おはようございます。寒い日が続いています。約2ヶ月もご無沙汰し、
申し訳なく存じます。いかがお過ごしでしょう。当方、元気で活動し
ています。ひさしぶりのテーマは、経営者(及び幹部)が行うべき3つ
の仕事の内容を解くとします。2号か3号ににわけてお送りします。
最近、知己をいただいている経営者の方々と話す機会が、多くありま
す。経営問題だけかというとそうではない。結局、生き方の問題にな
ります。
事業では、とくに今、トップ経営者がどう意思決定するかが、現在及
び将来の業績に、以前よりはるかに大きく、関係するように変わって
います。
時代の変化が加速され、3ヶ月前が古くなるからです。意思決定によっ
て変化を引き起こすのは、トップです。トップには、責任を転嫁する
相手がいません。
下から見れば、社長や役員・及び幹部は、権限があって自由でいいな
とは思えます。しかし、権限には、意思決定の結果の責任が伴います。
今日の自分の、事業の将来についての意思決定や人事権で、明日の
業績が決まる。明日は見えない。見えないから、イメージと言葉で考
えることしかできない。考えは、悩みにもなる。不眠症という人も多
い。
しかし、夜の考えは止めた方がいい。目覚めた朝、決断する。夜の考
えは、どこかに否定的なものが多く混じります。
現代は、夜は闇ではありませんが、古代からの闇(=危険)への感情
的なDNAが、残っているのでしょう。月明かりで考えるときと、太陽の
光の下で考える結果は異なります。寒く、暗いときの思考はダメです。
▼観想から
トップのポジションにある人達には、悩みが多い。自分の、今日の意
思決定が、明日の事業に、大きくかかわるからです。意思決定には、
悩みが伴います。決断の結果が見えないからです。
本稿で言うトップは、社長だけではなく、情報に基づいて、明日の事
業について判断し、意思決定する権限が付与された人という意味です。
決定の権限には、結果への責任が伴います。役員・幹部・部長も、社
長より狭い範囲でトップマネジメントです。
(注)トップだけでなく、人は誰でも悩みます・・・しかし上司がい
る人は、上司やトップに転嫁できることもある。そのため意思決定に
ともなうものでなく、多くが、自分の仕事の結果評価、つまり認めら
れるかどうかを根拠とした悩みでしょう。
AかBかCか・・・あるいは、何もしないか。
ここ2年、今まで経験がない速度と激しさで経済、社会が変わっていま
す。盤石に見えても、短期間で崖をころがるように転落する会社も増
えた。過去は確定した事実です。未来はまだない。
過去の20年間の変化が、10倍の速度で凝縮された感じを受けます。
「情報社会化」しているからでしょう。
集中して(約三ヶ月)、虚実の入り交じる大量の情報が流れる。言葉
や映像で概念化された間接情報の意味を読むのは、人間だけでしょう。
別の言葉ではイマジネーション(想像されたもの)と言う
言葉や数値の情報は人間が感知し、判断(意思決定)します。多くが
メディアを通じて知る間接的なものです。
メディア情報には、無意識の時代や集団の共有価値観(判断基準)の
フィルターがかかっています。一瞬の写真やビデオをどうつなげて出
すかで、情報の意味が変わります。
人が未来に立って現在を見ることができるなら、判断は要らない。悩
みもない。しかし誰にとっても、明日の新聞はない。
悩みの原義は、「将来の、結果が分からないことについて、考えるこ
と」(『常用字解』) まだないものについて考えるための道具が、
言葉(=概念)とイメージです。
人には、将来への予見をする力がある。予見は多くが間違ったものか
もしれません。その時点で、正しいかどうか、分かる手段はない。
分からない中であっても直感はできます。そして、直感された結果を
想定し、論理で意味づける。そして、実行する。
人は皆、生きる中でこれを行っています。胸騒ぎがするときは、将来
にリスクを感じています。そのときは、論理的な思考で考えるしか、
癒す方法はない。過度に恐れることはない。実際にそうなってみると、
