特集:2022年、23年の経済:金融(1)
Written by admin on 2021年12月31日 – 10:00
今日は大晦日、当地は晴れていますが、気温は適度に低い。いかがお 過ごしでしょうか。本稿から有料版の今週号を圧縮し3回にわけて 送ります。テーマは<2022年、23年の経済:金融>です。 * 7月末からの、デルタ株の中の東京五輪、9月の菅首相の辞任による岸 田内閣の誕生、そして、現在は広がる直前のオミクロン。 金融では、2021年には、日銀による株ETFの買い増しの停止がありま した(残高は36兆円)。安倍内閣の2020年には日銀が7兆円買ってい た株ETFが、菅・岸田首相の21年には1兆円以下に減っています。日本 の株(日経平均)と米国S&P500の、上昇率の違いの原因がこれです (年間上昇は5%と低く、米国の25%の1/5)。 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFL00038_S1A221C2000000/ * 12月の半ばに会議があり、新幹線で軽井沢の隣町に行って、久しぶり に『中棚荘』(千曲川の谷の、中腹)に泊まりました。 リンゴを数十個浮かべる清透な湯が有名で、島崎藤村(1872-1943) が逗留して小説を書いたという。長野県特有の敷き布団のような座布 団を敷いた8畳の炬燵の間と、6畳には2台のベッド。WiFiは、つなが ります。周辺は、千曲川に向かう斜面に広葉樹の樹木。景色と建物に、 昭和初期の刻印が残っています。ここは過去か未来か。時間に錯覚が 起こります。 https://nakadanasou.com/ 欅(けやき)のカフェカウンターの前面のデザインされた窓が切り取 った霞む山と木々の葉を眺めていると、悠久の時を感じます。自然は、 年々再生し時間をつなぐ。変化があるのは、人間の時間です。千曲川 の自然は、100年前の藤村と共有ができます。 「小諸なる古城のほとり、雲白く、遊子(ゆうし)悲しむ・・・しろ がねの衾(ふすま)の岡辺、日に溶けて淡雪流(なが)る・・・」 夕食の前、温泉への階段を上ると底冷えがし、早朝に縁側から見ると 地上は「しろがねの衾(ふすま)」に覆われていました。雪は、遠景 をクリアにします。 朝、二度目の温泉への階段を上ると、手すりにこびりついた雪が、氷 になって固く冷たい。環境は人の考えを変えます。科学には時間がな く変わらない。人の観念は変わる。 年末や新年が意味をもつのは、多くの人がその日を出発点に考えと行 動を変えることがあるからでしょう。1年は、人間が作った区切りで す。時間は、年々速くなる感覚です。 * テーマは2022年、23年の経済、金融、生活です。いずれも人の判断の 結果である財の生産と売買(取引)で決まります。 空中の酸素は、まだ、経済的な財ではありません。二酸化炭素の排出 権は財になりました。日本では、排出権1トン当たり約3000円、スイ スでは9000円付近(2018年)。2021年のEUでは、約1万円です。年々 高くなっています。企業が払うため物価の構成要素になります。排出 を減らしたところが売り、増やすところが買う。 https://jp.investing.com/commodities/carbon-emissions 【カーボン・ニュートラルへの10年】 用語がこなれていないSDGs(持続可能な開発目標)の中核は、CO2の 排出、水質、土壌の汚染を減らすための、投資です。1970年代の、石 油危機のあとの公害撲滅の運動に似ています。 二酸化炭素の排出権は、石油から再生可能エネルギーへの転換をもた らし物価を上げる要素になります。カーボン・ニュートラルは、世界 の肝心な経済政策になっています(CO2の人工的な排出量と、自然の 吸収量を等しくし、温暖化を避けること)。 経済学者の起案で自然のクリーン化を財(=コスト)にした点に、特 徴があります。世界の政治はSDGsに向かっています。その一環が、 10年に期限を切ったガソリン車のEV化(電気自動車)です。トヨタも レクサスのラインアップの全車をEV化するという。 【インフレの時代へ】 ◎コロナ対策としての通貨増発(中央銀行2000兆円+銀行信用の拡 大)を期に、サプライチェーンショックが起こり、2000年からのディ スインフレの20年が、マイルドなインフレの時代に向かっています。 これは基調の変化であり、重要な要素になっていきます。 石油危機の80年代インフレ(OECD物価+11.9%)に準じます。当時と は、歳以後は負債が悲劇的な結果をもたらす、マネーの大増発がある 点が違います。