追悼:ドラッカー:仕事ができる人の習慣(5)
This is my site Written by admin on 2005年12月23日 – 08:00

こんにちは、吉田繁治です。昨日は、当地にしては大雪でした。
耐震偽装は、業界の体質問題にまで深化しています。

▼住宅への不安と対策

「自分の住まいは大丈夫か?」という不安が日々大きくなっていま
す。

国土交通省(旧建設省を含む)は、マンションだけについては、数
年をかけ(これで終わるかどうか不明)、日本の全物件を再検査す
るとのことです。一体いつまでかかって、どれくらいの量の問題物
件が出るか。

錦の御旗であり安心のもとであった「確認検査」は、民間も行政も
共通に「いいかげんなもの」であったことは明らかになっています。

どれくらいの時間と費用がかかるのか、全マンションの調査で問題
ありとなれば、補修ができない限り、建物部分の資産価値はゼロに
なります。残るのは、区分所有の土地部分だけです。

総額170兆円の住宅ローンでも、多くの欠陥が出れば、ほぼ全消
費者が払えなくなりますから、不良債権が再び激増します。

大雑把な言い方ですが、ある建築士から、耐震構造と他の手抜きを
含めば、経験的に言って20%から15%は危ういかもしれないと
聞きました。もちろん明証はありませんが、知っておくべきことで
しょうね。

日本の住宅はマンション・木造を含めば、5000万軒です。その
うち何戸が、危ないのか。危ない物件が、仮に1000万件なら、
大変です。

過去の不良債権問題をはるかに超える激震になります。
生命に係わる問題ですから、はるかに重大です。

1981年以前に建った建物は多くが「既存不適格」とされていま
す。建築当時は適法であっても、1981年以後の耐震基準に合わ
ないものがあるという意味です。阪神淡路大震災やその後の地震で、
全壊した建物の多くはこれでしたね。

住宅の新築または中古をこれから買う人は、資産を失わないため、
あるいはローン負債だけを抱えないために、契約前に「住宅品質に
ついての保証保険」を求めたほうがいいでしょう。納得できなかっ
たら、買うべきではない。

住宅販売業界がすすんでは言わないために、一般には知られていま
せんが、2000年から導入された瑕疵担保責任制度に基づいて「
品質保証保険」がついた物件もあります。

大きな品質問題が起これば、一般に、住宅業者に瑕疵担保責任はあ
っても、肝心の支払い能力がなくなります。今回のヒューザー、木
村建設、総研、検査機構も保証能力はない。

この保険は、施工者等が倒産したとき、保険機構を通じ消費者に保
険金を支払うというものです。銀行の預金保険機構にも似ています。
しかし残念なことに、保険制度に加入している業者は、ごく少数に
過ぎません。住宅業者の、業界としての意識の低さが伺われます。
http://www.ohw.or.jp/

私が住んでいるのは木造2階建てです。今の制度では、資格をもつ
建築士が設計していれば、構造の書類と確認検査がなくても、建築
されます。つまり耐震性を保証するのは、「建築士の良心」のみで
す。調べてはじめて分かりましたが、危ういものです。

【びっくりすること】
「重量鉄骨、鉄筋コンクリート造り、木造3階建ては別として、木
造住宅、プレハブ住宅のすべては、建物の耐震性はもちろん耐久性、
断熱性など、建物の骨格になる部分は審査されない・・・」

今の建築基準法は、こうした、重大な欠陥をもつ法です。

「地震が起こればわかる」と政府は言えません。有料版では、最近
2回にわたって取り上げ、本質的な問題が何か、考察しています。

再びの証人喚問は、来年の1月16日に行うようです。
建築の闇が深まることは、容易に予測できます。

住宅や建物は一旦建てば、50年、60年も使われます。
つまり戦後の、すべての物件が問われることになります。

1000万円の銀行預金が大丈夫かと心配するより、大きなことは
「自分の住んでいる3000万円の住宅の耐震性は、どこまで大丈
夫か」ということでしょうね。

姉歯証言によって、とんでもないところから資産の毀損(きそん)
が表れました。国難に近い問題です。

耐震性の程度がわからない住宅に住む私は、費用をかけ調査しても
うらか、地震がおこるまではわからない、たぶん起こらないだろう
という不安定さの上で、暮らすことになります。

▼本稿

前稿では、貢献、成果へのコミットメント、責任、成果の3つの領
域、強みを活かすこと、そして品性と誠実について述べました。真
面目に読んでくださって、感想をいただきありがとうございます。