意外に、事前予想より小さいことが多い。過去を悩まない。まだない
明日の事業を考える。それが経営者たるものの、義務でしょう。
【歴史】
法則に従う自然と違う「人間の世界」に、今日と違う明日の「歴史」
ができる。
地球が、エネルギーの源である太陽の回りを自転しながら回転するの
は、自然です。100年経てば、100回は公転している。いや、100回の公
転時間を100年と言う。
これには人は関与できない。自然的な、事物の世界の明日は、ほぼ狂
わず予見できます。しかしこれは、歴史ではない。
歴史は、人間の世界の「意識」の中のものです。「観念」が歴史です。
人々が考え、行動したことが歴史です。2010年2月9日、**で食事
した。これは歴史ではない。そのとき何を考えていたか、どう判断し、
行動したかが歴史です。
【戦略】
事業経営で「戦略」と言われるものは、明日の成果を目的にします。
今日より、より良い明日の成果が得られるかどうか。戦争用語だった
「戦略」を、経営の中に持ち込み、事業開発や仕事の方法として説明
した最初の人は、ドラッカーです。
【時代は、いつの時期も、極点に見える】
歴史を調べて分かることは、古代・中世・近世、いずれの時代も、そ
の時点では、「あらゆるものが、今、極点に達している。」と観想さ
れています。
書き物が残る奈良や平安時代でも、です。奈良時代には平安時代はな
く、平安時代には鎌倉時代も江戸時代もない。自分が生きる現在が、
過去から到達した極点です。
約100年前の、フォードの自伝『藁(わら)のハンドル』には、「現在、
技術は極点に達しており・・・」と書かれています。
天才的だったフォードにも、100年後の、現在の自動車製造における技
術的な進歩や高度化は、見えていません。見えるはずもない。従って
予見は間違う。われわれにとって現代の車は、技術の極点に見えるの
です。
間違ってもそうした方法しかない。今から100年後の、2110年の自動車
やコンピュータは、誰も想像のしようがない。
昨日は、今より成果を上げるかも知れない事業開発についての、会食
しながらの話でした。意見の一致があった。
その後は、夜9時から、別の人と、ホテルのカフェで、商取引における
「公正な価格のためのルール作り」についての、打ち合わせでした。
だいぶ、ワインを飲みました。
話題になっているプリウスの開発物語りから始めます。今、米国の主
要メディアの、トヨタ叩きが喧噪を極めています。トヨタに荷担する
ために書くのではない。事業とは何か?を知るためです。個人から見
れば、ここ20年、組織が大きくなりすぎ、事業が見えにくくなってい
ます。
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<Vol.242:経営者が行うべき、3つの仕事の内容を解く>
2010年2月11日
【目次】
1.「プリウス」の開発
2.課題解決の思考手順
3.リーダシップによる協働
4.シミュレーション
5.現代の開発とリスク
6. 13年後に壊れたブランド価値
【次号】
7.経営者の仕事
8.潜在的な機会を開発する
9.新しい事業を開発する
10.ビジネス・モデルの発想
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■1.「プリウス」の開発
エイドリアン・J・スライウォッキーは、『大逆転の経営』(2007年)
で、プリウスの無類に困難だった開発物語りを描いています。
▼G21のビジョン
「1993年に10名の役員が集まって、きたるべき世紀(21世紀)が必要
とする画期的な車像について協議した(コード名:ジェネレーション
21:G21)。」
協議は、対等に話し合うことです。ここから、知識の整合的な混合で
創造が生まれる。
順を追えば分かってきますが、事業は、端的に言えば「有効な知識を
組織化し、技術にして方法化し商品を作って、商品価値を提供するも
の」です。以下が、プリウスにこられた、他と異なる商品価値です。
その商品価値をわれわれは、感知します。
