理解されていないキャッシュフロー・金融リテラシーの基礎の基礎(2)
Written by admin on 2023年12月2日 – 12:00
「理解されていないキャッシュフロー」の2号目の前半では、最近の、 ドル・円と金の、奇妙に見える動きの理由を、基礎から解説します。 本稿は、中編として15ページ(8000字くらい)です。基礎とは、理論 です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <Vol.1387号:増刊:理解されていないキャッシュフロー 金融リテラシーの基礎の基礎(2)> 2023年12月2日:有料版、無料版共通 【目次】 ■1.ドル・円と金が奇妙な動きをする理由 ■2.奇妙な動きの原因を探れば ■3.日米の金利差とドル・円 ■4.円だけが、60%も暴落した実効レート ■5.下がるべき人民元と人民元の国債が、最近は上がった理由 ■6.コロナのあと世界の金融負債は5京4000兆円に膨らんだ ■7.信用通貨の1万円札と、金の価値は、社会のなかもの ■8.世界の金利が4ポイント上がって、 ドルの既発国債と債券は25%下がっている ■9.リーマン危機との比較 ■10.キャッシュフローと、名目金利による債券の時価評価で見れば、 時価評価しない簿記会計のウソが、見えてくる 【後記:新著の紹介と寄贈】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.ドル・円と金が奇妙な動きをする理由 米ドルが、146円台に下がっています(円は約4円上昇)。日経平均は 11月は10月末の3万1000円に対して、3万3000円台へと約6%上がって います。 金価格は円では、10月31日が1グラム1万575円、11月30日は6%の円高 のため、1万679円でほぼ変化がなく、わずかな波動です。 しかし、1オンス(31.1g)のドル価格では、 ・10月の月中平均が1913ドル(消費税がない国際卸価格)、 ・11月30日は、2046ドルであり、7%上がっています。1か月7%は年 間では、√12=3.5倍の、24%上昇に相当します。 金価格が上がる原因は、およそいつも、ドルの世界の通貨に対する実 効レートの低下です。新興国の中央銀行の、「ドル準備売り→金買 い」があります(2023年は年間1000トンに増加)。1000トンの買いは 2024年も続くと、ドル下落の可能性も高いことになるのです。 ■2.奇妙な動きの原因を探れば 11月にドルが下がった原因は、米国のCPIが、23年10月は3.2%と前月 比で0.5ポイント下がったからです。インフレであることは変わりが ない。しかし、金利が上がる予想の、ドルの買いを決めてきた高いイ ンフレ率(前年比)が下がった。米国のインフレと失業率が今後どう なるかが、金利とドル価格を決めます。 【FRBが参照するインフレ率が多種あって、 一般にはわかりにくいことですが・・・】 23年10月CPIは、前年比3.2%ですが、投資家の期待インフレ率(≒ BEI=数年後の予想インフレ率)は2.25%付近です。22年3月で、CPI が9%だったときは3.5%ですから1.25ポイント下がっています。 ◎FRBは、実は、この期待インフレを2%に下げるために、名目金利の 利上げをとっているのです。 FRBがもっとも重視するのは、期待インフレ率です。(5年債と10年 債の、物価連動債の金利:BEI=投資家の期待インフレ率) https://www.oanda.jp/lab-education/oanda_lab/oanda_rab/breakeven_inflation_rate/ 期待インフレ率は、10月は2.25%に下がった(グラフの事実)。 23年12月のFRBの、短期金利(名目金利)の5.25%からの利上げはな い予想。24年3月には利下げ(マイナス0.25%)かもしれないという 観測を米国の金融市場がしているからです(投資家の予想)。 ↓ これが、3か月先くらいの金利政策を織り込んで動くNYダウが、史上 最高価格の3万6000ドル台をつけている理由です(株価での結果)。 ↓ そして3か月先の予想金利が下がってきたドルへの、他の通貨からの 買いが鈍った結果、23年11月は、円に対しては6%のドル安(6%の円 高)になったのです(通貨での結果)。 