現在すでに、世界は、GDPの2.5年分の負債であり、 2023年、24年の悪性のインフレ(スタグフレーション)に向かってい ると言っていいでしょう。 二度の石油危機のときは、物価の上昇に対し、世界が金利を上げ、投 資と需要を減らす余力がありました。当時は、金融の膨張と株価バブ ルをともなった経済ではなかったからです。 今回は、 ・GDPの成長率が70年代、80年代より二段階低いこと、 ・ゼロ金利と重なったマネーの増発が招いた、世界の負債が大きすぎ ることの、2つの要因から、インフレ対応の充分な利上げができない。 (注)投資市場では、2022年の米国に利上げは穏やかと予想し、21年 12月も、株を買い上げています。 【非金融部門の負債;GDPの2.5倍】 リーマン危機とコロナ危機を起点にした、 (1)世界の中央銀行の、通貨量の急増と、 (2)銀行信用の増加(=貸し付けの増加=M2=預金通貨量の増加) は、非金融部門の政府・企業・世帯にとっては、負債の増加になりま す。 銀行は、預金をバックに、企業、世帯、政府への貸付金として「預金 通貨」を増やす。これが、経済学がまだ言っていない貸付金の意味で す。(何回か紹介した英国銀行の:『現代経済のマネー創造』)。 https://www.bankofengland.co.uk/quarterly-bulletin/2014/q1/money-creation-in-the-modern-economy 【世界の非金融部門の負債は、 GDPの2.5年分(226兆ドル)に膨らんでいる】 世界の非金融部門の負債は、226兆ドル(2京5500兆円)に増えていま す。世界を1国とみたとき、GDPは約1京円です(1989年には15%だっ た日本のシェアは5%に低下)。 約30年、GDPの成長がなかった日本のGDPの世界シェアは、1989年の1/ 3に縮小しました。日本人の、資産と所得のシェアが1/3に縮小したこ とと同じです。 一方で、日本を含む世界の政府、企業、世帯の総負債は、GDPの2.5年 分に膨らみました。中央銀行と銀行の貸付金の総額が、226兆ドルと いうことです。(注)日本は、政府負債が1200兆円(国債)、企業・ 世帯の負債は1527兆円。M3とされるマネーストック(企業と世帯の預 金)と同額です。 https://www.boj.or.jp/statistics/money/ms/ms2111.pdf マネー化した権利である金融資産は、「Aさんの負債=Bさんの金融資 産」という構造をもちます。金融資産が増える一方で、政府、企業、 世帯という経済の3主体の負債が、同じ金額、増えています。 ◎世界のGDPの、2.5倍の負債(=金融資産)は、借りた側が、3%や 4%の正常な金利は払えないくらい大きい。21世紀の、ほぼゼロ金利 の長期化により、負債が拡大してきたのです。 原因は、実質金利(=名目金利-期待物価上昇率)が、マイナスを続け たからです。世界の資産(不動産と株)では、「資産の価格上昇率> 金利率」が20年続き、借り入れでの投資が増えて、負債は急激に増え ました。 【マネー量の増加=負債の増加の限界】 リフレ派(MMT理論)は、通貨発行に限界がないと言う。 ◎限界は、あります。「借りた側の利払いが無理になる地点」が限界 です。GDPの2.5倍の負債では、3%から4%の正常な金利を払えない。 すでに、限界に達しているのです。 市場の期待金利は、短期の物価の上昇が、長期のインフレと見なされ るようになると上がります。 【GDPの成長率より大きかった、負債の増加率】 ◎長期金利は、理論的には「実質GDPの期待成長率+予想インフレ率」 で均衡します。(注)現実には、ゼロ金利の長期化のように、「不均 衡」なときが多い。不均衡は、常に、実質金利のマイナスです。 1970年には、世界の総負債は、GDPの1倍しかなかった。 50年で2.5倍に、「無形の信用=通貨量」が、膨らみました。 ◎50年間も、1年平均で、GDPの増加率より1.85%分、負債の増加が大 きかったのです。(ブルムバーグ:世界の負債226兆ドル) https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-12-16/R46GZ3DWLU6G01 【通貨増発の最終段階に来た】 マネタリズムの原則(フリードマンの提唱)では、「実質GDPの増加 率=通貨の増加率→負債の増加率」を、限界としなければならない。 しかし現実には、「理論金利より大きく低い金利」が続けられ、負債 の増加率が大きかった。 政府・中央銀行は借入金での設備投資を促すため、金利を、低い物価 上昇率よりさらに低く、抑えてきたのです。設備投資が経済を成長さ せ、政権の支持率を上げるからです。 ◎GDP(企業の商品生産額)の成長率を上回って増えた累積負債の、 最終的な行き先は、決まっています。中央銀行と金融機関での、利払 いと返済ができなくなった不良債権の増加からの、金融危機です。 【MMT(現代貨幣理論)の、限界まで来た】 MMT論者は、通貨発行に限界はないと断じます。検証のない架空の論 です。利払いが可能な負債額には、限界があるからです。 常に、マネーの総量と等しい負債の、限界額を無視することの最終段 階は、100%の確率で金融危機からの恐慌です。限界を無視した通貨 の増発は、借りた非金融部門の不良負債の増加になっていくからです。 国債であれ、企業の負債であれ、利払いができない負債は不良債権で す。金融機関の自己資本を、不良債権額が超えるとき、金融危機(マ ネー信用の縮小と経済危機)になります。これは、2週間くらいの、 銀行間のデリバティブの下落から起こります。 リーマン危機のとき、FRB議長のバーナンキは、CDS(債務保証保険) でリーマンとAIGが引き受けていた保証額の、2週間での急騰を予想で きなかったのです。レバレッジがかかったデリバティブの今日の価格 は、銀行間(OTC)の密室での、担当者しか知らない電子契約です。 普通は、銀行の頭取と幹部も、決済日まで、知らない。 【金融危機のサイクルが短縮化した】 マネー量が増加してきた2000年代のシステミックな金融危機は、70年 サイクルから短縮し、12年サイクルで起こるように変化しました。 理由は、負債の増加(=マネー量の増加)の速度が勝ってきたからで す。 (1)GDP(商品生産=需要=所得)は、設備投資が増え、ITのアプリが 増えて、人的な生産性が上がらないと、増えない。アプリケーション は、業務と情報作業の生産性を高めます。 (2)しかし1971年以降、中央銀行の金保有高に左右されなくなった 信用通貨は、政府と中央銀行が、任意に増やすことができます。 通貨の、任意の増加の、最終段階での通貨信用の低下と、金融危機を 言わない点で虚説であるのがMMTです。理論の間違いは、条件の無視 から生じます。 政府は支持率を高め、政権政党を続けるため、いつも景気浮揚のため、 金融緩和と低金利を求めました。選挙制度の上にある政治の目的は、 支持率です。 https://www.imf.org/ja/News/Articles/2021/12/15/blog-global-debt-reaches-a-record-226-trillion この50年、信用通貨のマネー負債の増加率は、いつもGDPの商品生産 の増加率を上回り、インフレの潜在的な要素になってきたのです。 (注)インフレと通貨安は、ともに通貨信用の低下です。本稿は特集 号で30ページです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <Vol.445:特集:2022年、23年の経済と金融(1)> 2021年12月31日:無料版 シリーズ(1) 【シリーズ(1)の目次】 ■1.20年間の、世界のディスインフレは、なぜ起こったか? ■2.世界経済の転換が始まる2022年 ■3.米国の中央銀行(FRB)の利上げ予定 ■4. 2ポイントの金利上昇が重大な事態を生む 【後記:CPIと金利】 本号は、ここまでです。 次号以降の目次は以下です。 【予定】 ■6.2023年から危なくなり、2024年が危機 ■7.年金と医療費の支給額の45%は、国債発行が財源です ■8.消費者物価の上昇率 ■9.2021年の日本の物価統計データには、落とし穴がある ■10.ディスインフレと不況の20年 ■11.今回のインフレの性格 ■12.日本経済の、生産性が高まらなかった原因は2つ ■13.株価での金融益がない非上場の中小企業には、徳政令が必要 ■14.50歳未満は軽症ではあっても、社会は、オミクロン不況に備え るべき2022年 【後記1:新年】 【後記2:株価の下落からの、ドルの金融危機と、金の価格】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.20年間の、世界のディスインフレは、なぜ起こったか? 2000年代の20年間のディスインフレ(世界では物価上昇2%前後、日 本は0.5%程度)は、GDPより増えるマネーとの関係からは、異常なも のでした。 【20年間の、ディスインフレの現象と原因】 GDPの増加を超えるマネー量の増加からは、経済理論的には、インフ レでなければならなかった。 ◎しかし、1995年からの、中国の安価な商品生産への参入により、世 界の物価は上がらなかったのです。 