(1)日銀がETFを買う手口 (2)大地震の確率
Written by admin on 2015年6月6日 – 12:00
こんにちは、吉田繁治です。前号の<世界金融は2015年内に再来す るのか>の3号のシリーズの中で、官が管理するマネーでの、株の 購入を書いています。 「4頭のクジラが、株のプールで泳いでいる」とも言われます。 4頭とは、 ・最初が日銀、 ・次はGPIF(公的な年金基金)、 ・今後は、ゆうちょ銀行、そしてかんぽ生命保険です。 *本稿は、有料版では臨時号にしています。二重に届いた方には、 お詫びします。 ▼株価への、官の巨大介入:株式市場の4頭のクジラ 日銀が、株価指数であるETF(Excange Traded Fund:上場投資信 託)を買い始めたのは、リーマン危機後、株価が下落していた 2010年でした(日経平均で1万円付近)。 当初の買い枠は1兆円でした。開始後3年経った2013年6月には、保 有額が2兆円に達していました。ETFが、ほぼ2倍に上がったためで もあります。 2014年10月末に追加緩和を発表した日銀は、同時にETFの買い枠を、 それ以前の3倍の3兆円に増やすとしています。 本稿では、日銀が、どういったタイミングで、いくら買って来たの かわかったことを示します。 目的は、今後、日銀、GPIF、そしてゆうちょ銀行による株ETFの買 いが、どういった形になるかを見るためです。GPIFとゆうちょ銀行 の株ETFの買いは、日銀の方法を見習うからです。 (注)日銀は、14年10月以後は、年間3兆円の枠でETFを買い続けて いて2015年5月で、保有株の残高は6.3兆円に増えています。月間で 7兆円平均の国債の買い増しとともに、月間平均で2500億円くらい の株ETFの買いを続けています。 ・日銀の国内株の買い枠は3兆円/年、 ・GPIFは、資産構成で25%としている国内株の買い枠の残りが7兆 円、 ・ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険では、ほぼ10兆円の国内株の買い 枠が予想できます。 (注)ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険は、国内株の買い枠をまだ公 表していません。 200兆円の管理資金量を持つゆうちょ銀行と87兆円の資金量である かんぽ生命保険は、2015年の秋に、株式を上場し、公開する予定で す。かつての、民営化されたNTTのようなイメージです。 2015年は、ゆうちょ銀行までに至る、官の巨大な買いが想定できる ため、年末の日経平均では、2万6000円水準を予想しています。 2015年6月5日の日経平均(午前中の前場)は2万400円です。 ただし、官の資金での買いは、市場による株価の形成を大きくゆが めるものです。その買いが終わった後の、下落も予想できます。 日銀による国債の大量買いと同様、本来、こうした介入は行っては ならない。 しかし、2014年4月に異次元緩和を開始した後の政府は、「2%のイ ンフレ目標達成ためなら、何でもあり」になっています。 異次元緩和とこの官の資金による株の大量購入の異常さと、必ず来 る出口政策のときに生じる問題を指摘するエコノミストは、ほとん どいません。(注)数名は存在します。 ▼大地震の確率ついて もうひとつのテーマは、巨大地震が起こる確率です。先の5月30日 に、東京から小笠原列島の海域の深いところでマグニチュード8.1 という巨大地震が起こっています。その5日前の5月25日には、関東 で震度5弱の地震がありました。 箱根山(大涌谷)では、一時より弱まったとはいえ、地中の水蒸気 の噴出が続いています。鹿児島県の口永良部島(くちのえらぶじ ま)では、大噴火以来1週間たちました。ニュース報道は少なくな りましたが、火山活動は強まっています。 日本列島の地下深くが、何だか変だと感じられている方は多いでし ょう。大地震の予想確率の上昇を受けて、地震保険の保険料は、昨 年に続き、今年も19%程度上がります。 政府の公式予想では、太平洋岸の南海トラフで、マグニチュード8 ~9クラスの巨大地震が起こる確率は、「30年内に70%」とされて います。この数値は、おそらく80%以上の人は、知っています。 しかし30年内に70%という確率は、とてもイメージがしにくい。 