大接戦の、米国大統領選挙の予想
Written by admin on 2020年10月29日 – 12:00
米国の大統領選挙が11月3日(日本時間は3日夜間から)へと、あと5 日に迫っています。いうまでもなく、選挙結果が、2021年から25年ま での、世界の政治、経済、金融の60%部分くらいを決めます。 日本の首相の選任にすらも、メディアが報道しない陰で、影響を与え ています。それがシンクタンクのCSIS(戦略国際問題研究所)です。 政治家では小泉進次郎、浜田和幸、辻清人、渡部恒夫などが籍をおい たことがある国際政治と防衛戦略の組織です。 CSISの日本部門には防衛省、公安調査庁、内閣官房、内閣情報調査室 職員が籍を置いています。日米合体の政治組織です。 最近は、トランプの反中国に対して、日本の、親中国の政治家の名前 をあげて、警告しています。 仮に、新しい大統領が、親中国のバイデン(民主党とウォール街)に なると、日本の親中国の政治家を、警告めかして挙げるリポートは、 なくなります(断言します)。 https://www.csis.org/analysis/chinas-influence-japan-everywhere-yet-nowhere-particular ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <432号:大接戦の米国大統領選挙の予想> 2020年10月29日:無料版 【目次】 1.米国のメディアを見るときの注意(政治に関して) 2.大統領選挙の予想 3.トランプの選挙戦略 4.トランプが、次期大統領に再任の可能性 【後記】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.米国のメディアを見るときの注意(政治に関して) 大統領選選挙の予想を米国メディアから得るとき、注意しなければな らないのは、 ・国際メディアのCNNは反トランプ(反共和党)であり、 ・FOXは逆に、親トランプ(反民主党)が、明確であることです。 両方は、政治に関する同じ事実に対して、真逆の評価と論評をしてい ます。 総じて米国メディアには「反トランプ」の色彩が強い。 政党の支持では、学歴が高いインテリ層、管理層、非白人には、民主 党支持が多く、中南部の現場労働者階級にトランプ支持が高いという 日本にはない「分離」があります。 政治的な偏向は、日本の保守系の読売・産経と、革新系の朝日・毎日 より鮮明です。日本のメディアは、実際は違っていても、表向きでは 「政治的は中立」を標榜しているからです。 このため、おなじ無作為抽出のサンプリングのはずの世論調査でも、 読売・産経では「内閣、与党」支持率が数ポイント(3%~5%)は高 く出て、朝日・毎日では低くでます。読者層にも違いがあります。 理由としては「電話での聞き方」の違いが大きい。日本では無党派層 が40%から45%と多い。このため、第一問では「どちらでもない」と 答える人が最大多数になります。 そのとき第二問を入れて、「それでもあえて言えは、どちらの支持で しょうか」と問うと、時の内閣・与党(現在は自民党)の支持が、4 ポイントから5ポイントは増えます。同じ聞き方ではないのです(こ れもメディアは言いません)。 米国の世論調査では、インターネットで見ることができるReal Politicsが、メデイア数十の世論調査(各々サンプル数は、州単位で は500人~2000人に分布)を全部載せ、平均値を出しています。 当方は、Real Politicsのデータを使います。「政治的偏向」が薄ま るからです(ゼロではない)。平均値でも、反トランプのメディアが 70%以上なので、民主党寄りの結果が出ます。 いつも衛星放送で見ているCNNは、相当に激しい反トランプであり、 FOXは逆に強い親トランプ。情報内容と評価が180度異なっています。 米国民は「自分で選択し」、自分の意に染むメディアを見ているでし ょう。このため、国民の政治的な対立は、日本より激しくなります。 個人が主張する国民が多いのが米国です。日本では「そのとき属する 組織や共同体の空気の支配」が強い。個人が、空気とは違う、個の意 見を主張する個人主義は強くはないのです。これを「和(わ)の国」 と言ってきました。和とは、料理のように意見をまぜて和(あ)える ことです。 大阪は東京より、微差ですが、比較的に個人主義でしょう。政党では、 与党ではない保守系の「維新」が強い。それでも維新の「都構想」は、 ラベルが違います。 当方は字義どおりにとって、「大阪府を大阪都に変えることか。当地 の豊中市も、豊中区か」と思っていました。そうではない。