CRM経営の本質を解く(4)
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 CRMシリーズ:CRM経営の本質を解く(創刊記念第4部)
       2001年9月25日:経営分野

 著者:Systems Research Ltd. chief consultant吉田繁治

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こんにちは、吉田繁治です。大規模テロを契機に、世界経済と国際
金融が非常時にはいりました。<非常>とは、予期せぬこと、危険
なことが起こり、即刻の対処が必要になるという意味です。重要な
ことは「即刻」の対処です。

間違えていけないことは、仮に、同時多発テロがおこらなくても、
国際金融と経済では、もともと2001年秋は<非常時>に突入す
る確率が高かったということです。

 <CRMシリーズ:CRM経営の本質を解く(創刊記念第4部)>

【目次】

1.時事状況の考察
2.根底の矛盾:富者と貧者の格差の拡大の怖さ
3.CRM経営の体系
4.ブランド・ロックイン
5.ブランドを理論化すれば
  (9月27日増刊号へ続く)

最初に、時事状況について、<(無料版)ビジネス知識源>で加え
た考察を、更に深化させます。米国赤字とバブル、そして世界の貧
困を見ます。

▼90年代後期

90年代後期(特に95年以降)は、
(1)物的な面では米国のIT・ネットワーク投資と個人消費のブ
ームが、世界、特に国の生産を引っ張り、
(2)金融の面では、強いドルと高い株が、西欧・中国・日本の資
金を吸引することによって、世界経済の成長を作ってきた。

米ドルが、(基底で)最も弱かったのは92年(財政赤字が最大の
36兆円:湾岸戦争の翌年)、
(1)これが97年にはほぼゼロになり、
(2)98年からは黒字に転じ、
(3)00年は40兆円の黒字になっていた。($1=120円換
算)

原因は、税率のアップではなく企業利益の増加です。80年代から
のサプライサイド・エコノミクス(規制緩和・減税)の勝利と言わ
れた。

アメリカの3大赤字(国家の赤字、貿易の赤字、企業の赤字)のう
ち、2つの赤字(国家の赤字と企業の赤字)が、解消した。
現ブッシュの父ブッシュは、92年の米国経済の最悪期に、クリン
トンに敗れたのです。ニュヨーク市が、税収不足で職員給与の支払
い不能、デフォルトに陥ったことは記憶されていますか?東京都が
デフォルトに陥っておなじようなことになったら、騒ぐでしょうね。

80年代末までは、過剰な軍事費で国家破産が言われた米国が、
(1)92年のS&Lの不良債権処理($16000億)の完了を
契機に、
(2)財政黒字を出すまで、企業業績がよくなったのですから驚き
です。振り返れば、IT景気は奇跡的だったと言ってもよい。

▼2000年からの反転

ところが、正確には99年、表面化は2000年に、舞台の「暗転」
が起こっていたのです。理由は、投資も消費も実力以上に「行き
過ぎていた」からです。ゴムが伸びすぎ切れる臨界すれすれになっ
ていた状態を想像すればよい。(そのため、クリントン路線の民主
党ゴアは敗れた)

(1)株高を背景にした過剰投資で、企業業績の低下が起こり、
(2)家計は貯蓄率をマイナスにして(長期は続けることのできな
い)無理な買い物をしていた。

こうしたところで、<経済原理>によって以下が起こった。

(1)米国のITとネットワーク投資は、5000ポイントを超え
たナスダックの株高、$1万を超えたダウの株高によるものだった。
(2)家計の旺盛な消費は、株高の資産効果から貯蓄率をマイナス
にし、カードローン(世帯平均80万円)に依存するものだった。

2000年からの米国経済の弱体化を見て、ドルに集まっていた世
界のマネーが、株の高所恐怖症にかかり、逃げる機会を狙っていた。
一勢に逃げれば損をします。気づかれないように逃げる必要がある。
米国は、海外からの借金が経済のアキレス腱です。
(日本は、国民からの政府の借金です)

ここで、62億人の世界経済の矛盾を見ます。90年代はどういう
時代だったか。今後どう向かうべきかを考察するためです。
これが、21世紀の最初の問題です。
((注)日本の21世紀は、2003年から明るくなります。早け
れば2002年秋からです)

