SCMシリーズ:SCM経営をめぐる考察(第1部)
This is my site Written by admin on 2001年10月2日 – 08:00

こんにちは、吉田繁治です。衝撃の9月11日以降、米国での小売
・サービス業の売上が急減しています。一般的な論調では、一時的
なショックは、しばらくすれば回復すると見ています。しかしここ
には回復することへの<願い>の部分があります。冷静な論調では
ない。

経済統計は、集計・発表が1ヶ月以上、2ヶ月は遅れます。普通の
時期は変化が穏やかですから、遅れた数値でも、傾向をつかむこと
ができます。

ところが、今度のような未曾有の衝撃があるときは、役に立ちませ
ん。未曾有とは人類の歴史で未経験ということです。未経験のこと
ついては、検証を必要とする<学>は無力です。良心的であれある
ほど、<わからない>と言うに過ぎない。

ところが仕事と経営の現実は、現在進行形です。米国の経営は、銀
行を媒介にする間接金融のショック吸収装置がある日本の経営とは
、異なります。特に米国型経営では、金融の観点で日々意思決定が
必要になる。

日々のキャッシュフロー(収入-支出での、現金の増減)が、短期
間で雇用調整(レイオフ)になる。収益の好転も悪化も、波及がリ
アルタイムです。企業業績と経済・金融は、瞬間に連鎖します。

最初に、この問題を解きます。メールマガジンの有利さのひとつは
、リアルタイムの考察をお伝えできるという即時性ですね。

10月の基調テーマは、SCM(サプライチェーン・マネジメント
)とします。9月のテーマはCRM(カスタマー・リレーションシ
ップ・マネジメント)でした。

SCMとCRMは、業種・業態・企業規模にかかわらず21世紀経
営の中核に位置付けられるべきものと判断しています。

最初に、SCMのテーマを、全体構図の中で位置づけます。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 <SCMシリーズ:SCM経営をめぐる考察(第1部)>

【目次】

 1.21世紀経営の構図
 2.時事状況の考察
 3.ケース・スタディ:家具業界の10年
 4.90年代の小売業による直接輸入
 5.サプライチェーンの観点での家具の直接輸入
 6.物理的な流通のインフラ・ストラクチャーと技術
                    (第2部へ続く)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■1.21世紀経営の構図

21世紀経営は、
・システム化・情報化・ネットワーク化領域に関わるERP、SC

・顧客との関係と、経営組織に関わるCRM、
・組織運営と、仕事の動機付けに関わるリーダシップ型経営、この
4点セットが、核になると判断しています。

構図を明らかにするために、21世紀経営の、大枠での戦略セット
を示します。(ここでの説明は、コンセプチュアルな定義です)

▼1.ERP(Enterprise Resource Planning)

本部と現場の「業務プロセスを標準化してシステム化」し、必要な
データベースを作って、「過去を示す事実データ、未来を示す計画
データ」がリアルタイムで使える基盤を作ることです。

【ERPパッケージのソフトウエア】
SAP、Baan社等のソフトウエアベンダーが供給するERPの
パッケージソフトを入れるのは、ひとつの選択肢になる「手段」で
す。SAPのパッケージを入れることが、ERPということではな
い。

【システム化】
ここでのシステム化とは、
・業務プロセスを必要な「単位作業」に分解し、
・それをより合理的に「業務目的、企業戦略」に合致するように関
連付けて、
・「目的に対する全体最適の観点」から再構築することです。

▼2.SCM(Supply Chain Management)

SCMとは、企業内、部門内のみではなく、(1)資材・製品の最
上流から最終顧客に到るまでのフロー図」を描いて、(2)生産、
在庫、輸配送、販売の、「全体最適の観点」から合理化を図り、(
3)効率化のために必要な、作業整備、システム化、情報化を推進
することです。

【情報化】
ここでの情報化とは、
・生産、在庫、輸配送、販売から得られる事実データ、及び計画デ
ータのデータベースを構築した上で、
・処理責任を持つ各担当者が、リアルタイムデータを使用し、他の
データと関連付けて、生産と流通の全体最適の観点からの判断を加
え、
業務を遂行することを言います。

【共有データベース】
SCMでは、結果情報と計画情報を、企業内の部門間と製品の供給
連鎖を形成する企業間で、共通に利用できるデータベースにするこ
とが必要です。

そのための前提がERPの活動であり、部門間・企業間で業務プロ
セスを標準化し、各社のデータを共有化利用ができるように、共通
フォーマット(様式)にすることです。

共通フォーマットのデータが、異なる企業間で、再入力の必要がな
く連結された状態を「シームレスなネットワーク」と呼んでいます

また、経営的に独立した企業間で、相互が制約を取り払って共有デ
ータベースを持つ状態に到ることを、「戦略同盟の形成」と呼んで
います。戦略同盟とは、同じ目的での協働(Co-working)です。

【SCM経営】
以上のような、システム化と情報化を基盤(インフラ・ストラクチ
ャー)にして、目的を共有化できる戦略同盟の企業の輪を拡大する
経営が、SCM経営の推進になります。

