英国債にデリバティブの危機が発生した(1)
This is my site Written by admin on 2022年10月2日 – 15:00
本稿は有料版・無料版に共通の緊急増刊号です。テーマは<英国債に
デリバティブ危機が勃発の(1)>です。2023年までの予想をします。

緊急号では世界金融に生じている「重大な内容」を伝えます。

◎10%台のインフレと、4.5%への金利の上昇から、英国債が暴落の
危機に瀕しています。インフレによる金利上昇は、金融を収縮させ、
世界を大きな不況に陥れる前兆に見えます。

国債の下落は、直接に銀行資産を壊し、銀行システムの信用創造力を
収縮させます。「中央銀行+銀行=銀行システム」が発行された国債
の100%を買っているからです。

日本では、物価上昇が22年8月で2.8%なので、まだ安閑としています。
しかし「1ドル=140円以上」という円安の影響が強くなる22年10月か
ら、CPIの上昇率は、3%台に向かって上がっていくでしょう。

CPIが3%以上になったとき、日銀が、円安を招いた短期ゼロ金利と長
期金利0.25%を上限とする金融緩和の継続は難しくなっていくでしょ
う。米欧の金利が一斉に上がり、円安が一層進むからです。日本より
深いマイナス金利(-0.25%)だったスイスですら、0.75%の利上げ
をしています(現在0.5%)。日本の短期金利は─0.1%です。

欧州と米国の状況を見ると、今回の世界インフレは、日銀の短期的と
いう見立てとは逆に、長期化するでしょう。

欧州ではマネー量が反転し、世界では6300兆円、欧州では2000兆円も
縮小するなかで、インフレの長期化が見えるのです(債券+株価の下
落)。

英国とイタリアで先駆けて起こっているマネー量の縮小と物価高騰が
「スタグフレーション」の特徴です。本来は、デフレにならねばなら
ない。しかし、逆のインフレです。

◎スタグフレーションは、金利が上がって、世帯所得および企業利益
とマネーの量(マネー・サプライ)が減る中で、下がるべき物価が上
がる特異な現象です。1973年と1980年の「石油危機」のとき起こりま
した。

【インフレへの経験知がない】
1990年からは世界は約30年(経済の1世代)も、ディスインフレでし
た。債券トレーダー、銀行、証券会社、ヘッジファンドにインフレの
経験がなく、近い将来(2023年)も見通せていない。ヘッジファンド
マネジャーのコトバから、物価の見通しがないことがわかります。

2021年まで「長期(10年以上)の低金利と金融緩和が続く」と多くの
人が前提していました。企業経営、株、債券の売買、そして銀行でも、
長期インフレと金利上昇への見通しと対処が十分ではない。

欧州の、国債価格の下落の影響は、2023年には米国と日本にも波及す
るでしょう。

◎コトバは知っていても、内容を知る人が少ない「金利スワップとデ
リバティブ全般(つまるところ、デリバティブは、確率的な金融保
険)」の、具体的な解説を、若干詳しく行います。

22年9月現在、英国の年金基金と、国債の危機が、低金利時代に組ん
だ「金利スワップ」によって、拡大しているからです。

             *

メディアでリーマン危機の、内容の解説がなかったように、今回の、
英国債の危機の解説もない。原因は専門家にもデリバティブの説明が
難しいからです。

1)先物、2)オプション、3)金利スワップ、4)通貨スワップ、5)
金利契約、6)CDS(債務の支払いを保証する保険)は、全部、デリバ
ティブです。

2021年の第2四半期に、世界の契約額が598兆ドル(8.3京円)もあり
ます。世界のGDPの、6年分の金額です。これ以上に大きな金額は
地球にはない。

デリバティブ契約の時価価値は(2022年のように、金融商品の価格変
動が大きくなると2倍、3倍にも増える)は、約12兆ドル(1980兆円)
です。2021年の6月に清算すれば、1980兆円の価値があった、つまり
1980兆円のマネーの受け渡しがあったという意味です。その1980兆円
が、大きくなって持ち越されています。
(BIS:世界の店頭デリバティブ)
https://stats.bis.org/statx/srs/table/d5.1?f=pdf

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<Vol.1271:日曜緊急増刊:英国債にデリバティブ危機が勃発>
   2022年10月2日:緊急増刊:有料版・無料版共通

