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ビジネス知識源プレミアム(有料版)Vol.3
CRMシリーズ:CRM経営の本質を解く(創刊記念第3部)
2001年9月18日:経営分野
著者へのひとことメール yoshida@cool-knowledge.com
著者:Systems Research Ltd. chief consultant吉田繁治
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こんにちは、吉田繁治です。世界貿易センター崩壊から7日、月曜
日(9月17日)から、NYSE(ニューヨーク証券取引所)が再開
されます。
日本時間で午後10時ころです。注目に値します。
CRMシリーズ:CRM経営の本質を解く(創刊記念第3部)
【目次】
1.今週の感想
2.今週の時事情勢の考察
3.前号の要点の確認から
4.ロック・インの戦略
5.親密さのロック・イン
6.メンバーシップ・ロック・イン
7.便利さのロック・イン
(注)本稿は「MS明朝」の「等幅フォント」で読んで下さい。
IEでは、〔表示〕→〔文字のサイズ〕→〔等幅〕
(プロポーショナルでは、一部、表示が乱れます)
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■1.今週の感想
▼ マネーのスイッチが入った
グリーンスパンのFRB(連邦準備制度理事会)は、恐慌的な暴落
を回避するための、ドルの輪転機のスイッチをいれ、準備していま
す。
ロンドン、フランクフルト、パリ、香港、シンガポール、東京の金
融関係者の全員が固唾を呑んで見守っています。株と債権の暴落は
回避できるのか、ということが焦点です。
テロの規模の大きさ、波及、今後の歴史に与える衝撃で前代未聞の
人類史的な事件です。長期的な影響は予測できますが、短期での、
ショック的な動きは予測の域を超えます。
当面、<何でも起こり得る>との覚悟が必要です。
▼こうしたときこそ<人類の知恵>を信じよう
私は、人類の知恵と善のパワーを信じています。これは、理性から
ではない。プロセスで二転三転があっても、最後はいい方向に向か
う。向かわせなければならないということです。
【想い浮かべること】
『チップス先生、さようなら』という英国の小説があります。
第二次世界大戦中で、教室の外は、ナチスの攻撃。定年間近の、冴
えない風貌のチップス先生は、授業中に妻の死を知らされます。
かすかに表情が歪みますが、何事も起こってないかのように、生徒
があまり興味を持たないラテン語の文法の授業を静かに続けます。
ある日、退職の記念授業を終え、わずかな私物をまとめ校門を出よ
うとするチップス先生に、生徒達は感謝を込め<Good Bye Mr. Chi-
ps!、あなたのおかげで、人生でいちばん大切なことがなんである
かを知りました>と言います。
チップス先生の、いままでの態度が、家族と生徒と学問への信頼と
愛情からきたものだと察知したのです。自分たちが、かけがえのな
い教育を受けていたことに、生徒達は気がつく。
チップス先生は、声を掛けられ一瞬驚き、涙でぐちゃぐちゃになり
そうな顔で微笑み、見送る生徒達に手を振って、背中を丸め学校を
あとにします。
大学の時、英語の授業で読みました。これを教科書に選んだ英語学
教師も、発音が下手で不器用な印象を与える、髪の薄い定年間近な
人だった。数冊の英語辞書を編纂していたことは、あとで知りまし
た。
今日も、倒壊したビルに閉じ込められ行方不明の親族をかかえなが
ら、ニューヨークのどこかの教室で、こんな風景があるはずです。
米国は、悲しみに沈んでいるだけではありません。何が、人間とし
て立派な態度か考え、行動している多くのひとがいる。
危機は、人間を作るのです。日本人には危機意識の不足があります。
【近い記憶】
日本人は、原因も様態も違いますが、1995年1月17日の阪神淡路大震
災の経験をもちます。(私にとっては、身近なことでした)
木造のアパートが倒壊し、火が迫る瓦礫に閉じ込められ、助けよう
とする孫に「お前は、まだ先がある。自分のことは、もういいから
焼かれないように早く逃げなさい」と言って死んでいった老婆が
いた。孫は、おばあちゃんの記憶を閉じ込めながら生きている。
倒壊し、今も5千人、あるいはそれ以上が閉じ込められる世界貿易セ
ンターの瓦礫と、救助活動でのなかで壮絶な自己犠牲の行動と、多
くの焼きついた記憶があるはずです。
大震災ときの、自発的な支援の活動は、自己利益のみではない新し
い日本人の誕生を示した。今、ニューヨークでも、全米でも、そし
て世界でNPOを含むボランティア活動が拡大しています。
自己犠牲をいとわない、多くの人が生まれるでしょう。
ギリギリの場面で、人間は真価を問われる。
そうしたひとが、21世紀をつくる。
日常生活は重要です。丁寧に、心を込めて、一隅の日常をおくるこ
とです。人生は、細部です。大問題だけが、人生ではない。
▼メッセージ
CRM経営の、創刊記念第3号です。
こんなときこそ、最初に、以上のメッセージを伝えたかったのです。
CRM経営は技術である前に、こころであり、人間への、愛情と人
間性への信頼をベースにするものだからです。
90年代の米国は、ビジネスの面で、80年代までの米国とは違う
ところがあると感じていました。
