こんにちは、吉田繁治です。イタリアの北部:ミラノで09年6月に、奇
妙な、しかし他面では、巨額化した国際金融を象徴するとも言えるか
もしれない事件が、起こっています。
マスコミは小さくしか報じず、事件は不明瞭なところを残し、闇に葬
られようとうしています。奇っ怪で奇天烈(きてれつ)な事件です。
【報道の要旨】
「2人の日本人が、$1345億(≒13兆円)の米国債を、アタッシュケー
スの二重底に入れ、イタリア国境からスイスに向かう普通列車に乗り
、持ち出そうとしたとして、ミラノの財務警察に捕まった。」という
出来事です。
(09年6月3日に発覚:各社報道) ↓代表事例。
http://www.asahi.com/international/update/0616/TKY200906160159.html?ref=reca
結局、偽物だったという報道で、落ち着いています。しかし事件とそ
の背景について、論理で一段ずつ推理を重ねれば、とんでもないこと
が見えてきます。
本稿は、推理で、実相に迫ろうと試みます。しかし証拠があるわけで
はない。証拠があれば、推理は必要ありません。
報道された記事以上の事実を、知っているわけでありません。
ただし、若干の金融知識はあります。
その知識に、事件の事実(facts)を照らしてみると、押収された13兆
円(1345億ドル:5億ドル額面の249枚が主)のアメリカ国債を偽物と
断定すると、論理矛盾が生じてしまうのです。
それが、推理してお届けし、読者の方々の判断を願う理由です。
推理の原義はreasoning。論理的な思考、つまり論証を言います。
一段階ずつの論理で考えてみます。
──────────────────────────────
<Vol.237:特別号:ミラノの奇妙な事件>
2009年6月24日
【目次】
1.奇妙な事件
2.論理的な仮定
3.推理
4.スイスのプライベート・バンクの仕組み
5.タックス・ヘブンの総資金は1000兆円
6.国際的な資金移動の誤差脱漏は巨額
7.最終的な推理(あるいは憶測)
8.日本政府への再びの提言
【後記】
──────────────────────────────
■1.奇妙な事件
【事実】
イタリアの捜査当局は、捕らえられた日本人2人がもっていた$1345億
の米国債(249枚)は、(日米と思われる政府に)問い合わせたところ、
偽物であったと発表しています。
偽物かどうか、実は不明ですが、イタリア当局が偽物と発表したこと
は事実です。
「米国債のほとんどは、印刷が粗雑な、偽物だった。ただし(本物に
見える)古い米国のケネディ債も、10枚含まれているという。米国政
府に調査を依頼中」とも言う。
事件の発覚は、6月3日です。後で述べますが、4月にも1兆9000億円の
日本国債の券面をもっていたという日本人2名が、イタリアで捕まって、
ニセということで釈放されています。
http://www.asahi.com/international/update/0616/TKY200906160159.html?ref=reca
2人の日本人を、イタリア財務警察が、なぜあらかじめ尾行していたの
か? これが第一の疑問です。
●欧州の主要国イタリアとスイスは「シェンゲン条約」に加盟してい
ます。空港や国境では、パスポート見せるだけで、手荷物の検査は、
普通はありません。経験された方も多いでしょう。国境を越える移動
は、容易です。9.11以後の米国のような、指紋と顔写真をとる検査は
ない。
パスポートの住所・氏名は、日本の住民票にあり、偽ではなかったと
いう。日本政府からも、名前は公表されていません。アタッシュケー
スの底から押収されたものには、日本の、米国債の預かりを示す証書
も含まれていたという。現在は、なぜか釈放され、行方は不明とされ
ます。
2人が捕まったのはスイスの国境でなく、イタリア国内の鉄道内です。
手荷物検査はあっても、形式的で、厳重なものではない。
尾行し、アタッシュケースの二重底まで検査するようなことは、情報
がない限り、想定ができません。また信頼できる筋からの内通がない
限り、イタリア財務警察も、日本人2人を尾行しないでしょう。(推理)
【米国債に「券面(証書)」はない】
1980年代以降、米国は国債を「証書」としては発行していません。電
子化された「帳簿記載方式:Book entry form」という、券面の発行を
省略する仕組みです。つまり、米国債を買った金融機関や、各国の政
府がもつ口座の資産勘定に記帳される仕組みです。(事実)
(注)ただし、国家が、米国政府に要求すれば、例外的に、米国債も
券面が発行されることがあります。
日本政府がもつ米国債は、日本政府の名義で、米国のFRBが保管(保護
預かり)し、預かり証書が発行されているはずです。普通はこんなに
巨額の米国債は、日本政府にも、現物はない。
【奇妙な矛盾】
いずれにせよ、一枚480億円の額面の米国債が、13兆円分も運ばれてい
るとすれば、だれでも偽物と疑います。
偽造団があるとして、こんな荒唐無稽な偽物を作るなら、漫画以下で
す。
米国財務省は、国債の負債勘定を記録し、有り高を証明しているから
です。国債がどう流れたか、だれが売ってだれが買ったか、把握して
います。無記名分は、ごくわずかしかないというのが米国の見解です。
【疑問】
ニセとされた米国債の額面は、1枚が$5億(480億円)です。合計249
枚(13兆円)、破天荒な金額です。紙1枚で480億円(!?)こんな超
高額の証券を、だれが、不可能な換金のため偽造するのか?
