増刊:2011~12年の日本経済と世界(2)
This is my site Written by admin on 2011年5月29日 – 08:00

こんにちは、吉田繁治です。台風二号が襲い、窓の外は、雨が激し
く降っています。五月にしては珍しい。関西にも大雨警報が出てい
ます。

10万トンに増えた核汚染水が溢れることによる海洋への流入、左回
りの強風による汚染瓦礫と核物質の飛散、及び水素爆発で建屋(使
用済み燃料プール)が脆弱になっている四号機が懸念されます。(
注)今、熱帯性低気圧に変わったようなので、原発の風害はないで
しょう。夏と秋が懸念されます。

先週、福島原発(F1)では、今度の推移に関わる二つの重要な事実
が明らかになりました。

(1)震災初期からのメルトダウン(100%の燃料溶融)による、圧
力容器と格納容器の破損(または破壊)は、一号機のみではなく、
二号機と三号機でほぼ同時に起こっていた。

(2)真水が枯渇したあと、冷却を続けるため海水を入れていた。
東電本店は、政府(首相)の誤った意向をいれ、海水の注入は中断
(45分間)したと発表していたが、現場では継続されていた。

懸念されていた水蒸気爆発が起こらず、メルトダウンが推移してい
たことが分かったので、朗報です。今後、大きな水蒸気爆発が起こ
る可能性は低くなったからです。(注)崩壊熱で2800度付近になっ
た核燃料の溶解塊が、水と接触することによる爆発。

今、溶解した燃料は、水蒸気爆発を起こす大きな塊ではなく、外が
水で固まって、内部が赤熱した溶岩片(崩壊熱エネルギー小さい)
のようになっているはずです。細片ですから、チャイナ・シンドロ
ームのエネルギーはないでしょう。

なぜ東電がメルトダウンを隠していたのか?理由は2つでしょう。
・計器が異常で、データ(これを発表)に、信頼性がなかった。
・根拠があやふやな推測で、「最良の状態」を示していた。

【国際という上位のもの】
東電(本店)は、IAEA(国際原子力機関)が事故調査に来るから、
事実を明らかにすると言っています。情けないことですが、この国
では、他のことでも、「国際」が上位にあります。中味は米国です
。この「国際社会の意向や方針」が国内のものより重んじられる。
重要なことでは「外圧」が、暗黙の政府方針にもなってきたのです

(注)日本が利用できない外貨準備($1.1兆)をめぐる財務省の
既定方針も同じです。外貨準備の売却は、「現実的」ではないとさ
れています(財務省)。この「現実的」とは何か?いつも疑問に感
じるのです。

現実は、「円はドルの周辺通貨」であるという意味か。宗主国(FR
B)の意向に従う植民地通貨(日銀)とまでは言いますまい。

【東電も政府も政治的配慮】
東電の当初からの発表では、以下の「政治的な配慮」がなされてい
ました。

「払いきれない賠償責任を東電が負うことのないよう、事故対策の
、人為的ミスが極小であるように配慮し、発表する。」 このため
、隠すべきことが生じ、最良の状態を推測し、発表したと言えます

「原子力損害賠償法」は、事業者の賠償責任は1基1200億円を上限
とし、限度を超える損害では、国が事業者に援助を行うこととして
います。

損害が生じたときの無限責任は、「事業者1200億円+政府はそれを
超える金額」という意味です。原子力発電の推進は、1960年代以降
の、国家のエネルギー方針だったからです。

勝俣会長が当初の記者会見で、「政府と相談し、可能な最大限の賠
償を行う」と言っていたのは、原子力損害賠償法を意識したもので
す。法では東電は1200億円の賠償責任しかないという含意です。

政府にも、賠償額を少なくする配慮があった。政府が賠償責任を負
う避難勧告地域を20Km圏と狭くしたのはこれが理由です。このため
、風向から放射性物質の飛散を予測するSPEEDIを出さなかった。放
射線の対策は、被曝した後は遅い。そのため税金でSPEEDIも作って
いた。

基準があいまいだった被曝限度を、「(短い期間の)緊急事態だか
ら」という理由で、上げることを行っています。

学校の、空間値20ミリシーベルト/年の基準等がこれです。校庭の
土埃による、生徒の内部被曝は考慮されていません。風で飛び、雨
で流れる放射性物質では、付近より線量が高いホットスポットが、
常に生じます。放射性物質は、土壌に溜まります。

順次明らかになっていますが、
(1)放射線の観測点(モニタリング・スポット)の少なさ。
(2)空間線量のみを計る、5~20メートルの高さという非現実性。

(3)半減期が大きく異なる核種は、あいまいなままにしておく。
(注)気体性の核種では、半減期が8日と短いヨウ素134より、30年
のセシウム137が長期で問題になります。
(4)外部被曝と内部被曝による、複合で累積する放射線障害には
、敢えて触れない。それぞれ単独で、被曝限度を設定して説明する

【外部被曝と内部被曝の、複合、累積障害が問題なのだが・・・】

呼吸と食物・飲料から入る放射性物質による「見えない内部被曝の
累積」が、長期では、はるかに怖い。空間放射線量の高い地域から
避難しても、体に入り込んだ放射性物質による細胞の内部被曝は続
きます。

(注)体から排出されやすい核種と、ストロンチウムのように留ま
る核種があります。内部被曝では、核種を明らかにしないと意味が
薄い。この情報提供は「計器の不足」を理由に、あいまいなままで
す。このため内部被曝という用語を、官庁はほとんど使いません。

