日本株の超楽観相場は、いつまで続くか
Written by admin on 2023年6月17日 – 17:00
日経平均は、6月の、先物の限月(SQ値での清算日)を過ぎても上が り、3万3706円という異例の高さになっています(6月17日)。上昇は3 月末以来、80日です。2万6000円台から7100円(27%)上げています。 原因は、 1)米銀の危機のときは(23年3月)、2.2兆円売り越していたガイジ ンファンドの、4月からの、一転した買い越し(4月2.2兆円+5月2.4 兆円+6月の1週9854億円=5.5兆円)。 2)ガイジン買いに重なった、事業会社の自社株買い3.2兆円です(過 去最高:5月)。 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB236HU0T20C23A5000000/ 両方とも、過去になかった金額の大きな買いです。 この80日、1)日本の個人投資家と、2)銀行を含む機関投資家は、3 万円以上に上がった株を手放し、売り越しています。金融商品(全部 が債券)は、市場の売買で価格が決まります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <Vol.1347号:土曜増刊: 日本株の超楽観相場は、いつまで続くか> 2023年6月17日:有料版・無料版共通 【目次】 ■1.売買で決まる株価 ■2.ガイジンファンドの異例な買い越し ■3.ガイジンファンドが4月から急に、2兆円/月以上、日本株を買い 越した理由 ■4.今後の問題は、ガイジンファンドの大きな買い越しが、いつまで 続くかという一点 ■5.銀行危機の本番になる不動産価格の下落が控えている ■6.2023年末までの株価予想 ■7.米欧の物価と、賃金の上昇率は高い ■8.円安はどうなるか? 【後記】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.売買で決まる株価 4月、5月、6月のように買いが多いときは株価は上がる(売買は普段 の2倍の量です)。 ◎株価の予想とは、どの主体がいくら買うか。どの主体がいくら売る かの予想です。 物価と金利、企業の期待利益、GDPの成長率、通貨の増発、通貨レー トなどのファンダメンタルズでは、短期の株価予想はできない。 投資主体のグループ区分は、 1)個人投資家(約700万人:名寄せ後)、 2)東証の売買の70%を占めている海外ファンド(運用マネーが巨大 なヘッジファンドとインデックス・ファンド)、 3)機関投資家(生損保、都銀、地銀、信託銀行、投資信託)と政府 系金融(日銀+GPIF+ゆうちょ・かんぽ)、 4)主要100万社の事業法人です(上場が約3300社)。 (安藤証券:2週遅れくらいで公表される主体別売買) http://www.ando-sec.co.jp/market/movement.html 3月末からの日経平均の、7000円(27%)の急騰は、 1)ガイジンファンドの買い越し(5.5兆円:先物が60%)、 2)事業会社の、自社株買い(3.2兆円:株価上昇には約2倍の6.4兆円 の効果)によるものです。 日本の個人投資家と、銀行と生損保が先頭の機関投資家は、 ガイジンファンドと自社株買いでの買い越しの分(合計8.7兆円)を 売り越しています。 これが米欧の市場にはない、東証の特徴です。 ◎個人投資家と機関投資家は、グループ合計では上がる局面での「逆 張り」を、6月も続けています。 (注)買い越し=買い>売り、売り越し=買い<売り、です。 買い越しと売り越しは、事後に金額が一致します。 東証での、買いのオファー(成り行き買い)の勢いが強いと、売りの オファーの価格も上がります。 下がるときは成り行きの売りのオファーが多く、買いのオファーが少 ないときです。市場での売買が実現しない価格での買いや売りのオフ ァーを出しても、現物株の売買は成立しません。 【先物とオプション】 そのときは、先物やオプションの売買になります。