こんにちは、吉田繁治です。前稿(7月4日号)で書いた日銀による
利上げは、06年7月14日に、0.25%の幅で実行されました。
日銀が銀行に短期資金を貸す公定歩合は、0.4%です。
これが短期のベース金利になります。
最初に、(1)わずかに見える金利の上昇が、(2)今後、どうい
った影響を生むかを、(3)乗数金融の金融資産(=同額の乗数信
用の金融負債)の観点から見ます。これが、予測を含む本稿のオリ
ジナルな視点です。
世界を人工衛星から見るような視点で見ます。
加えて本稿では、ヘッジ・ファンドの基本手法である、
「1.ロング&ショート」、
「2.ポートフォリオ」、
「3.裁定取引」の、もっとも基本となる考えかたを示します。
(数式は使いません。概念だけの単純化した説明です。)
結論を言えば「世界は今、株・債券・資産バブルの末期」に思えま
す。
原油をシンボルにした資源価格の高騰から波及するインフレ期待が、
(1)世界の金利を上昇させ、(2)乗数金融と信用乗数を縮小
させるおそれが高まっています。
もちろん、いますぐではない。
失敗を省みず時期を言えば2008年からでしょうか。
クジラのように巨額になって世界を浮遊し、各地でバブルを作って
きたヘッジ・ファンドが、無事で済むと思えないのです。
(注)本稿も2回分をまとめて送ります。
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<Vol.237:日常語と算数で解く金融工学(3):2号分>
【目次1】
1.わずかな利上げが大きな影響
2.金融資産と負債、及び利払いのイメージ化
3.重要な認識
4.世界の金融運用の先導役がヘッジ・ファンド
5.重要:市場の歪みをみつける
【目次2】
6.ロング&ショートと必要資金
7.あとは乗数金融
8.乗数金融の効果
9.金利上昇時代と認識しなければならない
10.インフレを示唆する資源価格
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■1.わずかな利上げが大きな影響
今回の上げ幅は、わずかです。国の債務(国債、地方債)が巨額な
ため、金利は、わずかしか上げられない。この国では政府の都合を
優先します。
重要な認識(判断)は、
・96年から10年も続いた「金融の超緩和&ほぼゼロ金利」が
・06年を起点に、「金融引き締め、金利の段階的な上昇」に向かう
ことです。これは予測です。
【金利の性格】
金利の怖さは、いったん上がり始めると、中央銀行の誘導が効かず
時に急に上がる性質をもつことです。歴史が証明しています。
短期金利には中央銀行が「ある程度」関与できます。
しかし長期金利は、長期国債の売買相場で決まります。
短期金利=1年未満の金融:長期金利=1年以上の金融
【今・・・】
前稿の末尾で述べましたが、問題は10年間の世界的な低金利から、
世界の「債権=債務」が巨額化していることです。
「債権=債務」が大きいと利上げがわずかでも波乱になります。こ
れが、06年5月からの、世界の株価(時価総額3600兆円)の同時下落
の原因です。
日経平均は06年4月の17,500円(ゼロ金利時)から15,000円水準(短
期金利0.25%時)へと15%の下落です。((注)日本の時価総額は
約500兆円:GDPの1倍:06年7月)
世界のGDPは、さほど増加していない。「金融資産=別の主体の
金融債務=1京3000兆円」は、世界GDPの3倍です。(後述)
最初に、以上2点、
(1)10年間の超低金利の反転
(2)膨らみすぎた金融資産(=金融負債)を確認します。
■2.金融資産と負債、及び利払いのイメージ化
ここでイメージ化します。
世帯に置きかえれば、年間所得(GDPに相当する)に対し、その
3倍の金融資産(ストック)があります。それは別の世帯、企業、国
の負債になっていると想えばいいのです。
世帯の所得を580万円(日本の05年平均:国民生活基礎調査)とすれ
ば、「金融資産=金融負債」は1740万円です。
これを見れば、問題があると思えるはずです。
▼ミクロにモデル化します
・1740万円の預金をもち、負債がゼロの世帯(A家)と、
・1740万円の負債があり預金がゼロの世帯(B家)を想定します。
誰かの金融資産は、別の人の金融負債です。
両方は等しい。
これが金融資産の裏表の性格です。
国債は、持っている人にとって金融資産です。
しかし発行元の国にとっては負債です。
株も所有者にとって金融資産です。発行した会社にとっては、配当
という利払いか、株価を維持し上げることが必要な「預かり資本(
負債)」です。
預金者にとっての預金も、当然に銀行の負債です。
金利が1%上昇すれば、負債のあるB家は580万円の年間所得から17
万円の利払いが増えます。所得比では、3%の利払い増。ここまでは、
利払いができるかもしれません。
2%上昇で35万円(所得比6%)の利払い増。月3万円の利払い負担で
す。B家の生活は苦しくなるでしょう。
5%上がれば、B家の利払いの増加は87万円です。ボーナスと主婦パ
