特別号;負債の臨界点を超えたように見える世界経済
Written by admin on 2019年8月27日 – 10:00
おはようございます。米中貿易戦争に加え、天安門のミニ版のように 「民主化の要求」なった香港の学生デモが、終結の兆しをみせず、中 央政府は軍の出動をほのめかすまでに至って、中国経済が揺れていま す。 中国のGDP成長を支えてきたものは、輸出の増加と、社会固定資本投 資に含まれる住宅建設(1000万軒/年:毎年日本の10倍)です。 社会固定資本の、中国のGDPに占める構成比は、44%と大きく、企業 と政府を合わせても22%である日本の約2倍です。住宅の販売が減る と、中国のGDPは伸びません。 日本の高度成長期(1960年代から80年代)まで、豊富だった世帯の預 金を借りて使う、設備投資と輸出の増加が、GPDを5%~7%で成長さ せていました。1990年代からの経済解放後の中国のGDPの成長は、こ の時期の日本に似ています。 【輸出と住宅価格】 輸出(GDPのプラス要素)が減り、住宅需要を示す住宅価格が下がる と、中国のGDPは、他の国より深刻な打撃を受けます。一桁の下落幅 なら問題はない(2016年の香港不動産の下落は8%:WSJ紙)。 香港の住宅で20%の下げが、全中国の不良債権増加の臨界点でしょう。 臨界点は変曲点とも言いますが、「量的な変化が質の変化」変わる点 です。 【現代通貨論が無視している、通貨増発の臨界点】 米国発のMMT(現代通貨論)は、財政赤字と中央銀行の通貨増発はい くらあってもいいとしています。これは、「財政赤字に限界はない」 として、政府・中央銀行の「マネー発行量の臨界点」を無視したもの です。 ●臨界点までは、量的な変化しかない。しかしGDPに対して、通貨の 発行量がある地点を超えると、人々のマネーへの認識の変更が起こり、 一斉に売られて、通貨の価値が下落します。これが通貨の臨界反応で しょう。 量的な増加が、ある一定点で、量はもう増加しない質的な転換点にな ります。1気圧での水の温度は、どんなに熱しても100度以上にはなら ない。蒸気という気体に変化し、1ミリリットルで80カロリーの蒸発 熱を奪って、蒸発してしまうことと同じです。現代通貨論は、マネー 増発の臨界点を無視しています。 消費財でグローバルな生産費が下落した現代では、通貨価値の下落は、 物価の上昇ではなく、価値不変の金の数倍への高騰という形をとるで しょう。これがデフレ型の、通貨価値の下落です。 【香港の住宅価格】 香港の住宅価格は、統計偽装は少ないので、基準として見ることがで きます。リーマン危機の2008年のあと、香港の不動産の価格指数は、 人民元の増発原因にして、60から180にまで、3倍に上がっています (年率平均11%)。11%は、この間の中国(香港)のGDPの成長率の 約2倍です。 人民元増発によるバブル部分は、1年に5%と見ることができるでしょ う。 2016年には、人民元危機(人民元の切り下げショック)から、金融に 敏感な香港の住宅価格も14%下げています。2017年からは、政府の融 資対策で再び上がり、2018年に、米国による中国関税から8%下がっ たのです。(会員しか見ることができないWSJですが・・・) https://jp.wsj.com/articles/SB11694986663678054546404584619512359917856 【20%下落が、中国の金融危機の臨界点】 住宅価格が20%下がると、GDPの増加率より大きく膨らんできた企業 の債務にデフォルトが増え、銀行の貸付資産が劣化して信用が低下し、 マネー不足からの金融危機になっていきます。 【空き家の在庫が5000万戸という異常】 企業部門は、建設のあと売れていない在庫を、大量に抱えているから です。中国では、建設会社が住宅の躯体を作り、それを買った個人が 内装と設備を施します。住人がいない空き家(夜間に電気のつかない 鬼城)が、全土で5000万戸あると報告されています(2018年11月WS J)。 一戸平均の土地代と建設費を2000万円として1000兆円、1000万円とし ても500兆円の空き家であり、これが不良化すれば、金融危機を起こ す金額です。 【不動産価格の下落から金融危機までのタイムラグは2年】 一般に、住宅価格の下落のはじまりから金融危機までは、2年のタイ ムラグがあります。 前回、米国の住宅価格の下落が始まったのは、2006年でした。信用状 態の低い人に貸し付けられたサブプライムローンからデフォルト(支 払の遅延と不能)が増えて、ローンの回収を保証する保険であるCDS の高騰により、保証をしていたリーマン・ブラザースとAIGが、同時 破産したのが、2008年の9月です。 1990年代の日本では、全国の地価下落の開始が1994年からであり、資 産バブル崩壊後の金融危機は、1998年でした。 香港は、1997年に英国(アヘン戦争のあと、150年間、英国の植民 地)から返還されました。中国は、香港の経済体制には変更を加えず、 「一国二制度」として、50年は自治を保証していました。その保証を、 反故(ほご)にしたのです。 香港は、自治政府(特別行政府)が法をもちます。ここに中国が触手 を伸ばしたからです。