【事実と疑念】
事実を言えば、一枚480億円もの額面の国債を売れる相手は、政府か中
央銀行、あるいは超大手の金融機関でしかない。
売買や担保預けの際は、厳重な[偽物・本物]チェックが行われます。
偽物なら、即座にばれて、持参人はその場で逮捕され、厳罰(おそら
く終身に近い懲役や禁固刑)を受けます。
金融関係者なら、米国債と日本国債に券面が発行されていないことは
知っています。しかも個人が、買えるわけもない金額です。仮に(裏
の)取引を行っても、100兆円以上の資産をもつ大手金融機関同士が、
相手と顔をつきあわせる相対(あいたい)でしか、売買しません。
とすると、更に変です。偽造した集団が、偽の現物を持って来ても、
どの金融機関も、買うはずもない。ブラック・マーケットにしても、
券面金額が巨額すぎ、だれも買わないのは当然です。
偽造団が、日本国債や米国債への知識がゼロで、パソコンとプリンタ
で偽造したとします。この想定は、無理です。1枚$5億(480兆円)の
ものは、現金への換金の運搬も、絶対にできないので、作る意味がな
い。同じ偽造なら、世界の商店が受け取る米ドルやユーロの偽札のほ
うが、まだましです。
英フィナンシャルタイムズ紙は6月19日に、シチリアのマフィアが作っ
たことが推察されるとも報じていますが、この筋はないでしょう。偽
造するとすれば、国債の売買と流通について、あまりに無知で、換金
の手段がないからです。
イタリア警察が言った、粗悪な「偽物」説を以降で検討します。
■2.論理的な仮定
イタリアで摘発された13兆円分の米国債を、どこか国の偽造団が作っ
たと仮定します。
「売れるわけがない、どの金融機関も、絶対に買わない」ことを、専
門的な知識をもつはずの偽造団が、知らないはずもない。
1枚で480億円の249枚です。こんなものを券面として印刷する犯罪集団
があるなら、漫画の世界。劇画や映画なら、もっとリアリティがある
フィクションを作るでしょう。
▼偽造団は無理な仮定:論理
だれが、こうした漫画風のものを作ったのか? 2人の日本人でしょう
か? 裏の集団があるのか? この推理は、無理です。
【理由】
米国債を偽造する集団なら、流通する米国債に券面がなく「帳簿記載
方式」であることを、知らないはずはない。
偽とだれでも分かる米国債を偽造する危険を犯すなら、大量の100ドル
札(スーパー・ノート風)を刷り、世界で使えばいい。ともかく、偽
造とされた国債の額面金額が、巨額すぎます。
[注:もうひとつの事件]
調べたら、09年4月上旬にも、同じミラノで、日本人が運搬に関与した
と見られる、額面200億ドル(1.9兆円)の偽造とされた日本国債の、
押収の事実があったとのこと。(毎日新聞JP) これも変です。なぜ、
連続して、起こるのか?
