完結編:STAP細胞問題の真相を解く(4)
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おはようございます。<STAP細胞問題の真相を解く>の完結編をお
届けします。

メディアでは、STAP細胞問題は、昨年末までのことです。もう古い。
しかしこれこそが、専門知識のない当方が、調べながら、1週間の
時間をかけ、書いた理由でもあります。無料版としてお送りします。

〔前文〕
本稿では、2014年12月26日に確定した「ES細胞の混入」に対し、邪
推になるかもしれないリスクをおかして、推理しています。

小保方さんは、実験ノートの不備、記録の稚拙さから推察できるよ
うに、試薬や試料の管理にも、杜撰(ずさん)なところがあると思
えます。

最初からES細胞を混入させていれば、若山教授が担当したキメラマ
ウス作りは成功します。ところが1年6か月の間、何回行っても、失
敗続きだったのです(これは事実です)。

しかし、1年半後たったころのある日、突然、若山教授によるキメ
ラマウス作りが成功します。

恐らく、何かの「ちょっとした手順」によって、小保方さん本人が
気づかないまま、若山教授に渡す細胞にES細胞を混入させてしまっ
た。この初回は、小保方さん自身が気がつかなかった。

STAP細胞は、細胞塊であり、その中に、各種の細胞が混入する可能
性があるものです。(注)論文の、掲載前の査読で、これが指摘さ
れています。

その後「***」という「ちょっとした手順」、たとえば本人すら
ES細胞が入っているとは気がついていない試薬の試験管、または培
養液に、何かを浸して入れたとき成功した(推測)。

小保方さんは、その手順を、続けるようになっていった。4月9日の
記者会見ではこれを「ちょっとしたレシピ」と言った。

後では、試薬か培養液からのES細胞の混入(コンタミ)に気が付い
たが、そのときは若山教授によって「世紀の大発見」の論文が準備
されつつあって引き返せず、その後、データが整合的になるよう、
捏造(ねつぞう)と意図的な混入を行うようになっていった・・・。

             *

本文はここからです。

STAP細胞ができたことを検証する4段階のうち最初の、細胞が緑色
に光ることから確認できるOct4-GFPの発現は、みられています。

笹井さんは、記者会見(14.04.16)で、「小保方さんが200回でき
たというのは、最初の段階のことだろう」と述べます。

しかしOct4-GFPの発現とともに必要なことは、細胞が初期化された
ことを示すTCR(T細胞受容体)の再構成が確認されることです。

これについて小保方さんは確認されたと言い、理研は後の調査で、
「見られなかった」としたのです(14年3月5日) この迷走も
STAP細胞の真偽に混乱を生みます。

加えて小保方論文のテラトーマ画像の流用問題でした。テラトーマ
は、初期化されたSTAP細胞が、無秩序に臓器に分化した腫瘍です。
テラトーマは、細胞が多能性を獲得した証拠になります。

ところが、論文のテラトーマの画像は、小保方さんの博士論文の別
の実験画像からの流用でした(14年3月上旬にこれが確定)。

小保方さんは、トレースできる本当の画像が別にあって、つい間違
えたと言っていたのですが(4月9日の記者会見)、現在に至るまで、
その真正の画像は提出されていません。

TCR再構成は、怪しい。テラトーマの真正な画像もない。この事実
が明らかになった時点から、何回行っても自分ではSTAP細胞が作れ
なかった若山 山梨大学教授は疑念を抱き、共著者に、論文の撤回
を呼びかけます(14年3月10日)。

これに対し理研は、当初、「STAP細胞の本質的な部分については揺
らぎがないものと考えているが、調査中のためにコメントは控え
る」と回答しています。

本質的な部分とは、何を指していたのでしょう。本質に揺らぎがな
いなら、調査は要らない。

理研は、この時点ではまだ、小保方さんが言っていたように、論文
の表現に部分的なミスはあったが、実験は真正だろうとしていたの
です。理研の、一貫性のない対応が、混乱を招いた原因でした。

理研のCDBが論文ではなく、細胞の調査を始めたのは、5月になって
からでした。理研の対応と処置が早ければ、その後の悲劇は避けら
れたかも知れない。

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<Vol.322:完結編:STAP細胞問題の真相を解く(4)>
       2015年1月20日

【目次】

1.キメラマウスは、できていたのか
2.別系統のマウスだった:2014年6月16日の若山会見
3.発表が抑圧された、理研の遠藤論文:トリソミー
4.笹井さんの自殺
5.第三者委員会の報告:全部、ES細胞だった

