臨時号:衆院選挙の結果分析と提案
Written by admin on 2017年10月23日 – 09:00
おはようございます。小選挙区制は、首相への不支持率が高くても、米 国のような二大政党制でないと、政権の選択機能を果たしません。 現在の小選挙区と比例代表を並立させる制度は、わが国に2大政党ができ ないまま、1994年から導入されています。 1人1区とし、選挙区を狭めれば、お金の必要額が減り、政権交代も起こ るとし、政治改革として画策したのは、今は零落している自由党の小沢 一郎氏です。1980年代の、自民党の幹事長の時代には、首相を決める権 力をもっていました。つかのまだった希望の党の小池氏のように、自民 党議員が小沢氏に従属していたからです。 わが国では、野党の分立があり、野党票が分散します。このため、小選 挙区で約38%、比例代表で35%付近の得票でも、当選数が圧倒的になり ます。3人に1名の得票が与党に集まれば、政権党が圧勝します。与党は、 投票の3分の1の支持の政党でいい。 投票率が高くも60%である現状では、10人のうち6人が投票に行き、その うち2人が与党の候補名と比例区に与党名を書けば、政権与党になり得ま す。 【小選挙区は、わが国の政治には不適】 野党が分立のわが国では、1区で3名から4名の、落選者への死に票が少な くなる中選挙区制にもどし、同時に、首相公選制にすることが、世論を 政治に反映させる民主主義の実現のために、いいと考えています。 しかし、870万人の固定票の公明との連立があれば、1/3の得票で政権が 維持できる自民党には、中選挙区に戻す意思も、首相公選制への変更の 考えもありません。法は国会の多数党が作るので、この構造変更はやっ かいです。政党助成金や議員報酬の減額の法が作られないように、制度 変更の法も作られません。強力に世論とジャーナリズムがバックアップ する野党が必要です。 野党連合の政党を作らないときは、政権交代は、生じません。ところが 小池党首の「排除する」という言葉で野党の合流は崩れ、ほぼ650万票の 固定票をもつ連合が離れて、今回の結果でした。 当初、希望の党支持を表明した連合は、排除後は自主投票になりました が、多くが、立憲民主に流れています。立憲が3倍の当選になったもっと も大きな理由が、これです。 「小選挙区での二大政党の戦略」を誤った小池さん自身が、野党連合を 排除したのですから、敗戦は確定していたのです。 小池氏が、野党分立のまま、政権のキャスティング・ボートの130名を擁 する政党を作ることができると考えていたのなら、それは、浅慮でしょ う。 【台風による、投票率の低さ】 それでも、不確定要素は投票率でした。自民・公明に幸運だったのは、 大型の台風21号で約5%(1/20)、多く見れば10%の投票率の低下があり、 盛り上がっていた2137万人(有権者の20%:前回比+63%)の期日前投票 を含んでも、53.6%(速報)だったことです。 自民党の当選が、中盤に予想されていた260名付近から、283名に増えた のは、台風による「神風」でした(野党が23人減少:差が46名)。 日曜日の投票率は、わずか33.6%でした。国民の1/3が、台風の中で行っ ただけだったのです。大型台風が来なかったら、増えている期日前投票 を含む投票率は、65%以上に上がり、これから先ほぼ3年の、自民と首相 の傲慢を生む圧倒的多数は、国民が与えなかったでしょう。自民党の当 選は、245名から250名だったでしょう。 強風のスキを見て、午後3時ころ行った、近くの投票所は係員が手持ち無 沙汰で、閑散としていました。当地でも、夜半まで、はじめて経験する くらい風が強かったのです。 「今は投票が少ないけど、何時ころが多かったのですか?」 「午前7時から8時ころでした」。 多くの人は、台風のため朝一番に出かけたのでしょう。 これも、関心の高さを窺(うかが)わせるものです。 【前回とほぼ同じ低さ】 前回、2014年の衆議院選挙でも、投票率は52.66%と戦後70年で最低でし た。このため、組織票をもつ自民と、投票率が、いつもほぼ100%の公明 が、無所属保守系を入れた議員数では、2/3を超える圧勝でした。 