http://mainichi.jp/select/world/news/20090616dde041040016000c.html
▼日本国債も今は券面がない
日本の国債も、米国債と同様、2003年1月27日(社債等の振替に関する
法律)で「無券面化」されています。日本銀行が、国債の売買(持ち
手の移動)に関する記録をしています。偽造を防ぐためでもある。
国債を買う人は、証券会社または銀行に「国債の振替口座」を作り、
その振替口座に、買った国債の金額が記載されます。数字が書かれた
「預金通帳」と同じです。預金通帳そのものは、有価証券ではなく、
他人に譲渡できません。
国債の紙の券面を、国に要求しても、発行されません。上場会社の株
券が、電子化され、ペーパーレスになったのと同じです。証券会社等
の株式口座の残高になり、売買は口座金額の振替処理です。預金通帳
と同じです。
以上から、1.9兆円の金額の日本国債も、券面として持ち歩けば、偽物
とされるのが当然でしょう。以上は、事実からの推理です。
以降は2つの事件の、論理的な推理です。
■3.推理
▼イタリア警察に、相次いで押収された、
(1)紙の券面としての1.9兆円の相当の日本国債(09年4月)、
(2)13兆円(09年6月3日)の米国債には、
財務省の印(日本国債)、または財務長官(米国債)のサインがあっ
た。つまり本物だった。(仮定)
政府が要求すれば、米国財務省は券面を発行します。
また、1980年以前の、例えばケネディ債は券面があります。
国債券面をもつことはできるのは、政府筋ということになります。
イタリアの法では、不法に国外に金品を持ち出したことが発覚すれば、
密輸として額面金額(または価値)の40%が罰金として徴収され、イ
タリア政府の収入になります。(事実)
上記の合計は14.9兆円です。政府の発行という根拠がある本物なら、
約6兆円が、イタリア政府に入ります。法外な額です。仮に、日本政府
か、政府筋がからんだ本物なら、6兆円の巨額損が生じます。
▼捕まったと通告を受けて、慌てた日米の財務省の関係筋は、イタリ
ア政府に対し「真っ赤な偽物」と断定した。あるいは、政府間でなん
らかの「取引」がされた。(推理)
【変な事実】
日本人とされる2人は、「偽物」とされたあと行き先も把握されず、釈
放されたといいます。これも変です。
犯罪が多いイタリアでも、警察は犯罪や詐欺の可能性を疑い、背後や
ルートを捜査するのが普通でしょう。偽物と分かって、すぐ釈放し、
行き先も不明というのは変です。従ってどこかの政府が関係する、し
かるべき筋の人物としか思えないのです。
逆に、だれも信用しない[子供銀行]のおもちゃなら、なぜ、イタリ
ア警察に、尾行の内通があったのでしょう?
例えば私が、来週NYで[$5億の米国債:財務長官のサイン]とパソコ
ンで作った紙片を、意味もなく持ち歩くこともできます。これが、NY
市警に内通されるでしょうか? 警察がとりあうでしょうか?
▼推理
両方とも、目的地はスイスでした(報道の事実)。本当はしかるべき
筋の本物が、スイスで極秘に換金、または担保に差し入れされようと
していた。それで得る金額は全部、プライベート・バンク等への、口
座振り込みでしょう。(推理による仮定) 13兆円もの米国債をもつ
のは、国家でしかありえません。
【現金への換金ではあり得ない】
1万円札で1兆円の現金を持ち歩けば、1億円が約10キログラムですから
その1万倍(10万キログラム=100トン)です。米国債の額面は、13兆
円もあったと報じられています。
1兆円でも4トントラックで25台の、現金を積んだ行列。いかにも、目
立ちます。13兆円なら325台。運搬は不可能で、摘発は必定。
つまり480億円(重量4.8トン)や1兆円スケールの現金への換金は、天
地がひっくり返っても無理です。およそそうした現金紙幣は、どの銀
行にもありません。
スイスのプライベート・バンクの口座は、開設するとき、担当から「
信用できる」と審査されない限り、開かれません。つまり、足がつき
ます。偽造団の偽物が、現金に換金されようとしていたというのは、
無理です。信頼される筋の、口座へ入金でなければならない。
【論理的な結論】
●結論的な推理を言えば、どこかの偽造団がスイスでの換金のために、
日本国債(1.9兆円分:4月)、米国債(13兆円分:6月)を偽造したと
いうことは想定しにくのです。偽造なら、粗悪ではなく、すこしでも