現物市場とは別の、 先物やオプションの価格と、現物の価格に相当の差があるときは、証 券会社やファンドには、高い方を売って安い方を買う裁定取引(アー ビトラージ)の確実な利益が生じるので、現月までの金利込みの価格 が一致するまで、株価は動きます。 このため、 ・コール・オプション+先物買いの主導で、株価が上げ、 ・プット・オプション+先物売りの主導で下げる相場になるのです。 世界に共通です。 最低でも、証拠金の数倍のレバレッジがかかるオプションと先物売買 は、ガイジンファンドに多い。証券会社に差し入れた500億円の証拠 金で、2500億円を売買するような「短期借入金での売買」です。 株価が10%動いたとき、5倍のレバレッジでは、50%の損益になりま す。 ■2.ガイジンファンドの異例な買い越し ◎今回の株価予想では、ガイジンファンドの買い(60%が先物)の主 導で上がった相場が、必ず来る清算の期限日までに到来する売りのと き、どれくらい下がるかを見極めることです。 1)事業会社の自社株買い(5月3.2兆円)は、6月、7月、8月とは、続 かないでしょう。6月、7月、8月の買い越しは、たぶん各月1兆円以下 の、2000億円や3000億円、あるいは売り越しに下がるからです。 2)アベノミクスの株価を上げた日銀の株ETF(23年6月残高37兆円) は、今回は買い増しではなく、「売る方向」です。 3)年金基金のGPIF(国内株48兆円、海外株46兆円)にも、目一杯買っ ているので、買い増しの方向はない。(年金基金の191兆円の運用) https://www.gpif.go.jp/operation/34576289gpif/2022_3Q_0203_jp.pdf 以上から、6月、7月、8月の株価は、一手に、「ガイジンファンドの 買い越し」がどうなるかにかかっています。 ・3000~5000億円/週の規模の、大きな買い越しを続けるか(上が る)、 ・1000~2000億円/週の規模にスケールダウンするか(下がる)、 ・マイナスの、売り越しになるか(大きく下がる)、です。 突き詰めると、単純な要素です。 米国物価、日米の金利、米国の失業率、FRBの利上げなどのファンダ メンタズには、ほぼ無関係です。 ◎わが国の株価論では、「PBRで1倍付近が多く、全体では1.6倍でし かなく、3倍の米国に比べて1/2と低かった日本株が、海外投資家によ って見直され日本株が買われた」というものがほぼ全部でしょう。 【低いPBR論はあるが・・・】 PBRは、「株価時価総額/純資産」の倍率の評価指標です。 PBR1倍の意味は、株価が会社の解散価値しかないと言うことです。 日本株で、30兆円規模と、もっとも時価総額が大きなトヨタのPBRは、 23年3月末には0.9倍でした。現在、1.3倍の2358円です。日経平均の 225社全体のPERも1.9倍に上がっています(23年6月)。 https://nikkei225jp.com/data/per.php 以上は、評論家や金融ジャーリズムが得意な「あと解釈」の論です。 株価が上がったあと、あるいは、下がったあと、その合理的な理由を 探して述べることです。 自分のマネーを使う投資家、ヘッジファンドの運用担当であれ、「あ と解釈」を理由にした売買は、行わない。 自分で「これから上がる、あるいは下がる」という見通しをつけて売 買します。トヨタは、PBRが0.9倍だから割安であり、買うという行動 ではない。 市場は、その都度、売買のオファーの、量の一致点で売買が均衡して、 (多くが予想外になる)価格を作っています。 その均衡した価格が、未来予想によって動く。実際に売買する人にと っては、「どんなときも日本株の出遅れや、米国株の先行」があるわ けではない。 当方は、未来を予想して売買が起こる市場に「見直しという行動での 買い」はないと考えます。 ◎市場の価格は、その時点の条件では、常に「正しい」。 ■3.ガイジンファンドが4月から急に、2兆円/月以上、日本株を買い 越した理由 なぜ、ガイジンファンドは、2023年3月は、2.2兆円も売り越していた 日本株を、4月には2.2兆円、5月には2.4兆円、6月1週には、9800億円 も買い越ししたのか? 4月になって「突然、PBRの低い日本株を見直す認識の変更」が起こる わけがない。