例えば30年内には、鉄筋の建物までを吹き飛ばすような、かつてな い超台風が、70%の確率で日本を襲うという予想があっても、30年 という長い期間のため、想像ができなくなってしまいます。 普通、人が予想の範囲に置くことができるのは、長くても5年でし ょう。いや3年がいいところか。1年ならはっきりします。30年に 70%というこの確率は、1年では何%か、3か月では何%にあたるの かということです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <Vol.329:1.日銀がETFを買う手口 2.大地震の確率> 21015年6月6日:無料版 【目次】 1.「ETF」とはどういった証券か 2.日銀によるETFの買いの手口 3.市場の指値(さしね)の売り板と、買い板 4.投資家主体別の売買では、証券会社の自己売買に入っていた 5.日銀による、ETFの買いの時期と金額 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.「ETF」とはどういった証券か 日銀は2014年10月に、それまでは1兆円の枠としていた株ETFの買い を、3兆円に増やすと表明しました。 2015年6月時点で、残り枠の残りが7兆円と推計されるGPIF(年金積 立金管理運用独立行政法人)の株の買いとともに、この日銀による ETFの買い増しが、2万円を超えた日経平均の原因です。 ▼株価は、他人の予想の予想で動く 株価は、「多くの人、どう予想するかを予想すること(他人の予想 の予想)」で動きます。ケインズが見事に言った美人投票論です。 美人投票の、誰が1位になるかで勝つには、「皆が誰を美人と思っ て投票するか」を予想せねばならない。自分が美人と思う人ではな い。他の多くの人が誰を美人と思うかという予想です。 [2つの情報] (1)日銀がETFの買い枠を、1兆円から3兆円に増やした、 (2)GPIFが、137兆円の運用資金のうち25%(34兆円)を国内株に、 25%を海外株に振り向けることを決定した。 [他人の行動の予想] この2つが、2014年10月末の「サプライズ」でした。この情報によ って、日本株は。買いが増えて上がると予想する人が増えるだろう。 買いが増えれば上がる。従って、われわれは、日本株を買い増すと いう決定をしたのが、英米系ヘッジ・ファンドです。2015年に2兆 円を買い増しています。外人買いも加わって、年初の日経平均1万 7000円は、2万円水準(15年4月末)に上がったのです。 日銀やGPIFは、個別の銘柄を買うのではなく、株価の指数である ETF買います。ETF(Excange Traded Fund)は、わが国では2001 年に導入された、株価指数に連動する仕組みの上場投信です。 日本の東証では、証券会社によって、それぞれにグループ化した株 や金を対象に40種くらいが売られていて、株価のように日々変わる 価格がついています。 (注)Excange Tradeは市場で売買するという意味であり、ETFは 市場で売買される債券(ファンド)という意味を持ちます。 わが国でもっとも大きなものは、野村証券が作っているTOPIX(東 証株価指数)に連動するETFです。時価総額が2兆7292億円です(6 月5日)。東証1部に上場している1891社の株価の、加重平均です。 日経平均は、対象225社の株価を合計して割った単純平均ですが、 TOPIXは、時価の大きさに比例させた平均です。 http://www.nikkei.com/money/fund/etflist.aspx ETFには、現物拠出型と、リンク債型の2種があります。 【(1)現物拠出型ETF】 現物拠出型では、ある人が、例えば1億円の「TOPIX連動型ETF」を 野村証券(指定参加者という)に申し込むと、野村証券は、その1 億円を運用会社に払い、TOPIXの構成割合で現物株を買って、1億円 分のETFを合成するよう委託します。(注)ETFも現物(株式)から 派生したデリバティブ証券と言えます。 このETFが買われると、東証の株全体が1891社の時価総額の構成比 に応じて、買われたことになります。野村証券は、ETFの持ち分を 示した「受益証券」を受け取ります。受益証券は、ETFを買った人 の所有ですが、普通、証券会社に預けます。