おはようございます。前号に続き、わが国経済の問題でもある、
働く人の生産性です。
従業員なら、今日会社に行って行うことははっきりしています。
しかし経営者が、今日何を行うべきかということについては、
古来多くの議論がありながら、未だにはっきりされていません。
わが国でペーパーや休眠会社ではなく、稼働している会社は262万
社です。登録法人数は421万社ありますが非稼働が半分くらいはあ
るからです。雇用されている従業者は4013万人です(工業統計
2006年)。1社平均では15人の従業者です。中小企業に働く人が、
全雇用の7割で、3人のうち2人に当たります。
大企業とされるのは、
・製造業では資本金3億円以上(従業者300人以上)、
・卸で1億円以上(従業者100人以上)、
・小売では6000万円以上(従業者50人以上)、
・サービス業では6000万円以上(従業者100人以上)です。
大企業は1万2000社であり、社数では全体の1.2%です(中小企業法
の定義)。
大企業のうち東証での株式公開企業は、一部が2085社、二部513社、
マザーズ252社、ジャスダック201社で、合計3051社です。「大企
業」とされるもののうち、4社に1社は上場しています。
上場会社は、「会社所有と経営の分離」が図られていると言っても
いい。非上場の会社は、多くが「株主=経営者」でしょう。株主が
取締役を任命しますが、非上場会社の多くでは家族株主であり、代
表者は自分で自分を任命しています。
上場企業株の時価総額は688兆円(18年4月末:東証)ですから、平
均の株主価値(会社価値とも言う)は2255億円と大きい。
この株主価値は、投資家による「株価の評価額×株式数」です。
株価の評価基準を示す株価収益率の、次期予想PERでは15.8倍です。
3051社の上場企業の、税引き後純利益の平均が150億円であり(次
期予想)、株は純利益の15.8年分の2255億円と評価されているとい
う意味です。(注)予想PER(株価/収益率)は、「株価÷次期予想
税引き後純利益」で計算され、株価の評価水準を示します。15.8倍
とは、次期予想純益に対して、株価が15.8年分であるということで
す。
わが国260万社の、役員の平均数を4名とすれば、合計では1040万人
が取締役(英語でディレクター)であり、経営層に属します。経営
者という仕事に従事している人が1040万人。これは職業として最大
のボリュームです。ちなみに小売業従事者は約700万人。
仕事は何ですか?と尋ねたとき、「経営者または経営層です」と答
えるべき人が、最大多数です。つまり経営は、ありふれた仕事です。
東南アジアで、日本人男性がみんな「社長さん」と呼ばれるくらい
社長は多い。(注)これは世界中で同じです。
経営者は何を行うべきか、ということです。
端的に言うと3項でしょう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
<941号:「働き方改革法」と流通業の生産性問題(2)>
2018年5月16日:有料版
【目次】
1.「経営」ということの3項
2.少なくとも1.5倍への上昇が必要な、小売業の人時生産性
3.労働生産性を上げるには、作業の人時生産性の分析が必要
4.改善の目標の作成
5.日本の労働生産性の推移
6.中長期経営計画書とする
【後記】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■1.「経営」ということの3項
株主兼社長が259万人(88.6%)のため、分かりにくくなっている
のが、「マネーと人を集めた経営として、何を行うべきか」です。
経験から、以下のようにまとめます。
▼(1)ビジョンの方向への仕事をリードすること:
ビジョン(会社の目標とするもの、あるいは姿)を作り、ビジョン
の達成に向かうよう社員の仕事をリード(誘導)すること。
先行してリードを行うものが、リーダシップ(国語では求心力)で
す。指揮者のような指揮力であり、経営者の、明示された、あるい
は暗黙の意向を忖度(そんたく)し、その方向への仕事を行うのが
従業員です。
小売業では、「商品の顧客にとっての価値=品質÷価格」を高める
ことが商品のビジョンです。会社のビジョンは、販売する商品のビ
ジョンになります。製造業でも同じであり、「商品の顧客にとって