【(注)e-MP】
e-MP(e-Market Place)とは、SCMの輪が拡大され、多くの企業
が戦略同盟に参加し、それぞれの企業が、「コア・コンピタンス(
基幹的な競争力をもつ製品と業務の部分)」で連結されたものを言
います。

▼3.CRM(Customer Relationship Management)

CRM経営は、端的に言えば、
・カスタマー・セントリック(顧客を中心に置く)の経営組織を作
り、
・顧客との関係を深め、良好な状態を維持することを「不断」の目
標にした経営活動、部署及び個人の仕事の改善活動です。

【製品の使用プロセスに関わる】
20世紀型経営の多くのように顧客への販売を終点と見るのではな
く、顧客による製品使用の起点と位置づけ、顧客との接点を増やし
、長期的・継続的に、顧客との良好な関係を作り上げていく活動で
す。

【CRMとシステム】
ERPとSCMは、システム化・情報化されたCRMの有効なイン
フラ・ストラクチャーになります。しかし、広義のCRMは、シス
テム化・情報化に依存し、制約されるものではなく、企業と顧客で
のOne to Oneの強い関係の構築・維持と見ることができます。

【カスタマー・エクイティ・フォーミュラ】
CRM経営の構造を示すのが、カスタマー・エクイティ公式(フォ
ーミュラ)です。(その内容は01年9月号に詳述)

カスタマー・エクイティ(=LTV総額)=全体需要×「顧客数シ
ェア率」×「個客シェア率」×{1÷(1-継続購買率)}

LTV:Life Time Value(顧客の生涯価値:最初の購買から離反
するまでの、平均的な累計購買金額)

▼4.リーダシップ型経営

中央集権の統制型、マニュアル型経営を、新しい観点から補うもの
が、リーダシップ型経営です。

【情報作業】
生産・販売・物流のモノを処理し、サービスを行う現場作業は規格
化・標準化・システム化を図る。

しかしながら規格化・標準化の枠からは漏れるホワイトカラーの業
務では、マネジャーが、業務の細部について指示・命令はできませ
ん。

OECD10億人の世界では多くの会社で、ホワイトカラーの構成
比が50%以上に増えています。彼らは規格作業(作業標準)のワ
ーカーではない。

ホワイトカラーは、「情報作業者(ビル・ゲーツ)」として定義が
できます。情報作業は、モノを加工したり運んだりする物理的な作
業ではなく、数字と文字と図形データの加工・分析・判断、および
ソフトウエアと知識、技術の創造に関わる領域です。

【自己実現・自己目標】
1970年代から、急速に増えてきた情報作業領域では、命令・統
制型のピラミッド組織の管理は有効ではない。自己実現・自己目標
が、仕事の動機付け、または生きることそのものになる。

▼輝く言葉

輝く言葉を聞きました。
ベルリンマラソンで、世界最高記録を出した高橋尚子。

<金メダルを取り、今日、世界最高記録を出したことが喜びではな
い。自分で課した目標をクリアできたことが嬉しい> 
どの領域でも、一流の世界は、普遍に到ります。

【コーチとプレーヤー】
小出監督と高橋尚子の関係は、統制型マネジャーとワーカー型プレ
ーヤーではなく、技術と精神のコーチと、目標を内化させることで
強い意志にまで到ったプレーヤーです。

コーチは、「Qちゃんは、きっとできる」と繰り返し教唆し、目標
のハードルを高くし、技術と精神を与えてきた。これが、コーチの
、組織的な機能の典型です。個人別の自己目標の設定を教唆し、成
功のための技術を導き、ガイドを与え、支援すること。

高橋尚子は、小出監督が示す方向を信じ、自分では思いもおよばな
い高い目標を、自己目標に内化させ、時には反発した苦しいトレー
ニングメニューをこなした。そして、自己目標を、2001年9月
30日に、笑いながら、涙もなく達成する。

高橋尚子、イチロー、中田英寿を見ると、新しい日本人(グローバ
ル人でしょうか)が、現れていることを感じます。

<内化された自己目標>の世界です。日本の多くの団塊の世代は、
統制型管理者ですが、こうしたコーチの役割が、今後の方向です。

このケースは、自己実現という動機付けの、キー概念の多くに通じ
るはずです。リーダシップ型経営の本質をしめすものです。

以上のERP、SCM、CRMと、組織運営でのリーダシップ型経
営を、21世紀経営の4点セットと判断しています。今後も、各テ
ーマと関連づけ、繰り返し解説します。

▼昨日は・・・

昨日は、京都のある上場企業での企業内研修でした。CRMを基調
テーマに3時間。熱心な質問が出ました。人材のリソースが厚い。

夕刻は幹部の方4名と会食をしながらの懇談。料理はすばらしく、
環境も貴重な場所でした。お話をしていて感じたのは、自己実現が
、研鑽と仕事のパワーの根底になるであろうということです。

仕事は、生活の手段ではあるが、それ以上に、いい仕事をしたい、
納得できることをしたいという情熱を感じた。こうした人たちとお
話できることは、幸せなことです。

他の会社でも、最近、おなじような息吹を感じます。
統制型組織をつきぬけようとするエネルギーを導くことができれば
、いたるところに、新しい日本企業が誕生しそうに思います。