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■1.キメラマウスは、できていたのか

▼まず、STAP幹細胞の段階

小保方さんが作るSTAP細胞から、次の段階の幹細胞を作るのは、若
山教授の分業でした。幹細胞は、多能性をもつ細胞が組織に分化す
る元になるカタマリです。

若山教授は小保方さんから渡された細胞で、STAP幹細胞を作ってい
ました。最初の1年半は失敗が続き、ある日、突然、緑色に光るキ
メラマウスができたのです。

(注)このSTAP幹細胞とされていたものは、細胞が孵化器にいれる
7日間の間にES細胞が誤って混入されたか、意図的なすり替えられ
たものだったと、14年12月になって、明らかになっています(外部
委員会による調査)。

▼次は、キメラマウス(異なる遺伝子セットをもつ奇形種)

染色されたSTAP幹細胞を、初期の受精卵に入れ、その受精卵から、
遺伝子を2系統もつ臓器に分化したことを示す緑色に光るキメラマ
ウスを作ったのは、若山教授です。

他に矛盾はあっても、このキメラマウスが、ES細胞やiPS細胞に変
わり得るSTAP細胞の存在の、決定的な証拠になります。

植物の接ぎ木では、接いだ場所から、別の植物の遺伝子になります。
植物ではよく起こることが動物でもあり得るのか。動物で例えれば、
顔はライオン、胴はシマウマができるということです。

STAP細胞は、iPS細胞とは違い、損傷したイモリの手が再生するよ
うに、失われた器官を、体の内部から再生させることもできるとも
期待されていました(笹井副センター長)。切れた腕が生えくる感
じでしょう。これは「夢の細胞」であり、不老不死にもつながりま
す。

マウスの初期胚(受精卵が少し成長したもの)にSTAP細胞を入れる
と臓器に分化できる万能性をもつなら、接ぎ木をしたように、遺伝
子セットが2種のマウスができる。キメラマウスができれば、STAP
細胞の万能性が検証されます。

若山教授は小保方さんから受け取った細胞から、キメラマウスを作
ったのです。STAP細胞の存在が証明されたことになり、Nature誌の
論文(2014.01.30)になって行きます。

ところが主要な7名の執筆陣の中で、若山教授が、まずキマラマウ
スの前の、STAP細胞のTCR再構成を疑い(14年2月)、次は論文のテ
ラトーマ画像が流用であることを知り(14年3月)、それなら、キ
メラマウスを作ったときの細胞は何だったのかと、小保方さんへの
疑念を深くします。

そして、自分で第三者機関に、遺伝子の検証を依頼しました。

▼別の推理(邪推かもしれません)

ここでは別の情報から、別の推理ができます。若山教授は、STAP細
胞とされた試料から作るキマラマウス作りに、1年6か月間、失敗し
続けています。そしてある日、突然、キメラマウスができたのです
(これは事実)。

その時のことを、若山教授は、以下のように6月16日の会見で述べ
ています。

「ES細胞では、細胞をばらばらしたものを入れて、キメラマウスを
作ります。その方法をSTAP細胞で行っても、まったく成功しなかっ
た。あるとき、STAP細胞のカタマリを引きちぎって、(20から30個
のカタマリにして)入れたんです。その時、初めて、キメラマウス
ができました。これには驚きました。」

小保方さんが、最初から、ES細胞を意図的に混入させていたのなら、
ES細胞と同じようにバラバラにする方法で、キメラマウスができた
はずです。ところができていない。このときは、ES細胞の混入はな
かったはずです。最初からES細胞なら、容易にキマラマウスできた
はずだからです。

若山教授にキメラマウスの作成を依頼して1年半が経過したころ、
小保方さんは、どこかのプロセスで、誤ってES細胞を混入させた細
胞を若山教授に渡した。

その時、キメラマウスができた。小保方さん自体は、このときES細
胞の誤った混入をまったく知らなかった。

小保方さんは、その時の細かい手順を思い返し、自分が「***を
したとき、できたんだ」と気がついた。そして、次回からSTAP細胞
作りで「***」という手順を加えるようになった。

