過去の確率を未来に投影する金融工学の誤り:反論を期待して・・・
Written by admin on 2011年9月21日 – 09:00
おはようございます。ついこの間の台風12号に続く15号が、各地で 再びの豪雨をもたらしています。NHKは、緊急特集を組み、厳重な 警戒を呼びかける。土砂ダムという、いままで聞いたことのなかっ た災害と、大型河川の氾濫が懸念されます。 ご無事で生活されているでしょうか。それにしても、3.11以降、 自然災害が多い。気象の異変には原因があるはずですが、まだ「原 因→結果」の関係は明らかではない。「複雑系」ともされる。 複雑系; 相互に関連する多くの要素が組み合わさって、全体としてある結果 をもたらすものをいう。全体として起こる結果(たとえば豪雨)は 、個々の部分である要素からは、明らかにならない。 気象では、海洋の温度と状態が、大気にもたらす変化が70%くらい を決定しているとはいう。スーパー・コンピュータによるシミュレ ーションでも、数理的に不確定な要素が多すぎ、無理なのでしょう 。地震と同じように、予測ができるようになれば、事前対策が打て るので悲惨な被害は減るでしょう。 経済も、要素が多い複雑系です。経済が自然科学と異なる点は、事 実が原因になって、線的な論理で結果が決まるのでないことです。 事実に対する「人間の異なる解釈」がはいり、その解釈によって経 済行動が決まる。 自然科学=事実としての原因→線的論理→結果 たとえば引力は、人間がそれをどう解釈するかに係わりなく、働き ます。「線的論理(法則とも言う):2つの物体の間には、物体の 質量に比例し、2物体間の距離の2乗に反比例する引力が作用する」 いや私は、距離の3乗に反比例すると解釈すると言っても、無意味 です。ビルから落下するとき、「頼むから、引力よ働くな」と言っ ても、意志にかかわりなく地面に落ちます。 工学(エンジニアリング)は、こうした自然の法則を、物理・化学 的に発見し、利用します。自然科学では「原因→結果」の関係は、 1:1です。 しかし、経済は以下です。 経済=事実として事象→人間の解釈→買いと売りの行動 今日の日経平均は、8741円でした。これは事実です。1万円だった ということはできない。この8741円に対し、人間の解釈がはいる。 「高い」と考える人がいる。別の人は「安い」と考える。これを原 因に、「買う行動と売る行動」が起こります。その買いと売りの一 致点が、8741円という、今日の、日経225種の株価の結果です。 明日はどうなるか? 安いと考え、買う人が多いか、高いと考え売 る人が多いか決まります。下がると思って売る人(正確には売る金 額)が多ければ、価格は下がる。上がると考えて、買う人が多けれ ば価格は下がる。 ●金融商品の売買で利益を出せるかどうかは、「売りが増えるか、 買いが増えるか」の予想にかかっています。 今日、(たとえば)ユーロの危機対策は中味がないことが明らかに なったと解釈する→PIIGSのデフォルト懸念からユーロ債売りが増 える→ユーロは下落する→輸出国の輸出は減少する→アジアと日本 の株価は下がる→日経平均の先物は売りが増える→日経平均株価は 下落する。 逆の解釈もあります。EU、ECB、IMFによるユーロの危機対策は効果 を上げ、PIIGS国債のデフォルト懸念は後退した→ユーロ買いが増 える→ユーロは上がる→輸出国の輸出が増える→アジアと日本の株 価は上がる→日経平均の先物は買いが増える→日経平均株価は上が る。 事実の解釈の違いで、真逆の結果になります。 金融工学(デリバティブ)は、「今日実現した金融商品の価格には 、歪みがある」と前提することから始まります。実現した価格は、 確率的な理論値と比較して「高すぎるか」、「安すぎる」。そこで 、その価格差を利益にするよう売買する。高すぎるものと判断した ものを売り、安すぎると判断したものを買う。 理論値は、過去の価格変動からの確率値とする。これは、前提です 。この方法が正しいかどうか、実は、誰にも分からない。