【目次】

■1.デリバティブとは何か・・・基礎からの解説
■2.英国の、輸入資源のハイパーインフレ(BOEの予想)
■3.9月の金利の上昇(4.5%)が英国債の、下落危機になった
■4.端的な補講:個人の円預金(平均1500万円)の運用
■5.英国の年金基金に、破産の危機が起こった(22年9月末)
■6.通貨が暴落するなかでは、中央銀行の国債買い(=通貨の増
  発)は有効な意味をもたなくなる
■7.第二のリーマン危機が近接している
■8. BOE(英国中央銀行)による緊急の国債買いはあったが、効 
  果はない
■9.世界最初に、英国の、財政破産の可能性が高まった

【後記:英国のトラス新首相の迷走】

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■1.デリバティブとは何か・・・基礎からの解説

マネーの大口運用をする機関投資家、銀行、ヘッジファンド、インデ
ックスファンドが大量に使っているデリバティブとは何か?

コトバの意味は株、国債、社債、負債、金などの、「金融商品から派
生した権利または義務」です。これでは、分かりにくい。90%の人の
理解が遮断されます。

契約総額8.3京円(世界のGDPの6倍:BIS)もあるとされるデリバ
ティブは、一般には「わけのわからないもの」になっているのです。
イマジネーションを超える宇宙のように大きな金額のデリバティブは、
1)先物、2)オプション、3)スワップの3つに分類ができます。

個人投資家にとって日常的なものから順に、この3つを示します。
文章は長くなりますが、具体例を示すと、理解が進むでしょう。

▼(1)未来の価格の売買である、先物取引。

先物取引は「現在価格+限月までの金利=先物価格」を、
・信用(証券会社からの自動借入金=レバレッジ)で買い、
・期限日に反対売買をして、損益を清算するものです。

証券会社が決める証拠金を差し入れれば、レバレッジをかけて先物や
オプションの、信用売買ができます。

1)例えば、10月2日は2万5937円に下がっている日経平均を、3か月後
の期限日までに、先物価格2万4000円で買う契約をするとどうなるか。
(注)日経平均は、9月12日以降の20日で9%下げています。

3か月後に、日経平均が2万6000円に上がっていれば、それを2万4000
円で買うことができるので、1株当たり2000円の大きな利益が出ます。
2万6000円で売って先物買いの負債(2万4000円)を相殺すればいいの
です。

3か月後の日経平均が2万2000円に下がっても、買いを契約した先物の
2万4000円で買って清算せねばならない。2000円の損になります。

3か月が多い限月(期限日)には、清算の義務がある先物取引では、
・予想が当たったときは信用借りのレバレッジのかかった大きな利益
が出ますが、
・予想が外れたときは大きな損失が出ます。

日経平均やFXの先物取引では、少ない証拠金で、その10倍から30倍
くらいの信用借りによる売買ができるため、使う人が多い。先物売買
の契約額に、レバレッジがかかるのはデリバティブに共通する特徴で
す。

このデリバティブを「悪魔の金融」という人もいます。しかし50%以
上の確率的な予想が立てば、悪魔ではなく少ない投資額で利益を大き
くしてくれる善神です。

トレーダーは破産のリスクを減らすため、差し入れた証拠金の2倍か
ら3倍のレバレッジで収めています。10倍以上、30倍の蛮勇の人もい
ます。ルーレットやパチンコのゲームに近づきます。

感覚が優れ運がいい1人が、巨大に儲ける裏には、5人の敗者がいる感
じです。

エクセルを使って、システムトレードで作ったのは日経225の先物取
引でした。信用買いのレバレッジのパラメータは任意であり、可変で
す。

平均すれば3か月くらいは続くことが多い上げ相場では、パラメータ
が4倍から5倍くらいのとき、利益が大きくなる性質がありました。超
強気相場の3か月では10倍。下げ相場では、2倍から1倍では、損が少
ない。

