米ドルの反通貨、ゴールド新論(2)
Written by admin on 2013年12月24日 – 09:00
こんにちは、吉田繁治です。今年も、押し迫りました。振り返れば、 毎年、1年という時間が瞬間です。あるのは、自分の意識に映る、 間断のない、または永遠(くおん)の現在です。 過去の時間になると、あらゆるものは、消えます。事物は、同じも のが続いているように見えます。しかし、それはもう、昨日のもの ではない。過去の時間は、われわれの、記憶の中でしかない。 今日はクリスマス・イブ。マイアミに住む長女から、赤ワインが送 ってきていました。ささやかな夕食で、飲むことにしますか・・・ メリー・クリスマス! テーマのゴールドは12月24日で、1グラム4270円(税込み)です。1 2月11日が4418円。最近1ヶ月の、最高価格でした。円での小売価格 で3.4%下げています。↓現物を売る、田中貴金属のサイトです。 http://gold.tanaka.co.jp/commodity/souba/d-gold.php 金価格は、円ではなく、1トロイオンス(31.1グラム)のドル価格 で見なければならない。原油も同じです。円・ドルの為替相場の変 動で、円価格では歪んで見えるからです。金も原油もドルで価格が 決まった後、ドルと円の相場で、円に直しています。 【大きく下げた金価格】 2013年で言えば、1月の最高価格$1693(31.1グラム)が、$1197 (12月24日)へと$496も下がっています。今年の下落率は、29% と大きい。 (注)わが国の売買単位の1グラムに変換すると13年1月の$54が、 12月24日は$38です。 【頂点は11年9月】 2000年代に約5倍に上がった金価格は、2011年9月の31.1グラム$19 86が頂点でした。その年の2011年末は$1752、翌2012年末が$1720 でした。 そして2013年末は$1197です。2013年の4月と、6月の下げが大きか ったのです。原因はいずれも、値崩しの好機と見たヘッジ・ファン ドによる金証券(ETF)の大量売りです。 【金ETF】 2003年から作られた金ETFは、金価格と同じ値動きをする、上場証 券です。金と交換も可能されています。SPDR(スパイダー)ゴール ド社が最大手で、発行額の50%です。 金ETFが買われると、発行者は、現物の金のリザーブ(準備:保護 預かり)をその分増やし、ETFが売られれば、保護預かりとして保 管していた金現物も売るという仕組みです。若干の、時間遅れはあ ます。 この金ETFの残高は2013年12月には2632トン(時価で約11兆円)と 最高でした。これが、 ・13年の第1四半期には売り超176トン、 ・13年の第2四半期では売り超402トン、 ・13年の第3四半期でも売り超118トンです。 1月から9月までで、金ETFには754トン(年間ペース1000トン)の売 り超が、2013年の4月以降、「ある日突然に」という感じで、生じ ました。 1年に4300トンの金供給の中での、金ETFの年間1000トンの売り超が、 金価格を30%~40%下げるのは当然です。60%下がってもおかしく ないくらい、2013年は金ETFが売られています。 年間の金の供給は、鉱山から2824トン、リサイクルが1990トンで合 計4415トンです(2012年)。 【現物の金の需要は、2013年も増えている】 (1)宝飾需要は1896トン、工業用が407トンで(2012年)、2つの 需要は安定しています。両方で2300トン(生産の52%)くらいです。 (2)ゴールドバーの需要超過は、中央銀行が1年に450~550トンで す。個人・企業・金融機関のゴールドバー需要が1300~1500トンく らいです。両方で1750~2050トンです(生産の40~46%)。この、 現物需要も、毎年、安定しています。 ETFではない現物金の需要は、中国、インド、そして各国中銀行の 買い超により、増加を続けています。 ●現物需要だけなら、金価格は、2013年も上がって、円では1グラ ム6000円になったかも知れません(現在は4000円付近)。 (3)金のETF証券は、上場された2003年から、2012年まで、10年間 は、1年に180トンから280トンの買い手でした。このため、2012年 末のETFの残高は2632トンに増えていたのです。 