本物に見えるように行います。
しかし券面の国債は、本物であっても窓口での処理はなく、発行した
日米の政府に銀行が問い合わせ、券面に書かれている所有名義人にも
問い合わせます。
1点の疑問も残らないように厳重にチェックされます。偽ならすぐ分か
ります。つまり偽物を、現金に換金する手段、または振り込みしても
らう手段は、皆無です。
換金の手段がないから、耄碌(もうろく)した数兆円の超大金持ちで、
一人住まいの老人に売るしかない。しかし、そうした人は、100%執事
やプライベート・バンクを、かかえています。この想定も無理です。
1枚の券面480億円のものを信用し、買うはずもない。
超資産家でも、巨額の現金を、家にもつ人は、いません。耄碌(もう
ろく)した超資産家で、現金を巨額に家にもつ人を、偽造団が知って
いるなら、ニセ国債をつくるような無駄なことはせず、強盗に入った
ほうが簡単です。
資産家の現金は銀行預けです。従って、その国債の券面を、代理人の
銀行の担当が駆けつけてチェックします。
■4.スイスのプライベート・バンクの仕組み
風光明媚な湖畔にあるチューリッヒに多いプライベート・バンク(PB)
では、「預金通帳」は存在しません。預金をしたという事実が、銀行
の口座に金額として、記録されるだけです。
多くはタックス・ヘブン(租税回避地)が、本拠地になっています。
スイス国内に窓口があっても、帰属は世界のタックス・ヘブンです。
預金の内容と名義は、マネーロンダリング(資金洗浄)等の犯罪が絡
むものでない限り国内法では開示しない。
*兆円を入れる口座開設は、国家や、どこかの財務省の高官、あるい
は世界的な超大手金融機関の関与がない限り、不可能です。ファンド
でも無理です。個人が行えば銀行中で大騒ぎになる。というより、銀
行が国家レベルの巨大犯罪を疑い、口座は作れません。
プライベート・バンクからは、預金者がスイスで口座を作るとき指定
した(私書箱を含む)住所に、残高記録が定期的に送られてきます。
預金を引き出す方法は、3つです。(注)基本は相互信用です。インタ
ーネットでアクセスできる暗号口座は、当然にありません。
(1)口座を作るとき登録したものと同じ人がサインをした指定用紙を
送り、引き出す。登録するサインは、複数でもいい。
(2)お互いに顔を知っている担当者に、振り込み先を国際電話で言う
(後で、サインが要ります)。
(3)AMEXやVISA等の使用金額が無制限の、普通のクレジットカードで
買い物に使う。米国では、住宅や高級車もクレジットカードで買う人
が相当数です。(これは個人のレベル)
■5.タックス・ヘブンの総資金は1000兆円
タックス・ヘブン(租税回避地:内容が不明)にある資金量は、オバ
マ政権の最近の調査では1000兆円(多くが金融機関とファンド)とさ
れ、それらの資金における米国での脱税額が、25兆円と見積もられて
います。
今、世界の金融資産は、何事においても巨額です。
ブッシュ政権の時代は、これらが、明らかにならなかった。
タックス・ヘブンの口座の1000兆円と言えば、日本の銀行への個人預
金量(786兆円:08年末:日銀統計)より多く、米国の全銀行の預金量
(約1000兆円)に匹敵します。
国債を含む債券・証券・株の、もっとも大きな売買は、タックス・ヘ
ブンからの資金です。例えば、わが国の株の売買でも、ガイジンが50
%〜60%です。ガイジン・ファンドの多くは、タックスへブンを本拠
地としています。
世界に著名な、フォーブス番付の、最上位の資産家の、米国からの課
税を逃れる巨額資金の可能性も、ゼロとは言えません。オバマ政権は、
タックス・ヘブンの資金への課税を行う方針を、明らかにしているか
らです。
ただし個人が行うには、危険すぎます。この筋はないでしょう。
課税する米国政府や日本政府に、必ず、分かるからです。
■6.国際的な資金移動の誤差脱漏は巨額
ところで、各国の国際収支(資金の移動:各国財務省が集計)には、
実に、誤差脱漏が多い。(注)誤差脱漏は、金融機関、企業、個人が
政府へ申告すべき国際資金移動が、把握されていないという意味です。
例えば、わが国の09年4月の経常収支(貿易収支+サービス収支+対外
所得収支)は、6305億円の黒字とされています。
しかし、4月の収支に含まれず、勘定が合わない誤差脱漏が、1兆784億
円(年間換算で12兆円の誤差)です。一体この巨額資金の正体は、何
か?
