危機のときの金融相場の動き
Written by admin on 2023年3月18日 – 18:00
米国と欧州のインフレを原因にする中央銀行の利上げから、金融商品 (通貨、債券価格、株価、金価格)が、普段より大きく、動いていま す。基本は、インフレ対策としての2022年からの世界的な利上げです。 1%金利が上がるにつき、国債と債券価格は約8%下がるからです。 リーマン危機(2008-2012)、コロナ危機(2019-2022)、ウクライナ 戦争(2022-2023)が複合した負債増加から、世界の負債はGDPの3倍 に膨らんでいます(300兆ドル:3京9000兆円)。1%の金利で390兆円、 4%なら金利だけでも1560兆円(日本のGDPの3倍)にあたるからです。 平均残存期間8年の国債は、1%の金利上昇につき8%、3%上がると 24%、時価が下がります。 今週の緊急号第二弾の本稿では、最初に「経済と金融の危機のとき、 金融商品の価格はどう動くか」の経験則を、解析して示します。経験 則とは、金融市場の「集合知」の動きです。 本稿は、有料版・無料版共通の、今週の第二弾です。2023年になって、 まず米欧に現れている銀行危機を分析し、包括的に述べます。金融に は身勝手で専門的な用語と、部外者には意味がわかりにくいことが多 いので、謎を解くように解説します。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <Vol.1321号 緊急増刊2:危機のときの金融相場の動き> 2023年3月19日:有料版・無料版共通 【日曜緊急号の目次】 ■1.プロスペクトの理論 ■2.経済と金融危機のときの通貨の動きの経験則:この項では、経 済・金融危機のときの通貨(実効レート)の動きを解析します。 ■3.MMTの失敗が、今、襲ってきた ■4.2022年からの、米国の、M2(預金)の減少の意味 ■5.銀行の危機は、どこに現れるか ■6.経済危機、銀行危機、通貨のときの金価格の上昇 ■7:後記:相場の本質 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■1.プロスペクトの理論 経済データの、数学的ではない認知つまり感覚的な心理学を問題にす る「行動経済学」では、「プロスペクト(期待)の理論」と呼んでい るものです。人の金融・経済での判断は、心理が混じった認知で行わ れます。アンケートの結果によって検証された学説です。 【人間のプロスペクト(期待)の問題】 コインの表が出たら、1万円を出さねばならない。裏が出たら1.5 万円もらえる。あなたはこの賭けをしますか。 【結果】 コインの裏表の確率(期待値)は50%です。この賭けの期待値は、数 学的(=合理的)には計算ができます。 ・損の確率 =50%×(-1万円) =-5000円 ・利益の確率=50%×(+1.5万円)=+7500円 数学的な期待知(確率)では2500円の利益があります。ところ が・・・実際は多くの人が、賭けをしないことを選択しました。 損の期待値が5000円、利益の期待値が1万円になったとき、賭けを行 う人が増えたという。 これが、人の心理的で非合理な期待(プロスペクト)と呼ばれるもの です。「行動経済学」の基礎理論を検証したカーネマンは2002年に ノーベル経済学賞をもらっています。(著作『ファスト&スロー』、 ファストは直感、スローは数学的計算) 人間は「将来のリスクである期待損失より、期待利益を約1/2くらい は小さく見る傾向がある」ということです。これが投資に関する将来 利益を判断したときの心理のバイアスです。 「認知」という感覚的心理では、期待損が期待利益より約2倍は大き く見える。投資の金額が大きくなっても、損失回避の傾向高まる。こ れらの心理は、理解ができるものです。 【トレーダーによるバイアス】 1)一方、プロのトレーダーは、合理的な損失回避(ヘッジ)をする 傾向があります。これがyoutubeの高橋ダンが見せている、短期のテ クニカル分析です。 2)個人投資家は、行動経済学のプロスペト理論に沿った、売買をす る人が多い。(注)当方は、ファンダメンタルズに基づくトレーダー 的判断をします。 3)コンピュータやロボットトレーディングも価格を予想計算し、プ ログラムで組んだ、確率統計的での売買をします。利益率が高いとい う意味ではない。ポートフォリオを組み、保険料を支払ってヘッジす るので、損失率が小さい運用です。 【ポートフォリオ理論の基礎】 ポートフォリオの理論では、2つの金融商品のボラティリティ(VIX: 価格変動幅)が30%であるとき、両方を50%ずつ買った場合、合計の 変動幅は、1/√2≒1÷1.414=0.7071倍の、21%に下がるというもの です(分散の和の定理)。リスクが減って行きます。 以上が、価格が確率変動(ボラティリティ=標準偏差÷平均=変動係 数の幅)をする金融商品を予想して売買するときの原則です。 【心理】 ・心理的、感覚的、直感的な認知をする人間と、 ・数学的な認知をするロボットやAIでは、同じ価格グラフを、違った 角度から見ています。 ◎同じ変動幅が予想できても、価格が上がる局面では、 ・投資家はおずおずと買い(結果として1日で上がる率は小さい)、 ・下がるときは大きく売る(結果として1日で下がる率は大きい)こ との根拠が、これです。 