その手順がES細胞を混入させると、本人も気がつかなかった。しか
し、科学的には、混入させることだった。そして次第に、意図的な
混入を行うようになっていった。

「ある時期、急に(小保方さんが言う)STAP細胞が大量にできるよ
うになった」とされているのは事実です。

若山教授と笹井さんの一致した言葉では、「小保方さんは、期待さ
れることに応えようと、誰よりも一生懸命に行う人だ」ということ
です。

記者会見で言った「ちょっとしたレシピ」がこれだった・・・

(注)事実を論理整合的につなげた上での推測です。人は、ゼロか
らの創作はできない。偶然であれ、ストリーを創作するようになる
きっかけがあるからです。

■2. 別系統のマウスだった:2014年6月16日の会見

小保方さんから若山教授が受け取って作り、山梨大学の研究室に冷
凍保管していたSTAP幹細胞の、遺伝子の解析結果が出たのは、14年
6月初旬でした。(注)若山さんが山梨大学に移籍したのは2013年
3月です。

16日には、若山教授による記者会見が開かれています。
https://www.youtube.com/watch?v=4kAGUdkH3pY

若山教授は、自分が作っておいたマウスの赤ちゃんを、同じ研究室
にいた小保方さんに手渡し、その細胞からSTAP細胞を作ってくれと
依頼していました。

小保方さんがその通りを行ったのなら、STAP細胞の遺伝子は、若山
研のマウスと一致します。しかし共同研究者がすり替えるとは、誰
も思わないので、両者の遺伝子が一致するかどうか、普通は、確か
めない。

広範囲の、深い知識が必要な生命科学のほとんどは、現在、多くの
人で行う共同研究です。同僚を疑うなら、共同研究はできません。
実験者が出したデータに間違いがあることはあっても、捏造(ねつ
ぞう)を疑うようなことは、普通はない。

しかし若山教授は、小保方さんによるテラトーマ画像の流用が発覚
(14年3月)した時点から疑いを濃くし、自分が受け取ったものは、
別の成熟したマウスの卵子から作られたES細胞ではないかという疑
念をもつに至ったのでしょう。

ES細胞は、STAP細胞やIPS細胞のように体細胞からではなく、卵子
から作られます。もともと多能性をもち、臓器に分化するES細胞か
らはキメラマウスができます。

受け取ったにES細胞の混入があるなら、STAP細胞の存在は、いよい
よ、疑わしくなります。

解析結果は予測のなかで最悪でした。冷凍保管されていた「STAP幹
細胞」は、遺伝子の系統が異なるマウスでした。つまり、若山教授
が渡した赤ちゃんマウスから作られたものではなかった。

しかしこの解析は、ES細胞であるかSTAP細胞であるかの検査ではあ
りません。このため、会見での若山教授は「解析の結果はSTAP細胞
の存在を、直接に否定するものではない。しかし、自分が行ったキ
メラマウス作りは一体何だったのか。」と述べています。

小保方さんがなぜ違う系統のマウスからとった、「STAP細胞のよう
なもの」を若山教授に渡したのかわからない。精神的な衝撃を受け、
精神が不安定で入院中だからと弁護士が言い、小保方さんは何も言
っていません。

唯一、14年4月9日の公開会見では、「ES細胞の混入(コンタミ)は、
錯誤であってもあり得ない。若山さんとは、直接に連絡がとれな
い」と答えただけでした。

■3.発表が抑圧された、理研の遠藤論文:トリソミー

細胞の遺伝子に8番染色体が3本あるという異常(トリソミーとい
う)をもつマウスは、胎児の段階で死んでしまい、生まれてこない
という。一方、長期培養したES細胞では、トリソミーが生じやすい。

14年5月22日に、理研(横浜)の遠藤高帆上級研究員は、STAP細胞
のとされたものの遺伝子データにこのトリソミーが見られることか
ら、ES細胞であった可能性が高いことを示す論文を発表しようとし
ていましたが、理研がなぜかストップをかけていたということです。
(須田桃子『捏造の科学者』P256)

生命科学では、「可能性が高い」という検証が多く出てきます。理
由は、実験で得られたデータが統計的な標準偏差での処理が行われ
るからです。そして、統計的な処理から、あいまいな部分も残るこ
とになるのです。

理研は、若山教授が依頼した第三者機関による解析結果の発表にも、
反対していました。なぜ理研が、こうした動きをしたのか。問題を、
論文不正にとどめたい思惑があったからでしょう。

実験そのものの、意図的な研究不正が明らかになると、若山研究室
があったCDBだけではなく3390名(13年4月)で予算844億円という
理研全体の組織管理が、資金を出す政府と税を払っている世間から
疑われるからでしょう。