4円の円高とはいっても、2021年の110円台とは40円以上(36%)も円 安の水準です。 ・・・以上の金融理論的な話は、「数字の事実→名目金利の将来予想 →通貨、株、金の価格→価格も変動」となっていて、とてもややこし い。 しかし、売買の70%を占めているファンド運用のプロは、自動売買の アルゴリムも使って、ここに単純化して示した考えから、多い順に言 うと、通貨、国債、株、金を売買しています。 ■3.日米の金利差とドル・円 日米の名目金利差が3.5%で1ドルは146円、仮に、この金利差が2%に 縮小すれば(ドル金利3.5%、円金利1.5%になると)、ドル円は130 円から120円台でしょう。 現在の金融状況からは、起こりえないことですが、ドル金利2.0%、 円2.0%になれば、1ドル=90円台が均衡レートでしょう。 【購買力平価では、ドル・円は80円台】 よく取り上げられる、ビッグマックの価格は、米国が778円、日本は 450円です。食としての価値は、日米で同じですから、1ドル150円の ドルは、778÷450=1.7倍くらいは過大評価です。 トヨタは、1.7倍の価格で、米国で作って、米国で売っています。 海外で70%を作って売るので、売上、経費、利益を円換算したとき、 円安の恩恵をうけるトヨタが、税引き後純益で3兆9000億円の利益を 上げるのは当然です。 株価の時価総額は、45兆円、2年前の約2倍です。1000万円もっていれ ば、2000万円。「売りどき」でもあります。2024年からの長期的な傾 向は、ドル安・円高の可能性が高いからです。 金も上がっていることは、新興国による、金ペッグBRICSデジタル通 貨加盟のための、ドル外貨準備の売り→1000トンの金買いを示します。 ↓ BRICSプラスに加盟することが決定している中東諸国の原油が、2024 年から次第に、BRICS通貨でも売られるようになって、現在ほぼ100% のドル決済は、50%に向かって減っていくので、ドル外貨準備も50% でいいのです。 トヨタの株価は、世界本社がある日本の通貨が約30%は下がったから、 会社の評価は2倍に上がったという変なものです。 変動相場の通貨レートって、奇妙なものです。 その国の、総合的な経済力には、関連がない(GDPの期待実質成長率 (または潜在成長力)として、すこしは関係があります)。 ■4.円だけが、60%も暴落した実効レート 円の、世界の通貨の加重平均に対する実効レートは、1995年が150、 現在は60です。円の価値は40%(60%下落)に下がってしまったので す。 (図録:ドル、ユーロ、元、円の実効レート) https://honkawa2.sakura.ne.jp/5072.html 日本の世界に対する経済力も、通貨レートと物価・賃金では、60÷ 150=40%に下がっています。 【ドルの購買力平価は、88円付近】 米ドルの高い金利による、海外からのドル買いの増加による過大評価 をならして、円でいえば、150円÷1.7=88円が均衡点です。 1ドル88円なら、ハワイのラーメン3000円も1700円になって、観光地 物価の、妥当な価格になります。近くの専門店「丸源」ではラーメン がメインの1食が1000円付近(ラーメンだけでは約800円)で、パート の時給1時間分です。 カレーと並ぶ国民食のラーメンとパートの時給は、過去からおよそ一 致しています。米国の、現場ワーカー職の時間給は3000円付近という ことでもあります。これが万国にほぼ共通な「経済学的な物価」です。 仮に、日米の金利が一緒になると、1ドル=88円です。ドル切り下げ があれば、ドルは、1/2あたりと、すっと前から言っているのは、日 米金利が同じときの物価・賃金の均衡レートが88円付近だからです。 2021年以降のドルは、外為市場での通貨の売買では過大評価されてい ます。 金融市場では、米ドルが約2倍の過大評価という見方は少ない。金融 機関の5%(20人に1人)か;当方は、ほぼいつも少数派です。 しかし、通貨の基礎を考えてみてください。米国のパート労働は、日 本のパーより3倍優秀なため、時給3000円でしょうか。そうでなく、 むしろどこからどう見ても、日本のパートが上でしょう。