アフターコロナの政府財政とマネー(1)
This is my site Written by admin on 2020年6月10日 – 10:00
おはようございます。先週号に対して多数のご質問、ご意見をいただ
いています。時間の関係で、全部には、基礎からの回答が難しいので、
本稿で書きます。

関心は、政府の財政問題、インフレ、財政破産の可能性、有利な投資
に集中していました。生活、収入、資産の将来を考える視点からでし
ょう。それらへの、数値論理的な回答です。

日・米・欧と新興国、つまり世界の国が、
・史上最大の政府予算を組み、
・その財源は国債の発行、
・さらにその国債は中央銀行が買い取ってマネー・プリンティングを
するからでしょう。

大戦争の戦費以外ではあり得なかった、世界の政府の、「借金による
財政拡張」です。日本の一般会計は、101兆円程度(2020年度:GDPの
18%)ですが、「総事業費」という分かりにくい概念でのコロナ対策
費は225兆円(GDPの41%:一次+二次補正)です。

二次補正は国会で審議中であり、「(マスメディアを支配する)電通
と子会社による20億円の中抜き問題」などが出て、まだ決定はしてい
ませんが、決定されるでしょう。

総事業費は、
(1)57.6兆円くらいの真水(一般会計からの補助金)と、
(2)167.4兆円くらいの無利子・無担保の貸付金と、劣後債(返済が
なく配当を払う貸付金)から構成されています。

225兆円は合計では、1世帯平均で計ると424万円という金額に相当し
ます(給付対象は企業と世帯ですから、世帯に行くわけではない。貸
付金が74%を占める総事業費のイメージです)。

総事業費の財源は、225兆円の新規国債の発行です(推計1.5年間)。
その225兆円は、ほぼ全部を日銀が買いとって、円マネーの増発にな
るでしょう。

260万社の企業と、5300万の世帯に、合計では、225兆円(GDPの5か月
分)のマネーが補助金として給付、または無利子貸付されるというこ
とです。

ここから当然、国税(1年に65兆円)の3.5年分の巨額支出を行う政府
財政の近い将来が問題になります。ところが、これについては、まだ、
世界の誰も触れません。当面は「可能な限り大きな対策費の支出」が
国民に対する正義であると政府は考えているからです。

〔余分なことですが・・・〕中抜き問題は、政府予算の執行に過去か
ら巣くっていたことですが、政府が急いだため、露呈したのです。当
方も、経産省(旧通産省)からの、システム開発の予算の受託に関与
していた時期があったので(1990年代)、内容は少し承知しています。

実は政府予算執行の発注書は、それを受け取る民間から、政府機関に
提案します。

政府機関の官僚は、委託開発する中身わからないため、システムの発
注書が作れない。最初驚きましたが、数回で慣れました。談合以前の
問題です。今も続いていることが電通問題で分かりました。

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 <1073号:アフターコロナの政府財政とマネー(1)>
      2020年6月10日:有料版

【目次】

1.前提となること、「売上と所得の蒸発」
2.米ドル基軸通貨体制の黄昏(たそがれ)が来る
3.史上最大の、米国政府からの補助金の金額と、FRBのドル・プリン
ティング
4.4月から急回復した米国と、世界の株価:その理由
5.FRBのドル増刷は11.8兆ドルに達する
6.マネーの流通量についての解説
7.政府の225兆円の総事業費は、1年半のマネー量の増加になる
8.2020年、21年はデフレ、
        2022年、23年からはマイルドなインフレへ
9.通貨の信用とは、何を言うのか
10.マネーも国債も買い手が信用を決める
11.金は通貨か?
12.2022年末から
【後記】

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■1.前提となること、「売上と所得の蒸発」

▼売上が蒸発した・・・

北半球の国は、第二波を恐れながら封鎖の解除に向かっています。パ
ンデミックは3月に始まりました。米国では、高級百貨店ニーマン・
マーカス(2017年の年商は5270億円:全米45店)に続き、GMSの大手
JCペニーも会社更生法を申請(年商117億ドル:全米660店)。

社員と負債をカットし、資本の再投入を目指す米国型倒産です。JCペ
ニーは、イオンやIY堂にあたるでしょう。2018年に倒産したシアーズ
がダイエーです。18年、19年の業績がボディブローで、都市封鎖がカ
ウンターパンチでした。

米国政府は、都市のロックダウンを災害時の仮設住宅への収容と同じ
と考えています。仮設住宅には、政府が補助金を出さねばならない。

(1)航空機の受注が消えたボーイングを筆頭とする大企業(全米の
雇用の50%:7000万人)に対しては直接の増資(劣後債)、CP(短期
手形)の購入、

(2)中小企業(雇用の50%:7000万人:従業員500人以下)には社債
の購入、家賃と人件費の補助などを打ち出しています。

倒産・廃業を、貸付金、劣後債の投入、社債とCPの買い上げ、家賃補
助、人件費補助により防ぐ。原資は、国債発行しFRBが買い取ること。
ドルのプリンティングです。

▼米国債の消化問題が生じる米国

米国債は、ほぼ100%を国内で消化してきた日本と違いがあります
(海外所有は短期債10%)。米国は、経常収支(貿易+所得の収支)
が赤字続きです(2019年:5995億ドル)。その分、ドルは海外に流出
を続けています。ドル国債の100%国内引き受けはできない。

