緊急号:英国のEU離脱が決定した
Written by admin on 2016年6月24日 – 10:00
おはようございます。今、英国のEU離脱を問う国民投票の開票が行 われています。事前の世論調査では離脱48%、残留52%ですが、統 計誤差とも言える数%の差です。 結果はどうなるか。EUは、日本人にとって馴染みが薄い。EUと英国 が加盟していないユーロの区別も言える人は少ないでしょう。 【EUは28か国の準国家連合】 まずEU(欧州連合)です。欧州の28か国が加盟し、国家主権の一部 をEUの機構(欧州議会、欧州理事会、欧州連合理事会、欧州委員 会)に譲るものです。5年ごとの選挙で議員を選ぶ欧州議会と理事 会で決定された法は、加盟国の法(ローカルルール)に優先します。 準国家連合の仕組みをもちます。 【商品の動きでは関税の撤廃】 経済面で大きなものは、EU加盟国間での、関税の非課税です。商品 の移動の障壁をなくしたのです。消費税のような付加価値税(VAT) の率は各国で異なりますが、28か国間の輸出入には関税はない。た だし、日本のようなEU外の国との貿易では、EUの共通関税を課しま す(TARIC:EU統合関税)。 【人の動きでは国境審査の廃止】 次は人の動きに関する「シェンゲン条約」です。条約を結んだ、大 陸のEU25か国内(人口では4億人)では、国境での審査が廃止され、 自由に行き来して、居住、労働ができます。ただし島国のアイルラ ンド、英国などは除外されています。このためフランスから英国に 行くときは、われわれも入国審査があります。なお日本人の、ビザ 免除での1回のEU入国による最大滞在日数は、90日です。(注)永 世中立を言うスイスと、歴史的に英独不信のノルウェーはもともと EUに加盟していません。 関税の撤廃が商品の移動を、ツェンゲン条約が人(労働力)の移動 を自由にしているのです。これがEUです。統一通貨(法定通貨)の ユーロは、EU28か国のうち、19か国です。もっとも最近の加盟は、 スロバキアの2009年でした。英国はもともとユーロには加盟してい ません。 【ビジョン】 EUは、二度の世界大戦を経た欧州で再び戦争を起こさないこと、米 国に対抗できる28か国(5億740万人:米国の1.6倍)の自由貿易圏 をつくるという2つのビジョンにより誕生しています。 【難民問題】 このEUを揺るがせたのは、アラブやアフリカからの難民問題 (3200万人)です。特に最近は、IS(イスラム国)も含み、内戦が 続くシリアからトルコを経て、EU加盟のギリシアに入国する人たち が多い。国外逃れた難民は410万人、シリア国内では1170万人と言 われます。 賃金が高いドイツに逃れた難民は、2015年で110万人とされていま す。毎月10万人が押し寄せていますが、メルケル首相は受け入れを 表明しているので、国内の反対が盛り上がっています(国民の40% が反対)。2015年の11月にパリで起きた同時多発テロ、ドイツ各地 での暴行や窃盗を、警察は「難民からみ」と発表しています。 【英国の離脱問題】 英国でユーロからの離脱問題が起こったのは、ユーロ加盟国を襲う 難民問題、および国家主権の回復への動きからです。保守層が多い 60歳以上に離脱派が多く、30歳以下には残留派が多い。欧州諸国で は、国民がとても高い関心をもって、英国の開票状況のTVを注視し ています。 英国がユーロを離脱した場合、考えられるのは以下です。 (1)ユーロ自由貿易圏からの離脱による、英国経済の弱体化。 ユーロとの貿易に、関税がかかるようになるからです。 (2)金融面での、ロンドンのシティの地位の急低下。EUからの資 金流入が減るからです。 (3)他国のユーロ離脱も誘い、EU解体の動きが出る可能性が生じ ること。 離脱問題が出始めたころから、英国ポンドは163円から150円(6月 中旬)に下がりました。その後、残留派が勝つと見込みから155円 に戻しましたが、今日はまた、「離脱優勢」の途中開票から149円 に急落しています(午前11:30:日本時間)。 【開票】 現在382カ所のうち148か所(38%)の開票で離脱50.7%、残留49. 3%になっています。開票が遅い都市部は残留派が多いので、どう なるか、予断を許しません。 統一通貨ユーロは、16年の年初の130円から、120円に下がっていま す。ユーロが売られて上がったのは円です。残留なら、英ポンドと ユーロは上がり(円は下がり)、英国離脱なら、円が上がり英ポン ドとユーロは上がます。 離脱が決定すれば、ユーロとポンドからのマネーの脱出(ユーロ売 り、ポンド売り)が大きくなります。南欧国債で弱体化が続いてい るユーロと英国の銀行が、第二のリーマン危機を起こす可能性すら あるのです。 【ユーロ経済は、南欧危機から回復していない】 ギリシア、スペイン、ポルトガルの財政破産の問題は、ECBによる 国債買いで小康を得ていますが、問題の根であるギリシア、スペイ ン、ポルトガルの経済力は回復していないのです。その表れは、高 い失業率です。 ギリシア24.1%(5月)スペイン20.1%(4月)、ポルトガル12.4% (第一四半期)、イタリア11.7%、フランス9.9%です。ユーロ全 体の失業率は10.2%(4月)と高い状態を続けています。ドイツで すら6.1%(5月)です。 失業率が15%を超えている経済は、恐慌に近いと言うべきです。 (注)日本の失業は3.2%(4月)、米国4.7%(5月)です。両国と も自然成長率に近い。 2012年の南欧危機以降、ECBのマネー増発とマイナス金利の金融政 策で、ユーロ経済は回復したかのように言われていますが、日本で はほとんど報じないその実態は、物価が下がるデフレ型の大不況の 持続です。3か月国債の短期金利もマイマイナス0.27%であり、マ イナス金利策を敷く日本の-0.03%より低い。 