【精神の共通性】
サプライチェーン・マネジメント(SCM)は、Win-Winの共生の思
想をベースにするものです。
リーダシップ論は、人間はいい仕事をしようとし、自己成長を生き
甲斐にしているとの前提で、専門的技術の役割分担をする「協働の
思想」がベースです。性悪説が前提の、過去の管理発想とはちがい
ます。
CRM経営も、技術である前に、顧客と従業員を信頼すること、顧
客の生活に愛情をもち、生活改善を支えようとすることが、ベース
になる。
こうした精神をぬきにした、マニュアル的な表面のテクニックでは
活きないのです。なぜなら、〔場〕が多様だからです。
■2.今週の時事情勢の解析
▼マイカルの会社更生法
予測されていたことですが、マイカルが会社更生法を申請しました。
負債総額は、1兆7428億円。従業員6万人。
直接には今週必要な400億円の決済資金の手当てのめどがつかな
いことが引き金です。400億円が融資されれば、蘇ったかという
とそうではない。
▼本質は<そごう>と同じ
この倒産は、そごうの倒産に類似するものです。神奈川県本牧や小
樽に見られるような過剰投資です。構造赤字になる〔資産―負債〕
構造だった。負債カットの徳政令がない限り、存続はできなかった。
3つの新しいメッセージが読み取れます。
(1)大手銀行が、株価下落と、不良債権増加で必要資金を負担す
る自己資本の体力を喪失したということです。
2001年9月以降、銀行の態度が、正常な融資活動を続けるもの
ではなくなったという認識をもって、経営にあたる必要があります。
年間決算での時価主義会計が始まる2002年3月期決算までの半
年は、そうした時期です。01年9月期は、時価主義での中間決算
の、日本企業最初の経験です。
(2)二番目に、マイカルの主力領域であった、衣料・アパレル部
門で、商品調達の構造が、競争不適合になっていたということです。
〔メーカー~問屋~店舗〕の商品調達・流通構造の変化です。
これについては、詳細な別稿を書く必要がありますね。
(3)3番目に、米国・西欧のグローバル小売業は、倒産前支援の
M&A(併合・買収)ではなく、「倒産後買収」の戦略をとるとい
うことです。
マイカルと提携したウォル・マートは、以前から指摘していたよう
に自己出店ではなく買収戦略です。ここで私の予測が実証されまし
た。
【なぜ、倒産後の提携、M&Aになるのか】
日本の地価、株価が十分に下がっていず、隠れ負債もあって、経営
を続けている時の買収価格が「収益還元法価格」よりまだ高いとい
うことを示すメッセージです。
実際は、複雑な計算をしますが、その本質を単純化して示します。
▼事例計算
<収益還元法価格=買収後の想定利益÷(想定金利+リスクプレミア
ム)>
買収後の想定利益(税引後利益)が年平均で150億円とします。
長期での想定金利を、年率で4%とします。
リスクプレミアムとは、経営後に予測される150億円の税後利益をあ
げることができないことのリスクの見積もりを付加することです。
仮に、3ポイントとします。
収益還元価格=150億円÷(4%+3%)=2143億円=買収価格
【収益還元価格が示す本質】
売上が仮に1兆円でも、予想税引後利益が150億円(売上比1.5%:税
前利益300億円)なら、2143億円の買収価値しかないということです。
極端に言えば、店舗として使う限りは、敷地の地価がいくらである
かは無関係です。(土地を売却整理すれば、地価が関係します)
マイカルのように1兆7000億円の負債をもっていても、無関係です。
返済ができるわけがない。
【日本の小売業】
日本の小売業はこうした、総資本利益率(ROA:Return On Asset)
経営を行ってこなかったのです。
(1)地価の時価に掛け目(=リスク)を見込んだ担保で、いつで
も融資を受けることができた。
(2)大手に対しては、銀行団が支援するとの、言外の期待があっ
た。
(3)株式市場は、利益結果や利益見込みと無関係な価格をつけて
いた。
▼「日本村」からの発言
現在、時価会計論議では、この国のトップ小売企業の経営者が、以
下のような発言をしています。
<既存の土地を時価で示すと、総資本がふくらんで、総資本利益率
(利益÷総資本)が低下する。そうすれば、株式市場からは、店舗
を売却して有効活用しろと言う声が強くなるから、土地の時価会計
の導入には、反対である>
この国のトップは、店長の店舗運営の意識ではあっても、経営者意
識として資本主義的ではないと感じるのです。
(注)店長は、店舗の計画された営業利益に責任をもちます。〔営
業利益=売上高―商品原価―一般管理販売費〕、言い換えれば、店
舗の運営から得られる利益です。
経営者は、まず第一、に株主から資本を預かって、それを運用(=
経営)する責任です。最も大切な指標は、〔総資本税引き後利益率
=税引き後利益÷総資本〕です。日本の経営者に、この総資本利益
率の意識が薄いことが、現在の経営問題の根底にある。
トップ意識が、同族的なレベルにとどまり、会社をとりまくステー
クス・ホルダー(株主、従業員、取引先、金融機関、社会)への責
任の観点が薄い。一般化すれば、コーポレート・ガバナンスの問題
です。
このことは、経営の精神の部分で、CRM経営とも関係します。
【総資本利益率の低さの問題】
店舗の敷地の時価評価で計算した総資本経常利益率が、低すぎるな