「彼らの出し合ったイメージは、快適さ、安全性、操縦性、(当時増
えていた)女性ドライバーに歓迎される、低汚染で環境に優しい、良
い燃費効率といったまっとうなものだったが、いかんせん、漠然とし
ていた。」(同書)
価値の要素は、上記の「快適さ」以下、6つです。
未来は、こうした漠とした予見の映像でしかない。
▼ビジョンの中核部分を、コンセプト化
この6項のイメージを技術者が集まって「コンセプト」にする。具体的
な、設計と数字にする。最初、「ガソリン1リットル当り20Km走る小型
のセダン。燃費効率はカローラの1.5倍」というものだったと言います。
これが、技術化のプロセスです。
G21の責任者和田氏は、技術者からの説明を丁寧に聞き、「1.5倍では
だめだ。すぐ他社に追い抜かれてしまう。(基準を)2倍にしてくれ。」
と言う。
技術者達は最初、「無理だ、基準が高すぎる。」と考えます。これは、
普通のことです。過去に作られていないから、困難です。困難でな
ければ、誰かが作っています。未来の画期的な商品は、現在からみれ
ば、常に、困難です。
既存のエンジン技術だけでは、とうてい足りない。かすかな希望は、
未だに研究途上で、海のものとも山のものともつかな茫漠としたコン
セプト、電気モーターとガソリン・エンジンを混合した「ハイブリッ
ド」の導入でした。
「モデルとなる車も、比較できる車も、基準となる車もなかった。何
一つうまくゆく保証もなく、何から何まで、ゼロから始めねばならな
かった・・・現実的に考えれば、G21は大博打(ばくち)だった・・・
不可能だとは思わなかったが、成功の確率は、非常に低かった。おそ
らく5%か、それ以下だったろう。」
■2.課題解決の思考手順
方法は、チーム内で、技術コミュニケーションを促進し、共同で問題
解決に当たることだった。
こうしたときトヨタでは[問題解決シート]を使います。思考手順
(言い換えれば、課題解決の方法)として、しみついたものです。
(注)一般化したものを示します。いろんな会社で使えます。マネジ
メントの過程を示すものでもあります。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1.テーマ [燃費効率:カローラの2倍の車、コンセプト・・・・]
2.まず、課題の明確化(What)
開発目標と現状を比べ、解決すべき課題(開発目標との差)を名
詞、動詞、数字で定義する。
3.次は、現状把握
現状を調査し、現在の方法、データ、解決すべき問題点を描く。
4.原因解析と真因の決定(Why)
問題が生じる原因を挙げる。(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、
・・・
6.そのうち、真因は何か?
7.開発の目標設定
開発の目標を、具体的に描く。コンサプトを設計する。
8.対策の立案
問題を解決する真因対策を考えて作る。
(1)、(2)、(3)、(4)、(5)・・・・
対策の実行過程は、ガント・チャートに描く。(注)縦軸に、手
順・過程を描き、横軸に時間を描いたもの。
9.評価と標準化
(1)対策実行の、成果を評価する。
(2)方法を、標準化として定着させる。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
■3.リーダシップによる協働
G21チーム専用の部屋を作り、パソコンとCADのワークステーションを
設置する。担当技術者が、頭脳を絞りきって知識を使い、対等の立場
でコミニュケーションしながら「設計コンセプト」をまとめる。
300人がメーリングリストで開発プロジェクトに参加したと言います。
階層的な縦のコミュニケーションではなく、組織横断的なリーダシッ
プ(=横の技術コミニュケーション)による、同じ目的での「チーム
協働」の仕組みです。
リーダーは開発部長ということではない。それぞれの分野で、知識・
経験・技術をもつ人が、平等に参加する。そして方向を示しあう。