本当のところ、日本も、国を越えた資金移動で、黒字か赤字か分かり
にくいのです。(誤差脱漏↓)
http://www.mof.go.jp/bpoffice/bpdata/pdf/bp0904.pdf
各国の、だれが主体か分からないマネー・ロンダリング(通貨を交換
することで出所を消す)や不正資金を含むだろう誤差脱漏の、巨額資
金移動が、各国通貨の実際の価値を決めているとも言われます。
他国より細かく記録する日本の国際収支の、根拠が不明な誤差が1年1
2兆円なら、相対する外国の誤差脱漏も12兆円ということになります。
世界中では、1年にこの5倍〜10倍(60兆円〜120兆円)の誤差脱漏があ
るでしょう。
■7.最終的な推理(あるいは憶測)
可能性は、以下の3つでしょう。
どれが確度が高いか、読者の方の判断にゆだねます。
(1)日本または米国の財務省に近い筋が、それぞれの(公表されない
裏の14.9兆円分の)国債を、政府財政資金の必要のため、国債市場で
売らず、スイスの銀行を窓口にして、1000兆円の資金量があるタック
ス・ヘブンで換金しようとした。
(2)中東を含む世界のSWF(ソブリン・ウエルス・ファンド:国家フ
ァンド:合計300兆円規模の残高)かも知れません。日本の財務省も、
外貨の運用にSWFを作ると言っていました。
(3)金融に無知な偽造団が行った漫画風の行動。
4月と6月に捕まって釈放された4人の日本人は、末端のエージェントだ
ったでしょう。(以上は推理)
だれが見ても変だと思う巨額の(偽とされた)券面をもち、国境を越
えるのに、米欧では一般の人しか乗らない「三等車」に乗っていたと
いうのですから、まるで(古い)007です。
タックス・ヘブンとプラベートバンクでは、口座をもつ本人のサイン
が要ります。サインがある紙の現物を窓口に届けねばならない。郵便
で送るのは、危険でしょう。運び屋かもしれない4名の日本人名は、明
らかにされていません。
なぜ、明らかにしないのか、不明です。
背後の調査をせず、間単に釈放した理由も、分からない。
●両国が、SWFが、あるいは政府に近い筋が、市場で売らない理由は、
「金利の上昇を避けること」が目的でしょう。(推理)
それくらい日米両国の財政資金は、金融・経済対策のため、逼迫(ひ
っぱく)しています。日本政府にとっては、手持ちの米国債が、米国
の手前、いつまでも売ることができないという制限があります。(事
実)
▼証拠の裏付けはないから推理
当然に、以上のように言うための証拠はありません。
今後も、もし日米の政府筋が関与していれば、証拠が出るはずがない
。政府筋の関与がないなら、イタリア警察も、尾行したくらいですか
ら、釈放せず、背後捜査を続けるはずです。
すぐに釈放されたのは、しかるべき筋からの、取引を含む依頼でしか
ありえない。イタリア警察も、奇妙に、詳細を言わないのです。
以上から、捕まった4名の日本人とされる人は、政府筋と推理もできま
す。(注)あくまでも推理で、憶測と言ってもいい。
09年6月の奇談として読み飛ばしてください。証拠があれば、推理の必
要はない。それにしても最近、大きくて変なことが多い。
【国益】
日本の政府筋が関与していれば、政府または政府筋が関与した13兆円
の米国債を、密かに売って、将来の損を避けようとしたことですから、
日本の国益のために、立派とも評価できます。まぁ、摘発されるの
は漫画風ですが。
【正規市場では、米国債の暴落が起こる】
米国債13兆円を、正規の国債市場で売却すれば、その日に、米国の金
利が高騰し、米ドルは暴落します。だれが売ったかも、米国政府は分
かります。米国債を売られるのが、米国政府はいちばん怖い。
日本政府や政府筋には、過去の米国債の券面があるとも言われます。
(噂)
しかし、運び屋のエージェントが、米国債売却の計画を知った何者か
の通報で尾行され、鉄道内でイタリア警察に捕まり、日本政府が本物
と言えば、有価証券の巨額密輸として13兆円の40%(5.2兆円分)をイ
タリアにとられます。日本政府内で、5兆円の損は大問題になる。
「粗悪な偽造だった」で終われば、犯罪にもならず、万事、収まりま
す。これでいい。政府筋なら、間が抜けていますが・・・
以上、奇談の推理です。憶測と思っておいてください。