【ETFの大量売り】 ところが、2013年4月から、金ETFだけが、月間80トン、年間1000ト ンのペースで売られています。この意味で、金ETFの突然の売りは 奇妙で、「意図的」に見えます。 株、不動産、原油、資源などあらゆる相場は、売りが超過すれば下 がり、買いが超過すれば上がります。金は、2000年代の12年間、買 いが超過していました。このため5倍にも上がったのです。 これが、2013年に金ETFだけがなぜ、金相場を30%以上下げるくら い大量に、しかも、ヘッジ・ファンドによって、売られたか? (注)売ったヘッジ・ファンドは、まずソロス・ファンドと、ジョ ン・ポールソンのファンドでした。当方はこれを、世界のドル離れ を避けるための、米国FRBの意向によるものと見ています。 【意図をもった予想】 ゴールマン・サックスは、2013年9月に、「2014年の金価格は、1オ ンス(31.1グラム)$1000を割る可能性がある」と発表しています。 現在価格($1200付近)から更に、20%安です。 「金から、投資家と、各国中央銀行を振り落とす」という意図に思 えます。 米国FRBは、先に、15ヶ月続けてきた量的緩和第三弾(QE3:毎月$ 850億のドル増発)を、$100億縮小して、2014年1月以降$750億 (7.5兆円)すると発表しました。 これも、2014年の金価格を下げる要素ととられるでしょう。 以上が、最近の金価格をめぐる大きな動きです。 本稿は、前号に続き、金価格を決めてきた基底の動きと、その意味 を見て行きます。最初は基軸通貨論です。 【お知らせ】ビジネス社が、当方の、3時間講演のCDを制作し、発 売しています。年内は12月26日までの発送で、その後は、明けて1 月6日以降になると聞いています。とりあえずの、案内です。 吉田繁治 マネーと経済 景気回復はこの先どうなるのか(ビジネス社) (↑ ここに、案内が書かれています。50ページのレジュメつ きです。) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <Vol.303号:米ドルの反通貨、ゴールド新論(2)> 2013年12月24日号 【前号の目次】 1.リーマン危機のあとの量的緩和と金価格 2.08年9月以降、世界で1000兆円の通貨の増量があった 3.今度は日銀の異次元緩和 4.米ドルとゴールドの関係 5.国際基軸通貨とその特権 【本号の目次】 5.国際基軸通貨とその特権(論理のつながりのため再録) 6.米国政府・FRBによる、金敵視の理由 7.2000年代の、世界の外貨準備の急増は、どんな結果を生んだか 8.世界の、公的な外貨準備で金が増え、ドルが減った 9. 金を放出してきた中央銀行 10.リーマン危機の後、中央銀行の金への態度に異変が起こった 11.世界の中央銀行のネットでの金取引(WGC) 12.金に価格下限はあるのか 13.産金コストを、ほぼ価格下限と見ることができる理由 (本メールはここまでです) 【後記】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■5.国際基軸通貨とその特権 (この5.だけは、前号の再録です。論理のつながりのためです) ▼1971年が起点だった 基軸通貨の発行特権(シーニョレッジ)という巨大な権益もつ米国 のFRBは、1971年以降、ずっと金を敵視してきました。 1971年は、当時の大統領ニクソンが、「金・ドル交換停止」を宣言 し、ドルを不換紙幣にした年です。理由は、米国から金が流出して は困るということでした。 米国の経常収支が、ベトナム戦争の出費で赤字になった。米国の経 常収支の赤字とは、経常収支の黒字国(当時は欧州、日本、産油 国)へ米ドルが流れることです。そのドルで米国FRBに、海外から 金との交換を要求すればFEBの金(=米国政府の金)がなくなって しまう。 このときFRBからの進言も受けて、「金の流出は米国にとっては困 ることである」とニクソンは認識したのです。このために、どこの 国にも連絡せず、突如実行したのが、金・ドル交換停止でした。 その後、世界の通貨は、お互いの価値が日々動く変動相場制になり ます。基軸通貨は変わらずにドルですが、ドルそのものの価格が動 いてしまう。このため、ほんとうは「基軸の通貨」とは言えない。 しかし慣習的に、対ドル固定相場のときの基軸通貨(Key Currenc y)と言っています。 