ETFは、株のようにい つでも売買でき、配当もあります。 日経平均225社で構成したETFもあります。米国株の全体(99%)を 示すラッセルのETF(1000社、2000社、3000社)も日本で買えます。 金ETFや中国(上海)を含み、世界中のETFが買えると言っていい。 ただし、日本ではまだ、ETFの利用者は少ない。 現物拠出型のETFでは、その構成割合で、個別の株が売買されるの で、ETFの価格は株価指数と一致します。個々の株からの配当もあ ります。 価格が下がると、その下げの2倍が利益になるETFもあります。 (TOPIXベア2倍上場投信) 【(2)リンク債型ETF】 リンク債型ETFでは、現物株の拠出は行わず、USB(ユニオン・バン ク・オブ・スイス)のような信用の高い金融機関が、現物株の指数 と100%連動するように保証した証券です。USBが発行する株価指数 に連動した社債と考えてもいいでしょう。現物の拠出が難しいとき、 このリンク債型ETFが作られます。 リンク債型ETFは、発行会社の信用に依存します。仮にUSBが倒産し たちとき、USBが発行したリンク債型ETFがどうなるか定かではない。 日銀が買っているのは、現物拠出型の、国内株で構成したETFです。 【日経平均ベア2倍上場投信】 日経平均の価格が下がると、その下げの2倍が利益になるETFもあり ます(日経平均ベア2倍上場投信)。 日経平均の価格は、傾向として上がっているので、日経平均ベア2 倍上場投信は、上がった価格の2倍下がっています。現在の価格指 数は6330でした。下がればその下落の2倍が利益になるように仕組 まれた証券は、株価が上がったときは2倍の損をします。ベアは弱 気という意味です。 http://www.nikkei.com/markets/company/index.aspx?scode=1360 【ETFの価格】 株もETFも、1週間後に上がるか下がるか、その確率は常に50%: 50%で等価です。(注)ランダム・ウォークと言う。 しかし今回のように、官の資金での買いが連続し、その金額が大き いことが確定しているときは、過去の売りの傾向である限り、株価 は上がります。ETFも、日経平均やTOPIXと同じ分、上がります。 【4頭のクジラによる官製相場】 官製相場では、 ・巨大な資金で買い続ける限りは上がり(あるいは下がらず)、 ・買いを減らして止めるとき下げるという性格をもっています。 政府・日銀は、消費者物価の上昇が2%になるだろうというメドが つくまで、官の資金による株ETFの買いを続けると明言しています。 これを考慮すると2016年のほぼ6月までとなりますが、予想PERで 22倍以上に上げすぎると、その後のバブル価格の崩壊が大きくなる ので、日経へ金で2万5000円くらいからは、買いにブレーキがかか ると判断しています。 ■2.日銀によるETFの買いの手口 【後場で、するすると上がる】 しばらく前から、「前場(午前中)に、1%くらい下げると、後場 は、どこからともなく買いが入り、するすると上がり始める」と言 われていました。 確かに、午前12時までに日経平均が150円(1%)くらい下げ、今日 は、300円(2%)は下げるかみ知れないと思っていると、逆に150 円くらい上げることが多かったのです。この原因は、日銀のETFの 買いの発動だったのです。 【日銀の、ETFの買いのルール】 ・前場の日経平均が1%下げると、後場の買いを入れる。 ・買い付けの時間は、後場が始まった直後の午後1:15分。 ・金額は1回約360億円。 2013年までは、前場が1%下げると、ほぼ100%の確率で、日銀が ETFの買いを入れていました(1%ルール)。住友信託銀行に、その 指示を出していたものと思われます。官僚らしい方法です。証券会 社は、受託している住友信託銀行の、ETFの売買を注目していたの です。 当初の1%ルール(日経平均で150円)は、2014年から0.3%(60円 くらい)下がったとき買うと、変更されています。株価の水準が2 倍に上がると、上げるのに必要な資金も2倍になるからです。 この筋で言えば、2014年10月末に、日銀がETFの買い枠を3兆円と3 倍にした理由がわかります。 株価が、日経平均で言うと2012年まので8000円から2万円に近くな って、同じ額で上げるのに、2倍や2.5倍の資金投入が必要になった からです。 