流通・小売りでのRFID革命が近づいた
This is my site Written by admin on 2017年6月1日 – 12:00
こんにちは、吉田繁治です。スペインが本社のファスト・ファッシ
ョンのZARA(ザラ)は、日本に100店舗を展開し、売上も650億円に
なっているので、ご存知の方が多いでしょう。

ユニクロよりワンランク高級で、ファッショナブルですが、高くは
ない。世界での売上は2.9兆円で、ユニクログループの1.8兆円の1.
6倍です。ZARAより低い価格帯では、ユニクロのGUに似たH&M(へネ
ス・アンド・モーリッツ)が年商2.4兆円で世界4351店です。

ZARAでは、RFIDで自動収集した売上・在庫情報を、スペインの本社
にリアルタムで送信し、世界に分散した工場では2週間で新商品を
作り、48時間で世界の店舗(7292店)に、空輸しています。まさに、
ワールド・ワイドな高速ファッションを実現しているのがZARAです。
新商品として作ったものを売る、というビジネスモデルです。

              *

流通専門誌の『販売革新』に、「新しいチェーンストア理論:その
再考と展開」を連載しています。最初5回くらいと思っていました
が、6月号として送ったものが、20回目になっています。書くべき
ことがまだ多く、35回まで行くかもしれません。

チェーンストアの経営原則をまとめたのは、2010年になくなられた
渥美俊一氏です。実はチェーンストア論といえるものは、本家の米
国には、見あたりません。小売りの経営論(Retail Management)と
しては、多くがあります。しかしチェーンストアとは、あまり言わ
ない。

米国では、100年も前からチェーンストアが「当たり前」なので、
論にしないのかも知れません。その点で、日本のチェーンストア
(多店舗経営法)や、業態論(販売方法による店舗分類)は、独自
です。

当方の、「新しいチェーンストア理論」では、
(1)マーチャンダイジング(商品構成論:商品化の方法)、
(2)組織論(多店舗経営ができる職能と組織)を終えて、
先月から、
(3)「新しい情報システム」のテーマにはいっています。

米国のチェーンストアの、既存の情報システムや、D/C(集荷/配
送)システムを紹介するではない。「これからの情報システム」を
述べるものです。なお、流通・小売りとは卸と小売りの全体をいい
ます。

【AI店】
以前、アマゾンの、商品認識にAI(人工知能)を応用した食品店、
「Amazon Go」について2回書きました。調べると、2016年の12月で
した。有料版の「857号:アマゾンがAI店舗を開発し2000店も出店
する」と「858号:AIサプライチェーンが現実のものになった」、
です。

https://www.youtube.com/watch?v=NrmMk1Myrxc
ここで、その仕組みがわかります。説明は英語ですが、やさしい。

アマゾンについては、思い出があります。1995年、アップルのよう
にマウスを使う「Windows95」が出現し、インーネットの世界普及
がはじまったときでした。アマゾンは、当時「100万冊の蔵書」と
して仮想店を作っていました。これは、これから大きくなると思い、
当時の経産省の公簿に応募し、幸い、当選して、開発の機能設計に
従事したのです。

その後22年、1億3000万種の商品を、仮想のマーケットプレースに
展示するアマゾンの年商は、1360億ドル(15兆円)になっています
(2016年)。

米国のインターネット販売の全体は、2016年で55兆円です。
食品とガソリン、外食を除く、米国の小売り総販売250兆円の、22
%がインターネット販売になっています。

米国の耐久財やファッションでは、すでに40%がインターネット販
売になっていると見ていいでしょう。ただし、食品と家庭用消耗品
は、まだ少ない。

日本のインターネット通販も、総額では13.7兆円に増えています
(2015年)。年率では、11%の増加です。ガソリンと外食を除く小
売り(100万店、100兆円)で、約11%を占めています(米国の1/2
のシェア)。

ただし、わが国の増加率は、6.5%の米国の2倍の、年率11%です。

▼RFIDが最適だった

【RFIDだった】
店舗のAI化を精査していると、その前に、RFIDがより的確に、安い
費用で、IoT(Internet of Things:個品の、サプライチェーンでの
連携情報管理)が可能になるという考えに至りました。(形が不定
形な青果ではAIでしょうが・・・)

