日米欧の中央銀行が、同時にマネーを刷り始めた
Written by admin on 2012年2月22日 – 09:00
おはようございます。今日は、久しぶりに、経産省主催の研究会での講 演です。日本の、流通・小売(卸と小売)が、今後もつべきビジョン( 戦略の方向)について大枠を話し、参加される識者30名くらいとのディ スカッションです。 ▼「ビジョン」のこと 今、大手の製造業と小売は、ともに、将来ビジョンを喪失しているよう に見えます。ビジョンは、実現したいと思う意志が描くものです。「5 年後、10年後に、こうなりたい」という会社の姿でもあります。 米国と欧州ではビジョンは自社で作るのですが(アニュアルリポートに 表現します)、日本では、政府が産業のビジョンに関与することがあり ます。奇妙ですが、そうだったのです。今後はどうか? 人間にとって過去は変えられません。過ぎ去った過去は固定しています 。しかし人は、過去からの制約条件(資本、設備、組織、人材の限界) の中で、こうありたいと願うビジョンを作り、その方向の実現に向かう ための戦略(=方法)を作って、実行することができます。 動物が、DNAに組み込まれた本能でしか動かないのに対し、人間は自分 と会社の未来を考え(ビジョン)、その未来の実現型を想定できます。 ビジョンがないと、「生き残り」のための凌(しの)ぎが経営になって しまうのです。 マルクスはどこかで、「人は自分自身の歴史を作る。自由にではない。 過去からの制約条件の中で、未来を考え、その未来を、作ることができ る。これが、自分の歴史である。」という主旨を述べています。人も企 業も、同じです。 ▼本稿のテーマ ◎本稿のテーマは、政府部門に属する中央銀行の、日・米・欧同時の、 マネー印刷です。 もちろん今は、目に見える紙幣の増発はしません。コンピュータでの、 銀行預金(中央銀行にもつ当座預金)への振り込みです。 マネーが紙幣ではないので、1億円で10Kgの大型バッグ、1兆円でその 1万倍の100トンもの嵩と重量がある紙幣は、見えません。しかし、その 効果は同じです。 昨年11月に、日本政府(財務省)は、円高阻止のため緊急に9兆円ドル 債買いをしています。 2011年の1年間で言えば、財務省が管理する外貨準備高は、$1兆から$ 1兆2958億(2011年12月末)に増えています。 2011年の1年間で、約$3000億(24兆円)の、円売り・ドル買いの為替 介入を、政府がしていたことになります。(2ヶ月も後にやっと分かる ので始末が悪い。) 24兆円は、1万円札の重さで2400トンです。2400トンの積載量の船で、 米国に円を運び、ドル国債を24兆円買ったことと同じです。 もちろんこの米国債の買いは、ドル国債を発行する米国政府とドル国債 を買っている内外の金融機関に、24兆円を与えることと同じです。 政府財政が赤字で、消費税を上げねばどうにもならないと、財務省が言 っている裏で、オフショアの投資信託(ヘッジ・ファンド)を使う覆面 介入で、米国債を24兆円分も買っているのですから、恐れ入ります。 もちろん日本政府には、買うお金の余裕はない。 どんな方法で、財務省がドル国債を買うのか? (1)安住財務大臣が、勝次官が持ってくる、合計で24兆円と書いた財 務省短期証券に、大臣印を押します。 この財務省短期証券を、国債を管理している理財局が、金融機関(銀行 ・保険会社)の頭取や役員に買ってくれるよう電話で依頼するのです。 (2)依頼ではない。事実上の強制です。 これによって、銀行と保険会社の24兆円の円預金が、債務省がもつ日銀 の当座預金に振り込まれます。こうやって得た、財務省の24兆円の円預 金で、ドル国債を買うのです。これが、24兆円の為替介入です。 つまり、国民の預金を国家が使います。すごいことでしょう。 国民には、「24兆円の預金を、ドル国債買いに使わせてもらう」とは、 決して言わない。国会の承認も、要らない。御用化したマスコミも言わ ない。金融と財政に深い知識があるとはまるで思えない安住財務大臣が 、「断固たる措置」と言い、行ったのです。(注)何を使ったのか、本 人に自覚はないでしょう。 (3)銀行と保険会社が「お金がないから、財務省短期証券は買えない 」と言うと、「じゃ、日銀が、あなたの銀行がもつ国債を買って、また は担保として預かって貸し付けるから、買ってくれ。」と財務省は言い ます。 金融機関に円資金が不足すれば、いざというときは日銀が貸す、あるい は金融機関がもつ国債を緊急に買うということを裏付けに。