この結果として、金融商品の価格の動きは、線的な方程式(多変量解 析)では示せない、非合理なものになります。 良く言われるように株価が生き物であるのではない。変化をとめない 情報とデータにより、判断を変える生き物である人間が、売買するた め、金融商品の価格は生き物のように動くのです。 一般化すると 1)短期変動が大きな株価は、ポートフォリオでの短期売買に適して います。未来の価格変動幅も示すボラティリティ(VIX)が、約2倍は 高いからです。 2)金や債券は、長期保有、長期売買が適しています。VIXが12%くら いであり、株価の1/2くらい低いからです。 【ドル平均法】 個人が投資するときは、一挙に買わず、長期的(1年以上)には上が るだろうと判断(認知)した金融商品を、毎月、ムリのない一定額を 買い続ける「ドル平均法」が推奨できます。 ドル平均法では、価格が下がったときは多く買い、上がったときは少 なく買うことになります。長期で買ったときの保有原価は、移動平均 の価格に近づいていきます。 ◎スイスフランや金を、長期保有の目的で買うときは、利益と損が小 さくなる、「ドル平均法」という時間ポートフォリオで行うことが心 の平安を保てるでしょう。心理的なストレスは、投資の利益の大きな 敵です。 【ファンドマネジャーの売買】 他人のマネーを運用する、プロのトレーダーは、短期売買と長期売買 の「時間ポートフォリオ(短期売買の株と、長期売買の債券や金を一 定割合で組み合わせること)」も作って売買しています。トレーダー の合格ラインは、100回の売買で55勝45敗です。 ポートフォリオの割合に、投資信託、投資ファンドの特徴が現れます。 米国4大投資銀行も、ファンドと同じ運用をしています。 ・具体的には、株価指数は、短期売買する。 ・金・債券・不動産のREITは、売りも買いも長期売買するということ です。 【ポートフォリオによる、リスクヘッジの原理】 個別株は、株価指数とグループ株のETFより、ボラティティ(VIX:価 格の変動幅)が高い。統計学の「分散の和の定理」から来ます。 (注)ChatGPTやWikiで、分散の和の定理を、確認してください。要 は、金融商品のポートフォリオでは組み合わせが多いほど、予想変動 幅が小さくなっていくということです。 ◎2つの標準偏差(≒VIX)の和は1/√2に、3つの標準偏差の和は、1/ √3に減るという、数学的な性質です。 10種の株の、同じ金額のポートフォリオなら利益と損の可能性である VIXは、1種の株に対しては、1/√10=1÷3.3=33%に減ります。 日経平均は、225種の株価が、合成されたものです。1/√225=1÷15 =6.7%です。S&P500は500種の株価の加重平均です。個別株のアク ティブに対し、利益も損も小さいパッシブ(受動的)な投資とされま す。個人はパッシブな指数投資を主にするべきでしょう。 ■2.経済と金融危機のときの、通貨の動きの経験則:この項では、経 済・金融危機のときの通貨(実効レート)の動きを解析します。 ▼1.経済危機、金融危機と通貨(世界の通貨の対する実効レート) (データ:1973-2023年) http://honkawa2.sakura.ne.jp/5072.html (1)1973年~78年の第一次石油危機のときの実効レート(5年間) ・米ドル・・・155→105(-68%:1971年金ドル交換停止、 1973年から石油危機) ・円・・・・・60→110(+83%:日本は貿易黒字) 石油危機は、1971年に金のとのリンクが外れたドルの危機でした。5 年でドルは68%下がり、逆に円は83%上がりました。通貨の30%下落 以上は「通貨価値の認知の変化」が加わった暴落です。この時期、ド ルは基軸通貨を維持できなくなっていたのです。 (2)1978年-1985年の、第二次石油危機+米国の利上げの時期 ・米ドル・・・105→150(+43%:米国の1980年の金利15%) ・円・・・・・80→ 100(+25%:貿易の黒字) 1980年は第二次石油危機になり、14%の物価上昇に対して米国FRBが、 ドル買いを促すため金利を15%上げたときでした。この利上げのため、 金という価値のアンカーから離れていたドルも、金利の異常な高さか ら、海外から買われ、1978年の100から1985年の150に50%上がってい ます。ドル基軸は高金利という犠牲で維持されたのです。円も対米貿 易黒字のため、80から100へと25%上がっています。 このドル高がもたらす貿易赤字に耐え切れなくなった米国は,1985年、 プラザ合意を開催し、ドル債をもつドイツと日本が損をする協力を得 て、「ドルの1/2への切り下げ=マルクと円の2倍への切り上げ」を実 行しました。会議に出た竹下財務大臣は「友人(米国)が困っている から助ける」とう情緒的答弁をしていたのです。 円が2倍煮上がった日本は円高不況になり、日銀が利下げをしてマ ネーを供給したため、1985年から1990年まで、世界史上空前の資産バ ブル(株価5倍、地価5倍)になっていったのです。 (3)1990~1995年、日本の資産バブル崩壊のあとの5年 ・米ドル・・・100→105(+5%:円に対しては60%下落) ・円・・・・・85→ 150(+76%:資産バブル崩壊後の、 世界からの円買い) この時期は金利も下がったドルの不安であり、ドルは円に対して、 60%下げました。