多くの投資家の、認識の変更には、6か月くらいの時間 が必要です。 彼らは、日本株を買い越した本当の、財政的な理由は決して言わない。 推測しかない。 株の買いとは未来の利益を予想して買うことです。 損を目的に買う人はいない。 日本の株式市場の、基本条件を述べます。 1)東証ではガイジンファンドの売買が70%付近を占める。日本人の 売買は30%と少ない。米国のように50%の世帯が株を買っているでは ない。700万人(700万世帯:13%)でしかない。 機関投資家では、2000年以降、日銀、GPIF、ゆうちょ・かんぽ以外は、 株を買い増していない。 2)日本の株価を決めるのは、ガイジンファンドの売買である。 米国株(6000兆円)に対して時価総額は約1/8なので、東証の株価は、 米国市場の1/8のマネー(1か月2兆円の買い越し)で上がる1か月に2 兆円買い越せば、大きく上がる、2兆円売り越せば大きく下がる。 2020年までに日銀とGPIFは目一杯、日本株を買ってきた。 買い増す余力がない。保有を維持しているだけである。 2020年までの株価形成の力は、ない。 3)機関投資家は、長期売り越しを続けている。 4)個人投資家は下がったときに買い、上がった時に売る「逆張り」 である。価格に対して受動的な売買であり、相場を先行して動かす マーケットメイクはできない。 5)日本株のマーケットメイクは、ヘッジファンドとインデックス・ ファンドが、米国の1/8のマネー投資でできる。 ヘッジファンドとインデックス・ファンドは、ノンバンクの範疇。総 資金量は60兆ドル(7800兆円)、米銀の約3倍の運用資金量。 5)日本企業に対してはヘッジファンドとインデックス・ファンドは 「アクティビスト」の大株主である。 米国(自社株買い1兆ドル:130兆円/年)に対して10分の1以下と少な い自社株買い10兆円/年の、日本の事業会社には配当としての、自社 株買いの増額を要求できる。 コロナ後の、円安で増えた利益に対して、賃金の上昇率が3%と低く、 投資が少なく累積の利益留保が多くなっている事業会社は、応じるは ずだ(留保利益200兆円:現預金321兆円:2022年12月末)。 設備投資を減らした大手企業の預金は、借り入れが要らない(返済す る)くらい多い。 【3.2兆円の自社株買い】 ◎2023年5月には、事業会社は突然、3.2兆円/月という、異例の自社 株買いをしています。これは、3.2兆円の、2倍の金額の買い越し相当 する株価の上昇効果をもつ。 日銀とGPIF1が買い増しをせず、国内の機関投資家は合計では売り越 すので、会社の自社株買いという手段しかない。 ↓ 個人投資家は、自社株買いした株なら上がることが確実なので、競っ て買うだろう。 23年5月の、事業会社の3.2兆円の自社株買いは、日本株の先物を買い 越すガイジンファンドとの「出来レース」でしょう。 以上のような、東証の状況に対して、ヘッジファンドとインデック ス・ファンドが、 ・3月の米国銀行危機の中の、債券と株価の下落で損をし、 ・回復の利益戦略を、日本株を対象にして立てたことは、想像に難く ない。これが当方の推測です。 ファンドマネジャーなら、分かるでしょうが、売るにも買うにも、確 実な理由付けが必要です。この理由付けがないと、会社は売買を許可 しません。ファンドの誰にとっても、「自分のお金」ではないからで す。 3か月で運用マネーの10%の損をすれば、マネジャーも首でしょう。 ウォール街で多いのは昨日までは、20億円や10億円のローンで買った タワマン、今日からはホームレス。10%は年間換算では、40%の損に 相当するからです。 このため多重のヘッジ(いわば損の保険)をかけた売買をします。利 益と損を、等分に小さくすることです。 ◎日本株を買い増すときは、同額の、円の先物売りを組み合わせる。 円の先物売りは、円安のとき利益が出ます。 ガイジンファンドには、日本株が20%上がっても、10%の円安/ドル 高になると、ドル換算では10%の利益しかない。 日本株は、円安とともに上がり、円高ととも下がる傾向を持ちます。 東証でのガイジン売買が、70%を占めるからです。