そのあと は線的な論理です。金融工学と言われるゆえんが、ここにあります 。 *事例* 【過去の確率を、未来に延長した】 サブプライム・ローンの証券化では、「全米の住宅価格が、同時・ 多地点で大きく下がるのは、70年に一回」とする前提があった。大 地震の確率に似ています。1929年からの大恐慌のとき、同時・多地 点で大きく下がっただけだったからです。 その後70年、部分的・短期的には、上げも下げもあった。たとえば 1980年代後半から90年代初頭のS&L危機です。このとき、住宅価格 が下がり、発生した不良ローンは1184億ドル(9.4兆円:1991年) だった。 しかしそのときも、「全米の住宅価格が、同時・多地点で大きく下 がる」ものではなかった。同時・多地点で大きく下がる確率は、70 年に1回、つまり、1年に1.4%としていいだろう。保険会社もこれ を正しいとする。 サブプライム・ローンは、当初は金利が安いが、あとで金利上がる 。金利が上がったあとは、ローン3000万円に対し、1ヶ月22万円を 払えない世帯も増えるから、デフォルト率増加する。しかし3ヶ月 、支払いが滞れば、担保の住宅を接収できるから、心配はいらない 。失業中の人にローンをおろしてもいい。 改装して売れば、住宅価格が下がらない限り、転売した代金で、ロ ーンの100%回収ができる。部分的には、未回収のローン額より低 い価格でしか転売できない物件もあるかもしれない。 【大数の法則を使う合成証券】 下落リスクを避けるため、全米各州、各都市の1000軒の住宅ローン を組み合わせる。証券の総価格は、平均価格3000万円×1000軒分で 300億円になる。 この1000軒の住宅が、全米で同時・多地点で下落する確率は、1年 に1.4%に過ぎないとしていい。このため、1.4%の料率(プレミ アム)で、回収を保証する保険をかける。 1年の元利回収金は、1軒(3000万円のローン:30年)で、金利を8 %とすれば、1ヶ月22万円、1年で264万円である。1000軒(300億円 )のローンに対し、1年に26億4000万円の回収額である。 1年の保険料は、回収金26億4000万円×1.4%=3696万円とすれば 引き受け手がある。1年に3696万円をAIG、ベアスターンズ、あるい はリーマンに払い、回収を保証するCDSを引き受けてもらう。(注 )AIG、ベアスターンズ、リーマンの3社はいずれも破産しています 。 1年の、当方の手数料は、当方の26億4000万円×1%=2640万円とす る。30年間、2640万円が入り続ける。 MBSを買った投資家は、300億円に対し、1年に、26億4000万円-CDS の保険料3686万円-当方の手数料2640万円=25億7674万円の配当を 受け取ることができる。 【利回りが高い安全証券ができた】 300億円が、30年で25億7674万円×30年=773億220万円になる。利 回りが高く、回収リスクがないこの証券(MBS)は、低金利の世界 に飛ぶように売れだろう。 特にゼロ金利の日本の金融機関や年金基金、そして基金をもつ大学 等である。MBSが売れれば、住宅ローン資金が集まるから、その資 金でまた別のローンを作ることができる。 【MBSの売りで米国に資金が集まる】 ローンを組めば、住宅の買い手は増える。買い手が増えれば、住宅 価格は上がるから、回収リスクは低くなる。上がれば住宅の買い手 は、一層、増える。 こうした、合成住宅証券(MBS:デリバテイブ)を最初に作ったの が、ゴールドマン・サックスの「ゴールデンチーム(6名)」でし た。次第に、商業用不動産ローン、車のリース、消費者ローンも一 緒に合成して、ABS(資産担保証券)として、大きく、複雑になって いったのです。 気象の複雑系から、思わず、話しが発展しました。実は、この金融 工学がつくった、住宅証券は、誤りだったのです。 デリバティブは、誤りの前提の上に築かれていると感じます。以下 でそれを論証します。