■2.根底の矛盾:富者と貧者の格差の拡大の怖さ

【根底の矛盾】
世界の根底では、90年代に大きな変化が起こっていた。
それが、<富と貧の格差拡大>です。

【富国と貧国、富者と貧者】
(1)グローバル経済、グローバル金融が、富国と貧国の差を年々
大きくしていた。(東アジアのみが、工業化でこれから脱出)
(2)同時に、富国の内部、貧国の内部でも、富者と貧者の格差が
大きくなっていた。勝ち組、負け組みと言われる現象です。

【富の集中の危険性】
富の一極集中は、経済全体にとっては、危険です。
(富者も過度の富の集中があると、最後はそれを失うのです)
理由を示します。

経済全体では、〔総所得=(商品+サービス)供給・生産量=(商
品+サービス)需要・消費量〕という恒等式がマクロ経済で「長期
的には」成立する。

▼需要不足(=供給超過)と、過剰投資と投機が同時に起こる

ここで富の集中(所得の集中=購買力の集中)が起こると、富を得
た人が、生産された商品とサービスの全量を購買できなくなる。

「一部の人がその年に消費できる量」には限りがあるからです。た
とえばビル・ゲーツは、個人所得分を、その年には使いきれない。
使いきれなければ、余る。ビル・ゲーツ一人だけではなく、人口の
5%が富者になり、他は所得が伸びない状況(米国)ではどうか?

富を得た人は、消費分の残りを、多額の金融資産や株としてもつこ
とになる。その金融資産や株が、持たざる人に万遍なく融資され、
投資されれば、余剰生産物も購買されて、経済は正常に回る。

しかし、そうはならない。

金融や投資の向かう先は、「富者間でのやりとり=金融資産の増加
=裏では負債の増加」になるのです。
そうなると、「実質」金利は下がり、一部への投資集中で、株は上
がる。上がれば、他国からのマネーも庶民マネー(米国の401K)
も「儲けの機会に遅れまい」とバンド・ワゴン効果でそこに殺到
する。

これが、金融資産と株をさらに膨らませる。バブル現象です。この
極点が、米国の99年末だった。直接金融の米国のバブルは、土地
が中心だった間接金融の日本とは異なり、株中心です。

【終着点】
こうした「自己強化=ポジティブ・フィードバック(正帰還):ジ
ョージ・ソロス」の行き着くところはどこか? 

正帰還では、スピーカーから出た音が、マイクに拾われてアンプで
増幅され、最後は最大出力の大音響になる。

バブル現象では以下の「3色のモザイク経済」が同時に発生する。
(1)一般消費財は、供給過剰になるから、価格は上昇せず、むし
ろ実質的に下がる。
(2)一部の株と土地は、非合理に上がる。
(3)不要不急の贅沢品消費は、増える。

そうして最後は、はじける。ギャーという正帰還の大音響でアンプ
とスピーカーが負担に耐えきれず、壊れるのです。

はじけ方を激しくさせず、ソフトランディングさせるためのボリュ
ームの調整役が、FRBのグリーンスパンでした。過去形で言うの
は、彼の神通力は、99年で消えたからです。マネーの世界は、心
理です。心理では<神話>が効果をもつ。今のグリーンスパンは抜
け殻のただのオジサンです。

グリーンスパンは、日本のバブル崩壊の過程を研究し、米国のバブ
ルが崩壊に至らないように細心の注意を払ってマネー政策を運用し
ていた。名議長、影の大統領と言われた。マネーの祭祀、ローマ法
王でした。中央銀行総裁は、<シンボリックな幻想権力>を持つの
です。

速水総裁には、まるでありませんね。

▼米国経済の2001年秋という臨界点

米国経済の2001年は、そんな時期だった。国際金融は、秋に、
毎年調整をします。夏休みのリゾートで新年度戦略を立てるのです。

今回のことが起こった根底の矛盾は、<富の過度の集中>です。

適度な集中は成功を生み、成功への意欲を活性化させる。

【ブレーク的話題】
これがアメリカンドリームです。スポーツが人気を博するのは理由
がある。単純化したルールで、優劣を競い、勝者と敗者、富者と貧
者を峻別するからです。現実世界では、ルールは複雑で、ルール破
りがあってフラストレーションを感じている。だから、人為的な仮
想世界のスポーツに人気が出る。