【円と日経平均】 一般的には、英国は保守的な決定をするので、残留すると見られて いました。しかし、開票の結果は違うようです。今、英国の離脱を 予想して、ユーロとドルが売られて円が急騰し、$1=106円から、 一時は99円に上がりました(お昼の12:00) 円が上がると下がる日経平均は、1万5120円へと1200円(7%)も下 がっています(12:03分)。日本から、通貨が安くなったユーロへ の輸出が減るという見込みからの株価急落です。 米ドルに対して英ポンドは、11%も下げています。これはポンド崩 壊に近い。 今72%(264か所/382)に開票が進みました。離脱が51.3%、残留 が48.7%です。離脱が強い。いよいよ、決定か・・・離脱が52%に 上がりました(BBC速報)。離脱がほぼ決定した感じですね。21世 紀の最大の決定です。 今後、ECBの金融政策で隠れていたユーロ経済の悪さが、露呈する でしょう。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【ビジネス知識源アンケート:感想は自由な内容で。 以下は、項目の目処です】 1.内容は、興味がもてますか? 2.理解は進みましたか? 3.疑問点、ご意見はありますか? 4.その他、感想、希望テーマ等 5.差し支えない範囲であなたの横顔情報があると、今後のテーマ と記述のとき、より的確に書く参考になります。 気軽に送信してください。感想やご意見は、励みと参考にもなり、 うれしく読んでいます。時間の関係で、質問への返事や回答ができ ないときも全部を読み、多くの希望がある共通のものは記事に反映 させるよう努めます。 【著者へのひとことメール、および読者アンケートの送信先】 yoshida@cool-knowledge.com ◎購読方法と届かないことに関する問い合わせは、ここにメール → reader_yuryo@mag2.com ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【最近の有料版の目次】 <820号:リフレ派のマネタリズムの誤り(1)> 2016年4月6日:有料版 【目次】 1.2000年代の経済論争から 2.マネタリストの学説のコア:MV=PT 3.リフレ派の「物価は貨幣現象」ということについて 4.後記:株価の下落:1万5736円:16年4月6日:前場 <821号:増刊+正刊:リフレ派の4つの誤り(2)> 2016年4月13日:有料版の増刊と正刊 【目次1】 1.異次元緩和では、日銀当座預金だけが277兆円に増えている 2.補足:パナマ文書の背景 3.異次元緩和の目的であるマネーサプライは、増えていない 4.異次元緩和以降の、国際的な金融収支 【目次2】 5.なぜ、国内への貸し付けが増えなかったのか 7.「円安」は、2011年以降、落とし穴になっている 8.円安で、4つの見込み違いが生じた 9.後記:複雑骨折したリフレ策の終結を ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ~~~ ■1.有料版のご購読の案内 新年にちなみ毎週、質の高い論を展開する有料版はいかがでしょう。 (↓)毎週水曜日に送信され、料金は月間648円(税込み)です。 http://www.mag2.com/m/P0000018.html (まぐまぐ有料版↓) http://www.mag2.com/m/P0000018.html (まぐまぐ無料版↓) http://www.mag2.com/m/0000048497.html 【↓まぐまぐ会員登録と解除の方法】 http://www.mag2.com/howtouse.html#regist ■2.「まぐまぐの有料版を解約していないのに、月初から届かな くなった。」との問い合わせが、当方にも多いのですが、ほとんど の原因は、クレジットカードの「有効期限切れ」です。 なお、登録情報は、まぐまぐの『マイページ ログイン』の画面を 開き、登録していた旧アドレスとパスワードでログインして出てき たマイページで、メールアドレス、パスワード、クレジットカード を新しいものに変更できる仕組みです。クレジットカードの変更、 送信メールアドレスの変更、パスワードの変更などに使ってくださ い (マイページ・ログイン↓) https://mypage.mag2.com/Welcome.do または↓ https://mypage.mag2.com/mypage/creditcard/CreditCardMenu.do 新しいカードと有効期限を登録すると、その月の届かなかった分を 含んで、再送されます。 ↓わからないときの問い合わせ先: reader_yuryo@mag2.com 回答が来る時間は、休日を除く、午前10時から午後5時です。 【お知らせ】 新しいメルマガ配信サイトの『フーミー:Foomi』からなら、 (1)銀行振り込み、(2)携帯キャリア決済、(3)コンビニ決済 で、有料版の購読ができます。 クレジットカードの登録がイヤな 方はご利用ください(↓) http://foomii.com/00023 ◎このメルマガに返信すると発行者さんにメッセージを届けられます ※発行者さんに届く内容は、メッセージ、メールアドレスです ◎ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則 のバックナンバーはこちら ⇒ http://archives.mag2.com/0000048497/index.html?l=hpt0a0092e ◎ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則 の配信停止はこちら ⇒ http://www.mag2.com/m/0000048497.html?l=hpt0a0092e |