トヨタはこの方法、つまり「情報への平等なアクセス」で「知識創造」
したと言っていい。設計の言葉・数字・映像は知識です。開発は知識
そのものです。
知識でコミニュケーション(情報交換)し、多くの人の技術知識を整
合的に組み合わせて、商品価値を創造する。
■4.シミュレーション
▼問題の予測と、シミュレーションテスト
従来のトヨタの方法は、新車を生産ラインに乗せるとき、製造プラン
ト(工場)に常駐する開発技術者(レジデント・エンジニア)を送り
込み、生産開始の過程で起る予想できない問題に対処することでした。
G21では、逆に、工場側のレジデント・エンジニア(滞在技術者)を呼
び、開発プロセスに参加させる方法をとったという。画期的なの商品
では、組織の連携の仕方(=知識集合)も変えねばならない。
生産ラインに載せる前に、生産過程で発生する「可能性のあるミスや
故障」を予想して、特定する。起こるであろう問題を予測し、設計の
段階で、あらかじめ解決しておくためです。
(注)あらゆる新規事業や製品の開発プロジェクトの編成は、組織横
断で行うべきです。ここから、優れたものが生まれます。
▼横型協働
内山田氏が持ち歩くノートには、以下のようなことがメモされていた
と言います。自動車製造の技術的なことは、われわれには分からない。
しかし重点はチームの働き方についてのものでした。
以下の方法は、プロジェクトを組むときおおいに参考になります。
「テクノロジーは専門分野にかかわらず全員が評価すべきものだ」
「自分の所属部署の利益とはかかわりなく、誰もが、その製品にとっ
て何がベストかを、考えねばならない」
「技術に関しては、年齢や地位は無関係に、対等で議論すべきだ」
会社内では階級があっても、技術や専門知識には、階級はない。
▼多くの選択肢を作った
G21開発の中核である、図として考案されたハイブリッド・エンジンの
種類は、80種にのぼったと言います。80種の、世界のどこにもないエ
ンジン(未来)が設計された。
詳しく検討すると大半は非現実的なものだった。(注)売上が大きい
車や、大型の医療用医薬品の開発では、時に数千~数百億円の開発費
を使います。
選択肢を20種に絞り、エンジン性能のシミュレーションをするソフト
を買い、設計モデルで事前テストをしたが、「先例のないエンジン」
には使えなかったと言います。
性能テストができるソフトも、気が遠くなるような根気と努力で、新
しく開発した。現代の自動車開発では、製造する前の設計段階で、数
限りない「シミュレーション」をして失敗を避けます。
エンジンだけではない。どこにも存在しない蓄電池(パナソニックが
協働開発)、蓄電池からモーターに流れる電流をコントロールするソ
フト。入力に反応する駆動系を司る、最適トランスミッション・マネ
ジメントのソフトとLSI(超集積回路)の新規開発。
■5.現代の開発とリスク
現代の車は、単純で機械的だった100年前のT型フォードの時代と異な
り、ICチップ(ソフトウエア)の塊とも言っていい。いわば走るコン
ピュータ。走る知識集合・・・
▼ハードとソフト
店舗開発や物流センター開発にも共通します。店舗では、マーチャン
ダイジングやカテゴリー・マネジメント(商品作業管理)のソフトが
必要です。発注と在庫管理、販売レジのPOSもソフトでしょう。
物流センターも、在庫管理、受注、ピック、出荷、配送はソフトウエ
アです。その意味で、「プログラム(コマンドの秩序立った手順)」
として、外化した「知識」の塊になっています。
脳と同じではありませんが、「入力→データ処理→出力」の、微細で
複雑な、何百万行もの構造をもっています。
(注)20年前は、ハード(機械)とソフト(外化しされた知識)を、
システム(目的をもつ機能)として説明するのに、苦労しました。今
は、多くの人がパソコンを使う経験を経たおかげで「ソフト」と言え
ば、すぐに理解されます。時代は、進歩しています。
車の構造部品(数千種)や、感性を決める外見のスタイル(姿;フォ
ーム)について、「たくさんの選択肢」を設計し、シミュレーション