物価上昇が少なかったことの二つの原因は、 (1)経済を開放した中国が、工場設備を作り、安価な商品の生産量 で世界1になり、世界の物価を下げたこと。 (2)2008年には1バーレルが147ドル(過去最高)だった原油が、 2020年末には20ドルへと14%に下がったことです。(注)今日は、 75ドルです。 (中国の実質GDP=商品生産量:1980年~2021年 :41年で38倍:元建て) https://ecodb.net/country/CN/imf_gdp.html (原油価格:WTI:1970年~2020年) https://finance-gfp.com/?p=3435 【2021年から、コロナと通貨増発により世界インフレに転じた】 (1)変異し、結果がまだ不明なオミクロンの広がりで、中国を含む、 東南アジアの工場と、港湾の停止が起こる2022年は、 (2)中国の、ウイグル族などの、13の少数民族の、人権問題への世 界的な非難からの輸入制限と高関税も加わって、世界の物価を上げる 要素になっていきます。 (注)中国+東南アジアの工場での生産は、世界の生産の40%に拡大 しました。伸び率も、年間で5%以上でした。 コロナという、2年前には世界の誰も知らなかった原因が加わって、 リーマン危機のあとの、量的緩和のなかではわずかだった世界インフ レが、予告なく、生じたのが現在でしょう。 【原油価格と物価】 原油の平均価格は、 ・価格維持のための、産油国の生産調整と、 ・水質汚染防止を目的とした、米国シェールガスの生産制限から 2021年の平均価格より、上がるでしょう。 原油の価格の上昇は、穀物・肉・一次資源を含んで、工場の原価であ る電力費も上げて、商品価格の基礎を、上げます。 2000年代の20年の、世界のディスインフレの要素だった (1)中国の輸出商品の価格が、世界の物価を下げることと (2)安い原油は、2022年以降、弱くなっていきます。 ■2.世界経済の転換が始まる2022年 【インフレを追って上がる金利】 世界は、マイルド(約3%~4%)な、恒常的インフレの時代に入りま した。 インフレと金利の上昇は、 (1)ディスインフレ、 (2)マイナス%~ゼロ%~1.5%の金利、 (3)GDPの成長率を超えるマネー量の増加に浸ってきた、20年の世界 経済を転換させます。 (注)理論的な金利は、「実質GDPの期待上昇率+期待インフレ率」で す。債券市場で国債の売買価格決める市場の金利は、理論金利に、中 央銀行の金利政策(国債をいくらで買うかということ)が加わって決 まっています。 非金融企業と政府の負債の増加(=マネー量の増加の現れ)は、物価 に対しては潜在的でした。しかし株価に対しては、顕在的な上昇効果 を生んできました。 【物価と金利とマネー量】 世界のマネー量の増加(=負債の増加として現れる)は、物価が上が るように変わり、その物価の上昇を後追いして金利が上がると、収縮 に向かいます(これが銀行の信用収縮)。 2022年、2023年の経済、金融、株価、国債価格、社債価格にとって物 価と金利の上昇は、1973年と80年の石油危機に似た転換点になってい くでしょう。 これは、もう、準石油危機です。 第三次石油危機と言えるほどは大きなものではない。 3%前後の物価上昇の、マイルドなインフレです。 (注)世界の株価は、2022年3月からと早期化したFRBの利上げ予定 (3回:0.75%)をにらんではいても、まだ、金利の上昇はわずかで あるとして、企業利益がコロナ前に回復(米国では上昇)しているの で、下がるには至っていません。世界の株価が金利の上昇を織り込ん で下がるのは、22年6月ころからと予想しています。 ■3.米国の中央銀行(FRB)の利上げ予定 金融では、0%の短期金利が、FRBの、3年間での8回の利上げで2%台 (米国2024年)に上がっていくことが、大きな影響をもたらします。 短期金利(米国財務省短期債の金利:FF金利)が2%に上がると、長 期金利は、3.5%から4%になります。4.5%もあります。 (注)2022年の、FRBの3回の利上げは、決定したと言っていいでしょ う。日本の長期金利は、「米国の長期金利-1.5%」で追随します。 ドルが基軸通貨ですから、円は米ドルに従属します。 2023年、24年の利上げは、米国の景気と物価次第です。 【金利の上昇と、負債の利払い】 世界の金融負債(226兆ドル=2京5500兆円)の金利が、2ポイント上 がると、年間の利払いが4.5兆ドル(510兆円)増えます。 例えば3000億円の有利子負債がある企業では、収益の中から払う利払 い額が、60億円増えます。1200兆円の国債という、有利子負債をかか える日本政府は、利払いができなくなっていきます。 