短文ですが、現代金融に根本的なところで、 疑問を提示するものです。反論を期待します。 私が誤っているのか? あるいは、世界の金融が誤っているのか? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <556号:過去の確率を未来に投影する金融工学の誤り: 反論を期待して・・・> 2011年9月21日号 【目次】 1.過去を未来に投影するリスク確率論は、誤っている。 2.未来の確率で、誤りやすいこと 3.正しい確率論 4.確率の、類似の事例 5.株価 6.未来に投影した確率への疑問 7.オプション取引のオプション料に関する注記 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.過去を未来に投影するリスク確率論は、誤っている。 科学的ではなくても、稀なことは、続けて起こる、日本の格言では 、二度あることは三度あるというマーフィーの法則が、いまは、正 しい時期にも思えます。あるいは、ブラック・スワン現象でしょう か。 近年、大震災や原発事故も含め、だれもが一生に一回も経験しない ようなおおきなことが、連続して起こっています。2000年代の、大 地震を含む自然災害は、国連の集計(災害疫学研究所)では、すで に述べたように90年代の2倍です。 (注)科学的には思えない格言も、人間に関しては、意外に正しい ことを言っています。 ■2.未来の確率で、誤りやすいこと オプション価格も決めている確率計算を、現実に適用するときの、 基本的な誤りと考えられることを指摘します。 たとえば、東南海でマグニチュード8以上の大地震が起こる確率は 、今後30年間で87%とされています(政府機関)。 その根拠は、過去、100~150年のサイクルで、地下の固い岩盤であ るプレート(地殻)のゆがみがおおきくなって、M8級の大地震が起 こってきたという過去の歴史しかない。 われわれの地球は、薄皮饅頭です。固い地殻のほぼ30km下、および 海洋の6km下は、どろどろに溶けた圧力の高い岩石(マントル)で す。このため、皮が薄い海底で、大地震が発生しやすい。 1944年(昭和19年)に、東南海の大地震がおこって以来、65年間 、その付近では大地震がない。そのため、今後30年間をみたとき、 87%の確率で大地震がおこるとされています。静岡県の浜岡原発が 停止されたのは、これを理由にしています。 30年で87%というように7%までつくのは、どうかと思います。そ んなに正確なのか。決してそうではない。実証的な地震学は、変で す。過去を調べ、ごくおおざっぱにしかわからないというのが、真 実です。 地震学も、政府から研究資金をもらっているので、原発を作ってき た原子力工学のようにゆがんでいるとすれば、情けないことです。 他の科学も、政府の補助金を得るために、学説をつくるという点が みられます。 もともと不正確なはずの、30年で87%という確率を、タイム・ス ライス(時間分割)し、1年に起こる確率は、87÷30=2.9%とする ひとも多い。 元経済・財政大臣だった竹中平蔵氏は、1年に2.9%、1ヶ月なら0.2 4%しかない。交通事故や飛行機事故より確率は下だ。事故を理由 に車や飛行機に乗るのをやめるひとは少数だろう。だから原発も安 全だとしています。 確率をタイム・スライス(時間分割)する方法は誤りに思えます。 ■3.正しい確率論 われわれは、正しく、以下のように考えておかないといけないでし ょう。金融商品のリスク率(オプション料を計算するときのボラテ ィリティがリスク率です)も、地震学と同じなのです。 外からは中が見えない箱に、赤玉が87個(87%)、白玉が13個(13 %)入っている。あなたは今後30年間うち、いつの日か分からない が、一回だけ、指定された日に、その箱から、一個の球を取り出さ ねばならない。それがいつになるかだれもわからない。そのときは 、87%の確率で、危険な赤玉をひくだろう。これが30年で87%とい う東南海の大地震の確率である。 