人体で問題なのは、汚染地での一時的な外部被曝より、外部と内部
の複合による「累積の長期被曝」です。(注)内部被曝の測定は、
機器が大がかりで広くは行うことができないので、実行されていま
せん。空間放射線、食品・飲料の長期累積で、個人が気をつけるし
か方法はない。

政府の被曝基準は、「放射線量が高い緊急事態は半年くらいで収束
する。その間、外部被曝・内部被曝の限度を高くしても、晩発性の
障害が現れる確率は、小さい」ということから来ています。(注)
避難住民は、20km圏の対象地域で10数万人です。

当初から、メルトダウンという最悪を想定すべきでした。ところが
東電・政府の以上の「政治的な配慮」で「緊急時は短期」と想定し
た上で「直ちに健康への害はない」という論理になっていたのです

事実、チェルノブイリでの事例(IAEAの報告書)のように、5年や1
0年後に特に若い人に多く現れる「晩発性障害(がん等)」を、後
で、原発の事故にむすびつけることの立証は、困難を極めます。個
人の、累積被曝量が分からないからです。

原発事故以降、あちこちに動き、いろんな物を飲食した個人の、「
複合の長期累積被曝」は後で計ることができない。裁判でも立証は
無理です。計らねば原因を立証できない。そのため原発を推進する
立場のIAEAも、「被災地以外の健康被害は少なかった」と結論づけ
ています。

今後、問題になるのは、半減期の長い放射性セシウムによる食品・
飲料そして未だに十分な計測がない海洋汚染による魚類・海草の汚
染(生物濃縮)です。

海洋では、放射性物質は「無限拡散する」のではない。プルトニウ
ムのように重い核種は、微粉末が底の土壌や砂に、累積して数万年
も沈殿します。海流で流れる、半減期の長いセシウムやストロンチ
ウムは、細い帯状に広がります。(注)一日に注がれる500~600ト
ンの水のうち大半は、土壌、地下水、海洋汚染になっているはずで
す。循環系の冷却回路を作らないと、いつまでもこれが続きます。

行政の隠れた二大原則(価値観とも言う)、
・「(都合の悪い事実は)知らしむべからず。これが隠蔽になる。
」、
・「政府・官僚の無謬への固執。これが事実の歪曲を生む。」はや
めるべき時期です。東電本店も類似します。

方針、政策、あるいは過去に言ったことに誤りがあったと認めれば
、後付けの無理な論理(弁護士風の言い逃れ)を作ることもない。
いつも、肝心なことでの国会答弁は、悲惨の限りを尽くしています

フランスのサミットで、菅首相は、
(1)自然エネルギーを20%にするエネルギー政策の転換、
(2)2020年代の早い時期に1000万戸に太陽光発電を設置する政策
を採ることを表明しました。

どうにも管流の思い付きで、根拠がない。海外首脳も「政権末期の
、ウケを狙ったパフォーマンス」と冷ややかでした。本人は相好を
崩し「すごいだろう」に誇るかのように、にこやかでした。

核廃棄物の処理の超ハイコストで、世界的に悪名が高いアレバ社を
送りこんだサルコジ大統領に、満面笑みで握手するのですから、お
めでたい。(注)六カ所村での、核燃料の再処理(MOX燃料作り)
は、アレバ社が請負っていて、未だに稼働していません。

自然エネルギーの20%と、1000万戸に太陽光発電ということの矛盾
からも思い付きであることが伺えます。20%の世帯(1000万戸)に
太陽光発電器を設置しても、それは、電力のうち5%に過ぎません
。家庭の使う電力は、全電力の25%に過ぎないからです。75%は産
業用です。

それに、全一次エネルギー(原油、LNG、石炭、ウラニウム、水力
)のうち、発電用のものは30%です。一次エネルギーの20%を自然
エネルギーにするというのは、鳩山首相の「CO2の25%削減」と同
じで、根拠に、経済的な計算がない。

鳩山首相も菅首相も、自分の内閣には実行責任がない未来を、海外
に向かい公約するのですから、困ったものです。これを政治主導と
言っていますが、政策責任を負わない画餅を描くことでしかない。

担当の経産大臣は、「聞いていない」と怒っています。
本稿では、菅首相が言った以上のことを基礎付けようと思います。

ソフトバンクの孫正義氏は、全国の休耕地に、集合的な太陽光パネ
ルを作る「メガ・ソーラー発電」に800億円を投資することを明ら
かにしています。目標は50へタールで、20万KW時(20メガワット時
を10基)です。6万世帯(1世帯平均3KW時)をまかなう発電量です

ドイツ、イタリア、スイスも、原発政策を転換することを表明して
います。将来のために賛意を表します。

設備投資として経済予測に係わることなので、最初に以下で概算の
試算をします。

太陽光発電は、今54万戸(5000万戸の1%)で、ピークの発電能力
は171万KW時(1戸平均3.2KW時の発電量)です。

これは、わが国の発電能力約2億KW時の、0.9%に過ぎません。普及
が進んでいないため、当方も、知識と理解が浅い。基礎的なことの
概観することから始めます。本増刊は、有料版・無料版共通とさせ
ていただきます。

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  <540号:増刊:2011~12年の日本経済と世界(2)>
        2011年5月29日号