ルールを自分で決めれば、ゴルフで72ホールを18打であがるこ
ともできる。打った後、手で持ってホールに入れればいい。それが、
なんでもありの、コロンブスの卵の現実世界です。やっても面白
くはないけれど。敢えて言うのは、これがビジネス発想の根源だか
らです。

(重要)ビジネスは、他の人が気がつかないプロセスのルールを変
えて、結果を得ることです。現実世界では、すべてのルールが変更
できる。

しかし過度の集中は、経済全体を破壊に向かわせるのです。
別の名詞では、この破壊現象を「恐慌」と呼んでいます。

米国と西側経済の2001年秋は、他国からマネーを集めた米国一
極集中の繁栄という世界経済の矛盾が、修正されようとする時期だ
った。

▼貧者からの破壊的攻撃

【貧者からの攻撃】
まさに経済原理での、収縮が起ころうとする9月11日、「貧者か
らの攻撃=テロ」が起こった。世界貿易センターが、グローバル経
済と国際金融の「メッカ」であったことを思い起こすべきです。

テロそのものは、世界各地で毎年一回、大きなものが起こっていた
のです。しかし、9月11日のものは、世界史的なものだった。私
は、不遜にも、世界貿易センターの崩壊をTVで見て瞬間に<神の
シナリオが、あまり露骨に、できすぎている・・・>と感じたので
す。

【過激派のアルカイダ】
テロは、理由と目的が何であれ、卑劣な犯罪です。それが多発して
いた背景には、富の一極集中と、貧困の蔓延(まんえん)があるの
です。ビンラディンが関与していると言われる大規模テロだけでも、
1993年から2000年まで、8回も起こっている。

彼が率いる「アルカイダ」の組織には5000人の軍事訓練を受け
た、死を神の国、アラーにいたると信仰する過激派がいる。彼らは
現世を仮のものと教えこまれている。テロを、神の命を受け、死ん
だ気でやって本当に死ぬ。(ビンラディン個人は、300億~50
0億円の資金をもつとされる富者であり、過激派のスポンサーです)

(参考)
イスラム原理主義の過激派は、アルカイダとの間に「ユダヤと十字
軍打倒の国際イスラム戦線」を張る組織だけでも、5つもある。
・エジプトのイスラム集団(97年のルクソール乱射事件)
・同じくエジプトのアル・ジハード(81年のサダト大統領暗殺)
・カシミールのハラカット-ウル・アンサール
・パキスタンのジャミアトゥル・ウレマ・イ・パキスタン
・バングラデッシュにハラカト・ウル・ジハード

【希望のない国】
貧困だった中国・東南アジア・東欧は、今は工業化に希望を持って
いる。アフリカ・中東・中央アジアは、工業化はできす、貧困と悲
惨に喘いでいる。将来の希望はどこにあるのか。希望がなくても、
国民は平穏に暮らせ、政治的統治ができるのか。出口のない貧は、
やはり絶望ではないか。

【怨嗟(えんさ)が生むテロ】
テロは、貧困の側からの富者への怨嗟(えんさ)から生まれます。
一時的にはテロを武力・軍事で制圧できても、原因がなくならなけ
れば、入れ替わりで続くのです。

【国家単位では】
19世紀の原始的資本主義が、資本家に富を集中させ、大多数を貧
困に追いやって、繰り返し恐慌を起こすことから、二つの思潮が生
まれた。人類の知恵です。(いまは恐慌は、波が穏やかになって、
<ビジネスサイクル>といわれます)

そのひとつがマルクス主義です。もう一つが修正資本主義(混合経
済・新古典派総合)です。西側世界は、修正資本主義の福祉国家に
よって、国内の貧困や失業は避けてきた。それによって、経済と国
家、人心の安定を保ったのです。

【西側の外部世界】
ところが、西側の外部世界では、国家単位での貧困が続いていた。

特に、中東、中央アジア、およびアフリカではこれが激しい。
いずれも、絶え間ないテロ・紛争・殺人・略奪・レイプ・餓死・病
が日常化している地域です。

【問題の本質を見据えてください】
中東、中央アジア問題の本質は、貧困です。宗教的なものは、主義
を正当化するための支えです。豊かになる方向が見えれば、宗教的
な信条は深く残っても、暴力を使い他を攻撃することはない。
エラスムスが説いた<宗教的寛容>に向かうのです。

