米国の不良債権は、未回復の分が、シャドー・バンクに眠っている(1)
This is my site Written by admin on 2015年5月17日 – 09:00
おはようございます。約45日、送信の間が空きました。お詫びの意
味も含め、本稿を含めて数回、<米国の不良債権は、未回復の分が、
シャドー・バンクの中に眠っている>というテーマのシリーズを送
ります。プロローグにあたるのが、本稿です。

【史上最高水準の株価】
金融と経済の状況を示す数値とされている株価が、主要国で、最高
水準を続けています。株価から見れば、世界の景気は、過去最高レ
ベルということになります。

(注)本当は、株価は、ゼロ金利バブルであり、実体経済の好調さ
を反映したものではありません。このため、高い株価に、変な感じ
を抱いている投資家が、世界に、1/3くらいはいるでしょう。2/3の
人は、トレンドに「乗って」います。

米国ダウは、世界の金融危機に波及した2008年9月のリーマン危機
のとき、$7000の底値をつけていました。2015年の5月初旬は、$
1万8200付近と、2.6倍に上がっています。

日経平均(225種)は、2012年10月の8300円から、2000年に付けた
2万円の大台に届き、現在は1万9732円です(15年5月15日:終値)。
http://web.econ.keio.ac.jp/staff/nobu/iraq/data/stock_price.htm

ギリシア政府のデフォルト危機が進行中のFTSE100(欧州100社)の
株価指数でも6960と、やはり最高水準です。ドイツ(DAX)も1万
1447の最高株価です。

国営企業の決算利益に疑わしさがある上海総合も、4308とリーマン
危機以降の、最高レベルに上がっています。日本の日経平均(225
社の単純平均株価)も1万9732円と、2万円は割ったものの、2000年
のITバブル以来最高水準です。(以上の株価は2015年5月15日:金
曜日) 

企業の利益予想を示す個別銘柄ではなく、市場の加重または単純平
均である株価指数は、国の経済の、何を表している指標か。時期に
よって変わります。

【高騰の理由=量的緩和+官製相場】
現在の株価指数は、世界の量的緩和を原因にした資産価格高騰の一
環です。世界が、日本のように直接の、そして米国のように間接の、
「量的緩和+官製相場」であると判断していいでしょう。

一般には、2008年の米国発の金融危機から、世界は回復したと思わ
れています。このため、米国も3回の量的緩和(合計$4兆:480兆
円)のマネー供給を行って、昨年の秋、2014年10月には、最後の
QE3(量的緩和第三弾)を停止しています。

(注)日銀は、その直後から、米国FRBに代わって異次元緩和の追
加緩和を行い、米国に、年間で数十兆円レベルの資金提供をしてい
ます。

この資金提供が、GPIF(年金基金の運用機関)や郵貯からの、米国
債買い及び米国株買いです。日本の資金が、米国の株価を支えてい
ると言われるようにまでなっているのです。

米国債(10年物)の金利が2.1%しかない現状では、海外(中国、
欧州、産油国)からのドル国債買いが減ります。事実、減ったとは
言っても世界でもっとも経常収支が大きい中国による米国債の買い
増しは、2014年には停止し、売り越しさえ見られます。

米国FRBは、年間で50兆円くらいのドル国債を海外に売る必要があ
ります。このため、2014年10月に、米国債の金利を下げてきた量的
緩和を停止したのです。次は、利上げのタイミングを狙っています。

問題は、このFRBの利上げです。不良債権が隠れているときの利上
げは、金融危機を再来させます。株価も、当然下がります。

本稿では、今後の、大きな金融を見通すため、リーマン危機で発生
したと見られる2000兆円レベルの不良債権が、2015年現在、一体ど
うなっているのか? 2009年以降、6年間の量的緩和(マネーの増
発)によって、回復したのか。残っているのか。ここを探求します。

【2008年からの金融危機】
まず、量的緩和という「非伝統的な政策」がとられた原因である
2008年からの金融危機が、どういったものであったかを究明します。

非伝統的とは、「金融の非常時にとる異常なもの」という意味です。
金融の非常とはどういったものか? 

