知財協会での無料講演の案内
Written by admin on 2019年9月17日 – 09:00
2018年8月からの金価格の上昇(1オンス1175ドル→1503ドル:+28 %)は、新興国の準備通貨になっている基軸通貨米ドルの、下落を予 想したものです。 金を買い増している中国、ロシア、トルコ、ポーランド、ハンガリー、 カザフスタン、インドなどは、いずれも、ドルと金を自国通貨発行の 担保資産としています。 【現在の、先進国の通貨の、価値の裏付けは、政府の財政信用】 先進国は、政府財政の信用(利払いと返済が可能という信用)を示す 国債を、中央銀行が買って、通貨を発行しています。 これは、通貨の価値の根拠が、政府の財政信用であるということを示 しています。中央銀行の信用創造(=通貨の増発=金融緩和)は、借 金の大きな政府に、まだ財政信用が残っていることが根拠になって、 可能になっているのです。 【中央銀行の金の保有】 世界の中央銀行の金保有は、貴金属を含む、地上の在庫18万トンのう ち3万3695トン(19%)を占めています。 2010年ころに、新興国と途上国の合計GDPは、先進国(北米、欧州、 日本、オーストラリア)のGDP合計を超えています(世界のGDPは 8000兆円)。ということは、中国、インド、ロシアを含む新興国の通 貨のほうが大きくなっているのです。 戦後、ブレトンウッズ体制(1944~1971)と言われていた「金・ドル 交換制」のとき、米国中央銀行(FRB)は2万4000トンの金を保有し、 その金を、ドルの信用の裏付けになる資産(=準備通貨という)にし て、ドルを発行していました。 FRBの金の保有は、1980年代から8133トンに減っています(IMFとWGC のデータ:この持ち高には根拠のある疑念があります)。1971年の 金・ドル交換停止のあとの、ドルの信用の裏付けは、「米国政府の財 政信用」に変わっています。その財政の赤字と、対外的な経常収支の 赤字が拡大し、36兆ドルの対外債務になっているのです。 実は、世界の中央銀行は、1971年の金ドル交換停止のあとも、「金を もっとも確実な通貨」として取り扱っています。ただし国民には、そ れを言いません。自分が、金と切り離したペーパーマネー(信用通貨 あるいはフィアットマネー=法貨)を発行しているので、金は通貨だ としていても、それは言うことができない。 (注)米国は、日本政府と日銀に対しては、事実上、金を買うことを 禁じていて(外圧)、金の代わりに「米ドル」を買うことを要求し続 けています(これも外圧)。ドルが金交換制だった1971年までの名残 でしょう。1971年までは、「米ドル=金」だったからです。世界の中 央銀行は、1971年までは、FRBにドルを送金し、金との交換を要求で きました(1ドル=1.12グラムの金)。ドルを出して金と交換したの はドイツ、フランス、スイスでした。日本は行っていません。 ・国民の、政権への支持率を高めることを目的にした、トランプの減 税財政からの、赤字の拡大(政府の資金不足)と、 ・2018年で36兆ドル(3780兆円)だった米国の対外債務の急増から、 遅くとも2020年代の半ばまでに、基軸通貨をめぐって、大転換がある でしょう。 【関税をかけても、米国の貿易赤字は減らない】 2018年からの中国への関税(追加で最大30%)は、米国の対外赤字 (=対外債務になる)を減らそうとする、米国のあがきです。 しかし、米国内の消費財製造業は、1980年代から約30年も空洞化して います。 食品、自動車、兵器、航空機、建設、医薬、化学製品以外の米国の工 場は錆びついている(ラスト・ベルト)どころか、なくなってしまっ ています。トランプが、米国ファーストといくらいっても、情報技術 産業以外の消費財工場に、新規の設備投資が再開されることはない。 米国は、農業と上記の製造業、そしてソフト技術、金融以外の商品生 産はしない「流通産業の国」になっています。株価時価総額が100兆 円と世界最大(トヨタの6倍)のアップルのスマホの生産も、台湾と 中国です。アップルは、商品設計&販売業です。iPhoneは中国からの 輸入品です。 関税によって中国からの輸入は減っても、代わりに他国(メキシコ、 中南米、アジア)からの輸入が増えて、米国の貿易赤字の全体は減ら ない。貿易赤字は、米国の借り入れ(対外債務の増加)によってファ イナンス(資金供与)されています。海外のマネーが基軸通貨のドル 買いとして流れてくる金融収支では黒字になることが、対外債務の増 加です。 【日本は、米国にマネーを提供し続けている】 日本は、海外に買った対外資産(直接投資、証券投資)が1081兆円も あって(日銀資金循環表での対外資産:19年3月末)、金融収支では 常に赤字です。金融機関・企業・政府・個人の「ドル買い/円売り」 が、金融収支では赤字ということになります。基軸通貨の米国が、海 外からの借金で経済と金融を支えているという逆転が、ドル基軸の体 制です。 米国は、個人消費がGDP(2100兆円)の70%を占める消費大国です。 GDPが日本の2.3倍(1285兆円)になった、消費財と情報機器の生産大 国が中国です。 一週間前に案内しましたが、事務局からの連絡では、約200名の会場 にまだ空席があるということなので、出席をお誘いします。 当方は、世界ではじめてといえる「国民の立場からの通貨論」を話し ます。現在の世界の通貨は、「現代貨幣論(MMT)」もいうように政 府・中央銀行の負債である通貨であり、銀行が預かる預金という負債 でもあって、これが国民の金融資産になっているのです。 ・国民からの、銀行の負債である預金が800兆円、 ・国民からの、政府の負債である国債が1000兆円です。 ・この負債に対応する国民の金融資産は、1800兆円です。 【金融資産の持ち手にとっての、マイナス金利の意味】 ユーロと円は、マイナス金利になり、預金金利はゼロです。