香港の、トップの行政長官(林鄭月娥氏:りん ていげつが)は、1200人からなる中国政府寄りの選挙委員会で選ばれ ています。香港も、まだ民主制ではない。2014年には、民主化を求め る「雨傘運動(数週間続いた)」も起こっています。 中国人の、薬学の教授夫妻(日本在住)との会食のときでした。「中 国では、天安門事件(1989年の民主化運動)はなかったことになって います。話すことすら、できない」という。 死者数は、公式には、不明です。天安門事件は、1989年の、ソ連崩壊 のときの東欧の民主化運動と軌を一にしていました。 毛沢東の時代の文化大革命(1966~76)のときは、根拠はなく、エ リートだからという理由で反革命分子として、教授の父母が、町中を 引きずり回されて軟禁されたという。海外に逃れた中国人には、共産 党政府を支持しないひとたちが多い。 金融都市の香港では、人民元の売り(マネーの海外流出)が多かった のです。香港ドルはドルペッグ制ですから、ドルと連動した価値の通 貨です。現在は、1香港ドルが13.49円です。 人民元で香港ドルを買うと、元をドルに交換したことと同じ効果にな ります。3月からの人民元安は、政府でなく、民間の「人民元売り/ド ル買い・香港ドル買い」で起こったものです。 米ドルに対して、人民元は6.22元(2018年3月)から6.97元へと12% と大きく下げた元安になっています(8月13日)。一方、香港ドルは、 1米ドル=7.79香港ドル~7.84香港ドルで、ほとんど変わっていませ ん。 これは「人民元売り/香港ドル買い」が香港で行われ、香港からドル に流出したことを示します。中国政府の、元安への介入はない。むし ろ、人民元を買って米ドルを売るという「元の買い支え」を、中国政 府が行っています。 トランプがいう「為替操作国」は、当をはずしています。中国は、政 府が資本規制(外貨の買いの制限)を撤廃すれば、大きな元安になる 国です。 【2021年が、中国の金融危機か】 1平米の単価では、NYを超えて世界1高くなっている香港の不動産の下 落(昨年8月も前年比マイナス9%)が、中国の住宅価格下落のはじま りとすると、中国の大きな金融危機は、2年後の2021年でしょう。 2019年中の下落では、15%を予想している米系の機関もあります (JLL:ジョーンズ・ラング・サークル)。中国の不良債権の、大量発 生の臨界点は、不動産価格の20%下落です。 【運動の要求事項は、民主化に変化した】 2か月前、運動の起点になったのは、「逃亡犯条例」の改正案への反 対でした。犯人の中国引き渡しができるようになると、香港の活動家 も、政治犯として中国に連行される恐れがあるからです。 外国人ビジネスマンや観光客もその言動によっては、引き渡しの対象 になる可能性が生じます。反体制の政治犯は、共産党の政治的な意思 で「作り上げられてきた」からです。 この「条例」は反対運動の大規模化と長期化を見て、取り下げられま した。しかし、デモは止まらない。現在は、中国にとってタブーの 「選挙制の民主化」など5つの要求をするものに変わっています。香 港空港を占拠したのは、国際的に主張を拡散させるためです。 この騒動から、アジアと中国の金融センターとしての香港の地位が揺 らぎ、世界の金融関係者の撤収が起こり、外資資本の流出から、香港 の不動産は20%から30%は下げるという見方もあります(冠域商業経 済研究中心のエコノミスト関シャク照氏)。ただし、地元の不動産仲 介業には、楽観的な見方も多い。経済的なイベントの、未来への影響 の評価は、常に二分するものです。 習近平主席が、天安門事件のように人民解放軍投入を決断するかどう か(現在、国境を隔てたシンセンに集結しているという)。 仮に、中国軍が制圧に乗り出したあとの展開は、どうなるか。ソ連邦 の支配下だった東欧諸国に広く起こった、1989年の「民主化運動」の 規模を小さくしたものが、香港のデモでしょう。日本のメディアは習 近平政権への遠慮から、香港のデモを詳細には報じません。新学期が 始まる9月には弱火になって、早晩、終結するという見方が多い。 現在の空港を占拠した運動のリーダーはまだわかりません。中国政府 からの拉致を避けるため、地下にもぐっているのでしょう。本稿は、 8月14日の有料版の修正であり、通常の2回分以上の、24ページです。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <408号:特別号:負債の臨界点を超えたように見える世界> 2019年8月24日:無料版 【目次】 1.世界の上場企業の、問題ある負債は2100兆円 2.中央銀行のマネー増発策は、限定的な幅になった 3.第一次世界大戦での、マネーの増発 4.1929年10月の米国株価の崩壊 5.米国株価の暴落から実体経済の恐慌までは、4年の期間があった 6.日本の、世界恐慌への対応 7.第二次世界大戦へ 【後記】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.世界の上場企業の、問題ある負債が2100兆円 2008年のリーマン危機のあと、負債の大きさの問題を抱えるのは、中 国だけではない。