経常収支が赤字のときはドルが海外に流出し、国全体はドル不足にな
るからです。不足とは、投資と支払い(マネーの需要)に必要な金額
に対して、現金が足りないことです。

米国とは逆に、日本は経常収支の黒字が続き(1年に約20兆円)、国
内の銀行にマネー余力があり、国内で国債を消化しています。
加えて、海外から流入したドルで米国債も買っています。

日本とは真逆に、新規の国債発行分の50%くらいは、海外に売らねば
らないのが米国です。

米国国債の、これからの問題は、
・3月のFRBの利下げ(ドルの緩和)により、
・ゼロ金利になった米国債が、
・海外に円滑に売れるかどうかです。

日本、中国、産油国、ユーロから米国債の買い越しが減ると、経常収
支の赤字でドルが海外流出している米国債の金利は、FRBの買い上げ
にもかかわらず上昇していくでしょう。

ドル安をカバーするため、金利が上がらないと、海外からは、米国債
は買われにくくなっていくからです。自国通貨でもっていれば、為替
は関係がない。ゼロ金利のドル国債を買えば、ドル高では得をします
が、ドル安になると損をします。

【ドルの為替リスクと金利】
ドルを買えば、ドル安のリスクに晒される。通貨変動がリスクです。
金融でいう「リスク」は、日本語の危ない、損をするという意味では
ない。

将来の価値の変動が金融のリスクです。将来の為替レートは、分から
ない。上昇も下落も、リスクとしては等しい。専門的には「ボラティ
リティ(標準偏差の変動幅)」といっています。先物での売りで、通
貨の下落ときに利益が出る投資ができるようになったため、ドル高も
リスクになったのです。そのリスクを計算するのが、金利と標準偏差
によるブラックショールズ方程式です。

資金不足を続けている対外純債務国(10兆ドル;1100兆円)が発行す
る米国債は、ゼロ金利の日本・欧州の金利と、2%から2.5%の金利差
(イールド)があるという理由から、売れていきました。

しかし今は、コロナショックからのFRBの緊急利下げで、米国債も金
利ゼロです。ゼロ金利のドル国債を買うと、日本、欧州、中国からは
ドル安のリスクを、金利ではカバーできません。

短期で投機的な、ドル先物買いの動きは別ですが、2年単位の中期で
は、債務国の通貨のドルに金利差がないときは、基軸通貨とはいって
も「円に対してドル安」の材料になります。

新型コロナの感染数と被害が、米国が日本より大きいことも加担しま
す。第二波も、日本よりは米国が大きいはずです。コロナショックの
大きさは、金融のリスクです。

いったんドル安に向かうと、海外である日・欧・中は、米国債を売る
ので、米国債価格は下がり、金利(利回り)は一層上がっていきます。

■2.米ドル基軸通貨体制の黄昏(たそがれ)が来る

新型コロナは、米ドルが、シェア60%の基軸通貨の役割を減らしてい
くことを示します。

中国と新興国は、基本的などころで「反ドル」です。

長期的(5年)にはなりますが、基軸通貨(国際的にやり取りされる
通貨)は、多極化(複数の基軸通貨)に向かっています。将来は、
(1)ドル圏(米国、日本、中南米)、
(2)ユーロ圏(欧州、中東)、
(3)中華圏(中国、日本を除くアジア、アフリカ)でしょう。

(注)ユーロは、財政赤字を自由に増やすため、自国通貨(リラ)を
発行したい姿勢も見せているイタリアの離脱から、5年後には崩壊し
ているかもしれません。

人民元の、国際通貨になり得る仮想通貨は、20年4月から使われはじ
めました。ビッグニュースのはずですが、コロナショックに紛れたこ
とと、意味が分かりにくいため大きなニュースにはなってはいません。

仮想通貨は、直接に、国際的な決済の通貨になり得るからです。世界
の中央銀行は研究所を作り、密かに、自国の通貨を仮想通貨にする準
備を進めています。外形は仮想通貨と同じ電子マネーの奨励がその入
り口です。

▼電子マネーと仮想通貨

10年後の世界を想定すれば、国際的な取引に使う通貨は、電子マネー
化し、ブロックチェーン方式の仮想通貨(暗号通貨)に代わって行く
でしょう。テレワークは、仕事の電子化でもあります。

人にわたる文書も、不正な改ざんができないブロックチェーンになっ
ていきます。紙幣がブロックチェーンになることと、文書がブロック
チェーンになることは、プログラムでは同じことです。

世界の電子マネーに激しく遅れていた日本でも、コロナショックを契
機に、スマホでの電子マネーの利用が急速に増えています。こうした
ことが、転換のきっかけになるのです。
 