西側世界が、「テロ組織への新しい戦争」の終結点で、そうした方
向を準備できるかどうか。迂遠(うえん)なようでも、テロ対策は、
そこにしかない。これを、明瞭に記憶しておいてください。

中東、中央アジア、アフリカの人々の生活を改善する方向を設定し
なければ、<西側世界は、大規模テロの恐怖を内在させながら、生
きる>ことになる。一方、改善の方向を設定することは、絶望を希
望に向かわせる。

▼大量殺戮兵器の拡散という新事態

ソ連崩壊後、管理のずさんさで核兵器の拡散が起こり、兵器の密売
があり、国際条約では禁止している生物兵器の開発・備蓄が行われ
ていることは知られている。ソ連軍幹部が、給与遅配で生活に困っ
て核と兵器を、無差別に売ったのです。

貧困と怨嗟、絶望を放置すれば、世界は、テロの不安から逃れるこ
とはできない。

見えない敵、テロ集団の入国は、国境で阻止はできない。外科手術
(戦争)で除去はできない。内科治療が必要なのです。

ピッツバーグのボーイング機墜落(撃墜?)では、実は原発が狙わ
れていたとの報道もある。核兵器を持たなくても、自爆をいとわな
いテロリストがいれば、原発が核兵器になるのがテロの怖さです。

事実上、今、先進国世界に安全な場所はないのです。日本人は、そ
のことを認識すべきです。今回の事件はアメリカのことだけではな
い。

【新しい戦争と防衛】
国家単位での紛争解決や、戦争を前提としてきた従来の軍備では、
街に忍び込み普通の生活をする、過激派テロ集団からの攻撃を防ぐ
ことはできない。大規模な破壊が起こった後に、犯人を処罰するだ
けです。

【危機不感症の日本人】
日本では、オーム真理教による地下鉄サリン事件という「新しい」
テロの攻撃を受けつつも、それを風俗的なものとして流し、市民生
活の内部の危機と捉える姿勢はなかった。本能を失った、知的驕慢
です。

サリンが実際に使われたことに、世界は驚愕したのに。

日本では危機の意識が、欠落していた。米国が、地下鉄サリン事件
のあと、サリン対策を準備した対応とは違いがある。(オーム真理
教問題は、教義上は、貧困からではなく歪んだ豊かさへの疑問から
来ていますが)

ロンドンのシティの金融街、パリ、フランフルトで、恐怖に駆られ
ている人が多数います。比較して東京の無防備さ、人々の危機への
不感症は、対策のなさはいかんともし難い。国会論議ののどかさ・
・・

▼アラブの閉塞を象徴する、サウジの貧困化

われわれは、アラブ諸国も、12億人(世界人口の19%)が信仰
するイスラム教も知らない。イスラム原理主義が、何であるかにつ
いても、無知です。

イスラム教の過激派、原理主義は12億人の1%、1200万人は
いると言われます。(イスラムの大多数は穏健派です)

以下、アラブ諸国では、最も豊かなサウジの状況を、簡単にまとめ
ます。
これで、アラブの90年代の状況と、人のこころがわかるはずです。

【豊かさからの転落】
(1)1973年と1980年の2回の原油高騰で、サウジ(王家)
は富者になり、世界の不動産・債権を買い占めた。NYのプラザ
ホテルはアラブが所有しています。
石油収入で福祉を充実させ、国は富んだ。サウジは日本を目標にし
た。
(1980年の一人当たりGDPは$1.5万)

(2)1986年から、原油価格が暴落した。
財政は大幅赤字になり、福祉はカットせざるを得ない。
ところが人口は、1983年の1千万にから98年には2千万人を
突破、2010年には3千万人になる。現在、失業率は20%を超
えている。一人当たりGDPは、7千ドルに低下した。

日本で、個人所得が今の半分になれば、社会はどうなるでしょう。
容易にわかります。

【暴動の閾値】
失業率の20%という数字は、社会不安や暴動が起こる閾(しきい)
値です。紛争だらけで、カントリーリスクが高いため、中国のよ
うな、外資の投資もない。原油生産と精製以外の産業はない。

