5000万戸の空き家が判明した中国の金融危機が近い
Written by admin on 2019年1月26日 – 15:00
ブルムバーグが「中国の空き家が5000万戸」と報じています。ご承 知のように、住宅価格を含み、中国の経済統計は、信頼に足るもの が少ない。日本の厚労省とは次元が違って、集計の基準が、激しく 任意だからです。 1月16日の有料版(25ページ)では、中国が、住宅価格のバブルの 崩壊から金融危機に向かっていることを解析しています。本稿では、 それを半分に圧縮、抜粋して送ります。 * 世界的な資産バブルが増幅したのか、ヴァイオリンの銘器とされて いるストラディヴァリウスは、20億円以上で取引されているという。 弓も2000万円とか。年平均15%から20%の高騰。市場を介さない、 デリバティブのような相対取引なので、正確な時価は不明ですが。 デリバティブにも、株式のような公開取引所はない。銀行・金融機 関の相対(あいたい)で、価格がついています。国債も、金融機関 の相対取引です。金利は、国債の売買価格によって決まっています。 資産額が世界で15位、1.77兆ドル(2018年:195兆円)のドイツ銀 行がもつ、時価が不明なデリバティブは、ここ数年、ユーロ危機の 元凶になると言われ続けています。ドイツ銀行は、国内ではなく、 東欧・南欧・中東・中国を含むアジアの新興国への貸付と債権がと りわけ多い。 中国住宅のテーマとも関連しますが、世界のメガバンクの資産額で も、中国が急浮上し、順位の大きな変化が起こっています。 ・1位 中国商工銀行4兆ドル(440兆円)、 ・2位 中国建設銀行3.4兆ドル(374兆円)、 ・3位 中国農業銀行3.2兆ドル(352兆円)、 ・4位 中国銀行2.9兆ドル(319兆円)、 ・5位がやっと日本の三菱UFJフィナンシャルグループの2.8兆ドル (308兆円)です。 中国の大手銀行は、1位から4位を独占しています。1980年代後期の、 預金が多かった日本の大手銀行と同じです。銀行のB/Sの資産額は、 負債である預金と、資産である貸付金や債券の大きさを示すもので す。 銀行は、金利の低い短期のマネー(預金)を、金利の高い長期のマ ネー(貸付金や債券)に変換する仕組みのものです。(注)ファイ ナンス理論では、「短期資金の長期への変換」と言っています。 上記以外では、中国では、理財商品(中国版サブプライムローン) を作って、それを金利の高い証券として売っているシャドーバンク が、9兆ドル(990兆円)です。シャドーバンク(影の銀行)は、銀 行のようには政府の管理と規制を受けていず、破綻のときも政府の 救済・支援がない金融機関です。 融資の中身は、日本のノンバンクあるいは1990年代の住専に似てい ます。米国の、一般の預金がないゴールドマンやJPモルガンのよう な投資銀行の範疇です。投資銀行は預金を預かって運用する「商業 銀行」ではなく、短期金利を他行から借りて、不動産、債券、株式 投資で運用しているという意味です。 900兆円に膨らんでいる中国のシャドーバンクは、投資不動産に利 回りを金利とする理財商品(証券)を個人に売って、資金を調達し ています。銀行預金より金利が高いとして、個人が理財商品を買っ ているのです。この点も、証券化されて売られていた米国のサブプ ライムローンと同じです。理財商品は、不動産価格が下がると、サ ブプライムローンと同じように不良化します。 中国の「銀行+シャドーバンク」には、住宅・不動産バブルが崩壊 すると、何回破産しても足りない、潜在的な不良債権があります。 中国の公式統計での不良債権(シャドーバンクは除外)は、資産額 の1.7%と、極めて低い。比較すれば、金融危機の1998年から18年 にかかって融資を回収して切り捨ててきた日本の115銀行の不良債 権は8.3兆円であり、1.5%です(16年12月)。現在の日本並みに不 良債権が少ないことを、誰でも変に思うでしょう。 金融危機からの銀行の自力回復には、政府の援助(出資)、中央銀 行のマネー増刷がなければ、12年から20年はかかります。 穏やかな推計でも、2018年で中国の銀行の不良債権は、1.7%の10 倍あるとされています。20倍かもしれません。 中国政府は、日本や米国の基準では、不良債権を見積もっていませ ん。実態を示せば、利にさとい中国人の預金取り付けが起こるから です。 900兆円の理財商品のうち過半は、すでに不良化しているでしょう か。追い貸しの借入金の増加により、自転車操業の資金繰りがされ ていると推測します。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <985号;2019年は、リーマン危機から11年目(後編)> 2019年1月16日:有料版 【目次】 1.