ート込みの月収48万円のうちから7万2500円の利払いが増えます。必
要な生活費があるので払うのが難しくなる。追加支出だからです。
(注)この金額の万円を、1億倍して兆円にすれば、ほぼ国の規模に
なります。小さな違いは無視していい。
▼世界の金融資産=金融負債
世界の金融資産(1京3000兆円)で言えば、5%の利払いは年650兆円
に相当します。この金利や配当は、払う側が払えなければ、受け取
れません。
以上のように、世界のGDP(約4000兆円)の3倍の金融資産は、正
常な金利である5%の利払いを受けることが困難な水準です。
負債を抱える側が、負債が大きすぎて、利払いが難しくなるからで
す。
(再掲:世界の金融資産:2005年:$=110円とする)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
・預金 34兆ドル(3740兆円:うち日本約700兆円:19%)
・株 33兆ドル(3630兆円:うち日本約500兆円:14%)
・社債 35兆ドル(3850兆円:うち日本約 50兆円:1.3%)
・国債 18兆ドル(1980兆円:うち日本約750兆円:38%)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
合計 120兆ドル(1京3000兆円:日本2000兆円:15%)
上の表を、金融負債の側から見ます。負債も同額です。銀行預金は、
貸付けられるものと、国債や社債または株の購入になっているか
らです。
世界の金融負債
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
・預金からの借金 34兆ドル(3740兆円)
・資本的負債(株) 33兆ドル(3630兆円)
・社債としての負債 35兆ドル(3850兆円)
・国の負債 18兆ドル(1980兆円)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
合計 120兆ドル(1京3000兆円)
株は、会社が株主から預託を受けた資本的、負債です。返済の義務
はありませんが、配当と株価を維持し上げる必要があります。
株価の上昇は、会社の資本的負債が増えたことを意味します。
その上昇に見合う、利益と配当が必要になります。
負債金額を見て、4000兆円の世界の経済規模(GDP)に対し過剰
な[金融資産=金融負債]と思わない人はいない。
10億分の1のミクロで言えば400万円の年収で、1300万円の借金(別
の人の金融資産)として置き換えることができます。
例えば、上記の世界の国債に含まれる日本国債は750兆円です。国債
は、それをもつ金融機関や個人にとって、まぎれもない金融資産で
す。国債は、もっとも安全な金融資産とされています。
しかし金利が5%上がれば、国の利払いで、37.5兆円分(消費税の15
%分に相当)が増えます。(注)消費税は1%が2.5兆円相当です。
09年に政府が予定するという2%の消費税上昇は5兆円分です。
国税収入が48兆円の国が、この5%金利を払うのは不可能です。
2%の低金利を前提に借入で投資した企業にとっても同じです。
【結論】
・05年で、すでにサステナブル(維持可能)でない金融負債、
・そして十分な利払いを受けられない金融資産額になっています。
「低金利がいつまでも続く」という大前提で、今の金融負債(=金
融資産)があるのです。前提が壊れれば、破綻です。
■3.重要な認識
今の世界の金融資産(1京3000兆円)は、5%の利払いに増加に、耐
えられません。
世界の[金融資産=金融負債]は、そうした金額に達してしまって
います。重要な認識です。
【結論】
企業・政府・世帯の負債大国の米国と、
政府部門が負債大国である日本を筆頭に、
たった3%〜5%の金利上昇に耐えられない。
▼そのために起こることは
そのため、中央銀行の金利は、物価上昇があっても低めに抑えられ
ます。
これによって、物価が上がれば、それ以上に長期金利は上がるべき
であるという経済原理が働かなくなります。
その結果は、債券・株・資源バブルの高騰の持続と、不安定な乱高
下です。
【結論】
物価の上昇率を長期金利が下回れば、実質金利(名目金利−物価上
昇率)がマイナスになって、信用で借り、投資・投機したほうが得
になるからです。物価上昇率より低金利ならバブルが昂進します。
数年続くと、バブル的な資産価格高騰になります。
高所恐怖症が増え下がり始めるとパニックが起こります。
一方で、負債は積み重なり、不良債権化して行きます。
(注)インフレは、人民元の切り上げとももに来ます。今、世界の
消費者物価を下げているアンカーが中国だからです。貿易黒字から
必然的に来る人民元の切り上げは、その切り上げの分、世界の消費
者物価を上げます。
そしてとどのつまりの帰結は、ちょうど、日本の1990年バブルが、
92年から数年かけて崩落したように、必然的に崩壊します。時期が
不確定なだけで、崩壊は必然に思えます。
【原理】
低金利を前提にした[債権=債務]が膨らみ、利払いに耐えられな
