ビジネス知識源:完結編(1):ユニチェームペットケアを短期間で日本1にしたSAPS営業
This is my site Written by admin on 2010年8月3日 – 09:53

おはようございます。今年の夏は、ことのほか暑い日が続いています
が、お元気でお過ごしでしょうか。

無料版メールマガジンの送信に、間が空いたことをお詫びします。戦
略の実行を計画化した、ユニ・チャーム・ペットケアの営業のまとめ
を送ります。2号を続けて送ります。有料版の読者の方は、復習のテキ
ストにしてください。付加記述を加えています。

■1.営業は、会社の売上を決める仕事です。

ところが営業の方法とその管理(マネジメント)は、実に、旧態依然
としいていると感じます。

【歩合給型営業】
一般に、米英型企業の営業(販売担当)は、売上結果(または粗利益
結果や営業利益結果)による歩合給の仕組みを取っていることが多い。
営業マン動かすインセンティブは、成果に比例する個人報酬です。

歩合給型の営業では、営業のコストは、会社の売上額に応じた変動費
になります。この歩合給が、会社にとっては管理(マネジメント)の
仕組みです。

自分の販売結果が大きければ個人報酬も多くなり、それが、動機付け
とマネジメントになる。高度な金融の、デリバティブの開発・販売で
も歩合給であることは同じです。

(注)歩合給ではない固定給でも、米英型企業は、売上業績が悪化す
ると、実に即時に(4半期決算の3ヶ月後には)、リストラという名の
首切りをします(逆に業績好調なら雇用を増やす)。固定給は短期で
は固定費ですが、この固定人件費も、長期では変動費と考えているの
が、米英型の企業です。

米英型企業の現場社員の、平均雇用期間は3年と短い。他方、わが国の
平均雇用期間は、大企業(全雇用の30%)と中小企業(全雇用の70%)
を平均すると11年です。

【固定給型営業の管理方法は異なるべき】
●わが国に多いのは、定昇(約2%)とベースアップする固定給の営業
です。業績給があって、もわずかな部分です。それに営業マンの数も、
米英型企業より、はるかに多い。

米英型の首切りは(まだ)稀です。会社の業績の悪化、または個人成
績の悪さを理由に、即日に、ボスが部下を解雇できるのが英米型企業
です。

日本では、意外に知られていないのですが、上司から「ファイア(首)」
と言われると、その場で、個人の荷物を段ボールにまとめ、セキュリティ
・チェックを受け、裏口から追い出されます。映画で見ることがあるでし
ょう。あれは事実です。

会社を辞めるときの送別会というウエットな儀式は、友人の間でしか
ない。そのため職場外のFriend、家族、ソサイエティは特別な重みも
もちます。孤独だからです

●日本型の固定給の営業は、歩合給型営業の自己管理とは、明らかに、
異なるものでなければならない。ところがこの固定給制での営業の方法
は、究明されているとは言えません。

ユニ・チャームのSAPS営業は、わが国の固定給型営業に、方法を与え
るものでしょう。今、営業は、各社でアイマイなの方法の中に置かれ
ています。

■2.素朴な疑問

いろんな会社で、いやほとんどの会社で、売上計画とその売上計画を
ベースにした経営計画が作られています。

その経営計画と言われているものは、本当は「業績目標(売上高、粗
利益、営業利益等の目標)」としなければないのですが、なぜか、ど
こでも「売上計画、粗利益計画、営業利益計画」と表現されています。

その売上計画は、月に割り振られ、営業(または販売)の支社と、支
社・支店・営業課の担当の個人にブレークダウンされています。当方
は、いつも、これに、素朴な疑問を感じていました。

【業績は結果である】
売上、粗利益、営業利益は、顧客を無視して、企業が「計画化」がで
きるのか?という疑問です。

売上は、商品戦略と営業(販売)の結果です。その売上は、顧客の購
買で決まります。企業側は、経費や人員は計画化できます。しかし、
顧客の購買の結果である売上、粗利益、営業利益は、計画化はできな
いはずです。

かつてソ連は「計画経済」と言われました。商品の生産量と販売は、
政府によって計画化されていて、国営企業には、生産量と販売量のノ
ルマ(達成義務)が課されていました。

わが国の企業が毎年作る経営計画は、ソ連型の計画経済の概念を、無
意識に、無反省に引きずっているのではないかと思えるのです。

商品の販売を行う営業で言えば、売上計画は「売上目標」、粗利益計
画は「粗利益目標」、営業利益計画は「営業利益目標」と言わねばな
らないものでしょう。(注)以上をまとめて「業績目標」と言うこと
にします。業績は成績、つまり結果です。