「金は重要ではない」と認識しているなら、「金・ドル交換停止」 を宣言する必要はない。重要でない金属は、海外に渡せばいいから です。 「金・ドル交換停止」とした理由は、金が通貨の元としてもっとも 大切なものと、米国政府とFRBが認識していたからです。 このためにこそ、米国政府とFRBは「金はバカげた通貨である。基 軸通貨ドルの信用は、金ではなく、米国政府の信用である」という 反・ゴールドキャンペーンを張ります。 米国政府とFRBは、世界に向かって、あからさまな嘘を言ったので す。1970年代、1980年代、1990年代、そして2000年代と、変わらず 続いていることです。この嘘のため、金価格の動きも分かりにくく なってしまった。 米国政府とFRBは、金を敵視しつつも敵視していることは言わず、 裏では、金価格の市場操作をし続けてきているからです。 ■6.米国政府・FRBによる、金敵視の理由 【重要】米国政府が、ドルとの兌換(一定率での交換)を停止した あとの金を敵視する理由は、ペーパーマネーの信用が、金の高騰に よって毀損(きそん)されると考えているからです。つまり、金価 格が2倍になれば、世界に、ドル価値が1/2になったと受け取られる からです。 【米ドルの特権】 基軸通貨の発行特権として言われるシーニョレッジは、例えば米国 が、FRBの増発した原価ゼロの$100億(1兆円)のドルを払えば海 外から原油や、1兆円分の商品を買い続けることができるという特 権です。海外企業の買収もできます。 相手国は、受け取った代金$100億の、預金をもつだけです。米国 は、何も払う必要がない。流通価値(購買力)が世界で信用され、 海外で使われる基軸通貨の発行国は、「無の信用で、海外から商品 や資産、会社を買う」ことできます。 (注)米国以外の国、例えば日本や中国は、海外から商品や資産を 買うには、貿易黒字で稼いでいたドル(基軸通貨)を使わねばなり ません。米国は、国内の通貨と基軸通貨が同じドルなので、FRBが 増発すればいい。このため、米国は、抜きがたく、楽な貿易赤字を 続ける傾向をもっています。 日本が、資源を買うため輸出の努力をするのとは、違います。仮に 円が世界に、ドルより価値がある基軸通貨と認められるなら、基軸 通貨特権が身に沁(し)みてはずです。世界は、円を得るため、競 って日本人が買ってくれる質の高い商品を輸出します。日本は、貿 易が赤字でも、円を刷って渡せばいい。こうした位置にあるのが、 基軸通貨国である米国です。 ▼金が高騰すれば、基軸通貨特権が減少する方向に向かう 基軸通貨のドルに対し、金が高騰すると、ドル信用の低下と見なさ れます。ドル信用が一定線を越えて低下すると、1年後の価値(商 品購買力)が信用されねばならない基軸通貨の位置を失います。 以上から、米国政府とFRBは、金の高騰を嫌い、敵視します。 ■7.2000年代の、世界の外貨準備の急増は、どんな結果を生んだか ▼00年代の、世界の外貨準備の急増 現在、世界の、政府・中央銀行がもつ外貨準備は、$12兆(1200兆 円)に増えています。2000年は$2兆(200兆円)しかなかった。そ のうち約半分を、日本がもっていました。 (注)外貨準備は、世界の政府、または中央銀行が、輸入代金の支 払い用に保管している外貨です。外貨準備は、貿易黒字によって増 えます。世界の外貨準備が$12兆にも増えたのは、米国の貿易赤字 が累増してきたからです。 200兆円だった世界の外貨準備は、2000年代の13年間で、1000兆円 増え、1200兆円になっています(6倍増:毎年+77兆円:+15%/年)。 保有高での最大は、中国の$3.5兆(350兆円)で、2位が日本の$1. 27兆(127兆円)です。ところが、中国のように外貨準備を巨大に もつと、ドル安(元高)での損が増えます。このため、下落リスク があるドルを売り、金に変える動きが増えました。 現在、世界の外貨準備の54%が米ドルです。外貨準備の元は、貿易 赤字の米国への輸出が輸入より多く、受け取りが超過したドルです。 海外がもつドル外貨準備は、米国が、ドル紙幣(いわば帳簿のつ け)で買ってきた、商品額と言えます。渡したドル紙幣が信用状、 言い換えれば借用証です。借用証(ドル紙幣)の価値が信用される 間は、米国は、ドル印刷だけでいいからです。 