大きく変化した日本国債の売買市場
This is my site Written by admin on 2012年3月21日 – 09:00

おはようございます。さっきまで、1998年から2012年2月までの、日本
国債(長短)を、月別に誰が買い、誰が売っているかの分析をしていま
した。

データは、日本証券業協会がほぼ1ヶ月遅れで集計している「公社債の
投資主体別の売買動向」です。分かりにくい大きな表です。意味を読み
取るには、エクセルを使った再集計が必要です。

(注)公社債は、長短国債、地方債、財投債、政府短期証券、及び東電
や銀行の社債を言います。日本では、社債が大きな米国とは違い、社債
売買が占める割合は国債の1/100と低い。全体を国債市場と見ていいの
です。

ブルムバーグは、分かりにくいナマの表を、インターネットで報じてい
ますが、他の報道では、見かけません。国債が、どう売れるかは、これ
からの日本の金融と経済にとって、肝心なことのはずなのですが・・・


国債市場は、金融市場の中で最大です。1ヶ月の売買が300兆円(月間の
売買回転率が0.3回)くらいあります。

株式市場は1ヶ月で30兆円(月間で0.1回転)の売買であり、国債市場
の売買額に比べれば1/10と小さい。

国債の保有が少ない個人や企業の参加は極めて小さく、国債をもつ金融
機関の間での売買であるため、巨大資金が動くこの市場も、一般には、
ほとんど知られていません。

わが国を含む世界の金利は、(金融を自由化していない中国を除いて)
、国債の売買状況で決まります。
・債券市場での売り越しが多いと金利が上がり、
・買い越しが多いと下がります。

この主体別売買のデータに注目した理由は、2010年から不気味な変化が
見られるからです。端的に言えば、以下です。

▼(1)国債の売り越しに転じた都銀

2009年まで、国債を大きく買い越してきていた都市銀行(中核が3大メ
ガバンク:三菱、みずほ、三井住友)が、2010年から売り越しをする月
が増えています。

そして2011年は14兆910億円の売り越しに転じているのです。

つまり、資金量が多い都市銀行(約300兆円)が、政府の赤字増加で一
層多く発行されるようになった日本国債を増加買いしなくなっているの
です。

1年の途中で満期償還がある短期債の売買が含まれるので、売り越した1
4兆円の全部が、都銀から手放されたとは言えません。たぶん、2011年
で[14兆円÷4=3兆円]くらいの保有国債が減少しているでしょう。

2012年の1月、2月も売り越しが続いています。最新データの2012年2月
は、1ヶ月で4兆1267億円もの売り越しです。(注)売り越し=[売り-
買い]の差額

「買い手だった都銀が、2010年から日本国債の売り越しに転じた」とい
う事実は重大です。2009年まで、最大の買い手として、月別を単純後継
すると、1年に30~89兆円の買い越しだったからです。

都銀の保有額の増加では、買越額の1/4だったでしょう。
つまり、1年に8~20兆円を増加保有していたのです。

都銀が売り越した国債を誰が買ったのか? 増やして買う主体がないと
、国債が売れ残るため、国債金利はほぼ3ヶ月で暴騰します。

金利がたった2ポイント上がって、長期金利で3%になると、
(1)国債をもつ金融機関に100兆円の含み損が生じ、金融危機になり、

(2)政府は国債の売却が難しくなって、資金不足に陥ります。

一般会計と特別会計(二重計算を除く合計で220兆円/年:2011年財務
省)の、政府予算の支払いが、一挙に困難になって行くのです。

(注)1年で220兆円の政府予算の中には、合計で80兆円の、国債償還費
(70兆円:長期債は60年償還と計算される)と国債の利払い(約10兆円
)が含まれています。

無縁とされているギリシア国債のように、
・償還ができない事態が(数ヶ月の短期で)起こって、
・1年に150兆円も満期が来る国債の支払い延期(これがデフォルト)に
もなってしまいます。

ところが・・・都銀が売り越した国債を増加買いする買い手が、急遽、
現れたのです。

▼(2)都銀の穴を埋めたのが、外人の買い越し

2010年から、日本国債の買い越しを増やしたのは、海外ヘッジ・ファン
ドでした。

・2010年は、月別累計で101兆9737億円、
・2011年は、141兆941億円も買い越しています。

この買い越しは、2012年1月が12兆円、2月が14兆円と、続いています。
外人ファンドの売買は、ほぼ3ヶ月で現金の償還がある短期国債です。
かねてから長期債は、ほんど買いません。

長期保有することが目的ではないからです。

オフショアにある外人ファンドの国債保有は、2011年9月末で47兆4040
億円(748兆円の国債の6.3%:財務省の集計)でした。

11年9月以降、買い越しを増やしているので、2月末現在の保有残は、推
計ですが、少なく見ても、[11年9月で47兆円-その後の満期償還20兆
円+その後の買い越し40兆円=67兆円]には達しているでしょう。

