貿易戦争とブレグジットの波及から、世界経済は低速化する
This is my site Written by admin on 2019年2月4日 – 10:00
おはようございます。昨年秋の米中貿易戦争から、中国の生産量の
低下が明らかになり、中国に生産とかかわりをもつ、日本、米国、
欧州の企業の、売上と利益の急減速(18年10月~12月期)が明らか
になって来ました。

2010年代に、GDPが日本を超えて世界2位になり、「世界の工場」に
なった中国には、世界中がサプライチェーンとして深いかかわりを
もっています。本稿では、これをテーマとします。

その前に、日本の政府統計の問題。中国の経済統計よりは、はるか
にいい。しかし基幹的な統計で、密かに集計の基準を変えて、連続
性のない数値を出していたことは、政府政策と経済予想にとって重
大な問題になります、

               *

賃金統計をはじめとする、わが国の基幹統計の40%にあたる23で誤
りがあったことが明らかになり、会期が始まった国会では、政府が
追及されています。行政の政策は、国家の統計に基づくものです。
意図したものなら、官僚の犯罪です。

矢面の厚労省には「軽く済ませよう」という意図が見えます。事実
に基づかねばならない行政の統計不正と官僚の仕事ぶりは、見逃し
てはならない。

▼サンプリングについての基本的な知識

40%の経済統計の数字を高く見せる誤りが、諸官庁で、同時に発生
する確率は低い。証明はされなくても、サンプリングにおいて偽装
があったことになるでしょう。目的は、アベノミクスの成果への
「忖度(そんたく)」でしょう。

GDPの統計においても、推計値の発表前、政府自民党の幹事長に対
して内閣府の幹部から内々の報告がある習慣があります。そのとき
「鉛筆舐め」が行われていたのは、広く知られています。国民所得
でもあるGDPの上昇率が高くなると、政権の支持が上がるからです。
経済統計には、政治性が混じっています。(注)GDP=世帯所得+
企業所得+設備の減価償却費=生産額=需要額。GDPの三面等価と
言っています。

統計には、標本を抽出するサンプリングにともなう誤差があります。
サンプリング法では、ランダム抽出したデータから、母集団(全
体)を推計します。そのとき、推計の誤差が出るのです。

(注)政府統計で5300万世帯の全数が調査され、誤差がないのは、
5年に1度の国勢調査だけです。調査員1人が50から100世帯を受け持
つと、費用は1回で650億円もかかるという。費用が大きいため、
2010年からは、調査員に手渡しするか郵送に変わっています。

誤差は、「{(回答比率×(1-回答比率)}÷サンプル数」の結果
の平方根をとって2倍したものです。サンプルのYes、Noの比率が
50%付近のときが、母集団(全体)との誤差が、もっとも大きくな
ります。

【事例】
ある商品に満足すると答えた人が50%の場合、サンプル数が500な
ら、母集団の満足度は、「50%±4.5%=45.5%~54.5%」と推計
されます。(注)サンプル数が500の4倍の、2000のときの誤差は、
約半分の2.2%に縮小します。3000なら1.8%です。母集団は統計用
語であり、全数を意味します。

【サンプル数と誤差】
サンプル数500のときの統計結果には、母集団の全数の調査と、最
大9ポイントの誤差の範囲が出ます。これが、統計への科学的な知
見です。

厚労省が行っていた、東京都の、500人以上の会社の賃金統計では、
全数調査するという規定があるのに、任意に(おそらくは選択し
て)1/3に絞っていたのが事実とすれば、このサンプリング誤差を
利用したものになるでしょう。

英国の首相ディズレリーが言った、「世の中の嘘は3つある。嘘、
大嘘、そして(サンプリングの)統計だ」ということになってしま
っています。

今回発覚したことは、幹部官僚が、内閣からの高い人事評価を求め
たことが原因であるみみっちい奸計(かんけい)に属することでし
ょう。

厚労省の統計で、民間会社の賃金の上昇率が低く出たとすれば、何
らかの「幹部による修正」が行われたはずだからです。そういった
仕事は、「自分の妻や子供には話せない」レベルの、醜悪なもので
す。