【金価格とドルの関係】 米ドルの、商品や資産の購買力が将来的に下がる、つまりドルの価 値が減ると見られるとき、金の価格が、反対に大きく上がっていま す 中央銀行も、ドル保有によって損はしたくないからです。日本政府 と日銀は、米ドルにもっとも忠実です。根底は敗戦国で、防衛依存 のためです。 ■8.世界の、公的な外貨準備で金が増え、ドルが減った 世界の外貨準備は、もとは62%が米ドル(2000年)でしたが、2000 年代の後期では、米ドルの構成比が54%に減っています。 各国の中央銀行が、外貨準備のドルを売り、代わりに、金の保有を 増やしたからです。これも、金価格が上がった原因のひとつでした。 2012年時点で、世界の、1200兆円分の外貨準備の、中身は、以下で す。 【世界の外貨準備の構成比:2012年:WGC】 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 金 13%(156兆円)→構成比は増加傾向 米ドル 54%(648兆円)→減少傾向 ユーロ 22%(240兆円) 日本円 3%( 36兆円) ポンド 3%( 36兆円) その他 5%( 60兆円) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 特に、リーマン危機以降、世界の中央銀行は、金の買い手(買い 超)になっています。 (注)日銀の金保有は756トン(時価3.4兆円:簿価4412億円)と少 ない。日銀は、事実上の宗主国として日本を従属させる面がある米 国政府への気兼ねからか、金の買い増しをしません。このため、日 本では、金はドルの反通貨という論も、敬遠されるのかもしれせん。 ■9. 金を放出してきた中央銀行 1971年の金ドル停止以降、米国政府とFRBの金への態度は、金が高 騰したときは、金を放出して価格を下げるということでした。目的 は、前述のように、ドルが基軸通貨であるということを裏付けて維 持するためです。 ▼中央銀行からの金の放出 FRBが、世界の中央銀行にも呼びかけながら主導した「反ゴールキ ャンペーン」は、1999年まで、約28年続いています。(注)金価格 は、息の長いものです。スイスの銀行家が、50年以上のスパンで考 えるような感じです。 原油が2倍、3倍に上がった第一次石油危機のときの1973年に1オン ス$97(年間平均価格:円では1グラム958円)だった金は、1980年 には$612(円では1グラム4499円)にまで、ドル価格では6.3倍に 高騰しました。 アラブが、価値が下がるドルより、金を選好したことが直接の理由 です。1980年の、産油国によるドル売り・金買いによる、金価格の 高騰に危機を抱いた米国は、1980年代は、反ゴールドキャンペーン を加速させます。 第二次石油危機でもあった1980年の金価格は1オンス$612でしたが、 米国FRBが主導した、反ゴールドキャンペーンが効果を生んで、10 年後の1990年は、$383と38%下げています。 金価格がこの$612以上に上げるには、1990年から2007年($695) まで、17年もかかったのです。 http://gold.tanaka.co.jp/commodity/souba/y-gold.php 反ゴールドキャンペーンの実際の方法は、FRBが主導し、世界の中 央銀行がそれに従って、(1)金の放出か、(2)金リースで貸すこ とを実行することです。 つまり、市場への金の供給を増やして、価格を下げる。1980年代そ して1990年代は、中央銀行が金を放出する20年でした。 (注)1940年代末(第二次世界大戦後)は地上の金の70%は、政府 と中央銀行による公的保有でしたが、この放出の連続により、2011 年現在では25%に減っています。 ▼1999年からのワシントン条約での売却量の制限 1999年の金価格は、1オンス$278(1グラムで1069円)に下がって いました。多く人が、投資対象として金を見ることはなかった。米 国では、マイクロ・ソフトをシンボルとするIT株のバブルが2000年 4月のピークに向かっていた時期です。「金は完全に終わった。株 だ。」とされていたのが、1999年でした。 1990年代の金価格の低迷に安心したのか、中央銀行は、「ワシント ン条約」を結び、「向こう5年間、条約加盟の、先進国中央銀行に よる金の売り越しは400トンに制限」とします。ワシントン条約は、 その後2回更新され、現在の有効は2014年(来年)までです。 