◎「国内の都銀が売り越した分を、海外ヘッジ・ファンドが、オフショ
アから買う」という需給構造に変化しています。

ユーロ債、米国債を売った資金を円に交換して(円買い)、日本政府の
短期債を買い越したのです。このための円買いの増加が、2011年冬と1
月の中旬までの円高(ユーロ安97円:ドル安75円)の主因でしょう。

12年3月現在、67兆円の短期債(満期3ヶ月)を保有するとすれば、1ヶ
月当たりで、政府が現金を振り込まねばならない分は、67兆円÷3ヶ月
=22兆円です。

(注)ヘッジ・ファンドが、円債を売らずとも、国債の満期償還を待つ
ようになれば、円安に向かいます。円のドルやユーロへの交換が起こる
からです。

◎ヘッジ・ファンドが、国債口座に振り込まれる1ヶ月に22兆円の現金
で、毎月発行される短期の借り換え債を22兆円分買い越さない限り、売
り越したことと同じなってしまいます。

都銀が2012年3月以降も売り続けるなら、もっと多く買い越さねばなら
なない。

企業で言えば、3ヶ月手形の満期日に、また同じ額の手形を発行し、銀
行に頼んで買ってもらう「コロガシ」です。手形コロガシに、突如、銀
行がノーと言えば、企業は、他の銀行から緊急に借りない限り、支払い
予定の決済資金にショート(不足)が起こり、早期に倒産します。

以上のような状況が、2010年からの国債市場で起こっているのです。

政府と日本経済にとって重大な問題なので、正確に論を進めます。

以前示しましたが、財務省は「外人ファンドが日本の短期債を増加買い
する目的は何か?」と案じ、2012年1月に、内外の金融機関を呼び、非
公開の会議を開いています。

空売りを仕掛けるために、国債を仕込んだのかと恐れたからです。

(注1)空売り:借りた証券を、現在の価格で債券市場で売って、期限
日の価格で買い戻して返却する取引。相場が現在の1000円から、近い将
来の買い戻す日に100円下落すると、買い戻す価格が売った価格(1000
円)より100円下がって900円になるため、100円が利益になる。空売り
の目論見とは逆に相場が動き、上がれば損が生じる。

大口の空売りが多くなると、債券市場で売りが増えるため、国債価格が
下がる傾向に向かいます。このため、欧州では、EUがPIIGS債の空売り
を禁じています。

ところが禁じても、空売りと同じ効果をもつ「先物売り」や「売りオプ
ション」はできるので、空売りだけの規制では、まるで意味がない。

(注2)また空売りでは、ヘッジ・ファンドなら証券を借りなくて売る
「裸の空売り」も無限にできる。「裸の空売り」では、買いの期限日ま
でに、売った証券分を探さねばならない。

その後の2月には、日銀が、資産買い受け基金(65兆円)を使い、1年に
40兆円(1ヶ月3.3兆円)の国債を、増加買いをするという、過去はな
かった金額の「量的緩和」の発表がありました。

量的緩和は、国債を買って、その代金のマネーを日銀が刷るということ
です。

「あぁ、これは増加買いしてきたヘッジ・ファンドによる、日本国債売
り(空売りや先物売り、または売りオプション)が大規模に起こったと
きの備えだな」と思ったのです。

この対策がないと、国債売りが増えたとき、損失の恐怖に駆られた金融
機関からの狼狽(ろうばい)売りも呼ぶため、金利が高騰するからです
。こうなると、2011年1月中旬までのPIIGS債のように、市場は売り一方
になります。

郵貯・簡保や年金基金を含み、金融機関の預金(預かり資産)はさほど
増えなくなっています。1枚22円のコストで1万円札を刷ることができる
日銀以外には、国債を大きく増加買いする財源が、年々、なくなってき
ているからです。

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    <583号:大きく変化した日本国債の売買市場>
                2012年3月21日号

【目次】
1.最初に、日本国債の投資主体別保有高
2.満期償還額が、毎年、大きくなってきた
3.わが国の、中長期の国債残の想定:
     11年後の2023年には1366兆円と、2011年より508兆円増える4.投
資家別の国債の売買
5.ヘッジ・ファンドは、日本国債売りの準備をしているのか
6.日本国債の売りの機会はいつか?
7.2012年は、インフレで世界の金利上昇の兆しがある
【後記】

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■1.最初に、日本国債の投資主体別保有高
          (748兆1918億円:財務省:2011年9月)

国債の保有を、主体別に見ます。

▼国債の主体別保有

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~+
銀行等        326.6兆円(43.7%)・・・郵貯銀行を含む
生損保等      155.2兆円(20.8%)・・・生命保険、損害保険
公的年金基金   70.3兆円(9.4%)・・・政府が管理
日銀           63.6兆円(8.5%)・・・日銀が管理
民間年金基金   29.0兆円(3.9%)・・・企業が管理
海外           47.4兆円(6.3%)・・・ヘッジ・ファンドの投機
家計           29.4兆円(3.9%)・・・個人分は少ない
その他         26.4兆円(3.5%)・・・政府系
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
合計         748.2兆円(100%) (注)政府負債は1024兆円