【計画化できること】
計画化ができるのは、営業では、明日、翌週、または来月、どういっ
た方法(=戦略)で、営業行動を行うかだけでしょう。

売上は顧客が決める結果だからです。結果は、計画化できません。

そうすると売上計画とは何か? 売上目標と言うべきものでしょう。

■3.前号までの要約

ユニ・チャーム・ペットケアにおいても、支社・支店の、「ソ連型売
上計画と個人の営業ノルマ」を作り、管理方法にしている時代があっ
た。この時代は、会社は赤字で業績は芳しくなかった。

【反省と思考から】
計画達成のために、販促費を使う無理な押し込み営業が跋扈していた
ことが主因だったという。根本は、計画にはできない売上を、計画に
してしまったという誤りにあるのではないかと社長の二神氏は反省し
ます。そこからSAPS営業への、営業行動の改革が始まります。

【生産性の上昇】
ユニ・チャーム・ペットケア事業の営業マネジメントも、営業の生産
性を高める方法として研究・模索され、開発・構築されてきたもので
す。一般に行われている、個々人に割り当てた売上目標の達成率によ
る管理では、成果が上がらなかった。(注)ここで言う生産性は、売
上高÷営業人員数=1人当たりの売上高とします。

多くの企業で、「目標による管理」は、売上という業績目標(結果)
による管理になっています。これは、誤りです。営業で言えば、営業
行動が計画化され、管理(マネジメント)されねばならない。

業績(Performance)は、売上、営業利益、生産性等でしょう。業績は、
顧客が買ってくれた結果としての会計数値です。以下の構造です。

【成果のマネジメントと行動計画のマネジメントの関係】

図示すれば以下になります。

   [原因]          [結果]
    │            │
社員の行動の方法(戦略)→業績(売上・利益・生産性)
    ↑            ↓
[行動計画のマネジメント] ←[成果のマネジメント]  

会計の結果(未来の業績)を、今日の仕事にすることはできない。
社員が行えるのは、今日の仕事(行動=作業:Work)です。
仕事は、業績目標の達成のための行動です。

卸売業の販売(=営業)では、
・担当する顧客の顕在ニーズ/潜在ニーズを分析し、
・ニーズに合うと思える提案を準備し、
・訪問計画を立て、アポイントをとって、
・訪問して提案することでしょう。これが仕事です。

ユニ・チャーム・ペットケアでは、以上を行動計画とし、その行動計
画の100%実行を義務とした。その結果が、受注(結果)です。

【売上のツジツマ合わせ】
こうした、管理方法の改革(行動の計画化と実行過程管理)を行って
以降、最初は、高い販促費を使うため赤字の原因でもあった「月末押
し込み営業」をやめたため、売上が低下したものの、ほぼ4ヶ月目から
業績が向上し、ゼロからの創業7年で、ペットケアではわが国1位にな
っています。

(注)小売業では、営業利益(=粗利益-経費)を計算すれば、ほと
んどが赤字になっている特売に相当するでしょう。本来は、営業利益
が目標であるべきですが、特売では売上が目標になっています。

重要なことは、トップマネジメントが、営業方法の改革に関与したこ
とです。会社の、仕事の方法の改革はトップがリーダシップをとって
行わねば果たせません。

現場社員は、会社が意識的に、あるいは無意識(伝統的に)に作って
きた枠組みの中で、仕事をしているからです。生産性の低さは、社員
やパートの責任ではない。その働き方(方法と作業手順)を作った(
あるいは、個人に方法を任せた)、会社の責任です。

小売業でも、全く同じです。作業名は異なります。
・売上結果(ニーズの結果)を分析して、
・対策作業である、補充発注と、取扱商品の改廃をして、
・入荷した商品を、品出し・陳列し、
・販売する。この繰り返しです。これが仕事です。
売上は、その結果です。

これらの仕事を、個々人の行動計画にする。戦略(=組織の働き方)
は個々人の行動計画にブレークダウンし、実行され、その過程がマネ
ジメントされねばならない。

本部が戦略を考えても、現場の個人の実行にならなければ意味はない。

以上を申し上げると、皆、当然のことだという表情にはなりますが、
実情は変わらず、売上目標主義の管理を実行する会社が多い。その原
因は、管理する幹部が、管理方法を変えないからです。

行動は、個々人が行う。「部」の行動はない。
部には、類似の行動をする個々人がいる。

そのため個々人の行動計画の実行を管理(マネジメント)する。結果
が、業績目標に対し思わしくないときは、上記の行動を変えねばなら
ない。行動(action)には、対策行動という意味もあります。