くなれば、必然的にそうなるのです。
投機的な資金需要の増加と資産価格高騰は、いずれ、金利を上昇さ
せます。中央銀行も政策金利を上げます。
不良債権のように「できない利払いはできず、返せない借金は返せ
ない。」 追い貸しで追加し煮詰まって、崩落を待つことになりま
す。
【無謀な予測】
「それがいつか?」 予想するのは無謀です。敢えて言えば2008年
ころからになる気がします。北京オリンピックが終わった時に思え
ます。それまでは、間歇的(かんけつてき)なバブルでしょう。
■4.世界の金融運用の先導役がヘッジ・ファンド
金融運用の先導役は、年間20%以上の利益を目指すことによって、
元本が170兆円相当に膨らんできた「ヘッジ・ファンド」です。
(注)米国SECの集計では140兆円ですが。
▼代表的方法:ロング(買い持ち)&ショート(売建て:空売り)
「ヘッジ」の原義は、保険をかけた安全の確保、またはリスクの低
減です。どうやって保険をかけるか。
ヘッジ・ファンドをどこから解くか。
ロング&ショートが一番いい入り口になるように思えます。
このロング&ショートを、単純化して示します。
西欧人の頭脳構造は、利益確率とリスク確率を同時に考えることに
発達があると感じます。簿記の、資産と負債対照させる貸借対照表
もその頭脳構造から来ているように思えるのです。
その点、日本人は「1方向」に動きやすい。官僚の簿記も現金出納帳
に似た単式簿記でした。国債は収入であって、負債という意識が薄
い。
【代表的方法】
ヘッジ・ファンドが用いるひとつの代表的な方法が、
・ロング(買い持ち)と、
・ショート(売建て:空売り)です。
ロング(買い)とショート(空売り)をうまく組み合わせれば、株
価や債券価格が下がっても上がっても、一定の利益を得ることもで
きます。そのため、損失をヘッジする(防ぐ)ファンド、つまり「
ヘッジ・ファンド」と言われます。
ロングは普通の買いですから、分かるでしょう。
一方ショート(空売り)は、証券会社を通じて、売りたいと思う株
を、手数料を払って借り、それを即刻売ることです。
【ショート】
例えば1000円の株がある。値下がりを予測する。自分は持っていな
い。その株を、証券会社を通じて借り1000円で売る。これが空売り
です。自分の持ち株ではないから「空(から)売り」です。空売り
では、売った株を期限に買い戻す義務があります。
買い戻すとき、その株が狙い通り値下がりし、800円なら[200円−
手数料]の利益が得られます。逆に1200円に上がっていれば[200円
+手数料]の損をします。
【ロング】
このショート(空売り)とともに行うロングは、値上がりすると思
う株を買うことです。上がれば儲け、下がれば損をする普通の取引
です。
【ロング&ショート戦略】
ロングとショートを組み合わせるとどうなるか?
・ロングだけなら、株価が上がらねば利益はない。
・ショートを組み合わせると値下がりした株からも利益が得られま
す。
狙い通りなら、株価が下がる相場のときも上がる相場のときも、一
定の利益を得やすくなります。
(注)しかし狙いがはずれ、ロング(買い持ち)した株が下がり、
ショート(空売り)した株が上がれば、損は大きくなります。
【ロング&ショート戦略の成功】
ロング&ショート戦略では、市場の今の評価が[安すぎると]判断
される株、そして評価が[高すぎる]と思われる株を「うまく」見
つけることが必要です。
【ロング&ショート戦略の失敗】
市場の歪みの判断を誤ったとき、つまり、狙いと逆に動けば、損を
します。
【結論】
複雑な方法に見える運用を行っても、要は「高すぎるもの、安すぎ
るもの」の判断に依存することは変わりません。
そのため、金融工学そのものが「本質的に、保険の計算より有効で
あるかどうか」疑問を呈する人も多いのです。数式と確率をつかう
ゴマカシの手段という面もあります。米国SECが今、規制に乗り
だす理由でもあるのです。
■5.重要:市場の歪みを見つける
[高すぎる株、債券]、[安すぎる株、債券]の発生を、若干高級
に[市場の歪み]と言います。
【合理と信念】
(1)市場の歪みを、利益の機会として見つけるのがヘッジ・ファ
ンドの方法です。
(2)合理的・理論的な価格からの乖離を「歪み」と言います。
(3)そして信念は「歪みは、いずれ修正される」ということです。
その修正過程の前に、安いものを買って(あるいは高いものを売っ
て)、買いと売りを同時に行い、利益を上げるのがヘッジ・ファン
ドです。(注)歪みが修正されなければ、利益になりません。
そしてこのヘッジ・ファンドは、信用借りを使い、元本の5倍〜10倍、
時に数十倍の多額の運用をします。100億円の元本が500億円、1000
億円、数千億円の運用になる。これが金融資産(=金融負債)を膨
らませます。
市場の歪みは、新興国・規制の残る国・小国では大きく発生しやす
い。ヘッジ・ファンドが、参加者が少なく市場の自由化の程度が低
く、新興国の株を狙う理由でもあります。
BRICs(ブラジル・ロシア・インド)、そして、アジア、そし
て石油景気で沸騰したアラブ、ラテンアメリカ、アフリカは対象に