円が、60%上がったということです。1990年にから 1997年の金融危機になるまで日本の資産バブルは崩壊し、金利をゼロ にしても設備投資は増えず成長しない経済担ってたのです。 世界の通貨に対する、円の実効レートは資産バブルが崩壊するなか 76%も上がっています。1995年の円/ドルは、79円と最高値でした。 日本経済の最後の対外的な絶頂期が不況の1995年でした。海外旅行す ると世界の物価は、日本の1/2から1/3でした。 (4)2000年-2007年の、米国IT株バブル崩壊のあと7年 ・米ドル・・・130→105(-25%) ・円・・・・・120→100(-17%) ・ユーロ・・・100→100(±0%) ・人民元・・・ 90→ 90(±0%) この時期は、90年代末のインターネット先行期待で高騰していた米国 IT株の崩壊からのドル不安、ドル債券買いでによる、日本の円不安の 連動があり、ドル(-25%)と円(-17%)の両方が下がりました。米 国では疑念の9.11が起こり、2003年はイラク戦争でした。小泉内閣は 30兆円の米国債を買って(ドル買い/円売りになります)戦争を支援 したのです。円も、25%下がったドルの道連れで下がったのです。ド ルと円の心中です。 通貨価値を維持したのは、1999年に登場したユーロと、1994年に国際 市場の新顔になった人民元でした。 (5)2008年のリーマン危機のあとの、4年 ・米ドル・・・2008年110→2012年95(-14%:トル危機) ・円・・・・・2008年110→2012年110(±0%:価値を維持) ・ユーロ・・・2008年110→2012年95(-15%:ユーロ危機) ・人民元・・・2008年 90→2012年105(+17%:貿易の黒字) 2008年のリーマン危機は、米国住宅ローンの不良化と銀行危機から始 まりました。ドルは海外がもつ基軸通貨なので、短時間で世界に波及 したマネー量縮小の危機でした。 ドルは14%下がり、ドルと関連の高いユーロも15%下がって、1997年 の金融危機から、世界に10年早くデフレになっていた円は、2012年ま で価値を維持しました(デフレは通貨の価値の上昇です)。 (6)2012年から2023年(異次元緩和の円安) ・米ドル 100→135(+35%:世界のドル買い:米国バブル) ・円 100→55(-45%:量的緩和のなかでデフレ経済、円 の通貨価値は暴落) 2012年以降、日本は2%のインフレを目指した量的緩和(2013年~10 年間)のため、円の実効レートが2012年の110から55にまで半分に暴 落しています(2023年)。政府は円安を歓迎したのです。 2012年からの10年円安は、戦後、金融抑圧をして上がるべき金利を抑 えた英国ポンドにも生じたことと同じ歴史的なものです。日本のGDP と所得は、戦後のポンド安の英国と同じように世界シェアが1/2に低 下したのです。超金融緩和と、利下げによる日本経済の陥落でした。 ◎通貨の下落はその国の経済の弱体化の指数です。アベノミクスは、 日本経済と日本人の所得の、世界でのポジションを1/2に下げ、1人当 たり所得の順位では24番目に下げたのです。 株価が上がったことだけで異次元緩和500兆円(円の増刷)は、成功 したとはいえない。1/2への円安は、海外からのインバウンド消費 (3000万人:5兆円)依存する弱い経済をもたらしたのす。 ◎今回の参考になるのは、リーマン危機のあとの、2008年から2012年 の通貨レートの動きです(円高、ドル安、ユーロ安)。 ◎今回の銀行危機でも、ドルとユーロが(長期的には)同時に下がる 可能性が高いでしょう。米欧の銀行危機は、共通するからです。 円のレートでは、米国債の金利4%台による、20%下落の影響がドル 建て債券を1000兆円(現在の含み損は200兆円)ももつ日本の政府・ 金融機関に、どう及ぶかにかかっています。 ◎ただし20%下がった米国債やMBSを日本が売ることは、通貨では同 じ金額の「ドル売り/円買い」になるので、ドルを下げ円を上げる要 素になります。 ↓ 1)日本がドル債を大きく売ったときは、米国から波及した日本の金 融危機と円安は、比例しません。 ドル危機、ユーロ危機のときの世界からの円買い、スイスフラン買い による円高の可能性もあります。マイナスとプラスの要素が混交する 円の、確定的な予想は難しい時期です。 2)危機の本店のドルは、いずれにせよ下がるでしょう。 3)海外からの預金が多いスイスフランは、短期では、クレディ水ス イスの破産から売られて短期では下がっても、長期ではドル危機と ユーロ危機が認知されていき、上がっていくと思えます。 ↓ そのときは、安全通貨は、スイスフラン、金、円になっていくでしょ う。(注)金は、金融市場では通貨です。 【米国株に組み込まれた危機の風船】 ◎現在、米国のS&P500の売買では、短期(3か月以内)のオプション での買いと売りが48%と、普段の6倍に増えています。 一見では順調に見える米国株の、売買の中身を見ると、恐ろしいこと になっています。 ↓ 機関投資家がロボット売買で、短期のオプション売買を急激に増やし てるので、満期までにはポジションの解消(=米国株相場の暴落の可 能性があること)を示唆しています。 6倍という異常な金額に増えているオプション売買が、平常の状態に 解消されるとき、米国株は、暴落するからです(時期は2023年8月頃 か?)。 【オプションの原理】 ブラックショールズ方程式で計算ができるオプション料を払うと、契 約日に、設定した権利行使価格で、レバレッジをかけて株を買うこと (コールオプション)、あるいは売ること(プットオプション)が、 実行できます。現在、S&P500の変動率(VIX:1年)が22.99%と高いの で、オプション料も高い。世界中のファンドマネジャーが、これを売 買しています。 オプションの原理は、株価の確率変動の売買です。サイコロゲーム の掛け金が6倍になる賭けで、例えば1の目がでる確率を、賞金の1/6 の価格で買うことと同じです。 (高度計算サイト:方程式の簡易シミュレーション) https://keisan.casio.jp/exec/system/1161228904 ■3.MMTの失敗が、今、襲ってきた 米国政府は、国債の発行残が債務上限の31.4兆ドル(円国債の3.4倍 の4035兆円)に達していて、米議会で債務上限を上げるときまで (23年8月が最短)、財政支出の拡大はできない。必要なことは、財 政の拡大と逆の緊縮です。 バイデンがいった「全部の銀行の預金は全額を保護する」ことは、そ の思いはあっても、政府にお金はなく実行ができない。 ◎赤字財政(=資金不足)の米国政府には、赤字国債を増加発行しな い限り、お金がないからです。 米国では、国債の返済が「4035兆円÷平均満期8年=504兆円/年」も あります。このため、米財務省は、平均の利払いが4%になる新規ド ル国債を発行して銀行に売り、504兆円の返済資金を捻出しなければ ならない。 米国株と米銀にとって、正常なときにはない、大きな障害です。しか し、1971年の金交換停止のあとのドルは、約10年に一回の危機に信用 危機に見舞われていいます。中国、日本、産油国が、対外債務の増加 で信用が低下していく米ドル(対外債務21兆ドル:2730兆円)を買っ て、支えてきたのです。 ◎「米国の株価にとっては、銀行危機と財政緊縮という、大きなマイ ナスの要素の2つが希有(けう)に重なった」と感心しています。長 い歴史には、こんなこともあります(確率では1.25%=100年に1.25 回:94年前は米国発の大恐慌(1929-33))。 2020年,21年、22年の米国景気を良くし、賃金を5%、物価を約8%、 住宅価格を20%/年も上げた、コロナでの財政支出5兆ドル(650兆 円)が、問題だったのです。 現在は、「バイデン政権の財政とマネー拡張とウクライナ戦争からの、 複合カサンドラクロス」に見えます。 ◎国債の発行は、政府収入になっても、国民の所得からの税収ではな い。政府が未来の税収(政府の未来所得)を、中央銀行に担保に入れ て、現金を借り、今日、使うことです。 米国GDPの130%にあたる31.4兆ドル(4080兆円)を、あとで返済と利 払いが必要な国債で調達して行くと、いずれ、行き詰まります。それ が、2023年にきたのでしょう。 【MMTの間違いの結果が、2023年に生じた】 インフレになると金融引き締めが必要とするMMT(現代貨幣論)は、 ・実際にインフレが起こって、金利が上がると、 ・その根拠が、焼け果てた大地のように不毛になります。 ビジネス知識源と書籍で、約10年前から、繰り返し指摘してきたこと でした。国債の増発を伴う通貨の増発は、インフレになったとき、強 い副作用が現れるからです。 ところが・・・「MMTの空気」に流されたFRB、ECB、日銀は、合計で は1500兆円のマネーを増刷してしまい、コロナ後の3年で「取り返し のつかない失敗」を冒したのでしょう。2022年からは日米欧のMMTの 同時実行を基礎の原因に、世界インフレになってしまったのです。 リーマン危機のとき、破産していた銀行の救済策として米国債とMBS を買って、3兆ドル(390兆円)のマネーを増発したバーナンキ元FRB 総裁は、2022年に、米国の物価が9%上がったあと「あれは失敗だっ た」と述べています(2022年9月ころの講演) バーナンキは、デフレ恐慌にはヘリコプターから無差別にばらまく紙 幣すら有効といっていたにもかかわらず、一級とされる恐慌学者です が、主旨変えをしました。プリンストン大学の教授だったバーナンキ の教え子が、日本の量的緩和を推進していたのです。 日本が陥った流動性の罠(預金が使われないこと)に対し、1999年か ら金融理論的に量的緩和を主唱していたクルーグマン(ノーベル賞学 者)は、2019年に、IMFでの講演で、「流動性の罠は、日本経済の構 造問題だった」と白旗をあげています。 ■4.2022年からの、米国の、M2の減少の意味 米国のマネー量を示すのは、M2(企業と世帯の預金)です。 M2は、2022年まで、FRBの金融緩和により1年に18兆ドルが22兆円ドル (2860兆円)に増えていました(22%という異常な増加です)。(米 国のマネーサプライ:M2) https://jp.tradingeconomics.com/united-states/money-supply-m2 しかしFRBがインフレ抑制のため急激な利上げ(+4%)をした2022年 には、ピークアウトして20.5兆ドル(2665兆円)へと1.5兆ドル (195兆円)も減っています。 ◎FRBは金利を上げるだけではなく、マネー量も縮小したのです。 (注)M2は銀行からの総貸し出しであり、銀行の預金量と一致します。 普通、金融引き締めのときも、減少させてはならないのが、M2(貸出 量=預金量)です。マネー量(=銀行貸し出し)の減少は、利上げよ り強い金融と経済の引き締めになり、米銀の危機(=預金流出)にな っているのです。 1年間に195兆円(総預金の7.3%)、米銀の預金が減ると流動性(現 金)に弱い下位銀行から、資金繰り危機になっていきます。 日本のM2は、日銀が0.5%に金利を上げた2023年も、1200兆円を維持 しています。日本の銀行全体と日本人は預金を減らしていない。 米国では、金利の上昇(短期政策金利4.75%+プレミアム1%~2%= 貸付金利5.75~6.75%)が貸し出しを減らし、貸し出しの増加で増え る総預金(M2)も減らしたのです。 【欧州も0.5ポイントの利上げ=金利上昇d銀行危機は深化】 ECB(欧州中央銀行)のラガルド総裁は、3月16日に、3会合連続にな る0.5ポイントの大幅利上げを決めました。政策金利は0%(2015- 2022年:7年間)から3.5%に上がりました。米国FRBより4か月遅れ22 年7月からの利上げです。何を慌てているのか。 https://zai.diamond.jp/articles/-/401200 世界国際銀行の大手に属するクレディスイスが破産に向かうなか、 ECBは金利を、逆に0.5ポイント上げたのです。クレディスイスには、 FRBからドルを借りたSNB(スイス国立銀行)が、470億フラン(7兆円) のマネーを緊急に注入しました(スイスは金融緩和)。 欧州ではあまりに高くあまりに長くインフレが見込まれるため (Inflation is projected to remain too high for too long)、0. 5%の利上げを決めたという。 コロナ危機でマネーを増発しすぎた米国FRB、ユーロのECB、日銀の3 大中央銀行は、選択肢を失っています。行くも、戻るもできない。た だ銀行危機を高める金利を上げる。 今回の利上げは、銀行危機のリスクを高めるためとしか思えない。何 のために銀行を潰すのか? FRBとECBは混乱しています。中央銀行が、 現在、理性的とするなら、銀行を潰して資本を入れ、国有化すること が目的になるのです。しかしこれは、中央銀行そのもの信用を潰して、 最終的には国有化されることになっていくでしょう。 支援してきたウクライナ戦争での敗戦から、長期的にはNATOの解体、 ユーロの解体が視野に入ってきた感じです。 長期金利を0.25%から0.5%にしか上げていない日本は、世界の例外 です。だだし、4月に、新任の植田日銀は、6月から8月ころには0.25 %利上げをすると見ています。0.5%の利上げは、1200兆円の国債を 抱える日本政府にはムリになるからです。 ■5.銀行の危機は、どこに現れるか 信用で成り立つ銀行の信用とは、自己資本のことです。ただし銀行の 自己資本は、Tier1という一般にはわかりにくい用語で言われ、普通 株と利益の留保である資本保全バッファー(資本引当金)からなりま す。 中央銀行の上の、世界中央銀行であるBIS(国際決済銀行)は、銀行の 自己資本に対して、以下の規制をしています。 ・国内取引の銀行(地銀)・・・Tier1/リスク資産=4%以上 ・国際取引の銀行(都銀)・・・Tier1/リスク資産=8%以上 ・日本の3大メガバンク(三菱UFJ、住友、みずほ銀行)と、 ・米国の4大銀行(JPモルガン、バンカメ、シティバンク、ウェルズ ファーゴ)は、いずれも自己資本比率が10%から12%はあります。 リスク資産が10%下落しても、債務超過(=事実上の破産)にはなら ない。しかしここには落とし穴があります。 国債と格付けがAAA級の債券は、総資産のなかのリスク資産ではなく 「安全資産」とされ、Tier1の自己資本比率の計算から除外されてい るのです。 【その理由】 国債は満期前に金利が上がって時価が下がっても、満期には発行額面 の100%を政府が返済するから、リスク資産ではないという理屈です。 (注)ただし、銀行間の貸借取引であるレポ金融の、担保の差し入れ る国債は、時価評価されます。国債価格が下がると追い証が必要です。 ◎日本のメガバンクと米国の4大銀行の、国債とAAA級の債券を含む総 資本に対しては、いずれも国内銀行並みの5%しかTier1の自己資本が ない。自己資本に対する総負債(=総資産)のレバレッジは20倍、自 己資本比率は、半分の5%です。 これが、現在の銀行信用の正体です。(銀行の自己資については、複 数の読者から質問がありました) そして今回、2022年での4ポイントの利上げにより、米国債(31.4兆 ドル:4080兆円)、不動産ローン担保証券のMBS(10兆ドル:1300兆 円)、合計で5380兆円(米国のGDPの約200%)は、約20%価格が下が っています。 ◎5380兆円の国債とMBSをもつ銀行(米国が60%、海外が40%)、フ ァンド、年金基金には、2023年1月時点で、それらの、AAA級債券の持 ち高の約20%の含み損(1076兆円)があります。 