経営はどこまで行っても<社員のやる気>です。そのやる気に、方
向と形と、利用できるリソースと支援体制、及びルールがオープン
で公正(Fair)な評価を与えるべきが、会社という組織です。

時代と人間は、変わったのです。

————————————————————
——————————–
■2.時事状況の考察

90年代の日本の株価・地価の崩落は、世界恐慌の引き金になると
言われながら、世界恐慌は起こらなかった。まずその理由を解きま
す。

▼日本発の恐慌が回避された理由

(1)米国がITとネットワークで次世代経済成長に火をつけ、
(2)世界のマネーを集める金融センターになると同時に、
(3)世界の生産物を輸入して、そのマネーを使ったからです。

世界経済の観点では、日本の落ち込みを、米国が救った。米国の成
長がなかったら、世界は恐慌状態を起こしたでしょう。

【世界の資金循環構造】
日・欧・アジアから集まったマネーは、米国の株・債権で増え、投
資資金として再び世界に還流する循環構造があった。恐慌とは、需
要縮小と投資の縮小で生じますが、世界2位のGDPの日本の需要
縮小・投資縮小を、米国が補ったのです。

【2000年春から】
ところが、2000年春から、ナスダック株が下落した。世界の金
融センターの株が下落したから、同時に世界の株価は下落した。

【時価総額の急減】      (日経新聞 01.10.02)

       2000年以降のピーク  01年9月末
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ニューヨーク  $12.9兆    $10.4兆
ナスダック     6.3兆      2.3兆
ロンドン      2.9兆      2.1兆
フランクフルト   1.5兆      0.9兆
パリ        1.6兆      1.0兆
東京        4.0兆      2.5兆
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(合計)    $29.2兆    $19.2兆
参考:世界GDP $31.3兆   

日本を除いて、各市場がピークをつけた2000年3月~8月以降
、01年9月までの1年後に、$10兆(1150兆円)の、株価
時価総額が失われている。1150兆円は、米国GDPの1年分に
匹敵します。

【意味】
株価時価総額の縮小は、企業に供給されるマネーが、減少すること
を示します。これは、企業の設備投資や拡大経営を減らす。企業の
設備投資(≒雇用の増加)は、経済成長の原動力であり、それ以外
に経済成長の原因はないのです。

▼世界の銀行預金の60%を持つ日本

日本は、銀行や政府系の金融機関を通じた間接金融があり、株価の
急落が、企業設備投資を減らすこととの結びつきは薄い。しかも、
日本では郵貯と銀行資金、機関投資家資金を、国債・地方債で吸収
し、国債資金を使った公共投資で、日本の恐慌を救う資金循環の構
造があったのです。

株価の急落より、日本では、地価の下落の影響が大きかった。土地
が銀行融資の基盤条件であることは、今も変わってはいないからで
す。

ところが、小泉構造改革は、公共投資を奮発する積極財政をやめ、
緊縮財政を敷いた。小泉内閣成立以降の株価の一本調子での下落。
年初来高値14,529円(5月7日)、9,871円(10月1
日)
ここでまた蒸発した時価総額は、170兆円。

公共投資の減少は、土木・建築以外では直接に株価を下落させる要
因ではないのですが、土地需要を減らし地価を下落させる原因にな
る。
地価が下落すれば、民間に供給されるマネーが減るのが日本の、資
金循環構造です。

こうした連鎖を判断し、緊縮財政を見て外人マネーが引き上げたこ
とが日本の2001年の株の下落に帰結した。

▼悲劇の9月11日以降

今、米国の消費が、急減しています。単なる一時的ショックか。そ
うでないか。これを見極めるため、一般に指摘されることのない9
0年代末の米国の消費内容への考察を加えます。

【米国の消費の中身】
日本のGDPの2倍の、米国の小売総額は3兆2000億ドル(3
68兆円)です。

判断では、このうち、100兆円(約30%)は不要不急の、節約
が容易な、高級品または選択財消費です。この部分が、9月11日
以降、ぱたりとなくなっている。

食品・日常品を売るチェーンストアの売上は減少していません。
こうした消費が、60%から70%部分を占める。

しかし、デパート、ファッション店、ブランド店、高級品店、住ま
い関連、家電の落ち込みはひどい。
小売ではありませんが、航空機、ホテル、観光・サービス産業の売
上低下は半減に近い。観光の街、ラスベガス、ハワイからは観光客
が消えています。

現代のOECD諸国の消費は、気分的・心理的な要因で、30%く
らいは、すぐ減らすことができるのです。生活維持の基礎需要を超
えた部分の消費が多いからです。

日・米・欧の先進国の消費の中身の多くの部分が、「ライフスタイ
ル財、言い換えれば選択財の消費」であることを思うと、今回の衝
撃の影響は大きい。

【株価が支えた、選択財消費】
米国人は、平均では貯蓄率マイナスです。年金資金の401Kを通
じ世帯の50%が持つ株の高騰による資産効果で、高級品を買い、
レジャー、観光、耐久財消費、住宅購入をしてきた。