日本株の買い越し とともに、円先物売りが増え、円が下がる傾向を持つのです。 (注)日本の株価が下がると、円先物売りが限月での円買いになるの で、円は、上がる傾向をもっています。 円安のヘッジが、円先物(または通貨オプション)の売りです。 円高のヘッジは、円先物の買いです。 ■4.今後の問題は、ガイジンファンドの大きな買い越しが、いつまで 続くかという一点 日本の投資家と市場を異常な楽観論が支配しています。 この楽観は、 ・ガイジンファンドの大きな買い越しが続き、 ・個人投資家も、大きな買い越し(週間3000億から5000億円規模)に 転じると前提しています。 円の低金利と、過剰流動性が相場環境である「見直し相場」に、 ガイジンファンドの大きな買い越しが、いつまでも続くと想定ができ るのか? ここが、当方の基本的な疑問点です。 過去、ガイジンファンドが、年間の買い越しをしたのは、1)2017年、 2)2021年、3)2023年(6月まで)だけです。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 2016年 -3.7兆円(マイナスが売り越し) 2017年 +0.8兆円(プラスが買い越し) 2018年 -5.7兆円(最大の売り越し:月間平均4750億円) 2019年 -0.4兆円 2020年 -3.3兆円 2021年 +0.3兆円 2022年 -0.3兆円 2023年 +3.9兆円(1月から6月1週まで:年間8兆円のペース) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 8年合計 -13.0兆円(売り越し) (再掲:投資家主体別の売買:2016-2023.06) 【事業法人では】 2023年5月は、自社株買いが3.2兆円あったにもかかわらず、事業法人 全体では、約4000億円の買い越ししかない。事業法人全体では、日経 平均3万円越えの株を、2.8兆円とどの主体よりも大きく売り越してい ます。 http://www.ando-sec.co.jp/market/movement.html 【ガイジンファンドでは】 ガイジンファンドは、2023年には4月の1週から買い越しに入って、 11週の連続買い越しです(11週で+5.4兆円≒週平均+4900億円)。 こんなに長期の買い越しが続いたのは、歴史上、最初です。 今、戦後70年で、初めてのことが起こっているのです。 「PBRが米国の約1/2と低く(PBR1.9倍)、(世界の株に)出遅れた日 本株を買う」という理由付けだけで、ファンドマネジャーは、歴史上 初めての「日本株の買い越し」を続けるでしょうか? 【PERは、S&P500より高い】 株価の評価指標であるPER(株価/次期予想純益)は、20倍に上がってい て、NYダウの19.9倍、S&P500の19.1倍より評価が高い。 新興IT株が多い米ナスダックの29.2よりは低い。 日経平均が3万3000円台の日本株は「割安」とは言えないでしょう。 現在、欧州を除く日米の株式市場には、超楽観の、「バンドゴワゴン の心理」が起こっています。ディズニーの楽隊に、人がついていくか ら、自分もついていくというバブルの心理です。 【長期の不況を示す、米国の逆イールド】 2023年末から2024年までを見れば、「米国金利の逆イールド」、つま りFRBの短期政策金利が5.0%か5.25%と高く、10年債の長期金利が3. 5%程度と低い。 金利の逆イールドは、短期マネーの需要は多くても、設備投資、不動 産投資の長期借り入れの需要が少ないことを示します。つまり、米国 の企業家は、長期では、不況を予想しています。 過去、マレにしかない逆イールドが起こったあとは、1年後くらいか らリセッション(二期連続GDPのマイナス)入りしています。今回は 例外だ、といえる経済条件はない。 ■5.銀行危機の本番になる不動産価格の下落が控えている 長期の景気を示す不動産価格は、経済から6か月から1年遅れる遅行指 標です。 ◎先行指標の米国REIT(不動産の賃料を配当する上場投信)は、 2022年6月のピーク353から ・3%台だった不動産ローン金利が約2倍に上がったためと、 ・リモートワークの増加でオフィス・スペースの必要が、30%減った ため284と20%も下がっています。 