【目次】
1.太陽光発電の概要
2.太陽光発電の効率は、年々、上昇している
3.他の自然エネルギーの利用
4.太陽光発電で必要な投資額
5.経常収支は、均衡がいい:日本を貧困化させた投資不足

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■1.太陽光発電の概要

まず、全体数値を抑えます。数値で言わねば具体化しないからです

日本の総電力使用は、1兆KW時/1年です。9つの電力会社の売上を合
計すると17兆円くらいです。1KW時の売単価は、全平均でほぼ17円
です。

電力会社の計算による、総括原価+約4%の事業利益=17兆円です
。原価とは、全経費です。

名目GDP(469兆円:11年3月期速報)のうち3.6%を、電力費が占め
ています。これが、商品と生活の原価になっています。ところが知
られているように、1KW時あたりの電気代は米国の約2倍です。

(注)なぜ日本の電気代が、1KW時あたりで米国の約2倍なのか、根
拠となる正当な理由は、見つけることができません。発電設備費の
約1.5倍はかかっている送電網の費用で言えば、国土面積の広さに
比例し、米国が25倍は長いはずです。電力では、全国・全地域に電
線を張り巡らせる送電網が、設備コストが高いのです。

水力と火力の発電設備に余剰があって、それが、追加原価となり高
いのか? 設備費や燃料費は、ほぼ共通なはずです。米国より若干
高くはあっても、2倍は行き過ぎです。電気料金は、電力会社が発
電原価を申請し、政府がそれを認めることで決まっています。

電気は産業用の需要が75%(うち工場の動力が50%)で、家庭の使
用量は約25%(2500億KW時/年)です。ピーク需要の時間(午前10
時から午後11時)は需要量が多く、夜間・早朝は少ない。夜に繁華
街がネオンを消して節電しても意味はない。

全国54基の原発による原子力発電は、供給量のうち約30%(年間発
電量3000億KW時)であることは、報道でご存知でしょう。政府はこ
れを50%に上げることをエネルギー政策としていました。

今年の夏は、ほぼ80%(総電力の24%:43基付近)が稼働できない
と報じられます(朝日新聞)。他の11基も、13か月内に一度は行う
べきメンテナンス(3ヶ月休止)での、耐震・対津波基準の上昇の
ため、来年の夏に稼働できるかどうか、不明です。

われわれは、原子力発電による電力供給(3000億KW時/年)は、当
面なくなることを、想定せねばならない。

火力や水力の余剰能力を使っても、産業用電力(大口契約)では、
(暑さで異なりますが)8月のピーク時に全国で最低5%、最大で15
%程度の節約は必要になるでしょう。(注)8月のピーク時以外は
、火力と水力の稼働率上昇を行えば、ほぼ不足しません。

電力供給の53.6%(09年)を、北陸沿岸の原発で行っている関電の
管内では、原発の安全基準を上げると停止期間が長くなり、電力不
足が深刻になる可能性が高い。関電は原子力発電の多さを、HPで、
わが社の強みと言っていますが、これは逆にボトルネックの弱みで
す。「原発のシビア・アクシデントはない」としてきたので、強み
と言っただけのことです。
http://www.kepco.co.jp/ir/private/info04.html

平均的な家庭(3LDK:三人家族)の電気料は1ヶ月8000円、1年で10
万円くらいです。使用量で言えば、1年に4500KW時(1KW時の平均単
価約23円)です。前述したように、5000万家庭の総使用電力は、構
成比で25%と少ない。

戸建て住宅に設置する太陽光パネル20枚(20畳の広さ)は、約4.6K
W時の発電能力です。日照時間中は、ほぼ1世帯の使用電力をまかな
うことができます。全国の日照時間で異なりますが、パネルを作っ
ているサンヨーは、以下のように試算しています。これは、良好な
日照条件の屋根での、全国各地の試算です。
http://jp.sanyo.com/solar/feature/standard/index.html

年間日照時間が少ない新潟市で、年間4823KWの発電能力、長い宮崎
市で5851KW/年の発電ができるとしています。他の都道府県も、両
市の中間の発電量です。

(注)個々の世帯では、日照と設置できる屋根の向きで発電能力が
変わってきます。太陽が豊富に当たる南向きが最良です。北向きの
屋根や、日陰になる時間が長いと発電量が減ります。

宮崎県を最大として、新潟もその82%です。意外に差は少ない。季
節では、日光が強い5月が、一番多く発電できます。5月を100とし
たとき、最低月の発電量(12月~2月)は、ほぼ60%付近に減りま
す。

以上の発電量の変動を勘案した上で、家庭では20畳相当の大きさの
モジュールが生む4.6KW時(ピーク発電量)でほぼ十分とされてい
ます。

(注)家庭に余剰電力が出たときは、1KW分を42円で電力会社が買
い取る仕組みです。家庭の太陽光発電でも、電力使用が増える夏場
に、発電量が増えるので好都合です。日照のない夜間や雨の日は、
電力会社から従来どおり買います。これは、制御装置で、自動で行
われます。

【休耕地のメガ・ソーラー】
住宅の屋根ではなく、休耕地に設置するメガ・ソーラーの発電力は
、1アール(100平米:30坪)あたりで、10KW時です。

田畑は植物を育てるために、もともと、日当たりがいい土地です。
日陰の田園や畑はない。発電効率は高い。

東電管内では、休耕地1アールあたりに太陽光パネルを設置すれば
、1年で約30万円の電力収入に相当します。ただし、1アールあたり
約600万円の設備投資費(30万円×20年で償却)が、問題になりま
す。