根源は、カルロス・ゴーンの報酬の、有価証券報告書への過小記載
と同じ構造のものです。官僚にも同じ心理が忍び寄っているのでし
ょう。

【政府機関は、民間が代行できる】
中央銀行の通貨発行は、西欧と米国では、19世紀まで、民間銀行が
行ってきたことなので、中央銀行という機関は、解消できます。

年金保険、医療保険、介護費、雇用保険などは、厚労省ではなくて
も、監視制度を作れば民間の保険会社が行うことができます。税収
からの補填金を入れる制度を作ればいい。

政府の産業行政を統括している経産省も、必要がない組織です。政
府機関で必要なのは税をつかさどる財務省、国民を守る国防省、犯
罪を取り締まる警察と裁判所です。

外交も、民間機関が行えます。わが国の近代化の過程では必要性が
あった文科省、農水省、国土交通省も今は必要がない。

年金、医療、雇用を政府保険にする福祉国家を言った頃から、政府
機関と財政が肥大し、借金である国債を発行する赤字が増えたので
す。国家を名乗る省庁の解消、公務員、代議士の削減が、真の行政
改革でしょう。税率では、1/3以下の減税になります。消費税の増
税も要らない。

税と福祉では、政府は、毎回、税と福祉費用が高い北欧を参照しま
すが、民間からの監視制度(オンブズマン)が強力な北欧とは行政
の根本が違います。日本には、国民による行政、民主的な監視制度
が欠落しています。民主制として、代議士を選べるだけです。政府
が直接民主制にしなかったのは、官僚制度で、戦前の天皇制の事務
官を続けたからです。

わが国は米国の占領下で、憲法を作り、戦後の福祉国家を言って、
設計を誤ったまま、約70年来ています。国民の多数派の意思があれ
ば、自然ではない国家の体制は、改編と変更ができます。人口減少
時代に向かう今、必要なことでしょう。(注)極端と見られる少数
派の意見であることは承知しています。

【福祉国家の前提条件】
50代以下の人から65歳以上に所得移転を行う福祉国家は、「働く人
が増加し、国民所得が増える」ことを前提にして、成立します。

働く人の平均賃金が上がらなくなり(=税収が増えず)、働く人は
減って、年金保険、医療保険、介護保険の受給者が増えると、構造
的な財政赤字になるのが福祉国家です。

わが国の年金・医療費の基本部分は、中国のような高度成長の終わ
りの時期だった1970年代に設計されています。この中で、民間の平
均の実質賃金が減る中で、統計的な手盛りと、天下りで賃金と年金
をあげてきた政府官僚、そして政治家のコストが高くなっています。

【公務員の生涯報酬】
GDP(国民所得)が増えなかった20年で、民間の平均に比較した公
務員の生涯平均報酬は高くなっています。賃金を決める人事院勧告
制度で、主に上場企業大手の賃金上昇率を参考にし、その上昇率に
準じてきたからです。年金や医療費の公務員共済保険は、もともと
民間より厚い。80年代まで公務員報酬は低かったのです。

GDPが増えず、財政赤字だけが増えた90年代から、毎年、少しずつ
変わってきました。1年ではわずかに見える1.5%違っても、30年で
は1.9倍になります。

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<987号:貿易戦争とブレグジットの波及から、
               世界経済は低速化する>
       2019年1月30日:有料版

【目次】
1.テーマと、その理由
2.アップルの、生産計画の急減の発表からだった(18年10月)
  (注)無料版はここまで。

3.エヌビディア(NVIDIA)の株価も急落した
4.FRBは、2019年の3月までは利上げの停止
5.「尋常ではない(中国の)変化」
6.中国の、企業負債による住宅投資と設備投資
7.EUからの、英国のブレグジットの波及

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■1.テーマと、その理由
          
テーマは、「貿易戦争とブレグジットの、複雑系での波及から、世
界経済は低速化した」こととします。

【IMFの世界GDP予想】
世界の経済統計を集約しているIMFは、「2018年から19年の世界経
済の成長は3.7%と予想され、両年ともに、18年4月時点での予測
(期待)を0.2ポイント下回った」(18年10月)としています。
https://www.imf.org/ja/Publications/WEO/Issues/2018/09/24/world-economic-outlook-october-2018

【期待のフィードバックから、複雑系になる経済】
0.2ポイントなら「微減」です。しかし経済は「人間の認識である
成長期待をフィードバックする回路」をもちます。この集合的な期
待が、経済が複雑系なる理由です。