本稿では、引き続き、強みを活かすことについて述べます。

人の強みということの根本的な理解のために、「比較生産費」の考
えを解きます。とても大事なことって、知られていないことでもあ
りますね。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    <220号:仕事ができる人の習慣(5)>

【目次】

1.驚くべき原理:比較生産費から
2.英国とドイツの得意分野の仮定(=モデル化)
3.比較生産費という概念を使いリカードゥが下した結論
4.分業での合計の有利性を論証したリカードゥ
5.両国が生産を特化し、貿易したとき
6.強みを組み合わせること、強みで分業すること意味
7.人員配置と仕事の選択における原則

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■1.驚くべき原理:比較生産費説から

英国の経済学者リカードゥ(David Ricardo 1772-1823)が見事に
論証したものに、「比較生産費」があります。

経済学の人類への貢献の中で、リカードゥの比較生産費説はもっと
も大きなもののひとつだと思います。この比較生産費を考えるたび
に、世の中には、頭のいい人がいると思います。

国際貿易、つまり国際分業論の根拠にもなったのです。比較生産費
は、人の強みがどんなものか、その本質から理解させてくれます。

国際分業とは、それぞれの国が、得意とする産業分野に特化し、(
得意なものに比較し)、不得意なものを輸入することです。これに
よって2国の合計での生産量を増やすことができます。

比較生産費の説は、
・会社で、個々人が強みをもつ仕事に時間を集中し、
・不得意なことを他に任せ分業することによって、
・全体の成果を高めることができるということを示すものでもあり
ます。

会社における人員配置、または人事にもヒントをもたらします。

■2.英国とドイツの得意分野の仮定(=モデル化)

単純にモデル化するために、リカードゥの例のように、生産物を綿
布とぶどう酒とします。

英国は、
・国内では、綿布の生産が得意であり(=比較生産費が低く)、
・それに比べればぶどう酒の生産は不得意だとします。

他方、ドイツは、
・綿布の生産とぶどう酒の生産の両方で、英国を上回る生産性を上
げていると仮定します。

以下のようなモデルを想定します。

▼2つの生産物での、生産性(労働量)の仮定モデル

      綿布1単位の生産に    ぶどう酒1単位の生産に
       要する労働量         要する労働量
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
英国       100人        120人
ドイツ       90人         80人
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
生産物1単位の
絶対労働量格差  10/9        3/2
生産性の絶対優位国 ドイツ         ドイツ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

絶対優位とは他国と比較したときの生産性優位であり、比較優位は
その国内だけでの比較での生産性優位です。まずこれを理解してく
ださい。

▼強み

【英国の強み】
英国内では、綿布1単位を生産するのに100人分の労働が必要で、
ぶどう酒の120人分より少ない労働量です。

・英国内だけで綿布とぶどう酒を比較すれば、
・綿布の生産のほうが、ぶどう酒の生産より得意(強み)であるこ
とになります。(比較優位)

これを、英国は綿布の生産に「比較優位」をもつといいます。

この場合の比較優位は、英国内での比較です。対ドイツではないこ
とに注意してください。ドイツに対しては、両方とも劣っているか
らです。

【ドイツの強み】
他方、ドイツは、綿布1単位の生産に要する労働量(90人分)が、
ぶどう酒1単位生産に要する労働量(80人分)より多い。

ドイツの国内だけでは、綿布の生産よりぶどう酒の生産に得意(強
み)があることになります。

ドイツは、ぶどう酒の生産に、比較優位をもっています。

【ドイツは絶対優位】
しかし、英国とドイツを比べれば、綿布、ぶどう酒の両方で、1単
位を生産するのに必要な労働量が少ない。

ドイツは、綿布とぶどう酒の両方で、英国に比べ「絶対優位がある」
ことになります。

▼まとめれば

(1)英国は、綿布、ぶどう酒の生産の両方で、ドイツに対し、生
産性で劣っています。

つまり英国は両方の生産で、ドイツに対し「絶対劣位」があります。

(2)しかし、英国内で見れば、ぶどう酒より綿布のほうが少ない
労働量で生産できます。

英国内では、ぶどう酒の生産に比べたとき、綿布の生産のほうに、
生産性の「比較優位」をもちます。

(3)ドイツは、綿布、ぶどう酒の生産の両方で、英国に対し、生
産性で優位です。

ドイツは両方の生産で、英国に対し「絶対優位」があります。

(4)しかし、ドイツ内だけで見れば、ぶどう酒より綿布のほうが
少ない労働量で生産できます。

ドイツ国内では、綿布の生産に比べたとき、ぶどう酒の生産のほう
に、生産性の「比較優位」をもちます。

▼常識では

ドイツは、両方の生産で英国に対し「絶対優位」をもつので、英国
から輸入(国際分業)をする必要はないように思えます。

ところがリカードゥの結論は、われわれの常識とは異なり、驚くべ
きものでした。(これが、20世紀の国際分業の原理にもなってい
ます。)