RFID(Radio Frequency Identification:アールエフアイディー):
電波が起動する誘導電流で、添付された商品の情報を無線発信する
回路。ロット発注なら1個でほぼ5円にまで、低価格化しています。
近い将来、1個1円にまで下がります。利用が増え、生産ロットが大
きくなると、1個の単価は下がります。

現在の、価格を表示している紙の商品ラベル並みの価格です。
RFIDそのものは1mmや0.5mm角くらいで、ノミやシラミのように小さ
い。(変な形容です。書いていると、かゆくなります。でもノミや
シラミを顕微鏡で見ると、神の造物と思えるくらい精密です)

●本稿では、RFIDによる商品加工と流通のコストダウン効果が特に
大きな、生鮮5品(食肉、鮮魚、総菜、日配、青果)を扱う食品
スーパーを事例に、新時代のサプライチェーン化された店舗を描き
ます。

【食品スーパー:1万3000店】
中大型の食品スーパーは、わが国で約500社、1万3000店です。
商圏人口1万人に対し、1店があります。1店平均12億円の売上で、
総売上は、15兆円付近でしょう。いたるところ食品スーパー。

わが国の食品・飲料の需要は、約40兆円です。中大型の食品スー
パーのシェアは、マーケット需要の38%です。

30億円の食品需要がある1万人商圏で、年商12億円くらいの中大型
食品スーパー(1店、または2店)があると見ていいでしょう。

【ドラッグストアは、2万1000店:商圏人口6000人】
比較のためにいうと、食品(生鮮以外のグロサリー)を扱うスー
パードラッグになり、店舗数が増えているドラッグストアは、商圏
人口6000人に1店舗の配置です。

売り場300坪以上の中大型店は、1店平均で5億円から6億円くらいに
年商です。

【コンビニは5万4000店:商圏人口2000人】
高齢化と小家族時代になり、家庭内調理が減ったため、惣菜・お弁
当を買うことが増えたコンビニは、2000人に1店舗で、平均年商が
2億円です。なお目立たない、処方箋医薬の調剤薬局も売上数量が
伸びていて、5万7000店もあります。

まとめれば、近隣(ネバフッド)といえる1万人の商圏(小売総額
100億円)には、

・中大型食品スーパーが1店あり、年商で12億円。
・中大型ドラッグストアが1.6店あり、合計年商で10億円(1店は6
 億円)
・売り場30坪のコンビニが5店あり、合計年商で10億円です。

本稿は、有料版で送ったものに、修正・削除・付加をしたものです。
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  <8824号:小売り・流通でのRFID革命が近づいた完結編;人民
元と米ドルと無国籍通貨のゴールド(5)>
      2017年6月01日:無料版

【目次】

1.食品スーパー、ドラッグストア、コンビニではRFIDが最適
2.コンビニや食品スーパーでのRFIDの利用
3.食品スーパーでの店内加工とP/C加工
4.RFIDを使うリアルタイム鮮度管理によるP/C生産
5.RFIDの有効範囲:ソース・マーキングを推進すべき卸

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■1.食品スーパー、ドラッグストア、コンビニではRFIDが最適

いろんなブランドのファッション店を、ショッピングセンターに
3000店展開しているワールド、そして2017年で、国内に832店のユ
ニクロでは(海外が1029店)、すでに、倉庫内の在庫管理に、
RFIDが使われています。

なおユニクロでは、これとは別に、GUやセオリーのグローバル店舗
が1360店あります。これをいれると、世界の合計店舗は、3211店で
す。2017年度の年商は、合計で1兆8500億円の予定です。1店平均で
5.8億円の年初ですから、ちょうど、ドラッグストア並みです。

ファッションでのRFIDの利用が進んだのは1品単価が2000円付近の
20円は1%です。

RFIDでは、微小なコイルに電磁場を当てて、フレミングの法則で電
気を起こし、メモリに書き込まれたデータを、自動で発信します。
http://www.sk-el.co.jp/sales/rfid/glossary/b02.html