損切りのタイミングの自動化に、システムの難しさがあります。10回
の短期売買で、6回利益を出せばいい。毎回利益を出すのは不可能で
す。

金融商品の価格一般は、長期(120日以上の移動平均)の傾向はあっ
ても、その傾向のなかで、ボラティリティの幅の、確率変動をするか
らです。

▼(2)オプション取引:
将来の一定期間に、一定の価格で買う権利、または売る権利を買うの
が、オプション取引です。

一定の価格で買う権利を買うときは、それを売る義務を負う人(証券
会社が多い)に価格変動リスクの保険料にあたる「プレミアム」を支
払います。

価格変動のリスクの計算は、1973年に方程式が確定し、のちにノーベ
ル賞を授与された「ブラック・ショールズ方程式」で行います。

概算では「価格変動の、確率的なリスク(=期間ボラティリティ)+
期間金利(これは小さい)」が、支払うプレミアムになるのです。

◎イベント(損害、死亡、交通事故)の実現確率を統計的に計算する
保険会社の保険料と、同じ仕組みです。

下(↓)のサイトで、希望する権利行使価格を決めると、
・国債の金利と、
・価格変動の標準偏差(約2倍がボラティリティ)の入力によって、
支払うオプション料が簡易計算できます。

金融商品そのものではなく、任意に決めた一定価格で一定期間後に売
る権利、または買う義務の売買をするので、デリバティブ(金融商品
から派生した商品)という。
https://keisan.casio.jp/exec/system/1161228904

ここで支払うプレミアムを計算してみます。

【条件の入力】
・日経平均の現在価格を、2万5937円とします。
・買いの権利行使価格を、約2000円安い2万4000円とします。
・円のリスクフリーレートは、現在の長期国債の金利である0.25%を
当てはめます。
・満期までの期間は、3か月とします。3/12年です。
・標準偏差としては日経平均の価格変動のボラティリティ(VI)を使い
ます。
 グーグルでさっき調べると26.33%でした(10月2日時点)。

このVIは、日経平均の株価指数が、1年間に、26.33%の幅で変動する
確率が95%という意味です。20%より大きなボラティリティは価格が
下がるときに多く出ます。上げ相場のときは、VIはおよそ15%から
13%以下に縮小します。株価は下がるときは大きく下がり、上がると
きは下落リスクを大きく感じるので、小刻みであるという、行動経済
学的な特徴があるからです。投資での人の心理は、リスク回避の傾向
をもちます。

◎現在の価格が2万5937円の日経平均株価が、3か月後にいくらであっ
ても、2万4000円で買う権利を買うのに支払うプレミアムは、2510円
でした(=コール・オプションのプレミアム)。

かなり高いプレミアムです。世界の金利が上がる2022年10月、11月は、
S&P500と一緒に今日現在は2万5937円の日経平均が、2万4000円か、
それ以下に安くなる確率が高い時期だからでしょう。

◎米国のインフレが8%台と高く、FRBが金利を上げる2022年と23
年6月までは、世界の株価は下げ相場でしょう。

(二回目の試算)権利行使価格を、2万4000円より1000円高い2万
5000円にしてみます。結果は、1866円です。これも安くはない。

支払うプレミアムの高さは、限月までに設定した権利行使価格の、実
現の可能性が高いことを意味しています。

3か月後に、価格が2万5000円以上に高くなっていても、2万5000円で
買う権利は、行使できるのです。2万8000円に上がっていても、2万
5000円で買うことができます。「差額の3000円-払ったプレミアム
1866円=1134円」の利益が出ます。

逆に、3か月後に2万4000円に下がっても、2万5000円で買わねばなら
ない。相場より1000円も高く買う権利は、損が出るので放棄ができま
す。

買う権利を放棄したときの損失は最初に払ったプレミアムの1866円で
す。損失が確定しない先物とは違い、損失額が支払ったプレミアムに
限定されるのが、オプション取引の特徴です。回復できない損を忌避
する、プロのトレーダーがよく使っています。

プレミアムの金額は、株価のボラティリティと日数で、日々変動して
います。精算日の限月の前なら、オプションの権利そのものも、買い
手あれば、株のように売買ができます。

以上が、買いのオプション取引(コール・オプション)の基本です。

一定価格で「売る権利」を買うオプションはプット・オプションと言
います。買いのコール(ロング)とは逆の売り(ショート)の取引で
す。

普通は、現在価格より高く売る権利の行使価格を設定します。プッ
ト・オプションは、保有株や国債のヘッジのために多く使われます。

説明が若干長くなりますが、デリバティブの中で圧倒的に契約額が大
きな、3番目のスワップまでを、示します。

◎英国が米国より高い10%のインフレ(8月)になり、金利は4.5%に
上昇して(22年9月)、世界1早く破産の危機に瀕している年金基金が、
金利スワップを組んでいるからです。