日経新聞の野口記者が、「世界のゾンビ企業が倍増 し、上場5300社になった」というコラムを朝刊トップに書いています (8月11日)。営業キャッシュフローでは、借金の金利が払えない上 場企業数です。 これらの企業の、有利子負債の合計は、20兆ドル(2100兆円)、支払 利息が7500億ドル(82兆円:平均金利は約4%)という。 世界的な低金利と金融緩和の10年で、負債は2008年に対して55%増え ています。増えた負債に対して、営業キャッシュフロー(現金の利 益)での利払いができなくなっている企業数です。 まだ不良債権とはされていないので、銀行からは、不足する利払いの 「追い貸し」が行われているでしょう。銀行の帳簿上では利払いがあ ったようにして、その分を貸し付ける行為です。総負債の2000兆円は、 潜在不良債権です。 地域別には、以下です。上場企業が提出義務を負う有価証券報告書等 から集計されたものです。非上場の企業のP/L、B/S、キャッシュフ ロー計算書は、銀行の融資案件の内部資料でしか分らない。このため、 不良債権の発現は、いつも遅れます。 ▼有利子負債の利払いが営業利益を上回る企業数 合計上場企業数は、2万6000社(金融業を除く) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 欧州 1439社(企業数構成比27.4% :ユーロのゼロ金利にかかわらずイタリア、 スペイン、ギリシアに多い) 米国 923社(同32.1% :FRBは短期金利を2.00~2.25%下げた) インド 617社(同26.3% :不良債権の多さが問題になっている) 中国 431社(同10.8% :実際にはもっと多い:推計30%以上) 台湾 327社(同19.1%) 日本 109社(同3.3% :ゼロ金利策のため世界比較で最も少ない) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ https://r.nikkei.com/article/DGXMZO4842631009082019SHA000?disablepcview (参照データ) 上場2万6000社の、支出は、投資とM&Aの投資キャッシュフロー、配 当・自社株買いを含むと6兆ドル(630兆円)。それらの2万6000の企 業が、事業で稼いだ営業キャッシュフローを、1兆ドル(105兆円)上 回っているという(2018年)。 2018年から、(1)トランプ関税、(2)世界的なサプライチェーンの 分断、(3)英国のEU離脱と、その波及を理由にして、2018年、19年、 20年の世界のGDPは、低下に向かっています。 メディアと金融市場は、今も、トランプがしかけた対中貿易戦争の早 期終結を想定しています。このため、GDPの低下予想はまだ低い。 トランプの政策の目的は、2020年の再選に収斂します。対中強硬策が、 国民からの支持を得るからです。このため、経済の論理からは計るこ とができない。米国のGDPを下げるからとして、株価が先行して下が っても、矛を収める気配は見えません。 【2019年のGDP見通し】 IMFは、世界の2019年のGDP(約8000兆円)の増加を、3.2%としてい ます(2019年4月発表)。この見通しも、IMFの、世界経済への役割を 意識した「甘い」ものでしょう。IMFは、米国が支配しています。 米国の投資家でも、2019年の米国経済の減速と低下を予想しているの は、34%(3人に1人)です(バンカメ・メリルリンチの調査)。IMF 同様、まだ、楽観的です。 ところが、中国やインドでは、自動車販売の急減など、世界の成長の 減速を示す指標が出始めています。19年7月のインドでは、自動車販 売29.9%減。中国は、19年1月から7月の7か月で、前年比13.5%減で す。これらの実態データには、偽りはない。 2017年までは、年間15%くらい増えていました。 トレンドに対しては、中国では3割減です。 代表的な消費財の自動車の販売台数が、前年比で13.5%も減っている のに、中国のGDPが6%台の成長(実質+6.2%:19年4月~6月:国家 統計局発表)というのは、普通は「ありえないこと」です。 中国での自動車の販売は、小売り需要の中の28%もあって、食品の 15%、石油製品の13%、衣類の10%よりはるかに大きいからです。 中国は、国家統計では普通の国ではない。実質GDPの増加は3%以下、 悪くすると、1%以下でしょう。3か月単位ではマイナスもありえます。 【2019年、20年の成長要因はない】 負債で上がってきた不動産価格の世界的なピークアウトと重なって、 2019年、2020年の、世界経済の成長を促す要因は、見当たりません。 世界のGDPの成長が、IMFの3%台という予想より低下すれば、上記の 2万6000社の潜在不良債権(負債総額では2000兆円)は膨らみつづけ ます。銀行の追い貸しが増加するからです。 負債の劣化は、世界的です。日本の資産バブル崩壊(1990年代の10 年)、リーマン危機(2008年から2011年)、南欧危機(2011年~12 年)のようには国を特定できず、集計も難しい。マネー移動のグロー バル化の進展により、危機は世界に分散しているからです。 どうとらえたらいいのか。