カードのようなタッチがない。ケータイ・マネーは思っていたより便
利、という声が多い。スマホの電子マネーと、暗号通貨の仮想通貨に
は、同じといえるくらいの親和性があります。

10年を遠いと感じるか、近いか。リーマン危機は、12年前でした。
東日本大震災からすでに9年も経っています。記憶される過去の時間
は、過ぎると一瞬です。記憶には過去の、自分の歴史しかない。未来
は確率です。

■3.史上最大の、米国政府からの補助金の金額と、FRBのドル・プリ
ンティング

米国政府は、売上が消えた企業に、大災害のときの仮設住宅の避難民
に対するのと同じような補助金を出し、特例の貸付もしています。

▼FRBの国債買い取り=ドル増刷

財源は全部、米国GDPの約18%(4兆ドル:440兆円)に増える赤字国
債の発行を、FRBに買い取らせることです。ただしこれも「今のとこ
ろ(20年5月)」ということであり、第二波が来て売上の減少が長期
化したときは。ここから増えます。

2019年には1兆ドルだった政府の財政赤字は、2年で8兆ドル(880兆
円)に達し、国債の残高は、第二次世界大戦の戦費国債(GDP比100
%)以上に増えるでしょう。

コロナショックは、経済的には、世界大戦以上の、民間と政府の負担
を生みます。生涯で、こんなことに遭遇するとは、2月までは思って
もいませんでした。多くの人に、共通の思いでしょう。

▼急増する米国債とFRBのドル増刷

コロナショックの前、米国債の残高は、GDPの1年分の22兆ドル
(2420兆円)でした。

金額では、GDP比で2.4倍と、世界1である日本の政府負債(1328兆円
:19年12月末)の約2倍でした。米国の国債残(=累積の政府赤字)
は、2020年と21年にGDP比136%(30兆ドル:3300兆円)に増えるでし
ょう。

発行される赤字国債(2年で想定8兆ドル:880兆円)は、FRB(連邦準
備銀行)が枠を設けず「無制限」に買い取るとしています。

(1)FRBはすでに、2か月間で3.3兆ドル(363兆円)の国債・社債等
を買い上げて、総資産は7.1兆ドル(781兆円)へと1.9倍に膨らんで
います(5月25日の実績)。

(2)2020年6月から21年度には、これに加えて、4.7兆ドル(517兆
円)の国債が発行され、FRBが全額買い取って、ドルの発行は20年5月
末より4.7兆ドル増えるでしょう。

(結果)FRBの総資産は、「7.1兆ドル+4.7兆ドル=11.8兆ドル
(1290兆円)」になる可能性が高い。ドルの総発行残高は、コロナシ
ョック前の3.8兆ドルから11.8兆ドルへと、3.1倍に増えるでしょう。

▼FRBのドル増発金額を映像にすれば・・・

米国の現金(ドル)の増加を、具体的にイメージ化すれば、
(1)米国企業、銀行、世帯のドルの現金は、2019年まで年間所得
(企業利益+世帯所得)に対し、平均で18%(約2か月分)でした。
 
(2)2020年末には、政府からの補助金給付と特例の借入金により、
4か月分へと倍増します。

(3)更に、21年末には、7か月分に平均して増えます。企業の現金保
有が3.5倍になっています。

ただし、現金として増えた分は、
・売上が減った企業と、
・失業した世帯の支払いになっていくので純増ではない。
消えた売上、失業で減った所得を埋めるものが、これです。

■4.4月から急回復した米国と、世界の株価:その理由

現金に余裕のある企業では、3月に平均で38%下がった株価を上げる、
自社株買いにも使われています。

この新たな自社株買いと、2月末から3月に売った先物が、3か月後の
5月、6月に、「清算買い」となったことが、コロナ後の株価回復
(NYダウで90%)のふたつの主因です。

【先物売りのあとは、同じ株数の清算買い】
株価の下落を予想した「先物売り」が大きいときは(20年2月末から
3月23日)は、株価は下げます。

2月末からNYダウは38%下がって3月23日に、1万8590ドルの「一番
底」をつけました(日経平均も同じ)。そのあと、6月9日の2万7272
ドル(ピークの2万9400ドルの93%)にまで回復しています。この株
価は、「コロナの短期収束」の予想が前提です。

もっとも大きな投資マネー(運用は世界で3000兆円)を動かす、ヘッ
ジファンドの先物売り(推計平均期間3か月)では、限月までに、株
価がいくらであっても清算の買いをしなければならない。

◎先物主導で下げた株は、ほぼ3か月(ヘッジファンドの4半期の決算
サイクル)の清算買いで価格を戻します。今回もこれでした。

短期先物の売買よる株価の騰落は、騰落のあとの、反対売買によって
中和され、長期(1年)では、中立的です。

◎株価先物の売りは、「株価が下がる」という予想から行います。し
かし、限月までの義務である清算の買いは、株価見通しに関係がなく、
「価格がいくらでも買って、清算しなければならない」。このため、
今回のように、「大きく下げる4-6月期のGDPの予想からは不合理な
買いが生じて上がる」のです。