ら、それは、総資産(=総資本)を有効に活用していないことを示
すものです。地価に守られ、銀行融資が容易なら、経営はさらに脇
の甘いものになる。そうした意識が見えます。
【共通事項】
こうしたことの結果が、マイカルの倒産にも現れているのです。
特に、最後の大型、豪華出店であったマイカル小樽では、総資本利
益率の観点のかけらもなかった。
流通マスコミは、マイカル小樽の新しさを評価しました。
私は、見たとたん、あぁ、これは自殺行為だと判断していた。
結局、最後は時価会計の収益還元法という最も安い価格で(提携と
いう)実質買収を受けるところまで行ってしまった。
株主、従業員、取引先、つまりステークス・ホルダーに対しての責
任の不履行です。
6万人の従業員に罪はない。経営トップの、
(1) 実際的には背任とも言える経営からの逃げがあり、
(2) 資金市場の変化への認識変更がなく、対策の不適がこうした
結果を生む。
日本の経営者は、個人的には立派な人は多い。しかし、経営の結果
を計る重要な尺度に、認識の錯誤があるのです。
▼現在、そして今後も起こること
認識すべきは、大手の整理はマイカルだけで終わらないということ
です。鍵となる指標は、(現在のみではなく、将来のリストラ後を
見通した上での)総資本利益率です。この指標、つまり経営の評価
尺度において、金利以上のものをかせぐ必要がある。
現在と将来の総資本利益率最も正確に見ているのは、株式市場です。
1株50円額面のものが100円割れになれば、命運は決しつつあると
判断しても間違うことが少ないでしょう。
不完全でも、株価はインサイダー情報を含め、入手可能な情報を織
り込む唯一の市場だと、判断しています。
株価は、無責任なところを含むことが多い評論や分析ではない。実
際に、財産とマネーを賭けた結果の数字です。株のマーケットは最
も真剣な、読み合いの闘争の場です。
(注)日本では、株式マーケットの価格形成に偏みがありました。
2つの理由がある。まず、証券会社の営業姿勢が、いわゆる「シナ
リオ売り」で、任意に株価を操作することがあったこと。次に、政
府のPKO(価格維持政策)が、市場の株価形成をゆがめたことで
す。
次第に、こうした操作的な株価形成は効果を失いました。海外投資
家の参加が増え、90年代後期は、日々の売買で50%を占めるよ
うになったからです。異邦人は違った視点で、日本的経営を眺めま
す。
▼米国の、9月17日午後10時以降の、NYSEの再開がからめば
本日、午後10時ころから米国、ニューヨーク証券取引所(NYSE)
が一週間ぶりに再開されます。
ブラック・マンデーや1929年のようなパニック売りも、かなりの確
率で想定されます。実際、テロ事件以前も、NYSEには、高所恐
怖症があった。
株価急落の危機を感じていたグリーンスパンは、度重なる利下げを
行っていた。
しかし、今の米国には利下げは、裏腹の効果をもつのです。
利下げがあれば、株には好材料ですが、海外からの資金は逃げる。
ドル安が想定されます。為替変動は、金利の効果を帳消しにする。
米国にとって、最も怖いのは、雪崩のようなドル売りです。
今は、何が起こっても不思議ではない状況です。
世界貿易センターの崩落と、グローバル金融会社の業務の停止、コ
ンピュータシステムの破壊で、それがどんな結果をもたらすか、不
明要素が多すぎる。
米国債を含む、債権ディーリングのプレーヤーはどうなっているの
か。異常事態での、市場再開です。
長期で見れば、米国経済は強いことは間違いがないと認識してくだ
さい。しかし、グローバル金融のプレーヤーが集まる世界貿易セン
ターの崩落の後という想定外の事態を、共同幻想で動く市場心理は
どう判定するか、です。
(これ以降は、午後10時からのNYSEの再開の結果を見て、書き加え
ます。ここまでを書いたのは17日午後6:30です。あえて、自分自身
の判断のテストのため、このままにしておき、マーケット再開後の
情報で判断を加えます。)
ほぼ徹夜で、NYSEの午後10:30分からのマーケットを観察しま
た。
(1)FRBのグリースパンは、9時30分に公定歩合を3%から、
2.5%に下げた(日本は現在0.25%)
米国で2.5%の公定歩合になることの意味は、米国は物価上昇が
ありますから、実質金利はマイナスになったということです。
一方、日本は物価下落がありますから、実質金利は高い。
グリーンスパンは、マネー供給のスイッチも入れた。
銀行のデフォルト(支払い不能)を防止するためです。
(2)ダウは$8920へと、$684しか下げなかった。
パニック売りは回避され、軍事株、セキュリティ株が予想通り上が
った。
(3)ナスダックは、1579ポイントへと、115ポイント下落。
(4)原油とゴールドは、不気味な騰勢を強めています。
まだまだ、再開初日、マーケットの幕は開いていません。
ふぅ・・・という感じでした。しかし、今週中が問題です。
とりあえず、米国は緊張し、良識を前面に出すことができました。
世界の中央銀行は、紙幣とマネー供給を、即座に増やす<臨戦体制>
になっています。予断を許しません。
臨戦体制は、軍隊のみではないのです。
実質的な、地球的生活への影響が大きいのはマネーのほうです。
現代金融が危険な理由は、
(1)ネットワークで瞬間に動くマネーが巨額になっていること、
(2)レバレッジで、膨らんだ信用取引であること、
(3)複雑なデリバティブが絡んでいること、からです。