銀行(都銀、地銀、信託、第二地銀、信用金庫、農林系、投資信託、郵
貯等)の持ち分がもっとも多く、326.6兆円です。

このうちの都銀が2010年から売り越しに転じたので、影響が大きい。

公的年金、民間の企業年金基金、郵貯・簡保は、預かり金が減っている
ので、すでに、国債の売り手です。今後も、預かり資金量が増えないの
で、国債を、現在の保有以上に増加買いすることはできません。

▼国債発行額

政府は、2012年度に、
・新規債44.2兆円、
・東日本復興債2.7兆円、
・政府系金融機関の資金源になる財投債15.0兆円、
・満期が来る国債の償還をするための借り換え債112.3兆円、
合計で174.2兆円の国債を発行する予定です。

(注)2012年度に、原発や災害等のため追加の補正予算があると、もっ
と増えます。1%金利が上がると、当年度発行の174.2兆円に対し1.7
兆円の利払い分が増えます。

財務省理財局が、174兆円も、市場でどう消化する目標かと言えば、以
下です。

▼政府の消化目標

・市中金融機関の消化分    154.5兆円(海外を含む)
・個人向け                  3.0兆円
・日銀購入                 16.7兆円
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
合計                       174.2兆円
http://www.mof.go.jp/jgbs/topics/press_release/jgbpress24.pdf

【日銀の買いについての説明】
日銀の増加購入を16.7兆円と明記したのが、2012年の特徴です。これ
は、金額が上下するアバウトな数字です。

理由は、金融機関が、174兆円を引きうけきれないからです。

(注)日銀による、政府から直接の国債引けは、金融の規律を壊すとし
て日銀法は禁じています。しかし、国債を債券市場からは買えるので、
有名無実な規定です。

普通、新規の発行(上記の44.2兆円)のみが国債発行と思う人が多い
のですが、そうではない。

■2.満期償還額が、毎年、大きくなってきた

国債は社債と同じように、過去の分の満期が、毎月来ます。12年度は、
748兆円の国債のうち112.3兆円であり、平均償還期は6.6年です。約1
0兆円の国債償還(=返済)が、毎月、途切れずに来るという意味です
。

政府の一般会計では、44.2兆円の赤字財政(44.2兆円の資金不足)で
す。これとは別に、年金会計の赤字が2.2兆円あって、これは債券市場
に出ない「政府紙幣のような交付国債」です。

赤字は、満期が来る国債の償還資金がないということです。
赤字企業が、満期が来た借金の返済ができないのと同じです。

このため112.3兆円の借り換え債を、債券市場で売らねばならない。国
債を持っている金融機関からすれば、満期が来た112.3兆円の現金の代
わりに、期限が延期された112.3兆円の新規国債が渡される感じです。
(注)国債の発行市場には、金融機関が、入札で参加しています。

【都銀とヘッジ・ファンドが交替した】
前記で述べた都銀は、この借り換え債を、2010年からは、保有国債の満
期が来ても、満期の額より、少ししか買わなくなったということです。
代わりに買ったのが、オフショアからのヘッジ・ファンドです。

【日銀の、国債の売買方法】
上記では日銀による購入目標が16.7兆円とされ、買い受け枠の40兆円
とは異なりますが、その理由は以下です。

日銀は、国債を市場で買い、売っています(これが金融の調節です)。
日銀の国債の売買は、買い現先(売り戻すことを約束した買い)や、そ
の逆の売り現先(買い戻すことを約束した売り)が多い。

2012年度に、最終的に、日銀が現在の保有を増加させる目処が16.7兆
円ということです。

都銀やヘッジ・ファンドの売りが増えれば、年間ベースで40兆円の国債
買いに向かう用意を、日銀が行ったというのが(12年2月)、1年で40兆
円の、国債の買い枠の意味です。

それにしても、174.2兆円の国債発行は大きいですね。今後も毎年、新
規国債が40~50兆円増えるので、この借り換え債を含む国債発行は増加
し続けます。

■3.わが国の、中長期の国債残の想定:
     11年後の2023年には1366兆円と、2011年より508兆円増える

財務省の試算(経済財政の中期試算)では、現在はマイナスのGDPの名
目成長率を、2012年度+2.6%、2013年+1.1%、2014年+2.4%、20
15年+2.3%、2016年+1.9%・・・2020年+1.9%、2023年+1.3%
と見たとき、2023年の公債残は1366兆円となって、2011年(財務省短期
証券を含む公債残858兆円)より508兆円も増えます。
  
1年で約50兆円(消費税の25%分)も増え続けます↓。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h23chuuchouki8.pdf