1929年からの世界恐慌の推移に似ています。 これから数年、世界恐慌を再現するというのではない。 ■2.中央銀行のマネー増発策は、限定的な幅になった 中央銀行のマネー増発の対策において、違いがあるからです。 しかしすでに、マイナス金利の欧州(ユーロ)と日本には、金融危機 のときの、通貨増発の余力が乏しい。米国も利下げの余地は、最大で も1%くらいしかない(現在の短期金利は2.01%:10年債は1.67%と 逆転している)。 今後の、主要国の中央銀行による、可能な通貨増発策は限定されたも のでしょう。リーマン危機のあとのように、20兆ドル(米国、ユーロ、 日本、中国の合計:2100兆円)のような、通貨の緊急増発は難しくな っているからです。(換算は、従来の1ドル=110円から、105円に変 更しています) 金融危機を通貨の増発、つまり中央銀行からの銀行への貸付増で乗り 切っても、不良債権化した負債が大きくなるだけで、いずれは先送り されたカタストロフが訪れます。負債が増えているからです。 中央銀行のマネー増発は、企業の借り入れによってマネーが補充され て、危機を先送りする効果をもっていますが、危機をなくす機能はな い。負債の増加が、その後の企業利益の増加にならないと、危機は先 送りされただけになるのです。 【不良債権というものの性格】 不良債権は、借りた企業や金融機関が、支払金利より多くの利益を出 せるようにならないと解決には向かわない。これが不良債権の本質で すが、MMT論(現代貨幣論)と中央銀行万能論の陰で、忘れられてい ます。 貸付金による、企業の資金繰りの助力は、数年は続いても、一時的で す。金利支払いと返済の分を借り増した企業が、増えた借り入れの金 利より、大きな利益を出せるようにならないと、銀行の不良債権の増 加になるからです。 【類似と、対策の有効性の問題】 以上の観点から、大恐慌の推移を振り返ることに意味があるでしょう。 経済的な類似点が多くても、これから、過去の恐慌の歴史を繰り返す というのではない。過去を学習した人間による「対策」があるからで す。 その対策は、「中央銀行による通貨の増発」に集約されます。問題に なるのは、リーマン危機のあとの10年で、20兆ドル(2100兆円)を増 発し、残っている主要国の、通貨増発が、今後の危機に対してどの程 度有効かということです。 【二分されている将来予想】 恐慌の危機への見方は、今はまだ、二分されています。株価の暴落が あったとしても、実体経済の恐慌には、2年から3年の猶予期間がある でしょう。 それぞれのイベントには、「現代との違いと類似」を示していきます。 Financial Times紙にも「大恐慌との類似」を指摘する論が現れはじ めました(「データが示す恐怖の夏」:ラナ・フォルーハー氏」。 大手新聞やメディアは、普通は、銀行の不良債権を調査して、報じる ことはしません。預金者の不安をあおり、金融を崩壊させる取り付け 発生の恐れが、生じるからです。 危機が事実になったあと、報じます。まだ一部の記事ですが、新聞も 金融危機に向かっていることを伝えるように変わってきています。 ■3.第一次世界大戦での、マネーの増発 記憶している人は、90歳を超えています。110歳のごく少数の人も、 当時は幼少期であり、記憶にはない。歴史は、文字と数字の記録で見 るしかない。数字は事実を表しますが、文字になった言葉は、事実の 解釈です。 第一次世界大戦(1914年~18年)では、政府が国債の増発を行うため、 金本位(正確には、通貨発行の金準備制)が停止されていました。金 準備制なら、通貨の増発は金準備高に縛られて、GDPの100%やそれ以 上を使う戦費の調達ができないからです。 19世紀末から20世紀初頭にかけて、英国にならって中央銀行を作った あとの国では、税金ではマネーが足りない戦争は、通貨の大増発を行 うものに変わっていました。 (無限に見える)通貨増発による戦費のため、戦争が、国民の財を集 結する「国家総力戦」に変化し、初めての世界大戦になったのが、第 一次世界大戦です(1914年~1918年)。 大戦のとき増発されたマネー(財政支出)は、戦争の被害を受けなか った米国で、株式と不動産のバブルを引き起こします。新しい産業と して、自動車、家電、電力、鉄道があったのです。国民の間には、投 資信託が普及し、高い株価を背景に、資本調達のための株式の分割が 盛んになっていました。 ワニや巨大な蛇が出て、蚊も多い湿地帯の、温かいフロリダ(日本で 言えば沖縄にあたる)では、空前の不動産ブーム(リゾートブーム) が起こっていました。しかし、フロリダの不動産バブルは1928年、 29年に崩壊し、31の銀行を破産させました。 金融危機の原因になるのは、過剰なマネーが貸付金になって引き起こ す資産バブルだということが分かります。古今東西、普遍の原理でし ょう。 ただし、マネーの増発と資産バブルの発生から崩壊には、ほぼ10年の、 複雑系の負債債券と貸付増加の、波及の期間を置くため、経済学は 「マネーの過剰増発が、金融危機とその後の、実体経済の恐慌の原因 だった」とはしていないのです。 ■4.1929年10月の、米国株価の崩壊 1929年(昭和4年)の8月に、米国FRBは、戦後資産バブルの対策とし て公定歩合(中央銀行が銀行に貸すときの短期金利)を6%に引き上 げています。銀行に過剰になっていた、国債担保のマネー(当座預 金)を回収するためです。9月には、この利上げのため、ダウは17% 下落しています。 下落のプロセスでは、上げたあと下がり、また上がるといった神経質 な波動があります(これも普遍の原理)。相場が価格を決める株価で は、一方的な上げや下げはない。下げると、「底値」と見た買いが入 るからです。上がると、利益確定の売りが出ます。 1929年9月には、イングランド銀行も、大戦終結後の利上げをしたの で、米国のマネーが英国に流れます。当時の米国と、インドなど7つ の海を植民地にしていた帝国主義の英国は、経済規模では、現代の中 国と米国のような、GDPで1位、2位の関係でした。米国は、自動車と 電気工業の新興大国だったのです。 起点は、新興企業のGM(ジェネラル・モーターズ)の80セントの下落 でした(GMは、現在のアマゾンのような地位でした)。この新興工業 株が下げたことをきっかけに、投資家の集合知は、下げ一方の予想に なり、売りが株価を下げ、その下げが売りを呼ぶという株価崩落のサ イクルに入ります(暗黒の木曜日:10月24日)。 週明けには、さらに13%下げ、翌日も下げたのです。株価は9月比で 43%下がっていました。時価総額では週間で300億ドルが失われまし た。株価の崩壊は、投資家と銀行の資産を縮小させ、金融危機になり ます。 18世紀末の産業革命以降、過剰生産のサイクルから先進国では、ほぼ 10年に一回の期間で、金融危機が起こっていました。 1929年から33年の恐慌は、(1)株と不動産の資産価格の下落、(2) 銀行の不良債権、(3)実体経済(GDP)の生産の低下、(4)失業率 の上昇で、過去最大であり、後に「大恐慌」と呼ばれたのです。 最大になった理由は、第一次世界大戦(1914年~18年)での、戦費国 債の増発を、中央銀行が買い取って、通貨の増刷にしたことから発生 した大きな規模の資産バルブの崩壊だったからです。(注)リーマン 危機のあとの10年も、史上最大の通貨の増発(20兆ドル:2100兆円) が行われています。 ■5.米国株価の暴落から実体経済の恐慌までは、4年の期間があった 1929年末の、米国の株価の下落(44%)は、世界に波及します。各国 は、米国と同様に、第一次世界大戦で国債を増発し、通貨発行を増や していたからです。銀行と企業には、「過剰な債務」が溜まっていま した。 (注)これは現在と共通です。リーマン危機のあと、金融危機の対策 として米国、ユーロ、中国、日本の中央銀行は、合計で20兆ドル (2100兆円)の通貨を増発し、日本以外では、それが、企業債務・世 帯債務の増加になっています。 【日本とドイツの特殊事情は、 借り入れによる設備投資の少なさ】 日本とドイツで、米国、欧州、中国、インドのような企業債務の問題 が起こっていないのは、企業が人口減からのGDPの低い成長(1%程 度)しか予想せず、増加設備投資のための借入金を増やしてはないか らです(銀行貸付の増加は、3%/年程度と低い)。 代わりに日本では、銀行が日銀に国債を売って得たマネー(当座預金 396兆円:19年8月)を背景にして、米国債の買い、米国株の買いを行 い、米国での貸し付けの増加になっています。 【海外に流出したジャパンマネー】 日本の銀行は、リーマン危機のあとの米国の株価、不動産バブルを助 けています。このため、日本の対外総資産は、1018兆円に増えていま す(18年末:財務省)。リーマン危機のあと、日銀の通貨増発に呼応 して、約300兆円も増えたのです。 このうち、直接投資(海外への工場建設など)は181兆円であり、金 融的な証券投資が450兆円(主は米国債と米国株)、その他投資が 387兆円です。逆に、海外が日本に持つ資産は676兆円であり、日本の 対外純資産は341兆円です。 この341兆円の対外純資産が、日本のマネーの、海外純流出分です。 いまは5%の円高(105.78円:8月14日)ですから、対外総資産1018兆 円のうち5%の51兆円は為替評価損になっているでしょう。(注)対 外負債は円建てなので、減ってはいません。 ドイツでも、企業は利益から投資していて、国内の資金需要が少ない。 国民の預金を預かるドイツ銀行は海外貸付を増やし、金融のリスクを 証券化したデリバティブ契約を7500兆円(55.6兆ユーロ)にしていま す。ドイツのマネーは、日本やスイスと同じように海外に逃げている のです。 日本、ドイツ、スイスのような対外債権国では、マネーが海外流出し ています。このため国内はデフレ傾向になり、為替では通貨高になり ます。日本の物価上昇は0.6%(総合:19年6月)、ドイツ1.3%(19 年6月)、スイス0.8%(18年12月)です。インフレは、マネーが集ま った国(米国、中国、アジア)で起こっています。 国内の、投資用の長期資金需要を示す10年債の金利(10年物国債の利 回り)では、日本がマイナス0.23%、ドイツは日本より低くマイナス 0.65%、スイスはさらに低いマイナス1.007%です。マイナス金利の 国からは、プラス金利の国にマネーが流れます。