中国の不動産・住宅バブルの崩壊の兆候 2.日中の、国家の違い 3.習近平主席による粛清政策と、金の買い漁り 4.増えすぎた経済主体別の負債 5.住宅在庫が5000万戸(!) 6.下落の端緒は、最も住宅が高くなっている上海、香港、シンセン 7.住宅と不動産価格の下落は、中国発リーマン危機を生む 【後記:銀行の不良債権処理】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.中国の不動産・住宅バブルの崩壊の兆候 中国の経済統計には、かつてのソ連のような計画経済のものが多い。 ソ連では、製造された商品の価格は政府価格であり、売れ残った不 良在庫があっても、下がらなかったのです。 中国の新築住宅の価格は、日本や米国のように、自由な市場が、売 買で価格を決めたものではありません。新築住宅価格、GDP統計に は、作りすぎて残った住宅在庫の、値下がり統計が入っていません。 GDPは生産額を集計します。いつも4%付近とされている失業率も、 都市戸籍の人だけが対象です。農村戸籍の人には失業という概念が ないからです。 この中国でも、株式市場の株価は、売れた価格です。しかし資本 (=マネー)を自由化してはいず、世界市場からは、保護された株 価です。 通貨では、 ・資本の流入になる、ドルから人民元への交換は自由ですが、 ・元の国外流出になる「ドル買い、ユーロ買い、円買い/元売り」 には、金額の制限があります。 中国の株価は、2018年は、年初の3500ポイントから2535へと、28% も下げています(19年1月14日:上海総合の平均指数)。時価総額 では250兆円という大きな損失が生じ、株の形の金融資産は250兆円 縮小しています。 株が250兆円下がっているのに、住宅価格が下がっていないのは、 新築の売り出し価格の統計だからです。売れた価格の統計は公表s れていません。 【計画経済での、商品や住宅価格】 共産主義の計画経済では、在庫が売れたときの価格統計ありません でした。ソ連のGDP統計では、商品は政府の統制価格で全部売れた とされていました。流通在庫、不良在庫という概念はなかったので す。このため価格は下がらず、GDPは増え続けていました。 風船のように膨らんでいたGDPに応じて増刷されていたルーブルは、 ソ連邦が解体した1991年(ゴルバチョフの時代)、暴落(1/1000) して、ハイパーインフレになったのです。紙幣は、政府の意思で、 生産にかかわらず、いくらでも増刷できるからです。通貨の増刷は、 砂糖水を水で薄めるように、マネー1単位の価値を希薄化させます。 中国の住宅価格も、新築価格だけを統計する限りは、下がりにくい。 (注)住宅、不動産、固定資本の建設額は、そのままGDPになりま す。 政府統計をもとにした、2012年から6年間の住宅の単価は、以下の ように、2014年を除いて、上がり続けています。 一級とは、周辺部を含むと3000万人クラスの人口が住む北京、上海、 シンセン、広州の4都市です。二級は武漢、成都など25都市。3,4級 都市は邯鄲、金華など21の市です。 経済体制が今も違う香港は、除外されています。 【中国の住宅単価の指数:2012年から2017年】 2012年 13年 14年 15年 16年 17年 平均上昇 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 一級都市 100 110 110 140 160 185 13%/年 二級都市 100 105 100 100 120 130 5%/年 三級都市 100 100 105 95 105 115 3%/年 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ (データは、三井住友銀行中国有限公司:17年9月) 一級都市の1平方メートルあたりの住宅単価は、2012年を100とする と、年平均13%上がり続け、5年で1.85倍です。今、1億円や2億円 の住宅はザラです。統計から漏れている香港では、2億円から数億 円。一戸の面積の増加もあるからです。 ドルペッグ制(対ドルの準固定相場)をとる香港ドルが、元の送 金・受金の、仲介と中継基地になっていて、香港は、ロンドンのシ ティのような金融都市だからです。 二級都市では、平均年率5%の上昇。三級都市では、年率3%の上昇 と穏やかです。ただし、人口では三級都市でも、大都市周辺の東莞、 佛山、廊坊、中山などでは、一級都市と同じように、5年で1.8倍の 上昇率。総じて、年10%の上昇を続けてきたと言っていいでしょう。 住宅と商業用不動産は、固定資本投資の新築価格として、中国の GDPを底上げしています。