欧州の銀行危機は、世界の経済危機に至る(1)
Written by admin on 2011年10月19日 – 09:00
おはようございます。南欧と東欧で生じた不良債券が、欧州の90銀 行の危機を招聘(しょうへい)しています。 10月半ばに、短期資金の調達難から破産し、即刻に国有化されたベ ルギーの大手銀行デクシアは、2011年7月のストレス・テストでは 「問題なし」とされていました。不安がないとされた銀行が、わず か3ヶ月後に破産しています。こうしたところが、欧州銀行の問題 です。 金融機関が抱える不良債券が、現在も、不明です。銀行自身は、必 ず100%の確率で「問題はない」と言います。EU当局の調査も、問 題がないと発表します・・・問題がないのに破産する。不良債券の 、デリバティブを使った相互隠蔽と飛ばしがあるからです。 たとえば、債券の回収を保証する保険「CDS」をかけていれば、そ の債券はリスクのない AAA格の債券として、自己資本を計算す るとき、リスク資産からマイナスできます。 政府当局によって、銀行の自己資本比率は、「自己資本額÷リスク 資産額」で計算すればいいとされています。リスク資産は、回収で きない恐れのある貸付金や、価格変動のある株式、社債等です。ユ ーロ国債は、従来は、ノンリスクの債券とされていました。 A行とB行が、それぞれ、1兆円のギリシア国債(またはPIIGS債)を もっているとします。お互いに、1兆円のギリシア債に対し、CDSを 掛け合っているとします。その1兆円(合計では2兆円)のギリシア 国債は、市場で5000億円(合計1兆円)の価格がつかないとしても 、1兆円(合計2兆円)の価値があるとされます。 保証し合っていれば、お互いが同額のリスクを負っているため、本 来は、保証が無効です。ところがA行またはB行のバランスシートだ けを見れば、5000億円に下落したギリシア債も、他の銀行が保証す るため、見かけ上は1兆円の価値があるものになっているのです。 (注)CDSをかけた相手先は、市場で転売されているため見えにく い。CDSも、独立したデリバティブ証券です。 こうした計算での、ストレス・テスト(公的機関による資産査定) です。 借金では、返済の満期は、毎週訪れます。上記事例の1兆円のギリ シア債(2兆円)のうち、2000億円(1/10)が満期になると、ギリシ ア政府は払えません。A行とB行は、同時にお互いの1000億円を保証 せねばならない(両行で2000億円の損失)。ところが、それを支払 えない。これが銀行危機になります。 現在のユーロでは、国債の金利でほぼ5%を超えると、新規国債や 借換債に、発行難が生じます。その買い手である銀行がないという 事態です。このため、発行国はデフォルト(債務不履行)に向かう 。PIIGS債は、EU当局が資金支援を続けない限り、満期での償還が できません。 PIIGS債と東欧債の下落は、個々の銀行の不良債券問題ではない。 欧州の銀行全体の、連鎖するに問題なっているのです。 2008年9月の米国発の金融危機(リーマン・ショック)でも、こう したCDSの掛け合いの構造と子会社への飛ばしが、大手銀行全部の システミックな危機を生みました。そのため、米政府とFRBは、即 刻、$2兆の支援資金を拠出したのです。危機の波及が早かったか らです。 この経験があるにもかかわらず、欧州の当局は、単独の銀行でのス トレス・テストで「問題なし」としています。合格の烙印を押され た銀行が、わずか3ヶ月後に破産する。これがデクシアでした。 欧州の銀行によれば、「われわれは、不良債券を正直に出して、米 国ファンドによる買収の餌食にはなるような馬鹿な真似はしない」 ということです。このため、危機は隠されて、ギリギリで露呈する 。 2011年10月18日、EU当局は、金融危機に対し、総額で2兆ユーロ( 円換算で210兆円)を準備する予定とされています(英紙ガーディ アン)。これが、欧州の銀行に、現在必要な資金額を示すものでし ょう。 準備する予定ですから、未確定です。