なりやすい。数百億、数千億円の投機でマーケットが動きます。
実は原油価格の高騰も、ヘッジ・ファンドの投機が原因です。原油
の使用量は、世界で年2%しか増加していません。それが何倍にも上
がって1バーレル(1樽:159リットル)=$100を目指す勢いです。
2%の実需増加で約5倍です。投機です。
ヘッジ・ファンドは、米英が、新興国の会社から上がる利益の30%
から40%の分配に預かる機能も、果たしています。250兆円の純債務
国である米国が、金融収益では大幅な黒字です。
米ドルが、今はまだ、強い理由がこれです。
原油の高騰は米国の貿易赤字の増加(ドル安要因)です。
しかしそれ以上の利益をヘッジ・ファンドが原油投機で得る。
(ドル高要因)
そして、こうしたOECD(先進国)にとっての周辺国の株価や債
券価格の崩落(金利上昇)が、ヘッジ・ファンドに打撃を与えます。
ローマ帝国のように、崩れるのは周辺や辺境からです。
そう思っておいて、間違いないでしょう。
1998年のLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)の
運用額20兆円、元本6000億円の破綻も、ロシアからでした。30倍に
膨らんだレバレッジ(信用借り)だったのです。
LTCMにとって1%の金利上昇が、6000億円の元本に対しては30%
の金利上昇に相当します。わすか1%の利益が、元本に対し30%の利
益になるのと同じです。
【結論】
市場のゆがみは、金融工学が使われていない後発国の市場ほど、発
見しやすい。そのため、市場規模の小さな後発国の株式市場は、操
作的に乱高下しやすい性質をもつことになります。
ヘッジ・ファンドは「歪みを正す」ことができる過程では、利益を
得ます。このことの意味は、ヘッジ・ファンドが通過した市場は、
「市場の歪み」で利益を上げる機会が少ないということでもありま
す。
また小泉政権(竹中大臣)のように、証券規制の緩和や、金融対策
で外資を呼び込む政策をとった国では、儲けやすくなります。
退陣後の06年9月ころから、関係するスキャンダルが出ます。ホリエ
モン、村上ファンド、そして本命の□□□□スです。竹中スキャン
ダルも、ありそうです。
これが、03年〜05年の日本でした。中国も同様です。新興国におけ
るヘッジ・ファンドと政府高官は、ほぼいつも協調路線です。
今アフリカ市場が注目されているようですが・・・いよいよ行き先
がなくなりつつあることを示します。
▼03年〜04年の日本の株価の歪み
2003年、04年の日本株(日経平均8000円〜1万円)は、米系ファンド
からみれば、株価が安すぎる歪みがあると見られました。
株価がすでに高かった米国と世界市場からは、「日本市場に、悲観
論から来る安すぎる価格の歪み」が見えたのです。
そのため、大きな投機相場になった。
米英系ファンドは、
(1)株価純資産倍率(PBR:株価÷1株あたり純資産)が1以下
や1付近の株で、将来上がる可能性が見えるものをロング
(買い持ち)し、
(2)PBRが高くてPERが高く、株価が高値に歪んでいるもの
をショート(空売り)する方法も組み合わせした。
こうして、わが国の05年の40%の株価上昇は、米英系ファンドに、
総計で約50兆円の利益(確定+含み利益)を与えています。
今500兆円の時価総額のうち25%(125兆円)は外資です。
(注)これが米国の貿易外での利益になって、米ドル機軸通貨体制
を支えています。米国は、海外でのファンドの利益で貿易赤字を補
填します。米国企業の利益の、約30%は金融収益になっています。
こうしたロング&ショートが、ヘッジ・ファンドの基本手法です。
▼ポートフォリオ
ポートフォリオ(資産選択理論)やアービトレージ(arbitrage:価
格差を狙う裁定取引)も基本的な考え方は、ロング&ショートと、
同じです。
ポートフォリオは「ひとつのカゴに卵を入れるな」ということであ
り、異なる値動きをする性質を持つと判断される株、債券、一次資
源、不動産、外国為替等を組み合わせます。
投資信託やファンドは、ポートフォリオを組んでいます。
▼アービトレージ(アルビトラージュ)
アービトレージ(裁定取引)も、「裁定買い」と「裁定売り」を組
み合わせ、価格の歪みを利益にする方法です。
裁定買い・・・高いと思う先物を売り、安いと思う現物を買う。
裁定売り・・・安いと思う先物を買い、高いと思う現物を売る。
「先物」がからむので、方法はすこし複雑ですが、根本は「割安」
か、または「割高」なもの、つまり市場の歪みを見つける方法です。
ロング&ショートと同じです。
以上で、ヘッジ・ファンドが使う「市場の歪み」を見つけそれを安
定して利益化するための
(1)ロング&ショート、
(2)ポートフォリオ、
(3)アービトレージの、もっとも基本的な仕組みを概観したこと
になります。
(注)アービトレージは、方法が広く普及したため、実際価格と理
論価の差異が次第になくなって、利益を得ることはできなくなって
います。そのため今の多額な投機の主流は、ロング&ショートです。