米国の4-6期GDPは、マイナス40%ともいわれます。

経済活動が停止したからです。日本の4-6月期GDPはマイナス20%で
しょう。米国株は、GDPの予想が最悪では-40%のなかでの、株価回
復ですから、実体経済(企業利益と世帯所得)から大きく乖離したも
のです。

ここで、2020年12月に向かってはどうなるかという、気の早い質問が
出るでしょう。事実をだけを言います。

◎米国の株式投資家の60%は、「米国に第二波があったときは、大手
企業が多い株価(NYダウ、S&P500)は2番底をつける」としています。
当然の予想でしょうね。

ただし、都市のロックダウンでも売上と利益が増えている、ITの巨人
GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple=合計株価時価約520兆円=
4社だけで日本の株価総時価並み)がいる米ナスダックは、あまり下
げないでしょう。

時価総額が3800兆円(日本の6.5倍)もある米国株は、伝統的企業と、
新興ITの2色です。これを知っておく必要があります。日本株は、円
安に反応する大手輸出企業が中心の一色ですが、米国株は2色で、異
なった動きをします。

日本株(特に日経平均)は、東証の売買の70%が、米国系ヘッジファ
ンドと、欧州系の年金ファンドからのものなので、NYダウの同時コ
ピーです。

米国株の自社株買いにあたるものが、日本では日銀の株ETFの買い
(上場投信:1年12兆円の枠:残高33兆円)です。売ることはなく、
買いの一方なので、「自社株買い」と同じです。

■5.FRBのドル増刷は11.8兆ドルに達する

 長期化が想定されるコロナショックに対しFRBは、
(1)企業倒産と失業、
(2)金融危機、
(3)需要が10%から20%減ることからの、経済恐慌を防ぐため、
 史上最大、それも超最大の11.8兆ドルのマネー・プリンティングを
行うことを、余儀なくされています(1298兆円:米国のGDPの50%)。

1929年から33年の大恐慌(GDPはマイナス40%:失業率25%)以上に、
多くの企業が倒産し、失業があふれることは、「政治的」に許されな
い。このため政府は、財政の拡大対策を「余儀なく」されています。
世界共通に、です。

■6.マネーの流通量についての解説

実は、一般にいわれる「新型コロナで蒸発したマネー」というのは、
正確ではない表現です。

実際は、「日本のマネーの総量=(銀行の日銀当座預金(401兆円)
+企業の銀行預金(267兆円)+世帯の銀行預金(1008兆円)+現金
(111兆円)=1813兆円=マクロのマネー」は、新型コロナでの休業
や失業でも消えてはいず、それ以前と同じ金額で、残っています
(19年12月末:日銀資金循環表)。

(1)Aさんの預金からの支払い(Aさんの預金の減少)は、送金を受
けとったBさんの預金の増加になり、マネーの総量(マクロの総預
金)としては同じ金額です。

(2)日本の預金の総量は、日銀と銀行が貸付金として「マネー創
造」をしたとき増えます。
 逆に、日銀と銀行が、貸付金を回収したとき、減少します。海外の
銀行に、円のまま送金したときも、日本の預金の円は減少します。

(3)ただし、Cさんが米国債や米国株を買うとき、日本のD銀行で円
を売ってドルと交換し、米国債を買ったときは、Cさんの円預金は減
りますが、D銀行では円が増えて、売ったドルが減ります。この場合
も、円預金の総量は同じです。ただしD銀行がもっていたドルは減り
ます。D銀行のドルの減少分が、Cさんの米国債の所有になります。

・以上のように、円マネーの総量は、日銀と銀行が、貸付金を増加さ
せたときに増え、回収したときに減ります。

・預金を現金で引き出したときも預金は減りますが、紙幣が増えるの
で、マネーの総量は同じです。

以上は金融の基礎ですが、専門の金融学者以外では知らない人が多い
ので、俗説を修正する意味で示しました。

▼マネーの流通速度の急低下が生じたことが、マネー量の減少

外出禁止により、店舗に行く回数が減って、店舗や飲食店の売上が減
った分、使われなくなっただけで、全体のマネーは預金の総量として
滞留しています。

ただし個々の経済主体の間では、都市封鎖で売上が消えた企業の預金
は、家賃、人件費、仕入れ代金、他の経費の支払いにより減っていま
す。一方で、その支払いを受けた側になる企業と個人の預金量は、増
加になっていて、日本の預金全体は同じ金額です。

失業あるいは休職で、収入がなくなった個人の預金と現金は食費や家
賃の支払いで減っていますが、支払いを受けた食品スーパーは売上の
増加で、家主は家賃収入により預金が増えています(家主も不動産
ローン等の支払いがあるので、全部の家主で増えているとはいえませ
ん)。