具体的に言うと、GDPの期待成長率がそれ以前より上がると、投資
と株の購入が増え、下がると投資と株の購入が減ります。このため、
GDPの期待成長率の低下は、その何倍も経済成長率を低めることに
なります。

商品生産と投資という実体経済のしっぽが株価ですが、期待のしっ
ぽが振られると、実体経済を成長させる投資も変化するからです。

【期待を集約する株価】
この期待は、典型的には、投資家の期待が集合したものである「株
価」に現れます。株価指数は期待成長率が低下したとき、10%単位
で下げ、それが上がると10%単位で上げます。

そして、株価指数の高い上昇率は、次年度のGDPの期待成長率を一
層高める要素になって行きます。株価の上昇により、マネー資本の
コストが下がり、投資額が増えるからです。株価が下げるときは、
逆です。

【複雑系】
要因が多く絡む複雑系を例えるのに、「アマゾンの蝶のはばたきが、
フロリダのハリケーンになる」と言われますが、それは極端にして
も、「人々の、GDPへの期待成長率が投資を決めている」ので、世
界のGDP成長に対する0.2ポイントの期待の変化は、増幅されます。

それが、1年後、2年後の実体経済のGDPになって行くのです。金融
経済の期待の変化が、実体経済の変化を増幅しています。

毎月の所得が2万円(約5%)上がると、1万円(約2.5%)しか上が
らないときは買い控えていた高い商品を買うようになるという世帯
の購買行動と同じことが経済全体で起こって、データが共鳴し、影
響し合っているのです。

【PER倍率の変化】
投資家の期待心理を示すのが株価であり、日経平均、米国のS&
P500、欧州のFTSE100、ドイツのDAX100、中国の上海総合などの
PER倍率(=株価÷次期予想純益)です。現在の株価が、将来の何
年分の税引き後利益(純益)を含んでいるかを示す株価の評価指標
がPERです。

投資の将来期待を示す指標であるPER倍率は、世界のGDPの期待成長
率が高まると、その何倍も高くなり、下がるときは何倍も下げます。

世界の国々で、海外生産が多いグローバル経済になっているので、
日本のGDPより、世界経済の期待成長率の変化が、わが国の日経平
均(225社の単純平均株価)のPERを左右している大きな要素になっ
ています。
https://nikkei225jp.com/data/per.php

■2.アップルの、生産計画の急減の発表からだった(18年10月)

【スマホの出荷台数】
アップルは、2018年の第二四半期までは4000万台水準のスマホを生
産・出荷していました。出荷台数で世界1位はサムスン(同7100万
台)、2位が、米国政府での使用が禁止されたファーウェイ(同
5400万台)、3位がアップルでした。世界出荷が3億4200万台であり、
コンピュータを含むデジタル家電のトップです。

【18年10月】
18年6月ころから、アップルの生産が最大20%減になると噂されて
はいました。発表されたのは18年10月です。19年1月から3月期に、
全機種で当初予定の生産を10%減らすということでした。

原因は3つでした。
(1)スマホの世界需要が2018年にピークアウトした。
(2)中国では、アップルから、同じ機能で価格は約半分のファー
ウェイに切り替える人が増えた。つまり「機能・品質÷価格」のコ
ストパフォーマンスで負けた。

アジアと中国では、スマホでのSNSの利用時間が1人平均で約3時間
と世界1長い。日本では1/3の50分。衛星通信なので、20世紀のよう
に長い時間がかかる電話線の敷設が要らないスマホ化と電子マネー
の利用は、中国とアジアがはるかに進んでいます。

【アップルの株価】
アップルの株価時価総額は、トヨタの約5倍です。1兆ドル(110兆
円)を超え、世界史上1位でした(18年10月初旬)。株価を上げる
自社株買いも10兆円とダントツに1位でした。

1株の株価では、頂点が250ドル(18年10月)。生産計画の減少の発
表から150ドル(18年12月)にまで、40%も下げています。今日は
156ドルです(1月30日)。

PERは12.9倍。時価総額は7316億ドル。アップルに部品を供給して
いる、日米中のメーカーの株価も、同時に下げています。
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/chart/AAPL