この際、『比較生産費説』を明確に理解しましょう。
これこそが「知識」と言えるような切れ味があります。

ドラッカーが至るところで言う、
・「強み」で人を見ること、
・強みで人員配置をすること、
・強みでポジションを与えること、
・強みで仕事をすること、の本当の意味が了解できるはずです。

ドラッカーも、リカードゥが比較生産費から導いた結論を知って、
この「強み論」を作ったように思えます。人事、経営、そして自分
の仕事の要諦(ようたい)でしょう。

■3.比較生産費という概念を使いリカードゥが下した結論

以下でその内容を、詳しく見ます。

【1.英国】
・ぶどう酒の生産をやめて、ドイツからぶどう酒を輸入し、
・綿布の生産に特化することによって、両方を生産していたときよ
 りGDP(国内総生産)を増やすことができる。

これは常識と一致します。

【2.ドイツ】
・綿布の生産をやめて、英国から綿布を輸入し、
・ぶどう酒の生産に特化することによって、両方を自国で生産して
 いたときより、両国の合計ではGDPを増やすことができる。

これは常識と一致しません。

▼常識と一致すること

英国が、不得意なぶどう酒の生産をやめ、国内で比較すれば得意な
綿布の生産に特化する。綿布を、ドイツに輸出した代金で、ぶどう
酒を輸入することによって、前より豊かになるのは「常識」でも理
解できます。

不得意なもの(弱みとのあるもの)は輸入し、その産業に従事して
いた人員を、自国内での比較で得意な産業(強み)に移動させるこ
とで豊かになることができるのは、常識と一致するからです。

▼常識に一致しないこと

問題になるのは、ぶどう酒と綿布の両方で英国より強く、英国に対
し「絶対優位」をもつドイツです、

ドイツは、国内だけで言えば、ぶどう酒の生産が(比較上では)得
意です。しかし綿布の生産でも、英国より優位です。

つまりドイツは、両方で、英国に比べたとき、絶対優位(強み)を
もっています。

ここで、リカードゥの比較生産費説は「常識と一致しない結論」を
導きます。

【結論】
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
英国は綿布の生産に特化し、ドイツはぶどう酒の生産に特化せよ。
それによって、両国の国内総生産が増える。両国がともに、貿易と
いう国際分業でメリットを受ける。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

その論証を、簡単に見ます。

と言っても、少しはややこしい。
以下を、丁寧にたどってください。

■4.分業での、合計の有利性を論証したリカードゥ

さきほどの数字を使います。

産業で得意だということは、
・より少ない生産コストで、
・同じ価格の経済的な財(綿布やぶどう酒という有用な財)の1単
 位を生産できるということです。

      綿布1単位の生産に    ぶどう酒1単位の生産に
       要する労働量         要する労働量
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
英国       100人        120人
ドイツ       90人         80人
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
生産物1単位の
  労働量格差  10/9        3/2
生産性の絶対優位  ドイツ        ドイツ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

(注1)英国の生産性は、この仮定ではドイツより低いので、賃金
    水準も低い。
(注2)単純化するために、生産要素(=コスト要素)を労働力と
    しています。

▼貿易という「国際分業」がないとき

ドイツは、90人+80人=170人分の労働で、綿布1単位、ぶ
どう酒1単位(両方の合計がGDP)を生産しています。

英国は、100人+120人=220人分の労働で、綿布1単位、
ぶどう酒1単位を生産しています。

両国の合計生産量(=合計GDP)は、鎖国で国際分業がないとす
れば、綿布2単位、ぶどう酒2単位です。

合計労働量では(170人+220人=)390人で、綿布2単位、
ぶどう酒2単位を生産していることになります。

【貿易前】
両国の生産量=綿布2単位+ぶどう酒2単位
両国の労働量=390人分

■5.両国が生産を特化し、貿易したとき

ここで、英国が綿布の生産に特化して、ドイツに輸出し、
ドイツはぶどう酒の生産に特化して、英国に輸出すればどうなるか。

(1)英国は、国内では比較的に得意な綿布の生産を行い、比較劣
位のぶどう酒は、ドイツから輸入する。

英国では、綿布1単位の生産に要する労働量は100人分です。
綿布2単位を生産するのには、200人分でいいことになります。

(2)ドイツは、国内では比較的に得意なぶどう酒の生産を行い、
比較劣位の綿布は英国から輸入する。

ドイツでは、ぶどう酒1単位を生産するのに80人で済みます。ぶ
どう酒2単位を生産するのに、160人分の労働でいいことになり
ます。

▼自国の中で得意なことへの特化と貿易(=分業)の結果は?