80年代までの、のどかな金融取引とは、質と量が違うのです。
一部の人しか、この危険は知りません。金融機関でも、ディーラー
の一部しか知らない。
■3.前号の要点の確認から
▼LTVとカスタマー・エクイティ
カスタマー・エクイティは、
(1) 会社と顧客の、継続的な関係の価値を、金額評価するもので
ある経営の尺度であると同時に、
(2) 意識しては重視されてこなかなった顧客の継続購買率が、会
社の売上収益の根幹を左右するということを示し、
(3) 「個客」の継続購買率を維持し高めるという新たな活動を促
すものです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
カスタマー・エクイティ(=LTV総額)=全体需要×「顧客数シェ
ア率」×「個客シェア率」×{1÷(1-継続購買率)}
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・顧客数シェア率=当社を利用した顧客数÷商圏人口または世帯
・個客シェア率=当社を利用した個客の平均売上÷当社の商品分野
のマーケット総需要を一人当たり(または世帯当たり)にしたもの。
・継続購買率=翌年度も、当社の顧客として継続する平均率。
・LTV=Life Time Value:「個客」が最初に当社で購買をして
離反するまでの平均購買金額で、生涯価値という。
(注1)顧客と「個客」を区分して用いています。顧客は、個々の「
個客」の集合(複数形)です。「個客」は、個人です。
(注2)継続購買率は、会社の主力商品(または主力サービス)の購
買(または買替え・買増し)の頻度を判定し、耐久財なら「年」で
、購買頻度の高い日常財なら「月」を基準にします。購買頻度が中
間的なものは、4半期(3ヶ月の季節単位)がいいでしょう。
以下、この公式から、体系化される顧客対策を一覧します。
▼カスタマー・エクイティ公式から導かれること
カスタマー・エクイティ公式の各項目から、以下が見えます。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(1)顧客数シェア率を上げること=新規顧客の獲得対策
(2)個客シェア率を上げること=逸失売上の獲得対策
(3)継続購買率を上げること=ロック・イン(Lock-in)対策
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
*ロック・インとは「鍵をかけること」、「顧客固定化」対策と同
じ意味です。顧客の離反をいかに少なくするかの対策。
▼「個客」シェア率から導かれること
「個客」シェアは、カジュアル衣料なら、カジュアル衣料の一人当
たり平均需要総額に対し、当社商品の購買が(金額で)何%である
かの割合です。
これが高いと、顧客はカジュアル・ウエアを買うとき当社の製品
(店舗では商品)で多くをまかなっていることになります。
低いときは、限定された商品のみを買っている。
ここで、6つの逸失売上(Lost Sales)の概念が導かれます。
以下の、6つの逸失売上がありました。(創刊号第1部)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・ライフ・ステージ・マーケットからのとりこぼし
・アップ・セリング・マーケットからのとりこぼし
・クロス・セリング・マーケットからのとりこぼし
・アフター・セリング・マーケットからのとりこぼし
・顧客と企業の相互学習マーケットからの取りこぼし
・顧客の紹介利益効果の取りこぼし
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
▼ロック・イン(Lock-in)の戦略へ
当社の顧客になった人を固定化する(継続購買率を上げる:「個客」
シェアを高める)ことは、CRM経営の政策の中核になります。
以下、ロック・イン戦略の体系を振りかえります。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1.親密さによるロック・イン
2.メンバーシップ・ロック・イン
2.1 会員制ロック・イン
2.2 ポイント制(ポイントカード)
3.便利さによるロック・イン
3.1 ワンストップ型
3.2 継続補充型
4.ブランド・ロックイン
5.学習によるロック・イン
5.1 学習プラス
5.2 ベンチマーク・ラーンニング
5.3 ラーニング・プロポジション
5.4 ラーニング・アウトソース
6.コミュニティ・ロックイン
6.1 プロトコル連鎖型
6.2 ノンプロコル型
7.シリーズロックイン
7.1 シリーズ型
7.2 ステップアップ型
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
▼ロック・イン戦略のもとになる3つ購買行動仮説
実際のロック・イン戦略の具体的方法(戦術または手段といいます)は、
(1)業態(メーカー、卸、小売またはサービス業)
(2)主力商品の購買頻度(年、4半期、月、または週)
(3)業種(主力商品の品種での分類)で異なります。
しかし、戦術は異なりますが、基本戦略は同じです。CRM経営では、
常に基本戦略に戻って、個々の戦術がどの「ロック・イン」を目的
にしたものであるかを、確認し続けることが重要です。