テストして、起るであろうリスクを避ける。
「(古い時代からある)衆知を集め、ふるいにかける方法」が、取ら
れたのです。個人の知識と技術には、限りがあります。ある部分では
深いが、他の領域では浅い。
プリウスの開発では、個々人の頭脳にある、トヨタの知識・経験・技
術・感情が集合されたと言っていい。
21世紀的な「横型の新しいチームワーク(協働)」を見る思いがしま
す。古来、三人寄れば、文珠の知恵とも言った。
「協」は、古代の農業で、人々が同じ目的のために、心を合わせ、そ
れぞれの力を結集し、ものごとを行ったことから来ています。しかし
狩猟は、個人的だった。集団で狩をすれば獲物は逃げます。
日本的なものと、西欧的なものの違いの、古来の淵源でもあります。
パーソン(個人:米欧風)と、ヒューマン(人間:人と人の関係:日
本風)です。
▼開発チーム内でのビジョンへの共感
心を合わせることが、「G21ビジョン(開発の成果目標)」への共感で
しょう。心は、理性+感情の混合です。
人の理性と感情は、分離できません。そのため、ほぼフロイト以降は
「心理(心と理)」と言う。19世紀までの哲学では、理性と感情は別
のものとされていました。
森鴎外の、劇的な内部心理を描いた小説を読むと、理性的な論理と感
情が交錯した心理の構造と動きが、よく分かります。美は感情的です。
武士道の美学は、感情的です。
現代のあらゆる開発では、こうした部署・組織を超えた「協」が必要
です。発明家1人では果たせない。商品開発も、技術要素が多くなり、
複雑になっています。まさに個人の頭脳の、他とのハイブリッド(混
合)が必要です。
車名の「プリウス」は、ラテン語の「先立つ」です。チームワークと
いう方法での、21世紀風への先立ちを、シンボリックに示したものか
も知れません。
G21が、役員10名で発案された2年後の1995年に、チームマネジャーの
内山田氏は、生産開始を、1998年か1999年と発表します。当時の奥田
社長は「遅すぎる。1997年末までに市場に出さねばならない。」と命
じます。
チームには「過酷だ(直感)」と衝撃が走った。しかし全力が傾注さ
れた。内山田氏が「うまく行く」という確信をもてたのは、2年短縮さ
れた生産開始(1997年末)の、わずか6ヶ月前(97年6月)だったとい
う。
1台目が売れたのが、同年の第4四半期。2000年に向かって株高のバブ
ル景気が始まっていた米国では、大型のSUVと軽トラックが飛ぶように
売れていた時です。プリウスも最初から大成功したのではなかった。
それから、13年しか経っていません。隔世の感があります。今、世の
価値観は、環境問題への人々の認識の変化から変わっています。
■6. 13年後に壊れたブランド価値
昨年4月から今年1月に生産されたプリウスの約30万台(日本10万台、
米国17万台、その他3万台)に対し、ブレーキの動作欠陥とされること
からリコール(回収・修理)が起っています。
品質のトヨタと評価されてきたブランド価値(人々が寄せる感情的な
信頼の価値)が、一夜で壊れています。トヨタの輝く歴史で、2008年
9月以降は、会社最大の危機になるかも知れません。
生産と販売台数でGMを超え、GMは潰れトヨタが世界ナンバーワンにな
った直後です。経済紙ウォールストリート・ジャーナルは「それ見た
ことか」と、一面で、激しい言葉で叩いています。
全く別のところでは、タイガー・ウッズの事件もあった。メディアに
よって、約15年間、高められて作られた禁欲的で克己的なブランド価
値が崩壊しています。
近くにいたプロゴルファーの仲間達は知っていたようですが、事実か
ら派生していても、意味づけが加わった間接情報に頼るしかないわれ
われは驚き、「所詮、人はそんなものかもしれない」という妙な納得
もあった。観察を続けていた坂田信弘さんからは、タイで、メディア
に流れていないことも聞きました。
セルシオ(ラテン語で「至上のもの」)の時代、1989年~2006年には、
強く感じられた重要なものが、何かと気づかれず壊れていたのか。