▼物価と金利とGDP

上記の名目GDPは、現在はマイナスかゼロの物価の上昇を、1.1%~2.
3%と仮定したものです。

【物価と金利の、経済原理的な関係】
ただし、物価が1~2%上がることが恒常的と認識されるように変わると
、今度は、現在1%付近の長期金利が2~3%に上がりますから、政府財
政は破産に向かうでしょう。

◎物価の2%上昇は、1年後のお金が2%(2万円分)価値低下することで
す。現在の100万円が1年後には98万円の価値に下がります。このためマ
ネーを1年間貸す人は、金利3%にならないと、貸さない。債券の金利も
3%ならないと買わないのです。このため金利が上がります。

1年後に3%の金利を加えて、(回収リスク率をゼロとして)103万円に
なって戻ってきても、2万円上がった物価から見れば、実質価値は101万
円でしかないからです。

物価が上がるように変わると、金融市場の期待金利が上がるのです。市
場で売買されている国債や債券の金利も同じです。

物価が2%上がると金融市場で認識されると、社債や国債の価格を決め
る期待金利は、その約6ヶ月から1年遅れで2ポイントは上昇に向かいま
す。

物価が上がる中で、日銀が国債の下落を防ぐために、金利の上昇を抑え
ようとして、更に金融を緩めると(=日銀が国債を買ってマネーを増発
すると)、物価は一層上がるようになります。

物価に数ヶ月から1年遅れて、期待金利が、それ以前より上がるのです
。

▼2012年以降のGDPは、労働年齢人口が1年に60人も減るため増えにくい


内閣府が2011年8月に作った、上記の「経済財政の中長期試算」では、
今後、物価の上昇や下落を含む名目GDPと、物価の上昇を引き、下落を
足した実質GDPも増えることを仮定しています。

GDPが増えると仮定しないと、「経済財政の中長期試算」が作れないか
らです。官僚は、こうしたつじつま合わせをやる習性をもっています。
このため、政府の金融・経済政策と、国債を発行する財政は、架空の上
のものです。

【厚労省は、架空の利回りを想定している】
他の例で言えば、政府が預かっている年金基金(約100兆円:GPIF)の
運用利回りは、想定率において、4.1%という高さです。

日本国債の長期金利が1%という低さの中で、毎年、4.1%という高い
利回りを続けることができるわけもない。

しかし、100兆円の基金の運用利回りを、4.1%(利息収入4.1兆円/
年)としないと、年金財政が破産します。このため、無理やり
4.1%の利回りにするという逆転した計算をしています。

年金基金でほぼ70%(70兆円)の運用が、長期金利1%の日本国債です
。なぜ4.1%の利回りという馬鹿げた想定が、政府と国会では通用する
のか? 呆れます。他でも、民主党政府では、実に馬鹿げた、官僚の経
済計算が多いのです。

こうした架空のことを、政府が公然と言うから、企業年金を2000億円も
預かって、ほぼゼロになるまですっかり飛ばしたAIJ(投資顧問業)が
、「毎年5%の利回り、相場が下がっても利益は出る」と言っても、そ
の嘘を見抜けなかったのです。

年金基金の運用担当も、「70%を運用する国債金利が1%なのに、政府
が言う4.1%の利回りという馬鹿なことが、どんな運用方法で可能か?
」と見抜けなかったのです。

架空の物語の上に、今日も官僚は、中長期の財政と増税見通しを描いて
います。それとも、年金基金は、国債の空売りや先物売り、またはオプ
ション売りをする予定だったのでしょうか?

(注)2011年の、ヘッジ・ファンドの平均利回りは、マイナス6%でし
た。ヘッジ・ファンドは、空売り、先物、オプション、通貨スワップ、
金利スワップ、及び複雑な証券が多い仕組み債での資金運用です。世界
のヘッジ・ファンドは8000本、預かり元本$2兆、レバレッジ運用で想
定$20兆(1600兆円)です。

仕組債(Structured Bonds)は、オプション、スワップを多種組み込む
ことで、通常の債券のキャッシュ・フロー(回収金)とは異なるキャッ
シュ・フローを持つようにしたものです。

しかしこの仕組み債でも、下落のリスク確率を引いた期待利回りでは、
世界の国債の期待金利付近でしかないのです。金融は、どんな方法をと
っても、期待金利に収斂します。

【人口問題】
2012年からは、団塊の世代が65歳を超えることが原因で、1年毎に60万
人も労働年齢人口(15歳から65歳:働く人7000万人-60万人)が減りま
す。

7000万人の、1人当たりの生産性が大きく上がらないと、GDP(名目が46
7兆円:2011年12月)の増加予想ができない。

これから5年は続く、1年60万人の労働年齢人口の減少を計算すると、経
済では、100万人の中核都市(福岡や仙台)の全産業が、1年に1都市ず
つ消えることに等しい。

不遜な例えであること承知で言いますが、東日本大震災での産業の破壊
にも相当する、日本経済へのダメージです。

このため280万社の全企業の合計売上は、増えない(個別には、増える
ところと減るところがあります)。

従って、280万社合計では民間企業は、借金での設備投資は増やしませ
ん。工場、店舗、オフィス、ホテル、レストラン等の新規設備投資は、
自社売上が増える見込みがないとできないからです。