そうでないと、戦術・対策、工夫の森に迷うことになるのです。
このとき、ロック・イン・戦略をどう実行するか元になるのが3つ
の購買行動仮説でした。
【3つの購買行動仮説:重要】
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(1)顧客は、購買でのコストを減らし、リスクを避ける行動をと
る。
(2)顧客は、過去に負担したコストや蓄積を無駄にしたくないと
いう行動をとる。言い換えれば、同じことを継続したいということ
である。
(3)顧客は、ユーザーが多い商品やサービスを選択する傾向があ
る。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
以上のまとめを確認し、ここから具体的なロック・インの戦略の解
説にはいります。
■4.ロック・インの戦略
ロック・インの戦略は、3つの購買行動仮説を利用し、顧客の固定
化を図って、「個客」シェアをあげる対策です。
以下で、それぞれの基本内容を解説します。単に字面を追うだけで
はなく、わが社の商品またはサービスの特性、購買頻度では、なに
が具体的な戦術になるかを、想像しながらゆっくり読んでください。
▼補足的な説明:デジタルデータをつかった学習のコツについて
思いついたことを、それぞれの項に、書きとめておくといいですね。
この積み重ねが、実務の発想を豊かにするコツです。書き留めて
おかないと忘れます。後で書き留めようと思わないことです。すぐ
実行すること。読んでいるとき、頭は活発な刺激を受け、発想がわ
くはずです。
本稿のようなデジタルデータは書き込みに最適。コピーしワープロ
に貼り付け、そこに【私のコメント:年・月・日】として書き加え
ておけば、それがそのまま、<私の戦略設計>になります。こうし
た利用をしてほしいのです。紙媒体とは違う便利さが、メールマガ
ジンにはある。デジタルデータ共有化効果の利用です。
【若干のご報告】
1週間前に、17インチ液晶ディスプレー(1280ドット)に替
えました。前に使っていた15インチ液晶(1024ドット)とは
段違い。画面の広さは、頭脳の面積の広さの感覚。それに液晶は目
が疲れません。3つのPCを使っていて、全部液晶です。CRTには戻る
気になれません。
メモリを512MBにしましたが、大きすぎたかもしれません。
256MBでもいい感じですね。(笑)
ロック・イン(つなぎとめ、または固定化)の戦略を、順序に従っ
て見て行きます。
■5.親密さのロック・イン
▼すべてに通じる基調低音
<親密さのロック・イン>とは、「個客」と現場の社員の、親密さ
による固定化です。いわゆる「なじみ」の関係をつくることです。
ロック・インの7つの項での基調低音になるものです。
顧客は、相手をした社員の名前を覚えているのに、社員は覚えてい
ないとなると、親密さの最初のところで失敗です。ところが社員は
毎日沢山の顧客を相手にするので、覚えられない。
▼3つの方法
3つの方法があります。
(1)コンピュータによる購買歴(RFMI)の記録で、氏名、電話番
号、商品コード、購買日などの検索キーで、瞬時に検索して、現場
で購買歴を参照する方法。デジタル・カメラでの写真を入れる方法
もある。
(2)500名前後の「個客」を、社員に割り当てる「個客」担当
制
(3)記憶する方法
(用語の注:RFMI)
RFMI(Recency:Frequency:Money:Item )は直近購買日、購買頻
度、購買金額、購買品目歴をコンピュータデータベースにして「個
客」別に記録したものを言います。CRM経営の基本になるデータベー
スです。もちろん、手書きの顧客カードでも同じです。
デジタル・カメラでの顔写真を貼り付けるのも有効です。
▼リレーションは人間対人間
ここで重要なことは、「個客」との関係は、<現場社員~コンピュ
ータ~「個客」>ではなく、<社員~「個客」~補助としてのコン
ピュータ記録>であることです。
その意味は、親密さは、人間と人間の関係から生じるものだという
ことです。
▼到達系
したがって、<親密さのロック・イン>の到達系では、
(1)RFMIの記録があり、(重要:現場で即刻検索できること)
(2)「個客」担当制があって、
(3)現場社員が、「個客」を記憶していることになります。
記憶が、もっとも強い親密さになるのは言うまでもありません。
毎日、現場が顧客カードを見るのを習慣にすれば、対策はでてきま
す。
コンピュータは、人間を支えるものとしてポジショニングしないと
ここを間違えます。
▼挨拶ということ
店舗に行くと目にするのは、視線が合うと、気がつかない振りをし
て、作業を続ける店員です。米国では「本能的に」、微笑みますね。
だからと言って、サービスがいいわけではないのですが、日本人
が真似をすべきことのひとつです。
また「いらっしゃいませ」の販売用語は、個人的な関係はつくりま
せんが、「こんにちは」の挨拶は個人の関係に踏み込むものです。
無印良品は、「いらっしゃいませ」の挨拶ですが、コム・サ・デ・
モードは「こんにちは」の挨拶。日本のGapもユニクロも、いらっし
ゃいませも、こんにちはもありませんね。商品中心経営が、現れて
います。
「こんにちは」が挨拶になる理由は、こんにちはに対して、顧客も
「こんにちは」と返すことが多いからです。顧客に発言があること