■6.ロング&ショートと必要資金
ロング&ショートでは、手持ち元本が少なくても、レバレッジ(信
用借り)で大きな金額の運用ができます。売りで得た資金を買いに
回すことができるからです。
株100億円分の空売りをする。代金とし100億円の現金が手に入りま
す。この100億円で値上がりを想定する別の株を買う。100億円分の
株券が残ります。これを担保に次の買いをする・・・
売買がほぼ同額です。少ない元本(例えば100億円)で多額の信用を
使うことができます。投資家から集めた小額の元本で、その数倍〜
10倍、時に50倍の運用ができることになります。
以下では主要な証券用語を解説しています
http://www.nomura.co.jp/terms/japan/sa/saitei.html
1980年代から米国ウォール街で始まり、その後、毎年拡大してきた
金融工学の中心にあるのが、ロング&ショート、ポートフォリオ、
裁定取引です。これに類する金融取引が、年々、巨額化しています。
■7.あとは乗数金融
買った株や債券を担保にして、信用を膨らませます。100億円の債券
を証拠金にして掛け目90%で90億円借りることができたとします。
また別の90億円の株や債券が買えます。更にこれを担保(証拠金に
相当)にして81億円の株と債券が買えます。
つぎつぎに信用が膨らむ「無限等比級数」になります。
(前稿でそのメカニズムを示しています)
掛け目が90%なら、
元本100億円 → 100億円÷(1−掛け目0.9)=1000億円の信用に
よる投機ができます。元本の10倍の運用額です。
ヘッジ・ファンドの元本は170兆円です。もちろん全部がこうした1
0倍の乗数で投機をしてはいない。しかし、平均で5倍であっても17
0兆円×5倍=850兆円の総運用です。
(注)この掛け目は、証拠金とする株や、債券(国債・社債)の格
付けと、運用する主体の信用によって変わります。例えば普通の個
人の、信用借りの倍率(乗数)は、証拠金に対し3倍〜5倍くらいで
す。
【中央銀行より大きい】
世界の中央銀行の総資産額をはるかに超える信用での運用を、ヘッ
ジ・ファンドが行っていると言っていいでしょう。(もちろんその
総額は不明です。統計はありません。)
5倍なら100万円の元本で最大500万円の運用ができます。これを行う
と1%の金利上昇が5%の利払い増加に相当します。わずかな金利の
上昇が、元本に対する利払いを膨らませ、そのため、可能な運用額
が縮小します。
ヘッジ・ファンドの運用額の縮小とは、大規模な売りです。売れば
株も債券も下がります。追い証が必要になって、また売らねば資金
繰りがつかなくなる。こうして、壮大な、マイナスのスパイラルに
はいるのです。
06年4月から7月のように15%株が下落すると、多額の追加の証拠金
(追い証)が必要になって、信用を膨らませて投機していた人の持
ち株は、投げ売られます。
投げ売りとは、価格を見ないで売る換金売りです。
利益を無視しても、売らねば破綻するからです。
25%の株(総額125兆円)をもつ個人の、日々の売買の50%は信用売
買です。多くの個人がインターネットを通じ信用売買や空売りをす
るようになったのが04年、05年です。
これによって株価形成の内容は「自己強化」を強め、過去とは変わ
っています。自己強化とは、追随買いやその反対の売りで、短期で
の騰落幅(ボラティリティ)が大きくなることを言います。
こうした傾向が生まれるのは、前稿でも述べた、証券会社、銀行、
保険会社を含む、等比級数で膨らむ乗数金融(レバレッジ)がある
からです。テコのように金額が膨らむ。
世界の金融資産の総額は、乗数金融による投機で、膨らんでいます。
株は買いが増えれば、会社の純益という根拠を超え、いくらでも上
がります。(注)下がるときも、同じです。
この乗数金融は、誰かが破産すると、別の誰かに連鎖倒産及ぼすリ
スクを増やします。ヘッジ・ファンドにからんで信用供与していた
銀行も、あれよあれよという間に破綻する。そうした事態が起こる。
投機家ジョージ・ソロスは、90年代の半ばから、「グローバル金融
の危機」として信用連鎖が原因になる危機を警告しています。行っ
ている本人が、誰よりもリスク、つまり崩壊の危険が分かるからで
す。
今回のような、わずかな金利の変動による株価や債券価格の騰落が、
・システミック(連鎖的)な「金融資産のバブル的な高騰」、
・あるいは「金融資産の崩落」を生んでしまいます。
アマゾンの蝶の羽ばたき(わずかな金利上昇など)が、複雑系(全
体)ではハリケーンになるという感じです。
世界の債権(金融資産)と債務(負債)が入り組んだ、ヘッジ・フ
ァンドを先端にしたグローバル金融には、そのベースとなる金利の
変動が、大きな影響を及ぼします。
【余談】本稿ではとりあげていませんが、例えばデリバティブ(一
種の保険)は、簿外取引とされていました。貸借対照表に載らない。
そうした理由は、十分に活躍させ規制をしないためです。
その理由は?と言えば、米国の国益になったからです。貿易赤字の
米国を維持するには、海外で得る「金融利益」をもってくる必要が