大阪市を 廃止して、現在の24区を、特別区の4区、淀川区(議員18人)、北区 (議員23人)、中央区(議員23人)、天王寺区(議員19人)に再編成 することでした。 二重行政の無駄(維新は1.1兆円という)をなくすことだとしていま すが、その金額の根拠は、明確ではない。 「無駄の排除には全くならない」という計算もありますが(藤井聡京 都大学教授:元内閣府参与)、維新は、この論争を回避しています。 大阪市民の投票は、11月1日です。世論調査では賛成39%、反対42% ですが(朝日新聞)、どうなるか? 〔Real Politicsのサイト〕 https://www.realclearpolitics.com/epolls/2020/president/2020_elections_electoral_college_map_no_toss_ups.html ■2.大統領選挙の予想 【選挙制度】 米国の大統領選挙は、市民権もつ、18歳以上の有権者登録をした国民 が、居住地の選挙人(下院議員が選挙人になる)を選ぶ、間接選挙で す。選挙人は、下院議員のように、およそ人口割りで決められていま す(上院議員は「なぜか」、人口にかかわらず各州2人:合計100人)。 選挙人は50州で538人であり、過半数は270人です。270の選挙人を獲 得したほうが、次期4年の大統領になります。 (注)ただし、選挙人のうち自党候補に投票しない「棄権」も、毎回、 数人は発生しています。共和党には、少数ですが反トランプの議員が いるからです。自民党のような「絶対的党議拘束」はありません。し かし数名の棄権で、決定がひっくり返ることはほとんどありませんで した。州単位の結果の差が、選挙人数で大きく出るからです。 米国の州は、2種類に分かれます。 (1)民主党支持または共和党支持が、毎回、ほとんど決まっている 州。人口が少ない内陸部と南部には、共和党支持が多く(赤い州)、 東西の、人口が多い、カリフォルニアやNY州などの沿岸部には民主支 持が多い(青い州)。両方は、ほぼ固定しています。 (2)4年毎の選挙のために、民主党・共和党と揺れる州。民主党支持、 共和党支持がほぼ50:50で拮抗しているからです。スウィング・ス テート(揺れる州)と呼んでいます。 州では、ネバダ(選挙人6人)、アリゾナ(11人)、テキサス(38 人)、フロリダ(29人)、ジョージア(16人)、ノースカロライナ (18人)ペンシルバニア(20人)、オハイオ(18人)、ワイオミング (10人)、アイオワ(6人)、ミネソタ(10人)などです。 この中でも、選挙人が多いテキサス(38人)、フロリダ(29人)、ペ ンシルバニア(20人)、オハイオ(18人)、ジョージア(16人)、合 計の選挙人121人が、どちらに多く振れるかで、大統領が決まります。 州単位の国民投票で、比較多数をとったほうが、その州の選挙人を丸 取りする仕組み(システム)です。米国は、リベラルに傾く民主党、 保守が強い共和党の、二大政党しかできにくい制度です。 県別に支持率の差が小さな日本の小選挙区制では、与党になる方が一 党で圧倒的に多数になり、野党は少数(多数政党)になりやすい。選 挙区内では死に票が多く出ます。ただし約10%の選挙民が、「自民支 持→野党支持」と動くと政権が変わります。支持率では10%差(10人 に1名)が肝心になります。 固定的な支持率の多さから(ソリッドステートという)、ほぼ確定し たと想定されている選挙人獲得は以下です(10月29日時点) 【州ごとの、数十種の世論調査の平均から】 (1)民主党のバイデンへの選挙人 232名 (2)共和党のトランプへの選挙人 125人 (3)未定の選挙人 181人 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 合計 538人 https://www.realclearpolitics.com/epolls/2020/president/2020_elections_electoral_college_map.html 世論調査の平均から見て、確定したとされている州の選挙人では、バ イデン232人、トランプ125人と、1.9倍の差があります。 バイデンはあと38人(例えばテキサスやフロリダ)を獲得すると、過 半数の270人を超えて、投票による選挙人数では大統領になります。 一方、ほぼ確定が125人しかいないトランプは、未確定州(選挙人 181人)から144人(80%)を獲得しなければならない。 未確定州(スウィングステート)の80%で、勝利を収めなければなら ないという厳しさです。両候補の支持率が50:50付近で拮抗している なかでは、困難に思えて、支持率の高いバイデンで確定でないかと見 えます。 ところが、ここからが、米国の民主主義にある複雑(不透明)なとこ ろです。