いい点は、棚にある商品の全部(100個、200個、300個など)を、
一括して読みこめることです(RFIDリーダー)。一瞬で、何がいく
つあるかわかり、リアルタイムで、コンピュータに電送できます。
遠隔ならインターネット、構内なら1万円以下になったWiFi(ワイ
ファイ)と通じ、その在庫情報を、瞬間共有できます。

RFIDリーダーには、
・人間の手で操作する、ピストルのような手動型と、
・陳列棚に設置する、シートのような設置型があります。
http://www.weekly-net.co.jp/rfid/uhfrfid.php
http://www.silencenet.com/product/rfid_fixed/index.html

個々のRFIDには、自動で、ユニークなシリアルナンバー(重ならな
い連番)が付与されます。単品の商品情報を、二重に読みこむこと
はない。このため、RFIDをつけた商品は、倉庫や店舗の棚の「在庫
棚卸し」が、一瞬で、誤差なく完了します。

【価格の問題】
問題は価格でしたが、アンテナとメモリ回路の微小化技術により、
1個5円が視野に入ってきたのです(日立)。将来的には、1個1円が
目標とされています(大日本印刷)。

経産省は、1個1円をにらみ、2017年に在庫管理シスレムと連結して、
2018年から全国のコンビニで実証実験をします。セブンイレブン、
ローソン、ファミリーマート、ミニストップが、実験への参加を表
明しています。1品単価が100円を切るものも混じる食品で、ついに、
実験が始まったのです。

海外を含むと、以下の展開が進んでいます。

(1)2006年に、ウォルマート:店舗1000店で、RFIDパレットを設
置。サプライヤー600社に、RFIDの添付を要請。600万個。

(2)2006年に、ドイツのメトロ:ケースラベルでRFIDを添付。06
年から個品を推進中。

(3)2006年にP&G:店頭ディスプレーにRFID添付し、商品販促。
20%の売上増加効果が生じた。

(4)2006年に日立が1個5円のRFIDを開発(1億個ロット)。

(5)ZARAなどの世界的なファスト・ファッションで、RFIDの利用
が進む。

(6)2017年、セブンイレブン。商品添付のRFIDを推進。2018年実
証実験。既存コンビニの、生鮮と冷凍食品を拡充し、年商3億円を
目標。

(6)ワールド、ユニクロは、倉庫管理、陳列在庫管理に、RFIDを
使っている。TSUTAYA、シップス(ファッション)、ビームス(フ
ァッション)、エゴイスト(ファッション)もRFIDを利用。

(7)2017年、RFIDが1個5円に下がると、利用は急拡大に向かい、
価格は一層下がる。2025年には、3000億個生産で、1個1円が目標
(大日本印刷)

■2.コンビニや食品スーパーでのRFIDの利用

RFIDが特におおきな効果をあげるのは、店頭在庫の、1個1個の消費
期限の管理(鮮度管理ともいう)が必要な、コンビニや食品スー
パー、およびドラッグストアです。

特に食品スーパー(SM)では、個品の鮮度管理が肝心です。豆腐、
納豆、生乳類などの日配商品を含む、生鮮(肉、魚、青果、惣菜・
弁当)の売上が60%を占めるからです。

JANコードは、同じ品目では、同じ13桁コードです。このため、例
えば牛乳でも、個々の商品の消費期限の管理は、できません。売り
場では、棚の牛乳バックの消費期限日を見て、1個1個を、ひとが確
認しています。

他の日配、生鮮でも、全部同じです。発注のとき、売り場の担当が、
個品の消費期限(日付と時間)の管理をしています。この確認が、
売り場の在庫管理作業でのコストになっているのです。

試算では、生鮮売上にたいして、売上比でほぼ3%が発注の際の、
確認コストでしょう。

●生鮮の個品にRFIDを添付すると、消費期限の確認作業はいらなく
なり、管理作業のコストダウンと、同時に、正確化を図ることがで
きます。

しかもその商品情報は、生鮮の加工センター(プロセスセンター)
と、リアルタイムで共有できるのです。

店頭商品在庫と売れ数情報を、商品の上流(サプライヤー)と共有
し、共同の売上予測により、棚補充の活動を行うことを、サプライ
チェーンと言っています。

【JANコードと二次元コードの限界】
このサプライチェーンは、わが国では、メーカーと小売りが共有す
るJANコードの商品添付から始まったのです。1990年代以降のこと
です。