アップルの株価の下落は、生産台数の減少からです。中国の地方裁
判所が、クアルコム(米国の通信機器設計会社:通信速度が100倍
の5Gのチップも開発)からの特許侵害の訴えから、旧iPhoneの販売
の差し止めをしたことも大きい。

中国では、携帯電話の契約台数が人口を上回る14.7億台で、世界1
の市場です。2位は、インドの11.7億台。日本は人口の半分の6600
万台であり、中国の22分の1と小さい。

【エレクトロニクスの需要】
エレクトロニクス製品の、国別の生産と需要は激変しています。ス
マホは、世界のエレクトロニクスメーカーの盛衰を決めます。

動力機械である自動車でも、中国の需要は3000万台(18年9月は12
%減)。日本の需要は、営業車を含んで519万台と中国の約6分の1
です。TVの出荷台数では、中国が世界の70%を占めています。工業
製品では、2010年代に、中国での販売が世界のメーカーの死命を決
するように、変化しています。

【DACの買い替えにあたって】
私的なことですが、PCオーディオではもっとも重要なDAコンバー
ター(デジタル・アナログ変換器)として、ONKYOの、評価の高い
DAC-1000(アマゾンで115千円)を、2012年から6年使っています。

最近、時々、超高域での雑音が入ります。昨日メーカーに問い合わ
せると、電源プラグを抜いて放電し、再度入れて、ソフトのクリア
をするといいかもしれないという。行ってみると、(たぶん)直り
ましたが、買い替えの時期かもしれません。数百個は使われている
コンデンサの容量が抜けたのか・・・

数か月前からネットで検索し、(音を想像しながら楽しみに)探し
ているのですが価格での中高級品まで中国メーカーが制圧していま
す。カタログ性能はよくても、完成品の品質検査に甘いところがあ
り、バラつきが混じる中国製を買うかどうか、悩んでいます。買う
ことに60%くらい傾斜しています。

1980年代までは世界1だった日本のメーカーは、2000年代のデジタ
ル化とともに、消えています。いいものを作っていた専門メーカー
のパイオニアも、先ごろ香港のファンドに買収され、上場が廃止さ
れました。中国は、約10年で、世界の工場になっています。需要が
爆発するAIでも、日本は、米国と中国の3周遅れという。これも、
技術開発を約20年、軽視したつけです。

日銀の量的緩和、政府の拡張財政、そして何よりも円安に依存し、
将来投資が少なかったからです。円安とは、コストダウンの技術開
発からではなく、通貨価値の低下により輸出品のドル価格を下げる
ことです。

1980年代まで、2倍の円高にもかかわらず、正当な技術開発とコス
トダウンをして輸出を続けていました。世界からは、驚異とされた
のです。日本経済の強さは、技術革新からでした。2000年代からは
技術開発が低迷し円安への依存になっています。その間に、中国が
先端的なITを含んで、工業化したのです。

【GAFAの株価】
アップルの株価下落は、株価バブルを作って来たGAFAの株価崩壊の
始まりを示すものかもしれません。

GAFAは、グーグル(時価総額7230億ドル:79兆円)、アップル(同
7480億ドル:82兆円)、フェースブック(3520億ドル:38兆円)、
アマゾン(7230億ドル:79兆円)です。

6位には、中国のテンセント(3800億ドル:41兆円)、8位にアリバ
バ(3520億ドル:38兆円)がはいっています。日本の1位はトヨタ
です。時価総額は1680億ドル(18兆円)、世界の41位。産業への期
待を示すように、50位以内にはトヨタしかありません。
https://www.180.co.jp/world_etf_adr/adr/ranking.htm

投資家心理の変化から、GAFAの株価が40%下落のアップルを追って、
同時に下がると、第二のリーマン危機が起こります。投資家と金融
機関の資産が縮小するからです。(注)中国の住宅・不動産価格の
下落と重なって、2019年秋の可能性は高いと見ています。

2018年の3月までは、FRBの利上げの停止を好材料にして株価が戻る
でしょう。問題は、世界経済の急減速のデータが出揃う時期になる
2019年の秋(9月から11月)です。

■3.エヌビディア(NVIDIA)の株価も急落した

・・・・無料版はここまでとします。

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がでしょうか。
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