24兆円の円 が、捻出されたのです。 (4)以上の政府の動きが明確になったので、2012年は、民間(金融機 関、投資ファンドと個人のFX)も、円売り・ドル債買い、円売り・ユ ーロ債買いに誘われたのです。 これで$1が80円に上がり(円は下がって)、1ユーロは106円付近に上 昇しています(日本時間2月22日)。 日銀は、これらに対応し、「国債、株、社債」を買う資金枠として、「 資産買い受け基金」を、10兆円増やし、65兆円の枠にしています(2012 年2月)。 同時に、日銀は2012年度には、過去の禁を破って、この基金枠を使って 、「最大40兆円」の長短国債を買い上げるとも言っています。これが、 インフレ・ターゲットの1%目標です。 2012年は、日銀が、最大で40兆円のマネーを増やして刷ることに等しい 。 以上の動きに、米国FRBとユーロのECBも呼応し、同時に、ドル印刷とユ ーロ印刷です。先進国の世界が、一斉に、マネー印刷に向かうと言って いい。3ヶ月先の5月までは、続くでしょう。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <579号:日米欧の中央銀行が、同時にマネーを刷り始めた> 2012年2月22日号 【目次】 1.文藝春秋三月号(2月初旬に発刊)の白川発言 2.2011年の、$1=75円水準だった円高の主因は、ヘッジ・ファン ドの、約30兆円の、日本の短期国債の、買い越しだった 3.重大な事実:三大メガバンクは、すでに国債の買い手ではない 4.2011年9月の、主体別国債保有高:財務省 5.ヘッジ・ファンドが円国債を30兆円売り、実際に日銀がそれを買 い支えれば、どうなるか? 6.消費税増税案は、国会を通らない 7.一般会計と特別会計を含む、国家の資金繰りの現状 8.日本の貿易赤字は、一時的なものではない 【後記】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.文藝春秋三月号(2月初旬に発刊)の白川発言 白川総裁は、月刊誌 『文藝春秋三月号』で、以下の発言をしています 。月刊誌の三月号は、1月の取材記事です(129ページ)。大切なことな ので正確に引用します。()内は、筆者の補いです。「」内が白川総裁 の発言です。 ▼(1)「仮に、日銀が国債を(債券市場を通さず直接に)引きうけた 場合には、日本(政府)は、国債をきっちりと返済する意思がないと、 内外の市場に対して宣言するようなものではないでしょうか。 そうなると、(内外から国債が売られ)やがて、国債金利が上昇します 。金融機関にも(1000兆円の、過去の長短国債の価格下落によって)大 きな影響を与えます。 日本の金融機関は(特に)、自己資本(合計100兆円)との関係で、非 常に多くの国債を保有しています。(注:約900兆円)」 ▼(2)「国債金利の上昇は、金融機関の自己資本を減らすことになる ため、金融機関は、貸出を抑えざるを得なくなります。」(注) リス ク資産に対する自己資本が、最低でも8%必要だからです(BIS規制)。 ▼(3)「すると、(マネーが抜けて低血圧になった)実体経済、景気 に悪影響が出ます。その先には、インフレの問題が出ます。」 (以上で、白川総裁の発言は終わり)。 ●白川総裁は、以上のような「まともな認識」を持ちながら、なぜ、20 12年2月に急転して、「1%のインフレ・ターゲットのために、国債を40 兆円買う」と言ったのか? 謎を解くには、2011年の、国債の投資家別売買の結果を見る必要があり ます。 ●海外のヘッジ・ファンドからの国債売り、または空売り(あるいはオ プション売りや国債先物売り)が襲う事態が、2012年1月から2月に襲う 気配があったからでしょう。 財務省の審議官は、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレー等 に、常時、証拠が残らない電話でヒアリングしています。 ■2.2011年の、$1=75円水準だった円高の主因は、ヘッジ・ファンド の、約30兆円の、日本の短期国債の、買い越しだった 2011年の、わが国公社債(社債は少なく、ほとんどが国債)の売買市場 では、史上初めてと言える、異常なことが起こっていました。 ●外人買い(オフショアが本拠のヘッジ・ファンド)が、1年間の合計 で、129兆円の買い越しだったのです。