これを書きます。 ■3.トランプの選挙戦略 正当な道は、スイングススレートの100%獲得です。しかし、これは、 以下の状況であり相当に難しい。(10月29日時点;調査された支持率 の平均:Real Politics) https://www.realclearpolitics.com/epolls/2020/president/2020_elections_electoral_college_map.html (1)今回は、コロナから、郵便投票と期日前投票が6900万人(最終 的には7000万人以上)と多い。今回の大統領選挙の投票率は、人種、 移民、コロナ下の医療保険、対中国政策の問題から4年前の前回(53 %)より高く、60%と見られています。 今回の予想投票数は前回の1億3300万人を超えて、1億5000万人でしょ う。その中の7500万人(50%)は、郵便+期日前投票という特殊な選 挙です。 投票所に出掛ける州は、人口の少ない内陸部が多く、それらの州はト ランプ支持が多い。11月3日の開票結果では(11月4日)、トランプが 選挙人の過半数を制する可能性が、とても高い。というより、これは 「確定」でしょう。 つまり、11月4日時点で、トランプは勝利宣言をするでしょう。万一、 バイデンが多ければ、トランプの可能性は消えますが、これは「起こ らない」と予想します。 郵便+期日前投票の開票は、投票の開票と同じ11月4日から行われま す。それぞれに選挙基盤違う50州もあるので、開票には、1週間はか かるとみられています(米国は、政治では独立性が高い州が作る国家 です:合衆国の意味がこれです)。 郵便+期日前投票(推計7500万票:約50%の票)では、「民主党バイ デンの支持が相当に多い」と予想されます。普段から投票所に行かな い人たちに、民主党の支持層が多いからです。 以上のことは、あらかじめ分かっていることなので、投票所投票で多 数派を占めたトランプは、「郵便投票には二重投票、買収、強制など の不正と集計ミスが多い」として集計の差し止めを訴えることが想定 されます(というより、訴訟になることは確定しています) 訴訟の判断をするのは、州の最高裁を経て、最終的には、ワシントン の連邦最高裁です。連邦最高裁は、先日、共和党が多数の上院の評決 で任命されたバレット女史を含み、保守派6人:リベラル3人です。ト ランプに有利な評決をする可能性が高い。 つまり多くの「郵便+期日前投票」が集計にはいらない州が出てきて、 この場合、「トランプの勝利」になるでしょう。乱暴ですが、判例が 法より重要な慣習法の米国の法制度ではこれが通るのです。 このときは、バイデン側も黙ってはいません。4年前の候補ヒラ リー・クリントンは、バイデンに「どんなことがあっても、民主党の ゴアが、ブッシュ対して行った敗北宣言はするな」と進言しています。 ここでも法廷闘争になります。 つまりトランプが集計差し止めで勝ったときも、バイデン側から逆訴 訟を受けることも確定しています。結果はどうなるか。 21年1月21日の大統領就任式まで、大統領が決まらない事態の可能性 が高い。バイデンも降りないからです。(注)このとき、政治の不安 定から、米国と、日本を含む世界の株価は下がるでしょう。 両方の訴訟で決着がつないときは、今回の同時選挙で1/3が入れ替わ る、下院議員(435名)の選挙で、大統領が決まります。下院の1/3改 選では、下院の多数派は、民主党になる可能性が高い(これもほぼ確 定)。とするとバイデンが大統領ですが、ここも単純ではない。 共和党が数で優位になる、各州1名の選挙人にする訴訟を、トランプ が起こす可能性が高い。このときも、連邦最高裁で評決します。ここ でも、トランプ優位の評決になる可能性が高いのです。 トランプ、たぶんここまで見込んで、リベラルだったギンズバーグ女 史(87歳)が9月に死亡したあと、10月初旬に、保守派のバレット女 史を指名し、共和党が多数派の上院(各州2名×50州=100名)で、急 いで議決させたのでしょう。最高裁判事をめぐって、も「大統領選 挙」があったのです。 以上の経緯を経ても、決着がつかないときは、下院の議長ナンシー・ ペロシ女史(民主党)が、大統領になります。 これはトランプにとって許せないことなので、各州下院1名での選挙 に賭けることになるでしょう。 米国の大統領は「核のボタン」をもつので、一刻の不在も許されませ ん。また大統領は、在任中は不逮捕特権をもっています。 トランプが大統領を降りると、たくさんの「法律違反」から、裁判だ らけの訴訟になります。逮捕・収監される恐れが高い(これも確実)。 しかしあと4年、大統領を務めるとほとんどが「時効」になるのです。 