しかしJANコードでは、生鮮の個品にまで至る、鮮度管理、消費期
限管理はできなかったのです。品目単位で、同じコード(識別子を
コードという)だったからです。

JANコードより、消費期限を含む多くの情報を書き込める二次元
コードでも、1個1個を、人の手でスキャンしなければならず、一
括・一瞬での、陳列棚の商品の自動認識と、在庫棚卸しはできませ
ん。

RFIDには、JANコード以外に、個品のシリアルナンバーが自動で付
与されますから、生鮮の個品での消費期限管理が自動化し、サプラ
イヤーとリアルタイム共有できるようになったのです。

このため、おにぎり、惣菜、弁当の生鮮を扱うコンビニは、RFIDの
実証実験をするのです。

その目的は、
(1)店頭在庫管理の正確化と、
(2)売り場の人的な商品作業の生産性(1人当たり商品処理数)の
上昇です。

5円のRFIDでこれができるようになったのです。まさにこれが、
Internet of Things(商品の全部がインターネットにつながるこ
と)の、流通・小売りにおける実現形です。

生鮮用のRFIDに組み込むデータフィールド(項目)は、以下が想定
できます。メモリ容量は一般に4Kバイト以上(英数字4000文字)は
あるので、商品マスターファイルの元データを、個品に書き込むこ
とができます。

●シリアルナンバー:JANコード:仕入れ先:商品名:商品仕様:
原材料:仕入価格:製造日時:賞味期限:消費期限:個店価格1:
特売価格2:特売価格3・・・など。

商品情報は、RFIDライターによって、電波信号で、ノミのような大
きさのRFIDに書き込みます。RFIDを個品に添付するのが、現在は
JANコードで行われている「ソース・マーキング(製造元でのコー
ド附番)」になります。

RFIDは、未着手だった、消費期限がある商品の、遠隔での自動サプ
ライチェーンを可能にします。

共通商品コードとEDI(電子データ交換)によるサプライチェーン
は、米国では90年代から、日本では約10年遅れて2000年代からでし
た。

その17年後、今度はRFIDによる、より根底的な「サプライチェー
ン」が実現します。RFIDは、生鮮食品の流通革命をもたらすと言っ
ていいと思います。

■3.食品スーパーでの店内加工とP/C加工

近所の食品スーパーに行けば、鮮魚類、寿司、肉類、惣菜、揚げ物、
お弁当など生鮮で、白い頭巾をかぶったパートのおばさんや社員な
どによって店内加工、店内調理が行われているのに気がつくでしょ
う。

店内調理・加工では、多品種少量生産になるので、生産性(1人時
あたり生産数量)が低くなります。一方で、店頭の陳列在庫の減少
を観察しながら、少量生産と高頻度の補充を行うため、消費期限ま
ぢかの割引(30%から50%)が少なくなり、残品の廃棄も減らすこ
とができます。

値引きと廃棄の両方を合わせて「商品ロス」と言いますが、店内調
理と加工は、生産コストを上げて、商品ロスを減らすものです。

遠隔のプロセス・センター(P/Cという)では、生産・加工ラインで
の生産量が増えるので、1人当たりの生産性は、店内加工より高く
することができます。しかし、店頭が遠隔であるため、P/Cからは、
店頭在庫のリアルタイムの管理ができません。このため、店頭商品
ロスが増えます。

セブンイレブンでは、1日3回や、場所によっては4回の、惣菜・弁
当の補充を細切れにしています。これは店頭の商品ロス率を5%以
下に減らすためです。

リテイルサポート型のサプライチェーン卸であるセブンイレブンで
の、店舗段階の値入率(値入額/売価)は、売価の15%程度です。

5%、つまり、20個に1個の、お弁当やおにぎりが、消費期限切れで
廃棄されると、売上に対して10%のコストがかかる店舗での利益は、
出にくくなります。これが、店舗配送のコストをかけて、高頻度補
充している理由です。