米作は、手間と原価をかけて1アールで0.8俵(48Kg)の収穫量です
。1Kgの米価格を300円として、1万4400円です。1kgで500円以上の
銘柄米でも2万4000円です。

労働と肥料・農薬・農業機器減価償却費等の原価を引いた後の米作
所得は、ごくわずかでしょう。多くが赤字です。田畑が生む可能性
の電力所得に比べれば、比較にならない。(注)ただし休耕地でも
、用途変更の許可が要ります。田畑は、固定資産税が無税で、逆に
、農業収入にほぼ匹敵する金額の、政府補助金が注がれているため
です。

米作も、当然に補助金をつけた国策でした。米の輸入には、TPP(
環太平洋経済連携協定=自由貿易化)で問題になった770%(7.8倍
)の輸入関税がかかっていて、最終負担は家計が行っています。

メガ・ソーラーも、今後5年、高い設備費の約半分の補助を行うべ
きものです。

原発でも、各種の政府補助金で、毎年、4516億円(08年:一般会計
+特別会計)が使われています。100万KW時の発電能力の1基あたり
換算で、85億円です。

▼家庭での見積もり例

システム名称:PVS-24L4 4.80kw(三洋電機)として見積もりをと
った
人の例が以下です。(項目は単純化しています)

太陽電池 24枚       329万円
パワーコンディショナー   40万円
その他設備費/工事費     64万円
合計           433万円
値引き          - 133万円
消費税            15万円
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
総合計設備費(4.8KW)    315万円
http://yes-net.ddo.jp/myhome/page2/127.html

国と自治体からの補助金は市町村、システ費用、時期で差がありま
すが、最大の支給条件に該当したとき、60万円くらいです。(国が
1KW時で7万円、東京都は1KW時あたりで、10万円で上限35万円等)

概略で言えば値引きと補助金前で400万円、値引と補助金後で250万
円が、毎月の電気代に変わる世帯の設備費(1世帯平均)です。(
注)車のように指定仕様、発電可能量、メーカー、工務店で異なり
ます。

平均的な世帯が1年10万円の電気代を節約できたとして、回収には2
5年かかります。寿命は、10年サイクルでの点検とメンテナンス(
費用がかかる)を必要として、ほぼ30年とされます。約30年で、今
の電気代と均衡する採算点でしょう。

2011年11月以降、政府は、太陽光発電の促進のため(CO2を25%減
らす政府策の一環)、家庭で余った電力を、電力会社が買い取る単
価を46円(1KWで家庭の電気単価の約2倍)と高くしています。

しかしこの補助金は、需要家の負担に還元され、その分、電気代が
高くなる「サー・チャージ制」です。1KW時46円の売電分は、国全
体では、節約費用にならない。46円という高い売電単価が変わらな
いとして、20年で、発電設備の採算が取れるとは言えないという意
味です。

【暫定的な結論】
現状の太陽光の発電効率、設備費、電気代からすれば、家庭の採算
点が30年。一般の木造住宅の寿命とされる30年で、採算点に乗るに
過ぎない。(注)30年は大地震に遭う確率が高くなる期間です。

現状の資源価格と電気代では、電気代が高い日本でも、太陽光はコ
ストで見た経済性のメリットは大きくない。

■2.太陽光発電の効率は、年々、上昇している

現状の太陽光発電のコスト効率は、世界平均で1KWの発電能力に対
し約19セント(15円)とされています。

発電のモジュール価格では1Wのピーク時発電に対し、ほぼ$4.2(3
36円:2008年)です。およそ、このコスト効率が基準になったもの
が、上記の見積もりの太陽電池329万円でしょう。

ただし世界でもっとも安いモジュールの生産単価は2010年3月です
でに、1Wのピーク時発電能力に対し$1.7($4.2の40%)に下がっ
ています。他の発電コスト(火力等)と等価(パリティ)になるの
は、この値でほぼ$1です。

2012年頃、つまり近々、太陽光発電の部品の生産コスト(最安)は
1Wのピーク時出力に対し設備費が$0.84で、2014年には、$0.52~
$0.63に低くなると見られています。(1Wのピーク発電に対する、
モジュール投資額)

パネルが小型化するとともに効率化し、生産コストは低くなる。付
帯設備と個々の条件が異なる屋根への工事費は、多分ここまでは下
がりませんが、トータルでは1年10%程度の、コスト効率の上昇は
、十分に見込めるでしょう。

世界の太陽光発電は、3.11を転換期にして、急増します。このため
、技術開発も重なりながら、量産効果(経験曲線によるコストダウ
ン効果)も大きくなります。発電モジュールの生産会社は、近々、
技術開発と設備投資を全開にするでしょう。

世界へのパソコンと液晶TVの普及とともに、半導体の価格が、イン
テリ社のムーアの法則で加速度的下がって性能は上がったことと同
じです。(注)同じ集積回路(IC)の製造原価は、18ヶ月で1/2に
下がるという量産原理を言う。

仮定10%のコスト減・・・5年で59%の総価格に低下
            10年で35%の総価格に低下

今後10年で、300万円の設備費用が100万円付近(設備費50万円:付
帯工事費50万円)に下がる可能性が高いと見ます。そうなると、ほ
ぼ10年で採算点になる。これで、十分な経済性が出てきます。

照明のLED化(電力効率10倍:どんどん安くなる)も加わります。
当方、LEDを部分的に二台の電気スタンドで使っていますが(まだ
少ない)、無駄な発熱が少なく「スマート!」という感じの白い光
です。