90年代になって、イスラム原理主義の活動が激しくなった背景に
は、アラブ諸国の貧国化がある。アフリカとは違い、過去の豊かさ
を知っているだけに、「西側諸国、その代表の米国」から不当な搾
取を受けているとの意識が強くなるのです。

日本も、中国の工業化で給料が半分になって、失業率が20%なら、
どんなことが起こるか、想像できます。強盗、略奪、暴動そして
テロです。(東南アジアの97年に起こり、ロシアの90年に起こ
った)

【過激派】
そうして、グローバル資本主義に反対する、日本主義=国粋主義の
過激派が、活躍することになる。
これが、アラブの国粋主義であるイスラム原理主義です。
宗教的な主義には妥協点はない。しかし、神もマネーには妥協する。
昔から、マネーを最もほしがるのが神でしたね。他人には喜捨と
かお布施と言いながら、それをかき集めるのが祭司(笑)

【最終ソリューション】
最終的に、どんな解決法があるのか。
西側の豊かさの必要コストとして原油価格を上げ、徹底した経済援
助を行うことでしょう。それによって、過激派の活動は、抑えられ
ます。豊かさは、穏健派を作るのです。

日本が活躍する場面は、そこです。唯一と言ってよい。
アラブは、キリスト教でない日本人に親近感を持っている。

繰り返しますが、迂遠(うえん)でも、この方法しかない。中国が
軍事的な過激派でなくなるためにも、北朝鮮、ロシアでも同じです。
多くの人を貧困のなかに、孤立させてはいけない。

東南アジアの工業化は、モノづくりの技術で日本人が行ったのです。
日本人は、そうした、パワーを持つ。国内は若い人に任せ、団塊の
世代が、声をあげて、世界の工業化に活躍すべきでしょう。国内で
は、あまっているのですから。

もし、それができなければ、西側世界は、内在する大規模テロの恐
怖と暮らすことになる。今後は、核と生物兵器が予想される。テロ
も、同じ方法はとらないのです。

米国政府、ブッシュ大統領とそのスタッフが、早く以上のことに気
がつくことを願います。経済発展がいつも妙薬です。テロは軍で抑
えることはできないのです。日本人が貢献できる部分は大きいので
す。

NYでは、テロに負けず「日常生活と、仕事を取り戻そう」との機運
が強くなりつつあるようです。衝撃に負けることは、テロリストに
負けること。癌をかかえ、適切な危機処理をするジュリアーニ市長、
プロファッショナルの倫理をもち、自己犠牲をいとわない消防士
は、街の英雄になった。

「自分が死んだ後、子供たちが、父はこんな人だったと誇りに思え
る仕事をしたい」Iproud of you.・・・人間がもつ言葉の中で、も
っとも輝やく価値に思えます。

600万トンと言われる瓦礫と戦いながら、多くの人が、こうした
言葉をつぶやいているはずです。

人々は、信じるに足ります。不信には不信を、信には信を返す、そ
う思います。最初に信を投げるほうが、最後は勝ちです。CRM経
営、リーダシップ経営の精神の、精華の部分です。

以上、時事状況の考察が、多少長くなりました。
いまとても、大切なことですから。
ここで、コーヒーブレーク。

次項から、<CRM経営の本質を解く(第4部)>です。

■3.CRM経営の体系

以下、顧客と長期的な、深く、幅が広い長期的な関係を築くことを
主眼とするCRM経営の体系を示します。

【カスタマー・エクイティ公式】

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
カスタマー・エクイティ(=LTV総額)=全体需要×「顧客数シェ
ア率」×「個客シェア率」×{1÷(1-継続購買率)}
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【基本戦略3項】

1.顧客数シェア率を上げること=新規顧客の獲得対策
2.個客シェア率を上げること=逸失売上の獲得対策
3.継続購買率を上げロック・インック・イン(Lock-in)対策

【「個客」シェアをめぐる6項】

 1.ライフ・ステージ・マーケットからのとりこぼしがある
 2.アップ・セリング・マーケットからのとりこぼしがある
 3.クロス・セリング・マーケットからのとりこぼしがある
 4.アフター・セリング・マーケットからのとりこぼしがある
 5.顧客と企業の相互学習マーケットからの取りこぼしがある
 6.顧客の紹介利益効果の取りこぼしがある