人間の行動は、「事実から情報を認識する」→「情報を分析する(判
断)」→「判断の結果、対策行動をとる」という構造をもっています。
企業単位で見ても、同じです。

外部情報である顧客情報と、内部情報である業績結果を分析し、言い
換えれば集計→認識→判断して、対策行動をとっています。

その時、事実情報の認識に誤りがあると、対策行動が成果を生みませ
ん。[情報認識→判断→行動の決定]に関与するのがマネジメントで
す。具体的には、部下の情報認識、判断、行動方法を示しコミュニケ
ーションして、サポートすることです。

情報→判断→行動→成果の目標差→対策行動です。

経済活動を行う会社では成果目標があるので、顧客情報→判断→目標
行動→効果分析→対策行動になる。この対策を、社員が100%達成すべ
き行動計画にするのがSAPSという方法です。

売上・利益・生産性の業績目標は、当然に会社と部門としてもってい
る。ただし売上は、働きの結果なので、今日の個々人レベルの行動計
画にはできない。

・個々人が顧客情報を判断し、自分で行動計画を作り、
・マネジャーは行動計画と行動の方法の、業績に対する適切さを指導
し、
・決めた行動計画の、100%の実行を社員の義務にする。

具体的に言えば、顧客営業(販売活動)から会社に帰って、
・数値の事実として現れる、営業の効果を分析し、
・翌週の対策行動(何をどう行うか)を考えて計画し、実行し、
・その効果を見て、次の行動計画を立てる。

多くの会社で、類似のことは行われていると考える人が多いに違いな
い。しかしそれは、個々人のレベルでは、その方法と対策行動にバラ
ツキがあるものとしてでしかない。個々人の目標が、業績になってい
るからです。

ユニ・チャームが、改革として行ったのは、[情報分析→行動計画→
100%実行→結果分析(営業会議)→翌週の行動計画]を、方法化して、
皆が守るべき標準プロセス(ワークフローモデル)にしたことです。
営業のプロセス管理でもある。

売上目標ではなく、行動計画の100%達成を義務にした。これが7年前
に始まった改革だった。今も、改革の改善を続けています。

考えてみれば、業績は行動の結果です。業績目標の100%の達成をノル
マにしても、守ることはできない。

守ることができない結果は上位20%の人が達成、中位60%の人(ある
いは40%の人)が未達、下位20%はいつも大きく未達ということにな
る。合計の全体業績は、バラツキがあって上がらない。原因は、約80
%もの社員が守れないこと(未来の業績結果)を目標にしたからです。

社員が実行できるのは、事前計画した行動の100%達成だろう。その行
動計画と実行の結果、及びその結果の分析による次の行動計画立案を
マネジメントする。このマネジメントが経営である。

従ってSAPSの方法の実行が経営であろう。二神氏は、優れた他社から
示唆を受け、そう考えるに至ったのでしょう。

完結編を1編で送ると37ページ(A4換算)です。以上の考えに基づく、
具体的な方法は、このメールの直後に送ります。

See you soon!

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しています。最近号の、一部の、目次は以下です。

<489号:日本国債は金利高騰と下落を招くことはないのか?>
        2010年6月23日号

【目次】
1.史上稀な低い金利の国債の保有者と、買うための資金源泉
2.金融機関で典型的だった保険会社の国債保有と買いの事例
3.世帯の貯蓄増と企業の貯蓄増
4.国債問題は今後の、日本経済の貯蓄余剰にかかっているが・・・
5.消費税10%論が出てきた背景
6.財源問題の解決
【後記】

   <490号:梅雨に煙り、天空に向かう上海>
       2010年6月30日号

【目次】
1.特異な中国のGDP
2.広大で歩けない万博会場
3.リーマン・ショック後(08年9月~)
4.低い金利(=資本コスト)と、高い期待名目成長率のアンバランス
が、資産価格高騰を生む
5.激しく騰落する不動産価格
6.2009年の政府の対策効果と、2010年の引き締め
7.古都蘇州
8.人口の年齢構成の問題が浮上:GDP長期予測

<491号:米国の流通:空き店舗が目立つパサデナより>
     2010年7月7日号

【目次】

1.オレンジ郡とカリフォルニア州の住宅価格
2.日米の小売額の比較から見えること
3.日本経済には生産性の低さの問題がある
4.日米の店舗数から見る
5.流通と在庫管理での大きな違い
6.肝心な売上数予測
【後記】

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トです。
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