理研の、こうした組織防衛を目的にする対応は、事態を混乱させ、
結論が出るまで10か月も長引いた主因をなすように思えます。

2014年の6月時点では、若山教授が依頼した第三者機関による解析
結果と、遠藤上級研究員のトリソミーの論文で、STAP細胞とされた
ものはES細胞の混入であったことが直接に、100%ではなくても、
確定しています。

インタビューに応じなくなっていた笹井副センター長の、この当時
の考えは不明ですが、「STAP細胞の存在を前提としないと説明でき
ないデータが数々ある。STAP細胞は、従来の定説とは異なるでき方
と性質をもつ万能細胞かも知れない。したがって、従来の方法とは
違う検証が必要かも知れない」と考えていた感じです(推測)。こ
れが、小保方さん宛の遺書に「STAP細胞をぜひ、再現して下さい」
と書いた理由でしょう。

「***かもしれない」というのは可能性という観念の中の仮説で
す。可能性が実地のデータで検証されたとき、科学になります。

おそらく誰よりも高い自恃(じじ)をもつ笹井さんは、小保方さん
との親密さをうかがわせるメールが、NHKで公表されたことに、シ
ョックを受けていたに違いありません。

このメールを、NHKはどうやって入手したのか? 

調べると、笹井さんが、小保方さんに出した業務メールとして理研
の求めに応じて、提出していました。理研がなぜ、メールの提出を
求めたか、そして、笹井さんがなぜ理研に出したのか、理由は不明
です。事件とは無関係に思える内容だからです。

この理研のリークと公共放送であるNHKの、笹井私信の公開には憤
(いきどおり)りを感じます。

稚拙さが話題になった小保方さんの実験ノートや、キメラマウスの
実際の写真なども放映されます。極めてわかりやすい編集です
が・・・

この放映は7月27日で、多くのことがあきらかになっていた時点で
す。問題のメールは、男女の俳優が、特別な感情が感じられるよう
に読んでいます。(NHKスペシャル)
http://www.at-douga.com/?p=11686

独立行政法人という官僚組織である理研も、個々人は別にして、
「組織としての対応」はまずい。会社も含め、組織は個人の合計と
は違った動きをします。理研は組織として「政治的な動き」をして
います。放送は7月27日でした。

▼メディアが行う、編集という「切り取り」

TV番組は一般の人の興味を惹(ひ)くよう、表情、画像、発言のイ
メージ的な印象で作られるものが多い。

それらは、人物の発言の特定の場面を切り取ったものです。文脈で
も切り取りが使われます。TVや新聞からの取材で発言した人は、記
者またはデスクが期待し、視聴者が興味を持つと想定された情報だ
けの「切り取り」を経験しているはずです。

そして自分が言ったこととは違うと感じる。これが「編集」と言わ
れることです。

誤報とは言えません。しかし真正な情報を伝えるという観点から見
れば、メディアによる捏造(ねつぞう)にもあたるものです。

「研究不正が認められる印象があるが、それが不正である証拠はな
い。」という元の文から、「研究不正が認められる」というところ
だけを切り取って記事にすれば、事実を知らない一般の人たちには、
不正が確定しているように受け取られます。

これが、メディアが常に行っている文脈の無視であり、実際に発言
した人たちが感じる違和感です。

一瞬の表情を切り取ることができる写真も、連写したものから探せ
ば、誰であっても嘘を言っているときの顔に見えるものが見つかり
ます。

メディアは、いかにも犯人らしい写真を繰り返し流します。そして
メディア自身も、事件の流れを、作って行きます。パパラッチには、
報道メディアの本質があるでしょう。

ニュース報道が登場した19世紀からの、ジャーナリズムの根本的な
問題が、ここにあります。

本当は、上記の文の本当の意味は、「不正である証拠はない」とい
うところにありますが、それは、面白くない。犯罪のニュースは、
視聴者にとっては、残酷な娯楽だからです。

■4.笹井さんの自殺

2014年8月5日、世界的な学者とされていた笹井CDB副センター長は、
先端医療センターの4階と5階の間にある踊り場で、首を吊って亡
くなります。Wordで書いた遺書が、家族、理研、小保方さん宛に3
通あったという。

笹井さんは、iPS細胞の山中伸弥教授の、前任の京都大学教授でも
ありました。約3時間の会見を全部聞くと、専門用語を日常語に翻
訳しながらわかりやすく話す教師風です。