同じことが、今回の選挙で起こっています。衆院選は、1990年代までは、 60%~70%の投票率でした。 (注)2014年の選挙前の、安倍政権への支持は42%、不支持が42%で、 今回と近かったのです。この中での、連立与党の大勝でした。 【内閣へは、選挙後も、不支持が上回っている】 安倍首相は、世論調査(比較的中立は結果が出るNHK)で、政権不支持が 42%と不支持の39%より3ポイント多いこと、自民の得票は、投票に行っ た人のほぼ1/3の支持でしかないことを知っています。 このため、議席結果が出ても、浮かれず、「誠実に政策を実行する」と 言っていました。 安倍政権での選挙で、首相不支持が支持を上回ったのは、3回の選挙でも 今回だけです。モリカケ問題の前は、支持が53%、不支持が27%でほぼ 2倍の多数が、支持派でした(NHKの調査)。 【安倍首相の性格】 街頭に立てば、感じる国民の気分から、安倍首相は、不支持の厳しさを 感じていましたからでもあるでしょう。最後の街頭だった秋葉原では、 自民党がたくさんの大きな日の丸の旗を配って、「お前が国難だ」とい うこれも多かったプラカードが、首相に見えないように、隠していたの です。 ヤジと批難に弱い安倍首相がいきり立って、「排除の言葉」を言い、自 民の得票率を減らすことを警戒していたからです。2000年代の情報化し た選挙は、「決定的な一言」で変わります。安倍首相の選挙応援は、反 対派が集まらないように、ステスル作戦として隠されていました。この ため、聴衆の心をつかむ演説に巧みな小泉進次郎氏を立てていました。 【女性層の支持の低さ】 安倍政権に対しては、昭恵夫人の森友への関与、豊田議員の「このぅ、 ハゲーェ」、稲田防衛大臣の国会答弁のテイタラクなどから、女性層の 支持率が低くなっていました(男性の支持49%、女性40%程度:日経新 聞)。 自民党の戦略で、全国をくまなく飛び回った小泉進次郎氏は、会った女 性のほぼ全員が支持するとも言われます。これが、モリカケ問題と、夫 人、そして女性議員から、自民から反安倍になっていた5%の支持を、回 復させたのでしょう。自民党の5%の票の増加は、進次郎氏の功績に見え ます。当選議員数では、3名から50名に該当するでしょう。 【小泉新次郎氏への、世代を問わない女性層の熱い支持】 小池党首は、希望の党の消滅も示唆する喪服のスタイルで「自分の言葉 が反発を招いた。完敗した。」と、パリから述べていました。政治家は、 タレントのように服装と身振りの言語を使います。 考えの表明である言葉とスタイルが、7月には圧勝した東京でも、離反を 増やしたことが、選挙中に分かったからです。希望の党から23名を出し た東京での、小選挙区での当選は1名(長島昭久氏)だったからです。 【政権イメージのなさ】 小池氏は、安倍一強の政治を終らせるとするだけであり、国民が共感す る政策の中身がなかった。希望が票をとって、大連立になれば、どんな 国政になるのか、そのイメージを、最後まで出さなかったからです。無 責任に「結果が出て考える」としていました。 加えて都知事の身分は「リスクがある」として捨てず、小泉元首相が、 小泉内閣の同窓会の会食の場で「知事を続けろ」と示唆したにせよ、立 候補は回避し、ズルい感じを国民に与えていました。 国民は、「財源」が示されなければ、立案した政策は実行できないこと を、3年の民主党時代に、知っています。実現すれば、社会保障の大改革 になった国民1人5万円、4人加速で20万円/月のベーシックインカム(65 兆円の財源が必要)です。候補者は、政策と同時に、財源をしめさねば ならない。希望の党は、財源を示せず、政策をうやむやにしました。 電柱ゼロにも、共同溝方式なら1kmで5.3億円という大きな費用がかかり ます(電柱の10倍)。電線の埋設だけならその1/4。 安倍政権での財源は、異次元緩和による通貨発行です。消費税を上げて、 需要縮小を補うために通貨の増発を続けることです。異次元緩和は無コ ストではない。