の価値=機能・品質÷価格」を高めることでしょう。
小売業でもっとも多い食品スーパー(中大型店で全国1万8000店;
人口7000人に1店:1店平均の売上は13億円)の、食品の品質は4つ
の官能的な要素、「品質=見かけ(色+形)+鮮度+味+無添加」
でしょう。官能的とは、感覚的ということです。
官能を数値化するのが工業です。カップ麺のメーカーはこれを毎月
行っています。食品スーパーも大規模チェーン化するには、官能的
なものを数値化しなければならない。ビジョンの数値化です。数値
化しないと官能が発達した少数の人にしか品質がわからないからで
す。
▼(2)投下資本利益率(ROI=利益/投資額)を上昇させること:
これは資本主義の中の会社の、経済的な使命(ミッション)です。
ROIの上昇は、株価につながります。
株主兼経営者が99.6%なので、株式の購入という形で資本を出した
株主の意思は、わからないかもしれない。
上場して株を売ればはっきりします。株主は株価の上昇を期待して
株を買う。「ROI=利益/投資額」での利益を出せない、あるいは大
きく低下させた経営者は、株主総会で解任されます。株主は、株価
を上げる経営を、取締役に委任しているからです。
▼(3)人時生産性の上昇を図ること:
会社には、マネーの面では出資がありますが、出資ではなくても、
自分の生きる時間を勤務時間として売る従業員(社員+パート)が
集まっています。
会社は、労働時間を買っているのです。
対価が、報酬(定期給料+臨時賞与+成果給)です。
株主が株価の上昇を期待してマネーを出資するように、従業員は時
間という資源を売って、報酬を得ています。
株価の上昇が、経営への期待であると同様に、従業員の期待は、経
済的には報酬の上昇です。立場の面では、マネジメント階級での昇
進でしょう。
(注)省庁のキャリア官僚では、およそ2年ごとの配転と昇進が慣
例になっています。昇進のための配転が、古臭い言葉の「出世(人
間として上位に立つこと)」です。キャリア官僚の仕事のインセン
ティブが出世でしょう。お役人の世界での過去からの伝統的な慣例
は、法に準じるものです。
経営という仕事が、
・株主に対しては株価を上げる使命(ミッション)をもつように、
・従業員に対しては、誰にも平等な時間を使い、人時生産性(粗利
益÷労働時間)の高い仕事ができるようにしていく義務をもつでし
ょう。
つまり人時生産性を上昇させるための作業の工程・仕組みを、情報
化・システム化する方法を含んで、改善していくことは経営の義務
的な使命です。従業員は、自分では、会社の作業の工程・仕組みを
変えることができないからです。
ただし人間には不得意なこと、得意なことがあります。トップマネ
ジメント1名では、(1)ビジョンの実行、(2)ROIの上昇、(3)
人時生産性の上昇を図ることをリードできないかもしれません。
そのときに行うのが、取締役での分業と委任です。それぞれに得意
な人を当て、トップマネジメントチーム(いわば内閣)を構成しま
す。
野球でも、1人ではすべてのプレー機能は満たせません。経営でも
同じです。社長はトップマネジメントチームの構成の、結果責任を
負います。
責任で上位のAさんがBさんに、仕事を委任した場合、Bさんの仕事
の結果責任は、委任する権限をもつAさんが負います。これが任命
責任です。任命者が結果責任を負うことを根拠にして、Bさんの仕
事への命令権があるのです。
たとえば野球のチーム、サッカーのチームの勝利の果実、敗戦の責
任は、任命権をもつ監督が負います。プレーヤーの義務的な使命は、
自分の役割の中で専門的な(技術的な)プレーを行うことです。ト
ップマネジメントが全権をもつということの意味は、結果責任を負
うことがあるからです。
■2.少なくとも1.5倍の上昇が必要な、小売業の人時生産性
前稿でわが国大手業(チェーンストア協会:56社:9904店)の、
「悲惨な」人時生産性を示しました。悲惨と言うのは、当方だけし
か知れませんが、客観的に見てやはりミゼラブルです。
(注)人時生産性=粗利益÷労働時間。
【下がっている大手小売業の生産性指標】
会社の平均年商は2306億円と大きく、平均店舗数も177店(1店13億
円:従業員数47人)と多い。8兆円を売るわが国最大手のイオング
ループ(食品スーパーではマックスバリュ)も含んでいます。
(注)従業員数はパート2名を、8時間労働の1人としています。
