金融危機以降、膨らみすぎた世界金融の行く末(1):プロローグ部
Written by admin on 2013年9月30日 – 15:00
おはようございます。2013年、14年の経済は、2008年9月に勃発し た金融危機以降のものです。20年後になると・・・歴史的には、 「Post-Crisis経済」と言われるでしょう。2013年の9月で、もう5 年も経ちました。 ▼量的緩和が、5年後も、まだ続いているという異常(9月で5年) 米国FRBのドル増発(量的緩和第三弾:QE3)は、起こった金融危機 に対する対策です。金融危機とは、金融機か抱えた不良債権の、大 きさの問題です。 量的緩和は、08年9月の危機の5年後も、毎月、 ・国債を$450億(4.5兆円)、 ・不動産ローン担保証券(MBS:Mortgage Backed Security)を$4 00億(4兆円)、 ・合計で$850億(8.5兆円)買いながら、続いています。 中央銀行の量的緩和(=マネーの増発)は、その国の金融が普通の 時は、決して行いません。インフレを生むためです。 【量的緩和の実行】 最後の貸し手である中央銀行がお金を出さないと、金融危機になる ときに、銀行にマネーを供給するものが量的緩和です。逆から言え ば、08年9月のリーマン危機以降の、米国の金融危機は、まだ続い ています。 【公表されたバランスシートでは、回復だが・・・】 金融機関は、利益を出すようになって、利益の蓄積により自己資本 を回復したと言われ、金融機関の株価も上がっています。金融機関 は、公表されたバランスシートでは、全部、正常になっています。 「金融機関の資本の正常」が本当なら、FRB(連邦準備銀行)が、 危機対策である量的緩和を続ける理由は、ないはずです。 (注)経済マスコミやエコノミストは、なぜ、こんな当たり前のこ と指摘しないのでしょう。これも、不思議に思えます。 ▼中央銀行は、量的緩和を続ける理由を言わない 量的緩和とは、 ・金融機関の債券を中央銀行が買い上げ、 ・金融機関に、決済に不足する現金を、供給することです。 中央銀行は、企業に対しマネーを供給することはしません。銀行に 対して行う。銀行に行うことを、「経済に対して」と言っています。 本当は「銀行に対して」としか思えないのですが・・・ 米国の金融機関の、公表されたバラスシートに見れば、自己資本比 率が10%以上にもなっています。つまり、厳しくなった新しいBIS 規制(バーゼル3:自己資本比率11%基準)を満たすくらい正常化 したのなら、FRBがマネー供給を続ける理由は何か? なぜFRBは、毎月8.5兆円のドルを、金融機関に対して増発し続けて いるのか? 理由が分かりますか? そしてなぜ、13年9月に、バーナンキの明らかな「ほのめかし」に よって予定されていた量的緩和の縮小を、先延ばしにしたのか? ▼公式の理由を聞けば、笑うしかない 【0.02%の雇用という理由】 「13年8月は、雇用の増加が16万9000人だった。メドを20万人台の 増加とすれば3万1000人少なかった。米国は、雇用の回復が十分で はない。・・・だからFRBは量的緩和を続ける」と言っています。 これを聞いて「笑えました」。 FRBが雇用目標の達成に、金融政策によって、責任をもつというの が、まず、変です。雇用は、政府の責任でしょう。 次に、人口3億人の国で、その1万分の1の、統計誤差以下の3万1000 人を問題にしたことです。 3万1000人は、全米の雇用総数1億5000万人に対し、5000分の1です。 %で言えば0.02%でしょう。5000人のうちの1名です。5000人の会 社の中の1名は、数時間で雇用が変わる数字でしょう。これより、 雇用統計の、月次誤差が、はるかに大きい。ところがこれを理由に、 量的緩和を続ける。こんなことが、本当の理由であるはずもないで しょう。 【住宅価格指数では、変動の大きな1ヶ月で0.6%と0.9%】 住宅価格の評価でも、実に、変です。 「全米20都市の住宅価格指数(ケース・シラー指数)は、13年7月 は、前年比で12%上昇した。ただし前月比で見ると、指数の上昇は 0.6%と前月の0.9%から縮小した・・・だから、住宅価格は弱含み。 このためFRBは、住宅ローン担保証券(MBS)を、1ヶ月に4.5兆円、 額面価格(100%)で買って、マネー供給を続ける」 住宅価格の前年比+12%は、大きな上昇です。ここに、月次で0.6% や0.9%という、これもまた「住宅価格のサンプル集計の統計誤 差」に過ぎないように小さな、しかも1ヶ月の数字を挙げ、「FRBが 住宅ローン担保証券を買い付ける」ための理由にしています。 (注)1ヶ月の価格は、統計誤差が大きい。 ここも、普通の読解力で読めば「変だ」と感じる点でしょう。 以上のように、雇用と住宅価格の、統計誤差より小さい数値を示し、 「量的緩和の継続」の理由付けにするのは、隠れたところで「金融 機関に危機が続いているため」と見ています。 