▼近々、米国の、今後の国債価格(長期金利)の動きで分かる
09年6月以降の、米国長期金利の動きと、米国長期債の価格の動き、お
よびドル価格の動き次第では、証拠はなくても「真相」が推測で分か
ることがあるかも知れません。
長期国債の下落(=長期金利の急騰)、そしてドルの下落があれば、
状況証拠として、どこかの政府筋説が有力になります。債券市場での
現在の焦点は、だれが米国債を売るか、だからです。売りの意志が見
えたとなるからです。
どこかの政府、政府系ファンド、あるいは超大手金融機関、または政
府系の機関投資家が、米国債を「*兆円規模」で売りたがっていると
すると、世界の金融市場は即刻反応し、損を恐れてドル国債売りに転
じ、下げるだろうからです。
前述したように、09年は、米国が新規の国債を$2兆(190兆円:史上
最高額)も発行します。2週間ないし3週間ごとに、約10兆円に達しま
す。一体、この巨額の米国債を、世界のだれが買うのか、買い手があ
るのかを、既発国債をもつ債券市場が恐れているからです。
どこかのだれかが*兆円の規模で売り始めれば、雪崩が起こる可能性
があります。既発の米国債は、08年8月に国有化された住宅証券会社の
住宅証券約500兆円(国の負債で国債と同等)と合わせると、市場での
流通分で、約1200兆円(GDP比1.1倍)です。
問題は米国が、850兆円の国債(GDP比1.6倍)を国内で消化する日本と
違い、自国でファインナンスできないことです。中国、日本、中東、
欧州が買わないと、国債価格の下落(金利高騰)とドル下落が起こり
ます。
■8.日本政府への再びの提言
与謝野財務大臣は、6月10日に、米国債の格下げ(=米ドル暴落)の懸
念への質問に対し、「文化、経済、世界の安全保障に対する考え方、
すべての要素からドルの地位が成り立っており、ドルの基軸通貨体制
は、揺るがないと思う。」と答えています。
中国を儀礼訪問し、米国債を買うように頼んだガイトナー米財務長官
に、イタリアでのG8(ロシアを含む8カ国蔵相会議:6月12日、13日)
で、会う前です。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90003017&sid=acQZOODYK.LU&refer=jp_japan
この与謝野発言は、6月3日に、13兆円の、米国債もどきをもつ2人の日
本人がイタリア警察に捕まった後です。日本政府の、損をしてもドル
債を保持することの表明ですから(推理で)事件の裏読みもできます。
秘密に、市場に出さないで売ろうした、あるいは現金をいつでも引き
出せる担保として預託ようとした米国債が摘発され、日本政府が、偽
物と言い訳をしたのかも知れないということです。
▼2009年の米国債発行は史上最大の190兆円
6月9日からほぼ2週間毎に、$1040億(約10兆円)の、米国債の入札が
あって、その売れ行きがどうか、世界の金融筋が注目しています。
思うようには売れず、FRBが買い取りを迫られるなら、国債価格が下落
し、米ドルも下がって、長期金利が上がるからです。
今年は、金融・経済対策での政府の赤字のため。米国は$2兆(190兆
円)もの、史上最高額の新規国債の売却を、計画しています。FRBが決
めている買い取り枠は、$3000億です。1.7兆(160兆円)は、市場で
売らねばならない。
●昨年の10月ころ提案したことを、再び言います。日本の財務省は、
ドル下落が起こらない前に、上記の、奇妙な事件のような極秘手段を
使っても、手持ちの米国債をなんとか換金し、順次、ゴールド(代理
人によるゴールド証券の買いでいい)を買っておいたほうがいい。
それが将来の国民益で、支出が増える医療費と年金基金です。(注)
日銀と日本政府は、事実上、ゴールド買うことを、米国政府から禁じ
られています。政治家も、それはできないと言う。
しかし、2008年のように91兆円もの対外資産(国民の資産)を、再び
今年も、失うべきではない。
●今年、ドルが20%下落し($1=78円付近になって)、追加の100兆
円規模の損が生じれば、500兆円の外債をもつ日本政府と金融機関、輸
出企業も、倒れてしまいます。
日本経済が、円高(=ドル安)に、とても弱い理由は、
(1)輸出が90兆円規模(GDPの18%)だった外需依存の経済であるこ