http://www.skam.co.jp/files/topics/15951_ext_02_0.pdf ▼買うのは官と外人、売るのは個人 東証の売買額は、多い日で3兆円、少ない日は2兆円です。 売買の2兆円は、買いが1兆円、売りが1兆円です。この売買額の約 70%(7000億円+7000億円)は、外人投資家(英米系のヘッジファ ンド)による売買です。 日銀が参加しないとき、均衡している売買(売買額の一致)が、午 後に360億円の余分な買いが入るとどうなるか? ETFの買いは、そ の中の構成比での、現物株の買いです。 「売り板」に出ている指値(さしね)の、高いほうに価格がつきま す。 ■3.市場の指値(さしね)の売り板と、買い板 株式市場では、売り板と買い板で、一致した価格で売買が成立して その売買の価格が、刻々と変化する株価になっています。 [単純化した売り板と買い板] ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ [売り板のオファー] 1万5000円 1000枚 1万4950円 1000枚 1万4900円 1000枚 [買い板のオファー] 1万4850円 1000枚 1万4800円 1000枚 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ (注)価格幅を持たせない「成り行き価格」での買いは、売りの指 値がいくら高くても成立します。成り行きの売りは、買いの指値が いくら安くても整理します。 以上の状況のとき、売りがない1万4850円では、買いが成立しませ ん。1万4900円での買いをオファーすれば売りに出ている1000枚を 買うことができます。このとき、そのETFの価格は、1万4850円から 1万4900円に上がります。 更に高い1万4950円の指値をすれば、あと1000枚を買うことができ ます。相場は1万4950円に上がります。 こうしたものが、日銀のETFの、金額を決めた買いです。前場で1% 下がったとき、売りの高い指値のものを買う目的で、360億円の買 いを入れていたのです。 国家・地方公務員の年金基金と、国民年金・厚生年金の基金(保険 料のストック)を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政 法人)の株の買いは、信託会社を通じるものです。 東証が、毎週公表している「投資家主体別売買」で、信託銀行(信 託銀と表示)の買い超が増えた週は、年金基金からの、相場支えと 上げのための買いが入ったと判断できました。 ■4.投資家主体別の売買では、証券会社の自己売買に入っていた 投資家主体別売買は、安藤証券が、毎週のものを、見やすく集計し ています。 http://www.ando-sec.co.jp/market/movement.html ▼証券会社の自己売買への疑問 投資家主体別売買で、当方がわからなかったのが、証券会社の、大 きくなった自己売買が、誰による売買かということでした。(たぶ ん日銀と推量はしていましたが・・・) 証券会社が、自己資金や、銀行からの借金で買ったものは、ほぼ3 か月内に売り、売買額は均衡するはずです。 ところが2014年、2015年と、証券会社の自己売買での買い超が、 4000~5000億円規模に超過する週が増えています。この原因がわか らなかった。 【住友信託銀行を経由して、証券会社の自己売買になっている】 調べると、案の定、日銀のETFの買いが反映したものでした。日銀 は、ETFを買うときは、住友信託銀行に注文を出しています。住友 信託は、日銀によるETFの構成比での現物株の買いを、証券会社に 委託します。証券会社は、ETFで日銀が買った分、現物株を買うこ とになります。 それが投資家主体別売買では、証券会社の自己売買に含まれていた のです。 証券会社は、売買の主体を秘密としています。特に、情報をもつ証 券会社の、インサイダーが絡む恐れが高い自己売買は、「奥の院」 です。 なお、インサイダーと見分けがつかない証券会社の自己売買は、コ ンピュータプログラムでミリ秒単位の取引をする超高速取引(HFT :High Frequency Trading)とともに、市場の価格形成をゆがめる ので、禁止すべきと考えます。 