出口政策のとき、国債音の下落と金利の上昇から、先送 りされた財政破産のリスクが、コストになりますが、無視されています。 当面は、金融緩和の拡大と日銀のETFの買い(累計20兆円)で株価が上昇 し、それでいいとされているのです。 立憲民主、または個人支持に自信があり無所属にでた人も、小池氏が 「寛容に」受け入れていれば、反安倍の支持が集まって、希望の党で 100~130名にはなったでしょう。自民と公明の連立で、連立の過半数は 変わらなくても、自民の単独過半数(233議席:今回の自民の獲得は280 議席)に黄信号がともっていたはずです。 【比例区の当選では、希望+立憲民主が、自民党より多いという事実】 今回でも、得票数と当選数がほぼ比例する比例区では、自民が66議席で すが、希望(32議席)と立憲民主(37議席)を合わせると、69議席で、 35%政党の自民を上回っています。 近畿の比例区では30.6%、北関東で33.2%、南関東でも34.28%しかなか った自民への支持率が、高まったための勝利ではない。 同じ比例区の公明は21議席、共産が11議席、維新が7議席でした。(比例 区の確定総数174名の時点) 小選挙区の当選では、自民が283名、公明が29名、連立与党で312名。2/ 3は310名です。衆議院定数の465名のうち、67%を占めています。 対する希望は49名、立憲民主が55名、共産が12名、維新が10名、社民が 1名、無所属が22名。無所属を含む野党の合計は、149名(32%)です。 (台風による開票遅れのため、残数が4議席:10月23日午後3時)。 【ほとんどの議員の目的】 議員のほとんど(90%以上)は、「国民の代議として、特権がある議員 であること」を目的にし、政策の実行は二の次です。結果として軸足を 守ったかに見える立憲民主も、「排除されたあと作られた政党」であり、 政策は後付けです。 小池氏が排除し、誰が書いたのか急作りで稚拙に見える内容の踏み絵を 踏ませなければ、皆が、希望の党でした。 【小池氏の傲慢さが見えた】 結論を言えば、都知事選、都議会と勝ってきた小池氏が慢心して、高か った個人支持率が続くとの幻想が招いたのが、今回の結果でした。いわ ば、幻想選挙です。 【選挙の起点と展開のお粗末】 安倍氏は、モリカケ隠しと、都議選で惨敗した民進の自滅を見て、衆議 院を解散し、小池氏は都議選の支持に慢心したのです。 原因を見ると、1億人の有権者が国政に参加する、唯一の民主主義の機会 ではあっても、つまらないものでした。 【首相公選制へ】 野党は、議院内閣制ではなく、県知事のような首相公選制への転換を政 策に掲げるべきでした。小選挙区を画策した政治のプロ(政治のプロと は、党利党略の戦略を描く人です:かつての小沢一郎)がいず、考えが 及ばなかったのでしょう。 モリカケ疑惑のような「しがらみ」のある政治は、首相公選制にすれば、 全部ではなくても、防止ができます。首相への、国民の直接の支持が、 重要になってくるからです。NHKの調査で3ポイントではあっても、不支 持が多い安倍首相は、首相を降りる可能性も、あります。 小池氏は、なぜこの政策に、気がつかなかったのでしょうか。批難して いた、しがらみ政治からの脱却には、速効があります。 希望の党には、スピーチと政策を起案する本部スタッフがいません。中 身は、日本のこころと同じ一人政党です。公選制の都知事になって、錯 覚があったのか。大阪府知事になって維新を作った橋下徹氏に似ていま す。 【慎重さを崩さない安倍首相】 安倍首相が選挙結果に驕(おご)っていないのは、各地の自民支持者に、 「自民党はいいが、もう安倍首相はダメだ」という声が多かったからで す。 辞任にはなりませんが、内心で、選挙後のモリカケ問題での追求を恐れ ています。これは、選挙に勝つことでは、消えなかったからです。当選 者にバラをける儀式も、笑顔がなく行われています。 【憲法改正の発議はないだろう】 メディアが言う憲法改正の発議には、至らないと見ています。三分の二 は発議権であり、決定権ではない。国民投票が必要になります。 