集合住宅や産業用電力では、火力と水力発電が必要でしょう。しか
しそれらは、休耕地等を利用する「メガソーラー・システム」で、
40年で設備更新が必要な新規の発電所を作ることを抑え、順次、置
き換えることもできます。企業によっては、発電を事業に加えます

【時代は、電気自動車に向かう】
付帯して、高効率なリチウム蓄電システムの研究開発です。これは
、電気自動車で必要な、高効率蓄電の開発と併行すべきものです。

GDPの10%を占める自動車産業(下請けを含む)を作った、部品数3
万点の内燃エンジンの車は、モーターによる駆動と制御が単純な電
気自動車では、部品数を減すことができます。このため、白物家電
のように低価格化ができます。

(注)今、電気自動車は376万円(日産のリーフ)、補助金を入れ
れば、229万円です。部品数が2/3(2万点)で済む電気自動車は、2
015年ころの世界先端価格では、乗用車クラスで100万円が予測でき
るとされています。

太陽発電の、昼間の余剰で電気自動車を充電する仕組みにすれば、
平均で1ヶ月に1万円(1ヶ月平均電気代に匹敵)は、使っているガ
ソリン代がなくなります。国家単位で言えば、輸入での所得流出が
減ります。産業用の配送車も、太陽光発電に変えればいい。都市の
空気は清浄になります。

太陽光発電、蓄電、電気自動車を組み合わせれば、家計の月間支出
は電気代で1万円、ガソリン代で1万円、合計で2万円(年間24万円
)減らすことができます。1月2万円(約6%)の所得増に相当しま
す。

【新興国のエネルギー問題】
新規自動車需要で1年に1800万台の中国(米国を抜き世界ナンバー
ワン:日本の4倍)が、ガソリン・エンジンであることは、世界の
エネルギー問題です。経済成長で中国を追うインドも、同様です。
人口が40億人余の新興国での車は、いずれ、電気自動車に変わらね
ばならない。変わるでしょう。

【抑制】
今日本のGDPの3.6%を占める電力会社にとっては、低価格の太陽光
発電はタブーかもしれません。GDPの10%を占める自動車会社にと
っては同じく低価格の電気自動車は、タブーかも知れません。

しかし高い電気代は、豊かな生活ではない。高い車の費用とガソリ
ン代も消費者にとって、豊かな生活とは言えません。生活費用とし
て、コストダウンを図るべきものです。健康とエコロジーの観点か
らも、です。都市の空気が、田園地帯のように清浄になるのは素敵
でしょう。

日本の会社は、総じてリーダシップで新しい方向を決めるのは不得
意です。(注)孫正義は、会社の方向を決めるリーダシップが得意
です。

しかし一旦方向が決まると、その方向に向かう集団的な技術開発は
、世界でもっとも得意です。電力会社も国策だった「原子力エネル
ギー50%」から、「自然エネルギー50%」に転じればいい。

(注)現在震度6付近の安全基準を数倍に上げれば、原発の採算は
、完全になくなります。原発の建設とその後の経営は、政府(税金
)からの補助がない限り行えない。

自動車会社も、世界の先頭を切って、今よりはるかに高効率の蓄電
地の開発に邁進するでしょう。(注)30万人の雇用のトヨタも電気
自動車に関し、今は、方向を決めていないので、長期の経営計画が
描けていないようです。CRTの時代に、シャープが10年余をかけ、
液晶を具体化したことと同じことを行えばいい。

【転換】
今、かつての重厚長大産業も、CRTが液晶に変わり、レコードがCD
に、CDがiPodに、通信はパケットのTCP/IPのインターネットに変わ
り、情報がWEB化、デジタル化したような変化の途上にあるでしょ
う。

情報化・デジタル化は、本質において「省資源」です。紙の情報媒
体(本)が電子化すれば、総エネルギー使用は、減ります。製造コ
ストと流通費用が下がり価格もはるかに安くなる。

方向さえ決めれば、この面では、日本の自動車会社と家電メーカー
は、世界の先頭を走ることができます。

技術開発で世界ナンバーワンを維持し、コスト効率と性能を高めれ
ば、GDPでは3倍の乗数効果をもつ輸出の増加にもなって、日本の国
民所得を増やすことができます。必要なことは世界への先行です。

世界を引っぱる太陽光発電と電気自動車で、日本には、再び、高度
成長期(国民所得の増加期)が来ます。

大きく言えば、1990年代以降、金融技術を含むソフトウエアの開発
で米国に負けたことが、日本のGDPの、20年の低迷の主因です。翻
って太陽光発電、蓄電地及び電気自動車を思えば、これは日本人の
工業の、得意分野にすることができます。

かつて原子力こそが、化石燃料(石油文明)の後の、21世紀のエネ
ルギーの根幹になって、先行することが世界に冠たる国になると思
われていました。このため、原発設備の製造技術では、日立や東芝
の日本の重電が世界最高の位置に、上り詰めていたのです。

この期待は3.11で、完膚なきまで砕かれました。原発のライフサイ
クル費用と、補助金を含む総コスト計算の偽装も明らかになった。
これらの総コスト計算をすれば、原発は、実は希望ではなかったの
です。

電力会社の経営にとっても、頻繁に、隠れた事故が起こっていた原
発は、重荷だったでしょう。(注)現場作業員には、累積被曝限度
があるので、日雇に似た短期雇用(数段階の下請け会社)でしかあ
り得なかったのです。