今後の問題は、どこが$2兆 の巨大基金を拠出するかです。フランスは、国債が格下げされ、経 常収支も赤字であるため、資金を出す力はありません。出せる国は 、ドイツだけです。もともと、PIIGSの底なし救済に反対している ドイツの国会が、合意できるでしょうか? 仮に、2兆ユーロで、欧州金融安定化基金が作られたにせよ、それ でも不足します。2兆ユーロの基金構想が出る背景は、PIIGSの国債 で、すでに発生している不良債券が100兆円、東欧国債での不良債 券が100兆円とみられていることを示すでしょう。 金融機関の不良債券の認定については、世界で共通に、特徴があり ます。政府が、対策資金を準備できる金額が、総体の不良債券額と されることです。 理由は、対策資金が準備できないとき、銀行の不良債券を公表する と、預金取り付けと投資資金の引き揚げが起こって信用システムが 崩壊するからです。信用システムは、経済へのマネー供給のシステ ム(体系)です。 銀行は自己資本が8%と言っても、92%は預金や他の銀行からの負 債です。100兆円の資産の銀行で、10%の預金(10兆円)が引き出 される勢いになるとひとたまりもない。銀行は、自己資本をなくす 債務超過ではつぶれませんが、10%の資金引き揚げで破産します。 この点が、普通の企業と違う点です。 負債を運用するのが銀行です。 粗利益は、[運用利回り―(調達金利+不良債券)]です。 不良債券の割合が、総資産の1%を超えると、赤字になります。2% を超えれば、経営危機です。危機になった銀行は調達金利が上がり ます。調達金利が3%を超えれば、破産です。調達金利の高騰は、 その銀行への貸付にかけられるCDSの料率でわかります。 PIIGS債や東欧債の下落が、欧州銀行(ユーロ+英国)にとってい かに重いか、これでわかるでしょう。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <560号:欧州の銀行危機は、世界の経済危機に至る(1)> 2011年10月19日号 【目次】 1.銀行の危機が、経済の信用収縮から恐慌になるメカニズム 2.PIIGSの国債価格の下落は、どこで収束するか? 3.ECBが、PIIGS救済資金を印刷すればどうなるか 4.輸出国の中国は、GDPの伸び率低下とバブル崩壊へ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.銀行の危機が、経済の信用収縮から恐慌になるメカニズム 銀行システムは、その全体でマネー創造を行っていて、その創造し たマネーを経済に供給しています。その仕組みを、述べます。 A銀行に100億円の預金があるとします。A行は預金に対しては利払 いをせねばならない。このため、その預金を、貸付や証券の購入と して運用します。預金引き出しに当てるための準備預金を5%とし ます。 A行は95億円を、B会社に貸し付けます。B会社は、その95億円で設 備投資をします。設備投資の代金95億円が、C建設の預金口座に振 り込まれます。 C建設は、D行に預金口座をもつとします。A銀行からD銀行に振り込 まれた95億円は、C建設がもつD銀行の預金になります。D銀行も、A 銀行と同じように、5%の準備預金を残し、90.25億円をE会社に貸 付します。証券の購入でも同じです。 銀行システムのなかで、最初の100億の預金は、100億円÷準備率5 %=2000億円の、「預金=貸付金(または証券購入)」に膨らみま す。 システムの全体を見れば、最初の預金100億円によって、1900億円 ものマネーを創造しています。預金の100億円が、1900億円の貸付 金(あるいは証券購入)になったということです。 銀行システムのなかで、A銀行が100億円の不良債券(つまり損失) を抱えるとどうなるか? A行の100億円の貸付能力がなくなります 。 これによってチェーンの鎖が切れたように、残り1900億円のマネー 創造の全体システムが途切れます。こうなると銀行は、民間経済か ら1900億円を回収せねばならない。