まとめれば、食品スーパーの生鮮(精肉、鮮魚、総菜、弁当)は、
・店内調理・加工では、生産コストが上がるが、商品ロスは低い。
・P/C調理・加工で、生産コストは下がるが、商品ロスが高い、と
いうディレンマをかかえているのです。

具体的な、当方の試算で言うと以下です。

いずれも、店頭売価に対する%です。惣菜・弁当のケースとします。
(注)鮮魚、精肉でも試算しましたが、煩雑になるので本稿では省
きますが、傾向は同じです。

▼現状の店内調理・加工とP/C加工・調理のコスト率比較

(1)店内調理・加工での原価はほぼ88%:
原材料(45%)+加工費(35%)+店頭商品ロス(8%)=88%

(注)加工費は、人件費+パッケージ費+設備・機械費+電力費で
す。店頭での商品ロス(値引き+廃棄)も、原価に入れる必要があ
るでしょう。

原価が88%になるため、他の店舗コスト(売り場での鮮度管理と陳
列)で売上の12%以上かかると赤字になります。

(2)P/C調理・加工での原価もほぼ88%:
原材料(45%)+加工費(25%)+物流費(3%)+店頭商品ロス
(15%)=88%

これは多種のデータから、当方で推計したものです。実は、店舗に
とって、生産、流通、商品ロスの3要素がからむ生鮮のコスト構造
は、「闇」であることが多い。

店内加工とPC加工には、どちらがいいかという利益的な優位点はな
い。

ただし、この条件は、店舗年商が約20億円で、日販が550万円、来
店客数が2750人(顧客単価2000円)と、比較的よく売れる大型店
(500坪から600坪)です。

会社によって、生鮮のコスト構造には、大きな、ばらつき(標準偏
差の大きさ)もあります。それに、精肉の加工・生産コストは、現
場の職人さんが、明らかにしないことも多い。

【店舗年商と、店内調理・加工の採算点】
SMの店舗年商が12億、10億、8億と小さくなると、店内調理・加工
は、惣菜の1品売れ数が減って生産コストが上がるので、採算にの
らなくなります。

お弁当や惣菜の店内調理・加工のギリギリの採算点は、店舗年商
15億円で、1日の来店客数で2000人でしょう。これは精肉、鮮魚も
同じです。

2000人以下では、お弁当・惣菜1品の売れ数が減って、店内調理加
工の、同じ品目の生産量が小さくなって、生産コストが上がるから
です。

一見して店舗売上が低く見える郊外の、古いSMに行くと、無理をし
て、店内調理・加工を、時給800円くらいのパートのひとびとが行
っています。それをみると、哀しくなります。

生産性が低いと利益が出ず、賃金も上がらないからです。推計では、
わが国のSM、1万3000店のSMの、40%(5200店)が赤字か、スレス
レでしょう。

売上の60%から70%を占める生鮮・日配で利益が出ないと、店舗も
赤字です。利益を上げる仕組みを、考えねばならないという気分に
なるのです。所得は需要です。所得が増えないと、消費需要も増え
ないからです。

■4.RFIDを使うリアルタイム鮮度管理によるP/C生産

経営者が、生産性が低いとは思っていても、店内調理・加工が行わ
れている理由は、P/C生産~補充では、店頭在庫の鮮度の、リアル
タイム把握ができないからです。(注)P/C=プロセス・センター
:生鮮の調理・加工を集中して行うセンター。外食産業のセントラ
ルキッチンにあたる。

このため、売り場からの発注によって、P/C生産が行われています。
しかし、P/Cで生産して、P/Cから補充する惣菜・弁当では、売り場
段階で、売上比15%の商品ロスが出ているのです(1日1回補充の場
合)。