と、
(2)対外資産は、下のB/S(対外貸借対照表:2008年12月末)で、91
兆円の損をする前に、約600兆円(GDPの1.2年分)だったことです。
わが国の1世帯当たりで、1200万円相当の対外投資です。いかに多く、
海外(主は米国)に貸し、多くを$建ての証券として、貯めてきたか。
以下は、日本の財務省が集計したデータ(08年12月)です。
【対外資産:(前年比増減)】 【対外負債】
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
・直接投資 62兆円(-0.1兆) ・直接投資 18兆円(+3兆)
・証券投資 215兆円(-72兆) ・証券投資 140兆円(-81兆)
・外貨準備 93兆円(-17兆) ・その他 134兆円(+11兆)
・その他投資 148兆円(-2兆)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
対外資産 519兆円(−91兆) 対外負債 293兆円(-67兆)
対外純資産 225兆円(-25兆)
http://www.mof.go.jp/houkoku/20_g.htm
08年では、対外負債(海外ファンドからの証券投資)も、67兆円分減
っていますが、これは海外がもつ日本株の時価の、81兆円(上記証券
投資の減少)の下落のためです。
日本が、海外がもつ日本の株価下落(つまり対外負債の−81兆円の減
少)で得をしたわけではない。
そのため、対外資産の519兆円への減少(−91兆円)は、わが国が所有
していた対外資産からの、純減です。
日本の1990年代の不良債権(=金融機関の総損失)は、約100兆円規模
でした。この100兆円の損のため、日本人と日本経済は、15年余の、経
済の低い成長と下落、金融倒産、企業倒産の苦しみを嘗(な)めてい
ます。
●これに比べても、〔91兆円(08年の実績損)+100兆円(09年のドル
安による予想損)=191兆円の予想損〕の、巨額さが分かるでしょう。
ドル安から、日本経済の屋台骨を折る巨額損が生じるのは、日本の対
外資産が、08年で600兆円規模(GDPの1.2倍)と巨額だからです。とも
かく(anyway)米国が商品の市場であり、米ドル受け取って、その価
値を信用してきたのです。
600兆円が、政府(外貨準備100兆円)、金融機関の外債、企業の外債
(対外資産)、個人の外債になっていた日本の富でした。
90年代以降、賃金も上がらないのに、一生懸命いい商品を輸出し、海
外に貯めてきたマネーが600兆円(世帯当たり1200万円)です。(08年
前半まで)
ドルが下がれば、日本は上記の国富(対外資産)を、回復できないく
らい巨額に失います。対外資産とは、政府・金融機関・輸出企業、そ
して個人がもちます。減った519兆円(08年12月)の主はドル証券です。
むざむざ、この国が損をするのは、忍びない。
ドル安での損のあとの、日本経済の悲惨を想えば、なおさらです。
【後記】
本稿は、奇妙な事件を、事実を確認しながら、論理で推理しました。
知的なゲームとして楽しんで下さい。どこかの政府筋あるいは政党の
関与がある事件なら、政府間取引で、闇から闇に葬られます。
いずれにせよ、2009年度のドル暴落は、$1.8兆の財政赤字と、$2兆
の国債発行が控えているので、確度が高くなっています。その前に、
米国債を市場外で換金したいという動きの一端に思えるのです。
前回紹介した、新著『ザ・プリンシプル』(どこにでもいるような人
が集まって、だれにもできなかったことを、成し遂げた物語り:経営
の成功原則100)は、お陰様で、アマゾンのランキングにも登場してい
ます。
http://www.amazon.co.jp/
興味のある方は、ザ・プリンシプル、または吉田繁治で検索してくだ
さい。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【ビジネス知識源 読者アンケート 】
読者の方からの意見や感想を、書く内容に反映させることを目的とす
るアンケートです。いただく感想は参考になります。
1.テーマと内容は興味がもてますか?
2.理解は進みましたか?
3.疑問点は?