重要なことは、その日は、明日かもしれないことである。5年あと か10年あとかもしれない。30年間、神からの指定がないかもしれな い。いつかはだれにもわからない。だれにもわからないことを、神 のみぞ知るという。球をひくのは、30年間に1回だけである。 こうした観点で、「全米の住宅価格が、同時・多地点で、大きく下 がるのは70年に一回」ということを見直すと、1年での下落確率は 、1÷70年=1.4%とするのは間違っていることがわかるでしょう 。 住宅ローンの回収保険であったCDSの料率(保険料)を、1年で回収 額の1.4%とするのは、誤りだったのです。 いまこのCDSは、国債、社債、住宅ローン、各種証券に対し、世界 で2400兆円もの、金融原資産に対し、かかっています(BISのデリ バティブ統計:2010年12月) http://www.bis.org/statistics/otcder/dt1920a.pdf ●どうか、当方の確率論に対し、反論をお願いします。 もし、私が言っていることが正しいなら、世界の金融は、大きな間 違いを犯していることになるからです。 ■4.確率の、類似の事例 ラスベガスのルーレットの赤黒(奇数・偶数)でも、赤が出続けた から、黒が出る確率が高くなったとはいえない。いくら赤や黒が続 いても、次は赤黒が50:50である。 ところがルーレットにある0と00の2つは奇数でも偶数でもない。つ まり赤でも黒ではない。このため一回の赤、または黒への賭けで2 /38(5.2%)も損をする。これがルーレットのゲーム代になって いる。 唯一の儲けるコツは、元金より増えたときにやめることだが、ほと んどのひとがやめない。その日はやめても、翌日儲けたお金を賭け 、1回平均で5.2%ずつ失う。 0.948の30乗は20.1%だから、30回賭けると、元金は20%に減る。1 晩で100回賭けるのは容易だが、100回賭ければ、元金は0.5%に減 ってしまう。結果の平均は、10万円が500円である。 赤が5回続けて出たから、つぎは、黒が出る確率が50%以上に高く なったという期待も誤りである。100回も続けて赤が出る稀なこと が起っても、次は赤50:黒50でしかない。 正確にはゲーム代として一回につき5.2%ずつ損をしている。あき らかに損をするラスベガスがなくならない理由は、ひとには、自分 だけはと、悪運より幸運を期待する性格があるからである。行動フ ァイナンス理論は、こうした非合理的な人間の行動を説いているが ・・・。 ■5.株価 ランダム・ウォークをする株価や金融商品でも、おなじである。あ がると思うひとが多ければ、その株価は、買いが増えるため、今日 すでにあがっている。買いが増えれば株価はあがる。さがると思う ひとが多ければ、その株価は、今日すでにさがっている。 株価はこうした思惑を、今日の価格として実現する。言い換えれば 、今日のあらゆる相場価格は、投資参加者の価格予想からくる思惑 を折り込んだものである。 価格が動くのは、なにかの新情報または新しい解釈をもとに、その 予想が変わるからである。ひとは、情報や事実では動かない。事実 や情報の解釈、つまり意味づけで動く。 過去、相場があがっていると今後もあがると解釈しやすい。さがっ ているときは、多くの人がまださがると解釈してしまう。このため 、相場の金融商品の価格は、上げも下げも行き過ぎる。不動産価格 も同じである。ここに、ヘッジ・ファンドが利益を上げるスキがで る。 相場商品として価格が変動する原油もおなじである。金も同じであ る。長期トレンドは終わった過去にすぎない。価格をグラフにした 罫線や移動平均の長期トレンドであがっているから、今月もあがる とは言えない。 今日、あるいは今月、またはこの3ヶ月、株価が上がるか下がるか 、50:50である。先物であれ現物であれ、売りがふえれば株価はさ がる。買いが増えればあがる。 株式での利益の機会があるのは、人々が、ある時点でマーケットが 歪んだ価格をつけているときである。