日本人と違い、米国人世帯は金融資産の50%以上が株です。

【世界の商品の吸引と経済の牽引】
2000年までの、米国株高が、米国経済のみならず世界経済の牽
引機能を果たしてきた。これがはじけたこと、及び、過剰な消費が
、縮小に入る劇的な契機があったことは、今後の世界経済に深刻な
影響をもたらします。

米国の経済学者の景気見通しは、米国株価の下落の、消費への波及
を軽く見ているふしがあります。

【波及は早い】
米国は、企業は市場資金を使う直接金融の国、4半期決算、時価会
計ですから、企業のキャッシュフローの減少は、2~3ヶ月後には
、雇用カットか倒産の多発になる。消費が減るとこういった連鎖的
調整がすぐ起こる構造です。

【政府の対策】
米国は、小泉政権に対し、小渕内閣のような積極財政への再度の転
換と、日銀へはマネー供給の「たが」をはずすことを求めます。

米国内では、9月17日の0.5%の公定歩合の下げに加え、さら
に低下幅を拡大し、FRBは金融市場への流動性供給を全開するで
しょう。

しかし、こうしたマネー対策があるにもかかわらず、世界の需要は
縮小し、企業設備投資は落ち込むでしょう。
次第に<恐慌前夜>の様相が深くなっています。

世界の協調で、あらゆる金融対策が打たれますから、1929年の
ような野蛮な恐慌ではなく、若干はマイルドなものではあります。

FRBのグリーンスパンが最も恐れていたのが、米国の株価下落で
した。彼は、恐慌研究の専門家でもあります。

10兆ドル(1150兆円)の世界の株価下落は、先行して、それ
を示します。米国GDP1年分のマネー(民間信用)が消えたので
す。

【キャッシュフローの積み増しの必要性】
米国はもちろん、日本でも、企業は手持ち現金を積み増しするキャ
ッシュフロー対策を打っておくことです。

今はまだ、世界が心理的ショック状態で、戦争の推移に関心を持っ
ています。ニュースでのマスク効果がある。少し冷静になって関心
が経済、金融状況に移ったとき、ひどい実態が明らかになる。

日本の銀行は、今はほとんどあてにならない。これだけの株価下落
があると、「株含み損→自己資本の減少」で、融資どころではない
のです。クレジット・クランチが激しい。

また、(多分、2度目の先延ばしがあるでしょうが)2002年4
月からは、銀行がデフォルトになったとき1000万円以上の預金
の払い戻しをカットするペイオフが実施される。

半年後をにらんで、定期預金はすでに急減しているのです。

————————————————————
——————————–
■3.ケース・スタディ:家具業界の10年

【家具業界】
SCMを考察するにあたり、その内容について、具体的なイメージ
をむすぶため、最初に家具業界の10年を取り上げます。

家具業界は、家具で最終需要額2兆円、住まいの関連のホームファ
ニシング商品を含めると約4兆円の業界です。

名目GDP499兆円(01年5月)の8%です。

▼ケース・スタディにする理由

以下が、家具業界を事例に取り上げる理由です。

(1)経営における物流の比重が高い
企業間物流(メーカー・卸)と、宅配ロジスティクス(店舗)を含
む産業である。従って、流通・物流問題がモロに現れる。

(2)日本的流通の典型を示す
過半が中小企業の業界である。したがって、日本の流通問題を、典
型的にあらわす。

(3)企業間業務プロセスの連鎖性がある
業務プロセスでは、店舗は展示商品を見本品とし、配達する商品は
、メーカー・問屋に発注した後、顧客へ宅配する「売越し発注」の
形態をとっている。
従って、店舗とメーカー・問屋の業務プロセスの連鎖性が高い。サ
プライチェーンの本質を見るのに好適である。

(4)輸入の急増が業界を激変させている
90年代は、衣料品と同様に、輸入の急増で価格低下(50%から
60%)が激しい。

この10年間の、興亡は、他の業界より一段激しかった。
従って、今後の、流通問題全体を考察するのに、好適である。

業界は小さいですが、他の業界・商品のSCMに応用展開できるこ
とが多いのです。こうした理由で、私が興味を持っている産業分野
でもあります。

まず、業界のマクロデータを概観し、次に、変化の原因を見ます。

他の業界でも、中小企業が過半を占めるところでは、類似の傾向を
示しているでしょう。これで、SCMの基盤が明らかになる。

90年代の日本の産業で、建設業界のような政治的な保護がなかっ
たものの典型を示すものです。

▼家具業界の10年の推移:家具製造業

(年商3億円以上の調査集計:3億円年商未満は集計がない。
:調査 東洋ファニチャーリサーチ)

【製造業】
     1991年   2000年   増減    増減率

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

売上高  9,307億円 6,550 -2,757 -30%

社数     500社    427 -  73  -15%

税前利益   338億    171 - 167  -50%

【変化】
91年から00年までの10年で、年商3億円以上の国内メーカー
の売上高は9307億円から6550億円にまで、2757億円(
30%)の減少です。

この減少幅は激しい。倒産・廃業が相次ぎ、大産地(九州の大川市
、広島県の府中市等)では、メーカー数は半減しています。

【雇用】
一人当たり売上高は、年2000万円、10年で1万4千人の雇用
が失われた。2000年で、年商3億円以上の427社の平均出荷
額は15億円、従業員75名、70%くらいのメーカーは赤字です