生産性項目 2006年 2017年 対比
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・1人当管理面積 15.5坪 16.9坪 109%
・1人当売上 3095万円 2775万円 89.7%
・1人当粗利益 773万円 693万円 89.7%
・人時生産性 3865円 3465円 89.7%
・可能な月収平均 22万円/月 19万円/月 89.7%
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(注)月収は、1人当たり粗利益の45%(労働分配率45%)とし、
賞与を年4か月として16か月で割った平均。労働分配率が45%を超
えると、小売業は構造的な赤字になる。経営は3年しか維持できな
い。
役員、部長、課長、主任、社員、パートの全部の総平均で、月収で
は19万円が上限です(8時間労働分)。全国の初任給が20万円くら
いですから、小売業の平均賃金は、それより低くなってしまった。
これが、現状の生産性が示す会社の姿です。
応募が少なく、「人手不足」になるのが当然でしょう。小売業の賃
金の低さが、魅力をなくしています。1992年以降、26年も、人時生
産性が上がらず、下がる傾向だったからです。
GDP(国内総生産)=商品の付加価値生産額
=企業と世帯の所得額+減価償却費
=商品需要額、です。
減価償却費は、建物設備と機械の年度劣化分であり、P/L(損益計
算)では、経費になるものです。(この、生産=所得=需要を、経
済学では三面等価とします)。
世帯所得が増えないと商品需要(GDP)も増加しようがない。世帯
の所得を増やすには、働く人の人時生産性を高めなければならない。
生産性が高くならないと、労働への報酬は上げることができないか
らです。
従業員数が700万人(パートも1名と数えたとき)で、パート労働の
構成比が77%と高い小売業は、この26年、わが国の産業の人時生産
性を低くするアンカー(錨:いかり)にもなってきたのです。
1992年からの不動産価格(店舗敷地)の暴落を原因に、事実上破産
したダイエーの中内功社長は、1980年代の初期、「わが社には、年
収1000万円以上の社員が200人いる」と言っていました。当時、
400万円くらいで1000万円は夢でした。
1972年に百貨店の三越を抜き、小売業で1位になったあとでした。
「われわれは生産性が高く賃金も高い」としていたのです。
事実でした。ダイエーは、ビジョンに「消費者が商品価格を決める
仕組みに変える流通革命」をかかげ、就職の人気企業でした。小売
業が大きなビジョンをもっていた時代もあったのです。
■3.労働生産性を上げるには、作業の人時生産性の分析が必要
労働生産性を上げる前提として必要なものが、作業分析です。どん
な作業が店舗で行われているかを調べ、労働人時を調べ、売上や商
品処理数と関係づけて、作業の人時生産性を計算することです。
まず、店舗の商品作業を分類して作業名をつける。全部で13分類く
らいにまとめることが、作業分析のコツです。筆者が行った作業分
類を示します。医学も含み全部の学問は、対象に名前を付けること
から始まります。哲学では、これが概念です。
▼店舗の部門の、「生産性分析表」の作成
以下を参考にしてください。
【作業分類の13項】
(1)商品の入荷/検収作業
(2)種陳列作業(店内搬送を含む)
(3)棚調べ作業(商品の鮮度管理を含む)
(4)発注計算/発注処理作業
(5)販売/接客作業
(6)店内調理/食材加工作業(食品SMのとき)
(7)レジ作業
(8)陳列商品変更作業(価格変更を含む)
(9)値札・POP作業
(10)建物、床、棚、陳列のクリンリネス作業
(11)会議・書類作成作業
(12)コミュニケーション(教育を含む)
(13)その他管理作業
従業員(パート、正社員、役職者)の全員には、作業日報を作成し
てもらいます。上記の(1)から(13)の、それぞれに費やした自
分の労働時間を記入していく。2週間くらいを1店舗の調査期間にし
たらいいでしょう。
作業日報を集め部門別に集計します。生鮮部門と、グロサリーの商
品部門では、作業項目ごとの作業時間が相当に違うからです。
ナマの商品の生鮮部門では、毎日、「発注→入荷→陳列」がありま
す。消費期限が長いグロサリー部門では、3日や1週間ごとの「発注