以上の転換を行わないと、日本の産業は、高齢化による需要縮小で
、長期の低迷期はいるでしょう。

復旧費と原発の賠償の負担が、国家財政の破産を早期化もします。
国家財政を破産させないためには、GDPを増やす方向を作り、実行
せねばならない。GDPが減れば、国家財政は破産にむかいます。

■3.他の自然エネルギーの利用と組み合わせる

経産省が計算している、1KW時あたりの発電量に対する稼働コスト
は以下です(エネルギー白書:2010)。

これを正当に評価するには、発電設備の稼働率を考慮せねばならな
い。燃料費は発電量に比例しても、設備は30%の稼働であっても、
100%近くが償却されるからです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・自然エネルギー
 太陽光   49円
 風力    14円
 水力    11.9円(稼働率が低い)
・火力
 石油    10.7円(稼働率が低い)
 LNG     6.2円(同)
 石炭     5.7円(同)
原子力     5.3円(稼働率が高い)→大島試算では8.6円
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

原発の発電コストが5.3円でもっとも低いとされています(08年)
。しかし、これに政府の補助金と、正常な原発の廃炉費用を加える
と8.6円付近の大島試算(立命館大学)になります。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2010/siryo48/siryo1-1.pdf

原発は出力制御が難しいので、定期点検では休止しますが、稼働率
は年平均で70~85%程度と高い。

ところが、日中と季節では電力使用量にピーク・ボトムがあります
。このため電力会社は、原発での発電量を一定に保ち、水力や火力
の出力増加と夜間・早朝の停止で、ピーク時対応をしています。

この構造から、水力は発電能力に対し年間稼働率が45%付近と低い

石炭は70~80%、LNGは60~80%、石油は30~80%の稼働率です。

以上のことから、稼働率の高い原発と、発電能力(設備)はあって
も稼働率が低い他の発電は、同列な1KW時あたりのコスト比較はで
きないのです。

以上の原発のコストに、10年以上は優にかかる事故処理のときの廃
炉費用(1基で3000~5000億円:確率費用)と、放射能障害による
賠償(20兆円とも言われる)は入っていません。これらを算入すれ
ば、原発の発電コストは、上記5.3円の数倍に高くなるでしょう。

太陽光は、これからです。世界での普及は、極小ですから今はまだ
生産費が高い。風力そして地熱発電も、同じです。

これらの自然エネルギーを、組み合わせて大規模利用する方向に向
かえば、火力発電すら要らない時代を作り得ます。

現在の集中発電ではない、21世紀型の分散発電システムになる。分
散発電には、集電・配電の、スマートグリッド・システムが必要で
す。分散した井戸から余剰水を集め、水道にする仕組みと言い換え
てもいい。

■4.太陽光発電で必要な投資額

▼スマートグリッド・システム

まず、地域独占と総括原価方式で保護されていた電力事業を、発電
、と配電・送電を分離する「送発分離」にする必要があります。政
府(議会)が法でこれを推進できます。これがスマート・グリッド
です。

自家発電や自然エネルギー発電(分散発電)を、配電・送電会社が
買い取って、需要家に配電する仕組みです。

配電・送電会社は、需要家の需要を、コンピュータで管理し、刻々
の需要量予測を行って、買い取り量と総電量を決める仕組みです。

▼5年間の政府援助の必要額15兆円(年3兆円)

政府政策による送発分離の制度化と併行し、太陽光発電の設備コス
ト(一世帯平均300万円)の、50%(150万円)を政府が支援する仕
組みを作る。これによって、家庭の太陽光発電の採算点は、15年に
短縮されます。

後の15年は、1ヶ月1万円付近(世帯平均)の電気代が、ほぼ只にな
ります。1年10万円の世帯所得を増やしたことと同じ効果です。

2040年ころに30年の設備寿命を迎えたら買い換えですが、その時の
費用は100万円以下に下がっているはずです。高効率化し、50万円
もしないかも知れません。

同様に、夜間や太陽の出ない日の電気をまかなう高効率の蓄電池開
発と普及が加わります。100~200万円に下がった電気自動車の充電
も、太陽光の余剰で行えば、上記試算のように平均的な家庭の経費
節約は2万になります。

その頃には、サハラ砂漠や中国の内陸部の砂漠は、メガ・ソーラー
の、1大基地に転じ、GDPを増やしているでしょう。GDPを生まなか
った砂漠が、巨大発電をするエネルギー源に転じます。アフリカと
中国の、工業を増やすことでGDPを増やし、低い電力費による空調
で生活を快適にします。

中国では、今10%の電力が不足し、25基の原発が建設中です。これ
を止めないと、大陸からまともに西風が吹く日本は、30年の長期を
見たとき、四川のような大地震によって、危険になります。

政府の半額援助で、設備費用が150万円以下に下がれば、家電の普
及のように、太陽光の発電設備と蓄電設備を、「自動的に」家庭が
常備するようになります。太陽発電が進まない障害は、300万円と
いうコストだからです。

世帯負担が150万円なら、15年で、今の電気代支払額に相当する月1
万円のローン支払い(総支払額180万円)が終わり、その後の15年
、電気代がほぼ只になります。