[名目GDP=1人当たりの生産性(付加価値生産額)×労働人口]です。
GDPは、生産された商品の総額から仕入(原材料費)を引いたものです
。もちろん、商品には、例えば通信や交通、電気、教育、医療のような
無形のサービス商品もあります。有形の商品が50%、無形の商品(サー
ビスと言う)が50%と考えればいいでしょう。

GDPの増加とは、有形商品とサービスの商品生産額が増えることです。
名目は店頭価格で計算し、実質は物価上昇率(たとえば2%)を引いた
ものです。

物価が1%下がると、名目GDPより実質GDPが大きくなります。2011年12
月期の、年率換算の名目GDPは467兆円であり、前年比で3.1%も減って
います。これは、企業の所得と世帯の所得も3.1%減ったことと同じで
す。

他方、実質GDPは508兆円(前年比-2.3%)です。これは、現在より8
%高かった2005年の商品価格に換算したものです。

少ない名目GDP467兆円と、多い実質GDP508兆円の差である41兆円が、20
11年までの6年間で下がった価格です。6年間で41÷508=8%下がってい
ます。1年平均で言えば、1.2%の物価の下落でした。

労働人口が毎年減ることは、確定しています。このため労働生産性が、
労働人口の減少をカバーして伸びない限り、GDPは増えません。政府の
、経済財政の中長期試算は、誤った前提のものです。あるいは、こうな
ればいいという願望でしょう。

以上について、とても無責任に思える、作文風の中長期の財政見通しを
作った内閣府からの、反論を期待します。

この中長期の財政見通しをベースに、政府の財政と、年金や医療の福祉
の政策、及び、増税案の政策が作られているからです。民主党の政治家
の責任でもあります。エコノミスト達は、一体、何をしていのか。

ここまでを記憶として抑えた上で、次は、投資主体別の、債券市場での
国債売買を見ます。

■4.投資家別の国債の売買

原表は、投資主体別に、1998年から2012年2月までの月別の売りと買い
を対照したものです(単位億円)。
http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/toushika/index.html

本稿で、いつものように数値の意味が読み取れるよう、単純化します。
詳細が必要なら、原表をダウンロードしてください。

データは、いつか、理由を言わず消えるかもしれません。当方が、他を
メールマガジンで取り上げて分析して書いた後、何回か経験したことで
す。

売りと買いは捨象して、買い超をプラスで、売り超をマイナス記号で示
します。数字が小さく、無視できる個人の売買などは除いています。政
府部門は、日銀を除き、国債の売り手ですから、いつも売り超になりま
す。

                  都市銀行以外の
        都市銀行     金融機関       外人        政府部門
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2005年  +89兆円    +127兆円    +33兆円    -214兆円
・・・
2010年  +5兆円     +205兆円   +101兆円   -315兆円
2011年 -15兆円     +183兆円   +141兆円   -307兆円
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(注)「都市銀行以外の金融機関」とは、地銀、信託銀行、農林系、第
二地銀、信用金庫、商工中金、投資信託、証券会社、短資会社、投資顧
問業、生保・損保等です。都市銀行以外は、いずれも一貫して、国債の
買い越しを続けています。

【国債の売りに転じた都銀】
都銀は、2009年までは、1年に20~90兆円の国債を買い越して、保有を
増やしてきました。変化が起こったのは、2010年からです(年間買い越
しが、5兆円に減っています)。

2011年は、15兆円の売り越しです。国債価格の下落を恐れたことが理由
です。

事実、三菱東京UFJは、内々に「金利が上がって国債が下落したら、当
行の資産はどうなるか」のシミュレーションをしています。2011年に報
道されたとき、「あくまで仮定である」と言っていました。政府が売る
国債では、本当のことは言えません。

【現実の行動】
2011年の現実の行動を見れば、売り越しですから、「1%金利の国債は
、金利が1ポイント上がるだけで、保有国債の時価が5%下がって含み損
になるから危険」と見たのでしょう。

国債を買い続けている地銀のディーラーは、債権市場で国債を売る都銀
の動きは分かりますから、やきもきしているはずです。2012年中、これ
が続くでしょう。地銀等は、財務省と金融庁の睨(にら)みに、とても
弱いのです。

(注)後述しますが、08年9月の世界金融危機以降、中央銀行が主導し
て下げてきた米国・欧州の金利は、2012年になって、物価インフレの傾
向から上がる傾向を示しています。

▼米国の長期金利の、高騰

米国の長期債の金利は、1.9%(2012年3月6日)から、その10日後の3
月16日は、2.2%にまで急騰(0.3ポイントは15%の上昇に相当)して
います。

ドルの長期債の価格は、金利上昇の分下がったので、金利の最も低い円
債が売られ、価格が下がって利回りが上がったドル債を買う動きが出て
、円安・ドル高になったのです。