→入荷→陳列」であり、作業時間は少ないからです。
生産性分析表は、商品作業が異なる商品部門別に、集計します。
▼エクセルに生産性分析表を作る
エクセルの縦の行に、上記の(1)商品の入荷/検収作業から、
(13)その他管理作業までを記入します。13行と部門合計の14行が
作られるでしょう。
右の列(1列目)には、部門ごとに、それぞれの作業の労働人時数
を、従業員の作業日報から拾って合計し、記入します。
その右の列(2列目)には、ストアマネジャー(店長)や主任など
が、その作業の管理(点検、チェック)と修正に費やした時間を書
き込みます。二つを足すと、合計作業人時になります。
3列目は、それぞれの作業の商品処理数量です。4列目で、「商品処
理数÷作業時間=1人時商品処理数量」を自動計算します。ここで
計算されるのが、1人時あたりの商品処理数です。
5列目は、各作業の商品処理金額です。
6列目では、その商品処理金額を作業人時で割って、1人時処理金額
を作ります。人時生産性は粗利益(荒利益)で計りますが、商品処
理の労働生産性は、処理数量と売上・発注・陳列・レジ通過の、商
品金額でOKです。
以上の縦の6列目までが、部門の労働生産性の、実績表になります。
「13行×6列=78セル(枠)」ですから、小さな表です。
■4.改善の目標の作成
実績表を作るだけでは、作業毎の人時生性の観察にしかなりません。
マネジメントは「事実分析→判断→対策の実行」です。
人時生産性の対策では、生産性の改善の目標を作らねばならない。
10%上昇させることが、一回での労働生産性対策に目標になるでし
ょう。作業によっては5%、別の作業では20%の上昇の加重平均が
10%ということです。
店舗の商品作業で、もっとも多く30%から40%の労働時間をとって
いるのは、「入荷商品の店内搬送と所定の棚への陳列」です。20%
効率化すれば、他の商品作業が同じであっても、人時生産性は6%
から8%上がります。
20%上昇させるにはどうしたらいいか。店舗運営部が店舗現場に行
き、「店内搬送と棚への陳列作業の実際」を、何種類も動画に撮り
ます。
【動画を使う】
本部に持ち帰り(あるいは送信して)、店舗運営部で何回も再生し
てディスカッションします。「こう変えれば、1時間での陳列数量
は20%上昇する」ということが発見できるまで再生と議論を続ける
のです。
店舗現場の商品作業の人時生産性の上昇は、店舗運営部(本部)が
行うべきもっとも重要な仕事です。これは店舗運営部の業務基準書
に書き込まれるべき項目です(経営者が決める)。こうした、生産
性数値の上昇こそを、仕事の目的にすべきです。
改善目標を達成する陳列作業は、従来のものと手順が違うかもしれ
ない。単に、「一生懸命、手早く行うという精励のマネジメント」
では改善は一時的です。1年を通じて20%の生産性は上がらないか
らです。
改善工程案も、生産性分析表の最後の列にスペースをとって記入し
ます。工程改善案は、店舗運営部の担当のトップマネジメントに提
出して説明し、決定したら、その後は、現場の担当への新しい手順
の教育・訓練になります。
教育は、理由を述べることです。
訓練は動作を教えることです。
生産性分析表は、1年に1回、経営計画の一環として作らねばならな
い。経営計画での店舗への人員配置数は、生産性分析表によって決
まるからです。
売上(=顧客と商品処理数)が前年と同じで、全体の人時生産性を
10%上げると、その店舗の労働総人時は10%減少します。従業員数
では、10%減らすことになるのです。
この2年、小売業やサービス業の現場で、「人手不足」が言われま。
当方には、理解ができない。
労働生産性が低いままに、労働の大量投入を行っているからです。
時間外労働の増加も、同じ原因です。
時間給が850円(全国平均:東京は1050円水準)のパートを大量に
雇用している小売業・サービス業は、人的な生産性を高めることを、
既存店売上が減り始めた1992年以降、約26年も行って来なかったの
です。
このため26年間、時間当たりの賃金の上昇も果たせなかった。
小売業・サービス業は、現在、パート労働のカタマリです。需要の
面では、世帯所得の増加がないため、商品需要額が増えず、GDPも
増えなかったのです。
90年代からの、わが国経済の根幹の問題は人的な生産性でした。そ