具体的には、企業への貸付金の 回収や、保有証券を売らねばならない。 銀行が、手持ちの証券(国債、株、社債)を売れば、国債金利の高 騰(国債価格の下落)、社債金利の高騰(社債価格の下落)、株価 の暴落になって、その下落のため不良債券額は一層膨らみます。 銀行の不良債券は、その金額の10倍から20倍の信用収縮を引きおこ します。これが、商品生産と流通の実体経済に恐慌を招く「信用収 縮」です。信用収縮はマネーの不足です。このため、企業の購買と 販売活動が低下する。売上が減るということです。 仮に、PIIGS債だけで、欧州の90行に合計100兆円の不良債券が確定 すれば、全体で1000兆円~2000兆円の、信用収縮に向かうはずです 。これは、欧州の経済恐慌になり、欧州経済がGDPで10%も縮小す れば世界恐慌を招きます。 欧州の予想GDPが仮に10%も低下すると、前もって証券(国債、株 、社債)の暴落が起こって、それが世界の信用収縮になって拡大さ れます。(注)証券価格は、予想で決まります。 近代の銀行システムが、上記のように「100億円の預金(負債)が 、2000億円の総預金(総負債)になるレバレッジ構造」をもってい るために生じる恐慌です。 世界の、世帯がもつ金融資産(預金、株、保険、国債、社債)は、 世界のGDP(5000兆円)の3倍の1京5000億円に膨らんでいます。 この世帯の金融資産を、銀行・金融機関が、負債として預かって運 用しています。私的な投資信託であるヘッジファンドの運用預託金 ($2兆の元本)も同じです。 皮肉なことですが、世帯の金融資産が膨らんだために、金融機関・ ファンドの負債も膨らんでいます。このためどれかの債券が常に、 暴落する危機の構造を内包してしまったのです。 たとえばPIIGS国債や東欧債を買ったのは、ドイツ、フランス、英 国の銀行です。運用すべき預金が増えるため、もともと経常収支の 赤字体質で返済と利払いが無理だったPIIGS国債や東欧債に、資金 が流れた。 ローンの支払いが無理だったサブプライム・ローンを作って、貸し 付けた住宅金融と同じです。 2000年代の銀行システムは、1国を超えたグローバル化という特性 を加えています。欧州、米国、日本、中国、インドが、債券でつな がっています。このため欧州の銀行危機が、世界の信用危機になる 。欧州と米国の銀行の不良債券は、世界経済への破壊力をもってい ます。 欧州の銀行危機が報道の表面に出ているため、米国銀行の不良債券 問題は隠れています。しかし、住宅と商業用不動産価格は底打ちし ていないため(ケース・シラー指数)、米銀の不良債券は今も隠れ て拡大中です。 住宅ローンが降りるのは、優良な人でも、5人にほぼ1名です。住宅 証券、不動産証券(RMBS、MBS)は下落中なので買い手がない。買 い手がなければ不動産資金は供給されません。住宅と不動産価格は 、売り手より買い手が増えないと、底打ちせず上がりません。 住宅寿命が60年と日本の2倍長いため、米国の住宅販売の主流であ る中古住宅の在庫は8.5ヶ月分もあります。通常の在庫である4.5 ヶ月分の約2倍です。売りが多いため、住宅価格は、まだ下落して います。新たなローン資金が供給されないと、住宅価格は下がり続 けます。米国の住宅関連証券は、$11兆(880兆円)と、米国債( $14兆)並みに巨大です。 これを示すのが、米国最大の銀行バンク・オブ・アメリカの倒産水 準を示す株価$6です(2011年10月)。米銀株は、$20を割ると、 借り換えの社債が発行できないため、資金危機になります。 ■2.PIIGSの国債価格の下落は、どこで収束するか? ユーロの不良債権問題が、米国や日本より深刻な理由は以下です。 PIIGS諸国は、その経済の実力より高いユーロ建ての対外負債であ ること。対外的な経済の実力は、経常収支です。貿易収支と観光収 支、そして海外からの配当・金利の収支を加えたものです。 