この点で、ドル債は、ユーロ債や円債より強いと見られています。
世界の市場の見方では、もっとも強いのは、ドル債、次が円債、最後が
ユーロ債でしょう。

【ユーロは上げたが・・・】
ECBが、2回分で100兆円のマネーを刷って、金融機関に貸したため、3月
危機として懸念された銀行危機が、当面は去ったとして、ユーロも買わ
れて上がっています(1ユーロ111円:3月21日:年初来で17%も上昇)
。

◎しかし、金融危機を生んでいた銀行の損失は、ECBからの借入では消
えないのです。

損がECBからの負債になって、借入金が増えただけです。

(注)欧州も米国と同じように住宅ローン債権が多いので(推計1000兆
円)、今も下がっている住宅が、値上がりする時期が来ないと、金融機
関の損失は消えません。それは数年後でしょう。

資金の枯渇で倒産間際だった企業が、懇願していた銀行借入で、当面の
支払いができるようなものです。借りたものは、負債ですから、却って
負債が増えるのです。

銀行が本当の利益を出して、過去の損を埋めない限り、次の危機が再び
来ます。ECBからの借入は、3年間の期間です。

今日のFinancial Times(3月20日)では、銀行間の短期の貸借に、不安
が広がったという記事が出ています。

「PIIGSの銀行の損失は、借入では消えない」というのがその主旨です
。銀行は、お互いに、短期資金を融通しあっています。

このため、相手が倒産すると、回収ができず自分も連鎖します。
最も多いのは、国債を担保にした「レポ取引」です。
金融には、特有の意味を勝手に持たせた専門語が多いですね。
このため、一般に分かりにくいのでしょう。

(注)レポ取引は、買い現先のような「買い戻し条件付の金融取引」で
す。日本では特に債券の貸借取引で、金銭を担保として差し出す「現金
担保付債券貸借取引(債券レポ取引)」のことを指しています。

▼他方では、日本国債を大きく買い越した外人ファンド

わが国で国債を買ってきた都銀が売り越すように変わったのに対し、ヘ
ッジ・ファンドは、2010年に101兆円、2011年に更に勢いを増して141兆
円を買い越しています。

3ヶ月の短期債ですから、年の途中で満期償還されるものが多いので、
この2年間で10兆円規模の買い越し残と見ます。

2012年1月、2月も買い越していますので、繰り返しますが、合計で20兆
円の保有増になって、外人の、短期の円国債の保有残は67兆円に増えて
いるでしょう。

◎債券市場での売買額でも、ヘッジ・ファンドが、40%付近を占めるよ
うに変わっているはずです。

70%の売買額を占めて、一秒に3000回の売買もできるロボット・トレー
ディングで、株価を動かすようになったわが国の株式市場に似ています
。

1回が1億円としても、最大では1秒(瞬く間)で3000億円の売り買いに
もなり得ます。現在の世界の債券市場と株式市場は、サイボーグが売買
している宇宙の物語りのようです。

円高になった時期(2011年)は、PIIGS危機のユーロ債とドル債を売っ
て、円債を買い越してきたのです。

繰り返せば、このヘッジ・ファンドによる円国債の大きな買い越しが、
2011年の円高(ドル安、ユーロ安)の原因です。

逆に、買い越した円債を売って、ユーロやドル債を買えば、円安になな
ります。(これが3月かも知れません。まだデータがありません)

◎日銀は、ヘッジ・ファンドによる円国債の売り越し、証拠金の数倍の
レバレッジがかかる空売り、30倍以上のレバレッジにもなる国債先物売
り、または、売りオプションを警戒して、40兆円の国債買い受け枠を準
備した(12年2月)ことは、既述しています。

レバレッジは、少額の資金で、多額の売買ができます。

■5.ヘッジ・ファンドは、日本国債売りの準備をしているのか

◎ヘッジ・ファンドや英米系の銀行(代表が、悪名が高くなったゴール
ドマン・サックス)が行う債券や株の売買で利益を上げる方法は、

(1)最初は、目をつけたものを買って、価格を上げ、
(2)連れ買いが起こってピークに達したと見たとき、
(3)空売り、先物売り、売りオプション、あるいはCDSを仕掛けて下げ
ることです。

連れ買いは、例えば、一般を相手にする金融雑誌やマスコミが、「**
は上がる」という記事を溢れさせるときです。

この時が、相場のピークになる。投資家で言えば、個人が買いに走るよ
うになる時期です。

事実、ゴールドマン・サックスは、ギリシア債で以下のような、犯罪的
な方法をとっています。後では告発を受け、事実を認めて相手に与えた
損に相当する罰金を払ったのです。