メガバンク、米国4大銀行の、実際のB/Sでは、総資産の5%しかない 自己資本は、消えています。債務超過に陥っています。 ところが、全部の銀行が、「当行の自己資本は10%から12%はあるの で、破産したシリコンバレー銀行や、クレディスイスとは違う。預金 の安全性は100%、大丈夫」というウソを述べています。 自己資本より大きな含み損があっても、銀行は債務超過の発覚からの、 不安を感じた大口預金者による預金取りつけが起こらない限り、破産 はしない。 普通の企業では、粉飾決算として刑事罰になる自己資本のウソは、銀 行に対しては、政府から許されているのでしょう。 ◎今回は、従来、安全資産とされてきた国債が、金利上昇により、価 格が下がるリスク資産になったことからの、蓋をされている銀行危機 です。いつまで国民の目に蓋できるか・・・という問題です。 FRBが2023年中に3%台、2%台に利下げしない限り、含み損は、日米 欧のおよそ全部の銀行の、資金繰り問題になって発現していきます。 スイス国立銀行(SNB)が、7兆円のマネーを入れて国有化したクレデ ィスイスのような、問題です。クレディスイスの総資産(=総負債) は5314億フランです。スイスフランは、3月17日は143.93円ですから 76.5兆円です。 7兆円は、帳簿上の総資産・総負債に対して9.2%でしかない。預金流 出に対して9.2%で足りるのか、2、3か月で足りなくなるでしょう。 2.1倍の15兆円は入れなければならない。 その程度は、軽度でしょうが日本のメガバンクと地銀、米欧の銀行も、 クレディスイスと似た状態でしょう。 合計額が5380兆円の米国債とMBSは、どの銀行がもつ証券も、20%と いう率で下がっているからです。 FRBは、0.25か0.5ポイントと予定していた3月利上げを停止するよう です。しかし、金利を下げない限り1076兆円の含み損は変わらない。 2023年8月に、仮に1%金利を下げても、含み損は5380兆円の15%の 807兆円です。 FRBは、預金の全額保護をするという。これは、中小銀行で起こって いる預金取り付けを大手銀行に波及させないためのものです。 大手銀行も危機が広がっている中小銀行にマネーを提供します。日本 の金融危機(1997年)のときの奉加帳と同じです。 問題は、銀行不安からの預金流出が、いつまで続きマネーの必要額が いくらになるかです。不安を煽るのは本意ではないのですが、4大銀 行も、総資産に比例した含み損を抱えているでしょう。 時価の自己資本は、ほぼゼロでしょう。 B/Sの総資産 推計の含み損 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ JPモルガンチェース 3.3兆ドル 3000億ドル(39兆円) バンカメ 2.5兆ドル 2500億ドル(32兆円) シティバンク 2.4兆ドル 2400億ドル(31兆円) ウェルズファーゴ 1.8兆ドル 1800億ドル(23兆円) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ (注)総資産の50%を20%時価が下がった米国債+MBS証券+AAA級社 債とする。貸付債権は、貸し倒れがゼロというムリな仮定をしていま す。実際には、借り主の利払いが、2021年比で約3倍になったことか らのデフォルトが増えています。 最終的には、最後の銀行であるFRBが資金を出すことになりますが、 今回は金額が大きすぎ、それが可能かという問題です。 ↓ 2024年には、FRBもろとろも、国有化するしか、方策は残されていな いのではないか。FRBも、財務省の傘下の銀行になるということです。 これは、中国共産党の国有銀行と同じ仕組みです。 ◎最終的に、預金は保護されるでしょう。政府が保護しないと、全米 の銀行が破産に向かうからです。預金をしている銀行の資本が国有に なっても預金者にとっては同じでしょう。日本のメガバンクと地銀も 同じです。日銀と三菱UFJが国有になっても国民と企業は困らない。 どこが最終的に、2022年、23年の利上げ(米国では4ポイント)の被 害を受けるのか。 米国には、GDPの3倍(75兆ドル:9750兆円)の負債があります。政府 が31.4兆ドル、州と民間企業が26.7兆ドル、世帯が16.9兆ドルでしょ う。 https://www.newyorkfed.org/microeconomics/hhdc ・州と民間企業の利払い推計 26.7兆ドル×平均金利5% =1兆3350億ドル(174兆円) ・世帯の利利払い推計16.9兆ドル×平均金利6% =1兆140億ドル(132兆円) 【金利上昇=国債の下落の、最終的な被害者は企業と世帯】 負債の利払い額は、2021年の3倍に増えるので、企業と世帯は利払い の被害を受けます。利払いのできない企業と世帯は不動産と車を失い ます。2024年には会社がなくなり、職を失って、住宅も失うでしょう。 銀行は,政府は救済されても、銀行から借り入れをした企業と世帯に は被害が及びます。これが、金融危機のあとの「恐慌」です。 1929年-33年の大恐慌のときは、 ・米国の失業率が25%に達し(4人に1人)、 ・銀行の閉鎖は1万行、 ・国民所得は32%低下しました。 