どんな状態が金融にとって非常時か、実は、意外に明らかではない。
理由は、金融のリスクは、銀行と政府が国民に隠したいことだから
です。

【サブプライム・ローン】
08年9月からの金融危機では、米国の住宅価格の下落が、住宅ロー
ンの回収権を担保にした証券(MBS)の流通価格を下げ、それが波
及して、全体的な金融危機になったとされています。

果たしてそれだけか? 実は、米国の住宅価格の下落に発したとさ
れる金融危機の全体が、どういったものであったか、一般には、6
年半後の今も、明らかされていないのです。

【その後の、緊急、特別な金融政策】
08年に始まった金融危機がどういったものだったか。これが明らか
にならないと、その後のFRBが、3回で$4兆(480兆円)を金融機関
に注いだ量的緩和の果たしたことと、その意味もわからない。

そして、FRBの量的緩和の後をつないでいる日銀の異次元緩和
(2013年4月から:現在160兆円+毎月7兆円)の、本当の狙いも、
わからない。

【予感:本当は回復していない】
2008年のリーマン危機のあと6年半もたちました。世界経済は、
リーマン危機がもたらした金融危機から、すでに脱したと言われま
す。

政府・当局が、上昇に関与している主要国の株価の上昇が、その証
拠になっているのです。

果たして、金融危機の原因になった「証券化商品」の価値下落が止
まり、再び上昇し、大きく空いていた穴が、ふさがれたのか? 
これに関する情報は、ないのです。

「証券化商品」は、本稿のキー概念のひとつです。例えばローン等
の債権(貸付)の回収と利払いである現金の受け取りの権利を証券
にし、金融商品として売買されているデリバティブ(金融から派生
した金融商品)です。MBSも、証券化商品です。

【1.株のように、誰でも価格(価値)がわかる公開市場がない】
理由は、MBS(住宅ローン担保証券)のような「証券化商品」はデ
リバティブであり、公開市場はなく、金融機関の間のOTC(オー
バー・ザ・カンウンター)で、いわば、密室で取引され、あるいは
保有されつづけていて、売った時の流通価格がいくらかわからない
こと。

【2.保証保険(CDS)がかかっているため、時価が計上されない】
加えて、MBSにも、別のデリバティブであるCDS(回収保証保険)が
掛けられているものが多く、流通価格(売るときの気配値)が下落
しても、金融機関のB/Sの中では、正常な価格の債券とされ続けて
いること、です。

【CDSは、現在、2280兆円の債券に対してかかっている】
CDSの残高は、最新の2014年6月のBIS(国際決済銀行)の統計で、
$16兆(1920兆円)です。

世界の、1920兆円の債券(国債、社債)や、MBSなどの証券化商品
に回収保険がかけられているため、不良債券であっても、額面の価
値をもつとされ続けているのです。
http://www.bis.org/statistics/dt1920a.pdf

【CDSの価値は、保険料と同じ】
1960兆円の債権にCDSをかけるための、1年間の保険料の価値は、現
在、総合計で$5930億(71兆円:保証料率は3.7%相当)です。

長期金利が1%以下や1%のレベルの時期に、3.7%の保証料とはと
ても高い。理由は、1960兆円の債権に、不良債権が多いからです。
推計ですが、500兆円は不良債権と見ています。

(注)500兆円は、全米の金融機関の自己資本額(200兆円)の2.5
倍です。つまり、しっかりした会計処理をすれば、米国の金融機関
は、債務超過でしょう。

例えば1000億円の債権に対し、37億円の保険料を払ってCDSをかけ
ると、1年間は、1000億円の証券価値が保証されるということです。
デフォルトがあった場合、1000億円の回収が保証されます。

平均で元本の3.7%CDSを掛けておけば、掛けた銀行にとっては不良
債権が正常債権になります。

しかし、その保証料を受け取って、回収を保証した銀行は、元本金
額の支払い義務を負います。つまり、CDSをかけても、金融業界全
体としては、不良債権は消えません。

金利が1%以下の現在、3.7%もの保証料を払ってCDSを買う理由は、
その債権の不良性が高いということ以外ではありえません。

1960兆円の債権うち、500兆円分くらいは回収が困難な不良債権と
推計します。これが、米国のシャドー・バンクの中に、隠れている
でしょう。

シャドー・バンク(影の銀行)とは、預金を預からない金融機関で
あり、借りた資金を運用する投資銀行、ヘッジ・ファンド、基金な
どです。

預金を預かる銀行(商業銀行と言う)は、その預金が保護されるた
め、政府によって自己資本やリスク資産での運用が規制されていま
す。投資銀行を含むシャドー・バンクには、規制がないので、財務
内容の数値がわからないのです。