あとで述べる5000万戸(新築の5年分)と いう、膨大な売れ残り在庫が、世帯に売れるときの価格を統計した ら中国のGDPは、2ポイントは低下するでしょう。 住宅価格の過大見積もりという要素で、6.5%が4.5%の成長になる ということです。 それとともに、銀行とノンバンクの不動産融資は不良化し、リーマ ン危機のような金融危機に向かいます。不良債権は200兆円以上に なるかもしれません。 【一方でローン残高は、過小に集計されている】 住宅ローンの残高は、2016年で20兆元(320兆円)とされています が、これは日本とあまり変わらない額です。 米国が1000兆円ですから、中国は、その1/2の500兆円はあるでしょ う。店舗やオフィスの商業用不動産のローンは含んでいません。 中国では、GDPの中に占める、住宅と不動産投資、および道路や鉄 道、電力、通信などの社会インフラの投資率が異常に高く、45%で す。(日本では20%:米国では15%)。代わりに、個人消費の構成 比が少ない。 【固定資本投資額がGDPの40~45%(日本は約20%です)】 2018年の名目GDPは13兆ドル(1430兆円;日本の2.6倍、米国の 2860兆円の半分)です。 固定資本投資は1年分で、日本のGDPを超える570兆円(40%)を占 めています。そのための資金が、(1)企業負債、(2)政府負債、 (3)個人負債の、増加の原因になっているものです。 特にリーマン危機のあと、企業負債の増加率が高い。金融危機にな った米欧への輸出の減少を、中国政府は、住宅建設、商業用不動産、 政府の固定資本の増加でうずめる政策をとったからです。 計画経済の中国では、政府の政策は、時間差なく、企業の投資行動 になります。人民銀行が元を刷って銀行に貸して、銀行は増えたマ ネーを企業に貸す。これが08年のあと、企業負債の増え方が大きく なった原因です。この点も、政策の波及時間が長い先進国と違いま す。 【元の増刷は世界1のスケール】 人民銀行のB/S(資産=負債)の規模は、元発行の金額を示します。 2017年5月で、580兆円に膨らんでいます。米国のFRBが4.14兆ドル (455兆円)、日銀が553兆円です(19年1月)。 https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2019/ac190110.htm/ 5年間、世界の中央銀行の、約100年の歴史で、異例な異次元緩和を 行っている日銀より、人民銀行の通貨発行が多い。住宅建設、商業 用ビル建設、道路、電力、通信の固定資本投資を増加させるための 元の増発を行ったからです。 【ドル準備で元を発行している】 日本や米国では、中央銀行が通貨を増発するときは、代替資産とし て国債を買います。ところが中国では、人民銀行がドル債を買って 元を発行しています。人民元は、世界にはあまり知られていません が、ドル準備制の通貨です。 理由は、元と中国国債は、資本が自由化されてないので、国際的な 信用が低いからです。資本の自由化とは、企業や個人が自由に、外 貨を買うことができることです。 政府は「中国人の、ドル買い/人民元売り」を恐れ、外貨への交換 に制限を加えています。 資本を自由化すると、ホンネでは共産党政府と人民元の価値を信用 していない富裕者の多くが「ドル買い/元売り」に殺到するからで す。海外への留学と移住が多いことからも、わかるでしょう。 ■2.日中の、国家の違い 【?(パオ)が国家の中の国家】 古代からの、社会的な紐帯(同盟)である?(バオ:小室直樹)は、 北京閥と上海閥に分かれ、国と軍の支配権を争う政治的な興亡を続 けています。中国では共産党の独裁体制が続くなかで、王朝の興亡 が続いています。選挙制がないからです。 【闘争】 この闘争は、強い政治家を生む理由にもなっています。民主主義で 選ばれた他国の元首に対する尊大な態度から、これがわかるでしょ う。徳川幕府のような封建制と、共産党内での身分制を残す国家が 中国です。 人民には、居住の自由(=職業選択の自由になる)と外貨交換の自 由は部分的にしかありません。GDPの約70%を生む国有企業の幹部 は、全員が共産党員であり、身分制の共産党による国家資本主義で す。 【政府と自国通貨への信用】 日本人は、表では政府を非難します。しかしホンネでは、政府、円 という通貨、日本経済、日本企業を信用しています。国家の根に 「万世一系の天皇」があるからでしょう。 今年が代替わりです。昭和から平成になった初年度(1989年)は、 資産バブルの最後の年だったことを忘れません。天皇の代替わりと ともに、1990年から資産バブルが破裂しています。 