あったからです。
■8.乗数金融の効果
乗数金融が、生んだのが「マネーの過剰」です。
このマネーは働いたことによる売上からくる所得ではない。
金余りは、ここ10年の世界的な現象です。しかしこのカネは世帯所
得を素通りしています。信用借り(レバレッジ)が絡む金融的なも
のだからです。信用借りも、貸した側にとっては金融資産です。
元は借金である投機資金(ファンド、ヘッジファンド)が債券・株
価・不動産・資源価格を上げるスパイラル(螺旋:らせん)構造で
す。原油やゴールドをシンボルにする資源価格もその一端です。
▼株価におけるPER理論が果たしたこと
株式市場を起点としたマネー増殖は、PER理論によって説明がで
きます。
PERはPrice/Earning Ratio(株価/収益倍率)です。
株価が1000円とします。その会社の、1株あたりの次期予想純益が5
0円なら、予想PER=1000円÷予想純益50円=20倍です。
これは次期予想の税引き後純益の20倍が株価であるという意味です。
1株でなく全株では、時価総額です。
株価×株数=時価総額=会社の評価額
今、日経225種の予想PERは18倍から20倍くらいです。
株価が次期純益の18年分〜20年分であることを示します。
(注)市場全体のPERは、比較的長期に安定する傾向をもってい
ます。
次期の予想純益が5億円の会社は、同業のPER水準が20倍なら、
100億円の時価総額と評価される傾向をもつということです。
次期予想純益が8億円(+60%)になると、PER20倍までは買われ
る傾向が強くなりますから、株価の時価総額は8億円×20倍=160億
円に向かいます。
▼3億円が240億円の信用(=マネー)を生む
3億円の追加利益が、時価評価では60億円の評価増になります。
言い換えれば、3億円の増益予想が60億円の時価評価に化けます。
この株をもつ人は、それを担保に信用売買ができます。
60億円×80%=48億円くらいの信用増加になります。
これが乗数効果を持てば、無限等比級数で48億円÷(1−0.8)
=240億円の信用総額になります。これがあらたな信用創造です。
3億円の増収予測が、信用の連鎖で240億円のマネーを生みます。
日銀のマネーの増刷と似た効果をもちます。
信用とは、貸す側(金融機関)にとって240億円の金融資産であり、
借りる側(ヘッジ・ファンド)にとっての240億円の負債です。
この金融資産240億円は、このヘッジ・ファンドが破綻すれば、価値
がゼロに向かいます。
以上が乗数金融(信用乗数)です。危険でしょう?
▼マネーの増殖
今、マネーは中央銀行が発行しなくても、民間金融に組みこまれた
信用乗数で膨らみます。例で示したように、元本100億円が500億円
〜1000億円の運用資金になる。
わが国が世界に10年先駆けて経験した、80年代末のバブル期と地価
と株価に似ています。
(注)その根本の理由は、わが国の団塊の世代が、米国のベビーブ
ーマーのピークより10年早く、中国より20年早かったからでしょう。
1990年日本の土地バブル、2000年米国のITバブル、2010年(?)
中国の不動産バブル。いずれも崩壊します。
100億円の土地を買う。その土地に、当時の銀行は100%以上の担保
をつけました。それでまた借り、別の100億円分の土地を買う・・そ
れを担保にという無限等比級数です。
日本以外の世界は、日本のデフレ期(低金利、物価上昇ゼロまたは
マイナス)の10年間に、バブル的な信用(=マネー)を膨らませて
います。
その結果が、世界で120兆ドル(1京3000兆円)の金融資産です。
以上で1京3000兆円もの金融資産の意味が了解できます。
(注)金融資産の適切な額は、世界のGDPの2倍、つまり$80兆(
880兆円)に思えます。50%の40兆ドル(4400兆円)がバブル部分と
して、いずれ減ることになるでしょう。
ビル・ゲーツの5兆円の株資産もそのひとつです。ラスベガスのメガ
・リゾートホテルも、上海の摩天楼、六本木ヒルズ現象も同じです。
スペイン(マドリッド)の普通の住宅(100平米)が6000〜8000万円
(世帯所得の30年分)もするのは異常でしょう。日本で言えば1億
5000万円に相当します。これが東京都心の90年バブルでした。
その後、商業地地価は80%下げました。
▼世帯所得は増えない、しかしマネー額は増えた
働いて得る世帯所得(インフレ率控除後の実質所得)は、米欧でも
増えてはいない。日本では、減っています。
しかし世界も日本も金融資産=金融負債は膨らんでいます。
日本企業は借金を減らしました。
その代わり、企業が減らした以上に国が借りています。
「世界は、今、債券、株、不動産のバブル期の末期である。」と言
えば、そうではないという反論は多いでしょう。当然です。
株・債券・不動産を買う人と売る人の売買金額は、常に等しいから
です。100億円分を値下がりすると思い売る人がいれば、その100億
円分を値上がりすると判断し買う人がいます。
両者は同額です。
同額でなければ、金融商品でも売買が成立しません。