ところが、東京証券取引所は、取引が大きくなれば手数料が増える ので歓迎しているのです。 【直近の、証券会社の自己売買】 日経平均が2万円を超えて上がった、2015年5月の、証券会社の自己 売買を見ると、 ・1週 487億円の売り超 ・2週1486億円の買い超 ・3週2827億円の買い超 ・4週 855億円の買い超です。 これが、日銀のETFの買い超に相当しています。 この5月の3週には外人投資家が4260億円を、4週には3964億円を買 い越しているのです。日経平均が2万円を超える中で売っているの は、700万人の個人投資家です。5月の3週は5849兆円の売り超で、 4週も4643億円の売り超です。 【売買のパターン】 売買のパターンは2010年以降、同じです。 ・株価が上げるとき=自己売買、または外人の買い超→個人は売り 超 ・株価が下げるとき=外人投資家の売り超 (注)外人投資家は、ほぼすべて、世界に50ヶ所のタックス・ヘ イブン(租税回避地)からの売買です。その主体は、投資家からの 預託を受けて、ポートフォリオ運用するヘッジ・ファンドです。ヘ ッジ・ファンドは、金融機関と富裕者を対象にした私募の投資信託 と言ってもいいものです。 日本の個人投資家(約700万人:口座数は4000万)は、 ・2012年1.9兆円、 ・2013年8.7兆円、 ・2014年3.6兆円、 ・2015年(1月~5月)4.1兆円と、 この3年半で18.3兆円も売り越しています。 個人投資家は、外人投資家の次に売買額のシェアが大きな主体です。 これが1か月平均で4400億円、週平均で1000億円も売り越しを続け ています。買い越したのは、2015年1月の3522億円だけです。株価 が上げると逆張りで売ることを続けています。 【金融機関も売り超】 日本の金融機関(銀行・生保)も、売り超を続けている点で個人と 同じです。銀行と生保は、1990年代まで、株式所有シェアがもっと も大きかった。保有の最大シェアは外人投資家に振り替わっていま す。 個別株で言うと、外人持ち株比率は。ほぼ30%付近ですが、50%を 超えたところも多い。例えばソニーは57%です。 繰り返せば、買い超の主体は、 (1)ETFを買う日銀、 (2)公務員年金の基金、 (3)公的年年金の基金(GPIF)、 (4)そして外人投資家です。 買って上げているのは、外人投資家と官のマネーです。 売って下げるのは、個人投資家と、金融機関(銀行、生保)です。 この単純な売買の構造が、2年半前から株価を2.5倍に上げたわが国 の株式市場です(日経平均8000円→2万円水準)。 ■5.日銀による、ETFの買いの時期と金額 日銀がETFの買いを開始したのは2010年12月の142億円でした。その 時から現在で、ETFの買いを、週単位で公開しています。 http://www3.boj.or.jp/market/jp/menu_etf.htm 2013年度以降の、買いを月別に示します。2014年10月までは年間購 入が1兆円枠(1か月平均833億円)で、2014年11月以降はその3倍の 3兆円枠(1か月2500億円)です。 日銀のETF買いは、売りがなく、買いの一方です。このため、日銀 がもつ株ETFは、2015年5月末で6.4兆円に膨らんでいます。 ▼日銀のETFの買い:2013年~2015年5月実績 2013年 2014年 2015年 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 1月 227億円 1104億円 3443億円 2月 238億円 866億円 1322億円 3月 574億円 949億円 2464億円 4月 1266億円 696億円 2555億円 5月 752億円 476億円 2166億円 6月 990億円 390億円 (毎月2500億円平均) 7月 744億円 720億円 ↓ 8月 1664億円 1276億円 ↓ 9月 1056億円 438億円 10月 917億円 1323億円 11月 485億円 1900億円 12月 1456億円 2244億円 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 9617億円 1兆2382億円 1兆9950億 【2013年の方法】 2013年は年間ペースで1兆円の枠で、月平均800億円くらい買ってい ます。