米国では、およそ2期(8年)で大統領が変わることが、企業でも短 期経営になることを促しているのかもしれません。米国ではいま、 2016年末からのトランプボーナス(減税と財政支出増加への期待) で上がった株価が、ボーナスを食い尽くして下げています。 日本では大正の15年を除き、30年から45年と長い。昭和は天皇在位 では65年ですが。敗戦で国家体制の分断があるので、実質は45年。 古代から、オセロのようにひっくり返る王朝の興亡を続け、20年で 経済大国になった中国では、政府に寄せる国民の信用が薄い。国産 を重んじる文化も低い。 富裕者層は中国産の、農薬と添加物が多い食品を食べず、子息は海 外に留学させ、日本を含む海外の不動産を買っています。昨年末に 行ったバンクーバーでも中国人が多かった。25%は中国人という。 カナダは移住先として、人気があります。 ■4.増えすぎた経済主体別の負債 こうした通貨シナリオを知っていれば、中国共産党は、以降で示す、 リーマン危機のあとの不動産投資による負債の急増を、冷静に眺め ることもできるでしょう。バブルの崩壊からの失業が引き起こす、 天安門のような民主革命の恐れがなくなるからです。 政治・経済の体制の転覆であり下克上でもある民主革命は、計画経 済の中で失業した、あるいは所得が減った貧者の連合の、富者への 反感が起こすものです。中国では、資産バブルにより巨大な貧富の 格差が生じています。 ▼中国の主体別負債:リーマン危機後: 2年単位:10億ドル: 2008年 2010年 2012年 2014年 2016年 2018年 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 政府 1,162 1,749 2,646 3,697 5,021 6,428 世帯 767 1,359 2,227 2,312 4,706 6,629 企業 3,928 6,429 9,818 14,096 18,090 22,052 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 合計 5,837 9,537 14,692 21,105 27,817 28,681 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ GDP比 145% 180% 187% 205% 255% 239% ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ データBIS(国際決済銀行):ここでは、2年ごとに示した。 世界中の、部門別負債の大きなエクセルなので、分かりにくい元 データが公開されています。BISの中国の負債データには、偽装は ないと考えています。日本でも、順次、新聞が書くようになってき ました。当方は、ほぼ4年前から、講演や書く時に使っています。 https://www.bis.org/statistics/totcredit.htm 中国では、建設会社が建物の骨組みを売り、買った人が内装と設備 をします。このため、売れ残って夜間に照明がつかない骨組みだけ の建物は、幽霊の屋敷に見えるので、鬼城と言われます。 建設する企業部門の負債は、2008年は3.9兆ドル(429兆円)と、 GDPに対して97%と他国よりは大きかったものの、まぁまぁ妥当で の線。 これが、2018年の3月には、22兆ドル(2420兆円)に膨らみ、GDP比 184%という残高になっています。年平均の増加率は21%と、GDPの 増加である10%程度の2倍です。平均増加額は、2兆ドル(220兆 円)です。GDP比で1.8倍の企業部門の総負債は、日本の国債(GDP 比約200%)と同じく、異常な大きさです。 企業の負債は、なぜ10年間も、年率20%という高さで膨らみ続けて きたのか。年1000万戸の住宅建設、商業用不動産建設、インフラ投 資のためです。 しかし、住宅建設では、それが売れれば、建設会社の負債は減って、 世帯の負債に置き換わります。世帯の負債の増加は2008年に7670億 ドル(84兆円)から6.6兆ドル(726兆円)です。 年平均で、71兆円の増加でしかない。他方で。多い建設業を含む企 業の負債は、1年に220兆円という速度で増加しています。「近代化 の経済」では、住宅、ビル、道路や電力の土木・建設業が多くなり ます。日本でも1980年代まで建設業は600万人でした。現在は500万 人。 なぜこんなに企業の負債が増えたのか。年平均1000万戸の建設した 住宅に、鬼城のままの売れ残り在庫が出ているからです。 新築の価格は、多くが売れていないので、下がっていない。毎年、 新築が行われている新しい価格の統計だからです。