セルシオを作った60歳を超えた団塊世代の工匠達の退職が、理由に
なっているのか。
近々、原因は明らかになるはずです。前掲の「問題解決シート」の、
<4.原因解析と真因の決定>を、まともに行えば・・・信頼の回復に
は、原因の公開が必要でしょう。
都合の悪いことを隠し、別の原因に転嫁するのは、情報化した現代社
会では、最悪のリスク・マネジメントになる。言い逃れが、追求を生
みます。困難なことであり、信頼の回復には相当の時間を要します。
経営者は、重要なことのリスク・マネジメントでは、質問をする記者
の矢面に、正面から立ち続けねばならない。逃げず、ニュースが価値
を失う時まで、執拗に答える。「犬に人が噛まれても、ニュースでは
ない。人が犬を噛めば、ニュースだ。」 普段と違う異常なことがニ
ュース価値です。ブランド価値が高いから、傷も深い。
現代の自動車は、機械の動きを司るソフトの塊になった。駆動を指示
する数百万行以上のプログラム(コマンド)の、わずか1点の設計ミス、
バグ、あるいは不定な分岐が、全体性能にとって命取りになります
。
システム(系)では部分が全体です。ハイテクノロジー時代の、宿命
でもある。
リーマンショックを生んだ金融のデリバティブにも、商品設計(ソフ
ト)において、気がつかれないミスがあったと言えます。個別に独立
して起るリスク(住宅価格下落)は、統計的な確率に従う。
しかし、予測できない時に起る全体的なリスク(全住宅の価格下落)
は、システミックリスクとして全体を同時に襲う。これは確率計算を
超えます。
システム(全体の系)になった金融商品(住宅証券の時価)は、全部、
下がったのです。過去の統計的なリスク確率は、無効でした。CDS
(債権保証保険)も同じです。システミックに連鎖する倒産のときは
無効になる。竜巻なら確率的でしょう。広範囲な台風や大地震は、シス
テミックなものです。
▼標本化手法
数学者デミングが、戦後提唱した標本化手法(品質管理)は、統計的
なものでした。数学的な標準偏差を使うものです。
例えば、1000個のうち1個の確率で不良品が出る。商品が単純だった時
代は、それでよかった。不良品がゼロになるように製造すれば、全体
コストが急上昇します。そのため、標準原価で付ける一個一個の価格
が高くなってしまう。
1000個の部品から構成される商品とします。1000個に1個の確率の不良
部品が混じったまま組み立てれば、結果はどうなるか? 1個の製品に
1個の不良部品が混じる。このため、確率では、全部の完成品が、どの
部品かで不良になってしまいます。
シックス・シグマ(標準偏差の6倍=100万分の3.4)以上に、部品の不
良度を抑えねばならない。シグマは、ギリシア語の頭文字で、標準偏
差を表します。
品質基準がシックス・シグマで、部品100万個に3.4個の不良品としま
す。その部品1000個を使った製品1000個のうち、3.4個の完成品が、不
良になる確率(0.34%)でしょう。この水準なら、最終品質チェック
でなんとかなる。
商品が高度になり、多くの部品を使うようになった現代は、部品の品
質では、過去よりはるかに、高精度にならねばならない。ハイブリッ
ド車がこれです。
3年前だったか、熊本空港から2時間くらいかけ、山間の風雅な黒川温
泉に行くとき、初代のプリウスを借りました。
外見はコンパクト。静かで快適で、インテリア空間は広い。次女と家
人が運転する往復を乗って、返すときガソリンの残量を示す針が、満
タンと同じ位置だったのを覚えています。すごい車だ・・・と思った。
レンタカー屋に払った、追加のガソリン代はゼロでした。
今、車は2万~3万種の部品を使う。日本の自動車工業は、完全を目指
した。それが品質と比較した価格を下げ、世界での販売競争では勝っ
てきた。
部品と組み立ての完全品質が不良品を減らしコストを下げた。この点
で、米国の工業に勝っていた。トヨタ式カイゼンと言われた。改善は
、完全を目指すことです。このトヨタのどこに、気がつかれない問題
が起っていたのか?