【日銀が、戦後はじめて、金融危機対策とした量的緩和】 「量的緩和:Quantitative Easing」は、世界で最初に、日銀が200 1年3月~2006年3月まで、国債を買って、金融機関に現金を振り込 むという形をとって行った通貨の増発策でした(金額は約80兆円)。 資産の中の、200兆円規模の不良債権によって、資金が不足してい た金融機関(金融システム)に、現金を与えることが目的でした。 これを、戦後はじめて、大規模に行ったのが日銀です。 その後、08年9月のリーマン危機のあと、米国FRBと、欧州ECBも、 日銀がはじめた「量的緩和:Quantitative Easing」を踏襲しまし た。 それまで、量的緩和という言葉も方法も、普通のものではなかった のです。 本稿のテーマは、<金融危機以降、膨らみ続けてきた世界金融の行 く末(1)>です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <有料版676号:金融危機以降、 膨らみ続けてきた世界金融の行く末(1)> 2013年9月25日分 【目次】 1. 増え続ける金融資産は、次の不良債権危機の準備である 2.ところが、ここに、中央銀行というものがある。 3.金融危機は終わっていない 4. 金融機関の米国型倒産は、株価下落から 5.08年9月の金融危機以降、膨らみ続けてきた世界金融の行く末 6. 2つの事例 7. 600兆円余のマネー増発 8.金融危機の08年のあとも増えた、 米国世帯の金融資産が意味すること ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1. 増え続ける金融資産は、次の不良債権危機の準備である 最初に、骨子を、端的に示します。 ▼金融資産が増えるから、債務危機になる。 ここではまだ、「金融資産が増えるから、債務危機になる」と言え ば、それは変なことに思えるでしょう。 これは、「Aさんの金融資産=Bさんの負債」という金融資産の構造 から来ます。 例えば、銀行への預金が増える。これは、預金という金融資産の増 加です。預金が増えた銀行は、貸付を増やすか、国債などの債券 (債務を証する証券)を買います。つまり、誰かの負債が増える。 金融資産は、どこまで言っても、「金融資産=金融負債」という構 造をもつものです。 ◎このため、世帯の金融資産(個人金融資産)が増えた分、誰か (別の個人、企業、政府)の負債が増えます。国内で増えない時は、 海外で貸付を増やす。 ▼金融資産が増え過ぎた結果が、不良債権と金融危機 金融資産が増えることによって、負債が大きくなり過ぎると、借り た人(個人、企業、政府)が、利払いと返済ができなくなります。 借りた人(住宅ローン、企業借入、国債)が利払いと返済ができな くなれば、負債は不良債権化します。 ●この不良債権化が意味する本当のことは、金融資産も、不良債権 と同じ額、減るべきだということです。 負債は、借りた人(個人、企業、政府)が利払いと返済ができる金 額の価値しかもたないように、減るべきものです。負債を払えない 人は、払えないから、金融資産の価値が減らねばならない。 金融資産1500兆円=借りた人の負債1500兆円=GDPの3倍。 借りた人が、利払いと返済が可能な額は、1000兆円=GDPの2倍 (注)以上は日本ですが、世界もGDPの3倍の金融資産と負債です。 以上なら、金融資産の実質額は、本当は、1000兆円です。 500兆円分、負債者が利払いと返済ができないなら、それは、金融 資産としては無価値です。 金融資産が減ることによって、負債の価値(=金融資産の価値)が 保たれる。これが金融です。 金融とは、お金を融資する(貸す)ことです。貸したお金の価値は、 借りた人が返済と利払いができないと、無価値です。これが「お金 を、融(かす)こと=金融」です。英語ではFinance(=融通) ・・・・・ 【後記】 無料版として、有料版のプロローグ部をお届けしています。興味の ある方は、ぜひ有料版を。最初の1ヶ月は試読期間であり、無料で す。1ヶ月読んで気に入れば、正式購読になります。 新著『これからの5年』を出版したビジネス社が、日経新聞や読売 の全国版で、かなり大きな広告を打ってくれています。 先日、あるホテルでの朝食のとき新聞を眺めると、広告に自分の顔 が出てきて、びっくりしました。アマゾンのカスタマー・レビュー 等を、ぜひご覧下さい。 アマゾンへのリンク ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【ビジネス知識源アンケート:感想は自由な内容で。 以下は、項目の目処です】 1.内容は、興味がもてますか? 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