FRBの利上げの意味と、困難な展開
Written by admin on 2022年11月6日 – 15:00
米国FRBは、11月のFOMC(連邦公開委員会)おいて、0.75%の利上げ を決め、短期金利は4%に上がりました。 FOMCは、FRBの金融政策を決める機関です(11月:年7回開催)。 基軸通貨とされているドルの金利は、世界の金融に影響を及ぼします。 なお12月の利上げについては、軟化した0.5%を示唆しています。市 場は、これを利上げの減速として好感しています。 ◎市場では0.75%は予想され、10月の株価には織り込み済みだったの で、波乱はなかった。市場の関心は12月の利上げ幅(0.5%?)と、 2023年のピーク金利が何%になるかに移りました。4.5%から5%まで の幅でしょう。最悪は5.5%です FOMCは、2022年3月からの合計で、3.75ポイントの利上げを決めまし た。1回が0.25%だった過去の、3倍の速度です。FRBのインフレへ の危機意識が、市場よりは強いことを示す事実がこれです。 (注)本稿は、有料版・無料版共通とします。有料版の正刊は、水曜 日荷毎週、送っています。 【重要な点】注目すべきは、イールドカーブでの、長期金利の低さで す。1年の短期金利は、4.66%に上がっています。ところが、市場の 売買で価格が決まる10年債の金利は、4.1%と短期金利より低い。こ れは、景気の大きな後退期に多い、マレなことです。普通なら、短期 金利が4.66%であれば長期金利は6.5%以上です。 ↓ 【理由】このイールドカーブは、市場の投資家が、「長期ではインフ レ率は下がって、FRBは景気悪化を懸念し、利下げ方向に転じる」 と見ていることを示します。市場の投資家は、インフレ予想に対して、 FRBの金利誘導が高すぎると反発しているのです。 https://irbank.net/usa/yieldcurve FRBはインフレを恐れすぎであり、金利も上げすぎだという観測で す。短期金利はFRBの誘導によって決まりますが、長期金利は、市 場の長期国債の売買で決まります。FRBのインフレへの見方と、株 価と国債価格の下落を嫌う市場の見方が、反しています。 * 本稿では、2022年の、通常の3倍の速度での利上げの意味と困難な展 開、そして、金融危機の可能性を分析して書きます。論理的に分析す ることは予測することになるからです。 それに、2021年までは超低金利の国債価格が、利上げにより下がるこ との影響が、金融危機になるくらい大きいからです。長期債は金利1 %の上昇につき、価格は、約8%下がります。 株価が30%下がるより、株価より金額が大きな国債価格の15%下落が 「大変(タイヘン)」だと、認識してください。 【2021年までは、超金融緩和だった】 2021年までは、コロナ・パンデミック対応の金融緩和として、 ・1.9兆ドル(275兆円)の緊急の財政支出をして、 ・同時に、短期金利を0%~0.25%に下げていました。 長期金利(10年債の金利)も、1.5%くらいと最低水準だったのです。 1)GDPの10%という、大きな財政拡張と、 2)超低金利から増えたマネーは株価に流れ、 S&P500(500社の加重平均株価(株価指数の代表)は、2300ドルとい う危機的水準(20年3月)から、ウクライナ戦争直前の21年12月には 4766ドルへと2.1倍に高騰していました。 【マネーサプライ(企業と世帯の預金)は、銀行からの借り入れによ って増加する・・・マネー量の増加と減少の原理】 マネー(マネーサプライ=企業と世帯の預金)が増えるのは、「銀行 からの借り入れ」が増えるからです。 ・金利の上昇は、マネーの量を減らします。 ・逆の利下げでは、金融緩和になり銀行からの借り入れが増える結果 としてマネー量が増えます。 不況の恐れがあるときは、FRBが国債とMBS(住宅ローン担保証 券)を買って利下げをし、借り入れによってマネー量が増えるよう誘 導します。これが金融緩和です。FRBが、直接に、金融緩和ができ るのはない。 銀行としか取引しないFRBが増やせるのは、銀行がFRBの口座に もつ当座預金です(マネタリーベース:いわば、企業や世帯のもので はない、国の基礎的マネー)。 ↓ FRBの誘導金利の低さによって、銀行からの借り入れが増え、企業 と世帯のマネー量が増えて、投資と商品需要の増加から、インフレの 原因になっていくのです。これがマネー量の原理です。 マネーの増え方を図式で示すと、 1)FRBが国債・債券を銀行から買って、当座預金に現金を振り込 む(これがFRBの信用創造)。この段階は、金融緩和ではない。 ↓ 2)金利ゼロの当座預金(準備預金)が増えた銀行は、企業と世帯に 貸し付けを増やす。これがマネーサプライの増加であり、企業と世帯 の預金の増加、つまり、民間市場での金融緩和です。 GDPの期待成長率が1%未満と低い日本では、日銀が500兆円増刷し ても、銀行の貸し出し増加は、2%から3%と低かった。 他方、期待成長率が3%はある米国では、2020年から22年までの2.5年 で46%も増えました。年率では16%という極めて高い銀行貸し出しの 増加でした(金額では22兆ドル)。これが、米国の株価を2倍に上げ、 物価も上げたのです。22年3月の利上げ以降は、逆に、低下していま す。これが高かかった株価と国債価格を下げているのです。 (米国:マネーサプライ:M2;2018-2022) https://jp.tradingeconomics.com/united-states/money-supply-m2 【転換は、22年2月だった】 2022年の2月末からは、ウクライナ戦争での資源価格高騰が加わった 高いインフレ率を抑制するため、FRBは、急いで、利上げ(=マ ネー量の引き締め)を行いました。 ↓ この結果、S&P500の株価は、3585ドルへと25%下落しています (危機ラインは-30%付近です)。11月3日は、利上げ後に上がって、 3759ドルでした。パウエルの11月2日のメッセージを、12月の利上げ は低いと解釈したからです、 (楽天証券:S&P500:2年間) https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/data/gspc.html 【知識】 ・利下げ(=金融緩和)は、マネー量の増加になり、 ・利上げ(=金融引き締め)は、マネー量の減少になることを知って おいてください。 意外に、マネー量が増えるメカニズムが、知られていません。 金利の先行きを見た国債と債券の売買は、専門家の市場だからです。 株に対しては個人も売買に参加します。日本では30%、米国では40% でしょう。 ・一般に、利下げでは、株と金融商品を買うマネーが増えて、株価と 国債価格は上がり、 ・逆の引き締め(利上げ)になると株価と国債の価格は下がります。 固定金利の国債は、その後の利上げによって価格が下がり、利下げよ って、価格が上がります。固定金利の国債と社債は、株価とは違い、 市場での金利を予想した販売価格によって、金利を変動させます。 (注)ここもあまり知られていません。個人での国債の売買は少ない からです。国債は、金融機関の金融商品です。 ◎2022年のFRBは、8%台のインフレ(コア物価は6.4%)を抑える ためには、株価、国債価格と、他の金融商品の価格が下がってもやむ ないと考えています。 【需要】「6.4%のコア物価を2%台に下げること」をFRBの使命と 考え、22年3月から、利上げを実行しているからです(2%台とする物 価目標が重要な点です)。 【米国インフレの鍵は、持ち家の帰属家賃を含む、家賃】 2021年まで前年比で20%も上がってきた住宅価格が下落しないと、物 価の30%背を占める家賃(約11%上昇)は下がらず、コア物価は2% 台に下がりません。 ◎インフレの遅行指標である家賃が下がるのは、2023年末からでしょ う。2023年末までは、米国コア物価は、下がっても4%台でしょう。 「コア物価を2%台に下げる」というパウエルの表明から、「少なく とも2023年末まで利上げをする(=副作用が金融危機である)」とい うメッセージが、読み取れます。 【重要:国民にインフレ期待の集合心理を、生じさせないこと】 ◎その理由は、国民の間に渦巻いている「インフレ期待」の心理を、 発生させないためです。インフレ期待が明確になると、「価格が上が る前に買う」として、買い物が前倒しになるからです。 商品の供給力より需要が大きくなると、石油危機のときのトイレッ ト・ペーパーのように、店舗の棚の商品が不足し、結果としてインフ レ率は、8%、10%、12%・・・と、スーパーの棚の過剰在庫が増え るまでは、加速していくからです。 実はトイレット・ペーパーは、石油価格の高騰で、生産が減ったので はない。主婦たちが「なくなる」とうわさし、スーパーに走って、普 段より多く買い集め(=超過需要が生じ)、棚から消えたのです。消 えると、ますます需要が盛り上がります。つまり、主婦に「インフレ 期待」が生じて、前倒しの需要を増やしていたのです。 物価上昇は、株価のように要因が多数の複雑系であり、仮説としても 解、その原理が解き明かされているものではありません。メカニズム が不明なところがある、コロナ・パンデミックに似ています。 経済学には、入り口の前提に、基本的な問題が数多く隠れています。 複雑系の人体を扱う医学より、はるかに、科学的ではない。このため、 経済学には、多くのイデオロギー的な学派があり、大きくは、価格統 制の共産主義と、自由を主張する市場経済に分かれているのです。 医学では実証が必要なので、価値観(=主観)では、学派は作りにく い。しかし実験と実証ができない経済学では、前提の価値観(主観) から、様々な学派が作られています。本稿は、基本的な説明を加えた ので、増刊としては文字数が多い23ページになりました。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <Vol.1282号:増刊:FRBの利上げの意味と困難な展開> 2022年11月6日:有料版・無料版共通 【目次】 ■1.利上げが金融危機になるとき ■2.今回はどうなるか?・・・がテーマ ■3.銀行間金融である、レポ金融の問題 ■4.米国のノンバンク部門(シャドー・バンク)に問題がある ■5.シャドーバンクのLDI(Liability Driven Investment:負債主 導の運用) の損益 ■6.補足情報:旧ソ連とロシアのハイパー・インフレ事例 ■7.ウクライナ戦争の本質 ■8.通貨リセットの可能性 ■9.八方塞がりの、米国FRBの金融危機対策 ■10.FRBの22年12月の利上げと、2023年への方針から将来が 分かる 【後記】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.利上げが金融危機になるとき 金融危機とは、 ・金融機関の、資産(債権+国債+株式)の時価が下がって、 ・その損が、銀行の資本に食い込み、 ・信用創造(マネー増発)の可能量が減少して、市場のマネー量が減 ることです。 (注)信用創造の可能量=決算期のTier1の自己資本÷5%、くらいで す。Tier1(ティアワン)とは、資本金+資本準備金+利益剰余金+ 優先株+優先出資証券等の、会計上は、自己資本とされるものです。 BISが、世界の銀行に対して、銀行の安定のため、自己資本比率を規 制しています。銀行の、3か月決算期の確定損失は、Tier1を減らしま す。 【恐慌】 マネー量(=マネーサプライ=銀行預金の量)が減ると、銀行預金を 使う企業と世帯の決済に影響が及び、経済取引が急減し、リセッショ ン(2期連続のGDPマイナス)を経て、ひどくなると恐慌になりま す。 売上が急減した企業が多く倒産し、倒産による失業の急増によって、 世帯所得が減って、商品購買が減っていくマイナスのサイクルが恐慌 (デプレッション)です。 株価の暴落が引き金になった1929年から33年の「大恐慌」のときは、 ・株価はボトムでは1/5(20%)に下がり、 ・失業率が25%に増え、 ・工業生産は1/3になって、 ・名目GDPは、45%減りました。 大恐慌の解決は、第二次世界大戦の戦費でした。 【中央銀行の機能】 通貨価値を守ることが公的な使命である、近代の中央銀行は、金融危 機のとき、銀行に不足する現金を貸し付けて、急激なマネー量の縮小 を防ぐために作られました(19世紀末から20世紀初頭)。 日銀は、ロスチャイルド家に松方正義が学んで1983年に、米国FRB は1913年に創設されています。 【FRBのマネー増刷】 2008年9月15日からのリーマン危機のときは、大手金融機関は、 「Too Big to Fail(潰すには大きすぎる)」として救済(ベイル・ アウト)されたのです。もっとも近い金融危機が、リーマン危機でし た。 このときは債務超過になった銀行に対して、FRBからは4兆ドル (580兆円)のマネー供給がされたのです。中央銀行があれば、金融 危機からの恐慌は起こらないとされてきたのです。 ■2. 今回はどうなるか?・・・がテーマ 「今回はどうなるか?」 リーマン危機のように、一旦は株価と国債 価格が暴落しても、中央銀行の「利下げ=国債と債券の購入→マネー 増発」によって、リーマン危機のときのように、その後、回復するこ とができるか。これを検討します。 ◎リーマン危機のあとコロナ危機対策が加わって、世界の中央銀行の バランスシートは膨らみきっているので、通貨への信認を落とさずに、 追加の金融緩和(国債の買いによるマネー増発)ができるかどうか、 不明なところがあります。 (注)ここは、メディアが指摘できていない点です。皆は、最後は、 中央銀行が銀行を救済し、危機は収まると考えています。 ところが2023年に想定できる、世界同時の金融危機では、中央銀行の バランス・シート(B/S)が、日米欧とも膨らみきっているので、 中央銀行が救済のマネーを増発できるかどうか、不明です。 ◎FRBが、2016年に利上げ(金融引き締め)をしたのは、その後の不 況と金融危機の際、通貨を増やせる「伸びしろ」を確保するためでし た。ところがFRBは、2020年からのコロナ危機のため、4兆ドル増 刷してしまい、通貨増発の余力を使い切ってしまったように見えるの です。 ◎中央銀行への信認以上に通貨を増刷すれば、その通貨は外為市場で 50%以下に暴落して、通貨増刷による銀行救済の効果はなくなるので す。ここが「今回はどうなるか」の検討での、もっとも重要な点です。 中央銀行は、予想される2023年の世界金融危機では、銀行救済が難し いということです。 本稿では、米国を検討します。日本、欧州、中国で問題の所在は異な るからです。 【各国の違い】 1)日本では、政府の財政と、GDPの230%の国債の問題、 2)欧州では、10%台の高いインフレとEU加盟国の財政赤字の大きさ (5%から10%以上)、 3)中国では、建設が途中で止まって販売が完了できない住宅の金融 問題と、地方財政の不良債権の問題です。 【中国】 中国では、住宅は未完成の状態で販売されます。建設会社が完成させ て、引き渡されます。ところが、大手の建設会社(たとえば恒大)が 資金不足になっていて完成できず、廃墟に見える大量の「鬼城」にな っています(推計1500万戸:1年分の未完成在庫)。 建設会社の負債には金利が嵩むので、資金不足は、時間の経過ととも に増えて行きます。完成・引き渡しの目処は立っていません。 加えてウクライナ戦争のあと、西側は(日本を除き)、中国から工場 を引き揚げつつあります(東南アジアに移転)。これも不動産価格を 下げています。 中国のGDP低下(政府発表3.9%:推計ではゼロ成長)には、原因 があります。GDPの30%を占める住宅建設で、住宅価格が下がると きは、GDPは成長しません。 共産党が集計する中国の経済データは、多くのものが最小でも3%は 底上げされていると見ています。2022年の失業率は4.2%とされます が、実態は8%でしょう。2000年からずっと4%付近とされてきました が、誰が見ても変です。16歳から24歳の失業は、19.9%とされていま す(政府発表)。これだけは、本当でしょうか。 https://ecodb.net/country/CN/imf_persons.html 金融危機の様態は、各国で異なりますが、「銀行の資本を壊す不良債 権の大量発生」が原因であることは、同じです。 ■3.