そのため金融では常に、50:50で相反する見方があります。
そこに、両者の合意点である価格があります。
しかしここで確認すべきことは、買う側の信用額(運用マネー額)
が、乗数金融で膨らんでいることです。そのため買いの勢いが強く
なる抜きがたい傾向をもつことになります。
つまり今の株価、債券価格、不動産は上がりすぎる。
▼負の乗数効果
大きな信用乗数のベースとなってきた低金利が、過去10年と違い、
反転して上がれば、乗数金融で膨らんだマネーは、金利上昇に正比
例して縮小します。
これは、売りが売りを呼ぶ展開です。
乗数金融で膨らんだマネーは、株価や債券価格が下落する(=金利
が上昇する)と、膨らんだときと同じマイナスの乗数効果で減少し
ます。
「担保が値下がりし、つぎつぎに追加の証拠金(追い証)もとめら
れ、損を承知で換金売りを続け、最後は破産する」事態です。1000
億円が消えるのも一瞬(1週間)です。
乗数金融(信用乗数)は、金利によって、大きく膨らむ時期と、必
要以上に縮小する時期を生むことなるのです。
【期待金利の上昇が債券価格を下落させる(→詳細は前稿)】
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
債券(国債)価格=(1+表面利率×残存期間)×100
÷(1+期待金利×残存期間)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
表面金利は発行時の金利です。分母の期待金利、つまり将来予想金
利が、今の日本のように上がると、債券価格はそれに正比例し下落
します。(注)原理を無視し、あるいは知らず、株の売買を行って
いる人も多いようですが・・・
■9.金利上昇時代と認識しなければならない
▼消費者物価上昇率が決める金利
前稿で、金利が何によって決まるかという原理の「フィシャー公式」
を示しました。貸す人は、物価の上昇率より高い金利を要求しま
す。これが、金利の原因になります。
長期金利←(期待物価上昇率+回収のリスク率)
金利は、「物価の(集合的な)予想上昇率+回収のリスク率」に従
って変化します。
(注)日銀が0.6%の消費者物価上昇(6ヶ月連続)を根拠に、ゼロ
金利をやめ0.25%の利上げをした理由でもあります。
世界の中央銀行の政策金利は、物価上昇率で決まる性格をもってい
ます。一般に、マネー政策とは、インフレの抑制だからです。
事例として、わが国の過去20年がどうだったかを見ます。結論を言
えば、1年もの定期預金の金利(長期金利)は、消費者物価上昇率に
一致しています。
消費者
1年もの定期の金利 物価上昇率
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
1985年 6% 6%
1987年 4% 4%
1990年 6% 6%
1992年 4% 4%
――――――――――――――――――――――――――――
1995年 1% 3%(以降は政策金利異常期)
1998年 ほぼ0% 0%
2000年 ほぼ0% −1%
2003年 ほぼ0% −1%
2006年6月 約0.3% 0.6%
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ここ10年、世界で、物価の上昇率がもっとも低いのが日本です。そ
れを原因に、日本の低金利は10年続き、今も異常な低金利です。
参考のために、世界の消費者物価の上昇率を示します。
(06年6月)
米国4.2%:ユーロ圏2.5%:中国2〜3%(あまり信用できない)
各国の長期金利は(ほぼ)必ず消費者物価の上昇率を上回ります。
米国長期金利 5.14%(10年物国債の利回り:06年6月)
ユーロ長期金利 2.98%(3ヶ月物国債の利回り:06年6月)
中国 5.6% (短期貸し出し金利)
日本の金利が最も低く、次はユーロ諸国です。
(注)ユーロは今原油価格高騰でオイルマネーが集まっているので
低い。これも、ヘッジ・ファンドの投機資金になっています。
■10.インフレを示唆する資源価格
ロイター指数は、英国の通信社ロイターが、世界の原油を含む原材
料(一次産品)価格の、1931年の価格を100として統計を取り続けた
ものです。これが世界の企業物価(卸売り価格)のベースになりま
す。
1931年(満州事変の年)100 → 2006年6月2032
75年間で20倍になっています。
1年平均に直すと4%の上昇です。
世界の一次産品は、長期の年平均では4%上昇してきたという意味で
す。
これは消費者物価の長期の上昇率にほぼ等しい。
今、米国の消費者物価の上昇が4.2%でこの水準です。
卸売物価の上昇は4.5%です。
世界の長期金利の正常値は、5%〜6%でしょう。
(注)これもほぼ米国の金利水準です。
ロイター指数の上昇は、各年では当然に大きな変動があります。
直近の1995年平均は1679でした。1996年7月は2032です。
1年で21%も上昇しています。5年分の上昇。
しかし今、先進国のGDPの中では、モノではないサービス部分が