の筆頭に、小売業と外食を含むサービス業があったのです。小売業
のコンサルタントから始めた当方にとって、残念なことです。
■5.日本の労働生産性の推移
労働生産性が下がってきた小売業・サービス業を含んだ全産業の生
産性は、以下のような、長期変化でした。
商品の付加価値生産額を、労働人数で割ったものです。2年ごとに
示します。
人的なGDP生産性/年
~~~~~~~~~~~~
1995年 800万円
1997年 813万円
1999年 807万円
2001年 812万円
2003年 820万円
2005年 823万円
2007年 826万円
2009年 781万円(リーマン危機後の生産性低下)
2011年 786万円
2013年 801万円
2015年 830万円
2016年 830万円
~~~~~~~~~~~~~
(公益法人 日本生産性本部)
前年比を書くまでもない。伸びていません。
小売業・サービス業だけではなかった。
世界(主要35か国)との比較では、20位です。(OECD 2015年)5
位の米国が1時間当たりで68ドル(付加価値額)、6位のフランス
66ドル、7位のドイツ65ドル・・・15位の英国52ドル、16位イタリ
ア52ドル、17位スペイン51ドル、18位カナダ51ドル・・・20位日本
42ドルです。
https://www.jpc-net.jp/annual_trend/annual_trend2017_1.pdf
先進国と言われるOECD加盟20か国の平均の、1時間当たり50ドルの
付加価値額より、16%低い。シエスタ(約3時間の昼寝:13:00~
16:00)があって、あまり働かない南欧のイタリアやスぺインより
も低くなってしまいました。どうしたことでしょう。
生産性が高くないと、1人当たりの所得は少なくなります。
▼生産性改善の、組織分業
全社的な生産性の改善は、1人では推進ができません。
以下のような組織分業が必要です。
【生産性改善の組織分業】
(1)生産性改善の数表を、見本にならって作成する(店舗運営
部)
(2)作業日報に、作業名と自分が使った時間を記入する(店長を
含む店舗全員)
(3)部門ごとの生産性改善表に数値を記入し、計算する(店長)
部門の合計=店舗
(4)改善目標を記入する(経営者と店舗運営部)。
(5)商品作業の動画を観察して、工程改善案を作成する(店舗運
営部)→経営者の修正→決定
(6)店舗毎、物流毎の、人員配置計画案を作成する(店舗運営
部)→経営者修正→実行→現場教育・訓練
(7)四半期ごとに、生産性実績表を作成し、対策を立案(店舗運
営部)→経営者修正→店舗で実行
(8)・・・(1)に戻る
なお当方の生産性は「文書作成量(ページ数)×質的向上」で計り
ます。質的向上は、1枚当たりの原稿料をめどにすればいい。多作
が質を上げていきます。
あらゆる仕事に通じるように思えます。質の高い仕事ができる人は、
作業が手早い。経験では、ゆっくり行うと質も低下します。陶芸や
大工工事でも、同じように感じます。作業の質が高いから、多作が
できるようです。
将棋の名人クラスでも、誰よりも多く対局がある人でしょう(羽生
善治)。筋肉のような疲労はない人間の脳力は、面白い。大量の情
報処理を、高速で行うことが質を上げます。
関係があるかどうか、わかりませんが、吉田兼好の『徒然草』のく
だりが思い浮かんでいます。わずか2行のエッセーです。
「よき細工は、少し鈍き刀を使ふと言ふ。妙観(みょうかん)が刀
はいたく立たず(ひどく切れなかった)。」
仏像などの彫刻では、鈍いナイフのほうが、切れすぎて引っかかる
ことがなく、手早い作業ができるのかもしれません。しかし当方は、
まだ、鋭いナイフのほうがいい。名人の妙観の域に、まるで達して
はいないからでしょう。上は無限です。
■6.中長期経営計画書とする
まず、店舗の売上の問題です。過去11年も、チェーンストア協会の
9904店(2017年)の既存店売上は増えていません。企業としては新
規の出店により売上が増加しても、既存店の売上は、減っています。
これを示すのが、2006年の1坪(売り場3.3平米)当たりの売上げ
200万円、2017年の174万円です。11年で13%、1年に」1%平均で減
っています。
こうした実情があるのに、経営計画での翌年度売上は増えるとすす
る。願望的な目標にすぎませんでした。
増えるとする願望する売上に対して、人員数は同じ数を維持する。