機械的な部品不良は、発見しやすい。問題はブレーキ系(ブレーキシ
ステム)を制御するソフトと言われる。安全に係わる基本性能です。
上首尾に見えていた、早期に世界ナンバーワンを目指すグローバル10
(世界の車生産と販売の10%)のビジョン(業績目標)が、ロジステ
ィクス(部品調達と組み立て)に無理のある拡大と拡散を生んでいた
のか。
G21のビジョンは良かった。2000年代のグローバル10のビジョンで、ト
ヨタは急ぎすぎたのか・・・
■7.経営者の仕事
ドラッカーは、経営者及び幹部が行うべき大切な仕事として、以下の
3項を挙げています。個人は得意な分野、不得意な分野は当然ある。誰
かがその不得意を補わねばならない。(『創造する経営者』)
1.今日の事業の成果を上げる
2.潜在的な機会を開発する
3.明日のために新しい事業を開発する
プリウスを例に述べたのは、
2.潜在的な機会の発見(言い換えれば、プリウスに具現されたコンセ
プトの開発)と、
3.明日のために新しい事業を開発すること(プリウスの生産と販売)
です。
「経営者(及び経営幹部)が、明日の仕事に少しの時間しか割いてい
ないことを嘆くだけでは、問題の解決にはならない。明日をおろそか
しているように見えるのは、今日のことを放っておいては、先に進め
ないからである。しかしこれも、症状(=結果)にすぎない。真の原
因は、(上記の)経済的な課題取り組むための、知識と方法論が存在
しないことである。」(同書)
以下、次号で述べます。本稿は昨日送った有料版を、お詫びの意味を
含め、2回か、3回に分けて、お送りするものです。
see you soon!
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【ビジネス知識源 読者アンケート 】
読者の方からの意見や感想を、書く内容に反映させることを目的とす
るアンケートです。いただく感想は参考になります。
1.テーマと内容は興味がもてますか?
2.理解は進みましたか?
3.疑問点は?
4.その他、感想、希望テーマ等、ご自由に
5.差し支えない範囲で読者の横顔情報があると助かります。
コピーしてメールにはりつけ、記入の上、気軽に送信してください。
質問のひとつひとつに返信することはできないかも知れませんが、共
通すると思われるテーマはメールマガジンでとりあげます。いただい
たメールは、全部を読んでいます。
↓あて先
yoshida@cool-knowledge.com
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■創刊以来1位を続け『まぐまぐ大賞』を獲得している有料版(週刊:
1ヶ月で630円)の購読案内です。
http://www.mag2.com/events/mag2year/2008/
■有料版バックナンバー:有料版の約8年分超のバックナンバー470号
余は、有料の性格上、公開していませんが、月単位で購入できます。
以下からのリンクでたどることができます。
http://www.mag2.com/archives/P0000018/
『ビジネス知識源プレミアム』は、「1ヶ月ビジネス書5冊を超える
情報価値をe-Mailでお届けする」ことを趣旨に、ビジネスの成功原則
、経済、金融等のテーマを原理からまとめ、明快に解き、週1回お届け
しています。最近号の、一部の、目次は以下です。
<469号:政府赤字の限界は2012年>
2010年1月27日号
【目次】
1.国の貸借対照表は、何を示すものか
2.なぜ大きな債務超過でも、国は倒産しないか?
3.国は、いくらでも国債発行ができるのか?
4.日本政府の国債増発の限界は、いつ来るか?
5.日銀の信用増(通貨発行)という手段
6.結論
【後記】
<470号:危機への意識と、ビジョン&リーダシップ>
2010年2月3日分
【目次】
1.経営における危機への意識
2.経営の条件
3.生産性の上昇基準
4.「意識」というやっかいなもの
5.シンプルなビジョン
【特記:強調した再論】
新規の申し込み月の1ヶ月分は、無料お試しセットです。
(注)お試し期間の1ヶ月後の解除も、自由です。以下は申し込みの
サイトです。
http://www.mag2.com/m/P0000018.html
(↓)無料版より若干ややこしく、お手間をかけますが、使い方と会
員登録方法の説明です。
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