ドルも、 9月17日~18日の、米国の12の連邦銀行によるFOMC(連邦公開市場委 員会)で、利下げ(0.25%か、0.5%)をするでしょう。 利下げは、実は、中央銀行が国債を買って国債価格を上げ、国民の金 融資産である通貨価値は低下(=金融資産の利回りの低下)させるこ とを示します(=日欧では長期金利がマイナス、米国では1.5%~1. 7%)。 経済学的に、「ゼロ~マイナス金利」という現象が示すのは、ケイン ズが「流動性の罠」として示したように、ドルを基軸通貨(=世界の 通貨信用の元であるという意味)とする信用通貨の価値が、非常時に あるということです。 ・財政赤字で不足するお金を借り入れた政府が、金利を受け取り、 ・負債証券である国債を買って、お金を貸した側が金利を払うことに なるのが、マイナス金利です。 これを示すと、「ありえないことだ」という異常さがわかるでしょう。 5000年の世界史上、初めてのことが起こっているのが、2010年代から の、欧州と日本のマイナス金利です。(注)米国は債務国なので、ド ルの金利はマイナスになることができません。海外に、金利差(イー ルドスプレッド)のある米国債を、40兆円/年は売らねばならないか らです。 デンマークでは、住宅ローンを借りた側が0.5%の金利を受け取って います。原因は、住宅購入が減っているからです。日本は、住宅ロー ン金利は10年固定で0.65%付近ですが、住宅ローン控除1%を入れる と、実質では、-0.35%になります。 スイスがもっとも長期金利が低く-0.688%、ドイツが-0.472%、日本 は-0.22%、米国は+1.8%です(19年9月)。マイナス金利は、民間の 資金需要の減退、投資の減少、GDPの成長の低下を示します。いずれ も、対外資産をもつ債権国がマイナス金利です。 中央銀行が、国債を額面より高く買うことで、金利(=国債の利回 り)はマイナスに誘導されます。しかし民間の資金需要が強い国では、 マイナス金利は実現しません。中央銀行の金利政策は、利下げのとき は市場の資金需給の状況を追認し強化する機能を、果たします。 (注)ただし、利上げのときは、中央銀行が銀行に強制する引き締め 策や利上げが効果をおよぼします。お金を貸さないこと(つまり金融 の引き締め)は、銀行側の意思でできるからです。 しかし、民間の借り入れ需要(=資金需要=用途は投資)が少ないと きは、金利をマイナスに下げても、銀行の意思で貸すことはできませ ん。借りる側が、申し込まなければ、貸せないからです。中央銀行が 銀行に対して行う金融引き締めと、緩和の効果は、「非対称」です。 中央銀行は、景気がよく(=GDPの期待成長率が高く)、民間の投資 の資金需要が強いときは、マイナス金利は実行できないと知っておい てください。借り入れ需要が多いときは、金利は上がるからです。中 央銀行の政策だけでは、マイナス金利にはならないのです。 【基軸通貨は、世界の通貨の中心】 基軸通貨(キーカレンシー)とは「その将来価値が、もっとも信用さ れなければならない通貨」です。その基軸通貨が、対外負債の増加か ら危機に向かっていることの意味は、ドル信用を根底にした世界の通 貨も危機の状態であるということです(これは、語られない事実で す)。 中央銀行の負債であり、国民にとっては金融資産である通貨は、これ から5年くらいの期間でどう向かうかを、根拠をもって予想するつも りです。 シンポジウムはどなたでも、無料で参加できます。期日は10月9日、 会場は、大阪中の島の「大阪大学中の島センター」です。 当方は、知財協会の、非常勤理事でもあります。シンポジウムのパラ ダイムシフトとは、過去の枠組みが適応性を失って、次の枠組みと制 度に変わっていくことです。 現在、世界ではマネー、AIの情報技術、生科学(バイオテクノロ ジー)の分野で、パラダイムシフトが起こっています。日本の低成長 は、そのパラダイムシフトに遅れているからです。たとえばAIでは、 米国と中国の2周回遅れと言われます。 『パラダイムシフトの発想』 期日:10月9日(水曜日):13:00~16:35 会場:大阪大学中の島センター 10階 佐治記念ホール(定員200名) 〒530-0005 大阪市北区中之島4-3-53 TEL 06-6444-2100 主催:公益法人 知財登録協会(SIR) ・当日のプログラム(13:30~16:50) (1)知財パラダイムシフト(儲かる知財への進化):1時間 ・・・玉井誠一郎(SIR理事長) (2)世界最初の、国民の立場からの通貨論:1時間 ・・・吉田繁治 (3)がん治療の最前線(理想のがん治療を目指して):1時間 ・・・松浦成昭(大阪大学がんセンター総長) (4)17:00~:懇親会(9Fレストラン) 【案内】 https://www.ipbrand.org/news/20190830.html (申し込み↓) https://ws.formzu.net/fgen/S67582499/ クリックして、氏名等をご記入ください。SIRの協会員でなくても、 誰でも参加ができます。シンポジウムへの参加は無料ですが、講演終 了のあと、5時からの懇親会は、会費が一般5000円/1人、SIR協会員が 3000円/1人になっているとのことです。 約1時間、「国民の立場からの通貨論」について話します。懇親会で は、読者の方々と、お話をする時間がもてるでしょう。 2019年9月17日 吉田繁治 ◎このメルマガに返信すると発行者さんにメッセージを届けられます ※発行者さんに届く内容は、メッセージ、メールアドレスです ◎ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則 の配信停止はこちら ⇒ https://www.mag2.com/m/0000048497.html?l=hpt0a0092e |