海外の債券買いは対 外資産になります。 ドイツは、財政赤字と対外負債の多い南欧を含む統一通貨ユーロなの で、外為市場での、ユーロの上昇はない。日本(円)とスイス(スイ スフラン)では、通貨高の傾向を、常に含んでいます。 2018年までのアベノミクス円安(1ドル80円→110~120円台)は、 GDPに対して日銀の円の増発がもっとも大きかったことを原因に起こ っていたのです。円安とは、「ドル買い/円売り」の増加であり、円 からドルへのマネーの流出(対外資産は増加)です。 2019年から円高の傾向になったのは、 ・日銀の国債買いによる円の増発が、金利がマイナスになって(10年 債でマイナス0.22%)、 ・日銀は、政府の発行額面より高い価格で国債を買わなければならな らなくなり、国債の買い増しが20兆円/年レベルに減ったからです。 ▼米国の株価暴落の波及(大恐慌期:1929年~30年) 1929年のウォール街の株価暴落(44%)は、年が明けた1930年には、 ブラジル、フランス、ボリビア、オーストリア、ドイツと波及しまし た。各国の大手銀行が、次々に倒産したのです。 金融危機は、通貨の危機(通貨安)にもなるので、相対的に市場価格 が高くなった金が流出します。このため、第一世界大戦のあと金準備 制に復帰していた英国が、(1971年のニクソンの金ドル交換停止のよ うに)、ポンドの金交換制を放棄したのです。英国経済の没落は、こ のとき始まっています。 英国は、自国産業の保護のために、輸入関税を引き上げます(トラン プ関税に類似しています)。それとともに、ポンド安政策を採用し、 ボンド相場は、1ポンド=4.86ドルから3.49ドルへと、28%下がった のです。 米ドルは代わりに、ポンドに対して28%上がります。英国以外の国も、 輸出を振興し、輸入を減らすため「チープマネー政策」をとります。 米国だけは、株価暴落の中でドル高になったのです。 株価が下がり、銀行の倒産が相次いだ世界は、輸出入を自国の通貨圏 内に制限する「ブロック経済」に向かいます。(注)現在の、グロー バルサプライチェーンの分断に似ています。 ▼フーバー大統領のモラトリアム(債務の支払い猶予) 米国のフーバー大統領は、株価崩落のあとの金融危機に対して、ス ムート・ホーリー法を発令し、輸入を制限する国内産業保護主義の政 策をとります。(米国ファーストを唱えた、輸入と移民の制限政策に 類似しています)。 同時に、フーバー・モラトリアムを施行し、全米の522の銀行を閉鎖 しました。株価暴落の波及により、マネーが不足していた銀行からの 預金引き出しを、制限するためです。マネーの海外流出を防ぐために、 下がった株価の中で、金利を1.5%から3.5%に引き上げることもして います。 1932年には、ペコラ委員会を発足させ、株価バブルを生んだ一因にも なっていた銀行の株式のインサイダー取引と、不正融資を暴きました。 不正な融資が暴かれた結果は、金融収縮(融資の減少)でした。 1933年には、株価は1929年のピークから80%下がり、融資が減った経 済は、GDP(商品の付加価値生産額)で45%減少したのです。 1929年(昭和4年)の株価下落から1933年(昭和8年)の、実体経済の 恐慌まで4年の、複雑系(多要素)の波及期間を要しています。第一 次世界大戦(1914年~18年)での通貨増発からは、約15年です。 米国の失業率は25%に達し、閉鎖された銀行は全米で1万行に達し、 1933年には全部の銀行が閉鎖され、預金の十分な引き出しができなく なったのです。 (注)現在では、先進国は、銀行が破産した場合、ほぼ1000万円まで の預金を保証するペイオフの制度があります。1銀行での名寄せ後、 1000万円までは預金保険機構と政府が保証するというものです。なお、 預金のうち、企業等の、仕入れ代金、経費、給料支払いなどにあてる 決済性預金(当座預金)は、全額が保護されます。 米国では、ペイオフの上限は10万ドルで、日本とほぼおなじです。英 国では2万ポンド(約256万円)、ドイツでも2万ユーロ(236万円)と 低い。 ■6.日本の、世界恐慌への対応 1929年の米国株の44%は、欧州、南米の国々と同じように、翌年の 1930年(昭和5年)から、日本の株価下落になって波及しています。 日本は、第一次世界大戦の戦場ではなかったのですが、そのときの、 米欧に同調した金融緩和と利下げが、貸出しを増やし、戦中と戦後の 資産バブルになっていたからです(大戦景気:1915年~1920年)。軍 需(戦争用)の輸出の増加(4倍)から工業生産が急増し、物価は上 がっていました。 第一次世界大戦が、連合国の勝利で終結した1920年(大正9年)には、 終戦後の欧州の生産回帰により、輸出の減少から戦後恐慌になり、 1922年(大正11年)には銀行危機になり、1923年(大正12年)は、関 東大震災による震災恐慌になっていました。 米国は、大戦直後の1919年(大正8年)に、金準備制、正確には「金 為替準備制」に復帰していました。金の2倍を発行できる金為替本位 制でした(紙幣のドルも準備通貨とするため)。 大戦後の世界は、次々に金準備制に復帰していたのです。このなかで、 金準備制ではない円は、リスク資産として外為市場で乱高下していま した。 