両国の、貿易前の合計労働者数は390人(英国220人+ドイツ
170人)でした。

ところが貿易を行うと、両国の過去と同じ量の生産物(綿布2単位
+ぶどう酒2単位)を作るのに、
・英国の綿布生産では200人、
・ドイツのぶどう酒生産で160人、
・両国合計で360人で済むことになります。

残り30人は、一時的には失業するかもしれません。

この30人が働かなくても、貿易をしていなかったときの両国の合
計生産量(GDP=綿布2単位、ぶどう酒2単位)は、360名で
生産できます。

失業した30人が、英国の綿布の工場で働けば、それによって30
人÷200人分=15%の生産量を増やすことができます。

これによって、綿布の生産は、2単位から2×1.15=2.3単
位になります。

両国が、優位な産業に特化し貿易(国際分業)をすれば、(失業の
ない完全雇用での)両国合計での生産量は、綿布2.3単位、ぶど
う酒2単位になって増加します。

これが貿易の原理です。貿易とは分業です。

【展開】
個々人が、(自分の中で)より得意なことに特化すること、つまり
自分の中の強みを活かすことができるように分業ができれば、組織
全体の生産性は上がることを示しています。

しかし、これはなかなか難しい感じです。リカードゥが比較生産費
で説くのは、もっと容易なことです。

▼とても重要なことは以下です。

ドイツは、ぶどう酒の生産と綿布の生産の両方で、英国より得意だ
ったことを思い出してください。

しかしドイツ内部では、ぶどう酒の生産のほうが、綿布より得意で
した。

英国は、ぶどう酒の生産と綿布の生産の両方で、ドイツに対し弱み
をもっていました。

しかし英国内部では、弱い中でも、綿布の生産ではぶどう酒の生産
より(比較的に)得意でした。

両国が、貿易という分業(=協力)をするとき、驚くべきことに・
・・

(1)ドイツは、ぶどう酒の生産に特化し、綿布をやめる、
(2)英国は、綿布の生産に特化し、ぶどう酒をやめることで、
両国合計での生産量(成果)が上がったことです。

▼コア・コンピタンスへの重点化

これが、世界で自由貿易が始まった原理です。この比較生産の原理
は、そのまま、組織内で「強みを活かすこと」、そして、企業の「
コア・コンピタンス戦略」に応用ができます。

何が、自分と自社の強みか、あるいは弱みかを判定できます。
重点化戦略のとき、何を重点化するか、拡大するかに使えます。

製品、商品、サービス戦略での重点化も同じです。

■6.強みを組み合わせること、強みで分業すること意味

会社の組織で生産性を上げる人員配置も、リカードゥが見事に論証
した「比較生産費の原理」と同じです。

▼Aさん

すべての分野で、他人より強みをもつAさんがいるとします。

しかしAさん個人の中では、営業のほうが、システム設計より比較
上で得意だとします。(リカードゥの例では、Aさんがドイツです)

他方、Bさんは、営業とシステム設計の両方でAさんより劣るとし
ます。(リカードゥの例では、Bさんが英国です。)

▼Bさん

しかしBさん個人の中では、システム設計のほうが営業よりいい仕
事をすると仮定します。しかし、Bさんのシステム設計の腕は、A
さんに劣ります。

Aさんは、あらゆる仕事の分野(部署)で、「はずせない人」にな
っているでしょうね。Aさんはいわば、多分野に強みをもつ多能工
です。BさんはAさんと比べると「できない人」です。

【分業】
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
しかし、組織内で分業(人員配置)するときは、
・Aさんは、より得意な営業に集中してシステム設計をやめ、
・Bさんは、Aさんより劣るシステム設計に特化したほうが、
  会社全体での生産性(成果、利益)が上がります。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