つまり米国 の3000円は、ドル/円≒150円がもたらす、過剰評価です。アルバイト のコンビニのレジ担当を、日米で比較すれば誰でもわかることです。 日本の現場職は、たぶん世界1優秀です。しかし、賃金は1/3。賃金を 換算する通貨が、おかしいのです。 ◎ドルの過剰評価は、本稿で解説する、日本のドルの対外純資産(= ドル買いの累積超過)の約420兆円が、原因であるという説明すると、 了解できるでしょう。 【外為市場は巨大】 理由は何であれ、買いが多い通貨は上がります。日本を含む、世界か らの売りより買いが少なかった円(1995年以降の28年間)や、トルコ リラのような通貨は、下がります。 今、1億戸の不良在庫から、金融危機の淵を歩いている人民元が、逆 に、上がっています(2021年の1元は15円→現在20.73円:2年で+38 %)。原因は、中国経済の好調ではない。2021年からの中国経済は不 況です。 ◎フィナンシャル・タイムズ紙が作っている世界債券のインデックス で、なぜか(理由は不明)、人民元国債のポートフォリオの構成比を 上げたことが原因です。 (FTSC:世界の約20カ国の国債や債券の指数:2018年には、中国国債 は入っていませんでした)。 https://www.ftserussell.com/ja/products/indices/world-government-bond-index ■5.下がるべき人民元と人民元の国債が、最近は上がった理由 主にドル国債と債券を買うつもりで、金融のプロが売買している世界 の国債や債券のインデックスを買うと、人民元の国債や債券も買った ことになって、人民元が、経済的な理由がなく上がることになります。 世界金融には、個人が行っている、単純な通貨ペアのFXや外貨の株買 いだけでなく、プロが売買している無数と言っていいくらいの金融商 品があります。 【巨大な売買がある外為市場=世界の銀行の店頭】 世界の通貨の売買は、貿易の実需の約100倍です。1日に15兆ドル (2250兆円)と巨大です。 このなかで円の売買は、世界の通貨の、16.7%の375兆円です。米ド ルが88.5%です。売買ですから、合計は200%:売りと買いだけでは、 ドルは半分の44.3%です。円は、世界の通貨の、8.4%の構成比です。 証券会社は、商店と同じです。売買が増えて、投資家の損得には関係 がない手数料がはいればいい。有利な商品、または安全な商品として、 デリバティブも含んで、可能な限り多種の金融商品を作ります。金融 商品開発とポジショントークが銀行・ファンド・証券の本性です。 ■6.コロナのあと世界の金融負債は5京4000兆円に膨らんだ 世界の金融資産(=同額が金融負債)は、世界GDPの3.6年分の、360 兆ドル(5京4000兆円)といっても、たぶんイメージができないでし ょう。それが(正常な)普通の人の頭です。金融のプロの頭が、 1973年からの数理金融で異常になっているのです。 【現代ファイナンス理論】 1973年:確率的な未来リスクの計算のオプション、先物のデリバティ ブをつくったブラック・ショールズ方程式の論文から、数理金融の拡 大が、はじまったのです。ここで、伝統的な会計学(ファイナンス) は、金融にはついていけなくなったのです。 ◎デリバティブとともに、現代ファイナンス理論は、未来の金融リス クの確率計算になったからです。 【通貨先物価格の意味】 昨日の日経新聞に出ている、FX(外為証拠金取引)でも売買されてい るドルの、6か月先の先物価格(先物はデリバティブです)は144.6円 です。ところが、今日のドル現物価格は、146.8円です。 この2.2円(6か月で1.5%の差:年間換算3.0%)は、何でしょうか? ドル安(円高)のリスクが、半年で2.2円(1年で4.4円)あると、 通貨市場が想定しいるのです。 このため、ドル建て債の下落を、先物でヘッジすると、1年後の、1億 ドルの債券のドル安をヘッジするなら、500万ドルが保険料です。 為替交換の手数料と、管理の事務手数料を含むので、年間では、約5 %のヘッジ料がかかります(この5%でドル債の、1年の金利が5%消 えます)。 これが、ドル先物の、デリバティブのコスト(リスク保険の価値)が 5%ということです。これが、現代ファイナンス理論のエッセンスで す。 