REITの価格は、2023年末~2024年の商業用不動産の価格が、25%は下 がっていくことを示しています。 住宅ローン金利が2021年の2倍の6%から7%台に上がっている2024年 の米国住宅価格は、商業用不動産の価格を追って、やはり25%程度下 がるでしょう。 (ブルムバーグ:REIT指数) https://www.bloomberg.co.jp/quote/BBREIT:IND 1)2022年から続く、金利の逆イールドと、 2)賃料の配当で決まるREITの価格の低下は、いずれも、2024年の米 国不況を示しています。 米国と欧州には、現在、不動産価格が上がる要素は皆無です。 ■6.2023年末までの株価予想 現在、日米の株式市場に起こっているのは、過剰流動性による心理的 なバンドワゴン効果です。 「上がるという理由で株価が上がる状況」です。 投資家のほぼ70%が、「株価は上がる」と予想しているようです。 当方は、4月の初めには、ファンドの、一転した先物買いで上がった 日本株は、6月のファンドの決算期には、利益を確定して売り抜ける。 6月末から7月の株価は下がると予想していました。 ところが6月の第二金曜日(6月8日)の、反対売買(売り)が増える SQ日を超えても、ファンドの買い増しは続き、日経平均は上がり続け ています。 ◎原因は、ファンドは、SQ日から3日間での清算売りより多く、6月 10日以降も先物を買って「ロールオーバー」したこと以外にない。 【ヘッジファンドの決算】 ファンドが、次に、上がった株を売って利益を出す必要がある決算は、 9月です。23年8月までは、日本株を上げる先物買いを続ける可能性が 高いようです(推測)。 (注)含み損/含み利益は、ファンドの決算の利益にはならない。売 らなければ利益も損も確定しない。 ヘッジファンドの年間利益は、現在-5%から+5%に分布しています (HFR)。決算では5%以上の利益を出す必要があるのです。 預金であるMMFの金利は、5%程度と高いのでファンドが5%以上の利 益を出さないと、解約が増えて、45日後には返金しなければならない。 銀行の危機は預金の大量流出、つまり、銀行に不安を感いた預金者の 取り付けから起こります。現金がショートする銀行は、金利が上がっ ているので含み損が大きな長期債券を、売らねばなない。 損が膨らんで、政府または他の銀行がマネーを入れる破産になるので す。 ヘッジファンドとインデックス・ファンドが、3か月決算で利益を出 さないと、客からの解約が増え(=現金の返金が必要)、銀行危機と 同じことになります。 このためヘッジファンド、インデックス・ファンドは、3か月決算で 利益を出し続けねばならない。金利が5%台に上がると、リスクのあ るファンドの利益率は上がった金利より、高いものでなければならな い。 金利が上がると、ファンドは成立しにくくなります。7年間のゼロ金 利で、銀行の3倍に肥大したのが、ファンドへの預託金60兆ドル (7800兆円)です。 【日本株の、異例の買い越しの理由】 米国銀行危機(株価下落)後の異例な日本株の買い越しは、米国の1/ 8のマネーの買いで高騰する日本株を買って、米国株のポートフォリ オでの損を埋めようとしたものだと見ています。 このために、8年間も減らしてきた日本株の構成比(ポートフォリ オ)を増やしたのです。 長期では不況入りが予想される米国金利の、約2%もの逆イールドの なかです。株価を2倍は上げる自社株買いを要請しながら、日本株を 買い上げたのでしょう。 ◎日本の株式市場は、70%の売買をするヘッジファンドとインデック ス・ファンドの支配下にあります。 日本人の個人投資家と、機関投資家による株の売買が少なく、平常時 の東証の出来高が2.5兆円と小さいため、日本の約8倍のマネーを動か す米国金融の支配になったのです。 現在の出来高では、6兆円/日もあり、約2倍になっています。 東証の株の売買が2倍になっているのです。 【株の買い】 ◎23年7月か最長で8月までは細心の用心をしながら、株を買ってもい いかもしれません。