は、心理的な相互接近を示し、購買のきっかけになるのです。挨拶
とは、こころを開いて近づくこと、CRM の精神です。
*この項をお読みになった読者の方は、こんなことまで言わなくて
も、十分わかっているとお感じになるかもしれない。ところがそう
ではないのです。
私の経験では、社員の挨拶の仕方で、その企業の精神や個人の重要
な部分が判定できます。経営不振になる会社は、気分の悪くなるよ
うな挨拶で、顧客を逃がしています。まず、挨拶が壊れるのです。
▼先週
先週、ある店舗を訪れたとき、レジ周辺にいた新卒の女性社員が私
を見かけ「わぁ、先生、おひさしぶりです・・・」と駆け寄ってき
ました。どこで逢ったことがあるのかと、ドキッとしました(笑)
今年の2月、ロスアンジェスル研修に行った社員でした。40名も
いたので、ぼんやりとしか顔を覚えていなかった。それでも、顔を
見ると記憶は蘇ってきました。この社員の販売成績は、いいはずで
す。
こうした態度は顧客との関係でも、変わらないでしょう。
▼3軒隣の、空飛ぶ焼き鳥屋
3軒隣に、ご主人がANAの現役機長、奥さんが元は民報アナウンサー
で、5店舗の焼き鳥やチェーンを経営しているという珍しい人が住
んでいます。〔ジャンボの機長・アナウンサー・焼き鳥〕の組み合
わせが変ですね。
機長さんは「空飛ぶ焼き鳥屋」と自称します。奥さんは、100メ
ートルは届きそうな明瞭な声で「吉田さぁん、どこへいくの?こん
にちは!」と挨拶です。真似できない、生来のものがあります。
笑い声は「あはは、ケタケタ」という印象です。
外食産業は、顧客単価の5%下落、客数の5%減少で、既存店10%
マイナスが平均です。この焼き鳥屋は、ここ2年で出店し1店舗か
ら5店舗になった。数回食べに行ったのですが、店長、従業員の教
育成果が見事でした。アルバイトに至るまで、皆がきちんと目を見
て、てきぱきと注文をとります。動作が、活きている。
しかも、とてもアット・ホームで温かい。
経営者の人格が、現場まで伝わっています。
「空飛ぶ焼き鳥屋」の機長さんは、「何年かしたら絶対、上場した
るねん」が目標だそうです。大阪は堺の生まれて、ばりばりの大阪
人です。店名は「車」、フーテンの寅さんからとったそうです。
目標を果たしてほしいものです。
今後、「多店舗管理」の難関にチャレンジすることになります。難
関という理由は、小売で言えば全国140万店のうち、この多店舗
管理をクリアしていると見える企業は、現在500社もないと思わ
れるからです。
単純に言えば、本部機能と店舗機能の設計と、数値間接管理の課題
です。
以上、親密さのロック・インの「精神部分」を、解説しました。
この点で参考になるのは、困難な営業をやっている生命保険の、ト
ップ・セールスマンの行動です。並みのセールスマンではだめです。
わが社は、親密さのロック・インの部分で、どんな戦略を立てるべ
きか、考えてみるべきです。
「顧客は、個人として認められることを欲している」ということで
す。
顧客集合を、「個客」としてRFMIのデータで見直すことです。
▼RFMIデータを、金額上位から並べると
(1)20%「個客」が、60~80%の売上になっている。
(2)40%「個客」は、親密さの関係を欲している。
(3)40%「個客」は、離反寸前、あるいはすでに離反になって
いる、ことがわかるでしょう。このデータは、各社驚くほど共通で
す。
大規模量販の不振は、「個客」を顧客集合としてしか見なかったこ
とにもあるのです。経営の、姿勢の根幹にかかわる問題です。21
世紀には、通用しません。
■6.メンバーシップ・ロック・イン
親密さの関係を、具体的なツール(会員制カード、ポイントカード)
をつかってロック・インする方法です。
(1)会員制には、入会金を必要とするものと、入会金は無料のも
のがあります。また割引があるもの、または特定サービスが付加さ
れるものがある。
(2)ポイントカード制には、一定金額をポイント化して割引くも
の、または、ポイントで賞品をつけるものがあります。
以上で、〔2(会員制・ポイントカード制)×2(入会金有料・無
料)×2(価格割引・付加サービス)=8通り〕の方法がある。
店舗でも、会員制倉庫販売(コストコやサムズ)は、入会金を取り
ます。
▼固定費産業であるか、変動費産業であるか
メンバーシップ・ロック・インにあたって、最初に考慮すべきは、
わが社が固定費産業であるか、変動費産業であるか、です。
【1.固定費産業】
ホテル、大半のサービス業、航空機産業、交通産業等は、ほとんど
のところが、固定費産業です。
固定費産業では、顧客数が増えても、それに比例したコストは上昇
しない。一方で顧客が少なくても、一定コストはかかる産業です。
ホテルなどは、典型的な固定費産業。
こうした業界では、メンバーシップカードやポイントカードを発行
し、閑散期、閑散日、閑散時間の割引を実行して購買を刺激するこ
とが、全体収益を上げることになる。航空界会社が、マイレージで
固定化を図る理由です。
私もよくマイレージを利用します。海外へ行くときなどエコノミー
クラス料金で、ビジネスクラスが利用できるので、やはり特定の会
社の便を選ぶことになる。ロック・イン効果はあります。
【2.変動費産業】
変動費産業とは、顧客数の増加、または売上の増加に応じて、商品
原価が増加する産業です。小売業などはその典型です。小売業は、
商品原価の部分(60%~80%)は変動費、一般管理販売費(15%~35%)