この恐慌も、FRBが、第一次世界大戦のあとの、米国資産バブルを抑 えるための、利上げ(6%:1929年8月)を端緒に起こったものです。 NYダウは、1924年からの投資マネー増加により5年間で5倍に高騰して いました。不動産価格も、2020年からのように高騰していたのです。 このバブル株価は1929年-33年には半値・八掛け・二割引=32%に下 がりました。不動産も、50%だったでしょう。 【バブル崩壊の底値は、チャンスだが】 下がった株と不動産を底値で買った人や商会(銀行)が、次の時代の 資産家&資本家になったのです。バブル崩壊は、その現象を「鳥の 目」で眺めると、資産家・資本家の移転です。資産下落の渦中の、魚 の目で見ていると敗者になります。 ◎世界的な銀行危機が起こっても、政府は、今回は、中央銀行と銀行 を中国のように国有化して預金を引き出し可能にし続けると見ていま す。 リーマン危機のときは、FRBは3兆ドル(390兆円)を増刷して、銀行 を救いました。今回は、米国を先頭に、世界中であり、必要金額が大 きすぎます。このため、中央銀行と一緒に国有化すると推計します。 結果は、政府通貨の発行です。 民営化したJRやNTTを「国民経済の機能として欠かせないもの」とし て、再国有化するようなことと同じです。医療は、すでに政府保険に よって、国家試験にして、事実上国有化しています。これと同じです。 大きなバブル崩壊のあとは、政府は必ず金利を下げ、新たなマネーの 貸付を増やします。それに乗ることです。 ■6.経済危機、銀行危機、通貨のときの金価格の上昇 金利との関係でいうと、一般には、金利のない金は、好況で利上げの ときは上がりにくい。マネーは、株に流れるからです。 一方、経済危機、銀行危機またはドル危機のときは、証券や株より、 最後の安全資産として金が上がりやすい。こうした基本性格をもって います。1978年からの、金価格の大きな動きを示します。 金価格(1オンス:31.1g) 原因 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 1978年~1980年:200ドル→700ドル 原油高騰&ドル危機 1980年~2000年:700ドル→300ドル 危機後のドル基軸の維持が目的 1999年まで中央銀行の金売却(年400トン) 2000年~2007年:300ドル→600ドル 中央銀行の金売却停止 中央銀行にとって金は大切な資産と宣言 2008年~2011年:600ドル→1800ドル リーマン危機 ドル危機から、中央銀行の金買い(年300~400トン) 2011年~2015年:1800ドル→1100ドル FRBの主導による、金ETFの売り 2015年~2020年:1100ドル→1800ドル 中国を先頭にした通貨新興国の準備資産としての金買い集め 2023年3月 金1オンス 1936ドル 銀行危機からの金買いが始まっている (金価格チャート:ドル:1979-2023) https://gold.mmc.co.jp/market/gold-price/#gold_longspan (注)ドルではなく円では、金価格は一貫して上がっています。 1995年から、28年間の円安になっているからです。 円の通貨価値は、1ドル79円のときからは、42%安です。 なお金の国債価格の動きはドルで見ないと分かりません。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 金は金地金そのものに人間が価値の実体を見てきた金属です。ドルの 価値は、米国のFRBと銀行信用に帰属しますが、金は銀行の信用と無 関係です。むしろ銀行危機(=通貨危機)のときは、金が上がります。 近代の政府と1900年代からの中央銀行の信用によって価値がある信用 通貨に対して、金はその価値の根本が違います。 ドルの信用通貨で計る金価格が上がることは、中央銀行が無限増刷も できる信用通貨の価値が下がることです。 銀行危機のときは、その国の中央銀行が通貨を増発し銀行の救済に努 めます。通貨を増発すれば、通貨の1単位(100ドルや1万円)の価値 は下がります。 ◎中央銀行が、バランスシートの数字キーをコンピュータで叩くだけ で増発ができる信用通貨のドルや円の価値と、1年に鉱山生産の3000 トンしか増えない金の価格は、反比例してきました。 地上の金在庫は20万トンとされますが、発掘が可能な鉱山の埋蔵量は 5万トンに減っています。毎年金が発掘され、掘り尽くされたて枯渇 し、廃坑になっています。 現在は1トンの金鉱石から3~5グラムくらいの金しかとれません。金 の生産は増やせない。中国が約400トンで1位の産金国です。2位が豪 州350トンくらいです。3位がロシア350トンくらいです。世界の中央 銀行がもつ金は、3万3000トンくらいです。 【明治15年~45年】 日銀が作られた明治15年(1882年)には金1グラムが約1ドル=1円だ ったことを知っている人はいるでしょうか。夏目漱石の東大での俸給 30円/月は現代の24万円の価値でした。住宅は300円くらいでした。東 京日本橋では1000円でした。 金価格は円では140年で8000倍になっています。1945年8月の敗戦後の ハイバーインフレ(日銀による通貨増刷)で、約300分の1に円が下が ったからです(物価は300倍)。 