1年後の結果は、売上は減った。人員配置数は同じなので、人的な
生産性が下がってきたのです。
次年度の、既存店の売上目標は前年度を上回ってもいい。たとえば
5%増を目標として、商品価値の高い新商品を投入する。この動き
は、経営として必要です。
しかし生産性の計画は、過去の売上のトレンドの延長線の上で立て
なければならない。既存店の売上は、9904店の平均で言えば1.5%
減としなければならない。
その上で、1人当たりの労働生産性が上がるように、人員配置数を
計画する。売上は顧客の購買なので計画化はできませんが、人員配
置は計画化できます。
具体的には、以下のようになるでしょう(事例)。
2017年 18年 19年 20年 21年・・・
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
既存店売上 13.0億 12.8億 12.6億 12.4億 12.2億
人員数 47人 43.2人 39.7人 36.6人 33.6人
パート労働構成比
77% 77% 77% 77% 77%
1人当たり売上
2766万 2963万 3173万 3388万 3631万
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(注)パートは4時間労働とし、フルタイム1人分がパート2名。
既存店の売上は、過去の傾向から1.5%減/年としています。人員数
は、8%減/年です。これで、人的な売上生産性が「8%-1.5%=6.
5%」上がります。5年で、22%生産性が上がり、平均賃金を12%は
上げることができるようになるのです。
上昇率が高い人は、高度成長期並みに、20%から30%上げることが
できるでしょう。
8時間換算の社員数が5000人(106店)なら、1年に8%(400名)の
余剰が出ます。人手不足どころか人余りです。余った400人分は、
新規出店の約10店で、吸収します。従業員数が同じで、店舗数は8
%(8店)増えます。総売上は6.5%増えて、106.5%です。
従業員数は同じなので、労働生産性は6.5%上がっていきます。こ
のうち3%分は、遅れてきた賃金の上昇に回し、3%分は、商品価格
(平均単価)の切り上げに回すのです。これで、他店に行っていた
人が戻って既存店の売上は、むしろ増えるかもしれません。
以上のような経営計画でなければならない。根幹は、人的な生産性
の上昇をはかるための、商品作業の改善です。
これから5年から10年、小売業にとって、人的な生産性の上昇が急
務です。生産性を上昇させ、26年間も低くとどまってきた賃金を上
げる方向に向かわねばならないのです。これができないと、いずれ
消滅に向かうでしょう。
【後記】
久しぶりの小売・流通論でした。金融業の賃金は、小売業の約2倍
と高い。お金は、1円でも100億円でも運用は同じで、電子化した金
額を増やすと生産性を高くできるからです。
小売業は、商品が、電子ではなく、形をもつ具体物であり、数量が
増えるとその分、労働が多く必要でした。このため、商品単価が上
がらなかった(むしろ下がった)90年代、00年代、10年代には生産
性の上昇がなかったのです。今後も、商品単価は上がりません。労
働の生産性を上げるには、作業工程の改善と情報システム化しかな
いのです。
システムエンジニアがプログラム(データの処理手順)を設計する
ように、改善作業を設計しなければならない。
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『仮想通貨:金融革命の未来透視図(1620円)』を出しました。ブ
ロックチェーンの仕組みを平易に解き、中国と日・米・欧の政府
(中央銀行)も発行することになる仮想通貨が、金融革命を引き起
こすことを、根拠をもって予想したものです。仮想通貨はビットコ
インだけではありません。現在でも4500種があります。多くの人が
疑問をもっていますが、その疑問を、基本的なところから解消する
決定版を目指して書いたものです。(下はアマゾン↓)
『仮想通貨:金融革命の未来透視図(1620円)』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【ビジネス知識源:感想は自由な内容で。
以下は、項目の目処です
】
1.内容は、興味がもてますか?