以上から、最初の数年、1世帯あたり設備負担が150万円に下がるよ
うに政府が援助をします。

5年後には、技術進歩と量産効果で政府の支援金の必要がなくなる
くらいコスト効率(発電能力/設備費)が上がるでしょう。

▼政府費用は、最初の5年の15兆円のみ

今、太陽光発電を設置している世帯は、54万戸にすぎません。
これを、1年に200万戸増やす。5年で1000万戸です。

必要な政府資金は、1年で200万戸×150万円=3兆円です。
子育て支援金(2.6兆円)と同じ額くらいです。

最初の年度が3兆円なら、復興予算としても可能な金額でしょう。
(注)第二次補正予算の必要規模は20兆円(1年)ともされていま
す。20兆円の予算組みは、たぶん、財源難から無理です。

太陽光発電の産業は、200万戸の需要で6兆円(家庭の支出150万円
+政府援助150万円×200万世帯)になります。

太陽光発電の推進で、1年で6兆円のGDP(1.3%)が増えます。1年4
00万戸でもいいのですが、供給力不足になり、価格が高騰するかも
知れません。

政府の必要予算は、5年で15兆円です。

5年で1000万世帯、後の3年で1000万世帯、後の2年で1000万世帯が
ソーラー設備や蓄電の恩恵を受けることになるでしょう。10年で30
00万世帯分です。(注)集合住宅や設置しにくい住宅は、メガソー
ラー・システムからの供給をする。

以上のようなコストメリットが生じると、5000万世帯の全部がソー
ラー発電に向かうことになります。

低くなった電気価格に対抗するため、火力や水力を使う電力会社は
合理化し、売電価格を下げる動きに変わります。これは、日本の産
業の国際競争力の強化でもあるのです。

以上とともに、産業用電力の、メガ・ソーラーも進むはずです。
これによって米国の2倍の電気代という今の生活と産業の原価は、
米国並み(今の半分)に下がります。これは、約8兆円分(1人当た
り7万円)の世帯と産業の所得増と同じ効果です。

以上の、世界の自然エネルギー化で、中東の原油・LNGの高騰の時
代は、明確に、終わります。

先物市場でのエネルギーや資源の価格は、未来の需要量の想定で動
きます。需要量が供給量より増えると見られると、資源価格は上が
る。

実際に需要量が増えているから、その後に、資源・エネルギー価格
が上がるのではない。増える前に、例えば中国の経済成長などを材
料に、実際の需要増に先行した投機で、上がる。これが、投機資金
が動くめく国際コモディティ市場の根本性格です。

このため、世界の経済成長予想が低くなって、コモディティ需要も
減る予想のときは、逆に大きく(半値にも)下がります。

(注)ファンドが、コモディティ先物に買い出動するときは、ほぼ
必ず、「世界の資源、エネルギー需要は、**の理由で増える」と
いう論文を準備します。学者がこれを書くのです。自作自演と言っ
てもいい。

一次エネルギー(原油。LNG、石炭、ウラニウム)の30%を使う世
界の発電の方向転換があった途端に、未来需要の想定を価格とする
エネルギーと資源価格は、大きく下がるでしょう。

ほとんどを輸入する資源価格の低下は、日本の国民所得の資源・エ
ネルギー代としての海外流出(資源輸入)を減らします。これが国
民経済を豊かにすることでもあるのです。(注)輸出は国民所得の
プラスですが、輸入額はマイナスです。

■5.経常収支は、均衡がいい:日本を貧困化させた投資不足

わが国は1980年代以降、一貫して、経常収支の黒字国であり、その
経常収支の黒字を、対外資産(債券)として貯めてきました。(注
)経常収支=貿易収支+証券の金利の所得収支

08年度 経常収支黒字 12.3兆円
09年度 経常収支黒字 15.7兆円
10年度 経常収支黒字 15兆円(予測)

これら経常収支の黒字額の累積が、対外純資産(対外資産563兆円
-対外負債312兆円)です。2010年末で251兆円の巨額です。(注)
政府の外貨準備(88兆円)も、251兆円の一部です。
http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/iip/22_g.htm

資産と言えば、アメリカのビルや工場のような実物資産に思えます
が、実物資産への直接投資(工場以等)は6.7兆円に過ぎません。

中味はほとんど$建ての証券です。証券の主は、ドル安・円高で価
値が下がる米国債や住宅証券です。つまり米国政府への貸付金です

【世帯あたり換算で500万円の対米、純貸付金】
日本は、輸出として働いて儲けたお金を、米国に貸し付けしてきま
した。その純合計が、251兆円です。世帯あたりで、所得のうち500
万を貸し付けてきたことと等しい。儲けたお金を貸し付ければ、わ
ずかな金利収入はあっても、その分を使うことはできない。

そして、米国は経常収支で赤字を続けるため、その価値(ドル相場
)は、継続的に、そして数年サイクルでは間歇的に大きく下がる。

証券の額面金額($表示)は同じでも、10%のドル安で、25兆円も
の為替差損を被るのです。これは赤字企業の株価が下がることと全
く変わらない。

将来返してくれる見込みのない子供に無益に期待し、生活を切り詰
めて仕送りし、ついには貧しく亡くなる親のようなものです。私の
親がこれだった。痛恨の想いですが、後悔は先に立たない。

【マクロ経済の原理】
経常収支の黒字は、以下の式で表されます。
国内の貯蓄-国内での投資=経常収支の黒字額
http://www.cap.or.jp/~toukei/kandokoro/html/13/13_1migi.htm