先進国の中央銀行が金の大きな売り手でなくなったあとの2000年代 の金価格は1999年の$278から、2008年のリーマン危機前の$839ま で3倍の上昇をしています。9年間で3倍は、年率13%の価格上昇で す。 ワシントン条約に制限されていたとは言え、リーマン危機前の2008 年までは、世界の中央銀行は、年間で400から500トンくらいの金の 純売り手(売り超)でした。 制限された中央銀行の売りの中で、1999年を底に、2000代の金は、 年率13%くらいで上げ続けました。 ■10.リーマン危機の後、中央銀行の金への態度に異変が起こった 金を売ってきた世界の中央銀行は、リーマン危機の08年から、方向 を転じます。まず、約500トン(年間)はあった売り超を少なくし ました。そして2011年には、年間500トンくらい買い手になってい ます。500トンの売り超が、500トンの買い超になれば、需要増加は 1000トンです。 年間に供給される金は4400トンくらいです。この中で、中央銀行に よる1000トンもの需要増が起これば、価格が上がるに決まっていま す。 産金は1年2800トンくらい、リサイクルが1600トンくらいで、金の 供給は1年4400トンです。4400トン(19兆円)の供給に対し、新た に、1000トン(4.3兆円)の買い手が現れたのと、同じ変化です。 金の価格が上がるのは当然でしょう。 ●リーマン危機以降の08年から2011年に金価格が上がった、もっと も大きな理由が、世界の中央銀行の、「ドル売り・金購入」でした。 買った理由は、1200兆円に向かい、急激に増えてきた外準備の中の、 ドルの下落リスクです。 世界の、外貨準備での、世界の公的部門の金買いが、2008年のリー マン危機のあとの、金価格の上昇の原因だったというのは、日本の 新聞は、なぜか報じません。理由を推察すれば、日本の政府と日銀 が、「ドル債を売って金を買う」ことがタブーとされているからで しょうか。世界の中央銀行がどれくらい金を売っているか、買って いるかのデータすら報じられません。 1オンス(31.1グラム)の金価格は、 2008年は$900くらいでした(1グラム$29)。 ↓ 2011年9月の頂点価格は$1900でした(1グラム$61)。 http://gold.tanaka.co.jp/commodity/souba/m-gold.php この主因は、08年までの500トンの売り超過だった各国の中央銀行 が、2011年には、500トンの買い超に変わったからです。各国の中 央銀行が、ドルを売って金に換えた理由は、ドルの価値が下がると 見たからです。 資料:中央銀行の資産分散戦略の16ページ(原文英語↓) http://www.gold.org/investment/research/ ■11.世界の中央銀行のネットでの金取引(WGC) ▼中央銀行の金取引の、最近10年間の変化 ・2002年から2008年まで、毎年400~600トンの売り超 ・2008年 約200トンの売り超に減少した ・2009年 ほとんど±0 →売りと買いがバランス ・2010年 50トンくらいの買い超 →買い超に転じた ・2011年 450トンの買い超 → 大きな買い超へ ・2012年 550トンの買い超 →買い超の加速 ▼1オンス(31.1g)の、年間平均価格で言えば(括弧内は1g価格)、 1オンス価格 円での1g平均価格(1ドル) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 2008年 $872($28) 2937円(105円) 2009年 $973($31) 2951円( 95円) 2010年 $1225($39) 3477円( 89円) 2011年 $1572($50) 4060円( 81円) 2012年 $1688($54) 4321円( 81円) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 円価格で見ると、08年と12年は、20%以上の円高があるため、国際 市場での、金価格のより大きな動きが見えなくなります。2008年か ら12年までの4年間で、ドルでの金価格は、94%も上がって、ほぼ2 倍になったのです。 ●2008年から2012年まで金価格が、大きく上がった主因は、年間50 0トンの買い超に転じた中央銀行です。 