発生したバンドワゴンには一時的には乗る。 しかし、ヘッジファンドとインデクスファンドが、合計で売り越しを 始めたときは、仮に含み損があっても、23年12月を期待せず、売り抜 ける準備が必要でしょう。当面、3か月以内の短期の売買しか、して はならない。 株価の時価総額が、世界の50%を占め、世界の株を上げている米国株 の上昇は2000年の期待が先行したインターネット・バブルに似ていま す(当時はナスダック5000ポイント:現在は1万3700ポイント) 深層学習型のAIの開発が、現在の米国株価のシンボルでしょう。 ■7.米欧の物価と、賃金の上昇率は高い 以上は、当方の見方です。参考にするかどうか。 ご自分の判断によります。 根本を言えば、米国経済、欧州経済、日本経済が強くて上がっている 株価ではない。日米欧は、「過剰流動性」の中で、断崖の前の超楽観 の相場に見えます FRBのパウエル議長は、2023年12月までに0.25%×2回の利上げをする という含みのある発言をしています。 ユーロのラガルドECB総裁は、インフレは終わっていないとして短期 の政策金利を0.25%引き上げて4.00%にし、7月の0.25%の利上げも 示唆しています(コアインフレ見通し5.4%)。 一方で日本は、短期0.1%、10年債の上限が、0.5%のままです。世界 1金利が低い。植田総裁は、これからも大規模緩和を続けると発表し ました。低金利と金融緩和は、円安の原因にもなります。 賃金上昇が1.3%と低い日本と違い、米欧では賃金上昇(欧州5.7%: 米国5.6%)なので、インフレは長引きます。 物価を原因に上がった名目賃金は、すぐには、下がらない。「生鮮・ エネルギーを除くコア物価の上昇→雇用者から賃金の上昇要求→物価 の上昇→賃金上昇要求・・・」というスパイラルなサイクルになって いるからです。 2022の最初の物価上昇は、コストプッシュ型でした。 現在は、物価上昇→賃金の上昇要求になっています。 賃金の上昇に伴う、米欧のインフレの長期化は、金利の高止まりも示 し、2024年のリセッションを誘発するでしょう。株価は、住宅価格が 下がるころに、暴落に向かうでしょう。 米欧では、利上げと金融の引き締めで、経済を不況化させ、失業を増 やして賃金を下げ、需要を減らさないと、物価が下がらなくなったの です。 ■8.円安はどうなるか? 今日のドル/円は、141.84円。1月の131円からは10円(7.6%)の円安 です。長期的には、2012年の80円からは、44%もの円安です。通貨は、 基本的には、その国の経済力(期待GDP成長率)の差が均衡点になり ます。短期では、金利差(米国5.0%~5.25%)、日本、短期0.1%、 10年債上限0.5%から来るイールド(約5%)が、「ドル買い/円売 り」を誘っていることです。 世界の金利が上昇し、高止まりするなかで、円の金利だけが異常に低 い。32年累積した財政赤字(=政府の税収不足)からの国債残が 1200兆円もあります。 日銀が、インフレ(生鮮を除くコア物価3.4%:23年4月)に合わせて、 長期金利(10年債の金利)を2%に上げると、銀行(日銀+銀行)は 自己資本をなくし、国債の増加買いができなくなって、政府は国債が 売れない。資金不足の政府は、財政が破産に向かうからです財政支出 の30兆円くらいの削減(-25%)が必要になります。医療費、年金、 公務員賃金には25%の未払いが出ます。これは、2011年のギリシア危 機のときに起こったことです。 このため、日銀は、財政以外に理由を転嫁して、利上げをせず、金融 緩和を続けていて、米欧のとの金利差が拡大して円安になっているの です(円売りの超過)。 1)ファンドが日本株を買い越すときも、買い越し増加に相当する5兆 円の円先物売りをして、円高のリスクをヘッジします。 2)もう一点、大きなものは、低金利の円を借りて、高利回りの債券 や株を買う「円キャリートレード」です。2023年の4月から、円キャ リートレードの残高は12.8兆円を超えています。普段は8兆円くらい です。 まとめれば、 ・日本株がガイジンファンドの買い越しの増加で上がるときは「円 安」になる。 ・買い越しが減って、あるいはマイナスになって日本株が下がると、 円高/ドル安になる。 そういった、「投機的な円安相場」が起こってるのです。 ガイジンファンドの日本株の買い越しは、最長でも2023年9月には終 わると見ています。8月に終わるかもしれない。その後は、逆に、 「ドル安/円高」と、ドルの実効レートが下がると上がる金価格が上 昇するでしょう。 現在の金価格は「ドル高」のため、短期的には下落基調です(1オン ス1926ドル:5月初旬は2040ドル) https://www.dailyfx.com/jp/gold-price スイスフランもドルに比例して上がり、2023年の年初の139円が、 158円(+13.6%)に上がっています。低金利で売りが多いい円と逆に、 政策金利が1.5%と低くても、世界からスイスフランの買いが強いか らです。マイナス金利をプラスにしたスイスのインフレは2.9%です (23年3月)。日本のコア物価の上昇3.4%より低い。 スイスの物価上昇率の低さ(2.9%)は、スイスフランの通貨価値が 円、ドル、ユーロより下がっていないことを示します。 【後記】 ここで18ページなったので、有料版・無料版共通の土曜増刊を送りま す。本稿で、23年12月までの株価の見通しに、ケリをつけたように感 じています。 株価は、多くの要因が絡みあってしかも要素相互間での共鳴がある複 雑系です。気象のように、青天の霹靂の嵐もあります。底に穴があい た洗面器の、渦の発生と同じです。通貨も同じです。単純な線的数式 では決まらない。8月の入道雲(上昇気流)は、嵐の原因です。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【プレミアム読者アンケート&感想の、項目のメド】 1.本稿の内容は、興味がもてますか? 2.理解は、進みましたか? 3.疑問な点は、ありますか? 4.その他、感想、希望テーマ等 5.差し支えない範囲でプロファイルの情報があると、テーマ設定と記 述の際、参考になります。 気軽に送信してください。感想は励みになり、うれしく読んでいます。 質問やご要望には、可能なかぎり回答をするか、あとの記事・論考に 反映させるよう努めます。返事や回答ができないときも全部を読み頭 にいれたあとと。読者の感想・意見・疑問・質問は、考えを広げるの に役立ちます。 著者のメールアドレス:yoshida@cool-knowledge.com 購読方法と、届かないことに関する問い合わせは、ここにメール (↓)。配送の管理は著者ではなく、配信サイトの「まぐまぐ」がい っています。著者は、どこに配信されたかわからない仕組みです。 reader_yuryo@mag2.com ■1. 新規登録は、最初無料お試しです(1か月)。その後の解除は自 由です。2か月目から消費税込みで660円が課金されます。 (1)『会員登録』で支払い方法とパスワードを決めると、 (2)まぐまぐから登録方法の『受付メール』が送ってきて、 (3)その後『購読マガジンの登録』という、安全のための2段階の手 順です。 【↓まぐまぐへの会員登録と解除の、方法の説明】 http://www.mag2.com/howtouse.html#RSegist 登録または解除は、ご自分でお願いします。 著者は、登録、解除を行うことができません。 (有料版↓) http://www.mag2.com/m/P0000018.html (無料版↓) http://www.mag2.com/m/0000048497.html ■2.購読についての問題の、問い合わせ窓口 (まぐまぐの事務局がメールで対応します)。 http://help.mag2.com/contact.html ・・・以上 ~~~ ◎このメルマガに返信すると発行者さんにメッセージを届けられます ※発行者さんに届く内容は、メッセージ、メールアドレスです ◎ビジネス知識源:経営の成功原理と実践原則 の配信停止はこちら ⇒ https://www.mag2.com/m/0000048497.html?l=hpt0a0092e |