金価格は1971年の金ドル交換停止のときの、1オンス(31.1グラム) が、35ドル(1グラムは1.125ドル)から、現在は1936ドル・・・52年 間で55倍です。1年平均では金利より高い8%上がっています。 S&P500の100年の長期上昇率も1年平均8%です。そして、石油危機の 前1971年の、1バーレル1ドルからの原油価格の長期上昇(現在68ドル 付近)も平均年率8.4%です。 以上の総合した意味は、「信用通貨の基軸通貨という本源で矛盾をも つドルは、1年平均で8%くらい価値を下げてきた」ということです。 信用通貨の預金金利を平均3%とすれば毎年5%損をしてきたのです。 異次元緩和の500兆円(=通貨増発)により約1/2に弱くなった円に対 しても、ドルは戦後の1ドル360円から130円台へと1/3に下がっている のです。米ドルは、1971年から2023年の52年では、最も下がった通貨 です。今回も、長期的に言えば米国FRBと財務省が、ドルの実質価値 を維持するのは困難だと判断しています。 金価格は、ドル危機が認知されると、増刷ができる信用通貨に対して 数倍に上がる基本性格をもっています。2023年は、まだその動きは見 えません。しかし、米国発の銀行危機が進行していく2023年、2024年、 2025年には、ドルは一層弱くなっていくでしょう。 米国の銀行危機の深化と比例する、ドルの弱体化に従って金価格は高 騰していくと見ています。 しかし、世界金融に深い見識をもつ人のなかには、 1)銀行危機、ファンドの危機のときは、投資ポートフォリオのなか で含み利益がある金が、売られるだろう。 2)そのため、金価格も原油と同じように、銀行危機のときは下がる と予想する人もいます。(注)その後は上がる。 金の価値の根拠から、当方はこの考えに与(くみ)しません。 今回は、負債の大きな信用通貨の、ドル危機だからです。 ◎ドル危機のときは、アービトラージ(信用通貨ドルの代替資産)で ある金は、売られるより多く買われて高騰すると見ています。 何倍に上がるか断言はしませんが、過去のドル危機のときの高騰 (1980年)よりはたぶん大きくなると予想しています。ただし、あく まで、「たぶん」という確率です。多くの要因がからむ複雑系の経 済・金融の未来予想は、気象の長期予想に似ています。 ■7:後記:相場の本質 政府とは無関係で、逆に、抑えてきたビットコインも可能性があるか も知れない。FRBはドルの価値と逆に上がる金とビットコインを敵と 見て来たからです。しかしビットコインは,価格変動が大きすぎ利益 と損のリスクはともに高い。ゲームで買うのならいいかもしれません。 ビットコインは3月16日から18日の3日間で320万円から362万円へと 13%上げています。 預金資産の価値を守るため、仮に金を買うときは一遍に買わず、預金 と家計にムリのない一定額を、毎月価格が下がっても上がっても買い 続ける「ドル平均法」をお薦めします。金積立預金もいい。金価格と 同じことが保証された金ETFでもいい。金ETFは、売るときは、そのと きの金価格と同じ現金が返却されます。 通貨のスイスフランをお持ちの方は、これからの大手銀行の危機に対 しては金を買っておいてもいいかもしれません。金融資産の投資の成 功は「確かかもしれない」という確率的な表現でしか、いえないので す。 相場の価格は、買う人が50%、売る人が50%のところの板(価格ボー ド)で決まります。買いの金額が多く、売りにの金額が少ないとき高 騰します。本質をいえば、意見の違いがあるから、証券市場が成立し ているのです。売る人は、その価格の価値がないと考え、買う人は価 格より価値が高いと考えます。皆が同じ意見になると売買が成立せず 相場は消えます。 【相場の本質】 相場については「私は上がると考えるあるいは下がると考える」の両 方の意見が妥当です。相場の「相」は売買の相手のことです。相手と 相談し、一致したものが価格です。市場は投資家の心の上にある 「想」です。 問題となることは、価格予想が何に基づくものか、判断の根拠に対し て論理的なものであるかどうかです。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 【プレミアム読者アンケート&感想の、項目のメド】 1.内容は、興味がもてますか? 2.理解は、進みましたか? 3.疑問な点は、ありますか? 4.その他、感想、希望テーマ等 5.差し支えない範囲で、横顔情報があると、テーマ設定と記述の際的 確に書くための、参考になります。 気軽に送信してください。感想は、励みと参考になり、うれしく読ん でいます。質問やご要望には、可能なかぎり回答をするか、あとの記 事・論考に反映させるよう努めます。返事や回答ができないときも全 部を読み頭にいれます。読者の感想・意見・疑問・質問は、考えを広 げるのに役立ちます。 著者のメールアドレス:yoshida@cool-knowledge.com 購読方法と届かないことに関する問い合わせは、ここにメール(↓)。 配送の管理は、著者ではなく配信サイトの「まぐまぐ」が行っていま 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