【継続購買率を上げる基本7項】

1.親密さによるロック・イン
2.メンバーシップ・ロック・イン
 2.1 会員制ロックロック・インン2.2 ポイント制(ポイ
ントカード)
3.便利さによるロック・イン
 3.1 ワンストップ型
 3.2 継続補充型
4.ブランド・ロックイン
5.学習によるロック・イン
 5.1 学習プラス
 5.2 ベンチマーク・ラーンニング
 5.3 ラーニング・プロポジション
 5.4 ラーニング・アウトソース
6.コミュニティ・ロックイン
 6.1 プロトコル連鎖型
 6.2 ノンプロコル型
7.シリーズロックイン
 7.1 シリーズ型
 7.2 ステップアップ型

本号では、4.の「ブランド・ロックイン:Brand Lock-in」から解
説します。

■4.ブランド・ロックイン

まず問題は、ブランドとはなにか?です。日常用語の有名ブランド
のイメージに引きずられると間違えます。みんな、ブランドをむず
かしく考えすぎていますね。大手広告会社の戦略でしょうか?

【ブランドの単純な定義】
顧客が、他の会社、他の商品、他のサービスと違うことを感知する、
優れた差異的な価値。

▼言葉と商品ストーリー

要は<認識され言葉になる違い>です。

ソニーと松下のPCは機能も価格も変わらない。
しかし、顧客が受け取るブランド価値は違います。
日産とトヨタも変わらない。ブランド価値は違う。
三越と高島屋で売っているのは同じメーカーの商品。
でもブランド価値には違いがある。

【曰く、の大切さ】
最近、お中元やお歳暮などで、「曰(いわ)く」のあるものを受け
取ることが増えました。単なる醤油や日本酒ではない。

A4の紙に、醸造元が書いたであろう効能書きと、醤油や日本酒へ
の<想い>が感知されます。読むと作っている現場が、見える感じ
になる。

実際に使ってみて、その効能書き通りであるかどうか、わかりませ
ん。言われれば、何か微妙に違うような感じはある。

時に、あっ、効能書き通りの価値だ、と思えるものがある。そうす
ると、送ってきたものがなくなったとき、電話して注文したり、イ
ンターネット通販などを利用します。

これが、ブランド・ロックインされた状態です。ブランド作りには、
「言葉とストーリー」がなければならない。重要なことはストリ
ー(物語)です。

▼行動綱領が、店舗ブランドに

前に挙げた、米国、零細食品スーパーのステュー・レオナルド。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【社是】
規則1:お客様は、どんなときも、正しい。
規則2:万一お客様が悪く思えることがあれば、規則1を読みなお
せ。
【ミッションステートメント】
われわれの使命は、お客様のしあわせを生むことである。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

これが、店舗としての、「ブランド」でありつつ、社員に行動規範
を示し、同時にトップが繰り返し確認する人間観です。
来店した顧客は、玄関の石に刻まれた、
Rule1:Customer is always right.
Rule2:If customer is ever wrong, reread Rule 1.
によって、鮮烈なメッセージを受け取り、心に焼き付ける。

ここまで見事には、いきませんが、近づくことはできますね。

▼大切なこと

もちろんその内容がなければ、逆効果です。ここからが重要なこと
ですが「内容ができてから、掲げる」のではなく、実際的には、
「内容がないうちに、目標を示す」ことがきっかけになるのです。そ
の目標に向かって、努める姿勢を顧客は評価する。

一所懸命がんばっている感じに、顧客は打たれます。
ブランドは、会社の姿勢と心を伝えることでもある。

▼掲げよ!

ボロボロの町工場が、「世界ナンバーワンの、どこにもない<刃物
>の品質を目指す」などと看板に掲げると、事業ロマンが生まれま
す。
こういう会社、好きです。ソニーが町工場のとき、そうだったので
す。

大分県の一村一品も同じ方法ですね。一品で世界ナンバーワンを目
指した。農では、ナンバーワンになりやすい。農林省と農協が標準
品質で、農業をダメにしましたから。実は、規制産業ほど、機会が
大きい。クロネコヤマトが最初に戦ったのは、日通や国鉄のサービ
スの悪い輸配送でしたね。