(日本証券業協会:投資家別売 買↓) http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/toushika/index.html 毎月の売買を1月から11月まで(ほぼ1年分)足すと、外国人の買い超が 129兆円になります。 外人ファンドが売買するのは、満期3ヶ月の短期債です。 3ヶ月債は、3ヶ月後の満期日に、財務省が、額面金額の現金と金利(0 .08%/年と超低金利)を、円の現金で振り込みます。 このため、1年に円国債を129兆円買い越しても、ヘッジ・ファンドが、 現在、増加保有している円の短期債は、129÷4≒30兆円くらいでしょう 。 従来、外人ファンドは、円国債を大きく買い越すことはなかった。 日本の国債は、国内の官民の金融機関が持つとされていました。 日本国債の外人保有は、1000兆円のほぼ6%(60兆円)に過ぎないとさ れてきました。 ところが、2011年は30兆円を増加買いしています。 (マスコミはこれを言いません。言っても、虫眼鏡で見えるような小さ い記事です。しかし意味は、国債価格と金利に係わる重大なことです。 ) とりわけ2011年は、ユーロ債の売り、ドル債の売りで、円の短期債を買 ったのがヘッジ・ファンドだったのです。これが円高、ドル安、ユーロ 安の原因でした。 ヘッジ・ファンドは、元本資金のほぼ30~100倍くらいのレバレッジを かけて買うため(または売るため)、売買額は、大きくなります。 ●短期債で注意すべき点は、買った後、市場で売らなくても、3ヶ月以 内に、円の現金になって戻ってくることです。 戻って来た円の現金で、再び同じ金額の円国債を買わないと、売ったこ とと同じになります。つまり期限が来れば、自動的に売られたことにな ります。 外人ファンド(ヘッジファンドと同じ意味)が、2011年に買い越して増 加保有する約30兆円の短期債は満期(12年1月、2月、3月)には、償還 期が来ます。 お金のない日本政府は、同じ金額の短期国債(借り換え国債)を発行し ます。この借換債の30兆円を、再び外人ファンドが買うかどうか? 外人ファンドが2012年1~3月の借換債を買わないときは、それを日本の 銀行・保険または、日銀が買わないと、国債が売れ残り(未達になって )、金利が急騰します。 2011年2月は、この恐れがあったのです。 (注)財務省が、日本の短期債に対して外人買いが増えたことについて 、「空売り」の準備ではないかと恐れて、2012年1月に、秘密裏の「緊 急会議」を招集していることは、前号、前々号で、書いたことです。 この緊急会議で、日銀による40兆円の国債買いが決まったのでしょう。 ■3.重大な事実:三大メガバンクは、すでに国債の買い手ではない 外人ファンドが、2011年に30兆円の短期債を買い越して保有するのに対 し、従来は円国債買いの大手だった三大メガバンクの、2011年は、逆に 、11兆円の売り越しです(1月~11月の合計)。 http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/toushika/index.html わが国でもっとも資金量が大きな都銀(三菱東京UFJ:みずほ:三井住友 )は、2011年は、長短国債の「売り手」に転じています。 (注)2010年までは、国債の買い手だったのです。売り超に転じたのは 、2010年の8月以降です。毎月、2~3兆円の売り超です。 ・三大メガバンクは、すでに、日本国債の買い手ではない。 ・預金が減り続ける郵貯(国債保有171兆円と最大:11年9月期)も買い 手ではない。 ・年金支払いの増加と、ドル債の20%下落で積み立てていた基金が減っ た年金も、日本国債の売り手になっています。 今買っているのは、財務省の要請に服従する地銀と保険会社です。 ●三菱東京UFJは、「株主総会で、金利が1%上がり、国債の下落損が5 %もあれば、どうするのか?」と言う質問があったとき「答えられない 」として、国債の売り手に転じたのでしょう。 事実、三菱東京UFJは、行内で、「国債価格の下落シミュレーション( ストレス・テスト)」をしています。この結果、行内では「国債買いは 危険」という結論になっているのかも知れません。これは、外部には言 わないことです。聞かれても、否定しています。 (注)三菱銀行は、伝統的に、財務省銀行局(現在は金融庁)の要請に 対し、さほど協力的でないところも見える唯一の銀行でした。 ■4.2011年9月の、主体別国債保有高:財務省 2011年9月時点での長短国債と財投債の発行は、748兆1918億円でした。 (注)政府債務の合計は1024兆円です。719兆円は、財務省短期証券、 政府借入金、自治体の債務を除いたものです。 一体どこが、748兆円の国債を持っているのか? 主体 金額 構成比 2011年の売買の動き ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 銀行 327兆円 (43.5%)→ 都銀は売り超;地銀は買い超 生損保 156兆円 (20.8%)→ 17兆円の買い超 日銀 63兆円 (8.5%) → どこまでも買い超 公的年金 70兆円 (9.4%) → 売り超 年金基金 29兆円 (3.9%) → 売り超 海外 47兆円 (6.3%) → 30兆円の買い超 家計 29兆円 (3.9%) → 0.2兆円買い超(問題外) その他 25兆円 (3.4%) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 合計 748兆円 (100%) (注)データ:財務省 2011年の日本国債は、外人ファンドが、約30兆円の短期債を買い越しに なっています(現在残高は推計)。つまり、ヘッジ・ファンドが、最大 の買い手という従来はなかった変化が起こったのが、2011年です。 言うまでもなく、ヘッジ・ファンドは、ほぼ3ヶ月間の短期所有であり 、日本の金融機関のように長期保有することは、絶対にありません。 ・三大メガバンクが売り手に転じ、 ・ヘッジ・ファンドが30兆円もの買い手になっていたという事実は、今 後、重大です。 ●日銀が、「2012年には40兆円の枠で日本国債を買う」という方針に、 転じたのは、ヘッジ・ファンドの30兆円の短期国債売りを想定したから でしょう。 日銀の方針転換があったのは、2012年2月14日(火曜日)です。 文藝春秋での、白川総裁の「国債買いを否定する発言(1月末)」から 見て、「急転直下」だったことが分かります。 国債市場が風雲急を告げているからです。 ●「40兆円の枠で、日銀が日本国債を買う意思がある」と内外に表明す れば、金利が低いままに当面続くとして、ヘッジ・ファンドの30兆円の 短期国債売りを防げると考えたのでしょう。 じゃ、以下の見方はどうなるか。 前掲の白川発言:「仮に、日銀が国債を(債券市場を通さず直接に)引 きうけた場合には、日本(政府)は、国債をきっちりと返済する意思が ないと、内外の市場に対して宣言するようなものではないでしょうか。 」 そうであっても、日銀が40兆円買う意思を示さないと、ヘッジ・ファン ドからの売りで、金利が急騰し、国債価格が下落する恐れのほうが、強 かったのでしょう。 ■5.ヘッジ・ファンドが円国債を30兆円売り、実際に日銀がそれを買 い支えれば、どうなるか? 白川総裁が言うよう、「・・・そうなると、(内外から国債が売られ) やがて、国債金利が上昇します。金融機関にも(1000兆円の、過去の長 短国債の価格下落によって)大きな影響を与えます。」 2012年は、政府は、44兆2400億円の新規債を発行します。言うまでもな く、その分の、政府財政赤字があるからです。加えて、過去の国債の償 還満期が120兆円分くらい来て、合計の国債発行は164兆円という巨額に なります。 都銀はすでに、国債の買い手ではない。郵貯、年金も同じです。地銀と 生保だけが買うのか・・・・ 日銀の国債買いは、2012年度には、設定枠の40兆円を超える可能性が大 きいのです。 ■6.消費税増税の法案は、国会を通らない 政府の頼みは、2013年からの消費税の増税です。 しかしこれは、 ・民主党内と連立の造反(小沢派と国民新党)、 ・自民と公明の反対で、衆議院すら通る見込みはない。 与野党が捻れた国会の参議院は、まるで通らない。 消費税の増税は、野田首相が、「空に向かって言う」だけのものです。 衆議院の総選挙後の国会は、どうなるか。全政党が過半数はとれず、橋 下大阪市長の「平成維新の会」を中核にした野合(やごう:下品なコト バ)の連立です。 解散はできず、4年の任期まで行くかも知れません。 その間、橋下大阪市長の大阪知事時代の失政やスキャンダルを指摘し、 国民の人気を下げる策でしょうか。 本来、野田首相が、国民に向かい「10%ではなく、最低でも15%への消 費税増税の必要性」を、切々と、しかも、論理的に訴えねばならない。 