(1)最初、ギリシア国債を買う。保証保険のCDSもかけて買い、ギリシ
ア政府の債務をオフ・バランスにし、EUには嘘の財政データを出させる
。これが、債務の飛ばしです。
 ↓
(2)顧客である投資家(及び銀行)には、ギリシア債は、財政は健全
だが金利が高く、利益があるとして売る。あるいは、ギリシア債にCDS
をかけ、デフォルトのとき支払われる保証保険を、国債額面の2%程度
の低い料率で買う。
 ↓
(3)通じている、子会社のヘッジ・ファンドに、ギリシア債を空売り
させておく。先物売り、売りオプションでも同じ効果である。
 ↓
(3)機会を見て、ギリシア政府の債務は、嘘であることを、マスコミ
にリークして暴く。自分たちも、驚いたように装う。 ギリシア債は市
場で売られて下がり、金利は瞬く間に10%に向かい高騰した。
 ↓
(4)国債が下がると、保証保険のCDSの価値は上がる。例えば2%だっ
たCDSの価格は、国債が下がってその金利が10%くらいになると、4倍く
らいに上がる。

国債がデフォルトしてもCDS証券をもっていれば、額面の100%の回収が
保証されるからです。

(注)ヘッジ・ファンドの設立では、投資の私的組合とされるので、運
用の中味を公開せねばならない規制は、日米欧に、ありません。8000本
の全部の本拠は、当局が監視できないオフショアです。

投資顧問業のAIJの、投資内容とお金がどこへ行ったのか、金融庁には
未だに分からないのは、このためです。わが国にも、年金の運用を請け
負っている投資顧問業が265社もあります。

〔CDSの利益〕
1兆円の国債にかかった保険料率2%のCDS(購入価格は200億円)は、そ
の国債の金利が10%に上がると(国債価格が例えば30%も下がると)、
4倍付近の800億円の市場価値に上がります。

600億円が利益になります。CDSはその国債を持っていなくても、かける
ことができ、売買ができるのです。

CDSは、第三者がかけた生命保険に似ています。保険がかかった人の生
命の危機(=デフォルトの危機)が高まると、保険金1億円が受け取れ
る生命保険証券の価値は、上がるでしょう。あたかも、分からないよう
に毒をのませた保険金殺人です。実際に、ギリシア債で、以上が行われ
たのです。

〔他の利益〕
CDSと同時に、国債価格が下がると、空売り、先物売り、売りオプショ
ンにも巨大利益が出ます。オプションの証券そのものも、独立した金融
商品として売買ができるのです。

以上が、本当のことを暴けば、デフォルトが確実なギリシア債を対象に
、ゴールドマン・サックスが2010年に行っていたことです。

■6.日本国債の売りの機会はいつか?

ヘッジ・ファンドは、日本国債の空売り、先物売り、売りオプション、
CDSで巨大利益の機会を待っているように思えます。

拙著『国家破産』でも書いたことですが、米国の住宅証券(RMBS)で、
2007年に$150億(1兆2000億円)の利益を、ひとりで上げたピムコのジ
ョン・ポールソンは、グレゴリーサッカーマンに書かせた書籍(『史上
最大のボロ儲け』)の中で言っています。

「住宅証券の後は、先進国のソブリン・リスク(国債のリスク)が巨大
利益を上げる機会になる」 PIIGS債がこれでした。

ただし、ポールソンは、2011年は、米国債の下落に賭けた投機で、大損
をしています。

1年に120兆円は発行される米国債の下落に賭けたポジションをとってい
たためです。世界で最も多く、100兆円くらいのドル国債をもつ中国が
、ドル下落を懸念し、ドル国債を売ると予想したからです。

(注)現在は、2011年の、1年24兆円の円高介入(ドル債買い)のため
、日本の財務省が世界で最大の、米国債の持ち手です。$1.3兆へと、
2011年に$3000億も増やした「外貨準備」がこれです。政府財政は巨大
赤字で、お金がないと言いながら、増税を言う財務省は、一体、何をし
ているのか? 24兆円も、米国に差し出したことに等しいのです。日本
の財務省は、一度も、ドル債を売り越した年度がありません。貸して、
売らなければ、米国に貢いだことと同じです。

ところが思惑に反し、FRBがQE2(60兆円枠)で米国債を買い支えたこと
が、市場では、ドル国債買いの動きを呼んだのです。

普通は、中央銀行が、直接に国債を買うことは、買い手が消えたことを
意味しますから、その国の国債は売られます。

しかし、2011年のドル債に限っては、これが、逆に、新興国からのドル
債買いも生んだのです。

日本国債が、空売りされる時期はいつか? 