(注)上海では、 2018年の新築価格は、前年比で8%下がっているという調査が出て います(NYの調査会社)。これは、まだ政府統計には入っていませ ん。 ■5.住宅在庫が5000万戸(!) 18年の12月に、ブルムバーグから、驚くべきデータが公表されまし た。中国の住宅在庫が5000万軒というものです。調査したのは、中 国の西南大学の甘犁教授という。重慶市にある、この大学は、中国 の失業率でも、本当を示すデータを出しています。 5000万戸は、中国の全住宅の22%、1年の1000万戸建設の5年分です。 https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-09/PHWXGI6TTDSF01 一級都市の北京、上海、広州での、政府の在庫統計は、5か月分か ら10か月分でした。もっとも多いシンセンでも、20か月分です。し かしこの在庫が、全中国で5000万戸、新築の5年分という。 (注)日本も、800万戸(全住宅の13%:新築の8年分)の空き家が ありますが、中国とは、要因が違います。日本は、人口減と老朽化 による空き家です。中国では、GDPを増やすための政府が音頭をと った「建て過ぎと価格高騰」が原因の空き家が多い。政府・銀行が、 「貸付金」を増やしたからです。 これで、中国の企業負債が、毎年平均2兆ドル(220兆円)増える一 方で、減らない理由が分かりました。 作った物件が、約5年分も売れ残っていたのです。普通の世帯が買 うことのできない価格(年収の10倍から15倍以上)の新築価格だっ たからです。 売れていないから、価格は最初のまま統計され、次のまた上がった 新築価格になっているのでしょう。売れなければ世帯のローンには 振り替わらないので、企業の建設費の負債が増えるままになります。 商業用の不動産でも、急激に伸びているアリババなどのネット販売 によって、客をとられ、閑古鳥が鳴いているショッピングセンター が多いという。これも、企業部門の負債の増加になります。利益が 出ず、借金を減らすことができなくて、運転資金借り入れが増えて いるからです。 こうした不動産が、投げ売りするしかない不良在庫にならないのは、 政府の意向で動く、計画経済の銀行が企業に対して、利払いの分の 追い貸しをしているからでしょう。他の国では、資金繰りのために 投げ売りになります。 銀行からの追い貸しが続く間(企業負債が増える間)は、新たな借 入金で利払いができるように見えるので、不良債権ではない。GDP の70%を生む国有企業の負債は、年220兆円という異常な金額で、 膨らみ続けています。 ■6.下落の端緒は、最も住宅が高くなっている上海、香港、シンセ ン 最近10年で3倍に上がり(年12%上昇)、中国でもっとも高い香港 の住宅価格は、2018年の8月のピークからは5%下げています(大手 の仲介業の中原不動産)。(WSJ:2018年11月27日)。 戸籍人口2418万人という上海の新築物件も、10%下げています。売 れていない在庫が、もっとも多いシンセンも下げているはずです。 なお中国の都市人口は、無戸籍(農村戸籍)を含むと約20%は多い でしょう。中国人には居住地の自由はないからです。 2019年は、中国住宅価格が下がる開始年でしょう。中国の総人口は、 2018年から、日本の8年遅れで減り始めています。 世帯所得の増加率も年10%の期待から、商品生産の粗利益である GDPの伸び率の低下に対応して、5%程度かそれ以下に下がってきて いるからです。 【期待所得の増加率は、低下した】 所得の、期待上昇率の低下への認識は、年収の10倍から20倍の高い 住宅を買ってローンを組むことを、押しとどめます。共稼ぎを想定 した男性は10年後、20年後の住宅価格と、所得の上昇を期待して (織り込んで)、住宅を買っているからです。 中国に多い共稼ぎで、無理なく買える住宅価格は、大都市部で、共 稼ぎ700万円の年収の5倍から6倍までです。中国では、住宅を買う ことが結婚の条件ですが、価格が上がってしまった30歳以下の世代 には、これが果たせなくなっています。 【今後、住宅価格が上がる、需給面からの要素はない】 2019年に、中国の新築住宅価格が上がる要素はあるでしょうか。 (1)米中貿易戦争で、輸出が減り、所得を決めるGDPの伸びは低下 する。 (2)増え続けていた中国の人口が、横ばいから下落に入ったこと により、増え続けていた住宅の需要動機が下がり、すこしずつ減少 に向かうことは決定的な要素です。 国連は中国の人口は、2020年からピークになり、減少は2030年から としていましたが、現実では、12年早まっています。