は固定費になる。
変動費産業では
(1)メンバーシップやポイントカードでの増収見込みと、
(2)割引のコスト増加見込み、の計算を行います。
【商圏状況】
割引のポイントカードを、商圏内の他の(競合)店舗が導入してい
ないときは、導入効果で、15%レベルの増収効果があるとの検証
があります。お互いに発行するときは、ポイントカードだけでの増
収効果は無化され、ポイントの内容か、または別の要素での競争に
なります。
そうなると、今度は、「親密さのロック・イン」、「便利さのロッ
ク・イン」を含む、他の6つの要素でのロック・インの優劣になり
ます。
【現在の競争のレベル】
現在の競争では、メンバーシップ・カードやポイントカードは、
(1)それ自体で効果をあげることもありますが、
(2)「個客」を認識する手段とし、他の6つのロック・インのため
の、「個客」認識票の機能である、という観点が重要になってきて
います。
▼累進割引のシンボル効果
重要なことは、ヘビーユーザー(利用高上位5%のロイヤル・カスタ
マー)に対して、ポイント累乗的(累進割引的)に、サービス部分
をあげることです。
ここはポイントカード、メンバーシップ・カードの効果で検証され
たことです。
上位カスタマーに対する手厚いサービスということだけではなく、
他の顧客にとっても、差異化サービスを得るグループに上昇したい
という「シンボル効果」を生みます。波及効果です。
この場合、すべての顧客に、このロイヤル・カスタマーの累進割引
または累進サービスの内容を、知らせる必要があります。
■7.便利さのロック・イン
便利さのロック・インとは、
(1)「顧客の観点から見て必要なもの」が、「同時」に揃うとい
う便利さ(ワンストップ性)と、
(2)「顧客の観点から見て必要なものが発生したとき」が、「継
続的」に揃う(継続購買性)に、分けることができます。
▼1. ワンストップ性によるロック・イン
ワンストップ性は、小売業の100年の商品構成の歴史と言ってい
いくらい、長い歴史と、深い内容をもつものです。
(注)本格的には「数百ページが必要な商品構成論」になります。
約12年前に私がまとめたもの(紙)がありますが、修正・リライ
トして、いずれこのプレミアムでお送りするつもりにしています。
店舗作りのみではなく、メーカー・問屋の商品構成論でもあります。
▼重要な補足説明:90年代後期以降のワンストップ性の留意事項
店舗、メーカー、問屋で共通に言えることは、
(1)80年代までは安易な関連品種、関連商品での競争が許容さ
れたが、
(2)95年以降、「安易なワンストップ性」が害になるというこ
とです。
【原因】
競争の広域化、
顧客の商品知識、商品情報の高度化、
および価格情報の豊富化が進んだことを原因とします。
【80年代まで】
80年代までは、メーカー・問屋は、2つの流通戦略をとっていた。
(1)まず流通テリトリー制です。これは、店舗の地域で、バッテ
ィングを避けた商品の供給をしたということ。
(2)次に、流通チャンネル制です。百貨店、専門店、量販店、零
細店で、異なった商品の供給をしたということ。
80年代までは、実質的に上流主導の商品供給構造が堅固で、緻密
な流通のチャンネルが維持されてきた。顧客主導ではない流通構造。
値崩れ競争をいかに回避するかが主眼でした。
【ワンストップ品揃えの80年代までの方法】
こうした中では、
(1)異なる品種の商品を、価格帯を5区分(ベスト、ベター、ミド
ル、ポピュラー、チープ等)にして、
(2)「同じ価格帯で横断」させ、展示商品を揃える(品揃えする)
ことが、ワンストップの競争力を持っていた。
この手法で出来上がったのが、量販店であり、食品スーパー、ショ
ッピングセンターだったのです。基本原理は、単純だった。異なる
品種の価格帯を揃えること、です。
これで、約20兆円以上の流通グループができたと言ってよい。
【90年代の新しい要素】
ところが、90年代は、(1)競争の広域化と、(2)顧客の商品
知識の高度化、(3)価格情報の豊富化という3つの要素の高度化
があり、「商品情報の非対称性」が崩れたのです。
【商品情報の非対称性】
商品情報の非対称性とは、
(1)顧客は商品知識・価格情報の素人であり、
(2)店舗・メーカーは玄人であって顧客に対して優位に立ってい
るとする経済学用語です。これが崩れたのが90年代。
店舗の棚を見て、顧客が「(品種は)なんでもあるが、自分のほし
いもの(目的の品目)がない」と言い出した。中内氏自身も、ダイ
エーを見てそう言った。
この意味は、顧客は自分が探している商品のイメージ、価格、銘柄
(ブランド)、品目を知っているということです。
安易な「代替品購買」をしなくなったということです。
ソニーのPCを買いに来た顧客は、機能・価格が同じであっても、容
易にはNECにシフトしない。店舗側から見れば同じでも、顧客にとっ
ては、ソニーのPCとNECのPCは違うのです。ここを理解しなければ、
現代消費は理解できないのです。(4番目のロックインであるブラ
ンド化にも通じます)
多くの購買行動が、このように変わった。
過去の品揃え分類手法が、顧客側の商品情報増加で古ぼけたのです。
特に95年以降、
(1)量販店グループ(ジャスコ・ダイエー・IY堂が筆頭:通産省
分類ではスーパーとされるがこれは用語の間違い)の既存店、売上