ヘッジ・ファンドが買い越したため、この危険が、2010年以前よりはる
かに高まったのです。 国内では、日銀以外に、売られる国債を買い受
けることができる金融機関はない。すでに、目いっぱい国債を買ってい
るからです(約800兆円)。

ヘッジ・ファンドが、短期金利が0.1%しかない日本国債を、黙って保
有し続けることは、あり得ません。

円安になると、国債価格は同じでも、海外で円国債をもつことは、例え
ば10%の円安の分、ドルから見ればすでに損をしています。

◎今後の円安は、本当は、国債残がGDPの2.2倍の日本にとって、困っ
た事態を招きます。円安とは、海外から円国債が売られることでもある
からです。

2012年8月頃が、危険だと感じています。

■7.2012年は、インフレで世界の金利上昇の兆しがある

▼低すぎるユーロの金利(1.83%)

欧州は、失業率が10.3%(11年11月)と高いのに、物価上昇が2.7%
と高い。長期金利(10年物国債の利回り)は、ECBが超金融緩和をして
いるので1.83%と低い。

1年に2.7%上がる物価との関係で言えば、少なくとも3.7%のユーロ
長期債の金利でなければならない。欧州金融の非常時だから、金利が低
いのです。

金融危機が去ったとなると、金利は、物価上昇率に向かって上がります
。

▼2012年3月に急騰の気配を見せている米国の長期金利(2.2%)

米国は、物価の上昇が3.0%です(11年12月)。失業は8.5%と、欧州
並に高い。2012年の年初から3月6日までの長期金利は、1.8%から2.0
%で、平均は1.9%でした。これも、FRBが、欧州と同じくゼロ金利策
をとっていたからです。

しかし、3月6日以降の、わずか10日間で、米国の長期金利は2.2%へと
0.3ポイント(15%)も上げています。

市場では、FRBが予想されていたQE3(量的緩和第三弾:金額は50兆円以
上)を行う可能性が、30%以下に下がったから金利が上がったとされて
います。果たして、米国の金利上昇の理由が、これか? 

金利上昇とは、1.9%の低い利回りの米国債が、利回り2.2%に上がる
ように売られたということです。

資源・穀物・食品の国際価格も、2011年12月の305から、12年3月は318
に、3ヶ月間で4%上がっています。この瞬間風速を、年間ベースに換算
すれば、4倍の16%の上昇です。(ロイター・ジェフリーズCRB総合
指数)

米国債の金利が3%台に向かい上がると、下がった米国債を買う動きが
出るので、世界で、米国債買いが増えます。1%の金利の円長期債を売
って、2.2%の金利がつくドル国債に買えようとする動きも出ます(円
安)。

1.2%の金利差(スプレッド)に過ぎませんが、ヘッジ・ファンドのよ
うに、10倍のレバレッジで買えば、12%の差になるからです。国債では
普通の30倍のレバレッジなら36%の差です。

このため、円安になった日本国債の金利も、円債が売られ、米国債の金
利に近づくように上がるのです。

イスラエルとの間で深刻化しているイランの核開発の問題も絡んでいて
、2012年の世界は、インフレのような感じです。

ひとり日本のみが、物価が上がっていない特殊国ですが。原因は、2011
年の世帯所得と、企業所得が減ったためです。所得が増えないと、商品
購買は増やせません。作った物は余って、価格が下がるのです。

日銀は、インフレターゲット1%と言い(政策目標)、65兆円の資産買
い受け基金で、マネーを供給しています。

2012年1月12日の総マネー供給は、139兆円でした。3月10日は145兆円で
、まだ増加供給資金は+6兆円留まっています。

貸付金と国債買いが増えています。しかし年間ベースの想定では、+24
兆円です。当方の予想では、国債買いの増枠で+40兆円です。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2012/ac120310.htm/

日経株価は1万円を超えても上がっていますが(1万86円:3月21日)、
「いつも遅れる金融誌やマスコミが、上がると騒いだときは、すでに、
ヘッジ・ファンドが売り抜けるピークであることが多かった。」ことを
忘れないように、老婆心から申し上げておきます。

◎日本の株式市場の70%、債券市場の40%の売買は、ヘッジ・ファンド
だからです。彼らの方法は、いつも、買って上げて、その瞬間を見極め
て、先物やオプションで売る利食いです。

株価も通貨も、人々がどの経済要素を重視するか、これの変転で買いや
売りが決まっています。政府発の情報が、あるものだけを強調している
のが変です。

米国では、先月、消費が好調と言われたかと思えば、その一週間後には
、まだ住宅価格が下がっていて、世帯負債が年収の130%なので、消費
は弱いという記事が出る始末(ウォールストリート・ジャーナルなど)
。

根拠ある数値に基づかず、心理的な副詞と形容詞で見ると(人の認識方
法)、どうとでも言えます。暗いトンネルから出れば薄明かりの中でも
風景が輝くのが人間の目です。

長い国境のトンネルを出て雪国のように白ければ、明度が低くても、煌
々とした夜明けにも見えます。

【後記】
2010年代の金融と経済、仕事生活を述べた3.09講演は、DVDができまし
た。何らかの方法で、そのとき使った50ページのレジュメとともに頒布
する予定です。時間がないと、怠けています・・・

今日は、ある会社の横浜の、最新鋭の物流センターの見学です。

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の項で「送信者を差し出し人セーフリストに追加」すれば、元に戻りま
す。
(以上)



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