米国の店舗、会社には、「われわれのミッション」を、店舗内、社
内のいたるところに掲げているお店が多い。他との、<店舗ブラン
ド>の違いを懸命に出そうとしているのです。

テキサス州の、金物(英語ではHard Ware)の物流センターで、玄関
の泥落としの敷物に、書いてあるのが<Customer Service is our Mission:顧客へのお役立ちがわれわれの天命>でした。靴で踏むの が、はばかられ、デジカメで写真を撮りました。 「世界のどこよりも、大切に洗い、ボタン一個も大切にお届けしま す」と、看板に大きく掲げるクリーニング屋さん、いいですね。そ のご主人の<こころ意気>に対して、洗濯物を出したくなる。費用 はゼロです。 掲げたほうが、勝ちです。最近出すYシャツの、ボタンが割れてい ることが多いものですから。それと、黒の綿や絹のYシャツは、変 にアイロンをかけるとすぐテカテカになる。 そうでない洗濯屋さんに、出したくなります。 ブランドは「顧客にとっての価値の違いをつくる」という意思から 始まるのです。顧客は、横並びでどこも同じ、実際はどこを選ぶか 困っている。 ▼細部を! 商品、サービス、応対の細部を、徹底して、1項目ずつ見直しませ んか?ブランド作りは、何億円もかけ電通に頼むようなことではな いのです。「世界一」って、結構そばにあるのです。 大切なことは、世界一になろうとする志です。そして、<違いを言 葉にする>ことです。それが、ブランド作り。 ▼世界一安い! そういえば、近所の家電のコジマは、毎回のチラシで「世界一安い !」とうたっています。これがコジマの店舗ブランドアイデンティ ティ(存在証明)です。 本当に世界一やすいのかどうか、安くしようとする精神でしょう。 コジマを短期間でナンバーワンにしたエネルギーの根源です。今度、 世界一安くない商品を探して、社員に言ってみましょうか(笑) そのときの現場の対応で<ホンモノ>の会社かどうか、わかります。 社長でなくていいのです。社是は、現場に現れたとき、ホンモノ になるからです。ダイエーは、現場が堕落していた。 実は、今使っているPCは、約30万円で2週ほど前、コジマで買 いました。店員の説明は、しっかりしていました。愛用だったGate- wayが突然、アジア・日本の支社を閉鎖したので、どこにしようか迷 っていたのです。WindowsPCでは、はじめての国産メーカー製品で す。 【蛇足的説明】 電化製品やPCを買うと、(ブランドを作ろうとする)パンフレッ トの立派さにくらべて、使用説明書のお粗末さが、目につきます。 長期間、大切に保存して参照するはずのマニュアルなのに、紙質も 印刷も劣悪。経験があるはずです。会社の精神の貧困が見えるよう でがっかりします。家電企業のトップは、考えなおすべきですね。 これは、買うまでが顧客、買った後は顧客ではない、との企業側の 意識からきています。差別化するには、使用説明書を充実させるこ とです。機能が横並びであるだけに、効果的な差異化になる。コス トダウンすべきでないところを、コストダウンしてはいけない。 今の顧客は、家電商品を、何回も買い換えた客です。 買った後から、リレーションを作りたがる「個客」になるのです。 そのとき逃げる会社が多い。リレーションシップのなんたるかに、 洞察がないのです。こうした会社は、次第に危なくなる。 さて、<ブランド>という言葉に恐れはなくなったでしょうか。 ■5.ブランドを理論化すれば ブランドについて頭がほぐれたところで、若干理論的な解説をしま す。 ブランド価値(ブランドエクイティとも言います)を最初に、現代 的な体系として示したのは、カリフォルニア大学バークレー校のデ ビッド・アーカー教授(Managing Brand Equity『邦訳:ブランドエ クイティ戦略』ダイアモンド社:1991)です。 彼はブランドが、企業の価値つまり、総資産で重要な「無形資産」 の位置を占めることを明らかにし、その維持と強化を、体系化した。 ▼ブランド価値の体系 以下、ブランド価値の体系を、ブランド・ロイヤルティ、ブランド 認知、知覚品質、ブランド連想の順に、わかりやすくして示します。 (1)ブランド・ロイヤルティ ある会社、商品、サービスが顧客の<期待を満足>させることを通 じて、他の商品やサービスへ変えることの抵抗(スイッチング・コ スト、またはリスク)を生む状態に至っていることです。 あの商品なら安心、品質、性能がいい、あの会社のものなら失敗は ないと言われる状態ですね。 