          品目のウェイト 22年4月 22年10月     加重値
          実績      実績    予測    予測   
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・食糧     25.2%   4.3%    10.0%    2.50%
・住居     27.6%   0.5%     0.5%    0.14%
・光熱水道    5.6%   19.5%   15.0%    0.84%
・家具家事用品  3.6%   2.5%    3.0%    0.11%
・衣服履き物   3.7%   0.6%   2.0%    0.07%
・保険医療    4.7%  -0.9%  -0.9%   -0.47%
・交通通信   10.7%  -2.0%    3.0%    0.32%
・教育     4.7%   1.4%   1.4%    0.07%
・教養娯楽   9.4%   1.9%   1.9%    0.18%
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
以上合計      85.5%   2.5%  (3.76%)   3.76%

食品の世界的な供給制約から食品CPIの上昇を、2022年10月以降は、
穏やかに10%としました(現在は4.3%です)。他の分野では、現状
の傾向をそのままもってきました。

◎結果は、CPIの前年比3.76%です。ここにあげたのは、全部の消費
財の85.5%です。「3.76%÷0.855≒4.40%」が、2022年10月の
予想値です。

「2022年のCPIは+2%台」とする日銀予想の、約2倍です。
賃金が上がっていない日本で、4.40%のCPI上昇があるとどうなるで
しょう。

特に、年収400万円以下の世帯(約50%)では生活の苦しさが強くな
るでしょう。これは、戦後70年で、初めてのことです。大きく上がる
のは、価格が上がっても一定量が必要な食品です。

衣料や住関連商品では、価格が上がれば支出を抑えることができます
が、食品では、価格が上がっても一定量が必要です。すでに100グラ
ムの単価が高くなった牛肉は減って、安い鶏肉が増えるという変化が
起こっています。ところが、唐揚げに必要な油脂も上がっているので
す。

1973年と1980年の、2回の石油危機のときは、物価上昇に相当する賃
金の上昇がありました。2000年のIT株バブルの崩壊、2008年のリーマ
ン危機は物価は下がったので、生活の苦しさという面はなかったので
す。今回は違います。

【後記】
ウクライナ戦争が早期に終結して、世界貿易が正常化すれば、物価上
昇はこれよりは下がります。見通しはとうでしょう。

最短でも、2022年11月の米国中間選挙の結果が出るまでは続くでしょ
う。共和党のトランプは反軍産共同体(戦争の推進母体)であり、ゼ
レンスキーに、停戦と東部(ドンバス)の境界での、38度線のような
ウクライナ分割を求めると思われるからです。ここまで行かないと、
米国株価の回復はないでしょう。

ウクライナの戦況についての、メデイア報道が減っています。原因は、
報道とは逆に「ウクライナ不利」になってきたからでしょうか。バイ
デンの韓国・日本訪問も、西側の結束を強めるという目的をもってい
ます。韓国が、ロシア非難のトーンを低下させているからです。

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