1回の買いが150~200億円くらいでした。少ない月で2回から 3回、多い月は5回から7回くらい買っています。2014年10月までは、 以上のような買いのペースでした。 日経平均で、前場に1%(約150円)下がると、後場の1時15分ころ から、「どこからともなく買いが入って、するする上がる」という 動きになっていました。日銀が1回当たり150億円から200億円の買 いを入れていたからです。 2013年は、外人投資家(ヘッジ・ファンド)が、年間で15.1兆円 (月平均1.26兆円)の日本株を買い越し、日経平均をほぼ2倍の1万 6000円に上げた年でした。この2013年でも、日銀は、下がる日には、 ETFの買いを入れていたのです。 【年初を下回っていた株価:2014年】 2014年1月の年初の日経平均は1万6147円でした。5月末は1万4632円、 8月末は1万5454円、9月末は1万5708円と、年初を下回っていました。 【外人投資家の買い増しの停止があった】 原因は、前年に15.1兆円も買い越した外人投資家が、2014年1月か ら10月までは、6037億円の売り越しに転じたからです。 【公務員年金による買いの出動:2014年5月~】 このため、2014年5月からは、公務員共済年金、私学共済年金、 GPIFが、信託銀行を通じて1か月に6000億円くらいを買い越して、 株価を上げていたのです(投資主体別売買)。 実際、2014年1月以降、日経平均で1万4000円を割ろうとしていた時、 買い支えて1万5000~1万6000円に保ったのは、公務員共済年金によ る買い増しでした。 (注)2014年5月から12月までで、信託銀行を通じた買い越しは2兆 7000億円になっています。月間平均で3400億円の買い越しだったの です。 【2014年10月末の、日銀の決定】 2014年10月末には、日銀は「国債を1年に80兆円買い増す追加緩 和」ともに、ETFの年間の買い枠を、3倍の3兆円に増やす発表をし ています。 理由は、2014年の株価の上昇が、はかばかしくなかったからです。 買い枠1兆円/年では、株価を上げるに足りないと見て、3兆円の枠 に増やしたのです。1か月平均で2500億円、1回では360億円の買い です。日銀は売ることがないので、買い一方です。 上表を見ると、2014年11月から、月2500億円をメドとしたETFの買 いになっているのがわかります。 現在のルールは、 ・前場で0.3%(60円)くらい下げると、 ・後場の13:15分から360億円のETFの買いを入れて、株価の下げを 止める。または上げることです。 (注)8000円の時期に比べて、株価は2.5倍に上がっているため、 買い支えや上げるにも、2.5倍の資金が必要です。 【日銀の買いに、GPIFも加わった】 日銀のETF買いに、14年11月以降、GPIFによる買いが、加わってい ます。残った枠は7兆円です。 1年で使うには大きすぎる枠ですが、これからの1年で使うとすれば、 毎月5800億円の買いになります。日銀2500億円と合わせると、 8300億円/月です。 向こう12か月のペースでは〔8300億円×12か月≒9.96兆円〕 ほぼ10兆円/年です。今後、年間10兆円ものETFの買いがあると、日 経平均は、現在の2万円水準が、少なくとも2万4000円には上がるで しょう。 【更に、ゆうちょ銀行の、想定枠が10兆円】 200兆円の資金を運用しているゆうちょ銀行も、日銀に国債を売っ て入ったマネーで、国内株の買い10兆円、米国株の買い10兆円とい う枠をつくる感じです。 こうした官の資金の投入は、「消費者物価の上昇目標2%を達成す るための金融政策」の一環とされています。日銀と財務省は、是が 非でも、消費者物価が2%上がるマイルドなインフレ経済にもって ゆく。このための株式の購入とされているのです。 ゆうちょの銀行の想定枠10兆円の買いが、 ・日銀のETFの買い(月間2500億円平均:決定分)と、 ・GPIFの買い(5800億円想定分)に加わると、 株価の上げは一層大きくなって、2015年末には2万6000円に上がる 感じがしています。 官の公的資金での、株の買いを停止するとき、あるいは停止の発表 をするとき、株価の大きな下落が予想されます。それが、いつか? そこまでは、政府と日銀は考えていないでしょう。株価を上げ、イ ンフレ目標2%を達成するまでの想定しかないのです。