それと、株の売買に参加する ひとと、買いの金額が増え続けるとき(米国の1995年~2000年は40 1Kで個人株主が急増した)である。 2000年のIT株バブル(ナスダックで約5000ポイント)は、退職基金 を自己運用する401Kの制度で、米国世帯の50%(5000万世帯)が株 を買ったことによるものだった。2000年の春にはじけている。 以上のような確率への知見が、今後30年間で87%という大地震の 発生の、本当の意味でしょう。住宅ローンは、返済期間が30年です 。以上の確率を知った上で、住宅ローンが組めるかどうか・・・米 国では住宅価格は、同時・多地点では70年間も下がっていないとさ れていました。 われわれは、過去よりはるかに大きなリスクに、さらされている ように感じます。政治や官僚組織を含めて、20世紀型のものが次々 に壊れる非常時かも知れない。政府を見ていると、1989年のソ連崩 壊の前に似ています。企業もほぼ同じです。 米国の住宅価格では、神の日が、06年夏~07年に来て、それが誰 の目にも明らかになったのが世界金融危機の08年8~9月でした。19 98年には、天才達のヘッジ・ファンド、LTCMもロシア国債のデフォ ルト確率を低く見て、それを大量に買い、破産しています。 ■6.未来に投影した確率への疑問 ▼未来は、明日になっても未来 人間の、過去の事実に基づく知見では、これがわからない。明日 という未来は、明日になっても、1年後でも、未だ来たらぬもので す。 未来を予想はできても、知ることはできない。1週間後の株価の新 聞を、今日作ることはできない。人間の知見は、過去の事実からの ものです。 ただし人間は、自分の自由な意志によって、明日はこうすると決 めて実行できます。これが未来を作るということの意味でしょう。 リーダシップがこれです。 ▼過去の確率を未来に投影し、タイム・スライスする間違い 住宅ローンの回収権を担保にしたRMSB(住宅ローン担保証券)やM BS(不動産ローン担保証券)という合成証券を組成したクオンツ達 は、見事に、間違えています。 その間違いは、確率を元経済・財政大臣のように、タイム・スライ ス(時間分割)して未来に投影し、CDS(回収保険)とオプション 料も組んでしまったからです。 全米の住宅価格が、同時・多地点で下落したのは1929年、大恐慌の ときしかなかった。70年前が、正確な記録が残る、さかのぼれる最 古だった。70年は長い。返済期間30年の住宅ローンは2回終わる。 おおくの異なる価格の動きをするローンを集めて合成する。 これで、ポートフォリオ(分散投資)が組める。個々の住宅はまだ しも、同時・多地点で、全体の住宅価格が下落する事態は70年に一 回しか起こらな。70年前を、人は忘れる。 大恐慌を本で読んでも、昔と今は事情が違うとする。(注)世代の 記憶は30年と言います(オルテガ・イ・ガセット:『大衆の反逆』 )。 混ぜ合わせた住宅ローンから、優先・劣後の構造を使い、 (1)優先債、 (2)メザニン(中二階)債、 (3)劣後になる劣後債(エクイティ債)の三層に、 トランシェ(切り分け)する。 合計1000億円の住宅ローンで、優先債が800億円、メザニン債が150 億円、劣後債が50億円とする。100億円(10%)という高い率でデ フォルトが生じても900億円のローンが回収されたとき、優先債は8 00億円の全額、メザニン債で100億円が回収できる。 リスクがあるメザニン債やエクイティ債も、回収保険のCDSをかけ ておけばデフォルトが増えたときでも、回収は安全である。メザニ ン債やエクイティ債は、そのCDSの保険料を十分払えるよう、年間 の配当利回りを高く設定する。 これで[利回りは国債より高く、しかも安全な住宅ローン担保証券 (RMSB)]が1000億円できる。年金基金や、国内での運用金利が19 97年以来ほぼゼロの日本の金融機関は、歓迎し、買うだろう。 ▼事実 2007年からの事実は、全米の住宅が同時に多地点で下落し、ローン のデフォルト率は、一挙に15%や20%に上がって、住宅証券は優先 債で60%に暴落しました。 保険料をもらってCDSを払うべき義務をおおきく負っていたAIG(世 界最大の保険会社でした)は保証していた債務が払えず倒産してし まった。このため、CDSが保証していたメザニン債やエクイティ債 は市場で価値がほぼゼロになり、流通市場も消えて3年になる。 FRBだけが額面で$1兆(80兆円)も買ってくれたが・・・ 70年に1 度のことが、わずか2、3年あとだった。 【大地震】 前記の「大地震」の確率に似ています。福島県を巻きこんで、東日 本に巨大地震が起こる確率はゼロとされていた。東電もこのため、 経費縮減から、建設後40年も経って利益は出るが配管が老朽化した 原発の安全投資をおこたっていました。 これが原発事故です。「稀なことが、連鎖して起こった。」これが 、08年9月の世界金融危機でした。米国のみならず、英国、南欧、 そして全欧州も、米国のほぼ6ヶ月から1年遅れで同じことでした。 実は、大地震も、デリバティブと全く同じ構造で、確率計算されて います。 リスクの確率をタイム・スライスし、過去の確率を未来に投影した デリバティブは、壮大ですが不可能な実験だったのかもしれません 。たぶん、現代のファイナンス理論の確率は誤りでした。しかし今 日も続けられています。在庫管理のおける安全在庫なら標準偏差を 使ってもいいのですが・・・(注)安全在庫=安全係数×標準偏差 ×√(商品の入荷日数) 【理論株価は・・・】 20世紀末のファイナンス理論のベースである理論株価は、 (1)会社の予想キャッシュ・フローを、 (2)期待金利、 (3)及び利益実現のリスク率で割り引いた「現在価値(NPV:Net Present Value)」です。 10倍は低い、25倍は高いとされている予想PERの倍率(株価/1株当 たり次期予想利益)も、未来の利益を想定した、この割引現在価値 に基づいています。 これも確率計算です。予想の予想の予想と、予想が3乗されて重な った、不確定なものです。たとえばリーマン・ショックの波及によ る世界の信用収縮と企業利益の大幅減と赤字、そして、今後の予想 される巨大経済ショック(国債リスク)は、予想できていません。 会社の買収や合併(M&A)のとき、株価見積もりのめどにはなり ますが、現実価格とはちがう架空のものです。現代の金融工学は基 礎となるところで、言い換えれば、未来の確率の、正規分布の想定 においてタイム・スライスの間違いをしています。 デリバティブの価値計算(オプション料等の価格計算)は、全体 的なシステミック・リスクリスク(波及して全部が下がる現象で、 時々起こる)には、完全に無効です。 普通は、ひとりひとりを独立して襲い、連動しない命のような、 個別のリスクには、過去の確率を未来に投影するのが有効です。 しかし、個別リスクをカバーする生命保険でも戦争・騒乱・疫病・ 自然災害で、多くの人が同時に亡くなるケースは、免責されていま す。そうでないと、保険料が高くて商品にならないのです。 デリバティブは、例に挙げた、箱の赤球・黒球のような正しい確 率論で、つくりかえねばならないでしょう。そうすれば、巨額に損 をして、金融危機が起こる確率も減るでしょう。21世紀のデリバテ ィブ金融は、確率論の誤りから、バブル価格とその崩壊を高頻度で 繰り返し、人々の生活、企業、金融資産をおおきく苦しめる、無用 な信用恐慌すらを生んでいます。 * 以上、本稿は、現在のオプション理論やCDSで使われている確率論 で誤りと感じることを述べました。しかし、実際には、デリバティ ブがかかった金融資産や証券(原資産)は、2010年12月で$601兆 (4京8080兆円)という、途方もない金額です。 世界の金融資産は、こんなにはない。推計ですが名目金額で1京500 0兆円(08年;預金+株+債券+国債)でしょう。 金融資産の元本をもつ人が知らないうちに、金融機関やヘッジ・フ ァンドによって、デリバティブがかかった運用と売買(例えば日経 平均の先物取引)が行われています。 ■7.オプション取引のオプション料に関する注記 オプション料は、自分で計算できます。インターネットでは、エク セル等にし、統計的な価格や金利変動をもとにした正規分布(言い 換えれば標準偏差)によって、オプション料の計算を公開している 人や会社も多い。今は、これくらい一般化しています。このサイト は一例にすぎません。 http://kakakufx.com/option/calc.aspx スポット価格が現物価格です。権利行使価格が、自分が買いたい価 格です。ボラティリティは、過去の価格変動率(歴史的な変動率= 価格変動の標準偏差)+未来の予想変動率(市場の期待変動率)で す。 過去の価格変動率は、毎日、価格が決まったものなので標準偏差で 計算ができます。予想変動率は、未来ですから、世界中の誰も理論 値を計算する方法をもちません(当たり前のことですが)。 過去の価格変動率から「上げが大きくなっている」、あるいは「上 げは小さくなっている、下げる」という判断しかない。これこそを 、投資家が自己判断します。 一般に予想変動率は、ブラックショールズ方程式から計算されるオ プション料から逆算して出しています。インプライド・ボラティリ ティ(折り込まれた変動率)とも言います。この計算でのオプショ ン料が高すぎるとあなたが思えば、オプション権を買う必要はない 。 オプション料以上に、価格が上がると判断するなら買い(コール) です。逆に、払うオプション料以上に下がると思えば、売り(プッ ト)です。 オプション取引では、オプション料と、あなたの未来の想定価格( 権利行使価格)の差が、買いか売りを決めています。以上のように 、デリバティブも原理を見れば、意外に単純です。 要は、現物価格と同じで、上がるか下がるかの予想です。レバレッ ジがかかって、利益も損も10倍から数十倍になるのは、株価先物、 FX、空売りに共通です。 現物売買にはレバレッジがない。 オプション料÷権利行使価格が、全部の金融商品のリスク率です。 在庫管理の安全在庫とほぼ同じ概念です。ブラックショールズ方程 式を使う安全在庫計算も、素敵かも知れません。別書で書く予定で す。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【ビジネス知識源プレミアム・アンケート:感想は自由な内容で。 以下は、項目の目処です】 1.内容は、興味がもてますか? 2.理解は進みましたか? 3.疑問点、ご意見はありますか? 4.その他、感想、希望テーマ等 5.差し支えない範囲であなたの横顔情報があると、今後のテーマ と記述の際、より的確に書くための参考になります。 コピーして、メールに貼りつけ記入の上、気軽に送信してください 。 感想やご意見は、励みと参考になり、うれしく読んでいます。時間 の関係で、返事や回答ができないときも全部を読みます。ときには 繰 り返し読みます。 【著者へのひとことメール、および読者アンケートの送信先】 yoshida@cool-knowledge.com ■(1)無料お試しセット(最初1ヵ月分): 有料版では、いつ申し込んでも申込み月の既発行分は、全部を読 むことができます。最初の1ヶ月間分は、無料お試しセットです。 その後の解除は自由です。継続した場合に、2ヶ月目の分から、課 金されます。 (1)『会員登録』で支払い方法とパスワードをきめた後、 (2)登録方法を案内する『受付メール』が送ってきて、 (3)その後、『購読マガジンの登録』という3段階の手順です。 【↓会員登録と解除の、方法の説明】 http://www.mag2.com/howtouse.html#regist 【登録または解除は、ご自分でお願いします】 (有料版↓) http://www.mag2.com/m/P0000018.html (無料版↓) 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