銀行間金融であるレポ金融の問題 レポ金融は、国債を担保に差し出した、銀行間の短期マネーの貸借で す。相手銀行が不良債権でTier1の自己資本を減らし、債務超過の恐 れが出ると、レポ金融が停止され、銀行は、一挙に「システミックな 危機」に陥ります。 決算は3か月遅れますが、銀行の隠れた内情の一部を示すのは、銀行 の株価です。米銀のPBR(株価時価総額÷純資産)は現在、1倍か ら2倍です。 国債と外債が多い日本のメガバンクが低く、軒並み1倍の解散価値を 割っています。株式市場は「銀行の含み損」を見ているのです。 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB263DG0W1A221C2000000/ 米銀の証券を兼業する投資銀行のPBRが、日本のメガバンクの2倍 高い理由は、後述する巨大化したノンバンク(シャドーバンク)が、 マネーの運用部門になっているからです。 ◎知られていないことですが、リーマン危機のあと、大手である米国 投資銀行は、レバレッジ(短期の回転借り入れ)を高くして、株・国 債・債券を売買するマネー運用部門を、ノンバンクに移管したのです。 (注)米国投資銀行は、ゴールドマン・サックス、モルガンスタン レー、JPモルガン、バンクオブアメリカ・メリルリンチ、シティバン クなどです。スイスではクレディ・スイスとUBS、ドイツではドイツ 銀行、英国ではバークレイズです。銀行業と証券業の複合業態です。 貸し付けより、証券の売買に重点があります。 2022年のように、利上げで株価、国債価格、債券価格が下がるときは、 ノンバンク部門に、含み損失がたまります。 親会社の投資銀行と、子会社のノンバンクは、資本の持ち合いはなく 連結決算ではありませんが、ノンバンクの損の、決済義務を負ってい ます。 企業の倒産は、銀行取引の停止です。銀行の倒産は、銀行間のレポ金 融の停止です。銀行業は、銀行間のマネーの貸借で、成立しています。 【システミックな危機】 システミックな危機とは、A銀行のマネー不足からの危機(決済がで きないこと)が、B銀行→C銀行・・・というように大手銀行の全部に 波及する、連鎖の危機を言います。 リーマン危機のとき、サブプライムローンのデフォルトから起こった、 住宅ローン担保証券(MBS)の下落と、債権の回収を保証する保険 であるCDSの高騰から、米銀にシステミックな危機が起こったので す。 CDS:Credit Default Swapは、(デフォルトした債権の回収を保証 するデリバティブです。デリバティブとは、原資産を証券化して、銀 行間で売買をし、満期日に決済する金融派生商品です。 ◎世界には、6京円(世界のGDPの6倍)の、未決済のデリバティブ 契約高があります。世界の銀行資産(=銀行負債+自己資本)の5倍 です。未決済の間の損益は、簿外になって、現れません、先物やオプ ションと同じように。満期日に損益が確定します。 現代の金融危機は、デリバティブの売買契約の損が大きくなって、満 期日での決済ができなくなることから、起こります。1990年代からは、 銀行の負債と資産も証券化され、銀行間で売買されているのです。 MBSは、多数の住宅ローン債権を集めて寄せ鍋にし、そこから、 1)信用が高く金利が低いシニア債(国債と同じAAA格)、 2)中程度の信用の金利も中程度のメザニン債、 3)信用は低くても金利が高いエクイティ債の3層にトランシェ(切り 分け)して、別の証券を組成し金融機関に販売するものです。 (注)住宅ローンがデフォルト(支払い不能)にしたとき「下位のエ クイティ債→メザニン債→シニア債」の順に配当がなくなっていく契 約の証券です。 リーマン危機のときは、国債並みの、破綻確率が0%でAAA格とされて いたシニア債のMBSが60%に下落し、銀行の自己資本を破壊し、金 融危機に発展したのです。下位のエクイティ債は、買い手はなく、転 売価格はゼロに下がっていました。 【証券化商品作りと売買が、銀行業の主要業務になった】 1990年から米欧では「証券化商品」の売買が、金融の主流になってい ます。日本では、証券化商品は、主要国で世界1少ないので、あまり 知られていません。原因は、1990年から国債の発行が大きかったから です(90年代は毎年40兆円、00年台は20~30兆円; 現在の、日本の国債残は約1200兆円です(借入金を入れた政府の負債 は1426兆円)。1990年からの、国内の銀行預金の増加分は、ほぼ全部 が、1)政府の国債と借入金、2)そして海外(米国)に吸収されてき たのです(対外資産)。 これが、90年代からの「日本の資金循環」でした。国内のGDPが増 えなかったマネー面での原因は、人的な生産性を上げる民間企業の設 備投資が少なかったからです。GDP=就労人口×1人当たり生産性 です。 (資金循環表:2022年6月:日銀) https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjexp.pdf ■4.米国のノンバンク部門(シャドー・バンク)に問題がある 米国ではリーマン危機のあと、銀行に対して、政府がかなり厳しく、 自己資本の規制をしています。米銀は、自己資比率が5%台と低い。 ◎リーマン危機の原因になった銀行のデリバティブは規制されて来ま した。それが、今度は、投資銀行系のノンバンク部門(シャドーバン ク)を、運用資金4000兆円くらいに肥大させたのです。 (注)日本の都銀では、リスク資産(貸付金+所有株式+社債など) に対する自己資本比率は10%以上です。