日銀のもっ と新しい予想では、物価目標2%の達成のメドがつくのは、2016年 会計年度の初旬(2016年5月ころ)とされています。 日銀の予想に基づけば、来年の2016年5月までは、異次元緩和と、 株価への介入を続けることになります。波乱要因は、FRBの利上げ の時期です。2015年9月説、12月説、2016年春という3つの説があり ます。 大地震の確率については、紙幅がなくなりましたので、次号としま す。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【ビジネス知識源アンケート:感想は自由な内容で。 以下は、項目の目処です】 1.内容は、興味がもてますか? 2.理解は進みましたか? 3.疑問点、ご意見はありますか? 4.その他、感想、希望テーマ等 5.差し支えない範囲であなたの横顔情報があると、今後のテーマ と記述のとき、より的確に書く参考になります。 気軽に送信してください。感想やご意見は、励みと参考にもなり、 うれしく読んでいます。時間の関係で、質問への返事や回答ができ ないときも全部を読み、共通のものは記事に反映させるよう努めま す。 【著者へのひとことメール、および読者アンケートの送信先】 yoshida@cool-knowledge.com ◎購読方法と届かないことに関する問い合わせは、ここにメール → reader_yuryo@mag2.com ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ■1.有料版では、新規登録の場合、『無料で読めるお試しセット』 が1ヶ月分送信されます。以下は、最近のものの、テーマと目次の 項目です。興味のある方は、ぜひ登録して購読してください。 ▼有料版の目次:3月号分を掲載しました。 毎週、質の高い論を展開する有料版は、いかがでしょう。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ <766号:信用創造についての「新説」(1)> 2015年5月6日 【目次】 1.民間銀行によるマネーの創造は、貸付金の増加として行われる 2.銀行による信用創造(つまり貸付)が、マネー・ストックを増や す 3.貸し出したお金は、支払いに使われるので、銀行預金の増加には ならないのではないかということについて 4.日銀が量的緩和をしても、銀行の貸出が増えていない理由につい て 5.投資の期待ROIがとても低い ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ <767号:信用創造についての「新説」(2)> 2015年5月13日 【目次】 1.日銀が、信用創造して増発できるマネーはベース・マネーである 2.ベース・マネーとマネー・ストックは区分しなければならない 4.異次元緩和の、プラス効果がない 5.円安になった理由 6.円安による上場企業の利益の上昇が、株価を上げた 7.株価の時価総額の意味 8.GPIFの、新しいポートフォリオ(運用の枠) 9.GPIFの株買いは、100%の確率でのリスクがある 【後記】 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【↓まぐまぐ会員登録と解除の方法】 http://www.mag2.com/howtouse.html#regist ◎登録または解除は、ご自分でお願いします。 (まぐまぐ有料版↓) http://www.mag2.com/m/P0000018.html (まぐまぐ無料版↓) http://www.mag2.com/m/0000048497.html (以上) ■2.「まぐまぐの有料版を解約していないのに、月初から届かな くなった。」との問い合わせが、当方にも多いのですが、ほとんど の原因は、クレジットカードの「有効期限切れ」です。 なお、登録情報は、まぐまぐの『マイページ ログイン』の画面を 開き、登録していた旧アドレスとパスワードでログインして出てき たマイページで、メールアドレス、パスワード、クレジットカード を新しいものに変更できる仕組みです。クレジットカードの変更、 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