およそ三分の2です。過去のようには、原油や資源価格の高騰が消
費者物価の上昇にならない。
中国という、低い賃金の新興工場で組み立てる製品が世界の消費者
物価を下げる要素になっているからです。
以上の事情を考慮しても、直近1年でのロイター指数の21%の上昇は
異常です。理由はヘッジ・ファンドつまり投機資金の流入です。商
品市場は、イルカのような株式市場に比べれば、小動物のように小
さい。わずかな資金の流入で高騰します。
株価が天井まで来たという判断から、資源にその投機の若干分を振
り向けるようになっています。
▼(再掲)期待インインフレ率が高まれば金利は上がる
市場の、期待インフレ率の高まりから想定金利(経済学では「期待
金利」)が上がれば、上記の式で、分母の金利が大きくなるので、
低い金利の国債価格は、下落します。
金利←(期待物価上昇率+リスクプレミアム)
わが国でも、今年は、なんだか値上げだらけになっています。
▼(再掲)皮肉にも経済成長率が高まっても金利は上がる
名目金利=実質利子率+期待インフレ率
≒実質経済成長率+期待インフレ率≒名目経済成長率
経済成長率の高まり(景気回復)とは、
(1)企業の設備投資が増え、
(2)個人消費が盛り上がることです。
企業の設備投資は資金を必要とします。
個人消費の増加も資金を必要とします。
つまり資金需要が増える。そうすると金利は上昇します。
日本経済の好転です。歓迎すべきことです。しかし債権・債務が1京
3000兆円にも膨らんだ現代経済には、別の面から打撃を与えます。
ヘッジ・ファンドは今、呻吟しているように見えます。
ウォーレン・バフェットが手仕舞いし、寄付した理由でもあります。
自分の残された約5年〜10年では増やせない、機会はないと思ったか
らでしょう。バフェットにとって、手仕舞いをすればお金は余りま
す。99%を寄付しても1%が残って、使いきれない。
【後記】
金融には奇妙なテクニカルタームが多い。説明しながら書くのに、
すこし苦労します。
金融資産は「蓄積された購買力」です。金利率と株価上昇で増殖し
ます。それが今世界のGDP(≒商品とサービスの生産力)4000兆
円の3倍の1京3000兆円です。
生産力の3年分の購買力です。
多すぎるのか、少ないのか、判断の分岐点はここです。
1京3000兆円金融資産の平均利回りが5%(650兆円)を超えることは
不可能でしょう。利払いだけで、世界のGDPの16%になるからで
す。正常な5%の金利が払えない。そうすると多すぎます。
このことの意味は、世帯年収580万円の人が、その16%(93万円)を
金利や配当収入で得ることを意味します。不可能でしょう?
今の金融資産(1京3000兆円)の実質価値は縮小せざるを得ない。
名目額1000万円の預金(金融資産)でも、物価が2倍になれば、購買
力は500万円(実質価値)です。そうした世界に向かっています。
すでに資源価格との関係では、これに向かっていますね。
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<278号:意思決定と情熱のメカニズムは、
どこまで分かっているのか?>
06年7月5日号
【目次】
1.最適な意思決定は、理性的なものか?
2.感情の回路が切断されるとどうなる?
3.「ヒューリスティック」な意思決定
4.限定合理性(bounder rationality)で意思決定している
5.集団的意思決定も働く
6.危険と報酬
7.将来の成果期待が、実際の成果より大きく人を駆り立てる
8.情熱をつかさどる側座核の働き
<279号:意思決定と情熱のメカニズムは、
どこまで分かっているのか?(2)>
06年7月12日号
1.振り返れば・・・
2.「側座核(そくざかく)」の働き
3.やる気はどこから起こるか
4.「三昧(ざんまい)」の境地
5.恐怖や嫌悪に駆られると、意思決定の誤りを犯しやすい
6.正しい意思決定に向かって
<280号:経済財政白書から読み取れること(1)>
06年7月19日号
【目次】
1.2006年は「非常時」を抜け出したという認識
2.なぜ、雇用・設備・債務の過剰が生じたか?
3.政府の認識を信じ、乗って設備投資した人たちの哀れ
4.1999年の経済白書は相当に遅れて、3つの認識の変更を言
う
5.2002年の白書は「構造改革の宣言」だった
6.2003年の白書は、「回復への踊り場」だったとする
7.2004年の白書は、「景気回復の宣言」だった
8.2005年の白書は、「穏やかな回復」宣言だった
9.2005年までを、まとめて見れば
10.やっと2006年経済財政白書
11.本当の、GDP回復理由
12.株価の上昇による資産効果
<281号:白書から読み取れること:
5000万世帯の現状と今後>
06年7月26日号
【目次】
1.52%が、55歳以上の世帯の買い物
2.人口構造についての基本認識
3.世帯所得
4.生活意識
5.65歳以上の世帯の特徴
6.雇用と賃金
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