【PIIGSの経常収支の赤字:2011年:推計ですが偽装分あり】 イタリア $782億(GDP比 -3.4%) ギリシア $261億(同 -7.3%) スペイン $582億(同 -3.6%) ポルトガル $209億(同 -8.6%) アイルランド $39億(同 -1.5%) 国の経常収支が赤字であることは、海外から(ドイツ・フランス・ 英国・米国等)からの資本提供、つまり追加の貸付が必要であるこ とを示します。企業の、キャッシュフローの赤字と同じです。 経常収支が黒字に転化しない限り、対外債務が膨らみ続けることし か方法はない。経常収支が黒字にならないと、利払いと返済ができ ないのです。 PIIGSは、強い輸出商品がありません。観光収支での黒字しかない 。このためには、PIIGSの通貨が下落することが必要です。リラ( イタリア)、ドラクマ(ギリシア)、ペセタ(スペイン)、エスク ード(ポルトガル)、アイルランドポンドに回帰し、通貨が30%~ 50%下がらねば、ドイツ、フランスからの観光はいま以上には増え ず、ドイツ、フランスへの輸出も増えません。PIIGSにとってユー ロでは高すぎるのです。 なおユーロが下がったとは言っても、ユーロ圏内(対ドイツやフラ ンス)に対しては、同じです。PIIGSはユーロに属するなら賃金と 年金を、30~50%も下げる必要があります。政治的に不可能でしょ う。 ユーロに属する限り、PIIGSの経常収支が黒字へ転化することはあ りません。このため、PIIGSの国債危機は、月を追って深まります 。 EUが救済資金をいれても貸付金であり、一時的には国債価格の下落 が止まっても、それは後で返済と利払いが必要です。当座の資金繰 りを助けても、長期的には、対外負債が増えることです。負債の増 加でより大きくなった危機が、先送りされます。 企業を救済するとき、政府が緊急資金を貸し付けても、その後、リ ストラや賃金の切り下げによって、利益で黒字にならないと助かな いのと同じです。 ユーロに属し続けるなら、 (1)PIIGS国債をデフォルトさせ、対外債務をカットを施して、 (2)損をするフランス・ドイツ・オランダ・ベルギー等の銀行に 、政府が、必要な救済資金をいれるしかない。 その資金は、ユーロの印刷でしょう。 つまりECBによるユーロの印刷です。 ■3.ECBが、PIIGS救済資金を印刷すればどうなるか 現在、ユーロの物価上昇は2.5%です。昨年が1.6%でしたから、 約1%上がっています。インフレと言っていいでしょう。他方、ユ ーロの長期金利は1.77%と低い。ユーロ国債の金利の低さを示し ます。 国債金利は、実質GDPの期待成長率+期待インフレ率+国債の信用 リスク率で等価です。信用リスク率はCDSの料率ですから、フラン ス国債のCDS 1.6%(11年8月)を採用したとします。 これをユーロ17ヵ国に当てはめれば、[実質GDPの期待成長率(1. 6%)+期待インフレ率(2.5%)+ユーロ国債の信用リスク率(1 .6%)=5.7%]で等価になります。 利回り5.7%でなければ買われないはずのユーロ債が、1.77%と いう低い金利で買われ、保有されています。ユーロ国債の総額は、 17ヵ国のGDPの1年分で$14兆(1120兆円)はあります。 ユーロ債の金利が低いのは、欧州中央銀行(ECB)が、08年9月の金 融危機以降、量的緩和、つまり国債を買ってユーロを印刷すること を行っているためです。 欧州ECBの資金供給量は以下です。 2011年8月 2006年1月 2000年1月 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 32.8兆ユーロ 23.9兆ユーロ 15.6兆ユーロ (347兆円) (253兆円) (165兆円) ↑ ↑ ↑ 現在 住宅価格下落前 ユーロ発足時 http://www.ecb.int/stats/money/aggregates/bsheets/html/outstanding_amounts_index.en.html 17ヵ国の中央銀行の合作で作ったECB(欧州中央銀行)は、もとも と、信用基盤が脆弱でした。