1980年代から1990年代、そして2000年代の08年まで、金を売り続け てきた世界の中央銀行が、2009年から、買い超にはいったからです。 これほど大きな変化は、かつてなかった。 現在も更新されて生きている『ワシントン条約』は、主要な中央銀 行に対して、金の1年間の売却(売り超)を500トンに制限していま す。この条約は、中央銀行は金を売ることが前提です。(注)ワシ ントン条約は2014年まで有効です。 ところが、リーマン危機以降、一転し買い超に転じた。理由は、前 述したように、2008年までの前提だった「ドル準備(reserve)」 に対し、世界の中央銀行が、ドルの下落リスクを感じたからです。 外貨準備が、世界で1200兆円にも増えると、ドル下落の損も、巨大 です。 ■12.金に価格下限はあるのか 株価は実績PER(株価/1株当たり純益実績)や、次期純益の確度の 高い予想をベースにした予想PERという価格のメドがあります。不 動産も、賃貸収入を元にした収益還元法での価格がある。 金には、こういったものはありません。 お金(おかね)のように、金利もない。 しかし金には、「下限価格」があるように感じます。 その下限価格になるのは、産金コストでしょう。 2005年から2007年は、この産金コストは1オンス(31.1g)当たり$ 400くらいでした。1グラムで1280円です。2008年から2009年には、 この産金コストが$600に上がり、2011年には$1000を超えて、201 3年現在は$1200付近です。1グラムでは3860円です。 なぜ産金コストが、こんなに急激に上がったのか? 世界の金鉱山 は、可採量が10万トンしか残ってないと言われます。地上の金は17 万トン(50メートルプール3つ分:1グラム4500円として765兆円) です。 金価格が上がると、鉱山では、奥の奥(地下5000メートル)までも 掘るようになります。世界中の鉱山が劣化していているため、金は、 1トンの鉱石で5グラムくらいしかとれません。 岩の圧力で地下の温度がサウナのように高い、深さ5000メートルま で掘って採掘し、地上に上げ、薬品で溶かして精錬する。金価格が 上がると、含有率が低く費用の高い金鉱山や、採掘か困難な鉱山で も採掘されるため、産金費用が高くなります。 ●こういう理由で、産金費用が$400から$1200と3倍に上昇したの です。金価格が上がったから、産金コストも急激に上がった。なお、 40%くらいの金鉱山は、1オンス$1300では赤字です。 2013年現在、1オンスの平均コスト$1200で生産された金が、 ・鉱山から2800トン ・リサイクルで1600トン、 ・合計で4400トンくらい供給されています。 リサイクルの1オンス(31.1g)当たりの費用も、$1200です。理由 は、業者がコスト$1200をかけて、携帯電話や電子部品から回収す るようになってはじめて1600トンがリサイクルされているからです。 ■13.産金コストを、ほぼ価格下限と見ることができる理由 市場の金価格が2013年の産金コストの1オンス $1200(1グラム $3 8.5)を割ると、どうなるか? ●$1200で生産しても赤字になるため、供給量が減ります。そして、 1オンスの価格が$1300(1g $41.8)くらいに上がらないと、供給 が需要を満たすようには増えません。 以上から、産金コスト $1200(1g $38.5)を、金の需要が減った ときの、価格下限とすることができるでしょう。 もちろん、価格が下がったとき、地上の在庫分が売りに出ることも あるかも知れません。それによって、1オンス$1200の産金コスト より価格が下がる。これは、短期的なものです。一般には、価格が 下がると地上の在庫分も、売りに回る量が、減少するからです。 価格下限が1オンス$1200なら、1グラムは$38.5です。 円で言えば、$1=95円なら1グラムが3657円です。 今日(13年10月26日)の金価格は4463円でした。税抜きでは4250円 です。 <現在価格4250円/1g←→産金コストから見た下限価格3657円> 一時的には下限価格3657円を割ることもあるでしょう。しかし、36 57円以下では、産金コスト割れで供給が減るので、価格は元に戻る でしょう。価格は、需給で決まります。需要が超過すれば上がる。 供給超過なら下がります。