衆議院の2/3の賛成の上に、国民投票が必要だとしたのは、天皇の身分と 9条において、占領軍(マッカーサー)が憲法の変更に至らないように、 蓋をかぶせたからです。安保条約も、日本の軍備化への蓋です。 現行憲法でも、攻撃を受けた後の自衛のための自衛隊の軍事力は合憲と されています(とても無理な解釈ですが)。 同盟国(米国)が攻撃を受けたとき、軍を派遣する集団自衛権も現行の 憲法下であります(集団自衛権)。その上で、憲法を改正するなら、 「外国を先制攻撃できる軍隊」にしかならない。 【国民の支持】 国民の50%以上の改正支持は、得られないでしょう。発議した憲法改正 が否決されたとき、おそらくは、総選挙になり、今度は、自民が負ける 可能性が高くなるからです。 政党政治での政策は、官庁が起案するものを除けば、「自党の支持を増 やす党利党略」がもとになって、起案されます。国民からの支持が、議 員という身分と特権、および、社会の強制権をもつ規律である法の制定 (または変更)と財源の配分の、政治権力を与えるからです。 【わが国の政党政治の本質を、正すことが必要】 王権の否定から出発した政党政治は、政党への支持を増やすことが目的 に、実行されます。なお憲法の発祥は、他に優先する絶対的な権力を持 っていた王権を制限すること(あるいは無くすこと)でした。その王権 は、民主制では、議会が行政権限を制限する、大統領制です。 スイスのような、国民投票による直接民主制でない限り、政党でまとめ る代議制は、党利党略という宿命をもっています。 政治では、制度が政策の本質を決めます。首相公選制を奨める理由は、 党利党略の政党政治から脱却するためです。わが国の、首相を国会が選 ぶ議院内閣制は、天皇より強い王権が生きている英国の模倣です。 自然とは違うので、国の重要な制度は、国民の大多数の意思があれば、 変えることができます。国の形は、首相の選び方で決まります。国とは、 世帯、企業に対して政府のことです。大臣制の政府は、政府の長決め-ま す。(注)本稿は、少し前に送った有料版の、定期発行以外の臨時号と 共通です。 【無料セミナー】 新刊書の『米国が仕掛けるドルの終わり』に絡んで、「第一商品株式会 社」で、公開セミナーの講師を務めます。それぞれ、午後1時から90分で す。 10月21日 第一商品東京本店・・・終了 11月18日 第一商品大阪支店・・・申し込み受付中 大阪市中央区南本町4-2-20 06-6251-7131 12月16日 第一商品福岡支店・・・申し込み受付中 福岡市博多区店屋町1-31 博多アーバンスクエア 092-686-9001 どなたでも参加できるはずです。申し込みは、当方へのメールではなく、 それぞれ現地の第一商品の支店に、電話で問い合わせてください。定員 は100名と聞いています。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【ビジネス知識源:感想は自由な内容で。 以下は、項目の目処です】 1.内容は、興味がもてますか? 2.理解は進みましたか? 3.疑問点、ご意見はありますか? 4.その他、感想、希望テーマ等 5.差し支えない範囲で、あなたの横顔情報があると、テーマ選択と内 容記述の際、より的確に書くための参考になります。 気軽に送信してください。感想やご意見は、励みと参考になり、うれし く、読んでいます。時間の関係で、返事や回答ができないときも、全部 読みます。共通のものは、後の記事に反映させるよう努めます。 【著者へのひとことメール、および読者アンケートの送信先】 yoshida@cool-knowledge.com 購読方法と届かないことに関する問い合わせは、ここにメール → reader_yuryo@mag2.com ■1. 新規登録は、最初、無料お試しセットです(1か月分):月中のい つ申し込んでも、その月の既発行分は、その全部を読むことができます。 最初の1ヶ月間分は、無料お試しセッ トです。その後の解除は自由です。 継続した場合に、2ヶ月目分の分から、課金されます。 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