(注)これは、イスラエル人、ゴールドラットが有名な『ザ・ゴー
ル』(ダイアモンド社)の中で解いた全体最適、つまり全体利益の
概念でもあります。

こうした人員配置は、強い人と比べた弱点を見てしまう常識(減点
主義の人事)と異なります。

得意な人にいろんなことを行わせ、より得意なことへの集中できる
時間を減らしていることが、会社の全体成果を低めていることにな
ります。

貿易前(最適分業前)の、英国(Bさん)とドイツ(Aさん)の合
計生産量がこの状態です。

■7.人員配置と仕事の選択における原則

<人事に関しては、その人の弱点ではなく、得意なこと(強み)に
焦点を合わせ、得意な仕事を与えねばならない。>

会社は、人の懲罰の機関ではありません。成果主義が、減点主義に
なって懲罰人事になったとき、会社の全体成果は劣るようになって
ゆきます。

<(過去の)実績によってある職務に適任であることが明らかであ
る人間は、必ずその職務に異動、昇進させることを変わらぬ原則に
しなければならない。>

しかし、この原則を守ることは実際には容易ではないのです。

<「(この部署に)必要不可欠な人材である」、「あそこは受け入
れないだろう」、「若すぎる」、「現場経験のないものを配置した
ことはない」などの反論を、トップは一蹴しなければならない>

これが人員配置、またはポジションを与えるときの勘所です。
同時に自分が仕事をやるときの、判断と選択でもある。

ところがリカードゥの比較生産費を理解していれば、あらゆること
に人より強みをもつ人は、その人の中でもっとも強いことに特化し
たほうが、分業によって、会社としての全体成果が上がるというこ
とがわかります。

同時に、あらゆることで弱みをもつ人は、その人の今までの実績の
中で、比較上強いと判断されることを行ったほうがいいことになり
ます。弱みをもつ人の使い方もあるのです。

いろんな面で劣っているように見える人も、こうした配置で活きま
す。組織は人を活かすことができます。個人営業ではこうは行きま
せんが・・・

比較生産費の原理によって、人事、組織作り、配転、昇格での基本
的な迷いは無くなるはずです。

重要なことは、その人の中で、何がもっとも得意かを見極めること
です。

念のために言えば、優れた人と比べたとき劣っていても、その人の
中で得意であればいいことです。

(1)あなたは、何を行うことが、自分の中でもっとも得意な仕事
   に思えますか? 
(2)その得意と思えることは、外部からの評価と一致しています
   か? 

これが2つのテストです。

難しい概念だった「自分の強み、弱み」の意味が了解されたでしょ
うか・・・自分の中での比較でいいのです。

ここまで来ると、あとの、1.自分が成果を上げること、2.もっ
とも重要なことから始めること、3.意思決定の条件の理解は、容
易になります。以下、次号で解きましょう。

せっかくの正月に向かって、風邪をひかないようにお互い注意しま
しょうね。

see you soon!

【後記】

比較生産費説、この機会に理解してください。あのサミュエルソン
も『経済学』の中で、比較生産費説は経済学で最大の発見ではない
かと評価しています。

比較生産費の原理を知ったことで、欠陥がある自分でも、仕事を選
択し、実行する自信ができたように思っています。

自分の中での比較で得意と思え、それが他人の目と一致すればいい
と思ったからです。それに集中すればいい。集中する時間を作るに
は、自分の中の比較で、不得意なことをやめることです。

オール5のような理想的な強みを、仕事ではもつことはできないの
です。

弱みだらけの中で、比較的に強みがあればいい。これが組織での仕
事の原理です。学校秀才はバランスを考えますが、仕事はそうでな
くてもいい。

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▼ 有料版の最近号の、テーマと目次です。

  <246号:完結編株価上昇の可能性を検討する(6)>
           05年12月7日号

【目次】
1.割引現在価値(NPV)をめぐって
2.現在の日経平均の、期待金利とリスクプレミアムの試算
3.均等化に向かっている主要国のPER水準
4.上昇予測と下落予測の根拠の対照
5.ゼロ金利は維持されるか
6.政府財政の破綻説について
7.06年のドイツの金利はどうなるか
8.日本の06年の株価についての結論

  <247号:時事緊急テーマ:偽装構造の幕開け>
         05年12月14日号
【目次】
1.建築士なら誰でも分かる偽装を、検査機関は発見できない
2.見抜けないなら
3.姉歯証言
4.総研があらかじめ柱の断面をパターン化していた
5.施工の木村建設
6.私的記憶
7.総合経営研究所
8.衝撃の手書きメモ

  <248号:時事緊急問題:建築の闇>
     05年12月21日号

【目次】
1.仕事:生活のために仕方がなかったということ
2.レベル1:違法
3.レベル2:価値観への違反
4.レベル3:顧客の期待への違反
5.姉歯証言は、信用に値するか?
6.「プラザホテル三田」で明らかになったこと
7.検査機関の信用
8.建築基準法の問題
9.国民にとって重要なこと
10.どうやって構造設計を偽造したか
11.民営化された検査機関と日弁連
12.鉄筋をぬくことの意味

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