しかし日本の銀行は、リスク 資産からは除外される国債の所有額が大きい。 1)金利が1.5%に上がって長期国債の時価が12%下がると、金融危機 に陥ります。 2)日銀が、3%を超えるインフレになっても、ゼロ金利からの利上げ ができないのは、このためです。 日銀が利上げをしない、のではない。利上げができないのです。 【政府が規制しないノンバンク(シャドーバンク)の肥大】 世界で資産額が最大、のファンド(ノンバンク)は、年金基金です。 マネーの運用額が大きいのは、 1)ヘッジファンドが元本300兆円(レバレッジ運用は3倍として900兆 円)、 2)運用資産が3000兆円のインデックスファンドです。 ノンバンクには、政府の自己資本規制がありません。3000兆円のイン デックスファンドの、投資預託金の負債は3000兆円でしょう。運用の 利益は、投資家への配当になって流出します。 (注)中国のノンバンクは、銀行預金より金利が高い「理財商品」で す(資産額は59兆元:1200兆円:三菱UFJの3.2倍)。日本にはノンバ ンクは少ないですが、190兆円の年金基金を運用しているGPIFは、ノ ンバンクの範疇の機関です。 米欧のノンバンクの、事実上の親会社が、投資銀行(銀行と証券会社 の兼業)です。 ◎米国の、次回の金融危機は、リーマン危機のような投資銀行本体か らではなく、マネーの運用を預託したノンバンクから起こるでしょう。 この点が、投資銀行本体の危機だったリーマン危機と異なります。 つい最近、22年9月・10月に、英国の年金基金で起こった危機を、分 析的に描きます。トラス首相の4、5日での辞任の原因のひとつでした。 ■5.シャドーバンクのLDI(Liability Driven Investment:負債主導 の運用) の損益 英国で9月から10月に起こった、年金基金の危機を示します。 年金基金は、資金運用の面でノンバンク(シャドーバンク)です。年 金基金は、国債と株を買って、国民から預かったマネーを運用します。 2021年まで、英国10年債の金利は、0%~1.5%と低かった。利回りの 平均1%では、運用利益はない。そこで、年金基金は、短期借り入れ で国債を買うLDI(Liability Driven Investment:負債主導の運用)と いう戦略をとったのです。 国債を担保にいれて銀行からオーバーナイト金利0.25%で借りる(= レポ金融) →金利0.25%の借り入金で、1%の回りの国債を買う →買った国債を担保に入れて、金利0.25%で借りる。 →金利0.25%の借り入金で、1%の回りの国債を買う・・・ 英国年金基金は、レバレッジを5回くらい繰り返していました。 5回で、国債金利1%×5倍=5%になります。借入金利は0.25%×5回 =1.25%です。投資利回りは5%-1.25%=3.75%になって、マネー運 用の面目が立つでしょう。(注)日本の年金基金(元本160兆円)の マネー運用利回りも、年平均では3.6%です。 このLDI(Liability Driven Investment:負債主導の運用)は、杵金利 が下がるときと同じときは、国債金利の数倍の好調な運用益を上げる ことができます。 ◎ところが、インフレで金利が上がると、一挙に、損失が膨らみ、金 利が上がると国債の価格は下がるので、担保の積み増しである、追い 証もできなくなり、短期間で破産します。 (1)国債の金利は、発行時に固定された金利であり、金利が上がる と、国債価格が下がって、利回りを上げる。国債の下落が1%の金利 より大きな損になる。長期金利が3.5%に上がると(英国の10月末)、 1%の固定金利の国債は、15%から20%も評価価格が下がります。 過去の運用利益の5年分を一夜で消え、運用元本に食い込むのです (国民の年金基金の元本が減る)。 英国年金基金が、仮に50兆円を10年債で運用していた場合、超金利が 3.5%に上がり、価格が15%下がると4.5兆円の損失が出ます。 ↓ 借り入れの担保価値が4.5兆円下がるので、4.5兆円の現金を、追い証 で入れないと、レポ金融が継続できず、一挙に50兆円の返済が必要に なって、支払えないと破産します。 (2)レポ金融での借り入れの短期金利は、インフレによる金利の上 昇と一緒に上がります。英国の短期金利は、0.25%から1%に上がっ ています。 仮に50兆円のレバレッジをかけていると、利払い額は1250億円から 5000億円に上がり、3750億円の追加の利払いが必要になります。 以上のように、2022年のインフレになって、2021年までは低かった金 利が上がると、LDI(Liability Driven Investment:負債主導の運用) では、所有債券と支払金利の両方で損失がふくらみ、昨日まで順調、 今日は破産という事態になるのです(まさに晴天の霹靂です)。 レバレッジで買うものが、国債や債券ではなく株であっても同じです。 金利が上がると、株価は下がります。英国年金基金は、約5倍のレバ レッジ運用で、9月と10月で25兆円の損をしています。 世界最古の中央銀行である、女王陛下のイングランド銀行(大英銀行 :1609年~)が、年金基金の国債を買って、一時的な、資金繰り支援 をしているのです。 日本のGPIFが、どの程度のレバレッジ運用をしているか、米国と欧州 の年金基金はどうか、データがありません。 【簿外損失】 デリバティブですから損失は、簿外の損になっていて、B/Sにはま だ現れていません。