5000万戸の空き家が判明した中国の金融危機が近い
This is my site Written by admin on 2019年1月26日 – 15:00
ブルムバーグが「中国の空き家が5000万戸」と報じています。ご承
知のように、住宅価格を含み、中国の経済統計は、信頼に足るもの
が少ない。日本の厚労省とは次元が違って、集計の基準が、激しく
任意だからです。

1月16日の有料版(25ページ)では、中国が、住宅価格のバブルの
崩壊から金融危機に向かっていることを解析しています。本稿では、
それを半分に圧縮、抜粋して送ります。

            *
世界的な資産バブルが増幅したのか、ヴァイオリンの銘器とされて
いるストラディヴァリウスは、20億円以上で取引されているという。
弓も2000万円とか。年平均15%から20%の高騰。市場を介さない、
デリバティブのような相対取引なので、正確な時価は不明ですが。

デリバティブにも、株式のような公開取引所はない。銀行・金融機
関の相対(あいたい)で、価格がついています。国債も、金融機関
の相対取引です。金利は、国債の売買価格によって決まっています。

資産額が世界で15位、1.77兆ドル(2018年:195兆円)のドイツ銀
行がもつ、時価が不明なデリバティブは、ここ数年、ユーロ危機の
元凶になると言われ続けています。ドイツ銀行は、国内ではなく、
東欧・南欧・中東・中国を含むアジアの新興国への貸付と債権がと
りわけ多い。

中国住宅のテーマとも関連しますが、世界のメガバンクの資産額で
も、中国が急浮上し、順位の大きな変化が起こっています。

・1位 中国商工銀行4兆ドル(440兆円)、
・2位 中国建設銀行3.4兆ドル(374兆円)、
・3位 中国農業銀行3.2兆ドル(352兆円)、
・4位 中国銀行2.9兆ドル(319兆円)、
・5位がやっと日本の三菱UFJフィナンシャルグループの2.8兆ドル
(308兆円)です。

中国の大手銀行は、1位から4位を独占しています。1980年代後期の、
預金が多かった日本の大手銀行と同じです。銀行のB/Sの資産額は、
負債である預金と、資産である貸付金や債券の大きさを示すもので
す。

銀行は、金利の低い短期のマネー(預金)を、金利の高い長期のマ
ネー(貸付金や債券)に変換する仕組みのものです。(注)ファイ
ナンス理論では、「短期資金の長期への変換」と言っています。

上記以外では、中国では、理財商品(中国版サブプライムローン)
を作って、それを金利の高い証券として売っているシャドーバンク
が、9兆ドル(990兆円)です。シャドーバンク(影の銀行)は、銀
行のようには政府の管理と規制を受けていず、破綻のときも政府の
救済・支援がない金融機関です。

融資の中身は、日本のノンバンクあるいは1990年代の住専に似てい
ます。米国の、一般の預金がないゴールドマンやJPモルガンのよう
な投資銀行の範疇です。投資銀行は預金を預かって運用する「商業
銀行」ではなく、短期金利を他行から借りて、不動産、債券、株式
投資で運用しているという意味です。

900兆円に膨らんでいる中国のシャドーバンクは、投資不動産に利
回りを金利とする理財商品(証券)を個人に売って、資金を調達し
ています。銀行預金より金利が高いとして、個人が理財商品を買っ
ているのです。この点も、証券化されて売られていた米国のサブプ
ライムローンと同じです。理財商品は、不動産価格が下がると、サ
ブプライムローンと同じように不良化します。

中国の「銀行+シャドーバンク」には、住宅・不動産バブルが崩壊
すると、何回破産しても足りない、潜在的な不良債権があります。

中国の公式統計での不良債権(シャドーバンクは除外)は、資産額
の1.7%と、極めて低い。比較すれば、金融危機の1998年から18年
にかかって融資を回収して切り捨ててきた日本の115銀行の不良債
権は8.3兆円であり、1.5%です(16年12月)。現在の日本並みに不
良債権が少ないことを、誰でも変に思うでしょう。