2.理解は進みましたか?
3.疑問点、ご意見はありますか?
4.その他、感想、希望テーマ等
5.差し支えない範囲で、あなたの横顔情報があると、テーマ選択
と内容記述の際、より的確に書くための参考になります。
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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
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<937号:陰に隠れた、異次元緩和の後退と副作用の恐れ>
2018年4月18日:有料版
【目次】
1.森友・加計問題の陰で成立した政府予算
2.一般会計では、少なく計上される国債費
3.マイナス金利の国債が、売れている理由
4.日銀の、国債の買い増し額は、実は2017年度に半減した
5.米国債買いの、資金提供という目的
6.日銀の国債買いの半減の理由は何か
7.米国株の下落が、世界の株価下落に波及
【後記】
<938号:米国の長期金利の上昇が意味すること>
2018年4月25日:有料版
【目次】
1.FRBが政策金利を上げても、反応しなった米国の長期金利
2.米国の長期金利が上がらなかった理由は、日本と中国のドル国
債買いの増加
3.2018年1月からの異変
4.欧州と米国の超低金利は終わったのか
5.米・中貿易摩擦の行方
6.原油価格の上昇
7.北朝鮮の、核とミサイルの事件の停止
【後記:システム・トレードの結果報告】
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■2.解約していないのに、月初めから、有料版メール・マガジンが
来なくなったとき(このメールが当方によく来ます)。主な原因は
2つです。
▼原因1:登録しているクレジット・カードの有効期限(期間は数
年)や登録が切れてないか、調べてください。
もっとも多いほとんどの原因は、クレジット・カードの期限切れで
す。お手間をかけかけますが、「新しい有効期限とカード番号」を
再登録してください。月初めに送った分の再送を含み、再び届くよ
うになります。
以下のページの「マイページ・ログイン」から、メールアドレスと
パスワードでログインし、出てきた画面で、新しい期限と番号を再
登録します。
↓
https://mypage.mag2.com/Welcome.do
特にクレジット・カードに関する問い合わせがあれば、ここで。
→ https://contact.mag2.com/creditcard
▼原因2:メールソフトが、頻繁に自動更新されているため、時折、
メール・マガジンが不特定多数への「迷惑メール」とされることが
あります。
↓
該当のメールにカーソルをあてて右クリックし、出てきた迷惑メー
ルの項で、「送信者を、差し出し人セーフリストに追加」すれば、
元に戻ります。
■3.メールアドレスの変更
有料版を送信するメールアドレスの変更のときも、おなじ『マイ
ページ・ログイン』から入って、変更します。
『マイページ ログイン』の画面を開き、登録していた旧アドレス
とパスワードでログインして、出てきたマイページでメールアドレ
スやパスワード、そしてクレジット・カードも新しいものに変更で
きる仕組みです。
(マイページ・ログイン↓)
https://mypage.mag2.com/Welcome.do
↓または、特にクレジットカートに関しては、以下のページです。
https://contact.mag2.com/creditcard
■4.(↓)購読などに関する問い合わせ窓口の一覧(メールで対
応)
http://help.mag2.com/contact.html
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