▼(3)スワップ取引

スワップは等価交換の意味ですが、少々、難物です。大口の運用をす
る年金基金、銀行、ファンドなどの機関投資家が巨額に行っています。
個人投資家では少ない。

スワップ(同じ通貨の変動/固定金利や、通貨間の金利の等価交換)
は、
・固定された長期金利と、
・変動する短期金利を交換する、銀行間や機関投資家の契約です。
(注)普通の時期には、固定金利は長期金利のように高く、変動金利
は、短期金利のように低い。

・A銀行は4%の固定金利の、期間10年の債権(ローン)をもつとしま
す。
・B銀行は1.5%の変動金利の、期間10年の債権をもつとします。
(注)金利は米国での想定事例です。

B銀行は、高い固定金利で当年度の利益を増やしたい。
A銀行は金利が上がったとき、1.5%と低い金利が高くなる変動金利に
変えたいとして、両者の利害が一致し、債権(または受取金利部分)
の交換に合意します。
これが金利スワップ(等価交換)です。

A銀行=1.5%の変動金利の債権
B銀行=4.0%の固定金利の債権、変わります。

市場の金利の変動がない時期は、4%の固定金利を売ったA銀行はB銀
行に対して、事実上(4%-1.5%=2.5%)の金利を支払うことになり
ます。これが、金利保険のプレミアムです。ゼロ金利時代の国債の、
低い金利を補うことができます。

しかしインフレ率が高くなって、国債と変動金利が6%にがったとき
はどうなるか。今後の6か月でいえば、この可能性は高い。

A銀行が、B銀行から買った変動金利1.5%は、国債の金利に比例して
上昇します。1.5%だった変動金利が1年後に6%に上がったとします。
変動金利に変えたA銀行の受取金利は、1.5%から6%に上がって、利
益が増えます

他方1.5%の変動金利のローン債権を、4%の固定金利に交換した(ス
ワップした)B銀行は、市場の金利が6%に上がっても固定金利の4%
しか受け取れない。6か月後の市場の、6%に上がった金利に対しては
2%の損をします。

・・・以上が、債権の金利スワップの仕組みです。変動金利の上昇リ
スクを、固定金利と等価交換する、合意の取引です。

銀行のニーズの違いで、スワップ取引が生じます。
債権だけでなく、通貨スワップもあります。

円での事例を言えば、住宅ローンの変動金利(0.375%:みずほ銀
行)も、固定金利(1.23%:全期間)と交換ができます。その理由は、
変動金利には、金利が高くても一定である固定金利より高騰する確率
的なリスクがあるからです。

◎ところが・・・話はここで終わらない。

変動金利が、国債金利の上昇に比例して上がるときは、固定金利の債
務を売って、変動金利の債務に変えて利払いが減ったと喜んでいた年
金基金や銀行に、利払いの損が出ます。

この金利スワップの債権・債務の元本は、世界で6.8京円と大きい
(2021年6月:BIS)。変動金利が1%上がれば、変動金利の負債がある
銀行団に680兆円の利払いが増えます。市場の金利が1%上がるだけで
も、世界の銀行や基金を、破産させる規模のものです。

(注)固定と変動金利の等価交換は「将来の金利、及び各国の国債の
市場価格について、各銀行が異なった見方をしている」ために、成立
します。発行額面は一定である国債の市場価格(売買価格)の変動に
より、金利が変わっていくからです。

金利スワップは、世界中の銀行で国債、社債、MBSなど多くの負債
証券の、元本の債権6京8000兆円にかけられていて、「銀行利益のリ
スク回避の保険」として貢献してきたのです。

◎金利スワップは、固定金利と交換した銀行にとっては、金利変動を
回避できる保険です。しかし同じ金額の変動金利を引き受けた側には、
金利の上昇がもたらす、損失増加のリスクになるのです。

個人と、生命保険会社の関係を見れば、わかります。保険料がプレミ
アムです。死亡のとき降りる保険金は、支払う生命保険会社にとって
はリスクです。生命保険も、保険料の支払いによる将来の保険金のス
ワップです。その意味で、個人がかける年金や医療保険と同じもので
す。死亡率が高くなると、生命保険金の支払いが増えます。