高前年比が、
(2)百貨店グループの既存店前年比を下回るようになったのには
量販店の、安易なワンストップ化総合品揃えというところに、根
本の原因がある。(両方ともマイナスではありますが)
1980年代までは、既存店舗の売上高前年比は、逆に量販店グル
ープが高く、百貨店グループは低かったのです。
【パワーリテーラーのストア概念】
したがって、今後は、各商品部門で、
(1)十分に専門化品揃えを図った上での、
(2)新しい総合化(パワーリテーラーのストア概念)のワンスト
ップ化が必要です。
▼2.継続購買性の利便性によるロック・イン
継続購買性とは
(1)顧客または法人ユーザーが、必要な都度、繰り返し購買する
ような商品を、
(2)品揃えし、継続的に供給するという、時間軸での顧客ロック
・インです。
【ホーム・デポにみるロック・イン】
住いのリフォームの米国ホーム・デポは、
(1)リフォーム必要部材・部品のワンストップ(リフォームに必
要なものすべてがその場で揃うこと)であると同時に、
(2)継続的に、住まいを改善(Up GradeとImprove)できるため
の品揃えと、顧客教育があります。
ホーム・デポ(Home Depot)が、住関連の限定された商品分野であ
りつつも、5兆円小売のスケールになった理由は、
(1)ワンストップ性と、2つの改善(Up GradeとImprove)の概
念で、
(2)顧客を長く引き止めることができ(ロック・イン)、
(3)しかも顧客の住まいのアップグレードまでを供給する、全方
位型であるからです。
1999年:売上$384億、店舗数990店、従業員23万人で
その後毎年、200店レベルを出店しています。驚異的な企業で
す。
http://www.homedepot.com
【大切なこと】
〔ワンストップと+2つの改善(Up GradeとImprove)〕の概念セッ
トが、いかに強力なものであるかが、ここでわかります。
このように、世界を広く、しかも共通要素はなにかという思考方法
でみれば、成功のモデルだらけなのです。
発想が沸かない理由は、わが社の商品の枠にこだわること、および
共通要素をみることができないこと、によるものです。たとえば、
住産業を見れば、アパレルの発想が沸くというところまで、学ばな
いといけません。偉大なる創業者は、こうした観察を、いつもやっ
ています。
【アスクルとアマゾン】
日本のオフィススサプライの「アスクル」、書店の「アマゾン」も
、典型的に、(1)「同時購買のワンストップ」と(2)「継続購
買性のロック・イン」を図って成功したビジネスモデルの事例です。
このときのキー概念は、
(1)商品・サービスの専門性(ある品種での品揃えの深さと、利
用方法の情報提供)、
(2)Improve(改善) という、生活の時間軸での継続概念、
(3)および、Up Grade (高質化)という生活の成長概念です。
これによって、何年もの継続購買度が高まり、離反が少なくなる。
継続を促すには、入門を卒業しても、いつまでも継続できるための
仕組みと商品、サービスが必要になる。
顧客は、入門者が圧倒的に多い(約60%)ですが、いつまでも入
門者ではないのです。
90年代までマーケティングの基本は、入門者マーケットでした。
21世紀は、入門者の次のマーケットを拓く必要があるのです。
ユニクロも、カジュアル・ウエア入門者だけを相手にしていると、
シェアが高いだけに、ユニクロ卒業が多くなって頭打ちが生じます。
そろそろ、その時期にさしかかっています。購買行動を観察すると
3年くらいで、<飽き>がくるようです。最初は感激しますが。米
国ではGapがありましたが、日本ではほかになかったからです。
【ビジネスの思考ツール】
7つのロック・インで分類してみると、今後のビジネスモデルが創
造できますね。あなたの生涯のビジネスの発想の根源になることが
できる思考ツールです。ビジネスの成功のコツは、Always Return
to Basicです。この姿勢があれば、ほぼ大丈夫です。
さて、ここまでで、(1)親密さ、(2)メンバーシップ、(3)
便利さの3つのロック・イン戦略の骨子を解きました。
わが社の戦略の発想が、沸いたでしょうか?
次回は、
4.ブランド・ロックイン
5.学習によるロック・イン
5.1 学習プラス
5.2 ベンチマーク・ラーンニング
5.3 ラーニング・プロポジション
5.4 ラーニング・アウトソース
6.コミュニティ・ロックイン
6.1 プロトコル連鎖型
6.2 ノンプロコル型
7.シリーズロックイン
7.1 シリーズ型
7.2 ステップアップ型
原理:一人の顧客に、沢山、継続して売ることのできないところは
、多くの顧客にも売ることができないということが、CRMの試行錯誤
で原則化されています。
<CRMシリーズ:CRM経営の本質を解く(創刊記念第3部)>
を終わります。
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著者: 吉田繁治 systems research ltd.
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<CRMシリーズ:CRM経営の本質を解く(創刊記念第3部)>
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