他方、売上が蒸発した衣料品店、家具店、百貨店、飲食店、観光業な
どの預金は、必要な支払い(人件費+家賃+経費+過去の仕入れ代
金)が超過して、減っています。

ただし、前述のように日本全体の「預金と現金(1813兆円)」は、
「減った企業・個人の預金と現金=増えた企業・個人の預金と現金」
になっていて、新型コロナでは「蒸発」してはいません。
 
▼マネーの流通量」という概念

マクロの預金総額は同じでも、実際には、マネーは減っているように
見えます。何が減ったのか? 減ったのは「(預金量+現金)×流通
速度(使われる回転率)=マネーの流通量」です。

◎川の水量(=マネー量)は、「川幅の水の体積×流れる速度」です。
流れが遅くなると、一定時間での水量(マネー量)は減ります。流れ
が速くなると水量(マネー量)は増えるのです。

全体の預金量と現金が同じでも、外出禁止から店舗や飲食店で、顧客
の預金と現金が使われる速さ(=店舗の売上としての入金になる)が
減速すると、「マネーの流通量=1813兆円の預金と現金×回転率=M
×V」は減ります。

◎マネーが、商品と金融商品に使われる流通量は、総預金の残高では
なく、川の水量のように、時間で計るべきものです(これがキャッシ
ュフロー)。

■7.政府の225兆円の総事業費は、1年半のマネー量の増加になる

政府は、総事業費(2年間で約225兆円の枠)として、
・国債を作って日銀に売り、
・日銀は買った国債の代金をプリンテングマネー(増刷マネー)とし
て、国債を売った銀行と政府の日銀当座預金に振り込んで、
・銀行を経由して、
・企業と世帯に供給します。
 
マネーのパワーともいえる「MV=マネー量×回転率(流通速度)」は、
・新型コロナの時期の収入と借入、
・必要な支出、
・物価のデフレ、
・インフレ、
・GDPの増減、
・株価と金融商品の価格変動にまでかかわる重要なことです。

マネーの量が減少するか、または流通速度が低下すれば(川の流れが
遅くなって、総水量が減るので)、景気は悪くなり、物価も下がりま
す。

流通速度が上がると(1)GDPは増えて、(2)物価も上がり、(3)金
融商品の価格も上がります。株や債券の買いも増えるからです。

以上を示すのが、フィッシャーの方程式、「M(マネー量)×V(流通
速度)=P(物価上昇)×T(実質GDP)」です。

(注)ただし、この式には、右辺に、マネーで売買される金融商品と
不動産の価格上昇もいれなければならない(修正フィッシャー方程式
=発案は当方)。

1990年代から、商品購入額の増加より、世界中で、金融商品(株式、
社債、ローン証券、不動産などのストック)の売買額の増加が大きく
なって、商品の実体経済に対し、マネー取引の金融経済の領域が広が
ってきたからです。

■8.2020年、21年はデフレ、
        2022年、23年からはマイルドなインフレへ

ロックダウンのあとは、工場生産と店舗は、再開します。食品以外で
は、商品供給に対する需要の少なさ(民需の減少=GDPの低下)が続
く2020年、21年までは、商品物価・地価・不動産価格は、インフレと
は逆のデフレでしょう。

▼いつからインフレか?

インフレになるのは、企業の操業度が上がり、増えた失業も減って所
得が回復し、民間需要(301兆円:19年12月)が301兆円水準を超える
とき、おそらく2022年後半か2023年からでしょう。

失業率が高い間は、平均所得も上がらないので、資源・エネルギーの
高騰がない限り、店頭の物価は上がらないからです。

 【エコノミストの重鎮は、将来のことは分からないというが・・・
】
米国と欧州の対策も、日本とおよそ同じ内容のものになるので、経済
学の重鎮サマーズ(元財務長&ハーバード大学学長)は、「財政の拡
大と通貨の増発の結果がどうなるか、世界の誰にもわかってはいな
い」としています。

前例がないことと、今はまだ、金融までを考える余裕がないからです。
分からないといっておけば、間違えて非難されることがないからです。
彼の人格特有の、ずるい態度。サマーズは小賢しい人です。

学問天才風のサマーズに比べれば、学識が劣る、「微力の馬鹿力」で、
本稿はここに挑戦しています。学の天才には、変な人物も混じってい
ます。

▼政府が支援する貸付金により、政府と銀行の不良債権が、増える
(2年後~)

2020年の経済恐慌は、
・GDPの20%の財政対策と、
・財政赤字と同じ金額の中央銀行のマネー増刷によって、短期的には
避けることができます。

▼借入金には返済の時期が来る

しかし2年、3年後には増えた企業負債の、返済の時期が来ます。返済
できないため、銀行が返済を猶予し続ければ、「不良債権」が増えて、
慢性の金融危機になっていきます。