金融危機からの銀行の自力回復には、政府の援助(出資)、中央銀
行のマネー増刷がなければ、12年から20年はかかります。

穏やかな推計でも、2018年で中国の銀行の不良債権は、1.7%の10
倍あるとされています。20倍かもしれません。

中国政府は、日本や米国の基準では、不良債権を見積もっていませ
ん。実態を示せば、利にさとい中国人の預金取り付けが起こるから
です。

900兆円の理財商品のうち過半は、すでに不良化しているでしょう
か。追い貸しの借入金の増加により、自転車操業の資金繰りがされ
ていると推測します。

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 <985号;2019年は、リーマン危機から11年目(後編)>
       2019年1月16日:有料版

【目次】
1.中国の不動産・住宅バブルの崩壊の兆候
2.日中の、国家の違い
3.習近平主席による粛清政策と、金の買い漁り
4.増えすぎた経済主体別の負債
5.住宅在庫が5000万戸(!)
6.下落の端緒は、最も住宅が高くなっている上海、香港、シンセン
7.住宅と不動産価格の下落は、中国発リーマン危機を生む

【後記:銀行の不良債権処理】

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■1.中国の不動産・住宅バブルの崩壊の兆候

中国の経済統計には、かつてのソ連のような計画経済のものが多い。
ソ連では、製造された商品の価格は政府価格であり、売れ残った不
良在庫があっても、下がらなかったのです。

中国の新築住宅の価格は、日本や米国のように、自由な市場が、売
買で価格を決めたものではありません。新築住宅価格、GDP統計に
は、作りすぎて残った住宅在庫の、値下がり統計が入っていません。

GDPは生産額を集計します。いつも4%付近とされている失業率も、
都市戸籍の人だけが対象です。農村戸籍の人には失業という概念が
ないからです。

この中国でも、株式市場の株価は、売れた価格です。しかし資本
(=マネー)を自由化してはいず、世界市場からは、保護された株
価です。

通貨では、
・資本の流入になる、ドルから人民元への交換は自由ですが、
・元の国外流出になる「ドル買い、ユーロ買い、円買い/元売り」
には、金額の制限があります。

中国の株価は、2018年は、年初の3500ポイントから2535へと、28%
も下げています(19年1月14日:上海総合の平均指数)。時価総額
では250兆円という大きな損失が生じ、株の形の金融資産は250兆円
縮小しています。

株が250兆円下がっているのに、住宅価格が下がっていないのは、
新築の売り出し価格の統計だからです。売れた価格の統計は公表s
れていません。

【計画経済での、商品や住宅価格】
共産主義の計画経済では、在庫が売れたときの価格統計ありません
でした。ソ連のGDP統計では、商品は政府の統制価格で全部売れた
とされていました。流通在庫、不良在庫という概念はなかったので
す。このため価格は下がらず、GDPは増え続けていました。

風船のように膨らんでいたGDPに応じて増刷されていたルーブルは、
ソ連邦が解体した1991年(ゴルバチョフの時代)、暴落(1/1000)
して、ハイパーインフレになったのです。紙幣は、政府の意思で、
生産にかかわらず、いくらでも増刷できるからです。通貨の増刷は、
砂糖水を水で薄めるように、マネー1単位の価値を希薄化させます。

中国の住宅価格も、新築価格だけを統計する限りは、下がりにくい。
(注)住宅、不動産、固定資本の建設額は、そのままGDPになりま
す。

政府統計をもとにした、2012年から6年間の住宅の単価は、以下の
ように、2014年を除いて、上がり続けています。

一級とは、周辺部を含むと3000万人クラスの人口が住む北京、上海、
シンセン、広州の4都市です。二級は武漢、成都など25都市。3,4級
都市は邯鄲、金華など21の市です。
 
経済体制が今も違う香港は、除外されています。

【中国の住宅単価の指数:2012年から2017年】

    2012年  13年  14年 15年 16年  17年 平均上昇
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
一級都市 100  110  110  140  160   185  13%/年
二級都市 100  105  100  100  120  130   5%/年
三級都市 100  100  105  95  105  115   3%/年
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(データは、三井住友銀行中国有限公司:17年9月)