4.その他、感想、希望テーマ等、ご自由に
5.差し支えない範囲で読者の横顔情報があると助かります。
コピーしてメールにはりつけ、記入の上、気軽に送信してください。
質問のひとつひとつに返信することはできないかも知れませんが、共
通テーマはメールマガジンでとりあげます。いただいたメールは、全
部を読んでいます。
↓あて先
yoshida@cool-knowledge.com
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■創刊以来、全部門で1位を続け、『まぐまぐ大賞2008』を獲得してい
る有料版(週刊:1ヶ月で630円)の購読案内です。
■無料版バックナンバー:過去には発行した無料版全250号余は、全部
、以下に公開しています。
http://archive.mag2.com/0000048497/20090221184102000.html
■有料版バックナンバー:有料版の約8年分超のバックナンバー420号
余は、有料の性格上、公開していませんが、月単位で購入できます。
以下に、全タイトルがあります。
http://rd2.mag2.com/r?aid=22334&rid=1
■『ビジネス知識源プレミアム』は、「1ヶ月ビジネス書5冊を超え
る情報価値をe-Mailでお届けする」ことを趣旨に、ビジネスの成功原
則、経済、金融等のテーマを原理からまとめ、明快に解き、週1回お届
けしています。最近号の、一部の、目次は以下です。
以下はここ1ヶ月の分の、目次です。金融・経済論について、本質的な
ところを追求したものです。
<436号:ゴールドの動きとミラノでの奇妙な事件>
2009年6月18日号
1.金価格の上昇原因とその予想
2.2009年のゴールドをめぐる変化
3.中国の国債買いが、ドル価値の鍵とは言うが・・・
4.対米輸出国は、米ドルが基軸通貨であるのは変だと言い始めた
5.(余計なことですが)奇妙な事件の、推理小説風の謎解き
6.日本政府への再びの提言
7.基軸通貨は、安易な赤字から、長期トレンドで下落を続ける
<435号:中央銀行の国債買いへの、市場の認識変更>
2009年6月10日分
【目次】
1.世界金融危機の行く末は、単純に、予測できる
2.金融機関によるリスクの高い投資が、リスク・フリーとされた
3.金融機関の高いレバレッジ率は、CDS(債務保証保険)が前提だ
った
4.金融資産(=金融負債)が膨らんだままを続ける
5.日米の政府部門の巨額負債
6.日米欧の国債は、一体どんな金融資産か?
7.国債の資産性への疑念
8.経済危機が迫っている英国
<434号:経済の底打ち論の背景は、
米国がドル債を売り逃げたいから>
2009年6月3日分
【目次】
1.GMの破産処理が長引いた理由:経済マスコミが言わないこと
2.そのための準備
3.IMFが09年2月に試算した、G20での必要な政府資金をマスク
4.国際不均衡が生む矛盾
5.注目は、09年6月のドルの長期金利
6.米国の住宅価格指数;住宅証券;ローン金利
7.不良証券は、政府と中央銀行に集まる構造
8.日米欧の、マネーの水割り度
<433号:経済と金融の、本当のところは、どうなのか?>
2009年5月27日分
【目次】
1.『09年3月9日を底に、世界の株価が30%くらい、上がっています。
今後も、上がるのでしょうか?』
2.『日本の景気は、秋には回復するのでしょうか?』
3.『世界の政府財政における大判振る舞い(500兆円:世界GDPの10%
)から、通貨膨張によるインフレが懸念されるとも言
われます。物価が上がるインフレに、向かうのでしょうか?』
4.資料:米国の対外負債と対外資産
5.『米国政府は、新通貨のアメロを準備しているという噂が、聞こえ
ます。本当に、それがあるのでしょうか?』
6.『世界のハイパー・インフレは、あるのでしょうか?』
(↓)お手間をかけますが、会員登録方法の説明です。
http://premium.mag2.com/begin.html
新規の申し込み月の1ヶ月分は、無料お試しセットです。
(注)お試し期間の1ヶ月後の解除も、自由です。
【申し込み方法】
(1)初めての『会員登録』で支払い方法とパスワードを決めると、
(2)[まぐまぐプレミアム]から会員登録受付のメールが送って
きます。
(3)その後、購読誌の登録です。
(注)過去のバックナンバーの購読も月単位でできます。
↓会員登録の方法
http://premium.mag2.com/begin.html
↓申し込み画面
http://cgi.mag2.com/cgi-bin/magpre/frame/P0000018
↓購読誌の登録
http://premium.mag2.com/mmf/P0/00/00/P0000018.html
【新設された、まぐままぐマーケット】
[まぐまぐマーケット]では、PDF版『ゴールドと通貨の本質』が
販売されています。有料版のバックナンバーから、上記テーマの関連
論考を集め再編集した、渾身の論です。有料版購読中か否かに関係な
く、どなたでも、セットで買えます。
http://www.mag2market.com/pickup/yoshida.html