シャドー・バンクと言っても、不法なことを行う闇金融を指すので
はありません。政府からの規制がないという意味です。

中国で、金利の高い理財商品を売って、不動産資金を貸しているの
も政府の規制を受けていないシャドー・バンクです。日本では、か
つての住専やノンバンクです。

【企業や政府にかける死亡保険金のようなものがCDS】
CDSの料率は、例えば、現在のギリシア国債のように政府破産の確
率が高まると5%、10%、20%、30%と上がります。破産のときの
債務の回収権であるCDSそのものも、売買の対象になります。

短期金利0%、米国の長期金利2%以下の世界で、総平均が3.3%の
料率は高い。これは、世界の債権のリスクが高いことを示していま
す。

【勝手に他人に保険をかけて、売買できるCDS】
料率が2%のとき100億円で買ったCDSが、対象債券の破産確率が上
がって10%になったときに売れば500億円です。

差し引きで400億円(投資元本の400%)の利益です。
CDSは、狙い通りになると、高い利益率をもたらします。

【21世紀型だった米国金融危機の、研究が出始めた】
最近になって、IMF(国際通貨基金)やFSB(Financial 
Stability Board:金融安定化委員会)によって、リーマン危機と
その後の金融危機の真相が、学術的な意味を含め、明らかになりつ
つあります。
http://www.econstor.eu/bitstream/10419/60962/1/606278184.pdf
http://www.financialstabilityboard.org/2014/11/global-shadow-banking-monitoring-report-2014/

日本の金融庁でも、FSBの論文をベースに、検討が進められていま
す。
http://www.fsa.go.jp/frtc/seika/25.html#06a

ただし、上記3つの論文を読んでも、理解できる人はほとんどいな
いでしょう。当方も読みましたが、正直に言うと、分からないとこ
ろがあります。そこで、本稿を書き、数値を拾い上げることから、
理解に至ろうとするものです。

金融の予備知識がなくても、数値化すれば、ほとんどの人が理解で
きるからです。日常的なことから、わかりにくい金融の森に至る方
法をとります。

論理的に書いていますので、一読してわからないときは、再読して
ください。これから、2年くらい先までの経済と金融にとって重大
なことを述べるつもりです。以下は、次号からの目次です。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
<米国の不良債権は、未回復の分が
シャドー・バンクの中に、眠っている(1)>
        
【次号以下の目次】

1. 金融危機とは、どんな状態を言うのか?
2. 1929年からの、大恐慌の経験
3. わが国の、資産バブル崩壊の後の金融危機(1990年代)
4. 国策としての金融業の振興(英国と米国)
5. シャドー・バンキング(影の銀行)の定義と内容
6. シャドー・バンキングの資産増加と2008年の大損失
7. シャドー・バンキングの資産の増加と2008年からの減少
8. FRBによる現金の注入(QE1~QE3)
9. 巨大銀行シティバンクの、不思議な株価(ピークの1/10)
・・・・

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本シリーズは、数回にわけて、お送りします。

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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<760号:商業立地の徐々の、しかし確実な転換と対応(2)>
         2015年3月25日

【目次】

1.店舗投資の将来ROIと、人口動態
2.優良な会社でも、店舗投資の回収には20年かかる
3.10年後、20年後の商圏人口が肝心
4.2005年ころまでの変化は、店舗の郊外化と大型化だった
5.モータリゼーションがもたらした商業の最適立地の変化
6.第一次近代化の先頭だったダイエーの、立地不適合
7.イオンのGMS事業(GMS:食品を含む一般商品の小売)
8.問題は、2012年から2015年が起点になる人口動態
9.都市の人口規模と人口動態の関係

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<761号:商業立地の徐々の、しかし確実な転換と対応(2)>
        2015年4月1日

【目次】

1.全国47都道府県の、2040年までの人口の推移
2.県内の人口では県庁所在市とその郊外は、県平均より減少が少な
い
3.50年に一度の、商圏の逆転が起こる
4.2040年に向かっての商業立地の変化
5.最適立地はどこになるか?
6.高齢者層の増加による買い物行動の変化
7.世代と店舗へのアクセス距離の関係
8.都市部:小商圏スーパーの時代を作るべきである
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
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