〔要約〕リスク予想と金利での割引現在価値(NPV)の計算が、ブラッ クショールズ方程式であり、現代ファイナンス理論(マーロン・シ ョールズ)です。 【金と1万円の価値の、奇妙な一致】 1万円札が100トン(1億枚=1億グラム)で1兆円になります、世界の 金融資産=負債が、その5万4000倍と言っても、実感はない・・・。 1万円札の重さは、1グラムです。 金グラムが1万円ですから、現在は紙の重さでは金と一致します。偶 然ですが面白い。あなたの所得や預金に相当する、金の量がイメージ できます。1000万円で、たった1Kgか、あるいは金1Kgもあると思うか。 金1Kgバーは、携帯電話より二回り小さい。比重では鉛の1.8倍の重さ です。スピーカーの、裏からの支持を4Kgの金でやれば、音はどうな るか(原子の密度が1.8倍濃いのでたぶんより静寂になりま す)・・・離れ島に住んで金貨ではなく金属として使えば、価値はそ の程度のものでしょう。 1グラムの小さな紙も1万円ですから・・・通貨と金融資産は「社会」 があってはじめて、商品と交換できる価値をもちます。離れ島では、 金1Kgは海に潜って捕まえる魚や蟹の使用価値がない。 【蟹の、社会での物的な価値】 先週、ある人の厚意から、金沢から蟹を贈ってもらいました。熱燗の 剣菱とあわせると美味しかった。「かに道楽」の味とは異次元です。 鮮度以外の、何かがあります。爪をゴムで縛られていて一瞬この蟹は 何のために生きてきたのか・・・と不憫(ふびん)でした。蟹にも意 識はあります。 われわれは、毎日、生命を食べ、これは美味しい、または不味いと言 いながら生きています。菜食も、植物の命を食べるものです。太陽の 光エネルギー、海と土壌の微生物、そして二酸化酸素と酸素と水が、 命の根源でしょう。 ■7.信用通貨の1万円札と、金の価値は、社会のなかもの 1万円札や金は、食べることができない。商店で、何枚かわかりませ んが使うと、この蟹も買えます。 今日の労働と、商品の価格を決めた分業のルール(文化)があるのが、 社会です。商品の交換の媒介(エージェント:代理役:メディアとも 言う)がマネー。 臨時国会で決まった、13.1兆円の補正予算も1万円札では1300トンで す(4トントラック325台分の、金輸送車と同等)。人口1人あたり、 10万円(1世帯あたり25万円:25グラム金)のマネーです。あの国会 審議は、金1300トンの支出の決定に値しますか? 【1兆円を1奥分の1の1万円にすれば・・・】 世帯年収(GDP相当)を1000万円(金1Kg)として、預金、国債、債券、 株の金融商品(≒負債)の残高が3600万円の金融化した経済という意 味です。1億分の1にして、皆さんの世帯のスケールで、考えていい。 年収1000万円なら、3600万円の金融資産は平均的です。金融資産と同 じ金額の3600万円は、別の誰かの、負債です。金融資産と負債の仲介 役が、銀行、ファンド、証券会社です。 ■8.世界の金利が4ポイント上がって、 ドルの既発国債と債券は25%下がっている 銀行・ファンド・証券会社(米銀の大手は証券を兼業)の資産である 既発国債と債券には、金利(本質は通貨の通貨の下落リスクです)が 上がって、時価が下がった不良債権が隠れています。(注) ◎ドル債の名目金利が、現在、5%であるということは、1年後のドル の、米国物価に対する価値(購買力)が、5%下がるリスクがあると いう意味です(これが名目金利の本質です)。 金融の仲介機関は、2021年のように、世界の金利が1%台と低く、国 債と債券価格を今より約25%は高く買ったときの簿価で、4%や5%に 金利が上がった今も、バランスシートに計上しているます。この25% が、銀行やファンドがもつ、ドル10年満期債券にある含み損です。 銀行B/Sの帳簿では、金利1%のとき買った例えば1兆円、それをいま 売ったときの時価は、7500億円ということです。 【偽装の、銀行B/S】 1億分の1にした3600万円の金融資産が含む、金融機関での時価での損 失は、3600万円×約25%=900万円です。 世帯の年収分(=GDP)に相当する損ですが、金融機関は資産を時価 評価していないので、「金融は正常(=既発国債と債権は正常な価 格)」と言い続けています。 