サマーズが、「先のことは(今回は前例がないので)分からない」と
したことのひとつが、不良債権の増加です。

今回の特別融資(日本では約140兆円)は、国債の日銀への売りで作
った政府マネーを、銀行を経由して、企業に貸し付けるものです。

日本では、その財源は、国債と財投債なので、増加する企業への貸付
金の不良部分は、政府が負担することになっていきます。最終的には、
税金での負担になります。 

【国債の本質】
国債は、将来の税収を、今使うことです。借金で借り入れて使うと、
将来の所得を今使うことになるのと同じです。将来、所得から返済し
なければならないからです。

〔結論〕3年以上の中長期では(2023年~)、国家の財政の不良化、
つまり国債の価格下落と国債金利上昇に向かっていくでしょう。

■9.中央銀行の、プリンティング・マネーの信用の問題

利益が減り、信用創造の根拠が減った銀行は、貸付金を増やす能力が
低くなっています。

20年3月の、FRBの1.5ポイントの緊急利下げにより、米国債も、イー
ルド(日米の金利差)はなくなっています(短期債のFF金利0.0%~
0.25%)。コロナショックから、日米欧は同時に、ゼロからマイナス
金利です。

▼超低金利は、逆に、銀行貸し出しを増やさない

長期で貸しても、平均金利は0.69%と低い(20年2月:銀行貸し出
し)。ゼロ金利と変わりません。

短期貸付に至っては、マイナス0.047%(驚き)の金利であり、銀行
が逆に、貸した会社に金利を払わねばならない。最低でも1%はある
貸付リスクの担保ができない銀行は、貸付の増加能力を失っています。

◎銀行には、貸付金増加のインセンティブが消えているため、政府は、
今回、企業への資金繰り支援として増えるはずの企業貸付を保証し、
不良債権への計上は先送りして、1.5%から2%くらいの利子を銀行に
補給します(金利の補助金)。

返済がなくても、当面は、不良債権にしなくてもいいという表明です
から、「(政治家+官僚利益の)怪しさも混じる、政府の総事業費
225兆円」と同じように、金融のモラルハザードを広げます。

このツケは、3年後には、インフレ(通貨価値の下落:年3%を予想)
として回ってきます。

今回、銀行は、無利子&無担保で、企業に貸します。金利と回収リス
クは総事業費として政府が負担します。政府のマネー(総事業費)は、
国債という負債証券を日銀が買った代金です。

資産と負債を対照させて記帳する複式簿記ではない、政府の「大福帳
会計(家計簿と同じ)」では、国債の発行は、政府の売上収入になっ
ています。一般会計では、国債の発行は、税収と並ぶ収入です。

あとで返済しなければならない負債が増えるというより、国債を売れ
ば、売上収入が入るという政府の意識です。政府は50年間、一度も国
債の残高(負債)を減らしたことはない。大福帳会計では、本当の純
資産、純負債が見えないからです。

(注)政府が作っているB/Sには、(1)売ることができない資産の過
大計上があり、(2)負債には、年金の将来債務(1500兆円:雇用者
の勤務債務)を計上していないという、2つの大きなごまかしがあり
ます。ごまかしの結果、純負債は568兆円とされていますが、本当は、
もっと純負債は大きい。
https://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2018/national/fy2018gassan.pdf

▼プリンティング・マネー

国の資金循環では、政府マネーが、銀行を経由して貸しつけられます
が、元になるのは、中央銀行のプリンティング・マネーです(実際は
印刷ではなく、中央銀行の、コンピュータの数字の増加)。
https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjexp.pdf

GDP(日本は550兆円、世界は8000兆円)の20%に相当する、各国政府
の緊急の総事業費は、同じ資金の循環構造です。
これは、中央銀行のマネー創造力、言い換えれば「国民からの、信用
通貨(円、ドル、ユーロ)への信用」が元になって、はじめて可能な
ことです。

日・米・欧・中では、通貨信用は、まだ失われていないので、マ
ネー・プリンティングの増加が可能です。ただし、これには、「イン
フレが起こるまで」、という限界があります。

3%以上のインフレに対しては、金利を上げ、日銀が国債を回収(マ
ネーの総量のなかの、銀行の当座預金が減少)しなければならないか
らです。

■9.通貨の信用とは、何を言うのか

人々は、現在は商品と交換に1万円、100ドル、100ユーロを、喜んで
受け取っています。これが、通貨の価値への信用です。

▼ハイパーインフレは簡単に起こせる

商品物価が1万倍、100万倍、1億倍に高騰することもあるハイバーイ
ンフレは。中央銀行が印刷する通貨の価値が、国民から信用されなく
なることです。

2018年からベネズエラで、軍事政権が起こしたハイパーインフレ(物
価上昇2.6万倍:2019年1月)になると、店舗は、今日は100万円、明
日は1000万円、来週は1億円を積まれても、商品を売らなくなります。
これが、中央銀行と政府の、通貨の超大増発が引き起こす、「通貨信
用の喪失」です。