5倍ではなくても、必ずレバレッジ運用はあるの で、今後の金利上昇の局面で、表面化せざるを得ない。年金基金やフ ァンドの、簿外損失はなくならない。金利が上がると、急激に、増え ていきます。 2021年に始まった世界インフレの長期化のため、少なくとも、2023年 末までは、世界の金利が下がって、レバレッジ運用の損の拡大が、止 まることはない。多少の損を回復するのは、最短でも2024年の金利の 下落局面です。 【中央銀行は救済できるか?】 年金基金とヘッジファンド、インデックスファンドのノンバンク(シ ャドーバンク)が、破産の危機に陥ったとき、政府・FRBはマネー を増刷して救済ができるか。 政府・FRBが銀行を救うのは(ベイル・アウト)するのは、年金基 金は例外ですが、政府・FRBが銀行を規制しているからです。 ◎政府規制のないノンバンクは、論理的には、救済の名目が立たない。 「Too Big To Fail(大きすぎて潰せない)」という非論理しかない。 米国がノンバンクから金融危機陥ったとき、救済の方法は、FRBに よるドル増刷と注入しかない。 このときは、欧州と日本も同時に、金融危機になります。日本の銀行 と政府は、米銀と国債のドル建ての対外資産1200兆円を引き出す円転 (ドル売り/円買い)ができなくなるからです。 日本では、インフレから自国の国債の下落がなくても、対外資産であ るドル債と米国株の危機からも金融危機が起こります。日本の金融は、 内には国債、外にはドル債という二重苦の可能性を抱えているのです。 (注)政府は、公的年金に危機が起こっても、発表しません。国民か ら政府が、激しく糾弾されるからです。実はソ連の崩壊は、過剰な軍 事費から政府通貨に起こったハイパー・インフレ(80年台末10倍:最 終的には1997年の1000倍)によって、年金と給料が無効になったこと から起こったものです。 共産主義のソ連では、全員が、国有企業の公務員でした。共産主義革 命のリーダーだったレーニンが予言していたように(『国家と革 命』)、高いインフレ率が、国家を破壊しました。 ■6.補足情報:旧ソ連とロシアのハイパー・インフレ事例 利払いのない旧ルーブル紙幣は、共産党が発行する「政府紙幣」でし た。これが、軍事費用として過剰発行されていたのです。共産主義国 では、一般に税はありません。資本主義ではないので、国有企業(官 業)の利益が、政府の収入です。増加を続けた財政支出に国有企業の 利益では足りなかったので、政府紙幣が発行されたのです。 物価が10倍に上がると、国民は給料と年金では食えないので、消えた 国有地に自家農園を作って、生き延びたのです。国有企業が生産する エネルギー資源は2/3が輸出されていました。この国有企業が安価に 払い下げられ、政府の周囲にオリガルヒ(新興資本家)が生まれまし た。現在もプーチンの周囲は、旧KGB出身にオリガルヒが固めてい て、プーチンをマネーで支援しています。 エリツインに順次代わっていったプーチンの1997年(通貨危機)から 1999年のマネー改革で、旧1000ルーブルが新1ルーブル切り下げられ てハイパー・インフレが収束し、現在に至っています。 ハイパー・インフレは、通貨の過剰ですから、通貨のデノミとその後 の緊縮(デフレ政策)を行うと、収束します。その後は、過剰発行さ れた通貨の悪戯からはアク抜けした成長経済になるのが、世界の事例 です。 ハイパー・インフレは、通貨の過剰発行によって国民に醸成されるイ ンフレ期待によって起こりますが、生産力が破壊されたわけではない ので、価格の秩序は回復します。 デノミ後の、ロシアのGDPの実質成長は、1999年6.4%、2000年10. 1%、2001年5.1%、2002年4.7%でした。プーチンはハイパー・イン フレを収め、成長経済に復帰させたことでリーダシップを確立したの です(2000年~現在まで大統領)。 ロシアのインフレは、2020年3.4%、21年6.7%、22年は2月末からの ウクライナ戦争で戦費としてのルーブルを増刷したため13.8%です。 なお日本では、ソ連およびロシアと現代中国の、金融と経済の実態の 報道はありません。 ■7.(関連して)ウクライナ戦争の本質 米国の金融資本は、ソ連崩壊のあと、ロシアとウクライナの旧国有企 業(資源産業)に出資して侵入しています。ウクライナ戦争とともに、 ロシアの資源産業からは、米国系資本は、排除(追放)されてきたの です。 ここが、ウクライナ戦争の本質です。米国が、ウクライナの傀儡ゼレ ンスキーにマネーと兵器の提供をする理由は、ウクライナの米国資本 の権益を守るためです。戦争の目的は産業と富(とみ)の強奪です。 ウクライナの米国にはバイデン一家の利権が混じっています。 富と産業のない南極や北極では戦争はしない。ただし南極に金や石油 があれば、米国の西部開拓のような領土戦争が起こるでしょう。 ペリーの黒船は、銀を珍重していた日本の金を目的に、浦賀に来たの です。メキシコの銀を、国際価格はるかに安かった日本の金と交換す れば、莫大な利益が得られたからです。幕府は、不平等な日米修好通 商条約を結び(安政5年)、薩長土肥は、江戸幕府を倒すため、天皇 を幕府の上に立てる尊皇譲位派でした。 西欧のNATO加盟国では、ウクライナでは自分たちに富がなく、米国の 利権を守る戦争と分かってきたので、英国以外では厭戦気分が出てい ます(イタリア)。今回、メローニ首相を立てて連立与党になったベ ルルスコーニ(元首相)は、ウクライナに武器と物資を送るなと訴え ています。