こうしたブランド・ロイヤルティができると、広告費、販売費を含 むマーケティングのコストが減少する。したがって、競争商品に対 して、利益が出る状態になる。これをブランド・ロイヤルティの価 値といいます。トヨタの車なら、故障がないというようなことです。 私の家の英国車、オンボロ・ローバーは、ほんとうによく壊れます。 トヨタの時は、5年間一回も故障がなかった。 こうなると、ローバーは、やはり客が離れますね。(笑) (2)ブランド認知 ブランド認知とは、たとえば、大切なお客様との食事という生活場 面(専門的には、生活カテゴリーといいます)に、**レストラン がいいとぴたりとはまることを、顧客が認めた状態を言います。 つまり、生活場面と、商品名、会社名がぴたりと結びついた状態で す。 500円でお腹をいっぱいにするなら**屋の牛丼、というもの顧 客のブランド認知が明確ですね。 家電を安く買うなら****、大切な人とデートするなら***、 結婚式なら***も同じです。 (3)知覚品質 知覚品質とは、顧客がわかる品質、価格差、性能差、機能差という 意味です。重要なことは、顧客がわかることですね。会社の自己満 足ではいけない。 ここで大切なことは、なにが品質差か、価格差か、性能差か、機能 差か、顧客にわかるような説明があること、または、一見してそれ が感知されることです。 ここで、商品ストーリー(物語)を作ってもいい。競争商品、有力 商品との、比較採点です。 (4)ブランド連想 その商品、会社名からかもし出されるプラスイメージです。たとえ ばディズニーランドというと、エンターテインメントの明確なプラ スイメージがある。ハリウッド映画と言ってもそうですね。 ダイエーと言ったとき、どんなプラスイメージがあるか、吉野家は どうか、マクドナルドはどうか、コカ・コーラはどうか、考えてみ るといいでしょう。大部分の顧客が共有する、総合的な印象です。 以上、ブランド作りの順序として、〔知覚品質→ブランド認知→ブ ラド連想→ブランド・ロイヤルティ〕と進むと、ブランド・エクイ ティができあがります。 ブランド・ロイヤルルティまで進めば、顧客のリピートが増え、さ らにそれが顧客を呼び、少ないコストで、利益が出る状態になる。 ▼実践化するための5つの問い 以上を、より実践的に、商品(開発)戦略、サービス(開発)戦略 にするには、以下の4項の、<ブランドチェック>が役に立ちます。 (1)顧客に、はっきりと違いをわかってもらう〔とんがり〕があ るか?(重要) (2)顧客の感情、情緒に訴えることができるか? (3)機能、性能、品質、価格で、はっきりとした違いがあるか? (4)いつも、同じ約束を果たせているか?(重要) (5)顧客の期待を上回る点が、どこにあるか? (以上5項は、『ブランドマインドセット』デューン・E・ナップ :翔泳社の記述に、吉田が翻案、付加したものです) さて、ここで、<CRMシリーズ:CRM経営の本質を解く(創刊 記念第4部)>を終わります。 21世紀の、重要なキーワードは、他と違うこと、<差異化>です。 横並びの時代は、1980年代で、完全に終わった。ここが、日 本の産業に等しく弱い部分ですね。その差異を作るとき、ブランド の概念が導きになるのです。 ブランドによるロック・インは、もっと深い部分があります。それ については、次回に譲ります。次回は、増刊号として、9月27日 に送ります。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【ビジネス知識源プレミアム読者アンケート】 1.テーマと内容は興味が持てるか? 2.理解は進んだか? 3.疑問点や質問点は? 4.その他、感想等 5.差し支えない範囲で読者の横顔情報があると助かります。 コピーして、メールに貼りつけ、記入の上送信してください。 ※本マガジンの、「購読サンプル」としての、友人・知人・同僚・ 部下・上司・取引先への転送は、自由におこなってください。 立ち読みしないと、本は買えないですよね。(笑) 今日は、私の誕生日でした。 ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□  送付先:   yoshida@cool-knowledge.com
 著者: 吉田繁治  systems research ltd.
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