▼家具卸売業(年商3億円以上の企業)

     1991年   2000年   増減    増減率

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

売上高  7,958億円 4,914 -3,044 -38%

社数     389社    286 - 103  -26%

税前利益   163億     35 - 128  -78%

【激変】
卸売りの減少は更に激しい。7958億円から4914億円へ、3
8%の減少です。2000年現在で、利益を上げている会社は数え
るほどです。多くが倒産したが、今でも倒産寸前が多数ある。
マクロの数字から、多くの人の悲劇が見えます。

3億円以上の企業の平均規模は、年商17億円。
社員数34名です。

【雇用】
一人当たり売上は年5000万円。10年で、6000人の雇用が
失われた。2000年時点でも淘汰の勢いは、更に加速しています

傾向では、更に30%から40%が減る可能性が高い。

▼家具小売業(年商3億円以上の企業)

     1991年   2000年   増減    増減率

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

売上高 10152億円 11926億 +1774  +17%

社数    569社    549  - 20    -4%

税前利益  385億    238  -147   -38%

【増加】
年商3億円以上企業の小売業の売上は、10年で17%増加してい
ます。

3億円以上の小売業549社の平均規模は、22億円、社員数は7
0名です。家具業界は、メーカー・卸の平均規模より、小売の平均
規模が大きいことが特徴です。

国内メーカーが30%、国内卸が38%の出荷を減らしたのに、小
売では17%の増加です。何を意味するか?

【切断】
小売の売上の増加と、メーカーの売上の減少を組み合わせると、国
内メーカーは(30%+17%⇒)47%の、シェアの低下をきた
したことになる。
同様に、卸売り業は(38+17%⇒)55%のシェア低下。

1980年代までは、小売の売上の増加は、そのまま、メーカー・
卸の売上の増加になっていた。90年代になって、この比例関係、
取引関係が断ち切られたのです。

【理由】
理由は、(主として業界大手のチェーン化)小売による、直接輸入
の増加です。ここに、流通と製品開発の技術変化があった。

【映像】
国内メーカーや国内卸を経由しない、東南アジア(タイ、マレーシ
ア、インドネシア)、中国からのコンテナが、各地のコンテナ港か
ら大量に上がり、店頭に並んで、販売される。

香港の港、シンガポール港を、高層ビルの窓から眺めると、膨大な
数のコンテナが並んでいる。ほとんどが、米国のチェーンストア、
日本の小売企業向けのものです。消費財の供給基地が、90年代で
様変わりしている。深い感慨が襲います。

80年代と90年代は違う。
21世紀は、更に違う。
30年も拡大してきた日本の貿易黒字が、製品輸入の増加で200
1年には減少し始めたのです。

▼国内家具メーカー・卸・小売の原価構造

【国内家具メーカーの原価構造】
        (元データ:中小企業の経営指標:中小企業庁)

(1)直接費          (出荷価格5万円のものでは)

   直接材料費  41.8%   20900円
   労務費    20.9%   10450円
   部品費他    7.0%    3500円
   (小計)   69.7%   34850円
(2)間接費
   原価償却費   1.7%     850円
   福利厚生費   1.7%     850円
   電力費     1.2%     600円
   その他     5.2%    2600円
   (小計)    9.8%    4900円 
(※以上工場出荷価格79.5%   39750円)
 
(3)販売費
   営業員給料   2.2%    1100円
   支払い運賃   3.0%    1500円
   その他     4.3%    2150円
   (小計)    9.5%    4750円
 (4)管理費
   役員報酬    2.3%    1150円
   事務員給料   2.6%    1300円
   支払い利息   2.0%    1000円
   その他     4.1%    2050円
   (小計)   11.0%    5500円
 (5)合計   100.0%   50000円
                 (メーカー出荷価格)

以上の数字から、家具工場の、業務イメージ、原価構造がつかめる
でしょう。

【原材料費20900円】
製造直接費が、出荷価格の69.7%(逆数の粗利率が30.3%
)、その中で、直接(原材料)費が、41.8ポイントです。

店舗や卸への出荷価格5万円の商品に割り振ると、原材料費(主と
して木材)が20900円。低付加価値産業であることがわかる。

【低付加価値産業】
こうした、原材料費比率の高い低付加価値産業では、
(1)原材料の産地に近い工場が有利です。家具は伝統的に、木材
集積地の下流に集積してきた。

(2)発展途上国が、原木の輸出から、加工の付加価値をつけた合
板の輸出、更には、加工度をあげた部材輸出、組み立て後の家具輸
出に向かうと、国内工場は従来の有利性を失うことになった。

途上国の経済発展は、輸出品の加工度を上げることによって果たさ
れるのです。

(3)それに対応するには、最終顧客に販売する国内店舗への、流
通網の整備を行う必要があるのです。つまり、国内店舗への流通面
での有利性を確保する必要がある。しかし、ほとんどのメーカーは
それを果せなかった。