想定下限価格3657円÷現在価格4250円= 86%です。 最大で見て、現在より16%価格が下がるのを下限点とみておいてい い。以上から、金1グラムが円で4000円台なら買いということにも なります。 1グラム4000円台の金は、株よりはるかに、下落リスクが低い。1オ ンスの産金コストで$1200、1グラムの円価格で3657円くらいを超 えて下回った価格は、短期で、下限価格3657円に戻ることが想定で きるからです。 金とドルの価格は毎日変わりますが、今日、13年10月30日の金価格 は、1オンスが$1345(1グラム$43.2円)です。円での小売価格は、 5%の消費税込みで4490円(税抜き4276円)です。 ゴールドマン・サックスは、2014年の金価格について、1オンス$1 000の安値を予想しています。しかしこの価格では、産金コストを 大きく下るため、産金での4400トンの供給は、急減します。 それでも、価格が$1000に下がるとすれば、在庫分の売り、および 金ETF(金証券)での売りの想定しかない。果たしてどうなるか? 【有料版の目次】 <683号:中国の不動産バブルが崩壊し、 経済はハード・ランディングするのか?> 2013年11月13日 【目次】 1.起点は、リーマン危機後の4兆元(64兆円)だった 2. 一般的な記事の、論の方向 3.中国の住宅価格の評価 4.年収の期待増加が低下すると、話は別になる 5.2009年からの、中国の住宅価格 6.シャドー・バンクの不良債権問題 7.中国の政府部門の借金はGDP比58%(2012年) <684号:中央銀行が最大の買い手になった米国債と円国債(1)> 2013年11月20日分 【目次】 1.米国の政府債務は、$17兆(1700兆円) 2.米国債のファイナンスは特殊 3.中国の、米国債買い 4.米国が海外に対してもつ最大の特権は、ドル基軸通貨体制 5. 1年の新規債$1兆のうち、$5000億(50兆円) 6.2012年から中国のドル国債買いが、減り始めた 7.2012年9月からの量的緩和第三弾は、延長された ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【ビジネス知識源アンケート:感想は自由な内容で。 以下は、項目の目処です】 1.内容は、興味がもてますか? 2.理解は進みましたか? 3.疑問点、ご意見はありますか? 4.その他、感想、希望テーマ等 5.差し支えない範囲であなたの横顔情報があると、今後のテーマ と記述の際、より的確に書くための参考になります。 気軽に送信してください。感想やご意見は、励みと参考にもなり、 うれしく読んでいます。時間の関係で、質問への返事や回答ができ ないときも全部を読み、共通のものは、記事に反映させるよう努め ています。 【著者へのひとことメール、および読者アンケートの送信先】 yoshida@cool-knowledge.com ◎購読方法と届かないことに関する問い合わせは、ここにメール → reader_yuryo@mag2.com ■1.有料版は、新規に登録すると『無料で読めるお試しセット』 が1ヶ月分送信されます。以下は、最近のものの、テーマと目次の 項目です。興味のある方は、登録し、購読してください。 まぐまぐの有料版では、新規に月中のいつ申し込んでも、その月の 既発行分は全部を読むことができます。最初の1ヶ月間分は、無料 お試しセットです。その後の解除は自由です。継続した場合に、2 ヶ月目の分から、課金されます。 (1)『会員登録』で支払い方法とパスワードをきめた後、 (2)登録方法を案内する『受付メール』が送ってきて、 (3)その後、『購読マガジンの登録』という3段階の手順です。 【↓まぐまぐ会員登録と解除の方法】 http://www.mag2.com/howtouse.html#regist ◎登録または解除は、ご自分でお願いします。 (まぐまぐ有料版↓) http://www.mag2.com/m/P0000018.html (まぐまぐ無料版↓) http://www.mag2.com/m/0000048497.html (以上) ■2.「まぐまぐの有料版を解約していないのに月初から届かなくな った。」との問い合わせが、当方にも多いのですが、ほとんどの原 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