戦争の勝利は、兵器を買い、兵士を雇用するマネーの潤沢 さが決めます。 イタリアは、財政赤字がGDP比7.2%/年です。国債残はGDPの160%、 そして対外債務はGDPの138%もあって、海外の支援どころではな い。対外債務が大きな点で、イタリアの財政状況は、GDP比230% の国債(90%は国内が保有)がある日より、はるかにひどい。日本は、 イタリアの逆の対外資産国です。 ECB(ユーロの中央銀行:ドイツが主導権)が、イタリア国債を買わ なくなると、イタリアは、瞬間に金利が高騰し、国債の満期返済がで きなくなる政府財政が破産します。ECBのラガルド総裁は、メローニ 新政権に対し、「NATO」に協力的でなければイタリア国債は買わない といっています(2022年10月)。 いくらの戦費使って、いくらの富を獲得するかが、戦争の戦略です。 「投入可能な戦費<獲得する富(割引現在価値)」でなければならな い。これが政治です。財務省が、投入可能な戦費を決めます。戦争の ときは財政の赤字が、中央銀行による国債買いでまかなわれるので、 国内の通貨量が増えてインフレになります。 日本は第二次世界大戦ではGDPの2倍の戦費を使い、獲得した富は なく、戦後のハイパーインフレ(物価は300倍)を生みました。 共産党国家は、国家の体制である共産党独裁から得られる利益を守る か、拡大するために戦争をします(中国と北朝鮮)。なおプーチンは、 2000年ころから反共産主義であり、ロシア正教のスラブ民族主義です。 ■8.通貨リセットの可能性 通貨リセットの可能性は、ノンバンクの広範囲な危機に対しては、 リーマン危機のような中央銀行の通貨増刷は効きにくいことから来ま す。もともとが、2021年からのインフレによる金利上昇から、ノンバ ンクが金融危機になるのです。 中央銀行が通貨を増発して、ノンバンクを救った場合、国民にインフ レ期待が醸成され、インフレが加速して長期化する可能性が出てくる でしょう。インフレ対策のため、中央銀行は利上げをして、その利上 げの結果、ノンバンクの危機になったのです。 ノンバンクの危機(国債・債券価格の下落と金利上昇)を、インフレ を醸成する通貨増発で救った場合「血を血で洗う」こと、つまり増水 したマネーの河に、更にマネーを注いで洪水(インフレの長期化)を 招く恐れがあります。 ここは、直近のノーベル経済学賞をもらったバーナンキの「リーマン 危機型恐慌論(=ヘリコプター・ベンのドルばらまき)」にはない。 つまり学術的な対策はまだない。人間の論理的なイマジネーションは ここまでです。 通貨当局のFRBは、新しい事態の金融危機の対策をどう考えるでし ょう。思考実験をしてみます。 ▼(1) ドル単独であれば、プラザ合意のような「米ドルの単独切 り下げ」が想定できます。ドルを1/2に切り下げると、米国の、ドル 国債(7兆ドル)を含む対外債務は基軸通貨であるおかげでドル建て なので、4500兆円の対外債務は1/2に減価されます。 一方、対外資産22.6兆ドル(3277兆円)は現地通貨建てです。たとえ ば米国ファンドがもつ日本株200兆円は円建てです。円国債120兆円も 円建てです。 ドルを円に対して1/2に切り下げると、対外負債は半分の価値になり、 対外資産は2倍の価値になります。 具体的に言えば、対外債務4500兆円は一挙に、1/2の価値の2250兆円 になります。対外資産は、2倍の6550兆円の価値になって、米国は、 一夜で、対外資産6550兆円-対外負債2250兆円=4300兆円の対外純資 産国になるのです。 その逆に、ドル建て対外資産が1249兆円、円建て対外負債が838兆円 の日本は、この対外資産が1/2の、625兆円に減価します。 日本は、40年かかって築き上げてきた対外資産から、625兆円を失い ます。 (日本の対外資産、対外負債) 日本は、「対外資産625兆円-対外負債838兆円=213兆円」の対外純負 債国になるのです。 ▼(2) 変動相場制でのドル切り下げは、ドル債をもつユーロ、日 本、中国、産油国が、協調して手持ちのドル債を売って自国通貨を買 うこと(日本の場合は円高介入)によって行われます。政府や中央銀 行が、ドルは1/2というレートを決めることはできない。 プラザ合意の頃(1985年)は、日本とドイツの経済力が、最も強かっ たときです。日独は、手持ちのドルを売ってドル債が1/2に向かって 下がっても何でもないとする余力がありました。日本やドイツがもつ ドル債も、現在の1/10以下でした。下がっても影響は小さかった。 現在は状況が違います。日本がもつドル債は1249兆円と大きい。これ が、円換算で1/2に下がると、日本は、外債の損からの金融危機にな ります。つまり、現在、日本には、プラザ合意のときように、ドルを 1/2に下げ、2倍の円高にする余力は、全くないのです。 ドイツの事情も日本に似ています。 ▼(3) 結論:つまり日本とドイツが、ドル債とドルを売って、円 とユーロを買う力はない。このため協調介入が必要な「プラザ合意」 は、画餅に終わります。仮に決めても実行できないということです。 以上のように、米国のノンバンクの危機は、 1)FRBのドル増刷で乗り切れば、期待インフレ率が上がってイン フレを加速させるので、実行できない。 2)対外債務を帳消しにする「第二のプラザ合意」も日本とドイツが 実行できない。日本とドイツ(ユーロ)が協調的なドル売りに参加し ない「第二のプラザ合意」は、無意味なものに終わります。 ■9.