次に、店舗とメーカーの間の中間流通を担ってきた、卸売業の原価
構造はどんなものか

【国内卸売り業の原価構造】

                  (仕入原価5万円の商品は

(1)商品仕入れ原価  78.3%  50000円
(2)販売費      
    営業員給料    4.2%   2680円
    支払い運賃    1.4%    890円
    車両費他     2.6%   1660円
    (小計)     8.2%   5240円
(3)管理費
    人件費      4.3%   2750円
    支払い利息    1.3%    830円
    その他      6.8%   4340円
    利益       1.1%    700円
    小計      13.5%   8620円
(4)合計      100.0%  63860円(出荷価格

家具卸売りは、50000円の商品を仕入れると、63860円で
店舗に出荷(粗利益率21.7%)します。

中間流通コストは、21.7%です。仕入原価5万円の家具に按分
すれば13860円。90年代の10年間で、この家具卸売業が激
変を蒙った。

理由は、
(1)店舗数を増やした小売は、中間流通部分を含み、直接輸入を
やるようになった。
(2)国内メーカーからの集荷と、中小・零細店舗への販売、物流
を主業務にしてきたが、小売規模の小さな店舗が激しく淘汰された

次に、小売の原価構造を見ます。

【国内小売業の原価構造】
               (仕入原価63860円の商品は

(1)商品仕入れ原価  68.7%  63860円
(2)販売費      
    販売員給料    7.3%   6785円
    広告費      3.1%   2880円
    車両費他     2.0%   1860円
    (小計)    12.4%  11530円
(3)管理費
    人件費      6.3%   5860円
    賃借料      1.8%   1670円
    原価償却費    1.2%   1120円
    光熱費      1.2%   1120円
    支払い利息    1.0%    930円
    その他      3.6%   3350円
    利益       3.8%   3530円
    (小計)    18.9%  17570円
(4)合計      100.0%  92960円(小売価格

家具小売業は、63、860円の商品を仕入れると、92、960
円くらいで売り、粗利益率は業界平均にすれば32%です。
(粗利益率の最高レベルでは、大塚家具の50%、業界大手で40
%レベル)

▼家具のサプライチェーンの原価構成

以上の数字から家具流通のサプライチェーン(供給連鎖)での原価
構成を組み立ててみます。

(1)国内工場出荷価格  39750円( 42.8%)
(2)流通コスト   
  メーカー販社コスト  10250円( 11.0%)
  中間流通コスト    13860円( 14.9%)
  小売コスト      29100円( 31.3%)
  (小計)       53210円( 57.2%)
(3)最終小売価格    92960円(100.0%)

【工場出荷価格の2.5倍が小売価格】
工場のコストが42.8%、中間流通と、販売、宅配を含む流通コ
ストが57.2%です。

流通コスト部分が大きいことに驚くかもしれません。他の小売でも
、顧客にまで到るサプライチェーンのトータルでは、類似の数値を
示します。70年代、80年代、90年代は、製造コストより、流
通コスト部分が上がってきたのです。

【総物流費は20%】
家具業界では、中間物流と宅配物流で、輸配送コストと倉庫コスト
までを含めると、最終小売売価の15%くらいを占めている。
原材料の物流を含めると、20%が推計されます。

【日本の産業全体では】
日本の産業全体で、総物流費(Logistics コスト)は、20%、1
00兆円と推計されています。(米国EXE社推計)

家具業界の数値は、ちょうど平均です。物流費は、いろいろな勘定
科目、原価項目に隠れていますが、それを拾い集めて合計すると、
びっくりするくらい大きい。

————————————————————
——————————–
■4.90年代の小売業による直接輸入

家電産業等のメーカーが世界的に一流で、商品開発力、技術力、国
内販売網を持つ業界では、自社勢力を伸ばす海外設備投資という形
で、1985年からの円高対応をしています。

ところが家具メーカーは、一握りの例外を除いて、海外工場管理に
は失敗しています。そのため、輸入品の価格競争力に負け、国内売
上シェアを10年間で47%も減らした。
(小売売上は17%増加、メーカー売上は30%減少)

国内生産の規模が、最終小売マーケットに比較して、約半分になっ
たのです。驚くべき変化です。家具に限らす、輸入が増えた業界で
は類似の現象がある。

▼家具輸入

家具輸入は、以下のような推移を示します。

1995年 2168億円
  96年 2849億円
  97年 3182億円
  98年 2868億円
  99年 2741億円

約3000億円が輸入されていると見ていいでしょう。この300
0億円は、サプライチェーンのトータルコスト構成では、国内工場
出荷価格(最終小売金額の40%)に相当します。

【輸入相手国:1999年:100億円以上の国】
 台湾      494億円
 中国      428億円
 米国      374億円
 タイ      360億円
 マレーシア   213億円
 インドネシア  202億円
 イタリア    141億円

【最終小売の37.5%】
3000億円の輸入家具は、最終小売売価では、その2.5倍から
3倍の7500~9000億円になる。99年時点で、国内家具市
場の2兆円のうち、38~45%を輸入品が占めています。