ドイツ一国の経済力に支えられていた と言っていいのです。 ただしユーロの加盟条件は、GDP比での政府財政赤字が3%以内とい うことでした。このためユーロ債は、安全債券として海外から高く 買われていたのです。これが、ユーロ高でした。国債の信用は、政 府の財政赤字が低ければ高く、GDP比での赤字が大きければ低くな ります。 ところが、08年9月の金融危機以降、加盟条件だったGDP比での政府 財政赤字3%は、ドイツ(財政赤字はGDP比1.7%)以外は守れない ものになっています。 加えて、現在、ユーロの長期金利は、1.77%と低い。これは、ユ ーロ国債の妥当な金利5.7%に比べて4%も低いのです。以降で、 日・米・ユーロを比較します。なぜ、スイス・フランと円が買われ たかの理由もこれでわかります。 実質GDP CDSの 妥当な 実際の長 期 期待成長率 物価上昇率 保険料率 国債金利 国債金 利 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 日本 -1.1% 0.5% 1.0% 0.4% 0.97% 米国 +1.5% 3.8% 0.5% 5.8% 1.87% ユーロ +1.6% 2.5% 1.6% 5.7% 1.77% ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 理論的に妥当な国債金利は、日本が0.4%で、実際の長期国債の金 利は0.97%です。日本国債が、2011年に海外からも買われ、円高 になっている理由がこれです。 日本の国債金利は、スイス(1.00%)と並んで世界最低に低い。 しかし、妥当な理論金利よりは、高いのです。これが1%台と金利 の低いスイス・フランと円が買われた理由でもあります。 他方、ユーロは妥当な国債金利が5.8%です。実際の長期国債の金 利は1.87%と4%も低い。これはユーロ債(たとえば、ユーロで平 均的なフランス債)を持てば、1年に4%も損をする可能性があるこ とを示します。ユーロが売られる理由がこれです。(注)米国もユ ーロと並びます。 こうした状況は、欧州中央銀行(ECB)によるマネーの「過剰印刷 」を示します。本来は、5.8%に向かって上がるべきユーロ金利が 、1.87%と低いのは、ECBによる国債買いへの介入のためです。( 注)米国も同じです。 現在の状況が以上であるのに、ECBが、PIIGS救済と欧州銀行救済の 資金作りのため、ユーロ国債をさらに買って、マネー印刷を増やせ ばどうなるか。 ユーロは一層売られて、ユーロ債が下落し、金利が上がります。通 貨の下落はその国の債券(国債)が売られることであり、ユーロか らのマネーの流出を意味します。通貨安の結果は、印刷して増加す るように見えたマネーが増えないことです。 世界の外為市場での通貨の売買は、1日で500兆円、円・ドルの交換 だけでも58兆円と巨額です。中央銀行のマネー印刷の効果を、すぐ に消してしまうくらい、その国の通貨が売られます。 現在以上の欧州中央銀行(ECB)によるユーロの印刷は、市場での ユーロ売りで無効になるでしょう。ドイツが資金拠出するしか方法 がないのです。 ガーディアン紙が報じた2兆ユーロ(210兆円)の、欧州安定化資金 を、ドイツの国会が承認する見込みは、薄いと見ます。ドイツ国民 にとっては、PIIGSのために、自国のマネーを拠出する損失になる からです。 (注)IMFは、PIIGS債のための必要資金を21兆円としていますが、 必要な欧州安定化資金はその10倍です。なぜ、こんなに大きな見積 もりの差があるのか? 銀行の資産査定が、いい加減なためです。 日銀や米国FRBに援助を求めるにせよ、その可能額は、数十兆円で しょう。近々、イタリアとフランス国債の下落を起点に、ユーロ暴 落が起こりそうな感じです。 ■4.輸出国の中国は、GDPの伸び率低下とバブル崩壊へ 中国のGDPは$5.9兆(2010年)で、2011年には日本を超え、世界2 位になっています。