借りた側が、利払いができないと、中央銀行と民間銀行が追い貸しを しても不良債権になり、貸した側の負担(自己資本の減少)になって いきます。 (注)追い貸しとは、負債の利払いと返済額を、不良債権の認定を嫌 う銀行が、追加で貸して負債を増やすことです。手形の満期のジャン プと同じです。 国債の、借換債の発行と銀行への売りは、「追い貸し」の一形態です。 日本政府は、1965年に、佐藤栄作内閣が赤字国債を発行して以来、 50年間、一度も、純返済(=国債残の減少)をしていません。 ■4. 2ポイントの金利上昇が重大な事態を生む ゼロ金利の長期化を原因に、世界の政府と企業の、金融負債が大きく なっているため、4%台の、普通の金利のときは小さい2ポイント (%)の金利上昇が、負債の大きな政府と企業にとっては、破壊的な マイナス効果を生みます。 影響を強く受けるのは、 (1)国債が1200兆円の日本政府、及び国債と株をもつ日本の銀行、 (2)次に、株価の高い米国の企業、国債と株をもつ、米国の銀行で す。 ゼロ金利と量的緩和により、バブルの水準に上がってきた世界の株価 は、2022年はまだしも(FRBの利上げ0.75%)、インフレを反映し金 利が1.25ポイント上がる2023年から24年に大きく下がるでしょう。 【米国FRBと、日銀が留意していること】 ・2022年の株価下落を起こさないように、米国FRBは慎重です。 ・2023年に国債価格の下落と、債券市場を金利上昇に至らせないよう 日銀は慎重です。1200兆円の国債残をかかえる日本の財政は、長期金 利2.5%から、破産に向かうからです。(注)日銀は、これを知って いるでしょう。 2024年までに、 ・世界の株価が現在より30%下がって、 ・下がった価格が長期化すると、 リーマン危機(2008年)と同じ、世界金融(=ドル金融)の、システ ミックな危機になっていくでしょう(米国・日本・欧州:2024年)。 物価が上昇するなかでは、中央銀行は、インフレを加速させるマネー の増刷ができない。 (1)リーマン危機(2008年月)、コロナ危機(2020年3月)のあとは 世界が、 (3)日本は2000年以降、量的緩和(通貨の大増発)ができたのは、 物価が上がっていなかったからです。 【次回は、中央銀行が大きなマネー増発を実行できない】 2008年のリーマン危機が「金融危機→経済恐慌→GDPと所得の低下→ 失業の急増」にならなかったのは、 ・FRBが、金融機関に約400兆円のドルを注ぎ(信用の供与)、 ・経常収支が黒字の中国と日本は、ドル債を買って米国金融にマネー を与えたからです。 リーマン危機は、銀行の利益回復とGDPの増加により克服されたので はない。FRBのドル増発により、ゼロ金利の負債を大きくして、金融 機関が延命したのです。 2022年、2023年の物価が上がるなかでは、中央銀行もドル増刷という 救済策がとれない。金融政策の常道から、いかにも、外れるからです。 【後記:CPIと金利】 2021年11月の消費者物価(CPI)上昇は0.6%とされています(総務 省)。 https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html 米国の6%上昇に比べて低い。しかし、昨年は菅首相による携帯電話 料金の値下げ(8000円~6000円→4000円~3000円/月)がありました。 携帯料金の値下げ分は、約800品目の消費者物価全体に対して-1.5% に相当します。 携帯料金を抜けば、日本もすでに、CPIは前年比+2.1%と、上がって います。2022年には、携帯電話値下げの効果は消えるので、この2.1 %上昇がベースになります。スーパーや牛丼店すでにわかるように、 日本の2021年は、すでに物価の上がる経済になっています。約20年の ディスインフレは終わったのです。 理論的な金利=実質GDPの期待上昇率+期待物価上昇率、です。実質 GDPの上昇が0.5%、消費者物価の上昇予想が2.5%なら、市場の理論 金利は3%に上がります。(注)実際の金利は、この理論金利に対し て、中央銀行の金利政策が誘導し、投資家による債券市場の期待金利 の複合で決まります。 次号で述べますが、デフレとされてきた日本がインフレに転じること は、金融・経済に、重大な影響を及ぼします。 2022年が、皆さんにとって、いい年になりますよう、願っています。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 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