一級都市の1平方メートルあたりの住宅単価は、2012年を100とする
と、年平均13%上がり続け、5年で1.85倍です。今、1億円や2億円
の住宅はザラです。統計から漏れている香港では、2億円から数億
円。一戸の面積の増加もあるからです。

ドルペッグ制(対ドルの準固定相場)をとる香港ドルが、元の送
金・受金の、仲介と中継基地になっていて、香港は、ロンドンのシ
ティのような金融都市だからです。

二級都市では、平均年率5%の上昇。三級都市では、年率3%の上昇
と穏やかです。ただし、人口では三級都市でも、大都市周辺の東莞、
佛山、廊坊、中山などでは、一級都市と同じように、5年で1.8倍の
上昇率。総じて、年10%の上昇を続けてきたと言っていいでしょう。

住宅と商業用不動産は、固定資本投資の新築価格として、中国の
GDPを底上げしています。あとで述べる5000万戸(新築の5年分)と
いう、膨大な売れ残り在庫が、世帯に売れるときの価格を統計した
ら中国のGDPは、2ポイントは低下するでしょう。

住宅価格の過大見積もりという要素で、6.5%が4.5%の成長になる
ということです。

それとともに、銀行とノンバンクの不動産融資は不良化し、リーマ
ン危機のような金融危機に向かいます。不良債権は200兆円以上に
なるかもしれません。

【一方でローン残高は、過小に集計されている】
住宅ローンの残高は、2016年で20兆元(320兆円)とされています
が、これは日本とあまり変わらない額です。

米国が1000兆円ですから、中国は、その1/2の500兆円はあるでしょ
う。店舗やオフィスの商業用不動産のローンは含んでいません。

中国では、GDPの中に占める、住宅と不動産投資、および道路や鉄
道、電力、通信などの社会インフラの投資率が異常に高く、45%で
す。(日本では20%:米国では15%)。代わりに、個人消費の構成
比が少ない。

【固定資本投資額がGDPの40~45%(日本は約20%です)】
2018年の名目GDPは13兆ドル(1430兆円;日本の2.6倍、米国の
2860兆円の半分)です。

固定資本投資は1年分で、日本のGDPを超える570兆円(40%)を占
めています。そのための資金が、(1)企業負債、(2)政府負債、
(3)個人負債の、増加の原因になっているものです。

特にリーマン危機のあと、企業負債の増加率が高い。金融危機にな
った米欧への輸出の減少を、中国政府は、住宅建設、商業用不動産、
政府の固定資本の増加でうずめる政策をとったからです。

計画経済の中国では、政府の政策は、時間差なく、企業の投資行動
になります。人民銀行が元を刷って銀行に貸して、銀行は増えたマ
ネーを企業に貸す。これが08年のあと、企業負債の増え方が大きく
なった原因です。この点も、政策の波及時間が長い先進国と違いま
す。

【元の増刷は世界1のスケール】
人民銀行のB/S(資産=負債)の規模は、元発行の金額を示します。
2017年5月で、580兆円に膨らんでいます。米国のFRBが4.14兆ドル
(455兆円)、日銀が553兆円です(19年1月)。
https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2019/ac190110.htm/

5年間、世界の中央銀行の、約100年の歴史で、異例な異次元緩和を
行っている日銀より、人民銀行の通貨発行が多い。住宅建設、商業
用ビル建設、道路、電力、通信の固定資本投資を増加させるための
元の増発を行ったからです。

【ドル準備で元を発行している】
日本や米国では、中央銀行が通貨を増発するときは、代替資産とし
て国債を買います。ところが中国では、人民銀行がドル債を買って
元を発行しています。人民元は、世界にはあまり知られていません
が、ドル準備制の通貨です。

理由は、元と中国国債は、資本が自由化されてないので、国際的な
信用が低いからです。資本の自由化とは、企業や個人が自由に、外
貨を買うことができることです。

政府は「中国人の、ドル買い/人民元売り」を恐れ、外貨への交換
に制限を加えています。

資本を自由化すると、ホンネでは共産党政府と人民元の価値を信用
していない富裕者の多くが「ドル買い/元売り」に殺到するからで
す。海外への留学と移住が多いことからも、わかるでしょう。