鮮魚でも12%です。消費期限が3日ある精肉では7%と多少、少ない。
消費期限1週間と長いものが多い青果ではもっと少なく3%でしょう。

▼陳列商品にRFIDを添付して、P/C生産を行った場合の、原価構造

RFIDを商品に添付しておけば、P/C(プロセス・センター:食品の
調理・加工をするセンター)では、個々の商品の店頭在庫と消費期
限情報をリアルタイムに集計し、生産・加工量を決めることができ
ます。

自社P/Cが、リアルタイム情報をもとにした、サプライチェーンに
なり、店内調理・加工と類似する、複数回の棚補充も可能になりま
す。

消費期限が1日で、翌日には持ち越せない、惣菜・弁当、鮮魚の補
充の、ロジックは以下です。(注)結論だけを言います。これは当
方で、標準偏差乱数を使いシミュレーションして、導いたものです。
指数平滑法を修正して、使っています。

●最適出荷数=前回出荷数+0.3×(時間内売れ数-前回出荷数)
+(残品がゼロのときのみ、その売れ数の10%を安全在庫に加え
る)

残品が2日は持ち越せる精肉の、最適出荷数は以下です。

●最適出荷数=前回出荷数+0.3×(時間内売れ数-前回出荷数)
+(繰り越し予定数-前回からの繰り越し有効在庫+今日の売れ数
×0.08)

このロジック(計算法)は、コンピュータに組み込んでおき、売り
場のRFIDからの商品情報をリアルタイムで受け取って、店舗別、棚
別、品目別の、最適補充数を自動計算して、ガントチャート形式で、
P/Cの画面に表示します。

P/Cでは、品目別の最適補充数を見て、調理・加工して、出荷しま
す。

RFIDを使った場合の、総菜・弁当の原価コストは以下になります。
いずれも売価に対する%です。売価は同じとします。

●RFID総菜の原価構造=原材料費(45%)+加工費(25%)+物流
費(3%)+店頭在庫ロス率8%=81%

【現状のコスト】
現状の店内調理・加工、およびP/C調理加工~補充物流とコスト比
較してみます。

(1)店内調理・加工での原価はほぼ88%:
原材料(45%)+加工費(35%)+店頭商品ロス(8%)=88%

(2)P/C調理・加工での原価もほぼ88%:
原材料(45%)+加工費(25%)+物流費(3%)+店頭商品ロス
(15%)=88%

結果は、総菜・弁当の売上対比で、約7ポイント(%)も利益が改
善します。これは大きい。

試算では、消費期限が1日の鮮魚では、店内加工に対して8ポイント
(%)、P/C加工に対して4ポイント(%)の利益がプラスされます。

消費期限が3日の精肉では、店内加工に対して3ポイント(%)、P/
C加工に対しても3ポイント(%)の利益がプラスされます。

消費期限が1週間と長い青果に対しては、さほどの利益改善はあり
ませんが、売り場で、在庫管理をするための人的なコスト(青果売
上比で3%程度)が必要なくなるので、その3%分、部門利益が改善
するでしょう。

店頭在庫管理をするための人的なコストの減少は、店舗の総菜、鮮
魚、精肉の売り場でもほぼ同じです。

以上を合計すると、売り場の人的生産性と利益面では「革命的」な
効果を上げます。店舗で在庫管理をする必要がなくなるからです。

グロサリーもRFID管理をすれば、
・売り場での在庫管理は必要がなく、
・
・陳列作業とレジのみになって、
店舗要員は、30%は減らせるでしょう。これは、人的生産性が30%
上がることでもあります。