大統領から降りると犯罪者になって、数百億円の負債がある事業も破 産するトランプは、必死さに筋金が入っています。 ■4.トランプが、次期大統領に再任の可能性 二回目の討論を経て、「コロナを克服したトランプ」の支持が高まる 傾向になっています。スイング・ステートのフロリダ(選挙人29人) では、バイデンを逆転しました。第一回の、酷かった討論のあとは、 バイデン47.8%、トランプ44.0%で3.8%の差だったのです(10月1 日)。 10月28日(水曜日)にはバイデン48.0%、トランプ48.0%で小数点以 下ですが、トランプ支持が優勢です。バイデンは相対的に下がり、ト ランプの支持が上がったのです。 問題のペンシルバニア(選挙人20人)では、トランプが45.8%まで追 い上げていますが、下がってもバイデン支持が49.6%と高い。 スウィング・ステートではもっとも選挙人が多いテキサス州(選挙人 38人)では、バイデンが48.0%に落ち、トランプは45.4%に上がって います。バイデンよりトランプの上昇に勢いがあります。 https://www.realclearpolitics.com/epolls/2020/president/fl/florida_trump_vs_biden-6841.html 第二回討論後の10月下旬は、激戦州でのトランプの追い上げが強い。 当方は、裁判と、ギリギリの紆余曲折を経て、トランプ再任の可能性 が高くなってきたと予想しています。トランプへの支持率が、ゆっく りと上がってきたことと、善悪は別にして、国民の票を無効にする訴 訟の準備からです。 誰も行わなかったことですが、政治と社会のルールと正義を破る、ト ランプの面目躍如でしょう。戯画で言えば、おかしみのあるところが ドラエモンのジャイアン。「俺の物は、俺の物。お前の物も俺の物」、 これを堂々と述べます。違法でも、限界のない自我拡張に疑念を感じ ない個性です。 リアル・ポリティックの詳細なグラフから、あなたも、日本のTV局以 上の予想ができるでしょう。自分なりの予想を試みてください。 インターネット時代は、世界のメディアはオープンです。世界の情報 では、日本の既存メディアは激しく「遅れて」います。同じ島国でも、 英国とは違います。 【後記】 自分で言うのは変ですが、『ビジネス知識源有料版』をお薦めします。 Up To Dateで「メディアを超えた血の流れる記事(変な表現:書くと きの実感です)」を、毎週水曜にA4で20枚(1万4000文字:原稿用紙 35枚分)をおとどけしています。 一昨年1000号を超え、現在は1091号です。分野は、経済、現代金融、 金融商品、小売り流通、企業経営です。以下のアンケートも、切望し ています。 有料でYOUTUBE動画を作って欲しいという要望がありますが、当方の 時間等の関係から、躊躇しています。その代わりには、定期的に本を 書いています。 最近の本は、『アフターコロナの(資産を作る)次世代の投資戦略』 です。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【ビジネス知識源無料版:感想は自由な内容で。 以下は、項目の目処です】 1.内容は、興味がもてますか? 2.理解は進みましたか? 3.疑問点、ご意見はありますか? 4.その他、感想、希望テーマ等 5.差し支えない範囲で、あなたの横顔情報があると、テーマ選択と 内容記述の際、より的確に書くための参考になります。 気軽に送信してください。感想やご意見は励みと参考になり、うれし く読んでいます。時間の関係で、返事や回答ができないときも、全部 読みます。共通のものは、後の記事に反映させるよう努めます。 【著者へのひとことメール、および読者アンケートの送信先】 yoshida@cool-knowledge.com ■1. 有料版の新規登録は、最初、無料お試しセットです(1か月分: 毎週水曜日発行):月中のいつ申し込んでも、その月の既発行分は、 その全部を読むことができます。その後の解除は自由です。継続した とき、2か月目分から、課金されます。 (1)『会員登録』で支払い方法とパスワードを決めた後、 (2)登録方法を案内する『受付メール』が送ってきて、 (3)その後、『購読マガジンの登録』という3段階の手順です。 【ビジネス知識源:有料版】 https://www.mag2.com/m/P0000018.html このページから、登録のページにすすむことができます。 【↓会員登録と解除の、方法の説明】 http://www.mag2.com/howtouse.html#regist 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