中央銀行が、1万円札の代わりに、ゼロを4つ書き足して「1億円札」
を発行し、1世帯に無担保で1000億円を貸し付けると、日本でも即日
に、物価が1万倍にはあがるハイバーインフレになっていくでしょう。

昨日は200円だったカップ麺が、今日は2000円、来週は2万円・・・。
通貨1単位の価値が、1万分の1に向かって、毎日、下がっていくから
です。

銀行の全部の、預金の数字を、コンピュータで4つゼロを加えて、1万
倍にすれば、1万倍の通貨を発行したことになります。1000万円の預
金が、1000億円になります。

しかしその1000億円の価値(購買力)は、1000万円のままなのです。
政府と中央銀行は、これを行うことはできますが、国民の信用を失っ
て暴動が起こり、1週間で、倒れるでしょう。

(注:MMT論)国債を中央銀行が買い切って、通貨を増発することを
奨めるMMT論(現代貨幣論)は、1万倍ではなくても、3%から4%のイ
ンフレになるまで、数十%の通貨増発は可能だと言っています。

▼通貨の信用の構造

中央銀行が無(む)から創造した、通貨の価値が信用されるかどうか
は、まず銀行、つぎに国民にかかっています。
 
通貨信用は、発行元の中央銀行が作ることができるものではない。マ
ネーを使う側である銀行と国民、海外の金融機関、外為の売買をする
ファンドが与えるものです。

■10.マネーも国債も買い手が信用を決める

買い手が信用を決めている点では、国債もおなじです。100万円の額
面の、政府の国債(負債証券)を、銀行がいくらで入札するかによっ
て金利を決めています。信用が低い国債は価格が安くなり、発行金利
よりも金利は高くなります。

「Aさんを信用する」というときの信用(クレジット=経済的には負
債)は、周囲の人が、Aさんに与えるものです。

Aさん本人が、周囲に「私を、どこまでも信用してくれ」といっても、
信用を得ることができるものではない。これと同じです。政府の信用
つまり国債信用、中央銀行の信用つまり通貨信用も、国民の側が与え
るものである点で同じです。

国民と世界から、円が信用されてきたのは、2013年からの異次元緩和
で円安にはしても、インフレは起こさず、円の購買力を減少させるこ
とが少なかったからです。

▼円、ドル、ユーロ間の通貨レートは、2年間は大きくは動かない
 
今回、日本・米国。・欧州が同時に通貨を増刷しますから、円・ド
ル・ユーロ間のレートは、2年間は大きくは動かないと予想していま
す(通常年の為替変動:1年に±6~8%以内)。比較インフレ率が、
通貨の交換価値を決めるからです。各国が同じインフレ率なら、通貨
の大きな変動はない。

【金は高騰する】
世界の信用通貨の間のレートは、絶対的な価値は示さない「相対的な
もの」です。ドル安、円安、ユーロ安が同じ率なら、通貨レートは同
じです。

円・ドル・ユーロの、3つの通貨の増刷、つまり水膨れする信用通貨
(1単位の価値は減る)に対して上がるのは、水で膨らます増刷がで
きない「絶対価値」をもつゴールドでしょう。

中央銀行は、信用通貨は作ることができても、ゴールドは創造できま
せん。金価格の2020年上昇は、序の口にさしかかっただけです。

2020年末で、1トロイオンス(31.1グラム)1900ドルが、市場関係者
の平均的な想定です。

本格的な価格上昇は、2021年、22年、23年でしょう。ドルの1単位の
価値を下げる増発量から見れば、すくなくとも、10倍の2万ドルには
なるというヘッジファンド・マネジャーも少数ですが、登場していま
す。3年で10倍は、行き過ぎかもいしれない。3倍なら普通のことでし
ょう。(注)5年の長期では、「ドル基軸の崩落(可能性)」だから
です。

金も短期の買いは、お勧めしません。短期(3~6か月以内)では、上
昇のあとの下落が100%の確率であるからです。相場は大きく上げる
ときも、直線ではなく、右肩あがりではあってもジグザグです。

大きく上げて下がる。下がってしばらくしてまた上げることを繰り返
します。原因は、途中で、(1)利益確定の売りと、(2)先物買いの
清算売りがあるからです。相場のリズムです。

推奨は、5年以上もって、下がったときも売らない長期投資。または
毎月、自分の金融資産にとって無理のない一定金額(数万円から30万
円)を決めて買い続ける「ドル平均法」です。毎月10万円ずつ買えば、
5年で原価が600万円です。1000万円は必要でしょうか。

■11.金は通貨か?