■2.日中の、国家の違い

【?(パオ)が国家の中の国家】
古代からの、社会的な紐帯(同盟)である?(バオ:小室直樹)は、
北京閥と上海閥に分かれ、国と軍の支配権を争う政治的な興亡を続
けています。中国では共産党の独裁体制が続くなかで、王朝の興亡
が続いています。選挙制がないからです。

【闘争】
この闘争は、強い政治家を生む理由にもなっています。民主主義で
選ばれた他国の元首に対する尊大な態度から、これがわかるでしょ
う。徳川幕府のような封建制と、共産党内での身分制を残す国家が
中国です。

人民には、居住の自由(=職業選択の自由になる)と外貨交換の自
由は部分的にしかありません。GDPの約70%を生む国有企業の幹部
は、全員が共産党員であり、身分制の共産党による国家資本主義で
す。

【政府と自国通貨への信用】
日本人は、表では政府を非難します。しかしホンネでは、政府、円
という通貨、日本経済、日本企業を信用しています。国家の根に
「万世一系の天皇」があるからでしょう。

今年が代替わりです。昭和から平成になった初年度(1989年)は、
資産バブルの最後の年だったことを忘れません。天皇の代替わりと
ともに、1990年から資産バブルが破裂しています。

米国では、およそ2期(8年)で大統領が変わることが、企業でも短
期経営になることを促しているのかもしれません。米国ではいま、
2016年末からのトランプボーナス(減税と財政支出増加への期待)
で上がった株価が、ボーナスを食い尽くして下げています。

日本では大正の15年を除き、30年から45年と長い。昭和は天皇在位
では65年ですが。敗戦で国家体制の分断があるので、実質は45年。

古代から、オセロのようにひっくり返る王朝の興亡を続け、20年で
経済大国になった中国では、政府に寄せる国民の信用が薄い。国産
を重んじる文化も低い。

富裕者層は中国産の、農薬と添加物が多い食品を食べず、子息は海
外に留学させ、日本を含む海外の不動産を買っています。昨年末に
行ったバンクーバーでも中国人が多かった。25%は中国人という。
カナダは移住先として、人気があります。

■4.増えすぎた経済主体別の負債

こうした通貨シナリオを知っていれば、中国共産党は、以降で示す、
リーマン危機のあとの不動産投資による負債の急増を、冷静に眺め
ることもできるでしょう。バブルの崩壊からの失業が引き起こす、
天安門のような民主革命の恐れがなくなるからです。

政治・経済の体制の転覆であり下克上でもある民主革命は、計画経
済の中で失業した、あるいは所得が減った貧者の連合の、富者への
反感が起こすものです。中国では、資産バブルにより巨大な貧富の
格差が生じています。

▼中国の主体別負債:リーマン危機後: 2年単位:10億ドル:

   2008年  2010年  2012年 2014年 2016年  2018年
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
政府 1,162  1,749  2,646  3,697  5,021  6,428  
世帯  767  1,359  2,227  2,312  4,706  6,629 
企業 3,928  6,429  9,818 14,096  18,090  22,052
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
合計  5,837  9,537  14,692 21,105 27,817  28,681
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
GDP比 145%  180%    187%  205%  255%  239%
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
データBIS(国際決済銀行):ここでは、2年ごとに示した。

世界中の、部門別負債の大きなエクセルなので、分かりにくい元
データが公開されています。BISの中国の負債データには、偽装は
ないと考えています。日本でも、順次、新聞が書くようになってき
ました。当方は、ほぼ4年前から、講演や書く時に使っています。
https://www.bis.org/statistics/totcredit.htm

中国では、建設会社が建物の骨組みを売り、買った人が内装と設備
をします。このため、売れ残って夜間に照明がつかない骨組みだけ
の建物は、幽霊の屋敷に見えるので、鬼城と言われます。