知る人は全員が、とても優秀な学者で、リーダーだったと認めてい
ます。論文の書き方は、お手本になるものだったという。

4月16日の、3時間の記者会見映像を、通して3回くらい見ました。
最初の数分、相当な緊張が見えますが、一人で記者の質問に答える
とき、嘘をつくような表情の動揺は、感じられません。
https://www.youtube.com/watch?v=xu-XUie-Hbc

小保方さんは、自殺の報を聞いて号泣し、若山教授は、がたがたと
震えたという。

▼とても多い自殺と未遂

日本では、2000年代の3万人台からは減ったとは言え、今年も2万
5000人が自殺します。今日も50人から100人でしょう。未遂はその
10倍、25万人とされています。自殺には至らない自損・自傷行為で、
救急車が出動したのは7万4000件(2009年:消防庁)です。

80年の生涯のうち60年が自殺を図る年代とすれば、未遂も含むと
25万人×45%×60年=675万人になります。45%は、自殺者のうち
未遂の経験数です。

675万人の意味は、80年の人生で長い期間にすれば、今生きている
人の20人に1名が、未遂と自殺を経験するということです。自殺と
未遂は、日常的です。(注)自傷的な行為は、この自殺の3倍です。
http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/whitepaper/w-2011/html/honpen/part1/s1_1_14.html

自殺について、深く研究したのは、社会学の提唱者、エミール・デ
ュルケームでしょう。(『自殺論』:1897)

▼組織の価値観と文化

デュルケームは、個人の外にあって個人の行動と考えを拘束してい
る集団(組織)や社会に共有された行動と思考の様式を、集合意識
と言っています。社会、集団、会社に見られる組織文化と価値観の
ことです。

例えば葬式のとき喪服を着るのは、社会の集合意識に合致すること
を目的にした行動です。このような社会の意識が、個人の行動と思
考を束縛し続けていると主張します。

いろんな事実が明らかになって、研究不正が確定して行くにつれ、
理研の内外ではCDB(発生・再生科学総合センター:450名)の組織
解体にも至る動きを生んでいました。

CDBの予算獲得にもっとも貢献していたのが、笹井副センター長で
した。プロジェクトを立ち上げ、政府から30億円くらいの予算を獲
得することです。STAP細胞も、その有力な一環でした。

理研の建物の中で自殺するという最後の表現に、何かは不明ですが、
組織の論理への、抗議があるのかもしれません。

▼理研のバッジの、シンボル

4月16日の記者会見の時の、理研のバッジを思い出します。(注)
人物を描く小説家なら、バッジをつけさせるでしょう。

「笹井さんが理研のバッジをつけられているのを初めて見ましたが、
実験のときもつけているんですか?」(記者の質問)
「実験のときはつけません。今日は、理研の副センター長としての
立場から発言するという意味で、バッジをつけてきした。」(笹井
さん) 3300人の理研も組織としての集合意識をもちます。

組織人の発言は、立場によって多層です。以下は推測です。本人が
語らない限り推測しかない。語っても本当のことを言っているのか
どうか、わからない。物証がない観念、心の世界だからです。

私は、会見では、STAP細胞の開発を推進してきた理研CDBの副セン
ター長の立場で、説明をしている。その説明は、「STAP細胞の存在
を前提にしない限り、説明のつかない、従来の定説を壊す新しい現
象があって、私はそれを見た」ということである。

自然の謎を解く、個人の科学者としての見解は、別のことである。
そのことを、バッジをつけたことの表現で、知ってほしい。

笹井さんが、普段はつけたことがないバッジを、机からとりだし、
襟につけるときの心境がこれでしょうか。(注)深読みにすぎるか
もしれません。ここは、とても残念な気持ちが、書かせています。

理研の他の人、研究不正再発防止推進本部のSTAP細胞検証実験チー
ムのリーダーを務めた相沢慎一氏も、記者会見で、言っています。

「私は、今、検証実験チームの委員長としての立場で発言している。
個人的な見解は別にもっているが、それは、ここでは言わない。」
これは、普通は言わないことです。

理研に属する組織の論理を優先させるということです。これは、自
然科学的な態度ではない。

知識エリートが集まった理研で、以上の多層的発言が日常的だった
のでしょう。相沢氏がふと述べた言葉からも、うかがえるのです。
https://www.youtube.com/watch?v=zVmzTWBmvrA
https://www.youtube.com/watch?v=CfdocL3VLIU

■5.第三者委員会の報告:全部、ES細胞だった

▼再現できなかったSTAP細胞

理研は、2014年9月から11月まで、厳重な監視下においた小保方さ
んと、丹羽リーダーのチームで、酸に浸したSTAP細胞作りからキメ
ラマウスまでの、再現実験を実施しました。その結果は、年末の
12月19日の会見で公開されました。