このコストダウンの分を、商品価格の低下に使えば、「ディスカウ
ントストア」以下の、平均価格になり得ます。

世界で、もっとも店舗の粗利益率が低いのは12%から14%のコスト
コです。4000円の年会費が利益の補充になっているので、実際は
15%から17%でしょう。

コストコ(米国ではコスコという)は、パートの時間賃金も、雇用
後1年で2000円に上がります。生産性が高いので、賃金も2倍にでき
るのです。

RFIDは、わが国食品スーパーに、このコストコ並みの、コスト構造
と利益をつくる方法になると思っています。

■5.RFIDの有効範囲:ソース・マーキングを推進すべき卸

RFIDの有効範囲は、生鮮食品で劇的ですが、グロサリー・飲料でも
効果をあげます。店舗段階の、陳列在庫数管理が必要なくなるから
です。

●自社でD/C(集荷/配送センター)をもてば、P/Cで店舗の棚の
RFID情報をリアルタイムで集信し、必要な最適補充数が自動計算で
きるからです。

これによって、店舗要員のほぼ30%の作業がカットでき、人的生産
性は、30%上がるでしょう。賃金も、平均水準を15%底上げできる
余力がでます。

●週間補充数=(7日+1日)×平均日販数+2×日販数の標準偏差
×√8-有効在庫残数・・・標準偏差=0.4×平均日販数、としてよ
い
=8×平均日販数+2×0.4×平均日販数×2.8-有効在庫残数
=8×平均日販数+2.24×平均日販数-有効在庫残数
=10.24×平均日販数-有効在庫残数
≒10.2×平均日販数-有効在庫残数

難しく見える週間補充の最適値計算も、日販数の標準偏差を、平均
売れ数の40%とすれば、計算式は<10.2×平均日販数-有効在庫残
数>と超単純化します。

標準偏差は、その都度の計算は要らず、平均日販数の30%から40%
の固定値で十分です。(注)当方で、エクセルを使い、標準偏差乱
数(需要数推計)でシミュレーションした結果です。

店舗の棚の、在庫情報をRFIDで集信して、この算式で自動計算させ
れば、最適な補充数が、D/C(集荷/配送センター)の画面にでます。
あとは、必要な商品をピックして積み付けし、定期に補充配送する
だけです。

(注)なおこの週間補充を、週2回(月曜朝+金曜朝)行うと、カ
スケード型(連続補充)になり、発注日前の陳列棚の空きを、なく
すことができます。

RFIDは、食品スーパー、ドラッグストア、コンビニだけではなく、
非食品の家庭用の消耗財(洗剤、化粧品)でも、もちろん有効です。
医療用の処方薬、そして多様な品目がある、診療材でもいい。

病院での医薬の在庫管理も、設置型RFIDリーダーで、一瞬で終わり
ます。薬剤師さんが行っている「医薬と診療材の在庫管理の手間を
なくす」と言っていいのです。医療用医薬は、政府保険価格では、
8兆円(医療費40兆円の20%)という巨大マーケットです。

これはサプライチェーンの上流の、医薬品卸が、RFIDをソース・
マーキングして、推進すべきことです。ケース単価が8000円と高い
医薬では、1個5円のRFIDは、なんでもない。作るべきは、RFIDを使
うサプライチェーンの仕組みです。

ドラッグストア向け卸、および食品卸の大手も、全食品の、店頭で
の自動在庫管理ができるRFID化を推進すべきでしょう。自社商品の
競争力を高めるからです。サプライチェーンは、店舗の人的生産性
と利益を高めるために、行うべきものです。

店舗での商品管理、在庫管理の自動化は、店舗利益をほぼ3ポイン
ト(%)は高めるからです。

【後記】
無料版の作成と送信に間隔があき、申し訳なく思っています。
可能な限り、配信できるよう努めます。

AIは、急速に産業革命をもたらすものになってきました.


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<8784号:金本位に向かう中国:詳細論完結編;人民元と米ドルと
無国籍通貨のゴールド(5)>
  2017年4月26日:有料版

【目次】
1. 中国の、人民元発行の、構造的な矛盾
2.ドル準備制の矛盾
3.G20に提出された周小川論文
4.金本位停止後のドル基軸をまもってきた国
5.ドルの反通貨である金の、1980年からの動き
6.金価格の動き
7.2010年からの、突出した中国の金購入
8.金本位とはどんな制度か
9.円での金準備制の事例

 <8794号:憲法記念日の憂国の情完結編;人民元と米ドルと無国
籍通貨のゴールド(5)>
       2017年5月3日:有料版

【目次】
1.国債市場を消滅させた日銀
2.金融機関の国債売却の利益は、同額の日銀の損
3.国債の売買がゼロになった
4.株式市場での異変も日銀が引き起こしている
5.インフ目標2%はどこへ消えた?
6.幻想の出口政策

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