家具の小売大手(多店舗展開グループ)では、売上総額の60%く
らいを直接輸入商品が占めている。
今後の推計では、日本人は家具では60%近くを輸入品でまかなう
ことになる。

▼小売の激変の原因は、直接輸入

90年代で、年商3億円以上の小売企業の販売総額は、17%増加
しました、

その中で大きな変化がある。10年で売上を数倍に伸ばした多店舗
展開(チェーン型経営)とそうでないところの格差です。
国内メーカー、国内卸売りの流通網に依存してきた企業の伸びはな
いどころか、凋落したのです。

以下、家具小売上位12社の10年間の変化です。

91年順位  91年売上  00年順位      00年上
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1.島忠   646億円  1.島忠     1092億円
2.ナフコ  370億円  2.ナフコ    1015億円
3.大正堂  298億円  3.大塚家具    660億円
4.大塚家具 288億円  4.多慶屋(DS) 520億円
5.山新   271億円  5.ニトリ     489億円
6.山下家具 247億円  6.山新      363億円
7.深町家具 236億円  7.深町家具    370億円
8.宝船   218億円  8.大正堂     229億円
9.村内   175億円  9.東京インテリア 229億円
10.ニトリ 132億円  10.村内     197億円
11.アクタス118億円  11.川畑     166億円
12.近新  115億円  12.山下家具   161億円
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

上位12社計3114億円  上位12社計   5521億円

国内メーカーが30%、卸が37%の売上を減らし、シェアを半減
させるなかで、3億円以上の小売は17%の売上を増やした、

さらに、その小売の中でも上位12社は、3114億円から、55
21億円へと、56%の売上を増加させた。

その小売の上位12社の中でも、島忠(69%増)、ナフコ(17
4%増)、大塚家具(121%増)、深町家具(57%増)、ニト
リ(270%増)と、まさに不況はチャンスの格言どおりの勢力伸
張。一方では、小売上位12社の中でも停滞がある。

何が、この明暗を分けたのか。
上記5社の、90年代の共通要素は、直接輸入と、低価格への先駆
けた取り組みです。

————————————————————
——————————–
■5. サプライチェーンの観点での家具の直接輸入

大型商品の家具では、80年代までは、メーカー・卸・小売のサプ
ライチェーンでの、大枠でのビジネスプロセスは、下流から見れば
以下のような内容でした。

【国内流通商品の大枠でのビジネスプロセス】
(1)店舗への、見本品展示
(2)店頭での説得販売
(3)売上伝票の起伝
(4)メーカーまたは問屋への発注(売越し発注)
(5)配達商品の入荷
(6)配達商品の宅配

輸入商品は、入荷リードタイムが長く、顧客に売った後に発注する
「売越し発注方式」をとれない。配達までのリードタイムがながく
なるからです。

輸入では、仕入原価は安くても、店舗は海外メーカーに3ヶ月前に
数量枠を発注し、1月前には、確定発注する必要がある。
ところが、日本の家具店は、80年代までこれをやったことがなか
った。売越し発注で、倉庫在庫を管理する方法をとっていなかった
からです。

本格的な<3ヶ月前数量発注と在庫管理>を行うには、以下の、店
舗インフラ・ストラクチャーが必要になる。ここで格差がついてし
まった。

▼パラダイムの変化には、多くの人が気が付かない

80年代までの競争は、多くの商品を並べるための売り場面積大型
化競争だったのです。90年代は、サプライチェーンの全体最適の
観点での、下流からの流通網作りが、競争ポイントに浮上した。

こうした変化を、競争のパラダイム(枠組み)の変化と言います。

パラダイム変化がなんであるか、見極めることができないと、経営
と労働が成果として報われない。ルールが変われば、ゲームの方法
も変わる。

家具業界では、多くが、パラダイム変化に気がつかず、現場で売れ
筋商品や死に筋商品の議論ばかりがなされていた。

▼1.第一の要素:店舗のドミナント形成

「品揃えを標準化」した売り場面積1500坪以上の店舗を、物流
時間距離2時間の範囲に、5店舗以上~10店舗配置すること。

専門的には「店舗のドミナント(商勢圏優位)の形成」と言います

【宅配コスト7%】
1980年代までは、1顧客あたり13万円くらいが一回平均購入
額でした。それに対して、宅配デポ(一時商品置き場の機能を持つ
倉庫)のコスト、輸配送費、管理費を含めて約7%でした。1顧客
あたり、9100円の宅配コストを要していた。2トン車で、6件
から8件くらいの宅配を行っていた。

【家具価格の約半分への低下】
90年代末になると、1顧客あたりの購入額は、輸入品の低価格化
競争で7万円になった。

価格が半分での競争になったのです。1件あたり宅配コストが91
00円のままでは、7万円の売上に対して、13%にもなります。
これでは、店舗の利益は出ない。

【顧客の密度】
宅配コストを抑えるには、配送車の必要移動時間を短縮する必要が
ある。荷降ろしから家具の室内設置の必要時間は、高額品も低額品
も変わらないのですから。