「小保方さん、丹羽リーダーのチームは、STAP細胞の再現に成功し
なかった。続けても無意味である。再現実験はここで打ち切る」と
いうものでした。

小保方さんは、自らが3か月行い、成功しなかった後、退職願を書
き、12月21日づけで理研を去っています。「前はできていたのに、
おかしい」とイライラした風だったという。

▼ES細胞だった

決定的だったのは、12月26日に公表された第三者委員会(委員長 
桂勲)の「研究論文に関する調査報告書」でした。(本文とスライ
ド)
http://www3.riken.jp/stap/j/c13document5.pdf
http://www3.riken.jp/stap/j/h9document6.pdf

「残された細胞試料は、遺伝子の解析を行うと、すべてが、既存の
ES細胞から作られたものだった」

そして、論文に書かれたキメラマウスもES細胞から作られ、テラ
トーマ画像もES細胞由来である可能性がきわめて高いということで
す。

ES細胞の混入またはすり替えは、STAP細胞を孵化器(インキュベー
ター)に入れて放置する7日間の間に、起こった可能性が高い。た
だし、これが故意か、過失(錯誤)かは決定できない、というもの
でした。

3回のヒアリングを受けた小保方さんは、ES細胞を混ぜたことは、
否認しています。関係者の全員も、否認したという。偶然の過失な
ら、連続するはずはない。誰かの故意です。それは誰か?
ここからは、犯罪の捜査になります。

論文が発表されて1か月後の2月には言われていたES細胞の混入が、
この遺伝子の検証で確定しました。ふたを開けてみれば、もっとも
単純な原因でした。

ほぼ10か月間のSTAP細胞騒動は、あっけない幕切れだったのです。

現代の時間は、メディアのともに流れます。デュルケームが言った
集団意識、つまり社会の意識を、無意識に作っているメディアが取
り上げないと、人々は、話題にしなくなるからです。

12月26日の年末に、事件の結末を示す記者会見があったことには、
新年に持ち越したくないという理研の意志が現れている感じです。

日本人にとって、年越しは、年忘れという集団意識だからです。

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<744号:米国市場のしっぽになっている東京市場>
        2014年12月17日配信

【目次】
1.日本の株式市場
2.2008年9月以降の、世界のマネー増発 
3.金融経済を巡るマネー
4.株価が上がった
5.株式市場では、マネーのレバレッジ的な増加が促される
6.米国FRBが、2014年10月に、QE3を停止した本当の理由
7.国際金融マフィアに属する黒田日銀に頼んだ、FRB
8.外為に大きな動きがあるときは、政府・中央銀行が介入するのが
普通である
9.米国株式市場の尻尾になっている、東京市場
【後記】

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<745号:戦後の英国債の処理と、現代の日本>
  2014年12月24日:クリスマ・イブの配信

【目次】

1.英国の、戦後の国債の残高はGDP比で275%だった
2.英国政府と中央銀行がとった方法
3.英国中央銀行の国債買いによって、英国は高いインフレになった
4.英国の戦後インフレ
5.異次元緩和は、マネタイゼーションが、真の目的だった
6.自由化された金融の中で、マネタイゼーションの継続は可能か?
7.日本は、金利が上がるインフレでは、国債残を減らすことはでき
ない

【↓まぐまぐ会員登録と解除の方法】
http://www.mag2.com/howtouse.html#regist
◎登録または解除は、ご自分でお願いします。
(まぐまぐ有料版↓)
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(まぐまぐ無料版↓)
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(以上)

■2.「まぐまぐの有料版を解約していないのに月初から届かなく
なった。」との問い合わせが、当方にも多いのですが、ほとんどの
原因は、クレジットカードの「有効期限切れ」です。

なお、登録情報の変更は、まぐまぐの『マイページ ログイン』の
画面を開き、登録していた旧アドレスとパスワードでログインして
出てきたマイページで、メールアドレス、パスワード、クレジット
カードを新しいものに変更できる仕組みです。クレジットカードの
変更、送信メールアドレスの変更、パスワードの変更などに使って
ください

(マイページ・ログイン↓)
https://mypage.mag2.com/Welcome.do  
  または↓
https://mypage.mag2.com/mypage/creditcard/CreditCardMenu.do

新しいカードと有効期限を登録すると、その月の届かなかった分を
含んで、再送されます。

【お知らせ】
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