この気分は、世界の株価が下がっていず、上がり気味でもあるために 生じたものです。仮に株価が30%下がると、一挙に現在の予想者が2 %の、世界金融危機の気分になります。 ■9.リーマン危機との比較 危機が来れば、リーマン危機の不良債権4兆ドルの、4倍から5倍です。 1929年~33年の。世界恐慌並みです。リーマン危機も、2008年8月末 まで(9.15の2週間前)、ほとんどの金融マンの(たぶん世界の95 %)、「想定外」のことでした。 米国の株価が最高(NYダウ3万5950ドル;11月30日)の裏には、 ・史上最大の空洞があるので、 ・FRB議長の、金利0.25%を巡る発言のときの空気で、乱高下します。 ◎高くて長い綱渡りが、わずかな風(0.25%の、金利変化の予想)で 大きく揺れることと同じです。 ◎しかし、保守的で大本営の発表をする新聞でも、米銀の債券の不良 債権が100兆円と、ドル債の、不良債券の全体のごく一部が、出始め ました(23年12月1日:日経新聞)。 ↓ 銀行と金融は正常、NYダウの株価は最高というなかで、こうした金融 市場の評価の変化は、見逃してはならない。金融市場の空気が、 2024年になれば変わっていく、初期の兆候でしょう。 健康に見え、活発に動いている人間で言えば、失血による血圧の、わ ずなか低下に、あたります。 ◎不良債権のやっかいな点は、発生したら減ることは少なく、多くの 場合、時間の経過で増えていくことです。 【FRB、日銀、銀行は、ウソを言う】 原因は、米財務省と金融機関(銀行とファンド)の95%が、「金融と 銀行は正常、株価は上がる」として、2022年3月以降の利上げで増え てきた不良債権による、銀行とファンドの資産の空洞を、時価評価を せず、隠してきたからです。 ◎日銀も資産(国債597兆円を保有)で、10兆円の損と、含み損の一 部を言い始めました。 FRBは、5ポイントの利上げで、4兆ドルの保有国債とMBSが25%も下が って、時価評価すれば、完全な債務超過(マイナス8000億ドル:- 120兆円)になっていますが、沈黙しています。 小さな政府と金本位主義のロン・ポールなどの議会で決議し、帳簿に はあることになってる8133.5トンの金を見せろと要求したとき拒否し たのは、バーナンキのFRBでした(リーマン危機のときの2008年~ 2009年)。 FRBもCIAと同じように、大きなウソを言う機関です。スケールの大き なウソは、世間では本当と取られることが多い。 ◎金融ムラは、中央銀行と一緒になって、銀行とファンドの資産に含 み損が大きいときは、預金の取り付けを防ぐため、ウソをつくことが 使命の商売です。本当のことを言えば、資産への、心理的な信用で成 り立っている金融が崩壊するからです。 政府が、議会でウソの答弁をしても、政策実行のためとして、許され てきたことと同じです。財務大臣や岸田首相の答弁で分かることです。 ■10.キャッシュフローと、名目金利による債券の時価評価で見れば、 時価評価しない簿記会計のウソが、見えてくる キャッシュフローは、現金の流れを言います。 会計での経常収支黒字の通貨円が、1995年以来25年間も下がって、実 効レートでは150から60になっています。 経常収支(貿易収支+サービス収支+海外投資の所得収支)が黒字の 通貨を続ける円は、「教科書の知識」からは、上がっていくはずです。 1973年以降の、通貨の変動相場の、教科書の原理では、黒字国の通貨 は上がって、輸出価格が上がって輸出が減り、輸入価格が下がって輸 入が増える結果、貿易は均衡するとされています。 ◎教科書では、40年の黒字国の通貨(円)は上がり、世界最大の、0 年の赤字国の通貨(ドル)は下がらねばならない。 (米国の経常収支の赤字:1980-2023) https://ecodb.net/country/US/imf_bca.html 1971年までの金・ドル交換制による固定相場(1ドル360円)から、 金・ドル交換が停止されて、ドルと各国通貨がフロートする変動相場 にはいった1970年代から1995年までは、この原理が働きました。 (ドル、ユーロ、人民元、円の実効レート:1970-2023) 実効レートは、世界の通貨レートの加重平均に対する、各国レートで す。 