円の乱高下に困っていた財界は、わかりにくく「金輸出解禁」として、 金準備制の復活を要求しました。金輸出の解禁とは、輸入の決済に、 金準備制に復帰した金を使うということであり、大戦前の金準備制の 復活です。 浜口内閣は、金輸出の解禁を決定しました(1928年:昭和3年)。結 果は、通貨の縮減による緊縮財政と、不況でした。 そのなかで、米国株が暴落して(1929年:昭和4年)、日本の株価も 下がることになったのです。金準備制の当時の100円は、同じく、金 準備制のドルに対して49.85ドルであり、1ドル=2円でした。 (注)第二次世界大戦後は、1ドル=360円とされ、円は180分の1に下 落しています。GDPの2倍あった戦時国債を、日銀が買って、円を増発 したからです。このとき、100分の1円だった銭が廃止され、1円にな っています。その意味は、100倍の金額の円を発行したということで す。 物価を下げて、産業を低コスト化しようとした井上蔵相の狙いとは逆 行し、日本の輸出は、激減しています。一方で、海外からは「円は高 すぎる(日本では金が安すぎる)」として、日本国内で円が金と交換 され、金が海外流出していました。 当時の円で、2億8800万円分の金の流出でした。1930年代の金は、日 本では1グラムが1.5円くらいだったので(現在は5500円)、約200ト ンの金が、日本から海外に流出しました。当時の日銀の金保有は740 トンでした、 日本の、軽工業品の輸出先は、1位が米国、2位が中国をはじめとした アジア諸国でした。これらの輸出相手国は、米国株の下落により、不 況化していました。第一次世界大戦中には、戦争用物資として4倍に 増えていた日本の輸出は、急減し、株式市場も暴落して、恐慌的な不 況になったのです(1930年:昭和5年)。 株価下落からの金融の危機が、生産、雇用、所得の実体経済(GDP) の恐慌に波及した時間は、輸出経済依存だった日本が、米国より早か った(1年間での波及)。 1930年には、失業は250万人とされました。国民所得(GNP)は23%低 下して77%になり、輸出需要が減って、工場の生産が過剰になったた め、卸売物価も30%下がったのです。所得の減少のため人々が買えな くなったコメの価格も、37%下がっていました。コメは、この時期の 主要な生産物です。これが、金融恐慌がもたらしたデフレ型の恐慌で した。 昭和の初期では、人口でもっとも多かったのは農業従事者(800万 戸)でした。米価の37%下落により、赤貧の打撃を受けたのです。農 村の子女には、身売りが流行っていました。行先は都市部の遊郭と下 女でした。 1931年には、高橋是清が蔵相に就いて金輸出を禁止し(金解禁の停止 という)、金の裏付けを切った、現在と同じ管理通貨制度に移行して います。金解禁とは金の輸出を許可することです。この許可を政府が 停止すると、輸入代金の決済として、日本からの金での支払い(=金 の輸出)はできなくなり、金本位制(正確には金準備制)は停止され ます。金準備制とは、円の発行の裏付け資産として、日銀が金をもつ 仕組みを言います。金準備制を停止すると、日銀は、現在のように、 上限の枠がなく国債を買って、円を増発できます。 ■7.第二次世界大戦へ 高橋是清は国債を増発して、金準備制を放棄した日銀に買い取らせ、 財政支出を拡大したのです。軍事費の拡張と、赤字国債の発行(日銀 買い受け)によるインフレ政策に転換したことになります。 軍事費の拡張を除くと、アベノミクスに似ています。 高橋是清は、のちに日銀が買った国債を銀行に買わせて、財政赤字縮 減のための軍事費の削減を行うようになったあと、青年将校を核にし た1483名の軍人が蜂起した2.26事件(1936年:昭和11年)で暗殺され ています。2.26事件のあとは、再び、軍事費拡張のための円の増発で した。 金準備制をやめ、日銀が赤字国債を買うという方法で増発した円は外 為市場で下落しますが、一方で、円の増発が招いた円安に助けられた 日本の輸出は、回復に向かいます。円安で高くなった輸入は減り、安 くなった輸出は増えたのです。 この円安効果により、1933年には、恐慌の底だった米国、欧州に先駆 けて、1929年の恐慌前のGDPを回復したのが日本でした。恐慌になる のも早く、回復も早かった。世界に占めるGDPの規模が、現在の東南 アジアのように小さく、輸出主導の経済だったからです。 (注)現在は、輸出(約80兆円)は、548兆円の名目GDPの14.5%と少 ない。代わりに、対外直接投資(残高181兆円)による海外生産が増 加しています。 政府・日銀が円安を求めるのは、輸出を増やすとことより、対外資産 1018兆円(70%がドル建て)の、「ドル高/円安」による、為替の評 価利益のためです。 逆の、10%の円高(ドル安)になると、対外資産の1018兆円が916兆 円に減ったようなります。為替の評価差損が、金融危機を惹起する金 額の102兆円も発生するからです。10%の円安(ドル高)なら、逆に 102兆円の為替差益が生じるからです。円が安くなることは、国内の 所得の、ドル比較での水準を下げますが、対外資産の評価は高めるか らです。 