建設する企業部門の負債は、2008年は3.9兆ドル(429兆円)と、
GDPに対して97%と他国よりは大きかったものの、まぁまぁ妥当で
の線。

これが、2018年の3月には、22兆ドル(2420兆円)に膨らみ、GDP比
184%という残高になっています。年平均の増加率は21%と、GDPの
増加である10%程度の2倍です。平均増加額は、2兆ドル(220兆
円)です。GDP比で1.8倍の企業部門の総負債は、日本の国債(GDP
比約200%)と同じく、異常な大きさです。

企業の負債は、なぜ10年間も、年率20%という高さで膨らみ続けて
きたのか。年1000万戸の住宅建設、商業用不動産建設、インフラ投
資のためです。

しかし、住宅建設では、それが売れれば、建設会社の負債は減って、
世帯の負債に置き換わります。世帯の負債の増加は2008年に7670億
ドル(84兆円)から6.6兆ドル(726兆円)です。

年平均で、71兆円の増加でしかない。他方で。多い建設業を含む企
業の負債は、1年に220兆円という速度で増加しています。「近代化
の経済」では、住宅、ビル、道路や電力の土木・建設業が多くなり
ます。日本でも1980年代まで建設業は600万人でした。現在は500万
人。

なぜこんなに企業の負債が増えたのか。年平均1000万戸の建設した
住宅に、鬼城のままの売れ残り在庫が出ているからです。

新築の価格は、多くが売れていないので、下がっていない。毎年、
新築が行われている新しい価格の統計だからです。(注)上海では、
2018年の新築価格は、前年比で8%下がっているという調査が出て
います(NYの調査会社)。これは、まだ政府統計には入っていませ
ん。

■5.住宅在庫が5000万戸(!)

18年の12月に、ブルムバーグから、驚くべきデータが公表されまし
た。中国の住宅在庫が5000万軒というものです。調査したのは、中
国の西南大学の甘犁教授という。重慶市にある、この大学は、中国
の失業率でも、本当を示すデータを出しています。

5000万戸は、中国の全住宅の22%、1年の1000万戸建設の5年分です。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-09/PHWXGI6TTDSF01

一級都市の北京、上海、広州での、政府の在庫統計は、5か月分か
ら10か月分でした。もっとも多いシンセンでも、20か月分です。し
かしこの在庫が、全中国で5000万戸、新築の5年分という。

(注)日本も、800万戸(全住宅の13%:新築の8年分)の空き家が
ありますが、中国とは、要因が違います。日本は、人口減と老朽化
による空き家です。中国では、GDPを増やすための政府が音頭をと
った「建て過ぎと価格高騰」が原因の空き家が多い。政府・銀行が、
「貸付金」を増やしたからです。

これで、中国の企業負債が、毎年平均2兆ドル(220兆円)増える一
方で、減らない理由が分かりました。

作った物件が、約5年分も売れ残っていたのです。普通の世帯が買
うことのできない価格(年収の10倍から15倍以上)の新築価格だっ
たからです。

売れていないから、価格は最初のまま統計され、次のまた上がった
新築価格になっているのでしょう。売れなければ世帯のローンには
振り替わらないので、企業の建設費の負債が増えるままになります。

商業用の不動産でも、急激に伸びているアリババなどのネット販売
によって、客をとられ、閑古鳥が鳴いているショッピングセンター
が多いという。これも、企業部門の負債の増加になります。利益が
出ず、借金を減らすことができなくて、運転資金借り入れが増えて
いるからです。

こうした不動産が、投げ売りするしかない不良在庫にならないのは、
政府の意向で動く、計画経済の銀行が企業に対して、利払いの分の
追い貸しをしているからでしょう。他の国では、資金繰りのために
投げ売りになります。

銀行からの追い貸しが続く間(企業負債が増える間)は、新たな借
入金で利払いができるように見えるので、不良債権ではない。GDP
の70%を生む国有企業の負債は、年220兆円という異常な金額で、
膨らみ続けています。