しかし、記者質問でしどろもどろになるから、それは行わない。 国会で、「自民党も、公約で言ったではないか」と言うだけです。 民主党の150名が落選する見込みの選挙が怖いためです。 野田首相は、昨年秋の就任以来、国民に対し、直接の訴えをしていませ ん。 理由は、記者質問があると「金融と財政への知識のなさによって、(二 人の防衛大臣のように)悲惨なボロを出す」と、藤村官房長官が、固く 禁じているからです。 一方、国債市場は、急を告げています。 わずかでも、金利上昇の気配が見えると、それは売りの勢いを示します から、買う地銀と生命保険は、国債バブル恐怖症に陥るでしょう。 ■7.一般会計と特別会計を含む、国家の資金繰りの現状 2011年度の、政府部門の、一般会計と特別会計の純額を合計すると以下 になります。 ▼政府総支出は1年に220兆円 一般会計(92兆円)、特別会計(128兆円:二重計算を除く純額)の合 計で220兆円の支出です(2011年度)。 当方が言うのでなく、財務省が自ら、『わが国の財政:2011.9』で述 べていることです。 http://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/related_data/sy014_23.pdf 総支出の内訳 (1)社会保障費75兆円(年金、医療費、介護費、生活保護費) (2)国債費82兆円 (満期60年基準での償還72兆円+利払い10兆円) (3)地方交付税18.9兆円(地方自治体への、国税の分配金) (4)財投融資15.2兆円 (政府が、特別会計と政府系金融機関に行う貸付金) (5)その他政府事業28.9兆円 (公共投資5.9兆円+国立学校教育費・科学技術振興費5.5兆 円+農家補助1.8兆円・・・) 以上の支出の総計が、220兆円(2011年度)であり、名目GDPの49% を占めます。 すでに、国家の予算は、国民経済に対し「五公五民」であり、江戸時代 並です。「五公五民」の重税に見えない理由は、政府が、40~50兆円の 政府会計の赤字を、国債発行でまかなっているからです。 国民から見て、金融機関が国債を買うことは、税の納税とは違うからで す。 (注)ただし、長期で言えば、国債はいずれは税金で返さねばなりませ んが・・・いや、結局は、数年後からのインフレという見えない課税に なるでしょう。世帯の金融資産(1400兆円)が、インフレ率50%なら46 6兆円分は目減りして、実質は同じことなのですが・・・。 インフレは一見では物価が上がるように見えますが、その実際は、通貨 の価値(購買力)が、インフレ率の分だけ、なくなることです。 仮に物価が1.5倍に上がれば、同じ1000円で、[1000÷1.5=666円分 ]の商品しか買えなくなるからです。これが、通貨価値の下落です。他 方では、政府の負債も、[1÷1.5=66%]に減ります。国家は、借金 を返済していないのに、34%も国債残が減ったようになります。 ▼中央政府の必要収入も、220兆円 220兆円の支出に見合う収入は、以下の5項目です。 (1)国税・・・40兆円(法人・個人の所得税+消費税+相続税+タ バコ税+自動車重量税+印紙税等) (2)国債の新発・・・44兆円 (3)年金・医療保険・雇用保険等の掛け金 ・・・60兆円(労働者1名で1年に100万円平均) (4)長期の借換国債の発行 ・・・72兆円 (注)満期60年基準と見なしたときの償還金に相当する (5)特別会計からの埋蔵金取り崩し・・・4兆円 以上の合計で、220兆円の収入です。支出が220兆円、収入が220著兆円 ですから、見合います。見合わねば、支払いができない財政破産です。 国債の償還期限を60年としていることは、変に思われるでしょう。最長 でも20年満期だからです。この償還期限の60年は、1年に、残高の1/60 を、返したように、仮想するという計算のものにすぎません。 60年後(2072年)には、日本の人口は半分に減りますから、返せる訳も ないでしょうね。世帯所得のほぼ全部を、国債の償還に当てねばならな い。1年に40~70兆円は増えて行くからです。 こうした、ギリギリの政府財政の中で、政府はドル債を24兆円も買った のですから、凄(すさ)まじい。 2012年は、国債の未達を日銀が防止できるでしょう。日銀の国債買いで す。しかし、2012年のおそらく6月くらいから、ヘッジ・ファンドによ る短期国債売り(空売り、先物売り、オプション売りも加わる)があり 、国債金利は上昇傾向を示すようになるでしょう。 ■8.日本の貿易赤字は、一時的なものではない そのとき米ドルに対する円も下げます。 日本の貿易の赤字は、 ・単に円高のためではなく、 ・中国・韓国の追い上げ、 ・米欧の景気後退からの輸入の減少、 ・資源の高騰と輸入額の増加によるものです。 このため、$1が80円や90円の円安になっても、さほど、米欧への輸出 は増えません。 日本は中国を含むアジアへの輸出が50%(35兆円レベル)です。 アジアは、米欧への輸出のために、日本の部品を買っています。 アジア(中国を含む)の内需用は、主な物ではない。 こうしたことを三角貿易と言います。 三角貿易では、アジアから米欧への輸出が増えないと、日本からアジア への輸出も増えません。 米欧、特に2012年、2013年の欧州はGDPはマイナスでしょう。 消費は減ります。つまり、米欧への輸出は増えない。 他方、54基の原発は、全部が運転の再開ができないでしょう。 そうすると、 ・電力不足にはならないものの、 ・燃料の天然ガス(LNG)の輸入が、1年で3兆円、増えます。 【イラン危機は6月からか・・・】 イランの核開発の問題で空爆や紛争が起こり、資源価格の高騰があると 、現在1バーレル$100の原油が、2倍の$200に向かいます。(注)6月 頃からが危険です。 火力発電に使うLNGの輸入金額の増加は、3兆円の2倍の6兆円になる可能 性があります。 以上の諸要素から、日本の貿易赤字は、円安で輸出が増えても解消しま せん。円安だと、それ以上に、資源の輸入金額が上がるからです。 日本の貿易赤字が定着したと見れば、経常収支は黒字ではあっても、海 外は円を売るでしょう。これによって金利が上がります。 いずれにせよ、円と国債は、危なくなって来ました。下落リスクが高ま った国債を売り、リスク資産とされていた株を買い戻す動きも見えるか らです。 【ゴールド】 ゴールドも、再び1グラム4700円付近に上がっています。 世界(特に中国)の中央銀行が、元に対して下がったドル債を売った代 金で、ゴールドを買い漁っているからです。 2011年12月~12年1月に下がっていたのは、ヘッジ・ファンドの利益確 定売りからです。また、買い戻しているようです。 ヘッジ・ファンドは、ほぼ、3ヶ月サイクルで、売りと買いとを繰り返 すのです。長期保有は、しません。 【後記】 3月9日の東京講演は、まだ、残席があると聞いています。マネーの根源 を含んで二時間たっぷり話し、質疑応答の時間も十分に取ります。損を しない金融資産の運用についても、述べるつもりです。 詳細の案内は、前号の番外で行っています。 ●期日と時間:2012年3月9日 午後6時30分開演~9時終了予定 会場:サンケイプラザ3階会議室:東京都千代田区大手町1-7-2 (地下鉄 大手町駅 徒歩1分:東京駅からは徒歩5分) 会費:1万円 (上記会場の受付で 申し受けます:領収証発行) ●申し込み方法:メール(↓) 宛先: nakajima@keymannet.co.jp 希望の方は、上記のメールアドレスをクリックし、メールに、氏名・住 所・社名、講演で聞きたいことや質問があれば書いて、お送り下さい。 先着順に、受け付けます。ビジネス知識源の読者と付記していただける と、助かります。 本は、在庫切れが頻繁だったので、圧力がかかったのではないかという 問い合わせもいただきました。そんなことはありません。売上予測と在 庫管理がまずかっただけです。現在、ネットには出揃っています。書店 では、まだ、欠品があるようですが・・・ アマゾン(紙) : http://www.amazon.co.jp/ 紀伊国屋Web(紙+電子) : http://bookweb.kinokuniya.co.jp/ 楽天書店(紙) :http://books.rakuten.co.jp/ 廣済堂bookgate(紙+PDF版): http://www.bookgate.info/ セブンアイネット(紙) :http://www.7netshopping.jp/books/ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【ビジネス知識源プレミアム・アンケート:感想は自由な内容で。 以下は、項目の目処です】 1.内容は、興味がもてますか? 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