1人の女性の 出生率が1.28と日本の1.41よりも相当に低く、幼少人口の減少に慌 てた政府が一人っ子政策を停止しても、子供の誕生が過去の想定よ り減ってきたからです。 https://toukeidata.com/country/china_jinkou.html 人口減は0.2%や0.3%と低いように見えても、平行する住宅価格の 下落率では、年10%と高くなります。これが、シンセン、香港、上 海で先駆けて起こっている下落でしょう。 住宅は「1年に10%は上がるという期待」から、賃貸しの投資用と しても多く買われてきました。「10%下がるという予想」になると、 中の上の所得クラスの人で二軒目三軒目、富裕者の10軒目や20軒目 の新築住宅購入が、大きく減ります。 【富裕層の住宅投資も大きく減少する】 中国では、2014年ころまで、先進国以上に富んだ階層の投資・賃貸 住宅の買いが多かった。世帯の居住のための需要より、価格が高く 上がっていた理由でもあります。 需要数が減れば、売れる住宅価格は10%、15、20%、30%と価格が 下がります。これが、2018年秋から2019年にかけ、新築価格ピーク アウトしたあと、起こることでしょう。 政府が管理している新築住宅価格に、需要数の急減が反映されるこ とはなくても、実際の売買市場では、下がって行きます。数年後は、 新しく作られる新築価格も、大きく下げるでしょう。全住宅の5戸 に1戸の割合にもなる、5000万戸の空き家が価格低下に及ぼす圧力 は巨大です。 【住宅価格の下落は、景気循環からでなく構造要因から】 景気の減速がもたらす住宅価格の下落なら、回復もあるでしょう。 2019年からの下げは構造的なものです。 日本では、200万戸/年だった新築が、1980年代末に、今の中国と同 じ需要の構造変化から80万戸から100万戸に減っています。平均価 格も年収の6倍から6倍で買うことができる価格(約半分)に下がり ました。 同じことが、2019年からの中国で起こります。景気循環の問題では ないのです。 ■7.住宅と不動産価格の下落は、中国発リーマン危機を生む ・・・無料版はここまでとします。 以下は有料版の申し込みサイトです。新年からいかがでしょうか。 https://www.mag2.com/m/P0000018.html 有料版のバックナンバー(以下に過去の全部があります↓) https://www.mag2.com/archives/P0000018/ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【ビジネス知識源無料版:感想は自由な内容で。 以下は、項目の目処です】 1.内容は、興味がもてますか? 2.理解は進みましたか? 3.疑問点、ご意見はありますか? 4.その他、感想、希望テーマ等 5.差し支えない範囲で、あなたの横顔情報があると、テーマ選択 と内容記述の際、より的確に書くための参考になります。 気軽に送信してください。感想やご意見は励みと参考になり、うれ しく読んでいます。時間の関係で、返事や回答ができないときも、 全部読みます。共通のものは、後の記事に反映させるよう努めます。 【著者へのひとことメール、および読者アンケートの送信先】 yoshida@cool-knowledge.com ■1. 有料版の新規登録は、最初、無料お試しセットです(1か月 分):月中のいつ申し込んでも、その月の既発行分は、その全部を 読むことができます。その後の解除は自由です。継続したとき、2 か月目分から、課金されます。 (1)『会員登録』で支払い方法とパスワードを決めた後、 (2)登録方法を案内する『受付メール』が送ってきて、 (3)その後、『購読マガジンの登録』という3段階の手順です。 【↓会員登録と解除の、方法の説明】 http://www.mag2.com/howtouse.html#regist 登録または解除は、ご自分でお願いします。 (有料版の登録↓) http://www.mag2.com/m/P0000018.html ・・・以上 ◎このメルマガに返信すると発行者さんにメッセージを届けられます ※発行者さんに届く内容は、メッセージ、メールアドレスです ◎ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則 のバックナンバーはこちら ⇒ https://archives.mag2.com/0000048497/index.html?l=hpt0a0092e ◎ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則 の配信停止はこちら ⇒ 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