■6.下落の端緒は、最も住宅が高くなっている上海、香港、シンセ
ン

最近10年で3倍に上がり(年12%上昇)、中国でもっとも高い香港
の住宅価格は、2018年の8月のピークからは5%下げています(大手
の仲介業の中原不動産)。(WSJ:2018年11月27日)。

戸籍人口2418万人という上海の新築物件も、10%下げています。売
れていない在庫が、もっとも多いシンセンも下げているはずです。
なお中国の都市人口は、無戸籍(農村戸籍)を含むと約20%は多い
でしょう。中国人には居住地の自由はないからです。

2019年は、中国住宅価格が下がる開始年でしょう。中国の総人口は、
2018年から、日本の8年遅れで減り始めています。

世帯所得の増加率も年10%の期待から、商品生産の粗利益である
GDPの伸び率の低下に対応して、5%程度かそれ以下に下がってきて
いるからです。

【期待所得の増加率は、低下した】
所得の、期待上昇率の低下への認識は、年収の10倍から20倍の高い
住宅を買ってローンを組むことを、押しとどめます。共稼ぎを想定
した男性は10年後、20年後の住宅価格と、所得の上昇を期待して
(織り込んで)、住宅を買っているからです。

中国に多い共稼ぎで、無理なく買える住宅価格は、大都市部で、共
稼ぎ700万円の年収の5倍から6倍までです。中国では、住宅を買う
ことが結婚の条件ですが、価格が上がってしまった30歳以下の世代
には、これが果たせなくなっています。

【今後、住宅価格が上がる、需給面からの要素はない】
2019年に、中国の新築住宅価格が上がる要素はあるでしょうか。
(1)米中貿易戦争で、輸出が減り、所得を決めるGDPの伸びは低下
する。
(2)増え続けていた中国の人口が、横ばいから下落に入ったこと
により、増え続けていた住宅の需要動機が下がり、すこしずつ減少
に向かうことは決定的な要素です。

国連は中国の人口は、2020年からピークになり、減少は2030年から
としていましたが、現実では、12年早まっています。1人の女性の
出生率が1.28と日本の1.41よりも相当に低く、幼少人口の減少に慌
てた政府が一人っ子政策を停止しても、子供の誕生が過去の想定よ
り減ってきたからです。
https://toukeidata.com/country/china_jinkou.html

人口減は0.2%や0.3%と低いように見えても、平行する住宅価格の
下落率では、年10%と高くなります。これが、シンセン、香港、上
海で先駆けて起こっている下落でしょう。

住宅は「1年に10%は上がるという期待」から、賃貸しの投資用と
しても多く買われてきました。「10%下がるという予想」になると、
中の上の所得クラスの人で二軒目三軒目、富裕者の10軒目や20軒目
の新築住宅購入が、大きく減ります。

【富裕層の住宅投資も大きく減少する】
中国では、2014年ころまで、先進国以上に富んだ階層の投資・賃貸
住宅の買いが多かった。世帯の居住のための需要より、価格が高く
上がっていた理由でもあります。

需要数が減れば、売れる住宅価格は10%、15、20%、30%と価格が
下がります。これが、2018年秋から2019年にかけ、新築価格ピーク
アウトしたあと、起こることでしょう。

政府が管理している新築住宅価格に、需要数の急減が反映されるこ
とはなくても、実際の売買市場では、下がって行きます。数年後は、
新しく作られる新築価格も、大きく下げるでしょう。全住宅の5戸
に1戸の割合にもなる、5000万戸の空き家が価格低下に及ぼす圧力
は巨大です。

【住宅価格の下落は、景気循環からでなく構造要因から】
景気の減速がもたらす住宅価格の下落なら、回復もあるでしょう。
2019年からの下げは構造的なものです。

日本では、200万戸/年だった新築が、1980年代末に、今の中国と同
じ需要の構造変化から80万戸から100万戸に減っています。平均価
格も年収の6倍から6倍で買うことができる価格(約半分)に下がり
ました。

同じことが、2019年からの中国で起こります。景気循環の問題では
ないのです。

■7.住宅と不動産価格の下落は、中国発リーマン危機を生む

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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
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