https://honkawa2.sakura.ne.jp/5072.html 上記のグラフで、赤の円を見ると、1970年の実効レートは指数で60で あり1995年は150(2.5倍:1ドル80円)でしたから、確かに、黒字国 の通貨が上がる変動相場の原理が働いています。 赤字国の通貨、米ドルは155から1995年は100へと、65%に下がってい ます。確かに、変動相場の教科書通りです。 【円の暗転】 ところが、1995年以降の28年間は、黒字国の円の実効レートは150か ら60へと、40%に下がっています。逆に、赤字国を続ける米ドルは、 1995年の100から2023年は13へと30%上がっています。教科書とは逆 の動きです。 1995年以降の、経常収支と通貨レートの矛盾は、経常収支の黒字を続 けた円の国際キャッシュフロー(現金の流れ)で見ると、分かります。 日本は、1年に、経常収支の黒字だった20兆円から40兆円(平均30兆 円)の、ドル買い(円売り)をしてきたからです。 ドル国債の買い、ドル債債券の買い、ドル株の買い、直接投資です。 その残高が、対外資産の1338兆円(対外負債は919兆円)、対外純資 産として残っている418兆円でです(22年末)。 約20年間、日本(政府、銀行、企業)からは、毎年20兆円、ドル買い (円売り)を超過させてきたのです。 買われる通貨(ドル)は上がり、売られる通貨(円)は下がるのが当 然です。 1995年から2023年までの、 ・円の実効レート 150→60(マイナス60%) ・ドルの実効レート 100→130(プラス30%)の原因は、国際会 計上の経常収支の黒字を、そっくり、国際キャッシュフローの赤字 (ドル買いの超過)に振り向けてきたからです。 日本人が儲けたお金が、国内には投資されず、米国に投資されました。 その超過額が(対外純資産418兆円(22年末))です。 ◎日本経済が成長せず、米国を成長させた原因が、日本からのドル買 い(=ドル投資)の超過、418兆円です。日本のマネーが、418兆円も 米国に逃げたのですから、 ・約26年日本はゼロ成長のデフレに、 ・米国は2%台のインフレの成長経済になったのです。 【財源はある】 政府は、「財源がない」と、いつも言います。日本の財源はドル建て の、日本の対外純資産に隠れています。日本の対外純資産とは、政府 の外貨準備(162兆円)と、民間(銀行+企業)の対外純資産256兆円 です。 この418兆円の日本がもつ財源は、2024年以降の、日本の成長のため に、利用することが可能な、マネー資産です。1年に50兆円のドル売 りを続けても、8年分のドル純資産がこの国にはあります。 【結論】 ◎対外資産と対外負債は、同額で均衡するのがいいことです(国際収 支の基本原理)。 ↓ ◎2000年代に富国になった米国に、418兆円も、2000年代に貧国にな った日本が超過貸し付けする必要は経済的には全くない。 政治的にはあるかもしれません・・・証券(ドル国債、社債、株式、 預金)を買うことは投資ですが、国と国のキャッシュフローの関係で は、貸しつけることです。 ◎2000年代の日本を貧国にしてきた、三部門の「犯人」である、1) 政府(財務省)、2)財務省の下請けの日銀、3)財務省の税務調査の 裏権力で支配されている政治家は、米国に従属しています。 次号の正刊では、418兆円の対米超過貸し付けを、まず認識し、経済 的に派不合理な対外純資産を回収して、日本経済と国民のために使う 方法を示して、検討します。認識は、方法に先立つからです。 【後記:新著の紹介と寄贈】 以上に関連する事実も、歴史的に書いた新著『金利と通貨の大転換』 は、アマゾンの財政学、マクロ経済学で1位を続けていましたが、今 は10位くらいです。 やはり1位は気分がいい。2024年以降を生きる、あなたの知識パワー になる本と確信しています。お手数をかけますがアマゾンにコメント を書くこと、あるいは注文もお願いします。1人1票で若干は上がるで しょう。 https://www.cool-knowledge.com/ ↑ このサイトからリンクしたアマゾンに行けます。 ◎当方の手許に出版社から来たものが、少し残っていま。5名の方に 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