1929年の米国株暴落後の世界は、各国の輸出の振興のため、日本のよ うなチープマネー競争(通貨安を求める競争)になり、国内産業の保 護のため輸入制限も行ったため、「ブロック経済」に移行して行きま す。ブロックを超えた輸出・輸入を禁じるものです。 (注)トランプの、米国ファーストと移民の制限を唱える輸入関税政 策に似ています。高い関税は、通貨安と同じように輸入を減少させる からです。 株価の暴落のあとの1930年代の世界は、通貨圏によって、(1)英国 ポンド・ブロック、(2)米ドルブロック、(3)フランスフラン・ブ ロックに分断されていきました。 日本は、日本・満州・支那(中国)ブロック圏を形成し、お互いに、 軍を対峙(たいじ)させていました。 日本と同じように、海外植民地が乏しかった後発国のドイツとイタリ アも、自国圏の拡張のための、軍事膨張政策をとりました。これが、 第二次世界大戦(1939年~1945年)の原因になっていきます。 植民地が乏しい日独伊と、植民地をもっていた米英仏の戦争です。帝 国主義とされる、経済では、軍事による領土拡張の戦争は、支配欲で はなく、経済的な原因で起こります。 米国、英国、フランスは、アジア、中東、アフリカの植民地ら、資 源・エネルギーを、安価に得ていたのです。 1929年の株価暴落は、第一次世界大戦のときの国債と通貨の通貨増発 が引き起こした、資産バブルの崩壊でした。そのバブル崩壊の波及が もたらした実体経済の恐慌に対して、各国は輸出を振興させるための 通貨安の競争を行い、他の通貨圏からの輸入を制限する目的から、植 民地との間でブロック経済の体制をとったのです。 資源を生産する植民地の乏しい日本、ドイツ、イタリアは、領土拡張 のための軍事費の増強を、赤字財政で行い、預金額を超える国債は中 央銀行が買い取って、通貨を増発させました。 軍隊の予算をふやせば、職業軍人は、本義たる戦争に傾斜します。兵 を養うのは、防衛であれ侵略であれ、戦争が目的です。民主化した近 代国家の戦争は、常に「自国の防衛、つまり経済の安全保障のための 戦争」とされます。米国の、中東(原油)への関与も、米国にとって の経済安全保障とされています。 植民地とのブロック経済から締め出された日本・ドイツ・イタリアが 米国、英国、フランスの植民地へ侵攻したのは、恐慌への経済的な対 策でもあった軍事費の拡大によって、軍事大国になっていたからです。 8月6日はヒロシマ、8月9日はナガサキへの原爆投下の日でした。8月 15日は、終戦記念日です。 このためもあって、1929年の第一地世界大戦のときの通貨増発から起 こった株価バブル。 ・1929年の株価崩壊から1933年の世界恐慌、 ・その後の通貨安の競争と、ブロック経済化、 ・不況対策としての拡張した軍事費(赤字財政の中央銀行引き受け) が引き起こした、第二次世界大戦に至るまでを、小論にまとめました。 二つの世界大戦は、「領土拡張をする帝国主義の衝突」とされていま す。農産物を生む土地が資産だった封建時代のような帝国主義がなぜ 近代国家で起こったのか、原因を知っておく必要があるでしょう。 中東で戦争が絶えないのは、領土が石油という富を生むからです。農 産物は生まない砂漠を政治的に支配すれば、原油というゴールドに次 ぐ富が入手できるからです。銀行を介したFRBの株主でもあるロック フェラーは、石油商人です。金の商人はロスチャイルドでした。 米国ファーストを唱えるトランプが、 ・再選のため自国主義を激しくさせ、 ・グローバルサプライチェーンを分断させて、 ・リーマン危機のあとの通貨増発によりバブル化している世界の株価 を暴落させて、 ・金融危機と恐慌を招くことがないように、願っています。 (1)米国の中国への関税が惹起した、中国側からの報復と重なった 世界貿易の減少、 (2)世界2位のGDPになった中国経済の急減速、 (3)19年10月末に予想される、ジョンソン新首相のEU離脱による、 英国とEU(英国を除くと、大陸欧州の27か国)の、GDPの低下、 (4)世界の労働移動の制限(一国経済化)は、2019年末から始まり、 2022年ころまでの、世界の不況(恐慌より激しくはない不況)を招く からです。 今回の、不況の起点になるのは、 ・第一次世界大戦のあとのバブル株価の崩壊だった1929年と同じよう に、 ・2008年のリーマン危機のあと、世界では20兆ドル(2100兆円)も増 発されたドル、ユーロ、円、人民元によって、バブル化している株価 の20%から30%の下落でしょう。 今のところ米国では約1/3の投資家が、「米国株の30%提示の下落」 を予想し、株価指数(ダウ、S&P500、ナスダック)の先物を売って います。2/3の投資家は、「FRBが金融緩和するから、株価の暴落はな い」としています。どちらが正解か? 9月、10月のダウとS&P500の 動きを見れば、答えが出ます。 2019年7月には0.25%の利下げをした米国FRBは、2018年12月までの出 口政策から一転し、19年9月にも利下げ(0.25%または0.5%)を行う ことは、確実になっています(8月24日の、世界の金融の、首脳が集 まるジャクソンホール会議)。 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