1年に10~20兆円の経常収支の黒字(≒米国債の増加買い)があっ
たということの意味は、
・世帯と企業の貯蓄増に対し、
・国内投資が10~20兆円不足していたという意味です。

(注)2000年代は、世帯の貯蓄増は少なくなっています。将来GDP
の伸びの低下を予想したため、企業の設備投資が減って、その分、
貯蓄に対する投資不足になっています。企業部門は、設備の劣化で
ある減価償却費くらいしか設備投資していません。

国と国で見れば、日本人と日本企業の貯蓄を米国が借り、米国が投
資を行っていたということになります。

米国は国内貯蓄が少なく投資は海外(日本・中国・アラブ)から借
りて行っていて、経常収支は1年で40~50兆円は赤字です。その累
積の赤字(対外純負債)は、$2.7兆(220兆円:09年末)です。

アラブの経常収支の黒字は、投機市場で高くなった原油価格による
ものですから一種の不労所得です。中国の経常収支の黒字は、国内
雇用の賃金を抑え、上がるべき元を抑えていることから来ています
。日本のみが、例外です。労働による経常収支黒字だからです。

$1=200円を超えていた1980年代に比べ、3倍くらいに高くなった
円(=ドル安)にも拘わらず、賃金が上がらない中で働き、先端技
術の開発とコストダウンを図ってリストラもしながら、努力した上
での経常収支の黒字です。

これが赤字国に必然のドル安で、次々に無駄になるは、忍びない。

【経常収支の赤字が続く限りは、いずれ価値を下げる米ドル】
日本人の手許に残ったのは、米国の、恒常的な経常収支の赤字のた
め、定期的なドル安で価値を下げる$建ての証券(対外純資産251
兆円)です。いわば金銭消費貸借の契約書が残ったということにな
る。

円とドルの相場が1980年代から同じなら、あるいは世界政府が発行
する国際通貨があれば、対外純資産は、今、251兆円の3倍には増え
ていたでしょう。

【米ドルの価値が下がらないなら、日本は、今、5%の利回りで、
無税国家にもなり得た】
日本は、スイスを超える最富国(金利で儲ける国)であり得たので
す。その金利と配当収入(5%)は、251兆円×3倍×年5%=37.6兆
円です。これは、日本を無税国家にできた金額です。

【問題】
財務省と金融機関に、長期での国際金融戦略がなく、円をドルの周
辺通貨として、下がるドルを貯めてきたことが問題だったのです。

短期での高騰はあっても、数年単位でいずれ下がる基軸通貨を、ひ
たすら貯めたことに、国益の損があった。(注)中国政府は、国際
金融において日本より明敏です。日本のような愚は冒しません。

(注)浩瀚な宋鴻兵『通貨戦争』(2010.6月及び12月の2冊)で、
国際通貨戦略の影の部分を詳細に描いています。要は、米ドルが、
世界の所得を吸い上げ、定期的にドル安にする仕組みです。FRBが
この役割を担っています。米財務省が、今のように、「強いドル」
と言うときこそが問題です。強いドルと言って、ドル証券を海外に
売り、その後、経常赤字を補うための通貨増発でドル相場を下げま
す。

経常収支の純黒字の累積、言い換えれば資本収支での赤字、更に言
えば累積したドル証券(251兆円相当)は。米国の意向があって売
り超すことができない。

売れば、ドル安での、政府(外貨準備と年金基金)及び民間金融機
関(銀行と生損保)の損失が確定し、ドルが更に下がって為替差損
が大きくなるからです。

【自然エネルギーへの転換で、国内投資を増やせばいい】
売らなくてもいい。国内で貯蓄増に見合うように設備投資を増やせ
ば、国際収支のマクロ原理から、経常収支の黒字(=対米貸し付け
金の増加)は減ります。国内の貯蓄-国内での投資=経常収支の黒
字額、だからです。

1990年代以降の日本は、所得が米国債に振り替わるドル・トラップ
(基軸通貨であるドルの罠)にかかっています。輸入する以上にド
ルを貯め、更に貯めて、定期的にドル安で差損を被る。

日本での、貯蓄に対する投資不足(官民)は、日本のGDPのマイナ
ス要素になっています。有効な設備投資は、雇用を生みます。所得
も増やし、世帯所得も増やす。自然エネルギーへの転換の10年は、
太陽光発電で60兆円、他で40兆円、合計で100兆円規模の、増加設
備投資になるでしょう。

1年6兆円(民間3兆円+政府3兆円)の、太陽光発電への国内投資は
、無駄だった経常収支の黒字(いずれ安くなるドル証券を増やすこ
と)を減らします。

他の自然エネルギー(風力・地熱発電)も、同時に振興する。国民
の生活を豊かにするために、これを行うべきです。

復興投資の財源も外債です。政府と金融機関が外債を売り、その円
マネーで日本国債を買い、経常収支の黒字を振り返ればいい。

【要請】
将来の日本のために、エネルギー政策の転換を要請します。世界で
最先端の高齢化に向かう未来を、豊かなものにするためです。

原発を「復旧する」のではない。それを止め、自然エネルギーの開
発投資で「復興する」方向です。

本稿は、自然エネルギーへの転換の必要を、総合的に述べました。
肝心なのは、政府の政策転換です。

【ビジネス知識源プレミアム・アンケート:感想は自由な内容で。
以下は、項目の目処です。】

1.内容は、興味がもてますか?
2.理解は進みましたか?
3.疑問点、ご意見はありますか?
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