6.8京円の、世界のデリバティブの全体が、プレミアム(保険料)を
払って、自分の金融資産の下落リスクを、カウンター・パーティに移
転する保険です。

(参考:デリバティブの主流である金利スワップの解説)
https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/deriv/deriv402.html

【デリバティブの想定元本は、世界のGDPの6倍】
各種の契約元本が584兆ドル(うち金利スワップが475兆ドル;6京
8000兆円相当)であるデリバティブは、プレミアム(=保険料)を払
って、買う側にとっては、利益の安定に貢献します。

満期は未来である金融商品がもつ価格の変動リスクに対して、保険を
かけることができるからです。

【金融商品のリスク交換がデリバティブだが、表と裏がある】
A銀行がデリバティブという金融保険をかけることできる理由は、プ
レミアム(=保険料)を受け取って、価格が下落したときの損害保険
金を支払う「B銀行団(カウンター・パーティという)」の存在があ
るからです。カウンター・パーティが発生しないデリバティブは、作
ることができない。保険会社がないときの保険金と同じです。

保険料であるプレミアムは、保険金支払いの条件になるイベントが起
こらないとき(=金融の変動が小さいとき)は、リスクを引き受ける
カンター・パーティにとっては、利益になります。

損害(イベント)の発生がなく、損害保険が支払われない状態です。
死亡率が下がって、生命保険料を払っている状態と同じです。

1)デリバティブの全体(契約元本584兆ドル:8.5京円)は、世界中
の金融商品の価格と金利変動のリスクを回避するためのものです。
 ↓
2)その裏には、等しい金額(584兆ドル)の価格と金利変動リスクを
引き受ける銀行(カウンター・パーティ)があるのです。

2022年のように、世界インフレよって金利の変動が急に激しくなると、
デリバティブを掛け合っている銀行システムが破産に瀕します。

デリバティブは、簿外の債権・債務とされ、満期前のものは四半期の
時価会計(決算書)に載っていません。銀行や年金基金は、満期日に
巨大損が出るまでは黙っていて、何も公表しない。
これが現在でしょう。

◎相手銀行に支払うべきマネーが破産するくらい巨大であると、お互
いの相談で決済されず、将来に、飛ばされます(ロールオーバー)。
銀行の決算の多くが不良債権では、お手盛りです。

しかし・・・いつまでも簿外に飛ばすことはできない。金利が上がっ
ていくと、両行の含み損が大きくなっていくからです。

世界の金融ムラで正常な神経の大手銀行の一行がロールオーバーをせ
ず、掟破りをすると、ダムの決壊のように銀行システムが破産します。
これもリーマン危機のとき起こったことです。

2008年のリーマン危機のときの、CDS(債務の支払いを保証する保
険)の損も、9月上旬まで隠されていて、CDSの決済の満期日が来た9
月15日に、リーマン・ブラザースとAIGに、米銀システムを破壊する
巨大損(最初は100兆円、後に400兆円)が発覚したのです。

CDSは、Credit Default Swapであり、債権の回収の権利と、その
債券のデフォルトの確率を、保険料(プレミアム)を払って交換する
ものです。住宅ローン債権(MBS)や国債の返済金が普通に回収で
きるときは、損害金(=債券保険金)の支払いはない。

しかし、金利が上がってローンや債権がデフォルトになると(=イベ
ントの発生)、プレミアム(保険料)をもらって、CDSの保証保険
を引き受けていた側の金融機関は、一度に損害金を支払わねばならな
い。

(注)1999年のロシア国債危機のときは、米国のLTCM(長期資本
管理基金)が、2兆円の損から破産しました。23年前の金額は「まま
ごと」のように小さかったのです。

CDSの損害金を支払えない金融機関は、他の支払いもできなくなっ
て破産し、金融機関全体に波及するシステミックなリスク、つまり
「国際的な金融危機」が起こります。

世界の銀行は、相互に債権(銀行間の貸し出し)と債務(銀行間の借
り入れ)で入り組んでいるからです。

リーマンとAIGの破産は、即刻、全部の米銀の危機になり、政府は緊
急に1兆ドル(140兆円)を投入しました。2008年10月以降は、FRBが
4兆ドル(560兆円)のドルを増発して、金融システムに投入し、
1929年の、大恐慌の再来の危機を収めたのです。14年前のことです。
(注)この4兆ドルが、今度はリーマン危機後の再びの株価と不動産
バブルを生んだのです(2009年から2020年3月まで:S&P500は、
11年で3.7倍:平均年率12%上昇)