移動時間を短縮するには、顧客と顧客の地点間距離を短くしなけれ
ばならない。つまり地域の販売顧客数シェアを高める必要があるの
です。

そうなると、ある一定地域に、集中的に店舗を配置したドミナント
(商勢圏)の優位を作る必要があるのです。

これを行ったのが、先に挙げた小売ランクで、90年代に大きく伸
びたナフコ、深町家具、ニトリ、島忠です。

▼2.第2の要素、DC(ディストリビューションセンター)の設

国内生産~国内流通の時代(80年代まで)は、小売店舗が、予め
の常備在庫を持つことは稀でした。

しかし、輸入では発注から入荷までのリードタイムは最短でも4週
間。東南アジアからでは普通は6週以上が必要になる。

そうなると、国内の商勢圏の近くに、常備在庫を持ち、最適発注を
管理する倉庫(DC)を持つ必要がある。

【DC:Distribution Center】
常備在庫を持つということは、同時に、
(1)店舗の品揃えの3ヶ月先までの計画化
(2)売上数量を大きく(±100%も)変える販売促進の計画化

(3)過不足のない在庫で運用するための、統計的な標準偏差を使
う「定期発注法」を導入すること、でもあるのです。
(これは、第2部以降で詳述します)

80年代までの家具小売(あるいは他の業種の小売)は、店舗内に
在庫を持つことはあったが、商品供給センターを運営することは稀
だった。

この点が、小売のチェーン化、多店舗運営技術が進んでいた西欧、
米国と大きく異なる日本の流通事情です。

▼サプライチェーンのソフト

以上のように、サプライチェーンの形成は、単にサプライチェーン
のソフトウエアを入れることではない。ネットワークを使って発注
することでもないのです。

業務の合理化、目的にあった業務と流通インフラの整備を推進して
いないと、システムは面倒な作業を増やし、却ってコストアップを
もたらことが多い。ここが、システムの利用のコツです。

————————————————————
——————————–
■6.物理的な流通のインフラ・ストラクチャーと技術

以上のように、輸入では、
(1)ドミナント展開できる店舗と流通センターがセットになった
、物理的な流通インフラ、
(2)発注管理技術、
(3)標準店運営技術の新たな3要素が必要になった。

ここで、家具業界の小売大手12社の間にも、技術格差がついた。
ほとんど売り上げを伸ばせないところ、店舗を増やせないところ、
90年代になって飛躍的に店舗を増やし売上を増加させたこところ
の2色に分かれた。

90年代は、小売の店頭での販売ではなく、バックヤード、物流、
DCの常備在庫管理、クロスドックセンター、倉庫在庫管理システ
ムでの技術格差だったのです。

家具小売業の経常利益率でも、売上対比10%~7%の多店舗展開
の少数グループと、1%未満、あるいは赤字の大半の店舗に分離し
た。

【輸入では】
単に開発輸入の取り扱いを増やせた、という要素での格差ではない

(1)計画的に店舗品揃えを運用できること
(2)輸入した数量発注商品の売れ残りを作らないこと、
(3)DCと国内店舗網、この3つがキーポイントになった。

以上、家具業界のケース・スタディをしてきました。SCMは、具
体的な内容を持ちます。その意味で、SCMの深い理解を助ける前
提として、以上の記述を行いました。

【次回】
次回は、サプライチェーンの技術内容に入ります。
具体的に家具業界を見ると、90年代は空白の期間ではなかったこ
とがわかる。

【多くが気がつかない、パラダイム変化】
まとめれば90年代は、サプライチェーンの全体最適の観点での、
流通技術導入の時代だったのです。不況の時期は、根幹の技術でパ
ラダイム変化が起こり、それゆえに格差がつく時期です。

業界でそのことに気がつくのは、私の判断では10%くらいの会社
でしょうか。少数派です。大半は、過去の業界常識を超えることが
できず、不況が終われば、また戻ると思っています。

【ビジネスサイクル(景気循環)との違い】
確かに、1980年代までは、ビジネスサイクルの変化であって、
流通での大変化、技術変化はなかった。

90年代は、この目に見えにくい流通部分での、本格的な変化だっ
た。店舗の外見では、見えない部分です。

例えばコンビニエンスストアは、目に見える店舗の品揃え部分では
なく、流通部分、店舗網での商勢圏作り、商品開発、店舗の発注方
法、情報利用の部分での競争です。

流通の技術要素は、各業界、およびメーカー、卸、小売で共通です

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【ビジネス知識源プレミアム読者アンケート】

1.テーマと内容は興味が持てるか?
2.理解は進んだか?
3.疑問点や質問点は?
4.その他、感想等
5.差し支えない範囲で読者の横顔情報があると助かります。

コピーして、メールに貼りつけ、記入の上送信してください。

※ 本マガジンの、「購読サンプル」としての、友人・知人・同僚
・部下・上司・取引先への転送は、自由におこなってください。
立ち読みしないと、本は買えないですよね。(笑)

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 送付先:   yoshida@cool-knowledge.com
 Home Page: http://www.cool-knowledge.com 
 著者: 吉田繁治  systems research ltd.
 購読または解除: http://premium.mag2.com/j/011/0001.htm

<SCMシリーズ:SCM経営をめぐる考察(第1部)>

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

Comments are closed.