八方塞がりの、米国FRBの金融危機対策 米国ノンバンクの危機の救済は、過去の方法では八方塞がりです。救 済しないと恐慌です。 3つ目の方法は何か、FRBが、利上げのペースを落として、2023年 3月ころから、短期金利4.25%をピークにして、しばらく保ち、9月頃 から利下げに入ることです。 ◎つまりノンバンクの金融危機を、銀行のシステミックな危機までに は至らないよう「部分的危機」で収める方法です。インフレ対策とし ての、急速な利上げをやめることになります(FRBの金融政策の修 正)。 1)FRBは、高すぎる株価の下落は、想定しています。 2)しかし、ノンバンクの、レバレッジの金融危機までは予想してい ない。 ノンバンクからの金融危機が見えてくれば、危機をもたらした「FR Bの利上げ政策の修正(株価と国債価格下落政策の修正)」を行うで しょう。 事実、「2022年11月の利上げで限界に達した」という認識は、パウエ ルの微妙な言葉からは、覗えることです。日銀も、10月20日の150円 の円安を見て、金融政策の修正に含みを持たせ始めました。日銀と財 務省は130円くらいが妥当とみている感じです。 「FRBが利上げ限界を意識した」と市場が認識すると、先読みをし て織り込む金融市場は、売っている国債と株の買いにはいるかもしれ ない。この場合、2023年の金融危機はない(先送りされる)ことにな ります。 ドル/円も、150円が天井になって、FRBが利下げに入ると円は、 140円、130円に戻るかも知れない。 ◎一方で、世界のインフレは、長期化するでしょう。このなかで、仮 に2023年の春に、米国で金融危機の兆しが見えると、円高(110円 台)への回帰もあるかも知れません。 「見通しがつきにくい」情勢です。金融市場は、上がるにせよ下がる にせよ、「見通しがつかないこと」、言い換えればボラティリティ (VIX)の高さを嫌います。 S&P500のVIXは24.87%、株価下がっているIT株(GAFAM)のシェア が高いナスダックは、31.12%です(11月4日)。 ◎高かったアマゾンの株価は、年初が165ドル、現在は89ドル、54%で す。Googleも、140ドルから84ドル、60%です。 2022年1月に、勢いがある両社の株価の、この暴落を予想した人は、 世界に1人もいないかもしれない。市場は、未知の領域に進むことの 事例が、これです。 ボラティリティが20%以上のときは、変動幅が大きく、見通しがつき にくい。 (ボラティリティ) https://nikkei225jp.com/nasdaq/ 株式市場の価格は、 ・金利やGDPからのファンダメンタルズの理論(当方の論考がこれ です)ではなく、 ・数億人の今日の売買で決まるので、VIXは重要です。 2022年は確たる見通しのつかない投資家とファンドが、FRBの金融 政策に「右往左往、一喜一憂している状況」です。個人は手を出しに くい。 ◎FRBの方向は、谷越えの300mをワンオンすることのようにナ ローパスです。 ■10.FRBの22年12月の利上げと、2023年への方針から将来が分か る ◎FRBの12月の利上げと発言を見ると、2023年が占えるでしょう。 市場は0.5%と見ています。当方も0.5%と予想します。 【米国賃金の上昇率は5%から下がらない→2023年もインフレ】 2022年9月の求人数は1071万人(コロナ前の1.8倍)、史上最高の水準 です。失業率は3.7%と低く、賃金が上がるインフレを示しています。 米国の、インフレにならない自然失業率は5%くらいです。 教育・ヘルスケア(求人105万人)、レジャー・飲食(69万人)、ビ ジネスサービス(65万人)で多い。米国は「仕事だらけ」です。 賃金と家賃(特に帰属家賃=住宅価格が帰属家賃を決めます)が下が らないと、米国のコア物価は、2%台には下がりません。コア物価が 2%台に下がらないうちに、金融危機の恐れから、FRBは、2023年 には、3月から利下げをする可能性もあるのです。 その場合、米国インフレは長期化し、ドルレートが下がるでしょう。 逆に、円レートは上がります。 【後記:まぐまぐ大賞への投票のお願い】 2022年の「まぐまぐ大賞」の投票が始まったとの連絡が、ありました。 お手間を書けますが、投票は以下のサイトをクリックして行ってくだ さるようお願いします。書くことの、励ましになります。 【まぐまぐからの連絡】 ---------------------------------- まぐまぐ大賞の投票が始まりました。 是非下記ページより投票いただけますと幸いです https://www.mag2.com/m/P0000018 ---------------------------------- ※投票期間は12月6日(火)12時までとなります。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【ビジネス知識源無料版アンケート:感想は自由な内容で。 以下は、項目の目処です】 1.内容は、興味がもてますか? 2.理解は進みましたか? 3.疑問点、ご意見はありますか? 4.その他、感想、希望テーマ等 5.差し支えない範囲で、あなたの横顔情報があると、テーマ選択と 内容記述の際、より的確に書くための参考になります。 気軽に送信してください。感想やご意見は励みと参考になり、うれし く読んでいます。時間の関係で、返事や回答ができないときも、全部 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