金融商品(国債、社債、株式、ローン債権)では、
・価格が下がって、デフォルト率が高まると、
・保険料にあたるプレミアムをもらっていて、価格変動保険の支払い
をしなければならない銀行団が、破産します。

◎2009年9月15日のリーマン危機が、まさに、これだったのです。

CDS(債務の支払いを保証する金融保険)の高騰が、投資銀行のリーン
マン・ブラザーズと、世界最大の保険会会社AIGを、わずか2週間で潰
しました。

プレミアムを払って、自分がもつ債券にCDSを掛けた側は、リスクが
なくなります。この面では、21世紀の、デリバティブの増加は金融の
安定に貢献したのです(元FRB議長のグリーンスパンの言葉)。
↓
他方で、プレミアムを受け取って、金融商品の価格と金利の変動リス
クを引き受けたカウンター・パーティの金融機関は、対象の金融商品
の価格が下がり、金利が上がったときには「巨大な破産リスク」をか
かえます(この面が指摘されない)。

ここで株価、国債価格、金利の変動があると、とても怖くなるデリバ
ティブの解説を終わり、この金利スワップを多額にかけて、2021年ま
での低金利時代に、高い運用益を出してきた英国の年金基金の危機に
移ります。

【捕捉:日本の年金基金も、2023年危機へ向かっている】
日本の公的年金の運用機関であるGPIFも、英国の年金基金に類似して
います(運用額196兆円:2021年)。
・日米の株で(101兆円運用)では10%の10兆円、
・米国債(50兆円運用)でも約5%の2.5兆円、
合計12.5兆円は損をしているでしょう(まだ売っていないので、含み
損です。円換算)。

日本のGPIFの危機は2023年です。担当は、奈良県警のように、多分逃
げること(辞任)を考えているでしょう(理事長は宮園雅敬氏:元農
林中金)。2023年まで、金利が下がって株と米国債が上がる可能性は
ない。国会で質問すれば、政府は、どう答えるか? 6か月で年金の
12.5兆円(23年3月には25兆円に拡大)を失ったとは、素直に言えな
い。

対外資産を上げた20%円安で、3368兆円だった国富の20%喪失の罪が
ある黒田日銀総裁の、任期は、23年3月末です。ちまちました不正の
ほうが、まだいい。官僚の不正よりはるかに大きな損が、円安の金融
政策によって国民に生じています。その点で、英国や後述するイタリ
アと同じです。
https://www.gpif.go.jp/operation/last-years-results.html

ポンド安と金利上昇が大きな英国では、年金基金の危機が、日本より
1年早く、表面化したのです(22年9月末)。

緊急増刊は、ここまでとします。これ以降の
■2.英国の、輸入資源のハイパーインフレ(BOEの予想)から、
■8. BOE(英国中央銀行)による緊急の国債買いはあったが、効果はない・・・までは、水曜日発行の有料版とします。

謎だっt、デリバティブについての理解は、進んだでしょうか?

【後記:英国のトラス新首相の迷走】
英国のトラス新首相は、どんな経済的根拠から10%以上と高いインフ
レ率のなかの「大幅減税」を打ち出したのでしょう。インフレのとき
は、米国のようにマネーを絞って金利を上げ、需要を抑制しなければ
ならないのです。

ポンドが急落し国債金利が急騰して、英国の財政破産が、近々に迫っ
ています。ウクライナ戦争で疲弊してきた米国も、体力が弱ってしま
った兄(英国)を、助けることができない。

ウクライナ戦争での事実上の敗戦を機に、西側の21世紀の政治は日本
も含んで、全部の国でおかしくなってしまった。

内閣の支持率が30%台に落ちた自民党も、迷走しています。
米国民主党(政権政党)も中間選挙で、トランプの共和党に敗北する
でしょう。ウクライナ戦争のあと、プーチン側ではなく、西側世界
の政治が転換していくでしょう。

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