中国経済の特徴は、輸出依存です。同年の輸出 額は$1.6兆で、GDPのうち27%を占める高さです。日本GDPの輸出 依存度は67兆円でGDP比14%です。 これは、輸出の工場に従事する労働人口が、総労働(8億人)のう ち27%、つまり2億1600万人付近であることを示します。米国やユ ーロの総労働者とほぼ等しい人たちが、沿岸部の輸出工場で働いて いるといえば、その巨大さがわかるでしょう。 元に対するユーロ安、およびドル安は、中国の輸出額の減少を示し ます。2011年7~9月期の、中国GDPの増加は9.1%と鈍化傾向です 。 (注)中国のGDP数値は、あまり信用できません。発表が早すぎま す。どう計算しているのかと疑問に思います。地方政府は、GDPの 増加率が、共産党での成績になるからです。相当に、計画数値が混 じっています。 9.1%のGDP増加は高く思えますが、中国にとっては、そうでもな いのです。労働者が1年に2000万人増え、沿岸部に押し寄せる構造 のためです。 労働人口8億人の平均賃金の上昇を1年に6%とします。これに、労 働人口の2000万人増加が加わると、労働力の増加要因によるGDP増 加が2000万人÷8億人=2.5%です。6%+2.5%=8.5%です。こ れが、中国のGDP増加の必要値になります。 2010年のなか国の失業率は6.1%という政府発表です。実際には、 もっと高く、米欧並みに10%を超えていると見ます。都会で失業し 、内陸部の農村に帰れば、一家の農業で働くため、失業ではなくな るのです。都市部の失業者とされる6.1%(6400万人)は、帰農で きない人、あるいは帰農しない人たちでしょう。 中国の輸出の最大の顧客は、米国ではなく欧州です。金融危機によ る欧州の不況化は、中国の輸出にとって、大きな打撃になります。 輸出は、GDPにおける乗数効果が2倍くらいあります。GDP比で27% のなか国の輸出が、仮に25%に減ると(2%でごくわずかに見えま すが)、中国のGDPにとっては4%のマイナス要素になってしまいま す。 以上は、2012年に、中国のGDPが現状の9%から4%に減速し、5%に 落ちる可能性を示します。GDPが5%の増加に低下すると、増加労働 人口の2000万人を吸収することができない。(注)たぶん、中国政 府のGDP発表では、矛盾したデータが出るでしょう。 実質GDPの成長が5%に鈍化すれば、都市部失業者の、現在の6400万 人と合わせた、2000万人の都市流民の増加です。失業や医療保険の 社会福祉は発展途上で、十分ではない。エリートである共産党員以 外は、失業すれば、所得がなくなる人が多い。成長率の鈍化による 失業の増加は中東諸国のような、 社会革命への動きが起こる可能 性も生みます。 08年9月の米国金融危機以降の、政府資金4兆元(50兆円)投入と低 い金利策(長期金利4.02%)のため、不動産が上がって、不動産 の価格バブルは、極点まで行っています。 物価の上昇も6.6%と、金利より2.6%も高く異常な状態です。政 府は金融を引き締め(利上げをして)、経済を減速させねばならな い。いまのまま、不動産が上がり続ければ、膨らみすぎた風船の破 裂の衝撃が、大きくなり過ぎます。 日本どうなるか。増刊として送ります。 【後記】 新刊書は、たぶん来週、当方が最終校正をし、その後、印刷です。 出版は最速でも、原稿を書き終えてから、書店に並ぶまで1ヶ月は かかります。数件のお問い合わせをいただいていますが、いましば らくお待ちください。 スピーカーの改造を続けています。行き着くところがない。頼りは 自分の耳の聞き分け能力です。いずれ、まとめて書きます。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【ビジネス知識源プレミアム・アンケート:感想は自由な内容で。 以下は、項目の目処です】 1.内容は、興味がもてますか? 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