日銀と日本の銀行は、金を通貨とはしていません。しかし米国、欧州、
新興国、中国の中央銀行は「金は通貨」と認識し、中央銀行がもつ準
備通貨として扱っています。

ただしこの中央銀行の認識は、無限に増刷もできる信用通貨を自国通
貨としているため、国民には言いません。

【BISという怪物銀行】
しかし、世界の中央銀行の上の中央銀行に位置し、世界の銀行には
BIS規制として自己資本を要求し、デリバティブの所有を減らすこと
も要求しているBIS(国際決済銀行:スイス・バーゼル)との間では、
BISと各国中央銀行がもつ金準備は、通貨です。

日清戦争の賠償金(1895年:下関講和条約)として得た465トンの金
を、日銀は、現在のB/Sにも載せて、所有しています(4412億円=明
治の4800万両相当の簿価)。

「金は通貨である(あるいは通貨ではない)」と公式にいうことがな
い。日銀の金(4800万両)のほとんどは、米国FRBのフォートノック
ス(ケンタッキー州)に、ドイツの金とともに預託(カストディ)さ
れています。同地には、世界の国の、7000トンの金があるとされてい
ます。

11年前だったか、団体でFRBに行ったとき、最初は見せるということ
でしたが直前に中止されました。1945年8月に、マッカーサーの占領
軍が、軍艦で持ち帰ったまま、返却されていません。

架空かもしれない所有権は、変わらず日銀です。米国は、イラク戦争
(2003年)のとき、絞首刑にしたフセイン大統領が宮殿に隠していた
金も没収しています。武力は、超法規の権力です。マネーと武力は馴
染みます。

■12.2022年末から

中央銀行マネーによる危機対応が終わり、
・急増した失業も減って、
・下がっていた物価が上昇傾向になっていく初年度の2022年末、
 遅ければ2023年から、各国通貨は別の領域になるでしょう。

◎比較インフレ率が高い通貨は、物価上昇率が低い通貨に対して交換
レートは下がるのが原理的なことです。日・米・欧のインフレ率がほ
ぼ同じなら、通貨のレートもほぼ同じでしょう。

インフレとは、本質では、物価が上がる形をとった、過剰になった通
貨1単位の、価値(商品購買力)の下落です。

国家の財政は、ドイツとスイス以外の世界は、全部が、大小の違いは
あっても赤字なので、最大級に増刷される通貨の価値が、アフターコ
ロナの2023年の以降では、ある国は大きく、別の国は小さく下がって
いきます。財政赤字と、インフレという要素によって、です。

また通貨レートには、赤字の臨界点である、政府財政の危機、または
破産の予想という要素も加わります。財政破産とは、国債の返済の、
デフォルトのことです(または、返済の繰り延べ=モラトリアム)。

インフレから金利が上がり(=国債の価格は下がって)、借換債の発
行ができず、デフォルトの可能性が高くなった国の通貨は、最低でも
50%は下落するでしょう。

▼米国とEUも、日本と同じ

米国政府は、日本政府より早く、財政支出を3兆ドル(330兆円)拡大
することを決めています。米国の財政赤字は、2019年の1兆ドル
(110兆円)から、4兆ドル(440兆円)に膨らみ、4兆ドルの国債の新
規発行になります。

FRBが「無制限に国債を買う」としているので、2020年の上期のドル
増発分も、4兆ドルになるでしょう(銀行と政府のFRB当座預金の増
加)。20年の下期にも、ドル増刷があります。

日本とおなじ、新規国債を全量買いとる財政ファイナンスです。企業
の売上を蒸発させ、大きな不良債権を生むコロナショックに対し、
FRBも、なりふりを構わなくなって増発し、ドルの価値下落には配慮
していません。日銀とECBも、FRBと同じです。

つぎは、70%の確率でインフレになると思われる2022年末または
2023年からそれ以後の、金利上昇と懸案の財政破産について書かねば
なりません。

日本のGDPが2019年の水準(実質529兆円)に戻るのは、2025年という
見方が増えています。GDP=商品生産=所得=需要ですから、2019年
の総所得(企業の経常利益+世帯所得)が戻るのが5年後です。

【後記】
現在、『アフターコロナの世界;生活、経済、金融、投資』(仮題)
として、本を書いています。80%が終わりました。

「先のことは分からない」と逃げているローレンス(通称はラ
リー)・サマーズへの挑戦でもあります。出るのは、7月の梅雨明け
か。今も暑いのに、もっと暑い。気温20度以上、およびアジアのよう
に湿度が高いとウイルスの活動は鈍るという有力な説もあります。北
半球で、6月になって減っている理由かもしれない(厳密な検証はま
だ)。

逆に、気温が下がり、冬に向かっているブラジルでは、感染者が70万
人を超えました(米国の196万人(死亡数11万人)に次いで2位)。米
国も、最近の1日当たりの確認感染数が13万人と多い。ブラジル政府
は「データ隠し」を命じています。夏は、南半球とアフリカです。

当方も、レベルは違いますが、村上春樹が言っていたように、「書い
ていくうちに、分かって来る」という、毎回の感覚を味わっています。
この方法しかないのかもしれない。

人間は、言葉(=概念)と論理でしか考えないからです。ともかく書
いて、言葉と格闘技。その中から、水ガラスの塔のように、未来が現
れて来ます。言葉は観念と、誰も見たことがない霊媒にもかかわりま
す。このため、村上春樹は霊媒を描いています(『騎士団長殺し』)。

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